JP3918070B2 - 保温シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、体温を蓄熱して保温することにより、肩こり、腰痛、膝、肘の関節痛、筋肉痛、冷え症などの緩和、治療に用いる保温シートに関するもので、さらに詳しくは、薬剤による皮膚疾患を起こす危険性がなく、安全な温熱効果により患部を効果的に緩和、治療する健康維持に有効な保温シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
肩こり、腰痛、間接痛、筋肉痛などの治療には、一般的に患部を温め血管を拡張して血流を良くする温熱療法が行なわれている。その温熱療法が古くから行なわれている一つとして、タオルを蒸気で蒸し、その蒸しタオルを患部に当てることが行われている。この温熱療法は最も簡単な療法であるが、タオルを適温に蒸すのが難しく、高温になりすぎるため火傷を起こす危険性があった。
【0003】
また、別のものとして、通気性袋体内に、空気と化学的に反応することによって発熱する粉状の発熱剤を充填した袋体(いわゆる使い捨てカイロ)を外装収納袋に入れて患部に当てるものがある。これは、使用中に絶えず酸素を供給する必要があるため、袋体が衣服等によって密閉されないように留意しなければいけない煩わしさがある。
【0004】
さらに、他のものとして、温感刺激剤を配合したパップ剤がある。パップ剤は、一般にゼラチン、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子化合物と、グリセリン、プロピレングリコール等の保湿成分と、カオリン、チタン白等の賦形剤と、水が配合された基材に、唐辛子エキスや唐辛子粉末、ノニル酸ワニリルアミドなどの温感刺激剤を配合し、不織布等の支持体に展延したものである。
【0005】
このパップ剤の場合は、基材中に多量の水分が含まれているため、水の蒸発により貼付箇所が冷却されて、血行促進作用を阻害し、温めて治療する効果としては適していなかった。また、このハップ剤は肌に対する粘着力も弱く捲れたり、外れたりし易いため、固定用の補助テープなどを必要とした。
【0006】
そのため、空気や酸素と化学反応することによって発熱する発熱剤層と粘着剤を含む湿布剤層とからなる温熱湿布剤が提案されている。(例えば、特許文献1〜3参照)
【0007】
【特許文献1】
特開平1−297059号
【特許文献2】
特開平2−149772号
【特許文献3】
特開平3−173815号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の特許文献1〜3は、発熱剤層と粘着剤を含む湿布剤層とからなるものであり、湿布剤に配合されている温感刺激剤に対する感受性の個人差が大きいことから、人によっては刺激が強すぎて皮膚に合わず、発疹、発赤、かゆみ、かぶれ等の皮膚障害を生じることがあると共に、長時間使用すると低温火傷を生じることがあった。また、特に老人は皮膚が乾燥しており、同じ粘着剤でも若い人と較べると粘着力が強く発揮され、その結果、剥離時に痛みが強く感じることがあった。さらに、貼着していると化学剤特有の臭気を放ち敬遠されることが多かった。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決することを課題として開発されたもので、皮膚障害の原因となる薬剤を用いることなく、体温を逃がさないようにして保温するだけで安心して使用できると共に、特別な固定手段を必要とせず、患部に当てた時に、外れたり、ズレ動いたりすることのない利点を有する保温シートを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決し、その目的を達成する手段として、本発明では、疎水性で熱伝導率の低い合成繊維と極細繊維を引き揃えて添え糸編みされた編地を表生地とし、その表生地の表面を疎水性で熱伝導率の低い合成繊維とし、裏面を極細繊維として発泡体シートの上面と接着剤で部分的に接着すると共に、その発泡体シートの下面に繊維の断面が異形断面の極細繊維でタック編みされた裏生地を点接着で接合してなる保温シートを開発し、採用した。
【0011】
【実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明すれば、図1〜図2は本発明の第1実施の形態を示しており、この実施の形態で示す保温シート1は、表生地2と発泡体シート3と裏生地4を接着剤5で接合した3層構造で構成されている。
【0012】
上記の表生地2は、疎水性で熱伝導率の低い合成繊維と極細繊維を引き揃えて添え糸編みされた編地であり、肌当て側となる表に疎水性で熱伝導率の低い合成繊維2aを裏に極細繊維2bが配されている。
【0013】
疎水性で熱伝導率の低い合成繊維2aとしては、熱伝導率が6.1で公定水分率が0のポリプロピレンまたは熱伝導率が6.3で公定水分率が0のポリ塩化ビニルが好適である。また、極細繊維2bとしては、ポリエステル極細繊維やポリアミド極細繊維などの単独使用でもよく、両繊維2a,2bを引き揃えて添え糸編みされるのが適しているが、ポリエステル極細繊維とポリアミド極細繊維などの混用使用でも良い。
【0014】
疎水性で熱伝導率の低い合成繊維2aを肌当て側の表にするのは、保温シート1を患部に当てると皮膚温度が上がり発汗作用が生じた時に、疎水性で熱伝導率の低い合成繊維2aであるから、汗を吸収せず、汗は裏の極細繊維2bによって吸収されて移動することになり、肌当て面が汗による逆冷え現象を防ぐようになっている。
【0015】
中間層の発泡体シート3は、断熱効果を有する材料のものを用いるが、より高い蓄熱、保温効果が得られる空気層を含む発泡体組織の持つ合成樹脂発泡体シートがよく、中でも蓄熱、保温効果を考えると熱可塑性のポリエチレン発泡シート、ポリプロピレン発泡シートが適している。この場合、備長炭粉末を混入しているのを用いれば、汗等の臭気を吸着できるのでより好ましく、その備長炭粉末の混入量としては重量比で20%程度混入しているのが最適である。
【0016】
この発泡体シート3の厚さは、あまり厚くすると嵩張ってゴワゴワになり患部に当てた時に馴染みが悪いことから適さず、逆に薄くなると肌あたりが悪くなると共に、蓄熱、保温の効果がよくないことから、0.5〜2.0mmの範囲であり、好ましくは0.8〜1.5mmである。
【0017】
発泡体シート3の下面に配する裏生地4は、表生地2を患部に当てた時に主として下着と接することになり、滑らないように摩擦係数の高い極細繊維または超極細繊維によってタック編された編物地が適しているが織物地でも良い。極細繊維および超極細繊維は、繊維の断面が通常の丸い形と違い、鋭角断面の組み合わせなど異形断面になっていて、繊維の表面に凹凸をつくることから、摩擦係数が高くなり滑りを防止できる。
【0018】
前記のように構成された保温シート1は、表生地2、発泡体シート3、裏生地4の順に重ねて接合されるが、表生地2と発泡体シート3、発泡体シート3と裏生地4は、発泡体シート3の両面に部分的に塗着された接着剤5で接合一体化されており、表生地2と裏生地4が発泡体シート3に対して点接着されていることから、空気層ができ、この空気層により蓄熱、保温効果が得られる。
【0019】
上記のように構成された保温シート1は、例えば図3および図4に示すように、表生地2、発泡体シート3、裏生地4の4角をアール状に形成し、それぞれを図2で示したように接着剤5で接合して縁取りテープ6で縫着し、三者を一体とした小版の肩当パッド7として使用できる。また、図5に示すように、保温シート1の下側中央部に湾曲部8を形成して身体の曲面部に沿うようにした曲面当てパッド9として使用できる。さらに、図6に示すように、保温シート1の両側部に細幅の伸縮性ベルト10,10を取り付け、それぞれの端部に面ファスナー11,11を縫着して形成した腰部用当てパッド12として使用することができる。
【0020】
また、図7に示すように、縦に長い大きな長方形状にした保形シート1の裏面の4角に弾性を有するゴム状の帯体12を取り付け、その帯体12を敷き布団の上に載せ、帯体12を敷き布団に装着する敷きパッド13として使用できる。さらに、図8に示すように、保温シート1を筒状に形成して膝や肘に嵌めるサポーター14として使うこともできる。また、図9に示すように、前布14aと後布14bからなる肩覆い14として用いることができる。
【0021】
このように構成した本発明の使用例を作用効果と共に説明すれば、肩こりの緩和、治療の肩当パッド7として使用する時には、疎水性で熱伝導率の低い表生地2の合成繊維2a側を肌側に当てる。時間が経過すると発泡体シート3により体温が空気中に放出されるの防ぎ、前記した空気層に蓄熱・保温され皮膚の温度を上昇させ血管を拡張し、さらに循環を促進して新陳代謝の亢進を図り、そして筋緊張の低下が期待でき肩こりの緩和、治療ができる。
【0022】
この時、発泡体シート3は0.8〜1.5mmと薄く形成されているから、手や腕を動かして肩部が動いたとしても、その動きに応じて馴染み、当接感が良いものとなる。さらに、皮膚温度が上がり発汗が生じても、肌に当たる面が疎水性で熱伝導率の低い繊維2aで形成されているから、汗は吸収されずサラサラ状態を保持し、通り越した汗は裏側の極細繊維糸2bにより吸収移動され肌当て面は逆冷えする現象がおこらない。
【0023】
そして、肩に当てた肩当てパッド7は、裏生地4の繊維の断面が異形断面の極細繊維であり摩擦係数の高い生地であるから、下着の生地と接触すると滑ることがなく、当てた肩部の箇所からずれ落ちるようなことがない。
【0024】
(実施例1)
さらに、本発明の具体的実施例について述べる。120デニールのポリ塩化ビニル繊維2a(帝人(株)製 登録商標テビロン)を3本と、75デニール2本を合糸した3本のポリエステル極細繊維2bを引き揃えて、表にポリ塩化ビニル繊維2aを、裏にポリエステル極細繊維2bが現れるように添え糸編みで1m×25mの大きさの表生地2を編成した。
【0025】
一方、厚さ0.8mmのポリエチレン発泡シート3を表生地2と同じ大きさ1m×25mに形成し、そのポリエチレン発泡シート3の上面に部分的に合成ゴム系の接着剤5を塗着して表生地2と接合した。
【0026】
裏生地4は、75デニール2本を合糸した3本のポリエステル極細繊維をタック編みで裏生地とし、ポリエチレン発泡シート3の上面に部分的に合成ゴム系の接着剤5を塗着して裏生地4と接合した。表生地1と裏生地4がポリエチレン発泡シート3と点接着するのは1cm2当り2〜3箇所であり、その時に塗着される接着剤の塗布量は1箇所で0.1g程度である。
【0027】
上記実施例で得られた保温シート1を用いて、図9に示すような肩覆い14を形成し、それを着用した場合と、着用しない場合の患部の周辺体温を赤外線映像装置(日本アビオニックス(株)製 サーマルビデオシステム TVS−500)を用いて測定した。室温25℃で、肩覆い14を着用する前と、着用した5分後外した時点を測定した。
【0028】
試験結果の図10Aは着用した5分後外した直後の33℃以上の部分を斜線で示したもの。一方、図10Bは着用前の30℃以上の部分を斜線で示したもので、肩覆い14を使用した場合、温度の上昇範囲が拡大していることが分かる。
【0029】
以上、本発明の主要な実施の形態について説明したが、本発明は、これらの実施に限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明は薬剤を使用していないので、肌荒れなどの皮膚障害を発生することがない。また、発熱体を用いていないことから、火傷の心配をしなくてよく、体温を逃がさないようにするだけの適度な温度であるから、安全な温熱効果で患部を有効的に緩和、治療ができ健康維持を図れると共に、発汗しても肌当接面の表生地は吸水しないので、逆冷え現象を阻止でき蓄熱、保温を効果的に保持できる。さらに、特別な固定手段を必要とせず、そのまま患部に当てても極細繊維の断面が異形断面で凹凸が下着と接して滑ることがないので、滑ったりずれ落ちたりすることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の保温シートの斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】肩当パッドの正面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】曲部当てパッドの正面図である。
【図6】腰部用当てパッドの正面図である。
【図7】敷きパッドの背面図である。
【図8】サポーター用の側面図である。
【図9】肩覆いの正面図である。
【図10】比較例の試験結果図である。
【符号の説明】
1 保温シート
2 表生地
2a 疎水性で熱伝導率の低い合成繊維
2b 極細繊維
3 発泡体シート
4 裏生地
5 接着剤
Claims (1)
- 疎水性で熱伝導率の低い合成繊維と極細繊維を引き揃えて添え糸編みされた編地を表生地とし、その表生地の表面を疎水性で熱伝導率の低い合成繊維とし、裏面を極細繊維として発泡体シートの上面と接着剤で部分的に接着すると共に、その発泡体シートの下面に繊維の断面が異形断面の極細繊維でタック編みされた裏生地を点接着で接合してなる保温シート。
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