JP3914667B2 - 心磁計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は生体の神経活動あるいは心筋活動により発生する磁場を、高感度の磁気センサである超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いて計測する生体磁気計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の生体磁気計測装置として、特開平11−104096号に心磁計測装置が開示されている。一般的に、心磁計測は環境磁気雑音による影響を排除するために磁気シールドルームの中で行われている。磁気シールドルームの内部には、被検者を天板上に横たえ移動可能なベッド,被検者から発する微弱な心臓磁場を測定するSQUID磁気センサ及び該磁気センサを冷却するための液体Heを保持するデュワ,デュワを保持するガントリーが備えられている。磁気シールドルームの外部には、液体Heをデュワに連続的に補充するための自動補給装置,磁気センサーからの出力を検出した磁場強度に比例した電圧として出力するFLL回路,電圧出力を増幅し周波数の帯域を選択するアンプ・フィルター回路、そして信号処理を行いデータを出力するためのコンピュータが備えられている。
【0003】
従来の生体磁場計測装置におけるデュワは、例えば(G.L.Romani,etal.,Rev.Sci Instrom,53.pp.1815−1845(1982))に記載されているように、構造上の作りやすさから円筒形もしくは直径の異なる円筒形を組み合わせた形状のものが用いられ、垂直に設置されている。また心磁計測装置では、生体の胸部が平面に近いため、ほとんどの円筒形デュワの底面は平らなものが使われている。
【0004】
生体磁気計測に際しては、被検者をベッドに仰向けに横たわらせ、ベッドを被検者の体軸方向(前後方向)・被検者の体軸に垂直で地面と平行方向(左右方向)に調整して被検者の心臓中心位置とデュワの中心位置とを合わせ、ベッドを上下方向に調整してデュワ底面を被検者の胸部に接近させた後に心臓から発する微弱磁場の計測を行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の生体磁気計測装置では、被検者の心臓から発生する微弱磁場を感度よく計測するために、デュワの底面を被検者の胸部に接近させる必要があった。ただし被検者の胸部がデュワ底面に接触するとノイズ発生の原因になるため、わずかに離れている必要がある。このように、被検者の胸部がデュワ底面とベッドとの間で挟まれる形となるため、仮に不測の事態が生じた場合であっても、被検者は計測中に体位を変えたり、ベッドから自力で脱出することが困難となる問題があった。また生体磁気計測は環境磁気雑音による影響を排除するために磁気シールドルームの中で行われるが、磁気シールドルーム内の被検者と外部のオペレータとは、窓も無い厚さ100mm〜300mm程度の壁で仕切られているため、仮に被検者の気分が悪くなっても、外部にいるオペレータにその状況を確実に伝達する方法がなかった。本発明の目的は、被検者が自力で測定状態から脱出できる生体磁気計測装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の目的を達成するために、生体磁気計測装置において、被検者載置具およびデュワの少なくとも一方を移動させる移動手段と、前記移動手段によるベッド又はデュワの移動を指示する操作部と、該操作部に対する操作を報知する操作報知手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施例である心磁計測装置の全体構成図である。磁気シールドルーム1の内部には、被検者2を天板上に横たえるベッド3,被検者から発する微弱な生体磁場を測定するSQUID磁気センサ及び該磁気センサを冷却するための冷媒を保持するデュワ4,デュワ4を保持するガントリー14が備えられている。また、ベッド3にはベッド3を前後方向に移動するための前後送りハンドル13、および左右方向に移動するための左右送りハンドル11が備えられている。さらに、ベッド3は前後送り用移動レール10によって、デュワ直下外とデュワ直下との間を移動することが可能となっている。磁気シールドルーム内壁には、ベッド3を上下方向に移動させるための上下スイッチ22が備えられ、上下スイッチ22の操作により上限用光電スイッチ21のビーム信号を被検者が遮る位置までベッド3を自動で上昇させることができる。また、上下用油圧ポンプハンドル12によりベッドを上下方向に微調整することができ、デュワ4の底面と被検者の胸部とのギャップの微調整が可能である。オペレータはこれらを操作することにより、被検者がベッドに乗降するのに適した計測準備状態と、心臓磁場を計測をするための計測状態とに、ベッド3の配置を調整することができる。ベッド3とデュワ4に胸部を挟まれた計測状態の被検者が無理なく操作できるように、ベッド3の天板側面の被検者が仰臥したときに自然に手が届く位置には、右手側に脱出スイッチ23,左手側に赤・緑・黄の3つのボタンを備えたコールスイッチ(図示しない)が配置されている。これら2つのスイッチは天板側面に内蔵され、体軸方向にスライド可能となっており、被検者の体格にあわせスイッチ位置を調整することができる。なお、脱出スイッチ23及びコールスイッチはスイッチボックスとして被検者に保持させても良い。また、このスイッチは電気信号を送るDC電気接点スイッチであるが、ボタンを押さなければ配線に電流が流れないため、計測上問題はない。
【0008】
次に油圧系について説明する。油圧ポンプ20は、ノイズ除去のために磁気シールドルーム1の外部に設置され、上下スイッチ22の操作により油タンク19内の油を吸引し、フレキシブル配管,逆止弁30,上下用油圧ポンプハンドル12及び逆止弁30を経由して、ベッド3を上下移動するための油圧シリンダー18を駆動する。一方油圧シリンダー18の戻り油は、配管を経由して油タンク19に貯留される。また、油圧シリンダー18の加圧側と戻り側の油圧配管16は、下降用リリーフバルブ15、及び配管開放用の操作弁17にてそれぞれ短絡することができる。
【0009】
ここで、本発明の脱出機構について説明する。被検者2は計測中何らかの要因で緊急にベッド3より降りたい場合、ベッド天板の右側面に内蔵された脱出スイッチ23を押す。これにより操作弁17が開き、油圧シリンダー18の油が操作弁17を経由し油タンク19に戻されるため、ベッド3が自重で下死点まで降下して停止する。ベッド3は油圧の配管抵抗があるため一気に下降することはないが、必要であれば図示しない絞りをつけることにより降下スピードをコントロールすることができる。ベッド3が下死点に降下することによりベッド3とデュワ4の底面との間隔が確保されるので、被検者2は体をひねったり,横になったりして、ベッド3より安全に起き上がることができる。また脱出スイッチ23を押すことにより、ベッド3内のベッドブザー24が鳴り、被検者2自身が当該操作を確認することができる。被検者自身が気づかないうちに誤って該脱出スイッチ23を操作した場合にも、ベッドブザー24が鳴ることによりベッド3が下降することが確認できるので、不意にベッド3が下降することによる心理的負担を防ぐことができる。更に脱出スイッチ23を押すことにより、磁気シールドルーム1外のコンピュータ9のブザー27が鳴り、かつCRT画面26に「HELP!」および「脱出機構作動中」(図示しない)とメッセージが表示される。これにより磁気シールドルーム1外のオペレータ25は磁気シールドルーム1内の被検者が脱出機構を作動させたことを把握することが可能となる。
【0010】
また、被検者2は単に磁気シールドルーム1外にいるオペレータ等を呼びたい場合は、ベッド天板の左側面に内蔵されたコールスイッチを操作する。これにより、ベッド3内のベッドブザー24が鳴り、磁気シールドルーム1外のコンピュータ9のブザー27を鳴らし、かつCRT画面26にメッセージが表示される。なお、コールスイッチの3つのボタン赤・緑・黄にはそれぞれ異なる機能を持たせてある。例えば、緑ボタンは被検者が計測の際に入れ歯は外さなくても良いか等の簡単な質問をオペレータ等に聞きたい場合に使用し、このボタンを押したときには画面に「HELP!」および「質問がある」(図示しない)とメッセージが表示される。また、黄ボタンは看護婦を呼びたい場合に使用し、このボタンを押したときには画面に「HELP!」および「看護婦に来てほしい」(図示しない)とメッセージが表示される。さらに、赤ボタンは深呼吸の際にデュワの圧迫を受けるため確認して解除してほしい場合などオペレータに緊急に来てほしいときに使用し、このボタンを押したときには画面に「HELP!」および「至急来てほしい」(図示しない)とメッセージが表示される。
【0011】
本実施例によれば被検者は緊急時に自発的にベッド3とデュワ4に胸部を挟まれた状態から脱出することが可能となる。また、状況に応じて磁気シールドルーム外に連絡をすることが可能となる。さらに、磁気シールドルーム外のオペレータは内部の状況を容易に把握することが可能となる。
【0012】
図2は本発明の他の実施例である心磁計測装置の全体構成図である。図1に示した実施例と異なるところは、ベッドが下降するのではなく、デュワが上昇することにより胸部が挟まれた計測状態から開放されることである。本実施例において、デュワ4はガントリー14にデュワガイド29で上下可動に保持されている。そしてデュワフランジ28に、ガントリー14を上昇させるためのデュワ上下用シリンダー31が接続されている。また、デュワ上下用シリンダー31を駆動するための油圧配管16が布設され、該油圧配管16を経由して該デュワ上下用シリンダー31を駆動するデュワ用油圧ポンプ32及び油タンク20が磁気シールドルーム1外に設置されている。また油圧配管16の加圧側配管には逆止弁30が設置されており、デュワ上下用シリンダー31の落下、つまりデュワ4の落下を防止している。そしてデュワ上下用油圧シリンダー31の加圧側と戻り側の配管はリリーフバルブ33で短絡されており、上昇させたデュワ4を安全に下降し、正常位置に復帰することができる。図1に示した実施例と同様に、被検者は計測中何らかの要因で緊急にベッド3より降りたい場合、脱出スイッチ23を操作する。これにより、デュワ用油圧ポンプ32が稼動しデュワ4が上昇するため、ベッド3とデュワ4の底面との間隔が確保されるので、被検者2は体をひねったり,横になったりして、ベッド3より安全に起き上がることができる。
【0013】
また他の実施例として、図示はしないが、ベッドの前後送り用移動レール10による移動を機械的におこなうための油圧ピストンを設け、被検者の操作によりベッド3をデュワ直下からデュワ直下外の位置に水平移動させることでも、本発明の目的を達成することができる。
【0014】
以上、心磁計測装置を例に述べたが、本発明は脳磁計測装置を含む微弱な磁場を測定する生体磁気計測装置に、広く適用できるものである。脳磁計測装置では、ヘルメット状のデュワを持ちベッドは椅子の形状をしているものもあるため、本実施例におけるベッドとは一見異なったものに見えるが構造的には同じであり、例えば脳磁計測装置において、ベッドが下方に移動する移動手段,該移動手段を操作する操作手段及び磁気シールドルーム外部に該操作を認識させる報知手段を具備した場合も、当然本発明に含まれる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、被検者が自発的に、被検者をベッドとデュワとの間に挟まれた計測状態から速やかに開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例にかかる心磁計測装置の全体図。
【図2】本発明の第2の実施例にかかる心磁計測装置の全体図。
【符号の説明】
1…磁気シールドルーム、2…被検者、3…ベッド、4…デュワ、5…液体
He、6…自動補給装置、7…FLL回路、8…フィルター回路、9…コンピュータ、10…前後送り用移動レール、11…左右送りハンドル、12…上下用油圧ポンプハンドル、13…前後送りハンドル、14…ガントリー、15…下降用リリーフバルブ、16…油圧配管、17…操作弁、18…油圧シリンダー、19…油タンク、20…油圧ポンプ、21…上限用光電スイッチ、22…上下スイッチ、23…脱出スイッチ、24…ベッドブザー、25…オペレータ、26…CRT画面、27…ブザー、28…デュワフランジ、29…デュワガイド、30…逆止弁、31…デュワ上下用シリンダー、32…デュワ用油圧ポンプ、33…リリーフバルブ。
Claims (3)
- 磁気センサを低温に保持するデュワと、
被検者を載置するための被検者載置具と、
該被検者の胸部が前記被検者載置具と前記デュワの間に挟まれた状態から開放されるように、該被検者載置具を下降させる移動手段と、
前記被検者が前記被検者載置具に載置された状態で操作できるよう、該被検者載置具に設けられた、前記移動手段を動作させるための操作部と、
を備えたことを特徴とする心磁計測装置。 - 請求項1記載の心磁計測装置において、更に
前記操作部に対する操作を磁気シールドルーム内、または磁気シールドルーム外へ報知する報知手段を備えたことを特徴とする心磁計測装置。 - 請求項1記載の心磁計測装置において、
前記被検者の体格に応じて前記操作部の位置を調整する調整手段を備えたことを特徴とする心磁計測装置。
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