JP3915027B2 - 口内炎用薬剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、従来のものよりも速く患部の痛みを緩和することができる口内炎用薬剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の口内炎用薬剤は殺菌剤や消炎剤などを、患部に留置するための口腔薬基剤に配合して構成されていた。このものは確かに殺菌剤や消炎剤などが経時的に薬効を発揮し、口内炎などの治療薬としての効能があった。
【0003】
しかし、口腔薬基剤で患部を包被することにより食べ物などの刺激から保護する他には痛みを緩和する機能は備わっておらず、したがって、口内炎がある程度快方に向かうまでは不快な疼痛が継続しているという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明は、従来のものよりも速く患部の痛みを緩和することができる口内炎用薬剤を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
【0006】
この発明の口内炎用薬剤は、患部に留置するための口腔薬基剤に有効成分として殺菌剤と消炎剤とが含有せしめられた口内炎の治療のための薬剤であって、粘膜吸収性の局所麻酔剤が有効成分として配合されたことを特徴とする。
【0007】
鋭意研究の結果前記のように構成したので、患部に留置するための口腔薬基剤による患部の包被によって食べ物などの刺激から保護され得ると共に、殺菌剤と消炎剤との作用により口内炎がある程度快方に向かうまでの不快な疼痛も、粘膜吸収性の局所麻酔剤によって素早く抑えることができる。
【0008】
また粘膜吸収性の局所麻酔剤として例えば塩酸ジブカインが約0.1重量%〜約1.0重量%配合されたこととすると、より好適に実施することができる。塩酸ジブカインが約0.1重量%未満では不快な痛みを素早く抑えることはできるものの、その抑える程度に若干乏しい場合がある。一方、約1.0重量%を越えると不快な痛みを素早く抑えることはできるものの、薬剤を留置した患部以外に不快な痺れ感や感覚の鈍感化が発生する場合がある。これは薬剤が口内で唾液等により薄められ患部以外の所に付着することにより、塩酸ジブカインによる痺れ感が患部以外にも起こるためであると考えられる。
【0009】
なお粘膜吸収性の局所麻酔剤として他に、アミノ安息香酸エチルやリドカインなどを使用することもできる。
【0010】
殺菌剤として、塩酸クロルヘキシジンや塩化セチルピリジニウムなどを用いることができる。また消炎剤として、グリチルレチン酸やグリチルリチン酸二カリウム、アズレンスルホン酸ナトリウム、シコンなどを用いることができる。
【0011】
また口腔薬基剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウム又はカルボキシビニルポリマーの少なくとも一つ、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが配合されたこととすることができる。これらは患部に留置すると唾液中の水分などを吸収してゲル状となり、患部の粘膜への薬剤の付着性を向上させることができる。すなわち、これらの成分を配合することにより粘膜吸収性の局所麻酔剤の付着性が飛躍的に向上するので、患部以外の所に流着してしまうことによる不快な痺れ感や感覚の鈍感化を抑止し、薬剤の拡散希釈化を防止することにより持続時間の長時間化を図ることができる。
【0012】
さらに口腔薬基剤に、基剤や(製剤化のための)溶解補助剤、防腐剤などを配合することができる。前記基剤としてゲル化炭化水素やワセリンなどを用いることができ、前記溶解補助剤としてラノリンや流動パラフィンなどを用いることができ、前記防腐剤としてメチルパラベンやエチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどを用いることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態をより具体的に説明する。
【0014】
この実施形態の口内炎用薬剤は、患部に留置するための口腔薬基剤に有効成分として殺菌剤と消炎剤とが含有せしめられた口内炎の治療のための薬剤であって、粘膜吸収性の局所麻酔剤が有効成分として配合されている。
【0015】
殺菌剤として塩酸クロルヘキシジン(日局)又は塩化セチルピリジニウム(局外規)を、消炎剤としてグリチルレチン酸(局外規)を用いた。また、粘膜吸収性の局所麻酔剤として塩酸ジブカイン(日局)を用いた。前記塩酸ジブカインは約0.05重量%〜約1.5重量%配合した。
【0016】
口腔薬基剤として、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム、日局)又はカルボキシビニルポリマー(薬添規)の少なくとも一つ、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム、日局)を配合した。
【0017】
また、溶解補助剤としてラノリン(精製ラノリン、日局)、基剤としてゲル化炭化水素(薬添規)、溶剤として精製水(日局)などを配合した。なお、防腐剤としてメチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル、日局)などを配合してもよい。
【0018】
この実施形態の口内炎用薬剤は軟膏状のものに形成しており、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが唾液中の水分を吸収してゲル状となり、口内の患部の粘膜に塗布して付着せしめる。
【0019】
【実施例】
次に、この発明の構成を更に具体的に説明する。
【0020】
ゲル化炭化水素(ブリストル・マイヤーズスクイブ社製、商品名 プラスティベース)、カルボキシビニルポリマー(和光純薬社製、商品名 ハイビスワコー105)を用いた。
【0021】
(1)表1、2に示す配合で常法にしたがい、実施例1〜6の口内炎用薬剤を調整した。実施例1の塩酸ジブカインの配合量は0.05重量%、実施例2は同様に0.1重量%、実施例3は0.2重量%、実施例4は0.5重量%、実施例5は1.0重量%、実施例6は1.5重量%とした。また表2に示す配合で常法にしたがい、比較例の口内炎用薬剤を調整した。比較例のものは塩酸ジブカインを配合していない。なお表中CMC−Naはカルボキシメチルセルロースナトリウムを、CMC−Caはカルボキシメチルセルロースカルシウムを示す。
【0022】
これらの口内炎用薬剤のサンプルを用いて次のような評価試験を行った。
口内炎の症状があるモニターによりブラインドテストによる官能検査によって、次の項目の試験を行った。口内炎は完治するまでに通常2〜3日以上はかかるので、その間に上記各サンプルをブラインドとして患部に塗布し、その効果を官能により評価した。
【0023】
▲1▼ 口内炎用薬剤による痛みを抑える効果
各サンプルの痛みを抑える効果を官能評価した。評価項目の選択枝は「効果がある」と「効果がない」との二通りとした。
【0024】
Figure 0003915027
口内炎の痛みを抑える効果は、モニター試験を行った範囲では塩酸ジブカインの配合量とほぼ比例する傾向がある。また、0.05重量%の配合量でも25%のモニターが効果があると評価した。
【0025】
▲2▼ 口内炎用薬剤による患部以外の痺れ感や感覚の鈍化による不快感
塩酸ジブカインの配合量が実施例中で比較的に多い実施例5と6のサンプルにより、患部以外の痺れ感や感覚の鈍化による不快感を官能評価した。評価項目の選択枝は「気になる」と「気にならず」との二通りとした。
【0026】
Figure 0003915027
塩酸ジブカインの配合量が多くなると麻酔剤独特の痺れ感や違和感が発生する傾向があるが、1.0重量%では半数弱程度のモニターが気にならないと評価しているのに対し、1.5重量%では80%のモニターが気になると評価している。
【0027】
(2)表3に示すように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシビニルポリマーの配合量を変化させて口内炎用薬剤のサンプルを形成した。それぞれの塩酸ジブカインの配合量は1.0重量%とし、他の成分の処方は実施例5の配合量に準じた。
【0028】
これらの口内炎用薬剤のサンプルについて、ブラインドによる官能試験により「口中の粘つき性」「麻酔効果の持続時間」「薬剤の患部への付着力」を評価した。それぞれの評価結果を同表に「◎」「○」「△」として示す。なお「◎」は特に良好を、「○」は良好を、「△」は普通を示す。
【0029】
一方カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシビニルポリマーを配合せずに、口内炎用薬剤のサンプル(塩酸ジブカインの配合量は同様に1.0重量%)を形成した。
【0030】
双方を比較すると、特に「麻酔効果の持続時間」及び「薬剤の患部への付着力」において、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを配合した口内炎用薬剤のサンプルの方がこれらを配合していないものよりも官能的に優れていた。
【0031】
さらに、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを配合した口内炎用薬剤のサンプルは、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを配合していないサンプルと比較して、不快な痺れ感や感覚の鈍感化の発生がより抑制されていると共に薬効持続時間が長かった。
【0032】
これはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどを配合したものは患部への薬剤の付着力に優れているので、薬剤が患部以外の所に流着しにくく患部以外の所の不快な痺れ感や感覚の鈍感化を誘発しにくいと共に、薬剤の拡散希釈化が抑制できるので持続時間の長時間化を図ることができるからと考えられる。
【0033】
【表1】
Figure 0003915027
【0034】
【表2】
Figure 0003915027
【0035】
【表3】
Figure 0003915027
【0036】
【発明の効果】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0037】
口内炎が殺菌剤と消炎剤との作用によりある程度快方に向かうまでの不快な疼痛も粘膜吸収性の局所麻酔剤によって素早く抑えることができるので、従来のものよりも速く患部の痛みを緩和することができる口内炎用薬剤を提供することができる。

Claims (2)

  1. 患部に留置するための口腔薬基剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウム又はカルボキシビニルポリマーの少なくとも一つ、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが配合され、有効成分として、殺菌剤と消炎剤とが含有せしめられた口内炎の治療のための薬剤であって、粘膜吸収性の局所麻酔剤として塩酸ジブカインが約0.1重量%〜約1.0重量%配合されたことを特徴とする口内炎用薬剤。
  2. 消炎剤としてグリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、アズレンスルホン酸ナトリウム、シコンが配合された請求項1記載の口内炎用薬剤。
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