JP3920143B2 - アンテナ用コイル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンテナ用コイルに関し、バーコードの代替技術として知られているRFID(Radio Frequency-Identification;電波方式認識)等の無線通信技術に用いられる、例えば車載用のキーレスエントリ、タイヤの空気圧センサ等に使用されるアンテナ用コイルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えばRFID等の、日常生活において種々の用途に利用される無線通信技術が注目されているが、このような無線通信技術において微小なアンテナ用コイルの開発は極めて重要である。
【0003】
このような微小なアンテナ用コイルとしては、例えば、全長が1cm程度の磁性体巻軸部に導線を700〜800回程度、複数層に亘って巻回したものが知られている。その導線の巻回操作は、例えば図6に示すように、導線を巻軸部114の一端側(鍔部116A)から他端側(鍔部116B)まで巻軸部114の表面に沿って第1層目を巻回した後、折り返して、他端側(鍔部116B)から一端側(鍔部116A)まで第2層目を巻回し、その後第3層目、第4層目を同様にして順次折り返しながら形成していくことによりなされ、これによりコイル部120が形成される。このような巻回操作によるものをソレノイド巻と称している。
【0004】
なお、このアンテナ用コイル110に対してコンデンサを並列に接続し、このコイルを形成する導線の始端および終端を受信機本体に接続するように構成することで所定の共振周波数におけるデータ受信を可能とすることができる。
【0005】
通常、上述したコイルにおいては、導線(コイル)の線輪間や端子電極間に浮遊容量成分(寄生容量成分)が発生し、この浮遊容量成分とコイルのインダクタンス成分とで共振現象が発生する。そのような共振現象による共振周波数は「自己共振周波数」と称され、回路上でコイル(インダクタ)として使用できる最大の周波数となり、通常、コイルの使用周波数は自己共振周波数の1/2〜1/5以下とされる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ソレノイド巻によるアンテナ用コイルは、上述した如く導線が巻軸部の一端側から他端側まで巻回された後、折り返して該一端側まで巻回されることになるので、例えば、図6中において、この一端側で上下に隣り合う導線118A、118Bは巻回数が大きく異なるものとなる。つまり、層の長さL2が大きなものとなることから、これに伴って大きな浮遊容量成分が発生することになる。このことは上記他端側の第2層目と第3層目においても同様である。
【0007】
このような大きな浮遊容量成分は、自己共振周波数の大きな低下をもたらす。自己共振周波数が大きく低下し、使用周波数がその自己共振ピークの裾の部分の近傍に位置する状態となると、部品間の性能のバラツキにより、使用周波数におけるインダクタンス値も部品によって大きなバラツキが生じたものとなる。また、使用周波数が上記裾の部分の近傍に位置する状態となると、温度変化によってもインダクタンス値が大きく変化してしまう。
【0008】
しかして、コイルのインダクタンス値はコンデンサの容量とともに、使用する周波数を決定するための要素であり、その使用する周波数毎に、各々対応した値とされているものであるため、インダクタンス値が変化すると、受信のための共振周波数にずれが生じ、使用周波数における受信が困難となったり、受信可能範囲が狭くなったりするという問題があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、導線の巻回層間に発生する浮遊容量成分を減少させることで、部品間での特性のバラツキあるいは温度変化に伴うコイルのインダクタンス値の変化を減少させ、製品によってあるいは周囲温度の変化によって受信感度が不良となる事態を防止しうるアンテナ用コイルを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した問題発生の原因は、導線の巻回層間に発生する浮遊容量成分が過大となることによる。
【0011】
そこで、本発明のアンテナ用コイルは、2つの鍔部と巻軸部が設けられた磁性材料からなる巻芯と、該巻芯の該2つの鍔部間において、該巻芯の該巻軸部に巻回された複数層の導線からなるコイル部とを備えたアンテナ用コイルにおいて、該コイル部は、一方の鍔部側から前記導線を1層づつ重ねながら、内側から外側に向かうに従って該一方の鍔部側に傾くように、または外側から内側に向かうに従って他方の鍔部側へ傾くように巻回し、この巻回操作を前記巻芯の該他方の鍔部側にずらしながら行なうようにして形成されるバンク巻きとするとともに、前記巻芯はフェライトにより形成され、かつ前記コイル部は、前記巻芯に直接巻回されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記2つの鍔部は、前記巻芯の両端に形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記コイル部の巻回操作は、内側から外側に向けて前記導線を巻回する操作と、外側から内側に向けて前記導線を巻回する操作を交互に繰り返しながら前記巻芯の長手方向に移動していくことが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係るアンテナ用コイルについて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナ用コイル10を示す部分断面図であり、図2は、このアンテナ用コイル10の巻芯12を示す斜視図である。
【0016】
この巻芯12は、角柱状の巻軸部14の両端部分に鍔部16A、16Bを備えてなり、良好な磁気特性を有するフェライト材料により全長1cm程度のサイズに形成されたものである。
この巻芯12に対し、バンク巻によって細い導線18を700〜800回程度巻回したコイル部20を設けることによりアンテナ用コイル10が形成される。
【0017】
ここで、バンク巻とは、一方の鍔部側から導線を1層づつ重ねながら、外側に向かうに従って該一方の鍔部側に傾くように巻回し、この巻回操作を前記巻芯の他方の鍔部側にずらしながら行なうようにして形成する巻回手法である。
【0018】
すなわち、図1に示すように、一端側の鍔部16Aの内側壁面に沿って、巻軸部14の周りに、1巻目(図中1)の巻回操作を行い、次に他端側方向に1ピッチずらして2巻目(図中2)の巻回操作を行い、次に、一端側方向に1ピッチ戻るよう、かつ第2層目を形成するように3巻目(図中3)の巻回操作を行う。次に3巻目の直上に4巻目(図中4)を形成して第3層目を形成するように巻回操作を行い、この後5巻目(図中5)、6巻目(図中6)を他端側方向に1ピッチずらすよう、かつ外側から内側に向かって巻回するように巻回操作を行い、この後7巻目(図中7)、8巻目(図中8)、9巻目(図中9)、を他端側方向に1ピッチずらすよう、かつ内側から外側に向かって巻回するように巻回操作を行い、この後図1中のコイル部20内に矢印線で示すような順で、同様の巻回操作を繰り返して行なう。
【0019】
このようにして、導線の巻回が他端側の鍔部16Bまで終了するとコイル部20の作製作業が終了する。
【0020】
このように、本実施形態のものでは、コイル部20の巻回操作において、内側から外側に向けて導線を巻回する操作と、外側から内側に向けて導線を巻回する操作を交互に繰り返しながら巻芯12の長手方向に移動していくようにしているので、図1からも明らかなように、巻回操作が容易であり、また巻姿が良好で巻崩れが起こりにくいものとすることができる。
【0021】
ところで、このようなバンク巻を採用した場合には、前述した従来技術におけるソレノイド巻を採用した場合に比べ、導線の巻回層間に発生する浮遊容量を大幅に減少させることが可能となる。
【0022】
すなわち、図1に示す例では、互いに上下に位置する導線の巻回数の差は、最大で、たかだか8回程度となる。つまり、層の長さL1は従来技術として表わした図6に示す例における層の長さL2と比べると大幅に減少させ得ることが明らかである。これにより、浮遊容量成分の大幅な減少を可能としている。
【0023】
このように、本実施形態のアンテナ用コイルにおいては、浮遊容量成分を大幅に低減させることができるため、この浮遊容量成分Cとコイル(インダクタ)のインダクタンス成分Lとで発生する自己共振周波数f(=1/(2π(LC1/2))の値を上げることができる。
【0024】
自己共振周波数が大きく上昇し、使用周波数(使用する共振周波数)をその自己共振ピークの裾の部分から低周波側に離れた、特性が安定した部分に位置させることができるので、部品間の性能のバラツキや周囲温度の大きな変化によっても、使用周波数においてインダクタンス値が大きく変化することがなくなる。
【0025】
前述したように、インダクタンス値はコンデンサの容量とともに、使用周波数を決定するための要素であり、その使用周波数毎に、各々その周波数に対応した値とされているものであるが、本実施形態のものでは、使用周波数におけるインダクタンス値が大幅に変化することがないので、受信のための共振周波数が安定したものとなり、使用周波数における受信が困難となったり、受信可能範囲が狭くなったりするという事態を回避することができる。
【0026】
図3は、本実施形態のアンテナ用コイル10を一般的なスイッチ開閉回路に適用した例を示す回路図である。すなわち、アンテナ用コイル10と並列に所定容量のコンデンサ30が接続され、アンテナ用コイル10の導線両端は受信制御手段100に接続されている。また、この受信制御手段100はスイッチ200を開閉し得るように構成されている。
【0027】
アンテナ用コイル10は、そのインダクタンス成分Lとコンデンサ30の容量成分Cにより決定される使用周波数f(=1/(2π(LC)1/2))の電波信号に対して共振し、これに応じて受信制御手段100に所定の信号が受信されたことが認識される。受信制御手段100はこれに応じてスイッチ200を閉状態に設定し、スイッチ200を有する回路(受信制御手段100中に配されている)がON状態に設定されることになる。本実施形態のアンテナ用コイル10をこのようなスイッチ開閉回路に適用すると、部品間での特性のバラツキや周囲温度の変化があっても受信感度が不良となるおそれがないので、スイッチ200を有する回路のON/OFF切替えが誤って行なわれることがない。
【0028】
図4は、本実施形態のアンテナ用コイル10および比較例としてのソレノイド巻のアンテナ用コイルの周波数−インダクタンス特性を各々示すものであり、いずれも使用周波数125KHzにおいて7.22mHのインダクタンス値となるように設定されている。
【0029】
図4によれば、自己共振周波数のピーク位置は、比較例のものが550KHz程度と低い値であるのに対し、本実施形態のものでは2.4MHz程度と高い値となっている。
これにより、この比較例では、部品間の特性のバラツキが大きい場合には、使用周波数である125KHzにおいて、インダクタンス値が大きく変化してしまうのに対し、本実施形態のものでは、そのようなおそれがない。
【0030】
また、図5は、本実施形態のアンテナ用コイル10および比較例としてのソレノイド巻のアンテナ用コイルの周囲温度−インダクタンス変化率の関係を各々示すグラフである。
本実施形態および比較例のいずれもが、周囲温度25℃(常温)においてインダクタンス変化率が0となるように設定されている。
【0031】
図5によれば、比較例のものが、温度変化に対するインダクタンス変化率が大であるのに対し、本実施形態のものでは温度変化に対するインダクタンス変化率が小であることが明らかである。
【0032】
このように、本実施形態のものでは、部品間の特性のバラツキや周囲温度の変化が大きい場合であってもインダクタンスの変化を小さくすることができるので、そのような場合に従来技術において問題となっていた受信感度の低下という事態が発生するおそれがない。
【0033】
なお、本発明のアンテナ用コイルとしては上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、コイル部20の巻回操作において、内側から外側に向けて導線を巻回する操作と、外側から内側に向けて導線を巻回する操作を交互に繰り返すようにしているが、内側から外側に向けて導線を巻回する操作のみ、あるいは外側から内側に向けて導線を巻回する操作のみを繰り返し行なうようにすることも可能である。
【0034】
また、上述した2つの鍔部16A、16Bは、巻芯12の両端に形成されているが、鍔部は巻芯の途中に設けられていてもよい。
【0035】
さらに、上述した巻芯12はフェライトにより形成されているが、巻芯の形成材料としてはこれに限られるものではなく、他の一般的な巻芯材料(強磁性体)から選択することが可能であり、例えば、パーマロイ、センダスト、鉄カルボニル等の材料を用いることが可能であり、これらの微粉末を圧縮成型したダストコアを使用することも勿論可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のアンテナ用コイルによれば、導線をバンク巻により巻芯に巻回しており、従来技術におけるソレノイド巻を採用した場合に比べ、導線の巻回層間に発生する浮遊容量を大幅に減少させることが可能となる。
【0037】
これにより、この浮遊容量成分Cとコイルのインダクタンス成分Lとで発生する自己共振周波数fの値を上昇させることができ、使用周波数をその自己共振ピークの裾の部分から低周波側に離れた、特性が安定した部分に位置させることができるので、部品間の性能のバラツキや周囲温度の大きな変化によっても、使用周波数においてインダクタンス値が大きく変化することがなくなる。
【0038】
これにより、受信のための共振周波数が安定したものとなり、使用周波数における受信が困難となったり、受信可能範囲が狭くなったりするという事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ用コイルを示す部分断面図
【図2】図1に示すアンテナ用コイルの巻芯を示す斜視図
【図3】図1に示すアンテナ用コイルを一般的なスイッチ開閉回路に適用した例を示す回路図
【図4】図1に示すアンテナ用コイルおよび比較例としてのソレノイド巻きのアンテナ用コイルの周波数−インダクタンス特性を各々示す図
【図5】図1に示すアンテナ用コイルおよび比較例としてのソレノイド巻きのアンテナ用コイルの周囲温度−インダクタンス変化率の関係を各々示すグラフ
【図6】従来技術によるアンテナ用コイルを示す概略図
【符号の説明】
10、110 アンテナ用コイル
12 巻芯
14、114 巻軸部
16A、16B、116A、116B 鍔部
18、118A、118B 導線
20、120 コイル部
30 コンデンサ
100 受信制御手段
200 スイッチ

Claims (3)

  1. 2つの鍔部と巻軸部が設けられた磁性材料からなる巻芯と、該巻芯の該2つの鍔部間において、該巻芯の該巻軸部に巻回された複数層の導線からなるコイル部とを備えたアンテナ用コイルにおいて、
    該コイル部は、一方の鍔部側から前記導線を1層づつ重ねながら、内側から外側に向かうに従って該一方の鍔部側に傾くように、または外側から内側に向かうに従って他方の鍔部側へ傾くように巻回し、この巻回操作を前記巻芯の該他方の鍔部側にずらしながら行なうようにして形成されるバンク巻きとするとともに、
    前記巻芯はフェライトにより形成され、かつ
    前記コイル部は、前記巻芯に直接巻回されていることを特徴とするアンテナ用コイル。
  2. 前記2つの鍔部は、前記巻芯の両端に形成されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ用コイル。
  3. 前記コイル部の巻回操作は、内側から外側に向けて前記導線を巻回する操作と、外側から内側に向けて前記導線を巻回する操作を交互に繰り返しながら前記巻芯の長手方向に移動していくことを特徴とする請求項1または2記載のアンテナ用コイル。
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