JP3914721B2 - 非水系レジスト剥離液管理装置及び非水系レジスト剥離液管理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造工程等においてレジストの剥離に用いられる非水系レジスト剥離液の管理装置及び管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程やフラットパネルディスプレイ基板の製造工程におけるフォトリソグラフィ工程で使用されるレジスト材料には、露光によって可溶化するポジ型と、露光によって不溶化するネガ型とがあり、主としてポジ型が多用されている。ポジ型レジストの代表例として、ナフトキノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂(ノボラック樹脂)を主成分とするものがある。フォトリソグラフィ工程の最終段階では、レジストを基板から完全に剥離する工程が必要である。半導体やフラットパネルディスプレイ基板のレジスト剥離工程においては、酸素プラズマによるドライアッシング工程とレジスト剥離液による湿式剥離工程の併用が実施されている。酸素プラズマによるドライアッシング工程を経た基板にはシリコン酸化物やアルミ酸化物が生成しており、次の湿式剥離工程ではレジストを剥離するだけでなく金属酸化物を完全に除去することが必要である。
【0003】
特開平7−235487号公報には、レジスト剥離液の溶解レジスト濃度を吸光光度計により検出してレジスト剥離液を排出するレジスト剥離液排出手段と、レジスト剥離液の液面レベルを液面レベル計により検出して有機溶媒とアルカノールアミンとを、又は有機溶媒とアルカノールアミンとを予め調合したレジスト剥離新液を補給する第一補給手段と、レジスト剥離液のアルカノールアミン濃度を吸光光度計により検出して有機溶媒及びアルカノールアミンの少なくとも一方を補給する第二補給手段とを備えたレジスト剥離液管理装置が記載されている。
【0004】
また、特開平10−22261号公報には、レジスト剥離液の溶解レジスト濃度を吸光光度計により検出してレジスト剥離液を排出するレジスト剥離液排出手段と、レジスト剥離液の液面レベルを液面レベル計により検出してレジスト剥離原液と純水とを、又はレジスト剥離原液と純水とを予め調合したレジスト剥離新液を補給する第一補給手段と、レジスト剥離液の水分濃度を吸光光度計により検出して、レジスト剥離原液及び純水の少なくとも一方を補給する第二補給手段とを備えたレジスト剥離液管理装置が記載されている。
【0005】
半導体やフラットパネルディスプレイ基板のレジスト剥離工程においては、レジスト剥離液として有機溶媒溶液、有機アルカリ溶液、有機溶媒と有機アルカリの混合溶液などが使用されている。例えば、ジメチルスルホキシド系の溶液、N−メチルピロリドン系の溶液、グライコールエーテルとアルカノールアミン系の混合溶液などがスプレー方式あるいはディップ方式などで使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術では、レジスト剥離処理槽へ所定濃度の一定量のレジスト剥離新液を充填してスタートし、経験等にもとづく基板処理枚数などを指標として、レジスト剥離液が減量しつつ所定劣化濃度域に達したとき、予め用意した新液と一挙に全量交換するバッチ操業の形態をとっている。この液交換時期は槽容量や基板の種類、処理枚数等により一定ではないが、およそ4日間前後に1回の頻度で行なわれている。レジスト剥離液が劣化すると、一定の剥離速度が得られず剥離残渣及び金属酸化物残渣が生じ歩留りの低下を引き起こす。フォトリソグラフィ工程の最終段階であるレジスト剥離工程にて不良品が発生すると損害額が大きい。
【0007】
また、レジスト剥離液として用いられる非水系溶液は、通常70〜90℃で使用されている。レジスト剥離液に使用される成分の沸点は、有機溶媒では190〜240℃であり、アルカノールアミンが160〜190℃程度(例えば、モノエタノールアミンでは171℃)である。従って、レジスト剥離溶液は、使用中にレジスト剥離処理槽から出る大量の排気ガスに伴って低沸点のモノエタノールアミン(以下、「MEA」という。)が優先的に蒸発し、MEA濃度が低下し、濃度変動を生じる。
【0008】
また、アルカリであるMEAが、溶解レジストの酸との反応、空気中の炭酸ガスを吸収して劣化生成物を生成する反応、及び分解によって劣化を生じる。さらに、MEAが空気中の酸素ガスを吸収して酸化により劣化生成物(オキサミド)を生成して劣化を生じる。このオキサミドの濃度が高くなると結晶が析出するため、逐次活性なMEA濃度が低下していく。しかし、従来は、活性MEA濃度をリアルタイムで測定することは行われておらず、また、活性MEA濃度が一定となるような制御も行われていなかった。
【0009】
また、レジスト剥離処理によってレジスト剥離液中に溶解したレジストは逐次濃縮し、レジスト剥離性能劣化の一因となっている。そして、レジスト剥離処理装置内から大量の排気を行っているため、排気量に応じて大量の空気が吸引される。すなわち、劣化成分としては、溶解レジスト、アルカリであるMEAが溶解レジストの酸との中和反応による生成物、空気中の炭酸ガスを吸収して生成する劣化生成物、MEAが空気中の酸素ガスを吸収して酸化により生成する劣化生成物およびその他の副生成物が挙げられる。しかし、従来は、これらの劣化成分による劣化成分濃度をリアルタイムで測定することが行われておらず、また、劣化成分濃度が一定となるような制御も行われていなかった。
【0010】
従って、MEA濃度及び劣化成分濃度は経時的に変化し、一定でないため、レジストの剥離残渣や金属酸化物残渣を生じ、あるいは劣化成分の薄膜残りが発生し、フラットパネルディスプレイ基板の高精細寸法の精度制御が困難となり、製品の品質が不安定となり、歩留まりが低下していた。また、液交換時の操業停止(ダウンタイム)により大幅な稼働率低下を来たし、レジスト剥離液の交換作業に伴う労務コストが必要であった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、レジスト剥離液に対してMEA濃度と劣化成分濃度とが所定の濃度となるように自動制御し、レジスト剥離処理槽の液補給に対して適切な管理を行い、レジスト剥離性能を常時一定化すること、及びレジスト剥離液の使用液量を削減し、操業停止時間を短縮して総合的な製造コストを低減することができるレジスト剥離液管理装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の非水系レジスト剥離液管理装置の発明は、レジスト剥離設備で使用される非水系レジスト剥離液を調整槽内で管理する非水系レジスト剥離液管理装置であって、非水系レジスト剥離原液、非水系レジスト剥離再生液、又は予め調合された非水系レジスト剥離新液の少なくとも一つを調整槽に供給する液供給手段と、調整槽内の非水系レジスト剥離液中のMEA濃度を測定する吸光光度計と、測定されたMEA濃度に基づいて、調整槽に供給される液量を制御する第1液供給量制御手段と、調整槽内の非水系レジスト剥離液中の劣化成分の濃度を測定する劣化成分濃度測定手段と、測定された劣化成分の濃度に基づいて、調整槽に供給される液量を制御する第2液供給量制御手段とを備え、劣化成分は、溶解レジスト、及び、オキサミド類を含む構成を採る。
【0013】
本発明者らは、非水系レジスト剥離液が、空気中の酸素や炭酸ガスと反応し、多種の酸、その塩、酸化物などを生成することによって劣化することを発見した。本発明では、調整槽内の非水系レジスト剥離液中の劣化成分の濃度を測定し、測定された劣化成分の濃度に基づいて、調整槽に供給される液量を制御する。これにより、非水系レジスト剥離液のMEA濃度及び劣化成分濃度を所望の目標値に維持することができると共に、安定した液面レベルにおいて長時間の連続操業が可能となる。
【0015】
このような劣化成分の濃度を測定することにより、非水系レジスト剥離液の劣化の程度を測定することが可能となる。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の非水系レジスト剥離液管理装置において、劣化成分濃度測定手段は、調整槽内の非水系レジスト剥離液の粘度を測定する粘度計若しくは導電率を測定する導電率計の少なくとも一方を備える構成を採る。
【0017】
本発明者らは、レジスト剥離処理槽のレジスト剥離液中に溶解した劣化成分濃度は、その粘度若しくは導電率と相関関係(高度な直線関係)にあることを実験により確認した。本発明では、調整槽内の非水系レジスト剥離液の粘度若しくは導電率を測定することにより、劣化成分濃度を把握する。これにより、非水系レジスト剥離液の劣化の程度を測定することが可能となる。
【0018】
請求項3記載の非水系レジスト剥離液管理方法の発明は、レジスト剥離設備で使用される非水系レジスト剥離液を調整槽内で管理する非水系レジスト剥離液管理方法であって、非水系レジスト剥離原液、非水系レジスト剥離再生液、又は予め調合された非水系レジスト剥離新液の少なくとも一つを調整槽に供給する液供給ステップと、調整槽内の非水系レジスト剥離液中のMEA濃度を吸光度により測定するMEA濃度測定ステップと、測定されたMEA濃度に基づいて、調整槽に供給される液量を制御する第1液供給量制御ステップと、調整槽内の非水系レジスト剥離液中の劣化成分の濃度を測定する劣化成分濃度測定ステップと、測定された劣化成分の濃度に基づいて、調整槽に供給される液量を制御する第2液供給量制御ステップとを含み、劣化成分は、溶解レジスト、及び、オキサミド類を含む構成を採る。
【0019】
本発明では、調整槽内の非水系レジスト剥離液中の劣化成分の濃度を測定し、測定された劣化成分の濃度に基づいて、調整槽に供給される液量を制御する。これにより、非水系レジスト剥離液のMEA濃度及び劣化成分濃度を所望の目標値に維持することができると共に、安定した液面レベルにおいて長時間の連続操業が可能となる。
【0021】
このような劣化成分の濃度を測定することにより、非水系レジスト剥離液の劣化の程度を測定することが可能となる。
【0022】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の非水系レジスト剥離液管理方法において、劣化成分濃度測定ステップでは、調整槽内の非水系レジスト剥離液の粘度若しくは導電率の少なくとも一方を測定するステップを含む構成を採る。
【0023】
本発明者らは、レジスト剥離処理槽のレジスト剥離液中に溶解した劣化成分濃度は、その粘度若しくは導電率と相関関係(高度な直線関係)にあることを実験により確認した。本発明では、調整槽内の非水系レジスト剥離液の粘度若しくは導電率を測定することにより、劣化成分濃度を把握する。これにより、非水系レジスト剥離液の劣化の程度を測定することが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、非水系レジスト剥離液が、例えば、空気中の酸素や炭酸ガスなどと反応し、多種の酸、その塩、酸化物などを生成することによって劣化することを発見した。本発明において、非水系レジスト剥離液の劣化成分とは、溶解レジストに加え、調整槽内の非水系レジスト剥離液の構成成分及び/又は該構成成分の分解生成物と、酸素又は二酸化炭素を含有してなる気体中の該酸素及び/又は該二酸化炭素との反応により生じた化学種又は化学成分を含む。
【0025】
本発明者らの認識によれば、上記の劣化成分の非水系レジスト剥離液の構成成分及び/又は該構成成分の分解生成物と、酸素又は二酸化炭素を含有してなる気体中の該酸素及び/又は該二酸化炭素との反応により生じた化学種又は化学成分としては、例えば、非水系レジスト剥離液の構成成分等から生成される有機酸、その酸化物、その塩、或いは窒素系有機物(例えば、アミン類等)が含まれている場合に、上記の酸又は酸化物とそのアミン類等との縮合反応生成物が挙げられる。具体的には、分子中にアルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等を有するもの、さらに具体的には、反応の最終生成物としてのN,Nビス(2−ヒドロキシエチル)オキサミド等のオキサミド類を例示することができる。本発明者らは、このオキサミドは、水には溶解するが、IPA(イソプロピルアルコール)中では析出しやすく、また、高温の剥離液中では溶解していても、冷却されると析出し、さらに、BDG(ブチルジグリコール:以下、「BDG」という。)やMEA(モノエタノールアミン:以下、「MEA」という。)が消費されることを認識している。また、配管等の詰まりを引き起こす原因となることも認められている。
【0026】
このオキサミド類の生成メカニズムについて説明する。BDGは、化学式1で表される。
【0027】
【化1】
【0028】
BDGは、水と共に加熱されることによって加水分解されて、エチレングリコールとエチレングリコールモノブチルエーテルが生成される(化学式▲2▼)。エチレングリコールモノブチルエーテルは、さらに加水分解されてエチレングリコールとブチルアルコールとが生成される(化学式▲3▼)。
【0029】
【化2】
【0030】
【化3】
【0031】
エチレングリコールは酸化されて、グリコールアルデヒドが生成される(化学式▲4▼)。
【0032】
【化4】
【0033】
グリコールアルデヒドは、さらに酸化されてグリオキザール(化学式▲5▼)とグリコール酸(化学式▲6▼)とに分解されてグリオキシル酸(化学式▲7▼)が生成され、さらに、シュウ酸(化学式▲8▼)が生成される。
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
シュウ酸が、モノエタノールアミン(化学式▲9▼)と反応すると、水が取れてN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オキサミド(化学式(10))が生成される。
【0039】
【化9】
【0040】
【化10】
【0041】
また、本発明者らは、レジスト剥離処理槽のレジスト剥離液中に溶解した劣化成分濃度は、図5に示すように、その粘度と相関関係(高度な直線関係)にあることを実験により確認した。これにより、本発明では、劣化成分濃度の粘度を測定することにより調整・制御する。さらに、本発明者らは、レジスト剥離処理槽のレジスト剥離液中に溶解した劣化成分濃度は、図7に示すように、その導電率と相関関係(高度な直線関係)にあることを実験により確認した。これにより、本発明では、劣化成分濃度の導電率を測定することにより調整・制御する。
【0042】
さらに、本発明者は、レジスト剥離液中のMEA濃度が、図2に示すように、その吸光度との間に相関関係(高度な直線関係)にあることを実験によって確認した。これにより、本発明では、MEA濃度を吸光度測定により調整・制御する。
【0043】
レジスト剥離原液としては、例えば、ジメチルスルホキシド系原液、N−メチルピロリドン系原液、ジグリコール系原液、アルカノールアミンとグライコールエーテル系溶剤との混合原液、又はこれらに各種添加剤が添加された原液などが用いられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノールなどを挙げることができる。グライコールエーテル系溶剤としては、ブチルジグリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルなどを挙げることができる。各種添加剤としては、カテコール、還元剤、金属防食剤、キレート剤などを挙げることができる。
【0044】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、これらの実施の形態に記載されている構成機器の形状、その相対配置などは、とくに特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定するものではなく、単なる説明例にすぎない。図1は、本発明の実施の形態に係るレジスト剥離液管理装置を示す図である。図中の参照番号1〜13は従来の既設のレジスト剥離処理装置を構成する機器である。すなわち、この従来のレジスト剥離処理装置は、レジスト剥離液を貯留する調整槽としてのレジスト剥離処理槽1、オーバーフロー槽2、液面レベル計3、レジスト剥離室フード4、レジスト剥離液スプレー7、レジスト剥離液スプレーへの送液ポンプ8、レジスト剥離液中の微細粒子等を除去するためのフィルター9、基板を載置してレジストを剥離しつつ移動するローラーコンベア5、基板6、及びレジスト剥離液の清浄化と撹拌のための循環ポンプ11、微細粒子除去用フィルター13、ならびにMEA等の配管類などからなっている。
【0045】
本発明に基づき、上記レジスト剥離処理装置に付設される機器は、吸光光度計15、劣化成分濃度測定手段としての分析計16、液排出ポンプ19、及びレジスト剥離原液供給缶20、レジスト剥離原液供給用の流量調節弁24、MEA原液(MEAを主成分とし、有機溶媒を混合した溶液も含む)供給缶21、MEA供給用の流量調節弁25、レジスト剥離新液供給缶22、レジスト剥離新液流量調節弁26、これら各機器を接続する配管類及び電気計装類又は空気計装類などである。補給液としては、レジスト剥離原液、MEA原液、レジスト剥離再生液及びレジスト剥離新液であるが、必ずしも全て必要というのではなく、レジスト剥離液の組成、濃度変化の程度、設備条件、運転条件、補給液の入手条件などにより、最適な補給液及び供給装置が選択される。なお、レジスト剥離再生液は、使用済みのレジスト剥離液が、例えば、蒸留再生法又は膜分離再生法により再生されたものである。膜分離再生法では、例えば、NF膜を用いて剥離液の再生が行われる。
【0046】
レジスト剥離処理槽1に貯留される液量は、レジスト剥離液スプレー7の所要量を供給できれば足りるが、工程の安定上からは制御されることが必要である。液面レベル計3は、レジスト剥離処理中に液が基板に付着して系外に持ち出されることで自然減量することによる液面レベル低下を検出し、あるいは、レジスト剥離性能が劣化した液を強制排出したときの液面レベル低下を検出し、レジスト剥離処理槽1の液量を一定範囲に管理する。ここで、レジスト剥離劣化液は排出ポンプ19を作動させることによりドレン用配管に流下する。なお、劣化液をドレン用配管を経由せずに直接系外に抜き出す場合もある。
【0047】
レジスト剥離原液、例えば、BDG(ブチルジグリコール:沸点は、230.6℃。)のレジスト剥離原液供給缶20は、配管23からのN2ガスで1〜2Kgf/cm2に加圧されており、レジスト剥離原液流量調節弁24が開放されることにより圧送される。また、MEAのMEA原液供給缶21は、配管23からのN2ガスで1〜2Kgf/cm2に加圧されており、MEA流量調整弁25が開放されることにより圧送される。レジスト剥離新液を貯留するレジスト剥離新液供給缶22は、配管23からのN2ガスで1〜2Kgf/cm2に加圧されており、レジスト剥離新液流量調節弁26が開放されることにより圧送される。
【0048】
レジスト剥離再生液は既設配管からの分岐管に通じており、レジスト剥離再生液流量調節弁27が開放されることにより送液される。このレジスト剥離再生液は、使用済みの非水系レジスト剥離液が、例えば、蒸留再生法又は膜分離再生法により再生されたものである。膜分離再生法では、例えば、NF膜を用いて剥離液の再生が行われる。
【0049】
これらの補給液はそれぞれの弁を自動調節して送液され、管路28で合流して管路12に流入し、循環流とともに混合されながらレジスト剥離処理槽1に入る。なお、これらの補給液を合流させずに、管路12又はレジスト剥離処理槽1にそれぞれ連結することも可能である。
【0050】
また、レジスト剥離液スプレー用の管路10には、液の吸光度を測定する吸光光度計15と液の粘度を測定する分析計16(例えば、これらは一体構成とする)とがオンラインで設置される。吸光光度計15及び分析計16に管路14から試料液が導入されて吸光度と粘度とが連続測定され、測定済み液は管路18から管路10に戻される。なお、吸光光度計15及び分析計16を別体として設置すること、及び測定用の循環ポンプを使用して試料液を吸光光度計15及び分析計16に導入することが可能である。また、プローブ型の吸光光度計やプローブ型の分析計をレジスト剥離処理槽1に直付けして設置することも可能である。
【0051】
次に、図1に示す実施の形態に係るレジスト剥離液管理装置の制御系統について説明する。液面レベル計3とレジスト剥離処理槽1の液面レベル、吸光光度計15とレジスト剥離液のMEA濃度、及び分析計16とレジスト剥離液の劣化成分濃度は、本質的にはそれぞれ独立機能として作用するが、本発明においては、これらを相互の補完的な関連において機能させることを特徴としている。また、はじめに製品基板の品質管理上で必要なレジスト剥離液のMEA濃度の目標値、劣化成分濃度の劣化限界値などは、操業実績又は計算に基づき予め各制御器に設定しておく。
【0052】
以下、レジスト剥離液としてMEAとBDGの混合溶液を使用した実施例について説明する。通常、約80℃の一定液温に保持されたレジスト剥離液のMEA濃度は、主として大量の排気ガスに同伴して低沸点のMEAが優先的に蒸発することにより、基板処理枚数の増加とともに減少するので、レジスト剥離液のレジスト剥離性能が劣化してくる。このため、MEA濃度は所定の目標値、例えば、39.0±1.0%に管理する必要がある。従来は、経験からの基板処理枚数との相関あるいは化学分析等によって、レジスト剥離液劣化の程度を判定していたが、迅速かつ正確な把握が困難であった。
【0053】
本発明者らは、レジスト剥離液のMEA濃度と吸光度との関係を実験により検討し、図2に示すように、MEA濃度は、測定波長λ=1048nmの吸光度とは劣化成分などの影響なく高度な直線関係にあり、正確に測定できることを確認した。管路10にオンラインで設置された吸光光度計15は、測定誤差を最小限とするための諸補償機能と吸光度制御器30を備えている。管路10から導入した試料液の吸光度測定値は、吸光度制御器30に入力され、その値が目標値となるように、出力信号により流量調節弁24、25、26、27をそれぞれ自動制御して、MEA濃度を目標値に調整するまで補給する。
【0054】
レジスト剥離性能の劣化は上述のMEA濃度によるほか、劣化成分濃度も関与している。基板処理用のレジスト剥離液は、送液ポンプ8によりレジスト剥離処理槽1から取り出され、レジスト剥離液スプレー7を経て循環使用されるため、溶解物質がレジスト剥離液中に漸次濃縮してくる。その主な溶解物質はレジスト、及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オキサミド等であり、図3に操業例として示すように、基板処理枚数の増加により濃縮されており、結果的にレジスト剥離性能を著しく劣化させている。従来は、この濃度変化をリアルタイムで測定することが行なわれておらず、かつ、レジスト剥離性能を一定値で管理することが行なわれていなかった。すなわち、従来は、基板の処理枚数を劣化指標としているが、基板の形状やレジストの膜厚やレジスト剥離パターンが一定でないため、基板種類毎の溶解レジスト量も異なってくるので、処理枚数を判定要因とすることには無理がある。
【0055】
本発明者らは、レジスト剥離液中のレジスト濃縮による汚染状態の研究から、劣化成分濃度を粘度との関係において測定することに着目し、実験により図4及び図5に示すような結果を得た。図5に見る如く、劣化成分濃度と粘度とはMEA濃度などの影響なしに高度な直線関係にある。これにより、基板処理枚数によらず、劣化成分濃度自体によるレジスト剥離性能限界値が判定可能となった。従って、管路10に吸光光度計15と一体又は別体で設置した分析計16が、レジスト剥離液の劣化成分濃度を連続的に測定して劣化限界値を超えたことを検出し、分析計制御器31の出力信号により、新鮮なレジスト剥離液がレジスト剥離処理槽1に補給され、劣化成分濃度は劣化限界値に希釈されることでレジスト剥離性能が回復する。なお、劣化成分濃度の測定は、非水系レジスト剥離液の測定温度を一定に保って行う。
【0056】
さらに、本発明者らは、レジスト剥離液中のレジスト濃縮による汚染状態の研究から、劣化成分濃度を導電率との関係において測定することに着目し、実験により図6及び図7に示すような結果を得た。図7に見る如く、劣化成分濃度と導電率とはMEA濃度などの影響なしに高度な直線関係にある。これにより、基板処理枚数によらず、劣化成分濃度自体によるレジスト剥離性能限界値が判定可能となった。従って、管路10に吸光光度計15と一体又は別体で設置した分析計16が、レジスト剥離液の劣化成分濃度を連続的に測定して劣化限界値を超えたことを検出し、分析計制御器31の出力信号により、新鮮なレジスト剥離液がレジスト剥離処理槽1に補給され、劣化成分濃度は劣化限界値に希釈されることでレジスト剥離性能が回復する。なお、劣化成分濃度の測定は、非水系レジスト剥離液の測定温度を一定に保って行う。
【0057】
ここで、図1に示す実施の形態に係るレジスト剥離液管理装置が意図した制御系統の機能的関連について述べる。レジスト剥離処理槽1が空の建浴時においては、液面レベル計3が空であることを検出して、液面レベル制御器29の出力信号により、各補給液が適正な流量比において、流量調節弁24、25、26、27により弁開度を調節して送液される。次に、吸光光度計15が建浴レジスト剥離液の吸光度を連続測定して、吸光度制御器30の出力信号により、各液が適正な微少流量において、流量調節弁24、25、26及び27の少なくとも一つにより弁開度を調節して送液され、目標値のMEA濃度になるよう自動制御される。
【0058】
次にレジスト剥離処理が開始されると、MEA濃度の下降、基板の持ち出しによる液の減量及び溶解レジストを含む劣化成分濃度の上昇が進行する。MEA濃度下降の場合は、吸光光度計15がレジスト剥離液の吸光度を連続測定して、吸光度制御器30の出力信号により、MEAが適正な微少流量において流量調節弁25により弁開度を調節して送液され、目標値のMEA濃度になるよう自動制御される。基板の持ち出しによる液の減量の場合は、液面レベル計3が下降した液面レベルを検出して、液面レベル制御器29の出力信号により、各液が適正な流量比において、流量調整弁24、25、26及び27の少なくとも一つにより弁開度を調節して送液される。
【0059】
劣化成分濃度が濃縮されて劣化限界値に達した場合は、分析計16がレジスト剥離液の劣化成分濃度を連続測定して劣化限界値を超えたことを検出し、分析計制御器31の出力信号により各補給液が適正な流量比において流量調節弁24、25、26及び27の少なくとも一つにより弁開度を調節して送液される。レジスト剥離処理槽1には、新鮮なレジスト剥離液が補給されるので、劣化成分は劣化限界値に希釈されることでレジスト剥離性能が回復する。液面レベル計3より上部には、通常ではオーバーフローしない位置にオーバーフロー用の堰が設けられてあるが、若干オーバーフローすることがあっても良い。
【0060】
本発明者らは、以上のような運用を行うことによって、総合的にレジスト剥離性能の回復、連続操業、及びレジスト剥離液使用量の削減を容易に実現することができることを実験により確認している。
【0061】
次に、概念的理解のために、本発明と従来法の操業パターンの効果の比較を図8〜図11に示す。従来法では、図8に示すようにスタート時のMEA濃度が、例えば40.0wt%で、その濃度が時間の経過につれて下降し、例えば30.0wt%(化学分析値)に達したときに液交換を行なっていた。この場合、MEA濃度の経時変化は鋸歯状になり、その濃度に変化幅が生じるので、レジスト剥離性能が一定しなかった。これに対し、本発明の装置によれば、図9に示すようにMEA濃度は時間が経過しても、例えば39.0±1.0wt%で一定であり、レジスト剥離性能が安定するとともに、液交換作業の必要もなくなる。
【0062】
また、従来の手法では、図10に示すように、スタート時から劣化成分濃度が時間の経過とともに増加し、この濃度がレジスト剥離性能を低下させる領域値に達して液交換を行っていた。この場合、図10に示すように、劣化成分濃度の経時変化は鋸歯状態となり、劣化成分濃度の変化幅が生じるので、レジスト剥離性能が一定しなかった。これに対し、本発明に係る装置によれば、図11に示すように、劣化成分濃度は、ある時間の経過後は一定となるため、レジスト剥離性能が安定化すると共に、液交換作業の必要も無くなる。
【0063】
なお、以上の説明においては、非水系レジスト剥離液としてBDGとMEAとの混合溶液を使用したが、本発明は、これらに限定されず、他の有機溶媒とMEAとの混合溶液を使用することも可能である。
【0064】
また、以上の説明では、単一のレジスト剥離設備に対して適用する例を示したが、複数のレジスト剥離設備で使用された非水系レジスト剥離液を調整槽に受け入れて管理する形態を採ることも可能である。また、調整槽は一つには限られず、複数の調整槽を設け、各調整槽内の液に対する管理を行うことも可能である。また、劣化成分濃度を測定するための分析計として、粘度計および導電率計のみでなく、pH計、超音波濃度計、液体密度計、屈折率計、及び自動滴定装置等を用いることも可能である。
【0065】
このように、実施の形態に係る非水系レジスト剥離液管理装置によれば、レジスト剥離液のMEA濃度及び劣化成分濃度を常時監視して所望の目標値に制御し、かつ、安定した液面レベルにおいて長時間の連続操業が可能となる。また、レジスト剥離液品質を一定に制御することができるので、レジスト剥離性能も安定化する。このため、液使用量の大幅な削減、歩留まりの向上、操業停止時間の減少、及び労務コストの低減を図ることが可能となる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の非水系レジスト剥離液管理装置は、レジスト剥離設備で使用される非水系レジスト剥離液を調整槽内で管理する非水系レジスト剥離液管理装置であって、調整槽内の非水系レジスト剥離液中の劣化成分の濃度を測定する劣化成分濃度測定手段と、非水系レジスト剥離原液、非水系レジスト剥離再生液、又は予め調合された非水系レジスト剥離新液の少なくとも一つを調整槽に供給する液供給手段と、測定された劣化成分の濃度に基づいて、調整槽に供給される液量を制御する液供給量制御手段とを備え、劣化成分は、溶解レジスト、及び、オキサミド類を含む構成を採る。
【0067】
本発明者らは、非水系レジスト剥離液が、例えば、空気中の酸素や炭酸ガスなどと反応し、多種の酸、その塩、酸化物などを生成することによって劣化することを発見した。本発明では、調整槽内の非水系レジスト剥離液中の劣化成分の濃度を測定し、測定された劣化成分の濃度に基づいて、調整槽に供給される液量を制御する。これにより、非水系レジスト剥離液のMEA濃度及び劣化成分濃度を所望の目標値に維持することができると共に、安定した液面レベルにおいて長時間の連続操業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るレジスト剥離液管理装置を示す図である。
【図2】MEA濃度と吸光度との関係を示すグラフである。
【図3】レジスト剥離処理枚数と劣化成分濃度との関係を示すグラフである。
【図4】レジスト剥離処理枚数と粘度との関係を示すグラフである。
【図5】劣化成分濃度と粘度との関係を示すグラフである。
【図6】レジスト剥離処理枚数と導電率との関係を示すグラフである。
【図7】劣化成分濃度と導電率との関係を示すグラフである。
【図8】従来の手法におけるMEA濃度と操業時間との関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係る装置を用いた場合におけるMEA濃度と操業時間との関係を示すグラフである。
【図10】従来の手法における劣化成分濃度と操業時間との関係を示すグラフである。
【図11】本発明に係る装置を用いた場合における劣化成分濃度と操業時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…レジスト剥離処理槽、2…オーバーフロー槽、3…液面レベル計、4…レジスト剥離室フード、5…ローラーコンベア、6…基板、7…レジスト剥離液スプレー、8…送液ポンプ、9…フィルター、10…管路、11…循環ポンプ、12…管路、13…微細粒子除去用フィルター、14…管路、15…吸光光度計、16…分析計、18…管路、19…液排出ポンプ、20…レジスト剥離原液供給缶、21…MEA原液供給缶、22…レジスト剥離新液供給缶、23…配管、24…レジスト剥離原液流量調節弁、25…MEA流量調整弁、26…レジスト剥離新液流量調節弁、27…レジスト剥離再生液流量調節弁、28…管路、29…液面レベル制御器、30…吸光度制御器、31…分析計制御器。
Claims (4)
- レジスト剥離設備で使用される非水系レジスト剥離液を調整槽内で管理する非水系レジスト剥離液管理装置であって、
非水系レジスト剥離原液、非水系レジスト剥離再生液、又は予め調合された非水系レジスト剥離新液の少なくとも一つを前記調整槽に供給する液供給手段と、
前記調整槽内の非水系レジスト剥離液中のMEA濃度を測定する吸光光度計と、
前記測定されたMEA濃度に基づいて、前記調整槽に供給される液量を制御する第1液供給量制御手段と、
前記調整槽内の非水系レジスト剥離液中の劣化成分の濃度を測定する劣化成分濃度測定手段と、
前記測定された劣化成分の濃度に基づいて、前記調整槽に供給される液量を制御する第2液供給量制御手段とを備え、
前記劣化成分は、溶解レジスト、及び、オキサミド類を含むことを特徴とする非水系レジスト剥離液管理装置。 - 前記劣化成分濃度測定手段は、前記調整槽内の非水系レジスト剥離液の粘度を測定する粘度計若しくは導電率を測定する導電率計の少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項1記載の非水系レジスト剥離液管理装置。
- レジスト剥離設備で使用される非水系レジスト剥離液を調整槽内で管理する非水系レジスト剥離液管理方法であって、
非水系レジスト剥離原液、非水系レジスト剥離再生液、又は予め調合された非水系レジスト剥離新液の少なくとも一つを前記調整槽に供給する液供給ステップと、
前記調整槽内の非水系レジスト剥離液中のMEA濃度を吸光度により測定するMEA濃度測定ステップと、
前記測定されたMEA濃度に基づいて、前記調整槽に供給される液量を制御する第1液供給量制御ステップと、
前記調整槽内の非水系レジスト剥離液中の劣化成分の濃度を測定する劣化成分濃度測定ステップと、
前記測定された劣化成分の濃度に基づいて、前記調整槽に供給される液量を制御する第2液供給量制御ステップとを含み、
前記劣化成分は、溶解レジスト、及び、オキサミド類を含むことを特徴とする非水系レジスト剥離液管理方法。 - 前記劣化成分濃度測定ステップでは、前記調整槽内の非水系レジスト剥離液の粘度若しくは導電率の少なくとも一方を測定するステップを含むことを特徴とする請求項3記載の非水系レジスト剥離液管理方法。
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