JP3916365B2 - 超音波探触子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波によって被検体内を画像として抽出する超音波撮像装置に用いられる超音波探触子に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波撮像装置、例えば医療画像診断に用いられる超音波診断装置は、超音波パルス反射法を用いて生体の軟部組織の断層像や生体内を流れる血流像等をほぼリアルタイムでモニタに画像表示して観察でき、また、放射線を用いる画像診断装置のような放射線被爆を被検体に与えないことから安全性も高いとされ、更に小型で安価なことも加わり、広く医療の分野で用いられている。超音波診断装置では、被検体内への超音波の送信と被検体内からのエコー信号の受信のために超音波探触子を用いる。
【0003】
超音波診断装置の走査方式の一つに電子走査方式がある。電子走査型の装置では細長い棒状の振動子を配列し、各振動子に所定の遅延時間を与えて駆動する。これにより探触子から被検体内の所定の深度、方向に収束する超音波ビームを送信する。受波は各振動子からの受波信号にそれそれ所定の遅延時間を与えて合成することで、所定の深度、方向からの受波信号を捕らえることが可能となる。この収束点を被検体内で走査することで、超音波画像データが得られる。この走査により良好な超音波画像を得るには、超音波ビームの走査範囲全域にわたり、指向性の優れた超音波ビームを形成することが必要になる。
【0004】
超音波ビームの形成方法としては、指向性をもった素子を単体もしくは複数で用いる方法と、波長の半分以下の素子間隔を持つ点音源と見なせるような振動子を複数配列し、各振動子に異なる位相の信号を送ってビームを形成する方法とがある。後者の方法で波長の半分以下の素子間隔にするのは、素子間隔が波長の半分より大きいと回折効果によりグレーティングローブが生じることで所定の焦点以外にビームの副極ができるので、それを避けるためである。
【0005】
この2つの方法で前者の方法は、焦点位置を走査するときにきれいなビームを作れる位置とそうでない位置が出来るので、電子走査型の探触子には不適である。特に近年、微細加工技術の進歩や均質な圧電素子、整合層、背面吸音材が作れるようになって以来、素子ピッチを波長の半分以下で作り整合層を切り離すことで各振動子が無指向な点音源として振る舞うような超音波探触子を作ることで高精細な診断画像が得られるようになった。よって超音波探触子において指向性のよい超音波ビームを形成するには、理想的な点音源に近い音源として振る舞う振動子を幅が波長の半分以下で並べることが必要となる。
【0006】
次に、振動子の配列方法に関して述べる。振動子の配列方法には、直線に並べる方法と円弧状に並べる方法とがある。円弧状に並べた場合、所定の照射焦点は必ずその照射焦点に対応する送波口径の中心に位置する素子の正面にくることなり、送波口径の両端に位置する素子は中心に位置する素子からみて対称な位置にくることになり遅延時間は両端で等しくなる。このため直線配列の場合に比べ遅延時間の最大値が小さくて済む。更には円弧状配列の場合、被検体に押し付ける形になるので、被検体との接触性がよいという利点もある。
【0007】
配列方法に関しては直線か円弧状かという選択に加え、次元の選択性もある。従来の探触子は、振動子を1次元に並べ2次元画像を撮像するものであった。最近の研究ではウルトラソニックイメージング20巻(1998)第1項より第15項(Ultrasonic Imaging)に見られるように、2次元に配列する方法などが試みられている。探触子を2次元に並べると3次元画像が撮像可能となるので、超音波診断装置の有用性が飛躍的に向上する。3次元画像データがあれば、そこから任意の2次元断面を取り出すことも可能となるし、3次元画像で診断しないと形を把握することができないことも多い。また超音波治療の照準とする場合やカテーテルを入れていくようなときなどにも有用である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように非常に有用な2次元探触子であるが、未だに1次元探触子に取って代わっていないのには幾つか理由がある。それは大きくわけると3つあり、素子数、フレームレート、製造方法である。素子数の問題とは、画質を1次元探触子の場合と遜色ないものとするには1次元探触子での素子数に比べ2次元探触子では素子数が多くなりすぎるという問題である。代表的な例では1次元探触子で192素子であるから、そのまま2次元探触子を作ると36864素子が必要になる。このように素子数が多くなると整相回路など受波信号の後処理部分が大規模かつ複雑になり、処理が非常に複雑になるのと装置大きくなり実用的でなくなる問題がある。
【0009】
2つめはフレームレートが遅くなる問題である。これは走査すべき空間の次元が一つ増えるためである。そして3番目の問題は製造上の問題である。これは、1次元の円弧状配列型探触子の長所をそのまま持った2次元円弧状配列型探触子を作成するときに特に大きな問題となる。現在の1次元円弧状配列型探触子は柔らかい平板の上で振動子を切り、それからその平板を曲げることで扇形にしているが、2次元の場合には2方向に円弧状配列にすることは非常に難しくなる。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、2方向円弧状配列などの自由な曲面を持った超音波探触子を作製する上で性能を大きく低下させることなく、容易に作製可能な構造をもつ超音波探触子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、探触子の各振動子を、図1の模式的断面図に示すように円弧状の包絡線に内接し、かつ各素子が音響整合層の付いた側の方向(図中のz方向)を向くように配置する。このとき各振動子はz方向の前後を音響整合層と背面吸音材で挟まれ、z方向に直交するxもしくはy方向の4側面のうち少なくとも1つの側面に電極の取り出し接点、その配線、及びこれらを包むように側面吸音材が貼り付けられている。以後、これを振動子ブロックと呼ぶ。この配置が今まで使われてこなかったのは、この配置にすると各素子が点音源とみなせるようには振る舞わないため奇麗なビームを作ることが出来なかったからである。
【0011】
発明者らは、この段差のある円弧状配列型探触子の送波音圧の空間分布、及びこの探触子の各部分における振動モードをシミュレーションで解析した結果、各振動子ブロックが包絡面と接する角部からの音波の放射がビーム形成に問題となることが分かった。そこで、構造及び材料を変えてシミュレーションを繰り返したところ、振動子ブロック間の側面吸音材が超音波をある程度以上に吸収する材料であれば包絡面と接する角部からの放射が抑えられ、その結果、送波音圧の空間分布が各振動子を点音源と見なした場合と同じになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明による超音波探触子は、振動子の両端を音響整合層と背面吸音材とで挟んでなる振動子ブロックが音響整合層側を外側に向けて複数配列され少なくとも一方の側面に側面吸音材が設けられた板状の振動子ブロック列板を複数枚重ね合わせて構成された超音波探触子であって、各振動子ブロック列板中において各振動子ブロックは放射状に配列され、複数の振動子ブロック列板は音響整合層側を所定の曲面に内接させて配置されており、振動子ブロック列板の板面に垂直な方向には段差があり、振動子ブロック列板の板面方向には段差無く曲面を形成していることを特徴とする。
【0013】
振動子ブロック列板は、前記曲面と接する側の側面に側面吸音材が設けられており、各振動子ブロックは、前記曲面と接する角部における音の振幅が振動子ブロック表面の音の振幅に比べて、角から放射する音により振動子ブロック表面から放射する音の波面が影響を受けない程度に小さい。
【0014】
本発明による超音波探触子は、また、振動子の両端を音響整合層と背面吸音材とで挟んでなり少なくとも2側面に側面吸音材が設けられた振動子ブロックを音響整合層側を外側に向けて2次元的に複数配列した超音波探触子であって、各振動子ブロックは音響整合層側が所定の曲面に内接するように軸方向に平行移動した関係にて配置されており、振動子ブロックの軸方向と直交する2方向に段差を有することを特徴とする。
【0015】
各振動子ブロックは、前記曲面に接する側面に側面吸音材が設けられており、前記曲面と接する角部における音の振幅が振動子ブロック表面の音の振幅に比べて、角から放射する音により振動子ブロック表面から放射する音の波面が影響を受けない程度に小さい。
側面吸音材は、ポリウレタン樹脂等の樹脂とマイクロバルーンとの混合物とすることができる。
【0016】
また、前記所定の曲面は振動子ブロックが配列している1つの平面及び当該平面に直交し振動子ブロックの軸を含む他の平面で切断した場合に、それぞれ異なる曲率を持つ円弧状となる曲面とすることができる。もしくは、前記所定の曲面は前記振動子ブロックが配列している1つの平面及び当該平面に直交し振動子ブロックの軸を含む他の平面で切断した場合に、互いに等しい曲率を持つ円弧状となる曲面とすることができる。
【0017】
本発明によれば、素子間の側面吸音材を工夫することで各素子が探触子曲面の法線方向に向いている必要があるという制約をとくことが可能となり、任意の曲面を持った超音波探触子を診断画像の画質を落とすことなく簡単に作製することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、以下では具体的数値例を示して説明するが、これは発明の理解を容易にするための例示であり、本発明がこれらの数値に限定されることを意味するものではない。
【0019】
図1は、本発明による超音波探触子の一例の断面模式図であり、特に振動子部分を拡大して示した断面模式図である。背面吸音材1は、バリウムフェライトの粉末をゴムに混入して固めたものである。電気信号を超音波に変換する部分はPZT圧電材料で作られており、背面吸音材1の上に接着剤を用いて固着されている。このPZT圧電材料2は中心周波数3.5MHzであり、素子ピッチは0.38mmである。PZT圧電材料2の側面には側面電極及びフレキシブル基板3が設けられており、このフレキシブル基板を通って送波電気信号、受波電気信号が超音波診断装置本体(図示せず)と超音波探触子間を行き来する。PZT圧電材料2の背面吸音材1と反対側には、超音波振動子2の音圧を効率的に生体中に放射するための第1、第2音響整合層4,5が配置されている。第1音響整合層4は例えばタングステン粉末を混入したエポキシ系樹脂の成形材からなり、第2音響整合層5は例えばポリウレタン系樹脂の成形材からなる。これらの音響整合層は公知のように、各々の材質の超音波伝播速度から決まる波長の1/4の厚みで形成されている。第1音響整合層4の音響インピーダンスは生体の音響インピーダンスとPZT圧電材料2の音響インピーダンスの幾何平均程度であり、第2音響整合層5の音響インピーダンスは第1音響整合層4の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスの幾何平均程度である。
【0020】
図1には音響整合層を2層音響整合層で構成した例を示したが、既に公知なように1層音響整合層を用いることも可能である。その場合の音響整合層材料は、例えばタングステン粉末とエポキシ系樹脂を混ぜ、音響インピーダンスがPZT圧電材料2の音響インピーダンスと、生体の音響インピーダンスの幾何平均程度になるように調整されたものを用いることが望ましい。厚さは2層の場合と同様に波長の1/4程度の厚みとする。以下、音響整合層が2層からなる例によって本発明を説明するが、本発明は音響整合層が1層音響整合層である場合にも同様に適用される。
【0021】
図2及び図3は、図1に断面を示した2次元探触子(長軸段差なし、短軸段差有り)の作製工程の一例を示す図である。図示した工程のうち工程(a)〜(d)までは、1次元探触子の厚さDが薄いことと、PZT圧電材料が図の厚さD方向及び幅W方向に直交する方向に5層重ねてあることを除くと、従来の1次元円弧状配列形探触子の製造工程とほぼ同じである。厚さDに関しては、従来の1次元探触子では9mmから12mm程度であるのに対して、本発明では厚さ220μmで作製する。PZT圧電材料を5層にしてあるのは、2次元配列にすることで、各チャネルの断面積が小さくなって、電気インピーダンスと静電容量が小さくなった分を補うためである。PZTなどの圧電体は、一度キュリー点より高温で電界を印加し、セラミック内の分極方向を揃え、その後室温に冷却することで、圧電性をフルにいかして使うことが出来るようになる。積層の振動子を作る場合、図12に示すように、分極方向を上下、交互に並べる。そうすることで、電圧を正負交互にかけると、分極方向と電圧の積の符号が常に一定になり、積層振動子として使用できるようになる。
【0022】
次に、作製工程を順に説明する。まず工程(a)では、厚さD=220μmにスライスした背面吸音材のシート1と、共振周波数の厚さの5層PZT圧電材料2、それぞれ4分の1波長の長さの第1、第2音響整合層4及び5を接着剤で接合する。全体の幅Wは、各素子幅330μmと刻みしろ50μmの合計380μmに、チャンネル数192を掛けた72.96mmとした。次に工程(b)で、380μmおきに幅50μmの刃で、吸音材シート1の一端を残してPZT圧電材料2、第1、第2音響整合層4及び5に切り込みを入れ、各チャネル毎に切断する。工程(c)では、これを外側R40mmの枠9a,9bで固定し、チャネル間の隙間にポリウレタン樹脂を流しこむ。こうして振動子ブロック列板がR40mmに固定されたら、続く工程(d)でPZT圧電材料2の積層境界面の電極に合わせて側面フレキシブル基板3をはんだ付けする。
【0023】
この工程(d)では、薄い振動子ブロック列板の側面にフレキシブル基板をつける際に、反対側の面にもダミーのフレキシブル基板をつけるようにしてもよい。そうすることで、各振動子ブロック列板の振動の対称性を良くすることが出来る。積層にしている場合電極は正負交互に並んでいることから、片側にのみ配線すると、一つのフレキシブル基板で、その両極に配線をつなぐ必要があった。しかるに2側面で電極と配線をつなぐ場合、片方の側面では、正の電極だけに配線をつなぎ、反対の側面には負の電極だけを配線につなぐことで、側面フレキシブル基板の形状が単純化することも可能である。
【0024】
次に、図3に示す工程(e)において、側面フレキシブル基板3をポリウレタン樹脂とマイクロバルーンの混合物からなる側面吸音材7で覆う。ここでのマイクロバルーンとは、直径がサブμmから数μmのサイズで中に空気の入った高分子製の粒子である。このマイクロバルーンを入れることで音響的に柔らかくなり、超音波吸収効率も向上する。側面吸音材7の厚さはフレキシブル基板3と合わせて厚さ160μmである。今回作製した2次元探触子はビームパターンの仕様からチャンネル数を192ch×92chにしたので、工程(e)までによって作製された振動子ブロック列板を92枚重ねて、工程(f)で外枠(長軸のR=40mm、短軸のR=25mm)を使い、外枠との隙間に充填材を充填することで、各1次元探触子配列の角部が包絡面6に接するように固定した。
【0025】
図4は、以上の製造工程(a)〜(f)を経て作製された2次元探触子における振動子ブロック列板の位置関係を略示する斜視図である。2次元探触子を構成する各振動子ブロック列板は、側面が平行になるように配置されている。また、振動子ブロック列板は、側面吸音材7の設けられた側面が振動子ブロックが包絡線に接する角部側に位置するようにして配置されている。側面吸音材7は、図3(e)に示すように振動子ブロックの送波面に至るまで設けられている。側面吸音材7の吸収係数は1MHzの超音波に対して100dB/cmである。
【0026】
この配置では2次元円弧状の包絡面に接する各1次元探触子配列の角の部分が尖っているため、そこから不要な超音波信号が発生すると考えられる。その場合、単一ピークをもつ超音波ビームを作らないので、超音波撮像には不適となる。しかし、この条件で振動モードをシミュレーションで計算したところ、角部分はほとんど振動していないことが判明した。
【0027】
図5に、本発明に用いた側面吸音材すなわち吸収係数の大きなポリウレタンとマイクロバルーンの混合物を用いて振動モードを解析した結果を示す。図には振動による変形の様子を強調して表示してある。電気パルスを加えたのは真中の素子1素子で、振動モードのうち3.5MHz成分を取り出し、位相が0度と180度の時の様子を図の上下に並べて示してある。図から振動子ブロック列板の列方向と直交する方向の段差の角にある側面吸音材の振動の振幅が、送波面の第一整合層の振動の振幅に比べ十分小さいことが分かる。一方、図6は、側面吸音材の材料を従来から用いられているポリウレタンに変更して同様のシミュレーションを行った結果を示している。この場合には、振動子ブロック列板の列方向と直交する方向の段差の角にある側面吸音材の振動の振幅が、送波面の第一整合層の振動の振幅に比べ十分大きいことが分かる。
【0028】
次に、図5の配置で送波音圧の空間分布を計算したところ、1素子の放射特性はほとんど点音源と同等であることが分かった。一方、従来の側面吸音材を用いた図6の配置で送波音圧の空間分布を計算すると、包絡面と振動子ブロックの接する角の部分の音圧振幅が大きく、この角部からの放射により波面は同心円とはならない。その結果、位相が180度ずれた部分が出来、このような振動子ブロックを並べて探触子を作るとビームパターンに副極が生じきれいな画像を得ることはできない。側面吸音材の吸収係数を変えて解析したところ1MHzにおける側面吸音材の吸収係数[dB/cm]×側面吸音材の厚さ[cm]が2dBを超えるあたりから波面がほぼ同心円になり、点音源として各振動子ブロックが振る舞うことが分かった。
【0029】
この様子をシミュレーション結果によって説明する。図7から図9は、水中でこの段差付き配列の超音波探触子の1つの振動子ブロックをパルス駆動して、一定時間経過後の水の波面を表示したものである。観察している断面は、図4(b)に示すように、2次元探触子の長軸の円弧の頂点で短軸と平行な向きに切った面である。各図の左下に示すように5つの振動子ブロックからなる段差配列の探触子の真ん中の素子に7.5MHzの単パルスを印加し、パルス印加後2.2マイクロ秒後の波面をシミュレーションした。7.5MHzパルスを用いたのは、観測周波数領域より高いこと。かつあまり高周波成分を用いると、有限要素法のセルサイズが必要以上に細かくする必要が生じ、時間コストが大きくなるためである。この周波数の妥当性は別途実験とシミュレーションの比較により確認済みである。なお図の濃淡が音圧の強さを表している。
【0030】
振動子ブロックの圧電材料は厚さ100μmのPZTセラミックスの層を5層に積層したもので、第1音響整合層は厚さ80μmのタングステン入りエポキシ樹脂、第2音響整合層は厚さ120μmのポリウレタン樹脂、背面吸音材はフェライト入りゴム、側面吸音材はマイクロバルーン入のポリウレタンである。振動子幅は250μm、側面吸音材の幅は130μmで、側面吸音材は背面吸音材の下部から第2音響整合層の上面に至るまでの側面につけてある。
【0031】
図7は、側面吸音材の吸収係数[dB/cm]×側面吸音材の厚さ[cm]が1dBのときの波面、図8は2dBのときの波面、図9は3dBのときの波面である。図7,図8,図9で、右上方向に向かう波面と正面に向かう波面とのずれが異なっているのが分かる。側面吸音材の吸収係数[dB/cm]×側面吸音材の厚さ[cm]を1dBとした図7では2つの波面の位相が180度ずれているが、3dBとした図9では2つの波面の位相のずれは問題とならない程度に抑えられている。
【0032】
以上の結果から、側面吸音材に吸収係数の十分大きな物質を用いることにより圧電材料+整合層+背面吸音材+配線+側面吸音材からなる振動子ブロックを配列した超音波探触子においては、必ずしも振動子ブロックの送波面が作製したい曲面の法線方向にむいている必要がないことが分かった。このように本発明によると、任意の曲面をもった超音波探触子を診断画像を損ねることなく簡単に作製可能である。
【0033】
図10は、本発明による2次元探触子の他の例を示す概略図である。この2次元探触子は、振動子ブロックを探触子の長軸方向、短軸方向共に平行に並べた構造を有する。
振動子ブロックは一つ一つを完全に切り離し、その2側面に側面吸音材をつけた構造を有する。図11は、1個の振動子ブロックを取り出して示した概略図である。底面のサイズは220μm×220μmであり、この底面に直交する方向に下から順に、厚さ0.5ミリのフェライト入りゴムからなる背面吸音材1、共振周波数に合わせた厚さの5層圧電材料2、波長の1/4の厚さの第1音響整合層4、波長の1/4の厚さの第2音響整合層5が積み上げられている。この1側面に配線用側面フレキシブル基板3と側面吸音材7を合計の厚さが130μmになるように貼ってある。隣の2側面のうち片方に側面吸音材のみを厚さ130μmで貼ってある。図中、11は電極である。
【0034】
2次元探触子は、図10に示すように、各振動子ブロックの送波面を平行に保って任意の包絡面6に内接させて作製される。このとき側面吸音材7の貼ってある2面が、包絡面6に接する側にくるように配置することで、角部からの放射の影響を押さえる。この2次元探触子は、前記した1次元探触子配列を積み重ねて構成した2次元探触子に比べ、角になる部分が増えるのでビーム特性としては好ましくないが、包絡面の形状に対する自由度は増える。また、角部の存在によるビーム特性の劣化は吸収係数の大きな側面吸音材7を用いることである程度防ぐことができる。このとき4側面にフレキシブル基板と側面吸音材をつけることで、振動の対称性をよくすることも可能である。また、このとき必ずしもダミーのフレキシブル基板を使わずに側面によって電極の正負を分けることも可能である。これら細かい振動子ブロックにわけて作製することは最近のチップマウント技術の進歩により可能になった。
【0035】
本発明は上記の実施の形態に限定されるものでなく、その技術思想の範囲を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。また側面吸音材の最適な吸収係数は、側面吸音材の材質及び圧電振動子の材質によって変化する。つまり振動子から側面吸音材に伝わる音の強度は振動子の音響インピーダンスと側面吸音材の音響インピーダンスの比によって決まる。よって側面吸音材もしくは振動子の圧電材料が変わり、その音響インピーダンスが変化すると、音の透過率が変わることになる。例えば、振動子から側面吸音材に伝わる音の強さが半分になれば、側面吸音材中で減衰させる必要がある量は半分でよくなるので、吸収係数も半分でよくなる。
【0036】
つまり本発明における本質は、側面吸音材の吸収係数そのものではなく、側面吸音材が包絡面に接する角部から放射する超音波の強さであるから、包絡面と振動子ブロックの接点における音圧の振幅に関する条件が変わらない範囲で吸収係数の最適値は側面吸音材の材質によって変わるものである。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、任意の曲面を持った超音波探触子を診断画像の画質を落とすことなく簡単に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による超音波探触子の一例の断面模式図。
【図2】図1に断面を示した探触子の作製工程の一例を示す図。
【図3】図1に断面を示した探触子の作製工程の一例を示す図。
【図4】段差配列型探触子の水中送波音圧分布のシミュレーションの説明図および2次元探触子(長軸段差なし、短軸段差有り)の見取り図。
【図5】2次元探触子の角部の振動を表すシミュレーション結果の図。
【図6】2次元探触子の角部の振動を表すシミュレーション結果の図。
【図7】段差配列型探触子の水中送波音圧分布のシミュレーション結果の図。
【図8】段差配列型探触子の水中送波音圧分布のシミュレーション結果の図。
【図9】段差配列型探触子の水中送波音圧分布のシミュレーション結果の図。
【図10】2次元探触子(短軸、長軸ともに段差有り)の見取り図。
【図11】1個の振動子ブロックを取り出して示した概略図。
【図12】積層振動子の説明図。
【符号の説明】
1…背面吸音材
2…圧電材料
3…配線
4…第1音響整合層
5…第2音響整合層
6…包絡線もしくは包絡面
7…側面吸音材
8…振動子ブロック
9a,9b…アルミニウム製の固定用枠型
10…ポリウレタン
11…電極

Claims (6)

  1. 振動子の両端を音響整合層と背面吸音材とで挟んでなる振動子ブロックが前記音響整合層側を外側に向けて複数配列され少なくとも一方の側面に側面吸音材が設けられた板状の振動子ブロック列板を複数枚重ね合わせて構成された超音波探触子であって、
    前記各振動子ブロック列板中において各振動子ブロックは放射状に配列され、前記複数の振動子ブロック列板は音響整合層側を所定の曲面に内接させて配置されており、前記振動子ブロック列板の板面に垂直な方向には段差があり、前記振動子ブロック列板の板面方向には段差無く曲面を形成していることを特徴とする超音波探触子。
  2. 請求項1記載の超音波探触子において、前記振動子ブロック列板が前記曲面と接する側の側面に前記側面吸音材が設けられており、前記側面吸音材は、吸収係数と厚みの乗算結果が2dB以上であることを特徴とする超音波探触子。
  3. 請求項1又は2記載の超音波探触子において、前記側面吸音材は樹脂とマイクロバルーンとの混合物であることを特徴とする超音波探触子。
  4. 請求項1〜のいずれか1項記載の超音波探触子において、前記所定の曲面は前記振動子ブロックが配列している1つの平面及び当該平面に直交し振動子ブロックの軸を含む他の平面で切断した場合に、それぞれ異なる曲率を持つ円弧状となる曲面であることを特徴とする超音波探触子。
  5. 請求項1〜のいずれか1項記載の超音波探触子において、前記所定の曲面は、前記振動子ブロックが配列している1つの平面及び当該平面に直交し振動子ブロックの軸を含む他の平面で切断した場合に、互いに等しい曲率を持つ円弧状となる曲面であることを特徴とする超音波探触子。
  6. 振動子の両端を音響整合層と背面吸音材とで挟んでなる振動子ブロックが前記音響整合層側を外側に向けて複数配列され少なくとも一方の側面に側面吸音材が設けられた板状の振動子ブロック列板を複数枚重ね合わせて構成された超音波探触子であって、前記各振動子ブロック列板中において各振動子ブロックは放射状に配列され、前記複数の振動子ブロック列板は音響整合層側を所定の曲面に内接させて配置されており、前記振動子ブロック列板がその板面に垂直な方向に段差を設けて配置されることを特徴とする超音波探触子。
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