JP3915474B2 - 圧力検知装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、管内の流体の圧力を空気と接触することなく連続的に測定できるシステムを提供することを目的とするものであり、主に体外循環回路内の圧力を測定する圧力検知装置及びその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
血液回路を用いる血液体外循環療法では、回路閉塞に対する監視システムとして回路内の圧力の常時モニターが不可欠である。その方法としては、圧力測定部への血液の逆流及び血液回路内の空気を除去するために、圧力の受口部としてドリップチャンバーを用い、空気層を介して圧力をモニターする方法が主流である。しかし、本法ではドリップチャンバー内部の空気と血液の界面で凝固因子の活性化による血液凝固が発生しやすく、これによる回路閉塞の主原因となる場合が多い。
【0003】
特に、持続的血液浄化法(CHDF、CHF、CHD)においては血液流量が一般透析と比して低く、かつ約24時間以上連続使用され、また血液抗凝固剤の投与が困難な出血性病変の患者に使用される機会も多いことから、凝固因子がより活性化されやすく、血液と空気界面での血液凝固が発生しやすい環境にある。また、持続的血液浄化法はICUを中心に約24時間連続管理されるが、回路内圧の常時モニターは重要であり一般に実施されているにもかかわらず、絶えずドリップチャンバー内での空気接触による血液凝固の危険に曝されている。かかる事情から、従来より体外循環血液回路内の圧力の測定方法として、空気非接触方式の技術が考案されてきた。
【0004】
実公平4−1948号公報には、ドリップチャンバー内での血液と空気の接触を防ぐ手段として、空気と血液とを隔離する隔膜をドリップチャンバー内に導入し、隔膜を介して、空気層の圧力変動をモニターする方式が開示されている。しかしながら、この方式では、何らかの理由により隔室が常圧になると、隔膜が伸び切った状態になり、それ以降圧力を測定できないという問題を抱えている。
【0005】
一方、隔膜方式ではあるが、空気層を介して圧力を測定するのではなく、隔膜に対して直接ロードセルを密着させて圧力を測定する方式が考案されている。特開平8−166301号公報では、隔膜と同様の用途として体外循環血液回路内のピローを用い、これにロードセルを密着させて回路内圧を測定する方法が開示されている。該公報によれば、圧力の変動に伴うピロー隔膜と圧力伝達板との接触面積の変化を防止する手段として、当該基盤に対して所定間隔を保持できるホルダーカバーを設置することで、ロードセルにて高精度に圧力を測定することを可能としている。しかしながら、陰圧を良好に感知するために、ピロー隔膜に対して常に応力を負荷しているため、長時間使用した際にはピロー隔膜が変形し、ゼロ点の移動や圧力感度の低下をきたす。これは、材料として高分子膜を使用しているため、高分子材料特有の性質であるクリープ変形が起こる可能性があり、長時間連続して安定的に回路内圧力を測定するには不向きである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑み、管内の流体の圧力の測定法として、測定すべき流体が直接空気に曝露されることのない隔膜/ロードセル方式を用い、その際の隔膜のクリープ変形を是正でき、かつ管内の陽圧、陰圧を長時間高精度かつ安定的に連続測定できる圧力検知装置およびその方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明にかかる圧力検知装置は、流体を移送するための流体通路を有する基部を有し、前記基部の一側面に設けられた開口部が隔膜で密閉された管内圧力受口部と、前記管内圧力受口部と接続可能とし、前記隔膜の物理的変動を検知するよう設けられた圧力検知部とからなり、前記流体通路を通過する前記流体の圧力を検知するための圧力検知装置において、前記管内圧力受口部に設けられた隔膜が前記開口部と緩設するよう設けられており、前記管内圧力受口部は前記隔膜に接着されたガイドを含み、前記圧力検知部には圧力検知子が設けられ、片方が前記隔膜と接続し他方が前記圧力検知子と接触するよう荷重伝達手段が設けられ前記荷重伝達手段を介して前記圧力検知子に荷重を加えるための荷重負荷手段が設けられてなり、前記圧力検知部は中空の筐体を備え、前記荷重伝達手段は、前記筐体の中空内を摺動可能とし、前記荷重伝達手段の運動方向は、前記管内圧力受口部の長手方向と直交しており、前記荷重伝達手段と前記隔膜とが前記ガイドを介して着脱可能であり、前記管内圧力受口部と前記圧力検知部とが着脱可能に接続されるように、前記筐体と前記基部のそれぞれに位置決め手段が設けられており、圧力検知開始時に予め前記荷重負荷手段によって前記荷重伝達手段を介して前記圧力検知子に荷重を加えておき、この時の前記圧力を基準として、陽圧、陰圧の両方の前記流体の圧力を検知を可能とする機構を含むことを特徴とする圧力検知装置である。
【0008】
これにより、測定すべき流体を空気に曝露させることなく、流体圧力の変動に応じて生ずる隔膜の物理的変動を荷重伝達手段により圧力検知子に伝達し、圧力検知子により、その荷重を測定することができる。この際、隔膜は開口部に対し、緩設、つまり膜を緩めた形で設けられており、更に隔膜に接続された荷重伝達手段は荷重負荷手段により、予め圧力検知子側に荷重を負荷しているため、隔膜に対する応力負荷が低減することが可能となり、隔膜のクリープ変形を防ぐことが可能となる。また、隔膜が緩設されて設けられることにより、流体の微小な圧力変化に敏感に応答すること可能となる。その結果、長時間連続的に、かつ安定的に流体の圧力を測定することが可能な圧力検知装置及び該圧力検知装置による圧力検知方法を提供することができる。更には本発明は以下の(1)から()の特徴により上記課題を解消する。
【0009】
(1)流体を移送するための流体通路を有する基部を有し、前記基部の一側面に設けられた開口部が隔膜で密閉された管内圧力受口部と、前記管内圧力受口部と接続可能とし、前記隔膜の物理的変動を検知するよう設けられた圧力検知部とからなり、前記流体通路を通過する前記流体の圧力を検知するための圧力検知装置において、前記管内圧力受口部に設けられた隔膜が前記開口部と緩設するよう設けられており、前記管内圧力受口部は前記隔膜に接着されたガイドを含み、前記圧力検知部には圧力検知子が設けられ、片方が前記隔膜と接続し他方が前記圧力検知子と接触するよう荷重伝達手段が設けられ前記荷重伝達手段を介して前記圧力検知子に荷重を加えるための荷重負荷手段が設けられてなり、前記圧力検知部は中空の筐体を備え、前記荷重伝達手段は、前記筐体の中空内を摺動可能とし、前記荷重伝達手段の運動方向は、前記管内圧力受口部の長手方向と直交しており、前記荷重伝達手段と前記隔膜とが前記ガイドを介して着脱可能であり、前記管内圧力受口部と前記圧力検知部とが着脱可能に接続されるように、前記筐体と前記基部のそれぞれに位置決め手段が設けられており、圧力検知開始時に予め前記荷重負荷手段によって前記荷重伝達手段を介して前記圧力検知子に荷重を加えておき、この時の前記圧力を基準として、陽圧、陰圧の両方の前記流体の圧力を検知を可能とする機構を含むことを特徴とする圧力検知装置。
【0011】
)前記荷重伝達手段と前記ガイドとの接続部において、前記荷重伝達手段と前記ガイドのそれぞれに設けられた係合手段で接続されることを特徴とする上記()の圧力検知装置。
【0012】
)前記荷重伝達手段と前記ガイドとの接続部において、前記荷重伝達手段と前記ガイドの接続が、磁力による接続であることを特徴とする上記()の圧力検知装置。
【0013】
)前記荷重負荷手段が完全弾性体であることを特徴とする上記(1)から()のいずれかに記載の圧力検知装置。
【0014】
)前記完全弾性体がコイルバネであることを特徴とする上記()記載の圧力検知装置。
【0015】
)前記荷重負荷手段が磁石であることを特徴とする上記(1)から()のいずれかに記載の圧力検知装置。
【0018】
)流体を移送するための流体通路を有する基部を有し、前記基部の一側面に設けられた開口部が隔膜で密閉された管内圧力受口部と、前記管内圧力受口部と接続可能とし、前記隔膜の物理的変動を検知するよう設けられた圧力検知部とからなり、前記管内圧力受口部に設けられた隔膜が前記開口部と緩設するよう設けられており、前記管内圧力受口部は前記隔膜に接着されたガイドを含み、前記圧力検知部には、圧力検知子が設けられ、片方が前記隔膜と接続し他方が前記圧力検知子と接触するよう荷重伝達手段が設けられ、前記荷重伝達手段を介して前記圧力検知子に荷重を加えるための荷重負荷手段が設けられてなり、前記圧力検知部は中空の筐体を備え、前記荷重伝達手段は、前記筐体の中空内を摺動可能とし、前記荷重伝達手段の運動方向は、前記管内圧力受口部の長手方向と直交しており、前記荷重伝達手段と前記隔膜とが前記ガイドを介して着脱可能であり、前記管内圧力受口部と前記圧力検知部とが着脱可能に接続されるように、前記筐体と前記基部のそれぞれに位置決め手段が設けられており、圧力検知開始時に予め前記荷重負荷手段によって前記荷重伝達手段を介して前記圧力検知子に荷重を加えておき、この時の前記圧力を基準として、陽圧、陰圧の両方の前記流体の圧力を検知を可能とする機構を含むことを特徴とする圧力検知装置において、前記圧力検知子側に荷重を負荷した状態で、管内圧力受口部の流体流路内に移送される流体の圧力を、管内圧力受口部に緩設された隔膜を介して検知することを特徴とする圧力検知方法。
【0019】
これにより、例えば体外循環血液回路に用いると、運転中の圧力測定部位において血液が空気に曝露されることがないため、空気曝露による血液の凝血を防止することができ、これによる回路内閉塞の可能性を低減できる。また、血液の圧力測定のための隔膜に対する応力負荷が低減されているため、隔膜のクリープ変形を防ぐことが可能となり、そのため長時間連続的に制度良く、かつ安定的に血液の圧力測定を行うことができる。その結果、体外循環血液回路の安全な運転の施行を可能とするだけでなく、体外循環施行中の監視がより容易となる。
【0020】
尚、本明細書において記載された圧力検知装置において用いられる「緩設」とは、薄膜状の物体をある物体の開口部周縁に設置する際、膜を張った状態で設置する「張設」ではなく、膜を緩めた状態で設置することとして定義している。
【0021】
また、本明細書において記載された圧力検知装置において用いられる「陰圧」あるいは「陽圧」という用語を用いているが、これは圧力検知開始時における流体流路内の圧力を基準として、圧力が低下した状態を「陰圧」、圧力が上昇した状態を「陽圧」として定義している。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、本発明である圧力検知装置の詳細について説明する。まず、図1を参照して、概略的な構成について説明する。図1は本発明にかかる圧力検知装置の断面図である。本発明にかかる圧力検知装置は、圧力検知部Aと管内圧力受口部Bから構成されている。
【0023】
圧力検知部Aは中空部分を有する筐体2と、その筐体2の中空部内には、管内圧力受口部Bに対して遠端部に設けられた圧力検知子1と、一方端が前記圧力検知子1と接触し、他方端がBの隔膜8とガイド10を介して接続されて設けられ、筐体2の中空部内を摺動可能に設けられた荷重伝達手段3と、前記荷重伝達手段3を圧力検知子1側(図中X方向)に荷重を負荷するよう設けられた荷重負荷手段4から構成される。
【0024】
一方、管内圧力受口部Bは流体流路7を有する基部5と、前記管内圧力受口部の一側面の箇所に設けられた開口部6と、該開口部周縁部に緩設するよう設けられた隔膜8と、前記隔膜に接着され、前記荷重伝達手段3の一方端と接続するよう設けられたガイド10から構成される。また、管内圧力受口部Bは位置決め手段11(雄型)が設けられ、圧力検知部Aにも該位置決め手段と係合するよう位置決め手段11(雌型)が設けられており、圧力検知部Aが管内圧力受口部Bに対して、垂直に設けられるよう着脱可能に係合されている。
【0025】
本発明の圧力検知装置においては、流体流路7を通過する流体の圧力に変動が生ずると、その圧力変動により隔膜8は物理的に変形する。すなわち、流体流路7を通過する流体の圧力が測定開始時に比して陽圧になると、隔膜8は圧力検知子1側(図中X方向)へと膨脹するように変形する。また、流体流路7を通過する流体の測定開始時に比して陰圧になると、隔膜8は流体流路7側へと凹むように変形する。この隔膜8の物理的な変形による荷重が、ガイド10を介して、荷重伝達手段3に伝達される。それにより、荷重伝達手段3は筐体2内を圧力検知子1側(図中X方向)あるいはその反対の流体流路7側へと移動することになる。その荷重伝達手段3の移動により、当接する圧力検知子1に荷重が伝達された結果、流体流路7内の液体の圧力を検知することが可能となる。
【0026】
本発明に用いられる圧力検知子は、一般的に圧力検知子側に負荷される荷重のみを測定するように機能する荷重変換器(ロードセル)である。ロードセルには陽圧、陰圧の双方の荷重を測定できるタイプと、陽圧側の荷重のみを測定できるタイプがある。本発明の目的からすれば、前者の陽圧、陰圧の双方の荷重を測定できるタイプを採用するのが望ましい。しかしながら、このタイプのロードセルは基準点(ゼロ点)の位置決めや双方向の圧力測定の機構が複雑であり、装置が大型化するため、本発明のような圧力検知装置には不向きである。したがって、本発明では、小型化可能な陽圧側の荷重のみを測定できるロードセルを使用し、測定開始時に予めロードセル側に荷重を加えておき、そこを測定基準点(ゼロ点)として陽圧、陰圧の両方の圧力の測定をする機構を採用している。
【0027】
従来の隔膜/ロードセル方式の圧力検知装置においては、ロードセルが直接あるいは間接的に隔膜に荷重を加えていたが、本発明の圧力検知装置は圧力負荷手段4が荷重伝達手段3を介して圧力検知子1側(ロードセル側)に荷重を加えている。このため、隔膜に対する応力負荷を低減することが可能となる。
【0028】
また、隔膜8は管内圧力受口部側部に設けられた開口部に緩設、つまり膜を緩めた形で設けられている。この隔膜8が張設、つまり膜を張った形で設けると、装置を長時間運転した場合、隔膜8が長時間連続的な応力負荷を受け、隔膜にクリープ変形が生ずることになる。よって、本発明における圧力検知装置を構成する隔膜を緩設することにより、隔膜に対する応力負荷が低減することが可能となる。
【0029】
尚、図1に示した実施例においては隔膜8は基部5の開口部6の周縁部に緩設した後、位置決め手段11にて挟持するよう構成されている。隔膜8を挟持する際、基部5と位置決め手段11の間にOリング(図示せず)を介して挟持しても構わない。また、基部5を2つの部品にて構成し、その間に隔膜8及びOリングを挟持するような構成としても構わない。
【0030】
以上のことより、隔膜8に接続される荷重伝達手段3の圧力検知子1側への圧力負荷、隔膜8の緩設により、隔膜への応力負荷の低減が図られることで、隔膜の不可逆的なクリープ変形を防ぐことが可能となる。
【0031】
また、隔膜8の緩設の程度については、流体流路7における流体の通過を妨げることなく、隔膜8に接続される荷重伝達手段の運動を妨げることのない程度であれば良い。また、この隔膜は管内圧力受口部に緩設する必要があるため、予め平板状の膜に熱処理等を施し、緩設するのに適当な形状の変形を生じた膜を使用するのが好ましい。
【0032】
尚、本発明に用いられる隔膜8の材質については、流体の圧力変動に応じて物理的変動を発生させる必要があるため、可撓性を有する材料が望ましい。また、流体流路7を通過する流体と接触するため、測定すべき流体(主に血液)に負の影響を及ぼすことのない材質が望まれる。更に、平板状の膜を熱処理等して、緩設するのに適当な変形を生じた形状をなす必要があるため、加工性の高い材質が望まれる。以上の理由により、隔膜8の材質はポリ塩化ビニル等が望ましい。
【0033】
また本発明の圧力検知装置では、荷重伝達手段3と隔膜8の接続が、前記隔膜8に予め接続されたガイド10を介して接続されている。本発明の圧力検知装置の荷重伝達手段3を備えた圧力検知部Aは、例えば体外循環装置の機械の構成部品の一部分であり、隔膜8を備えた管内圧力受口部Bは、例えば体外循環回路の構成部品の一部分である。そのため、使用後の装置の処理を考慮して、単回使用で廃棄可能な体外循環回路と体外循環装置の機械とを分離できる構成とすることが有利である。更には前記荷重伝達手段3と前記ガイド10の接続部が、そのそれぞれに設けられた係合手段により接続されることが望ましい。係合手段により両者が係合されていれば、圧力検知装置使用時において、両者が離脱することはなく、流体流路7の圧力変動による隔膜8の物理的変動をガイド10を介して、荷重伝達手段3に伝達することが可能となるからである。尚、この係合手段の機構について、図1中に示した実施例においては、ガイド10に雌型係合手段、荷重伝達手段3に雄型係合手段として示したが、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではない。
【0034】
また、前記荷重伝達手段3と前記ガイド10の接続が、磁力による接続であっても本発明の効果の達成は可能である。両者の接続が磁力による接続であれば、圧力検知部Aと管内圧力受口部Bとの着脱操作が容易になるため、有利である。また、本発明の圧力検知装置の使用中において、両者の接続部は流体流路内の圧力変動による隔膜の物理的変動に伴う両者の離脱方向への荷重が加えられることになる。しかしながら、実質的に生ずる荷重はごく小さいものであり、両者の接続部の接続に離脱が生ずる程度のものではない。尚、磁石を荷重伝達手段、ガイドに設ける構成とする場合、両者にそれぞれ設けて、吸着させるような構成であっても、いずれか一方のみに磁石を設け、他方に金属等を設け、両者を磁力により吸着するような構成であってもよい。また、両者に磁石を設ける方法については特に制限はなく、いずれの方法であっても構わない。
【0035】
隔膜への応力負荷の低減図るため、ガイド10を介して接続される荷重伝達手段3に予め圧力検知子1側に荷重負荷手段4により荷重を負荷している。荷重負荷手段4は、弾性ヒステリシスがなく、また外力を取り除くと同時にひずみ(変形)が消去するような完全弾性体であることが望ましい。
【0036】
また、前記完全弾性体がコイルバネであることが望ましい。コイルバネであれば、図1に示したように、荷重伝達手段の周囲にコイルバネを設置し、それらを筐体2の中空部分に設置するのには、構造的に都合が良いためである。尚、使用されるコイルバネは金属製であっても、プラスチックス製であってもよい。更に、前記完全弾性体がコイルバネであれば、圧力検知装置の陰圧の検出範囲をコイルバネのバネ定数及びバネの長さによって、任意に設定することができるため、有利である。
【0037】
また、前記荷重負荷手段に磁石を用い、それによる反発力をロードセルに負荷する機構を採用することでも、本発明の目的は達成可能である。また前記磁石は永久磁石あるいは電磁石であっても良い。使用される磁石が電磁石であれば、その磁力による反発力の設定、すなわち負荷する荷重の設定が比較的容易となるため、より正確な陰圧測定精度が得られるため、有利である。
【0038】
本発明の圧力検知装置において、流体流路7の圧力変動により生ずる隔膜8の物理的変動を圧力検知子に伝達する荷重伝達手段3は、直線的な運動によりその荷重を伝達する。そのため、圧力検知子A全体を中空の筐体2とし、その内部を荷重伝達手段が摺動するよう構成されている。更には、隔膜の物理的変動を正確に伝達するため、前記荷重伝達手段3が管内圧力受口部Aに対して垂直に構成されている。また、前記荷重伝達手段3が圧力変動により移動する際、筐体2と摩擦を生ずる。そのため、前記荷重伝達手段3は摺動性の高い材質、例えばポリアセタールなどの材質が望ましい。
【0039】
また、図1に示したように、荷重伝達手段3が管内圧力受口部Bに対して垂直に構成されるよう固定するための位置決め手段11が、荷重伝達手段3を有する圧力検知部Aの筐体2と管内圧力受口部Bのそれぞれに設けられている尚、この位置決め手段11は圧力検知部Aと管内圧力受口部Bを固定するのみならず、両者を離脱させることが可能となるよう構成されているのが好ましい態様である。尚、この位置決め手段の係合機構について、図1中に示した実施例においては、管内圧力受口部Bに雄型位置決め手段、圧力検知部Aに雌型位置決め手段として示したが、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではない。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例により、さらに具体的に説明する。
実施例1
以下に示した通り、本発明の圧力検知装置を作製し、その測定感度について検討した。
管内圧力受口部
隔膜:φ22×0.45mm(ポリ塩化ビニル製)
(この場合、隔膜が圧力測定開始時の隔膜の位置より流体流路方向に深さ2mmにて緩設するよう設定した。また、この隔膜の緩設した際の「緩み」は、管内圧力受口部側部開口面の周縁部に生ずる。この時の「緩み」の幅は管内圧力受口部側部開口面の周縁部より1mmとなるよう設定した。)
基部:44×36×10mm(W×D×H:ポリカーボネート製)
流体通路:φ3.4mm
開口部(隔膜設置部):φ12mm
Oリング:φ20×φ12×2.4mm(ステンレス)
ガイド:φ10mm(ポリカーボネート製)
圧力検知部
筐体:φ20×φ9×26mm(ポリカーボネート製)
荷重伝達手段:φ6×25mm(ポリアセタール製)
図2に示したのは、測定感度の検討結果を荷重−圧力検量線にて示した図である。図2が示すように、本圧力検知装置による測定データから得られた荷重−圧力検量線は、少なくとも−150mmHgから400mmHgまで良好な直線性を示し(相関係数:0.999)、本圧力検知装置が高感度で圧力を測定できることが示された。
【0041】
実施例2
前記実施例1に示した圧力検知装置を用いて、その測定感度の長時間の安定性を検討した。圧力検知装置を体外循環用血液回路内に組み込みんで18時間の連続運転を行った圧力測定値と、従来のドリップチャンバーでの測定圧力値との経時変化を比較した。尚、流体は牛血液(総蛋白質:6.0±1.0g/dL、ヘマトクリット値:30±1%)を用い、流量は200mL/minにて検討を行った。図3は両測定値の経時変化をプロットしたグラフである。図3に示すように、本圧力検知装置により測定された圧力はドリップチャンバーでの測定圧を18時間もの長時間安定して追従し、両圧力測定値の差は7mmHg以内であった。
【0042】
比較例1
前記実験例1に示した圧力検知装置において、圧力検知部にコイルバネを入れずに圧力検知装置を作製して、コイルバネ(荷重負荷手段)の測定値に与える影響について検討した。図4は流体の圧力を一定にした状態で1時間の圧力測定を行い、得られた測定データの初期値に対する変化量を示したグラフである。その結果、図4に示したように、圧力測定値は時間経過とともに低下し、流体の圧力値と測定値との間に差が生じた。本結果により、本発明の圧力検知装置において、コイルバネ(圧力負荷手段)を取り外した状態、すなわち隔膜に応力負荷が掛かった状態では隔膜にクリープ変形が発生し、流体の圧力測定を行っても、時間経過とともに、その測定値は流体の圧力値との差が生じ、正確な圧力測定が出来ないということを示すものであった。
【0043】
以上の結果より、予め圧力検知子側に荷重を掛ける方式を採用した本発明にかかる圧力検知装置が、圧力測定中に隔膜のクリープ変形を伴うことなく、高精度で、長時間安定した体外循環血液回路内の圧力を測定できることを示すものであった。
【0044】
【発明の効果】
本発明の圧力検知装置によれば、隔膜を介して流体流路の流体圧力を測定する構成としているため、測定すべき流体が直接空気に曝露されることがないために、凝血等による回路閉鎖の可能性が低減できる。また、圧力検知装置に設けられた隔膜に接続される荷重伝達手段を荷重負荷手段により圧力検知子側へ荷重負荷し、更に隔膜を緩設することによって、隔膜への応力負荷の低減を図っているため、隔膜の不可逆的なクリープ変形を防止が可能となる。また、荷重伝達手段の運動方向は、管内圧力受口部の長手方向と直交しており、荷重伝達手段と隔膜とが隔膜に接着されたガイドを介して着脱可能であり、管内圧力受口部と圧力検知部とが着脱可能に接続されるように、筐体と基部のそれぞれに位置決め手段が設けられているので、流体の圧力変化に伴う隔膜の物理的変動を荷重伝達手段に正確に伝達できる。これらのことにより、本発明の圧力検知装置では、高精度かつ安定的な長時間連続測定が可能となっている。以上のことより、本発明の圧力検知装置を用いれば、安全な体外循環の施行を可能とするだけでなく、体外循環施行中の監視がより容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる圧力検知装置の断面図
【図2】本発明にかかる圧力検知装置による圧力測定データから得られた荷重−圧力検量線
【図3】本発明にかかる圧力検知装置とドリップチャンバーによる経時的な圧力測定データから得られたグラフ
【図4】本発明にかかる圧力検知装置の荷重負荷手段を取り外した装置による経時的な圧力測定データから得られたグラフ
【符号の説明】
1.圧力検知子
2.筐体
3.荷重伝達手段
4.荷重負荷手段
5.基部
6.開口部
7.流体流路
8.隔膜
9.たるみ
10.ガイド
11.位置決め手段(雄型、雌型)
A.圧力検知部
B.管内圧力受口部

Claims (11)

  1. 流体を移送するための流体通路を有する基部を有し、前記基部の一側面に設けられた開口部が隔膜で密閉された管内圧力受口部と、
    前記管内圧力受口部と接続可能とし、前記隔膜の物理的変動を検知するよう設けられた圧力検知部とからなり、前記流体通路を通過する前記流体の圧力を検知するための圧力検知装置において、
    前記管内圧力受口部に設けられた隔膜が前記開口部と緩設するよう設けられており、前記管内圧力受口部は前記隔膜に接着されたガイドを含み、
    前記圧力検知部には圧力検知子が設けられ片方が前記隔膜と接続し他方が前記圧力検知子と接触するよう荷重伝達手段が設けられ前記荷重伝達手段を介して前記圧力検知子に荷重を加えるための荷重負荷手段が設けられてなり、前記圧力検知部は中空の筐体を備え、前記荷重伝達手段は、前記筐体の中空内を摺動可能とし、前記荷重伝達手段の運動方向は、前記管内圧力受口部の長手方向と直交しており、
    前記荷重伝達手段と前記隔膜とが前記ガイドを介して着脱可能であり、
    前記管内圧力受口部と前記圧力検知部とが着脱可能に接続されるように、前記筐体と前記基部のそれぞれに位置決め手段が設けられており、
    圧力検知開始時に予め前記荷重負荷手段によって前記荷重伝達手段を介して前記圧力検知子に荷重を加えておき、この時の前記圧力を基準として、陽圧、陰圧の両方の前記流体の圧力を検知を可能とする機構を含むことを特徴とする圧力検知装置。
  2. 前記荷重伝達手段と前記ガイドとが、前記荷重伝達手段と前記ガイドのそれぞれに設けられた係合手段によって接続される請求項に記載の圧力検知装置。
  3. 前記荷重伝達手段と前記ガイドとが、磁力によって接続される請求項に記載の圧力検知装置。
  4. 前記荷重負荷手段は完全弾性体である請求項1〜のいずれか1項に記載の圧力検知装置。
  5. 前記完全弾性体はコイルバネである請求項に記載の圧力検知装置。
  6. 前記荷重負荷手段が磁石である請求項1〜のいずれか1項に記載の圧力検知装置。
  7. 前記流体は血液である請求項1〜6のいずれかの項に記載の圧力検知装置。
  8. 前記ガイドの前記筐体の内面と対向する部分の外径は、当該部分と対向する前記筐体の内径とほぼ等しい請求項1〜7のいずれかの項に記載の圧力検知装置。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の圧力検知装置を用いて前記流体通路を通過する前記流体の圧力を検知する圧力検知方法であって、
    圧力検知開始時に予め前記荷重負荷手段によって前記荷重伝達手段を介して前記圧力検知子に荷重を加えておき、この時の前記流体の圧力を基準として、前記流体の圧力を検知することを特徴とする圧力検知方法。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の前記圧力検知装置を構成する前記圧力検知部を含むことを特徴とする体外循環装置。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載の前記圧力検知装置を構成する前記管内圧力受口部を含むことを特徴とする体外循環回路。
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