JP3917074B2 - 腹腔内圧を測定するための装置 - Google Patents

Description

【０００１】
（発明の背景）
本発明は、人体の腹腔内の圧または腹腔内に含まれる中空の粘着性器官内の圧の測定に有用な装置および方法に関する。詳細には本発明は、リザ−バの中に集められた患者自身の体液を利用して腹腔内圧を測定する装置および方法に関する。
【０００２】
腹腔内（または内臓内）圧の測定は、非常に重篤な患者または大手術を受けている患者の臨床管理で日常的に実施されている。一般には膀胱が好ましい圧測定部位であるが、胃など他の中空器官を使用することもできる。
【０００３】
膀胱圧は現在、膀胱の内容物を排液容器へ移す患者の導尿カテーテル（フォーリー・カテーテル）に圧記録装置を接続することによって測定されている。従来技術の方法では、排液容器の管をクランプで閉じ、カテーテルの試料採取口に挿入した針によって無菌食塩水５０ｃｃを注射器から膀胱に注入する。注入後、恥骨（恥骨結合）の高さをゼロ圧基準として使用して膀胱内の圧を記録する。この方法は時間がかかると同時に、食塩水供給源を挿入するときの針の導入によって、閉じた無菌管が汚染される可能性があるので膀胱感染の危険性がある。
【０００４】
（発明の概要）
本発明は、患者の腹腔内圧を決定するための方法および装置に関する。詳細には本発明は、貯蔵された患者自身の体液を利用して患者の腹腔内圧を決定する装置および方法に関する。
【０００５】
本発明の第１の実施形態では、圧測定装置が、患者に挿入された導尿カテーテルと導尿カテーテルを通して患者から抜き取られた尿収集容器との間に配置された体液リザーバを含む。リザーバは、所定の量の尿をリザーバに貯蔵する所定の内容積を有する。リザーバの中の出口開口によって、過剰な尿を収集チャンバに排出することができる。リザーバは、ゼロ・マークを含む一連のインジケータ・マークを有する圧力計管によって、導尿カテーテルに接続される。
【０００６】
圧決定の間、リザーバは、圧力計管のゼロ・マークが、患者の恥骨と概ね同じ高さになる患者よりも高い測定高さまで持ち上げられる。リザーバの頂部のフィルタ付きの空気口は、リザーバの内部に大気圧を提供する。リザーバを測定高さまで持ち上げると、リザーバの中の患者自身の尿が、圧力計管および導尿カテーテルを通して患者の膀胱へ流れる。圧力計管のゼロ・マークが恥骨と同じ高さになるようにリザーバを持ち上げると、圧力計管の中に含まれる液柱の高さが、患者の腹腔内圧を直接的に指示する。
【０００７】
あるいは、リザーバと導尿カテーテルの間に延びる圧力計管の代わりに、リザーバと導尿カテーテルの間に延びるマークのない単純な透明入口管を使用することもできる。一連のインジケータ・マークを含む測定テープがリザーバの底に取り付けられ、測定テープの反対端は患者のベッドに固定される。測定テープの長さは、測定テープのゼロ・マークが、仰臥位をとった患者の恥骨の高さに一致するように固定される。したがってリザーバの測定高さは測定テープの長さによって決定される。リザーバがその規定の測定高さにあるときに、透明入口管の中の液柱の高さが、測定テープのインジケータ線に沿って測定される。液柱の高さは、患者の腹腔内圧を直接的に指示する。
【０００８】
本発明の第２の実施形態では、リザーバが、鼻腔胃管と患者の胃から体液を抜き取るのに使用する吸引供給源の間に配置される。通常の排出状況の間、リザーバは、吸引によって患者の胃から体液を抜き取ることができる倒立位置に置かれる。リザーバが倒立位置にあるときにはリザーバの中の球がリザーバへの空気口を閉じる。
【０００９】
鼻腔胃管を通した患者の腹腔内圧の測定は、まず最初にリザーバを正立位置に置くことによって実行される。正立位置では、リザーバの中の球が、吸引供給源へ至る出口開口を閉じて、患者の貯蔵された胃液が吸引管を通してリザーバから流出するのを防ぎ、一方で、フィルタ付きの空気口を通して空気がリザーバに入ることを可能にする。次いで、さきに説明した方法でリザーバを持ち上げて、患者自身の胃液が患者の胃へ流れるようにする。圧力計管の中の貯蔵された胃液の高さが、患者の腹腔内圧を直接的に指示する。
【００１０】
本発明の他のさまざまな特徴、目的および利点は、図面を参照して以下の説明を読めば明白となろう。
図面には、現時点で企図される発明実施の最良の形態が示されている。
【００１１】
（発明の詳細な説明）
まず最初に図１を参照すると、手術後環境にいる患者１２に対して使用される本発明の腹腔内圧測定装置１０が示されている。図１に示すように患者１２は仰臥位をとり、患者の膀胱１６の内容物を収集容器１８に排出する導尿カテーテル（フォーリー・カテーテル）１４などのカテーテルが配置される。
【００１２】
次に図２を参照する。本発明の圧測定装置１０は、導尿カテーテル１４と収集容器１８の間に配置されたリザーバ２０を含む。リザーバ２０は、患者の膀胱１６よりも低い位置に配置され、圧力計管２４の第１の端部を受け取る入口開口２２を含む。圧力計管２４は、後に詳述する圧測定プロセスで利用される一連の測定マークを含む透明な入口管である。本発明の好ましい実施形態では測定マークが、ｃｍＨ_２ＯまたはｍｍＨｇを単位として目盛られる。圧力計管２４は、導尿カテーテル１４に形成された漏斗形コネクタ２８の中に受け取られて圧力計管２４と導尿カテーテル１４の間に液体連絡を提供するコネクタ２６を含む。
【００１３】
本発明の圧測定装置１０が図２に示した排出位置にあるとき、膀胱１６からの尿はリザーバ２０を満たし、リザーバ２０の中に配置された内管３４の上端近くに形成された出口開口３０を通して溢れ出る。内管３４は、収集容器１８に結合された排液管３２を受け取る漏斗形コネクタ３３を含む。したがって、過剰の尿はリザーバ３０（２０）から収集容器１８に排出され、リザーバ２０は一定容積に維持される。
【００１４】
リザーバ２０は、リザーバ２０の内部を大気に連絡する空気口３６を含む。具体的にはリザーバ２０内を大気圧に保ち、同時に汚染を防止するため空気口３６は疎水性フィルタを含み、リザーバの頂部に配置されて、無菌空気がリザーバの中に入ることができるようにする。
【００１５】
次に図３を参照すると、持ち上げられたその測定位置にある本発明の腹腔内圧測定装置１０が示されている。この測定位置では、装置１０を使用し、リザーバ２０の中に含まれる患者自身の尿を膀胱１６内へ戻すことによって、患者の腹腔内圧を決定することができる。
【００１６】
腹腔内圧の測定は、リザーバ２０を患者よりも高く、圧力計管２４のゼロ・マーク３８が、仰臥位をとった患者１２の恥骨を貫いて延びる水平軸と概ね同じ高さになるまで持ち上げることによって実施する。リザーバを測定高さまで持ち上げると、重力によって、所定量の尿が患者の膀胱へ流れる。
【００１７】
リザーバ２０を持ち上げると、圧力計管２４の中の尿の高さは、ゼロ・マーク３８よりも高い、患者の膀胱１６の内圧を指示する高さに達する。図３では、尿の高さが線４０で指示されている。図３に示した位置までリザーバ２０を持ち上げると、リザーバ２０の中に貯蔵されていた尿が、カテーテル１４および圧力計管２４を通して患者の膀胱１６へと流れる。尿の比重は１．０に極めて近いので、膀胱圧は、ゼロ・マークよりも上の圧力計管２４内に含まれる尿の高さに等しい。繰り返しになるが、ゼロ・マーク３０（３８）は患者１２の恥骨、したがって膀胱１６を貫いて延びる水平軸と同じ高さに配置される。
【００１８】
本発明の好ましい実施形態では、圧力計管２４が、ｃｍＨ_２ＯまたはｍｍＨｇを単位として目盛られた印刷されたマークを含む。空気口３６は、圧力計管２４が膀胱１６の内圧の正確な測定を提供するよう、リザーバ２０内の圧を大気圧に保つ。
【００１９】
図３から分かるように、内管３４の出口開口３０はリザーバ２０の頂部近くに配置される。この出口開口３０の位置が、リザーバ２０を持ち上げたときに、リザーバ２０内の体液が排液管３２を通して収集容器１８中に排出されることを防ぐ。さらに、出口開口３０は、リザーバ２０が図２に示す排出位置にあるときのリザーバ２０の容積が既知であるように配置される。本発明の好ましい実施形態では、リザーバ２０が５０ｃｃの固定容積を有するが、５〜１００ｃｃの範囲が企図される。リザーバ２０の容積が既知であることによって、患者の膀胱１６の内圧に関して再現可能な決定を実施することができる。
【００２０】
次に、図４および５を参照すると、本発明の第１の実施形態の代替構成が示されている。図４および５に示した構成ではリザーバ２０の入口２２が、図２〜３に示した予めマークされた圧力計管２４によってではなく、透明な入口管４４によって導尿カテーテルに接続されている。図４に示した本発明の実施形態では、測定テープ４６の一端がリザーバ２０に取り付けられている。リザーバ２０とベッド・レール４８の間の測定テープ４６の長さを固定するため、測定テープ４６の反対端は、患者のベッドのベッド・レール４８または他の構成要素に結びつけられ、または他の方法で固定される。
【００２１】
図５に示すようにリザーバ２０を、持ち上げられたその測定位置まで移動させると、測定テープ４６の長さがリザーバ２０の上方への動きを制限し、測定高さを規定する。ベッド・レールに固定する前に測定テープ４６の長さを、ゼロ・マーク５０が、破線５２で示された患者の恥骨を貫いて延びる水平軸と同じ高さになるように調整する。
【００２２】
図２および３の第１の実施形態のケースと同様に、測定テープ４６上のマークによって入口管４４内の体液の高さ５４を測定して、患者の腹腔内圧を決定することができる。
【００２３】
図１〜５に示した本発明の第１の実施形態では、リザーバ２０は、腹腔内圧の測定中に患者の膀胱へ戻す患者の尿を貯蔵する内容積を有する別個の構成要素として示され、説明される。しかし、発明者は、直径を大きくした入口管の一区間をリザーバ２０の代わりに使用してもいいと考えている。直径を広げた入口管の区間は、腹腔内圧の測定中に患者に戻される一定量の尿、例えば５〜１０ｃｃを貯蔵するのに十分な大きさのものとする。腹腔内圧の測定中に入口管の内部が大気と連絡するよう、この入口管の拡張区間は空気口を含む。
【００２４】
次に図６〜８を参照すると、患者の胃の内圧を使用して腹腔内圧を測定するのに特に有用な本発明の第２の実施形態が示されている。図６から分かるように、圧測定装置５２は、鼻腔を通して患者の胃に入る鼻腔胃管５６のようなカテーテルに接続される。本発明の第１の実施形態に示した導尿カテーテルとは異なり、患者の胃からの体液は一般に吸引装置５８によって抜き取られる。吸引装置５８は患者の胃から体液を抜き取り、抜き取られた体液は収集容器６０に貯蔵される。
【００２５】
次に図７を参照すると、リザーバ６２の第２の実施形態が示されている。図７には、倒立した排出位置にあるリザーバ６２が示されている。この位置では、吸引管６４を通してリザーバ６２の開いた内部に陰圧空気源が供給される。この吸引源は、リザーバ６２の中に形成された内管６８に含まれる開口６６を通して作用する。図７に示すとおり、吸引供給源が鼻腔胃管５６を通して胃液を抜き取ることができるように、球７０が空気口７２に至る開口を閉鎖している。
【００２６】
本発明の第２の実施形態では、吸引管６４を通して生じる吸引がリザーバ６２の内容積を小さくしないように、リザーバ６２が堅い壁から形成される。このようにしてリザーバ６２は、吸引装置を適切に操作して患者の胃から体液を抜き取ることを可能にする。
【００２７】
次に図８を参照すると、持ち上げられたその測定位置にあるリザーバ６２が示されている。図７と８を比較することによって理解されるように、リザーバ６２は、図７に示した倒立位置から図８の正立位置に動かされる。
【００２８】
図８に示すようにリザーバ６２を正立位置にし、患者よりも高く持ち上げると、リザーバの中の体液が圧力計管７４を通して鼻腔胃管５６に排出される。図２および３に示した第１の実施形態のケースと同様に、リザーバ６２に含まれる体液は患者の胃へと流れ戻る。リザーバ６２を、圧力計管７４のゼロ・マークが患者の恥骨と概ね同じ高さになるまで持ち上げる。リザーバ６２をこのように配置すると、圧力計管７４内に残っている体液の高さを、圧力計管７４の表面に含まれる外部マークによって測定することができる。このようにして患者の腹腔内圧を、圧力計管７４の中に含まれる体液の高さによって測定することができる。さきに述べたとおり、リザーバ６２の好ましい容積は約５０ｃｃである。
【００２９】
リザーバ６２を図８に示す正立位置に置くと、球７０が落下して吸引管６４に至る開口を塞ぐ。このように球７０は、リザーバ６２に含まれる体液の全量が圧力計管７４に入ることを保証する。空気口７２がリザーバ６２の内部を大気圧に保つことができるように、内管６８の頂部近くに第２の開口７６が形成されている。
【００３０】
再び図７を参照して、球７０はまた陰圧調整器の役目も果たす。例えば、リザーバ６２が体液を含むか否かに関わらず、球７０の重みによって空気口７２は閉じ、それによって患者の胃に吸引を適用することができる。リザーバ内の陰圧が、空気口７２から球を物理的に離昇させるのに十分であるとき、球７０は、空気口７２に至る座から離昇し、これによってリザーバに空気が入り、したがって陰圧が所定のレベルに維持される。このように球７０の重量は、大きな陰圧が患者の胃にかかるのを防ぐ陰圧調整器の役目を果たす。
【００３１】
患者の腹腔内圧の迅速かつ容易な測定を可能にする他に、本発明の圧測定装置を使用して、排液カテーテルの開通をチェックすることもできる。現在、導尿カテーテルを長時間にわたって患者に挿入すると、カテーテル先端の排液穴またはルーメンに蓄積した体生成沈積物によってカテーテルが部分的または完全に塞がれる可能性がある。この現象は「インクラステーション（ｉｎｃｒｕｓｔａｔｉｏｎ）」と呼ばれている。
【００３２】
本発明の圧測定装置を持ち上げられたその測定高さまで移動させると、リザーバの内容物が膀胱へ移動する速度によって、部分的または完全に塞がったカテーテルを「診断」することができる。例えば、リザーバの内容物が膀胱へ極めてゆっくりと移動していくことは、カテーテルが塞がっていること、または部分的に塞がっていることを指示し、このようなカテーテルは交換しなければならない。しかし、リザーバの内容物が膀胱へ速やかに排出される場合、カテーテルが正常に機能していることを指示している。患者自身の尿が膀胱へ戻されるので、カテーテルのインクラステーションのチェックを迅速かつ容易に実施することができ、さらなる感染の危険性がほとんどまたは全くない。
【００３３】
さまざまな代替物および実施形態が、本発明と認められる対象を具体的に指摘し明確に記載した上記請求項の範囲に含まれると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の腹腔内圧測定装置を示す図である。
【図２】 本発明の腹腔内圧測定装置の拡大図である。
【図３】 圧測定位置にある腹腔内圧測定装置を示す図である。
【図４】 本発明の腹腔内圧測定装置の代替構成を示す図である。
【図５】 圧測定位置にある本発明の前記代替構成を示す図である。
【図６】 経鼻胃管とともに使用される、本発明の腹腔内圧測定装置の第２の実施形態を示す図である。
【図７】 倒立した非作動位置にある、腹腔内圧測定装置の第２の実施形態を示す図である。
【図８】 正立した圧測定位置にある、腹腔内圧測定装置の第２の実施形態を示す図である。

Claims (9)

1. 患者から収集容器へ体液を排出するカテーテルを有する患者の腹腔内圧を決定する装置であって、
   患者からの多量の体液を収容するためのリザーバ、
   リザーバをカテーテルに接続する透明な入口管であって、患者とリザーバの間を体液が流れるようにする入口管、
   リザーバを収集容器に接続する排液管であって、リザーバの体液がその中へ溢れる排液管、
   開口位置にあるときにリザーバの内部が大気圧に連絡されるようにリザーバの中に形成された空気口、
   入口管に連合した測定高さインジケータであって、腹腔内圧の決定に使用される患者より高いリザーバの測定高さを決定する測定高さインジケータ、および
   入口管に連合した液位インジケータであって、リザーバが測定高さにあるときに入口管の中の液体の高さを指示する液位インジケータ、
   を備えた装置。
2. 液位インジケータが、透明な入口管に形成され、患者の腹腔内圧を表すために相互に間隔を置いて配置された一連のマークである、請求項１に記載の装置。
3. 液位インジケータが、リザーバに固定された第１の端部および患者に対して固定された第２の端部を有する測定テープであり、測定テープが一連のマークを含み、リザーバが測定高さにあるときに、測定テープのマークが透明な入口管の近くに配置される、請求項１に記載の装置。
4. 測定高さインジケータが、入口管に印刷されたゼロ・マークであり、ゼロ・インジケータが患者を貫いて延びる水平軸と同じ高さにあるときに測定高さに到達する、請求項１に記載の装置。
5. 測定高さインジケータが、測定テープに印刷されたゼロ・マークであり、ゼロ・マークが患者を貫いて延びる水平軸と同じ高さにあるときに測定高さに到達する、請求項３に記載の装置。
6. リザーバが正立位置にあるときに排液管を通して体液が流れるのを防ぐように配置された閉鎖装置をさらに備えた、請求項１に記載の装置。
7. リザーバが倒立位置にあるときに閉鎖装置が空気口を塞ぐ、請求項６に記載の装置。
8. リザーバの中の体液が所定の測定容積に達するとすぐに、リザーバへ流入する追加の体液が出口を通してリザーバから溢れ出るようにリザーバの出口が配置され、それによってリザーバが一定の測定容積に保たれる、請求項１に記載の装置。
9. 空気口が、リザーバの中の体液の汚染を防ぐフィルタを含む、請求項１に記載の装置。

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