JP3914272B2 - アドゼベリンをコードする遺伝子 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、Ca2+依存性のアクチンフィラメント切断タンパク質であり、エキソサイトーシスを制御する機能を有するアドゼベリン(adseverin)タンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該ベクターによる形質転換体、該遺伝子を用いるアドゼベリンの製造方法、該製造方法によって得られる組換えアドゼベリンタンパク質に関する。本発明はまた、アドゼベリンタンパク質をコードする塩基配列と特異的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチド、およびアドゼベリンタンパク質をコードする塩基配列と特異的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドを動物に投与することからなるアドゼベリンの生成を抑制する方法、ならびにアドゼベリンタンパク質を認識する抗体に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの分泌細胞では、休止状態においては神経伝達物質やホルモンなどの分泌産物は顆粒または小胞の形で貯蔵されており、細胞が適当なシグナルを受け取ったときにエキソサイトーシスによって細胞から外ヘと放出される。エキソサイトーシスの過程においては、顆粒や小胞が形質膜の方へと移動してこれと接触して融合し、膜が開口する。
【0003】
このエキソサイトーシスは細胞内の遊離カルシウム濃度[Ca2+によって大きく制御されている(Knight et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.493:504−523,1987)。すなわち、休止細胞では[Ca2+が低く、エキソサイトーシスは[Ca2+依存性の数段階によって阻害されると考えられている(Burgoyne,Biochem.BiophySs.Acta 779:201−216,1984)。副腎髄質の分泌細胞であるクロマフィン細胞(chromaffin cells)を含む多くの分泌細胞では、アクチンフィラメントからなる形質膜下のミクロフィラメント・ネットワークをもっており、このネットワークが顆粒や小胞が形質膜に移動するのを阻害する機能を有していると思われる(Cheek et al.,FEBS Lett.207:110−114,1986;Lelkes et al.,FEBS Lett.208:357−363,1986)。エキソサイトーシスによって分泌産物を放出する前には、Ca2+依存性のメカニズムによって[Ca2+が増加して、このネットワークが分解される(Vitale et al.,J.Cell Biol.113:1057−1067,1991)。
【0004】
ここで、アクチンとは真核細胞に普遍的に存在する分子量42kDの球状タンパク質で、筋細胞の収縮などに密接に関わる細胞骨格タンパク質であり、モノ−アクチンは重合してフィラメントになる。アクチンは生理的イオン強度下では、in vitroでそのおよそ100%が重合してフィラメントになってしまうが、実際の細胞内では、各種のアクチン調節タンパク質の作用によりフィラメント(ゲル)とモノマー(ゾル)の状態が可逆的に調節されており、それが細胞外刺激に応じて変化する。
【0005】
ウシクロマフィン細胞において、このプロセスに直接関与すると思われるタンパク質であるゲルゾリン(gelsolin)が同定された(Yin et al.,Nature 281:583−586,1979)。ゲルゾリンはinvitroでCa2+に依存するアクチンフィラメント切断活性を有し、さらにアクチンフィラメントの反矢じり端(barbed end)のキャップ作用および核形成活性を有している。さらに最近になってゲルゾリンと類似の活性を有するが、異なる物質であるアドゼベリン(74kDaのタンパク質)が東京大学医学部薬理学教室、野々村教授らのグループによりウシ副腎髄質から単離された(Maekawa et al.,J.Biol.Chem.265:10940−10942,1990)。
【0006】
ゲルゾリンは各種組織や血漿中に比較的広く分布している(Stossel et al.,Annu.Rev Cell Biol.1:353−402,1985)が、アドゼベリンの分布は主として分泌機能を有する組織に限られている(Sakurai et al.,Neuroscience 38:743−756,1990)。このような組織分布における差は、アドゼベリンの方がゲルゾリンよりも分泌プロセスに、すなわち、神経伝達物質、内分泌物質あるいは生理活性物質の放出のコントロールにより深く関与していることを示唆している。したがって、アドゼベリンの構造と機能を解明することはエキソサイトーシスにおけるアクチンフィラメントの役割と、その調節機構を明らかにすることとなり、極めて興味深い。
【0007】
従来、この過程は、融合タンパク質などの働きによって調節されるという考えが主流であった(西崎孝道、「開口放出現象における細胞質タンパク質の役割」、細胞工学、13:353−360,1994)が、野々村教授らの仮説は、この過程が最終的にアクチン−ミオシン相互作用によるものであるとする点で新しく、またミオシン軽鎖キナーゼによるミオシン側の調節(持田澄子、「ミオシン軽鎖キナーゼ神経伝達物質放出とその調節におけるミオシン軽鎖キナーゼの役割」、細胞工学、13:381−388,1994)ではない、アクチン切断タンパクによるアクチン側からの調節が非筋細胞で起こっているとする全く新しい画期的概念である。
【0008】
【発明が解決すべき課題】
アクチンは、細胞の崩壊により細胞外に露出し、血液中で血小板凝集を惹起あるいは増強し、血栓の成長の引き金になると考えられている(Scarborough et al.,Bio,chem.Biophys.Res・Commun.100:1314−1319,1981)。一方、アドゼベリンは上述したように生体内において、ゲルゾリンと類似の活性、すなわちアクチンフィラメント切断活性を有している。これらのことより、アドゼベリンは血栓にかかわる薬剤(例えば血栓抑制剤)などのような医薬用途に利用できる可能性があると考えられる。
【0009】
さらに、アドゼベリンをコードする塩基配列から、そのアンチセンスDNA配列を作製して投与することにより、例えば、生理活性物質の放出を遺伝子レベルで抑制することも考えられる。特に、アドゼベリンは血管平滑筋の増殖に深く関わっている可能性があることから、アンチセンスDNAの投与によりアドゼベリンの機能を抑制し、これによって平滑筋増殖を抑制しうると考えられる。したがって、アドゼベリンのアンチセンスDNAの投与は、バイパス手術時などの血管移植時の血管狭窄の抑制剤や経皮的冠血管形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty:PTCA)後の再狭窄の抑制剤として利用できる可能性を有している。
【0010】
アクチン調節タンパク質であるアドゼベリンを上述のような医薬用途に用いるには、これを大量にかつ均一に得る必要がある。しかしながら、従来、アドゼベリンを動物組織自体、あるいはその産生細胞の培養上清から単離する方法では大量に均一なアドゼベリンを得ることは困難であった。そこで、アドゼベリンをコードする遺伝子の塩基配列を明らかにし、遺伝子組換え技術を用いてアドゼベリンを大量に製造することが望まれていた。
【0011】
本発明の目的はアドゼベリンをコードする遺伝子の塩基配列を決定することにあり、併せて該配列を含む組換えベクターを用いる遺伝子組換え技術を用いてアドゼベリンを大量に製造し、これを用いたスクリーニング系などを構築することにより、新たな医薬品を開発する可能性を示すことである。さらに、アドゼベリンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいてアンチセンスDNAを製造し、アドゼベリンの生成抑制剤として用いることも目的の1つである。また、アドゼベリンタンパク質を認識する抗体を提供することも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ウシ副腎髄質からアドゼベリンを単離、精製して、その性状を明らかにした(Sakurai et al.,Neuroscience 38:743−756,1990;Sakurai et al.,J・Biol.Ohem.266:4581−4584,1991:Sakurai et al.,J.Biol.Chem.266:15979−15983,1991)。
【0013】
さらにこのタンパク質の加水分解断片を得て、そのアミノ酸配列の部分情報をもとにオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、ウシ腎臓から樹立した細胞系であるMDBK細胞(JCRB−Cell:財団法人がん研究振興財団から入手)から調製したmRNAから逆転写反応によってcDNAを作製し、上記合成プライマーを用いてポリメラーゼチェインリアクション(PCR)により、ウシアドゼベリンをコードするDNA断片を特異的に増幅した。次いで32Pで標識したこのDNA断片をプローブとしてウシ副腎髄質から調製したcDNAライブラリーをスクリーニングし、得られた3つの重複するクローンから目的とするアクチンフィラメント切断タンパク質をコードする遺伝子を組み立て、その全塩基配列を明らかにすることに成功した。
【0014】
本発明者らは、次いで、このウシアドゼベリンcDNAをプローブとし、ヒト腎臓mRNAより作製したcDNAライブラリーを厳密度の低い条件のプラークハイブリダイゼーションによってスクリーニングした結果、ヒトアドゼベリンcDNAを単離し、その全塩基配列を明らかにすることに成功した。
【0015】
すなわち、本発明は、アドゼベリンをコードする遺伝子を提供する。さらに詳しくは本発明は、配列表の配列番号4または5に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列、またはこれを一部置換、欠失もしくは付加した塩基配列、あるいはこれらにハイブリダイズする塩基配列を含むDNAを提供する。
【0016】
本発明はまた、アドゼベリンタンパク質をコードする遺伝子を含む組換えベクターを提供する。
【0017】
本発明はさらに、アドゼベリンタンパク質をコードする遺伝子を含む組換えベクターによって形質転換された原核もしくは真核宿主細胞を提供する。
【0018】
本発明はさらに、アドゼベリンタンパク質をコードする遺伝子を含む組換えベクターによって形質転換して得られた形質転換体を培養し、産生された目的タンパク質を分離、精製することを特徴とする、ヒトアドゼベリンタンパク質の製造方法を提供する。
【0019】
本発明はさらに、上記製造方法で製造された組換えアドゼベリンタンパク質を提供する。
【0020】
本発明はさらに、アドゼベリンをコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドを提供する。
【0021】
本発明はさらに、アドゼベリンをコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドを動物に投与することからなる、動物におけるアドゼベリンの生成を抑制する方法を提供する。
【0022】
本発明はさらに、アドゼベリンタンパク質を認識する抗体を提供する。
【0023】
さらに、本発明者らは標識したアドゼベリンcDNAの断片をプローブとして用いてインサイチュハイブリダイゼーションを行い、組織中におけるアドゼベリンmRNAの発現を試験して、アドゼベリンの組織中における分布を明らかにした。また、アドゼベリン中におけるアクチン切断ドメインも併せて検討した。
【0024】
【具体的な説明】
アドゼベリンをコードするcDNAは、例えばアドゼベリンを産生する細胞などからmRNAを調製した後、既知の方法により二本鎖cDNAに変換することにより得られる。
【0025】
本発明ではmRNAの供給源として、ウシアドゼベリンに関してはウシ腎臓から樹立した細胞系であるMDBK細胞およびウシ副腎髄質(Madin et al.,Proc.Soc.Exp.Biol.98:574−576,1958)を、またヒトアドゼベリンに関してはCLONTECH Laboratories Inc.社より購入したヒト腎臓mRNAを用いたが、これに限らず、副腎髄質クロマフィン細胞、腎臓髄質、甲状腺組織のホモジェネートなどを用いてもよい。
【0026】
RNAを調製するには、例えば、Chirgwinら(Biochemistry 18:5294−5299,1979)の方法にしたがって、グアニジンチオシアネート処理後、塩化セシウム密度勾配遠心を行うことによって全RNAを調製できる。また、他の生理活性タンパク質の遺伝子をクローン化するときに用いられた方法、例えばバナジウム複合体などのリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤処理、フェノール処理を行うことによっても実施することができる。
【0027】
こうして得られたmRNAから二本鎖cDNAを得るには、例えばmRNAを鋳型にして、3’末端にあるポリA−鎖に相補的なオリゴ(dT)またはランダムプライマー、あるいはアドゼベリンのアミノ酸配列の一部に相応する合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして逆転写反応を行い、mRNAに相補的なDNA(cDNA)を合成する。
【0028】
本発明では、以下の方法によってウシアドゼベリンのcDNAを得た。すなわち、ランダムヘキサマーをプライマーとする逆転写反応を行い、次いで縮重プライマーを用いるPCRによりこれを増幅して、約700bpのアドゼベリンの部分cDNAを表すPCR産物を得た。上記PCR産物をpBluescriptSK(−)(Stratagene社)中にサブクローニングした。次いでウシ副腎髄質から調製したλgt11 cDNAライブラリーを、32P−標識したクローン化PCR産物をプローブとしてスクリーニングした。本発明ではこれにより3つのプラークを得て、その重複する塩基配列から目的とするアドゼベリンをコードするcDNAを組み立てた。オープンリーディングフレームは715アミノ酸からなる80527ダルトンのタンパク質であることが判明した(配列表の配列番号4参照)。
【0029】
また、ヒトアドゼベリンのcDNAは以下の方法で得た。すなわち、PharmaCia社より購入したTimeSaverTM cDNA Synthesis Kitを用いて二本鎖cDNAの合成を行った。
【0030】
合成した二本鎖cDNAを、上記Kitに含まれているSpun Columnか、あるいはアガロース電気泳動によりサイズ分画し、前者の場合には約400塩基対(bp)以上、後者の場合は約2−3kbpのサイズをもつcDNAのみを回収した。この末端にアダプターを連結しベクターへ組み込んだ。ベクターに組み込んだcDNAをSTRATAGENE社から購入したGIGAPACK II PACKAGING EXTRACTを用いてパッケージングを行い、cDNAライブラリーとした。
【0031】
次いで、32Pで標識し、熱変性したウシアドゼベリンcDNAをプローブとし、厳密度を下げた条件でcDNAライブラリーをスクリーニングして、1つの陽性ファージクローンを得た。このcDNA部分をPCR法により増幅し、プラスミドベクターに組み込み、クローンpADa−17を得た。このクローンの塩基配列を部分的に決定したところ、ウシアドゼベリンcDNAの塩基配列と非常に高い相同性(80−90%)を示した。一方、アドゼベリンのファミリータンパク質であり、既に塩基配列が報告されているゲルゾリンとは60%以下の相同性しか示さず、明らかに異なる遺伝子であったので、このクローンはアドゼベリンのヒトカウンターパートであると推察された。しかしながら、このクローンは全長約1kbp程度であり、全コーディング領域を含むものとは考えられなかったので、さらにスクリーニングが必要であった。
【0032】
そこで、上記クローンpADa−17をプローブとし、厳密度を上げた、通常の条件でプラークハイブリダイゼーションを行った。その際、完全長のクローンを効率よく得ることを目的として、新たにヒト腎臓mRNAより作製した、2−3kbpのcDNAのみを濃縮したライブラリーを使用した。これから5つの陽性ファージクローンを得て、ExAssistTM/SOLR SYSTEMによるプラスミド(pBluescriptSK(−)ベクター)への切り出しを行い、プラスミドクローンphAD−2〜6を得た。このうちphAD−2とphAD−4について塩基配列を決定し、両者の配列を組み合わせることにより、配列表の配列番号5に示す配列を決定した。この塩基配列から、79番目からのATGを開始コドン(Met)とする715アミノ酸からなるオープンリーディングフレームが見いだされた。このアミノ酸配列をウシアドゼベリンのアミノ酸配列と比較した結果が図9である。両者はアミノ酸レベルで約92%の相同性がみられ、種を越えて非常によく保存されているタンパク質であると考えられる。完全に一致していないアミノ酸についても、類似性の高いアミノ酸が使用されていることが多いことも明らかとなった。また塩基レベルでもコーディング領域内では約90%の相同性がみられるが、ストップコドン以降は急激に相同性を失っており、種の違いを反映しているものと考えられる。
【0033】
また、図9の中で、四角で囲んだ部分はリン脂質が結合すると推定される領域である。ウシアドゼベリンにおいてリン脂質の結合領域であるとされている部分(112)KGGLKYKA(119)と、(138)RLLHVKGRR(146)は、ともにヒトアドゼベリンにおいても完全に保存されていた。アドゼベリンとゲルゾリンとのリン脂質に対する感受性の差異は、この領域のアミノ酸配列の違いに起因しているのかも知れないことが示唆された。アドゼベリンは細胞内において、細胞膜付近に存在することが示唆されており、細胞膜の構成成分による活性調節が存在するならば、重要な意味をもつものと思われる。特にゲルゾリンもCa2+で同様に活性化されることを考えると、両者の使い分けがこのリン脂質による調節に依っている可能性が高い。
【0034】
このようにして得られた本発明のクローン化されたアドゼベリンをコードする遺伝子を用いると、遺伝子組み換え技術によってアドゼベリンを大量に製造し、医薬用途に使用することが可能である。
【0035】
すなわち、本発明のアドゼベリンをコードする遺伝子を適当なベクターに組み込むことにより、原核細胞または真核細胞の宿主細胞を形質転換することができる。
【0036】
さらに、これらのベクターに適当なプロモーターや形質発現にかかわる配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞において遺伝子を発現することが可能である。また、目的とする遺伝子に他のポリペプチドをコードする遺伝子を連結して、融合タンパク質として発現させ、精製を容易にしたり、発現量を上げたり、また精製工程において適当な処理を施すことにより、目的タンパク質を切り出すことも可能である。
【0037】
一般に、真核生物の遺伝子はヒトインターフェロン遺伝子で知られているように、多形現象を示すと考えられ、この多形現象によって1個またはそれ以上のアミノ酸が置換される場合もあれば、塩基配列の変化はあってもアミノ酸は全く変わらない場合もある。
【0038】
また、配列表の配列番号4または5のアミノ酸配列中の1個またはそれ以上のアミノ酸を欠くかまたは付加したポリペプチド、あるいはアミノ酸が1個またはそれ以上のアミノ酸で置換されたポリペプチドでもアクチンフィラメント切断活性を有することがある。例えば、ヒトインターロイキン2(IL−2)遺伝子のシステインに相当する塩基配列をセリンに相当する塩基配列に変換して得られたポリペプチドがIL−2活性を保持することも既に公知になっている(Wanget al.,Science 224:1431,1984)。これらのアドゼベリンをコードする遺伝子の改変体を作製する技術は当業者には公知である。
【0039】
さらに、上記したように、ウシアドゼベリンとヒトアドゼベリンとは相同性が高く、完全に一致していないアミノ酸についても類似のアミノ酸が使用されている部分が多い。したがって、ウシアドゼベリンとヒトアドゼベリンの一部が置換した遺伝子、あるいはこれらのキメラ遺伝子も本発明の範囲内である。
【0040】
また、真核細胞で発現させた場合、その多くは糖鎖が付加され、アミノ酸を1個ないしそれ以上変換することにより糖鎖付加を調節することができるが、この場合でもアクチンフィラメント切断活性を有することがある。それゆえ、本発明におけるヒトアドゼベリンをコードする遺伝子を人工的に改変したものを用いて、得られたポリペプチドがアクチンフィラメント切断活性を有する限り、それらのポリペプチドをコードする遺伝子はすべて本発明に含まれる。
【0041】
さらに、得られたポリペプチドがアクチンフィラメント切断活性を有し、配列番号4または5に示す遺伝子とハイブリダイズする遺伝子も本発明に含まれる。なお、ハイブリダイゼーション条件は、通常行われているプローブハイブリダイゼーションの条件を適用することができる(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Mannual,Sambrook et al.,Cold Spring Harbor LaboratoryPress,1989)。
【0042】
発現ベクターは、複製起源、選択マーカー、プロモーター、RNAスプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどを含むことができる。
【0043】
発現系に用いる宿主のうち原核生物宿主細胞としては、例えば、大腸菌、枯草菌などが挙げられる。また、真核生物のうち、真核微生物の宿主細胞としては、例えばイースト、粘菌が挙げられる。あるいは、Sf9などの昆虫細胞を宿主細胞として使用してもよい。さらに、動物細胞由来の宿主細胞としては、例えば、COS細胞、CHO細胞などが挙げられる。
【0044】
以上のようにしてアドゼベリンをコードする遺伝子で形質転換した形質転換体を培養することにより産生されたタンパク質は細胞内または細胞外から分離し、精製することができる。
【0045】
なお、アドゼベリンの分離、精製には通常のタンパク質で用いられる分離、精製方法を使用することができる。例えば、各種クロマトグラフィー、限外濾過、塩析、透析などを適宜選択、組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明によると、アドゼベリンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて、アンチセンスDNAの作製ができる。アンチセンスDNAは、mRNAに対して相補的塩基配列をもち、mRNAと塩基対を形成することにより、遺伝情報の流れを遮断し、最終産物であるアドゼベリンタンパク質の合成を抑制する。本発明において使用できるアンチセンスDNAは、配列表の範囲番号4または5に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列と特異的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドである。
【0047】
ここで「オリゴヌクレオチド」の語は、天然に存在する塩基および本来のホスホジエステル結合によって結合した糖部分から生成されたオリゴヌクレオチドおよびその類似体を意味する。したがって、この用語が含む第1の群は、天然に存在する種または天然に存在するサブユニットまたはそれらの同族体から生成された合成種である。また、サブユニットとは隣接するサブユニットに対してホスホジエステル結合または他の結合によって結合した塩基−糖の組み合わせをいう。またオリゴヌクレオチドの第2の群はその類似体であり、これはオリゴヌクレオチドと同様に機能するが、天然に存在していない部分を有する残基を意味する。これらには、安定性を増加するためにリン酸基、糖部分、3’,5’末端に化学修飾を施したオリゴヌクレオチドを含む。例えば、ヌクレオチド間のホスホジエステル基の酸素原子の1つを硫黄に置換したオリゴホスホロチオエート、−CHに置換したオリゴメチルホスホネートなどが挙げられる。また、ホスホジエステル結合は、非イオン性かつ非キラル性である他の構造で置換されていてもよい。さらに、オリゴヌクレオチド類似体としては、修飾された塩基形態、すなわち天然に通常見いだされるもの以外のプリンおよびピリミジンを含む種を用いてもよい。
【0048】
本発明によるオリゴヌクレオチドは、好ましくは8〜40個、さらに好ましくは15〜30個のサブユニットを有する。
【0049】
本発明においては、オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするmRNAの標的部分は転写開始部位、翻訳開始部位、イントロン/エキソン結合部位または5’キャップ部位が好ましいが、mRNAの二次構造を考慮して立体障害のない部位を選択すべきである。
【0050】
本発明によるオリゴヌクレオチドは、当業界で公知の合成法、例えばApplied Biosystems社などの合成装置を用いる固相合成法によって製造できる。同様の方法を用いて、他のオリゴヌクレオチド類似体、例えば、ホスホロチオエートやアルキル化誘導体を製造することもできる(村上 章ら、「機能性アンチセンスDNAの合成」、有機合成化学、48(3):180−193、1990)。
【0051】
本発明のアドゼベリンをコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドを動物に投与することによって、動物におけるアドゼベリンの生成を抑制することが可能である。また、アドゼベリンは上述したように、血管平滑筋の増殖に関与している可能性がある。血管平滑筋の増殖はバイパス手術などの血管移植時の血管狭窄やPTCA施行例の30−40%に観察される血管再狭窄をもたらす原因の1つであると見なされている。したがって、アドゼベリンをコードする遺伝子のアンチセンスDNAの投与により血管平滑筋の増殖を抑制し、このような狭窄の予防・治療剤として使用することができる。例えば、移植血管を、移植する前に本発明のオリゴヌクレオチドを含む溶液に浸しておいて、オリゴヌクレオチドを細胞内に取り込ませた後に移植することにより血管狭窄を防止することが考えられる。また、PTCAカテーテルあるいはステントを利用して本発明のオリゴヌクレオチドを投与することによる再狭窄の抑制も可能である。
【0052】
本発明のアドゼベリンタンパク質を認識する抗体を作製するには、定法(例えば、新生化学実験講座1、タンパク質I、p.389−397、1992参照)を用いて、抗原となるアドゼベリンを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。このようにして得られた抗アドゼベリン抗体はELISAなどのエンザイムイムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光法などの各種免疫学的測定法に用いることができる。
【0053】
本発明のアドゼベリンをコードする遺伝子を得る方法および該遺伝子の宿主細胞中での発現について以下の実施例で詳細に説明するが、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0054】
【実施例】
実施例1:ウシアドゼベリンの単離および精製
ウシ副腎を屠殺場から得た。以下のすべての操作は4℃で実施した。副腎髄質を皮質から注意深く分離し、ハサミで細かく切断した。得られた副腎髄質80gを、Tris−HCl 40mM、EGTA 4mM、EDTA 2mM、DTT 1mM、DFP 1mM、PMSF 1mMおよび10−6M E−64−c、10μg/ml アプロチニン(Trasylol、Bayer社)および0.02%NaNを含むバッファーA(pH8.0)3容量中、Waringブレンダーでホモジェナイズした。ホモジェネートを最大13,000gで30分間遠心して上清を濾過し、次いでさらに最大150,000gで90分間遠心した。上清にCaClおよびMgCl溶液1モルを最終濃度がそれぞれ0.5および1mMとなるように加えた。この溶液をKCl 50mM、Tris−HCl 20mM、CaCl 0.5mM、MgCl 1mM、PMSF 0.1mMおよび0.02%NaNを含むバッファーB(pH7.5)であらかじめ平衡化しておいたDNaseI−Affi−Gel 15カラムにかけた。カラムをバッファーB、次いでKCl濃度を50mMから0.6Mに変えたバッファーBで洗浄した。
【0055】
次いでCa2+−感受性タンパク質を0.5mM CaClの代わりに10mM EGTAを含む修飾バッファーBで、次いで6M尿素を含む修飾バッファーBで溶出した。EGTA含有バッファーによって3つのCa2+−感受性アクチン結合タンパク質およびアクチン(分子量42,000)が溶出された。これらの3つのタンパク質の分子量は、SDS PAGEによりそれぞれ86,000、84,000および74,000と推定された(図1、レーン1−4)。カラムをバッファーBで洗浄して再生して4℃で保存した。
【0056】
回収したEGTA溶出物中のpHを1M Trisで8.2に調整し、KCl50mM、Tris−HCl 20mM、EGTA 1mM、PMSF 0.1mM、2−メルカプトエタノール 7mMおよび0.02%NaNを含む溶液(pH8.2)であらかじめ平衡化しておいたQ−Sepharoseイオン交換カラム(1.5×12cm)にかけた。50から250mMのKClの直線状グラジエントでタンパク質を溶出し、次いで1M KClで溶出した。KCl濃度0−150mMに相当する最初のピークに分子量74,000のタンパク質と少量の夾雑タンパク質とが含まれていた(図1、レーン6)。分子量86,000と84,000のタンパク質ならびにアクチンは1M KCl溶出物である第2のピークに含まれていた(図1、レーン7)。
【0057】
分子量74,000のタンパク質が含まれる分画を回収し、濃縮してNaCl150mM、Tris−HCl 20mM、EGTA 1mM、DTT 0.1mMおよび0.02%NaNを含むバッファーC(pH7.0)で平衡化したゲル濾過HPLCカラム(TSK−G3000SW、トーソー社)にかけた(図1、レーン8)。ピーク分画を回収して氷上で保存した。
【0058】
実施例2:ウシアドゼベリンのプロテアーゼ分解
(1)スタフィロコッカスV8プロテアーゼによる分解
消化バッファーC(1mM EGTA、1mM DTT、0.02% NaNおよび50mM NHHCO)中のアドゼベリンを、室温中、1:25(wt/wt)の比率でスタフィロコッカスV8プロテアーゼで分解した。DFP1mMを加えて反応を停止し、SDS−PAGEにより分析した。その結果、アドゼベリンは分子量42,000と39,000の2つの主要断片に分解された。V8プロテアーゼで長時間消化を続けると、分子量39,000の断片はさらに分子量28,000と分子量15,000の断片に分解されたが、分子量42,000の断片は安定であった。
(2)トリプシンによる分解
バッファーD(1mM EGTA、1mM DTT、0.02% NaNおよび20mM Tris−HCl、pH8.0)中のアドゼベリンを、1:200の比率でトリプシンにより分解した。25℃で60分後、エタノール中の200mM PMSFを最終濃度が4mMとなるように加えた。SDS−PAGEで分析したところ、この場合にも分子量42,000と39,000の2つの断片を生じ、長時間かけてもこれ以上分解されなかった。
【0059】
また、2種類の抗ゲルゾリンポリクローナル抗体と上記2つの断片との認識反応を用いることにより、分子量39,000の断片は分子量42,000の断片の分解物ではないことを確認した。
(3)V8プロテアーゼによる分解物の精製
V8プロテアーゼによる分解産物を、あらかじめバッファーDで平衡化しておいたHPLC DEAEイオン交換カラム(DEAE−SPW、トーソー社)にかけた。分子量39,000の断片はカラムに吸着するが、分子量42,000の断片は0−150mM NaClのグラジエントで溶出し、10mM NaClで単一ピークとして得られた。次いで1mM EGTAに代えて0.5mMCaClを含むバッファーDを用いると、分子量39,000の断片が50mM NaClで溶出され、分子量42,000の断片は少量しか回収されなかった。このV8プロテアーゼ分解由来の2つの精製断片はトリプシン分解物とSDS−PAGEでほとんど同じパターンを示した。
(4)N末端アミノ酸配列の決定
(3)で精製した2つの断片と天然型アドゼベリンのN末端アミノ酸配列を検討した。天然型アドゼベリンおよび分子量42,000の断片のN末端はブロックされていたが、分子量39,000の断片のN末近傍アミノ酸配列をエドマン分解によって分析したところ以下の配列表の配列番号1に示す配列:
KVAHVKQIPFDA
を有していることが明らかとなった。この配列を公知のアクチンフィラメント切断タンパク質であるゲルゾリン(Kwiatkowski et al.,Nature 323:455−458,1986)およびビリン(villin)(Bazari et al.,Proc. Nat1.Acad.Sci.U.S.A.85:4986−4990,1988)の配列と比較した。その結果、図2に示すように、この配列はゲルゾリンおよびビリンの保存反復のセグメント3と4との間のヒンジ領域、すなわちこれらの分子の真ん中付近と類似していた。したがって、分子量42,000の断片はアドゼベリンのNH末端側の半分にあるタンパク質(以下”N42”と呼ぶ)であり、分子量39,000の断片はアドゼベリンのCOOH末端側の半分にあるタンパク質(以下”C39”と呼ぶ)であることが示唆された。
(5)N42およびC39のアクチン結合性
上記のようにして得られたN42とC39のアクチン結合性をアガロースビーズに結合したアクチン単量体(G−アクチン)を用いて試験した。その結果、N42もC39もカルシウムの存在下でG−アクチンと結合するが、カルシウムの非存在下ではG−アクチンと結合しないことが明らかとなった。
(6)アドゼベリンの機能的ドメインの同定(サーモリシンによるN42の分解) N42をメタロプロテイナーゼの1種であるサーモリシンで分解したところ、分子量31,000、30,000、16,000の断片および分子量15,000の2種の異なる断片の合計5つの断片が得られ、これをHPLCで精製した。分子量31,000および30,000の断片をそれぞれTL1およびTL2と命名し、その他の3つの断片をHPLCカラムの溶出順にTL3(分子量15,000)、TL4(分子量16,000)およびTL5(分子量15,000)と命名した。TL1およびTL3のN末端は抗体Aによって検出されず、N42や天然型アドゼベリンと同様にブロックされていた。これらの結果ならびにTL2およびTL5が抗体Aと反応したことから、N42は2つの開裂部位を有しており、断片のマッピングは図3に示すものと推定された。
【0060】
N末端がブロックされていないTL4およびTL5のアミノ酸配列をエドマン分解により分析したところ、TL4のN末端アミノ酸配列は以下に示す配列表の配列番号2の配列:
VLTNDLTAQ
を有しており、これはゲルゾリンのセグメント1と2の間のヒンジ領域の配列と相同性を有している。一方TL5のN末端アミノ酸配列は以下に示す配列表の配列番号3の配列:
ITNRK
を有しており、これはゲルゾリンのセグメント2と3の間のヒンジ領域の配列と相同性を有していた(図3)。
【0061】
したがって、アドゼベリンはゲルゾリンと類似の構造を有していると考えられる。アドゼベリンのN末端側の半分はゲルゾリンと同様に、3つの反復セグメントからなっており、1セグメントはそれぞれ〜15kDaのタンパク質分解断片に対応する。
【0062】
実施例3:縮重プライマーの合成
実施例2で決定したN42の第2セグメント(S2)のN末端アミノ酸配列、およびC39のN末端アミノ酸配列をコードする遺伝子として可能性のあるすべてのコドンを含むミックスプライマーをApplied Biosystems380B DNA synthesizerにより合成した。センスおよびアンチセンスなプライマーの5’末端に、それぞれBamHI部位およびClaI部位を付加した。
【0063】
縮重プライマーの配列は以下の通りである:
5’...GATGCGGATCCAA(C/T)GA(C/T)(C/T)T(A/C/G/T)AC(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)CA....3’および
5’...GATGCATCGATAC(A/G)TG(A/C/G/T)GC(A/C/G/T)AC(C/T)TT(C/T)TC...3’。
【0064】
実施例4:逆転写反応およびPCR
ウシ腎臓から樹立した細胞系であるMDBK細胞(JCRB−Cell:財団法人がん研究振興財団より入手:Madin et al.,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.98:574−576,1958)から、Chirgwinら(Biochemistry 18:5294−5299,1979)の方法によりRNAを調製した。
【0065】
逆転写およびPCRはKawasaki(in PCR Protocols:A Guide to Methods and Application(Innis et al.eds)pp.21−27,Academic Press,San Diego,1990)の方法により行った。逆転写にはランダムヘキサマー(Pharmacia社)を用い、またPCRには実施例3で得られた縮重プライマーを用いた(Lee et al.,in PCR Protocols:Guide to Methods and Application(Innis et al.eds)pp.46−53,Academic Press,San Diego,1990)。PCRの条件は、最初に94℃で1分、37℃で1分、72℃で2分を1サイクルとして5サイクル行った。ただし、このとき37℃から72℃へ温度を上げるのに2分30秒かけてゆっくり昇温させた。次に、通常の方法により、94℃で1分、50℃で1分、72℃で2分を1サイクルとして29サイクル実施し、さらに94℃で1分、50℃で1分、72℃で10分を1サイクル実施した後、4℃においておいた。
【0066】
実施例5:PCR産物のクローニング
実施例4で得られたPCR産物をエチジウムブロミド1μg/mlを含む1%アガロースの電気泳動に付したところ、およそ700bpのところに主要バンドが見られた。これを切り出してGENECLEAN IIキット(BIO 101 Inc.)で精製した。この大きさは、アドゼベリンとゲルゾリンとの1次構造に高い相同性があるという仮定に基づいて、縮重プライマーの基となった断片の位置から予期できた。この精製した産物をBamHIおよびClaIで消化してpBluescript SK(−)(Stratagene社)中にクローン化した。
【0067】
クローン化したPCR産物の配列決定を行ったところ、N42の第3セグメント(S3)のN末端部分をコードするヌクレオチド配列がこのPCR産物中に含まれていたので、これが実際にアドゼベリンCDNAの一部であることが確認された。この配列とヒトゲルゾリン配列との高い相同性(ヌクレオチドレベルでの同一性は64%)もこの見解を支持した。
【0068】
かくして得られたPCR産物を32Pで標識して以下のスクリーニングにプローブとして用いた。
【0069】
実施例6:ライブラリースクリーニング
ウシ副腎髄質から調製したλgt11 cDNAライブラリー(CLONTECH社)を、標準法(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratorv Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,1989)により、実施例5で得られたアドゼベリンの部分cDNAを表す32P−標識したクローン化PCR産物でスクリーニングした。2回のスクリーニングの後、十分に単離された陽性プラークを取り出して、個々のプラーク中のファージを蒸留水200μl中に放ち、室温で1時間インキュベートした。ファージ溶液を凍結、融解して90℃で10分間加熱した。
【0070】
適当量のファージ溶液を鋳型として用いて、組換えファージDNAの挿入物を、λgt11のEcoRI特異的部位の上流と下流からの配列を含む2つのプライマーを用いてPCRにより増幅した。PCRの条件は実施例4と同様である。これらのプライマーの5’末端にそれぞれXhoIおよびNotI部位を付加した。プライマーの1つは以下の配列:
5’...AAACTCGAGGGTGGCGACGACTCC...3’
を有しており、他の1つは以下の配列:
5’...AAAGCGGCCGCTTGACACCAGACCAA...3’
を有していた。
【0071】
PCRの後、反応混合物を1%アガロースゲルの電気泳動にかけた。増幅した挿入DNAを切り出してGENECLEAN IIキットで精製した。これをXhoIおよびNotIで消化した後、挿入cDNAを、あらかじめXhoIおよびNotIで消化しておいたpBluescript SK(−)中にクローン化した。
【0072】
クローン化PCR産物をプローブとして、ウシ副腎髄質のcDNAライブラリーをスクリーニングした。2×10個の組換えファージから単一のプラークまで精製した3つの重複するcDNAクローンを得た。
【0073】
上記3つの重複するcDNAクローンは、図4の番号19、5および21で示すものである。これらのクローン化DNAの塩基配列をジデオキシチェインターミネーション法(Sanger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.74:5463−5467,1977)により両方向で調べ、これをもとにアドゼベリンの全ヌクレオチド配列を決定した。このヌクレオチド配列を配列表の配列番号4に示す。また、組み立てたcDNAの制限酵素地図を図4に示す。
【0074】
組み立てたcDNAのヌクレオチド配列および最長オープンリーディングフレームに対応するアミノ酸配列を同じく配列表の配列番号4に示す。オープンリーディングフレームは715アミノ酸からなる80527ダルトンのタンパク質をコードする。最初のATGはクローンの始めの部分から27ヌクレオチド3’側にあり、脊椎動物の翻訳開始にとって矛盾のない配列を表す。アドゼベリンcDNAの配列をゲルゾリンおよびビリンの配列と比較しても、上記ATGが開始コドンであること、ならびにアドゼベリンの全コーディング配列が組み立てたcDNA中に含まれていることが支持された。
【0075】
次いで、上記の3つの重複するクローンからAccIおよびHindIII部位を用いて組み立てたウシアドゼベリンの全コーディング領域を含む2418bpのcDNAを、pBluescript SK(−)のXhoIおよびNotI消化部位に組み込んでpSK−アドゼベリンを作製した。
【0076】
実施例7:アドゼベリンの予測アミノ酸配列とヒトゲルゾリンおよびビリンのアミノ酸配列との比較
生化学的分析およびcDNAからの予測アミノ酸配列から、ヒトゲルゾリンおよびビリンはいずれも6つの相同セグメントを有している(Bazari etal.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:4986−4990,1988;Matusdaira et al.,Cell 5139−140,1988;Way et al.,J.Mol.Biol.203:1127−1133,1988)ことが明らかとなっている。セグメント1、2および3は、その他の組み合わせにおけるよりもセグメント4、5および6とそれぞれより高い相同性を有する。アドゼベリンの予測アミノ酸配列の分析から、アドゼベリンも6つの相同セグメントを有していることが明らかとなった。さらに、セグメント1から6はゲルゾリンおよびビリンのそれぞれ対応するセグメントと相同性を有する(図5)。図5から明らかなように、ゲルゾリンとビリンの6セグメントのそれぞれに存在するモチーフB、AおよびCがアドゼベリンの6セグメントのそれぞれにも存在していた。したがって、アドゼベリンはゲルゾリン族タンパク質に属することが示された。
【0077】
ゲルゾリンおよびビリンに存在する推定のポリホスホイノシチド結合配列も、ゲルゾリンやビリン中の領域に対応する領域、すなわちアドゼベリンの第1および第2セグメント(S1、S2)中に見つかった。これは、S1−2に対応するアドゼベリンのタンパク質断片の切断活性がポリホスホイノシチドによって阻害されることと一致する。これらの配列を図5中に箱で囲んで示し、また表1に模式図として示す。
【表1】
Figure 0003914272
2つの推定配列のうちの1つはコンセンサス配列と完全に一致し、また第1セグメントにある他方はコンセンサス配列と1アミノ酸だけ異なっており、コンセンサス配列のCOOH末端が塩基性アミノ酸の代わりにアラニンとなっている。このため、ゲルゾリンの対応するドメインよりもアドゼベリンのこのドメインの塩基性が低くなる。この相違は、ホスファチジルインシトール4,5−ビスリン酸やホスファチジルインシトール4−モノリン酸以外の酸性リン脂質、例えばホスファチジルインシトールやホスファチジルセリンがアドゼベリンの切断活性を阻害できても、ゲルゾリンの切断活性は阻害できない、ということを部分的に説明する理由となろう。
【0078】
実施例8:大腸菌中でのアドゼベリンcDNAの発現
実施例6で得たウシアドゼベリンcDNA(pSK−アドゼベリン)をPCRによって増幅した。PCRに使用したプライマーは、得られるcDNAの開始コドン(ATG)がNdeIの一部を構成し、また停止コドン(TAA)の直後にXhoI部位が位置するようにデザインした。得られるcDNAを発現ベクターpET−23a(Novagen社)中に、NdeIおよびXhoI部位を介して組み込んだ。かくして得られる組換えベクターpET−アドゼベリンをChungら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:2172−2175,1988)の方法によりコンピテント細胞BL21(DE3)pLysS中に組み込んだ。形質転換体の選択、培養およびIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)による誘導はStudierら(in Mithods in Enzymology,Gene ExpressionTechnology(Goeddel eds.)Vol.185,pp.60−89,Academic Press,San Diego,1991)の方法により行った。すなわち、アンピシリンおよびクロラムフェニコール耐性コロニーを選択して、アンピシリン50μg/mlを補充したM9ZB培地中で培養した。IPTGでcDNAの発現を誘導すると、SDS−PAGEで約74kDaのタンパク質の産生が観察された(図6のA、矢印)。形質転換しなかったコントロールBL21(DE3)pLysSはIPTG誘導しても何ら余計なタンパク質を産生しなかった。誘導されたタンパク質のSDS−PAGEにおける大きさ、74kDaはウシ副腎髄質から調製したアドゼベリンの大きさと同じである。
【0079】
形質転換した大腸菌の培養上清を、実施例1でウシ副腎髄質から分離、精製したのと実質的に同じ方法によって精製した。精製したタンパク質をSDS−PAGEの電気泳動に付して、ニトロセルロース膜に移し取り、アドゼベリンに特異的な抗体と反応させたところ、図6のBに示すように、このタンパク質は該抗体と免疫反応した。SDS−PAGE上のタンパク質の見かけサイズおよびアドゼベリン特異抗体との免疫反応から、このタンパク質がアドゼベリンをコードするcDNAであることを確認した。
【0080】
実施例9:大腸菌により産生されたアドゼベリンのアクチンフィラメント切断活性
大腸菌によって産生されたアドゼベリンが天然型アドゼベリンと同様のCa2+依存性のアクチンフィラメント切断活性を有するか、否かを試験するために、アクチン重合に対するアドゼベリンの効果を粘度計により測定した。
【0081】
0.15mg/mlの濃度のアクチンを、バッファーP(50mM KCl、2mM MgClおよび20mMイミダゾールーHCl、pH7.2)中、1mM EGTAまたは0.1mM CaClの存在下、25.5℃で、アクチンに対するモル比が1:30のアドゼベリンの存在下または非存在下に重合させた。
【0082】
その結果、図7に示すように、アクチン溶液の粘度はCa2+が存在するときのみアドゼベリンによって影響を受け(図7のAとBを比較されたい)、Ca2+の存在下にアドゼベリンはアクチン重合化の核形成を促進し、重合したアクチン溶液の最終粘度を減少する作用を有する。重合化アクチン溶液にアドゼベリンを加えると(図中矢印で示した)、溶液にCa2+が含まれている場合には比粘度が急激に落ちた。
【0083】
これらの結果はウシ副腎髄質から調製したアドゼベリンを用いて得た結果と実質的に同一であり、本発明の遺伝子組換え手法によって産生されたタンパク質が天然型アドゼベリンと同じアクチンフィラメント切断活性を有することが示された。
【0084】
実施例10:インサイチュハイブリダイゼーション
ウシアドゼベリンcDNAの329bp断片(#2090−#2418)を、DIG DNA LabelingおよびDetection Kit(Boehringer Mannheim社)を用いて、ジゴキシゲニン−dUTPで標識した。
【0085】
屠殺場で皮質と髄質との中間領域を含む新鮮なウシ副腎をリン酸緩衝溶液(PBS)中の1%パラホルムアルデヒドで固定した。実験室に戻り、これを小片に切断し、PBSで洗浄した。次いで試料を8、12、16および20%の段階的スクロースーPBS中に24時間浸漬した。試料をTISSUE−TEK(Miles Scientific社)に入れて液体窒素で凍結した。凍結試料をミクロトームで5−7μmのセクションに切断してスライドグラスに回収した。
【0086】
セクションのいくつかをPBS中の0.5%トルイジンブルーで染色し、PBS中の50%グリセロールで染色して同溶液中に入れておいた。
【0087】
免疫蛍光染色には、セクションを1%パラホルムアルデヒド−PBSで1分、アセトンで5分固定した。PBS中の1%Triton X−100で処理してPBSで洗浄した後、セクションをPBS中に2.5%ウシ血清アルブミンと2.5%ヒナ血清とを含むブロッキング溶液中に入れて、ブロッキング溶液中の抗アドゼベリン抗体(抗アドゼベリン抗体の作製方法は後述する実施例18参照)とともに37℃で3時間インキュベートした。セクションを400mM MgClおよび20mM Tris−HCl(pH8.6)を含む溶液中で洗浄し、次いでPBS中で洗浄した後、ブロッキング溶液中のFITC−結合抗ウサギIgGとともに37℃で3時間インキュベートした。上記と同様の方法および溶液で十分に洗浄した後、50%グリセロールおよび2.5%1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(Wako Chemical社)を含むPBSに入れて、Nikon FEX−A蛍光顕微鏡で観察した。
【0088】
インサイチュハイブリダイゼーションには、セクションを2倍強度の標準食塩−クエン酸(2×SSC、1×SSC=0.15M NaCl、15mM Na−クエン酸、pH7.0)で10分、室温でインキュベートし、次いでプレハイブリダイゼーション溶液(5×SSC、50%ホルムアミド、0.1%Tween20、50μg/mlヘパリン、100μg/ml音波処理、変性したサケ精巣DNA)中、室温で1時間インキュベートした。
【0089】
プレハイブリダイゼーションバッファーを除去して、ジゴキシゲニンで標識したDNAプローブ0.5μg/mlを含む新しいプレハイブリダイゼーションバッファーをセクションに適用した。セクションをカバースライドで覆い、ゴムセメントで封印した。
【0090】
DNAプローブをオーブン中、80℃、10分で変性した。次いでオーブン中、42℃で一夜インキュベーションを行った。ガラスカッターでカバースライドを取り除き、セクションを室温において2×SSCで30分、42℃において0.1×SSCで30分、室温において2×SSCで15分洗浄した。
【0091】
DIG DNA Labeling and Detection Kit(Boehringer Manheim社)を用いてセクション中のプローブを検出した。ジゴキシゲニン標識したDNAプローブとインキュベートしたセクションは洗浄バッファー(100mM Tris−HCl、150mM NaCl、 pH7.5)中、室温で10分洗浄し、洗浄バッファー中の0.5%(w/v)Boehringerブロッキング試薬とともにインキュベートし、最後に洗浄バッファーで洗浄した。
【0092】
次いでセクションをアルカリ性ホスファターゼー結合抗ジゴキシゲニン抗体(150mU/ml)と37℃、暗所で2時間インキュベートした。洗浄バッファーで2回洗浄した後、スライドを100mM Tris−HCl、100mM NaCl、20mM MgCl、pH9.5を含む溶液で短時間処理し、ニトロブルーテトラゾリウム塩、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートおよび0.25mg/mlレバミソールを含む同溶液とともに室温、暗所で3時間インキュベートした。発色を10mM Tris−HCl、1mM EDTA、pH8.0で停止した。
【0093】
グリセロール中においたセクションを光学顕微鏡で観察した。
【0094】
その結果、低倍率で観察すると、髄質に発色が観察されたが、髄質に隣接する場所以外の皮質には観察されなかった。次いで髄質と皮質との間の界面領域を高倍率で観察した。トルイジンブルーによる染色(図8のa)によって、皮質中の細胞は密に詰まっているのに対して、髄質中の細胞はゆるやかに分布しており、小胞を含む鞘状構造によってグループ分けされていることが明らかとなった。皮質と髄質とはインサイチュハイブリダイゼーションにおいても免疫蛍光染色においても、対比染色法を用いなくとも上記の細胞の性質によって容易に区別できる。図8のcおよびfはそれぞれ中倍率および高倍率で観察したインサイチュハイブリダイゼーションの結果であり、髄質のクロム親和性細胞に対応するゆるやかに詰まった細胞で主として染色が観察された。さらに、髄質に面する少数の皮質細胞も矢印で示すように染色された。
【0095】
抗アドゼベリン抗体による免疫蛍光染色では同じパターンのアドゼベリンの分布が観察された(図8のbおよびe)。すなわち、髄質のクロム親和性細胞に蛍光が観察され、また髄質に面する皮質領域の細胞にも観察された。クロム親和性細胞では蛍光は主として形質膜下領域に観察された。
【0096】
以上の結果を要約すると、アドゼベリンmRNAおよびアドゼベリンタンパク質のいずれもが副腎髄質で発現するが、皮質の大部分では発現しないことが示された。例外的に髄質と面する皮質の一部分ではアドゼベリンmRNAとタンパク質の両方の発現が観察された。したがって、ウシ副腎におけるアドゼベリンのこのような組織部位における差別された発現は転写レベルで制御されていると結論された。エキソサイトーシスの型による分泌は副腎髄質で起こり、皮質では起きないので、このような差別された発現は、アドゼベリンが分泌過程一般に関与しているというよりは、むしろエキソサイトーシスの型による分泌過程にのみ関与していることを強く示唆している。さらに、形質膜下領域にアドゼベリンが局在していることは、該タンパク質がエキソサイトーシスの制御に関与しているという考えと合致する。
【0097】
実施例11:ヒト腎臓mRNA由来cDNAライブラリーの作製
ヒト腎臓mRNAは、CLONTECH Laboratories,Inc.社より購入したものを用いた。このmRNA2μgより、TimesaverTM cDNA Synthesis Kit(Pharmacia社)を用い、添付されたプロトコールに従って二本鎖cDNAの合成を行った。
【0098】
すなわち、熱変性したmRNAをMurine Reverse TranscriptaseおよびOligo(dT)12−18プライマーを含むFirst−Strand Reaction Mixに加え、37℃で1時間保温することによって、第1鎖の合成を行った。次いでこの反応液を、E.Coli RNaseH、およびE.Coli DNA polymerase Iを含むSecond−Strand Reaction Mixに加え、12℃、30分、次いで22℃、1時間保温することにより第2鎖の合成を行った。合成した二本鎖cDNAをKitに含まれているSpun Columnか、あるいはアガロース電気泳動によってサイズ分画し、前者の場合には約400bp以上、後者の場合には約2−3kbpのサイズをもつcDNAのみを回収した。
【0099】
この末端にアダプター(EcoRI/NotIアダプター)を連結し、未反応のアダプターは先のSpun Columnで除き、ベクターへ組み込んだ。ベクターはPharmacia社から購入したExCellベクター(λ ExCell EcoRI/CIP)あるいは、STRATAGENE社から購入したLambda ZAPIIベクター(PREDIGESTED LAMBDAZAPII/EcoRI/CIAP CLONING KIT)の2種類を使用した。宿主大腸菌として、前者の場合はNM522株、後者の場合はXL1−Blue株を用いた。ベクターに組み込んだcDNAを、STRATAGENE社から購入したGIGAPACK II PACKAGING EXTRACTを用い、添付されたプロトコールに従いパッケージングした。すなわち、Freeze/Thaw extract、Sonic extractおよびDNAを混合し、22℃、2時間保温することによりパッケージングを行い、cDNAライブラリーとした。
【0100】
実施例12:プラークハイブリダイゼーションによるcDNAライブラリーのスクリーニング(ウシアドゼベリンcDNAをプローブとするハイプリダイゼーション)
スクリーニングは、Sambrook,J.,Fritsch,E.F and Maniatis,T.,Molecular Cloning,ColdSpring Harbor Lab.(1989)に記載されている標準的な方法を参考に行った。すなわち、LB寒天プレート上に生育させたファージプラークを、Hybond−Nフィルター(Amersham社)に移し取り、アルカリ変性させた後、紫外線を照射することによって固定化した。このフィルターを、ハイブリダイゼーション液中で40℃、3時間保温することによりプレハイブリダイゼーションを行い、次に、32Pで標識し、熱変性したプローブ(約1μCi/ml)とともに40℃で16時間以上保温することによりハイブリダイゼーションを行った。プローブにはウシアドゼベリンcDNA(pSK−アドゼベリン)よりPstI、NdeIで切り出されるほぼcDNAの全長に当たる断片を用いた。ハイブリダイゼーションには厳密度の低い条件、すなわち25%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション液(その他の組成は4×SSC、50mM HEPES pH7.0、10×Denhardt’s solution、100μg/ml熱変性サケ精子DNA)を使用した(東京大学医科学研究所、制癌研究部、新細胞工学実験プロトコール、細胞工学(1993))。ハイブリダイゼーション後、まずフィルターを2×SSC、0.1% SDSを含む溶液で、室温、15分、2回洗浄してから、1×SSC、0.1% SDS溶液中で、室温から徐々に温度を上げていきながら、バックグラウンドの放射活性がなくなるまで洗浄した。フィルターを乾燥した後、オートラジオグラフィーを行った。
【0101】
プローブの32Pによる標識は、Ramdom Primer DNA Labeling Kit Ver.2(宝酒造社)を用いて行った。添付されたプロトコールに従い、熱変性したDNA約100ngをランダムプライマー、50μCi[α−32P]dCTPおよびKlenow fragmentとともに37℃、30分保温することにより標識した。
【0102】
まず実施例11で得られたヒト腎臓mRNAから作製したcDNAライブラリーの1.6×10プラークをウシアドゼベリンcDNAをプローブとしてスクリーニングしたところ、1つの陽性ファージクローンが得られた。
【0103】
実施例13:陽性ファージクローンからプラスミドベクターへのサブクローニング
λ ExCellベクターの塩基配列から合成したプライマー(CAGCTATGACCATGATTACGCCAA、ACGACGGCCAGTGAATTGCGTAAT)を用いたPCRによって実施例12で得たクローンのインサート部分を増幅(東京大学医科学研究所、制癌研究部、新細胞工学実験プロトコール、細胞工学(1993))し、これをEcoRIで切断後、あらかじめEcoRIで切断し、脱リン酸処理したpUC18プラスミドベクターにサブクローニングした。得られたクローンをpADa−17と命名した。
【0104】
実施例14:プラークハイブリダイゼーションによるcDNAライブラリーのスクリーニング(pADa−17をプローブとするハイブリダイゼーション)
実施例11の方法に準じて新たにヒト腎臓mRNAより作製した2−3kbpのcDNAのみを濃縮したライブラリーを用いて、実施例13で得たクローンpADa−17をプローブとして厳密度を上げて(50%ホルムアミド含有ハイブリダイゼーション液:その他の組成は実施例12と同じ)通常の条件でプラークハイブリダイゼーションを行った。cDNAライブラリーの作製に使用したベクターはSTRATAGENE社から購入したLambda ZAP IIベクター(PREDIGESTED LAMBDA ZAPII/EcoRI/CIAP CLONING KIT)であり、宿主大腸菌としてXL1−Blue株を用いた。また、プローブの32Pによる標識は、実施例12に記載するのと同様の方法を用いて、クローンpADa−17よりEcoRIによって切り出される断片をアガロースゲル電気泳動後精製し、約100ng相当量を50μCiの[α−32P]dCTPで標識した。ハイブリダイゼーション後、まずフィルターを2×SSC、0.1% SDSを含む溶液で、室温15分、2回洗浄し、次いで0.5×SSC、0.1% SDS溶液で50℃、15分、2回洗浄し、フィルターを乾燥した後、オートラジオグラフィーを行った。
【0105】
その結果、1.7×10のプラークをスクリーニングして5つの陽性ファージクローンを得た。
【0106】
実施例15:陽性ファージクローンからプラスミドベクターへのサブクローニング
陽性ファージクローンより、Lambda ZAP IIベクターの特性を利用したExAssistTM/SOLRTM SYSTEMによるプラスミド(pBluescript SK(−)ベクター)への切り出しを行った。PREDIGESTED LAMBDA ZAPII/EcoRI/CIAP CLONING KIT(STRATAGENE社)に添付されたプロトコールに従い、実施例14で得た陽性ファージとExAssistTMヘルパーファージをXL1−Blue株大腸菌に感染させた後37℃で2.5時間培養し、培養液中に切り出されたプラスミドをSOLR株大腸菌に取り込ませた。このようにしてプラスミドクローンphAD−2〜6を得た。
【0107】
実施例16:ヒトアドゼベリンcDNAの塩基配列の決定
実施例15で得たプラスミドクローンphAD−2とphAD−4について塩基配列を決定した。塩基配列は、Sequenase Version2.0(United States Biochemical社)を用いたDideoxy sequencing法、あるいは、PRISMTM Terminator Mix(Applied Biosystems社)を用いたCyclesequencing法を行い、Applied Biosystems社のModel 373A sequencerで解読することにより決定した。
【0108】
phAD−2およびphAD−4で決定した塩基配列を組み合わせて得られたヒトアドゼベリンのcDNAの塩基配列および最長オープンリーディングフレームに対応するアミノ酸配列を配列表の配列番号5に示す。79番目のATGを開始コドンとする715アミノ酸からなるオーブンリーディングフレームが見いだされた。
【0109】
実施例17:ヒトアドゼベリンとウシアドゼベリンとの比較
実施例16で得られたヒトアドゼベリンのアミノ酸配列と実施例6で得られたウシアドゼベリンのアミノ酸配列を比較した結果を図9に示す。図中、上段はヒト、下段はウシのアミノ酸配列を示す。また、両者が完全に一致しているアミノ酸を*で、類似性の高いアミノ酸を・で示す。ヒトアドゼベリンとウシアドゼベリンとはアミノ酸レベルで約92%の相同性を有しており、完全に一致していないアミノ酸でも類似性が高かった。また塩基レベルでもコーディング領域内では約90%の相同性が見られた。しかしながら、ストップコドン以降は急激に相同性を失っていた。
【0110】
実施例18:抗アドゼベリン抗体および抗ペプチド抗体(ヒトアドゼベリン由来ペプチドに対する抗体)の作製
抗アドゼベリン抗体の作製
ウシ副腎髄質より精製したアドゼベリン1mgをフロイントの完全アジュバントと混合してエマルジョンを作製し、ウサギの皮下に10数カ所に分けて注入した。さらに、4週間おきに同量のタンパク質を不完全アジュバントと混合後エマルジョンを作製し、同様に皮下に注入した。注入1週間後に耳静脈から採血し血清を分離し、ELISAにて抗体価を検討したところ、2−3回のブースト後に血清中の抗体価の上昇が見られた。ゲルゾリンとの交差反応が観察されたため、得られた血清はアガロースビーズに固定化したゲルゾリンで吸収後、固定化したアドゼベリンに吸着させ0.1M グリシン−HCl(pH2.5)、0.1Mトリエチルアミン−HCl(pH11.5)、3.5M MgClにて順次溶出し、トリス緩衝塩溶液に対して透析、濃縮した。このようにして得られたアフィニティー精製抗体はゲルゾリンと交差反応を示さず、アドゼベリンに対して特異的な反応が見られた。この抗体はイムノブロット法では0.1−1μg/ml、蛍光抗体法では1−10μg/mlの濃度で使用した。
抗ペプチド抗体(ヒトアドゼベリン由来ペプチドに対する抗体)の作製
タンパク質分子の表面に露出しており、ウシ、ヒトのアドゼベリンで種間の保存性が高く、ゲルゾリンとの相同性の低い部位のヒトアドゼベリン由来のペプチド配列(16残基)を2カ所選んだ(配列番号6、7)。枝分かれ構造に7つのリジン残基がつながった樹脂からペプチド合成をスタートさせ、Multiple Antigen Peptide(MAP)を合成する(Tam,J.P.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5409−5413,1988)。初回は完全アジュバントと、2回目以降は不完全アジュバントとペプチドでエマルジョンを作製し、ウサギ2羽の皮下に1週おきに注入した。7、8、9週後に耳静脈から採血し、ELISAにて抗体価を調べた。その結果、ゲルゾリンとの交差反応性が少なく、ラット、ウシ、ヒトのアドゼベリンと反応する抗体が得られた。免疫前の血清にも認められる非特異的な反応が観察されたため精製タンパク質を免疫して得た抗体と同様に抗原によるアフィニティー精製を行った。
【0111】
【発明の効果】
本発明により、アクチンフィラメント切断活性を有するタンパク質であるアドゼベリンをコードする遺伝子の配列が明らかとなった。したがって、本遺伝子配列からそのアンチセンスDNA配列を作製してヒトに投与することにより、例えば、血管平滑筋の増殖を抑制して血管狭窄を予防・治療したり、あるいは生理活性物質の放出を遺伝子レベルで抑制することが可能であると考えられている。また、本発明の遺伝子配列を遺伝子組換え技術に応用することにより、アドゼベリンを大量かつ均一に生産することが可能となった。したがって、ヒトアドゼベリンを用いたスクリーニング系などを構築することにより、新たな医薬品の開発が期待できる。さらに、アドゼベリンはゲルゾリンと同じ活性を示すことから、血栓抑制剤などの医薬用途に利用できる可能性もある。
【配列表】
【0112】
Figure 0003914272
【0113】
Figure 0003914272
【0114】
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【0115】
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【0116】
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【0117】
Figure 0003914272
【0118】
Figure 0003914272

【図面の簡単な説明】
【図1】ウシ副腎髄質から得たアドゼベリンの精製を、ウシ大動脈から得たゲルゾリンの精製と比較して示す電気泳動の写真である。SDS−PAGEは6.5〜10.5%のリニヤーグラジエントゲルを用いて行った。レーン1および2はウシ大動脈から得た分画をDNaseIアフィニティーカラムにかけたものを示し、このうちレーン1はEGTA溶出分画、レーン2は6M尿素溶出分画である。レーン3−8はウシ副腎髄質から得た分画を示し、このうちレーン3は粗抽出物、レーン4はDNaseIアフィニティーカラムのEGTA溶出分画、レーン5はDNaseIアフィニティーカラムの6M尿素溶出分画、レーン6はアドゼベリンを含むQ−Sepharose分画、レーン7は血漿ゲルゾリン、細胞質ゲルゾリンおよびアクチンを含むQ−Sepharose分画、レーン8はHPLCゲル濾過で精製したアドゼベリン、レーンMは分子量マーカーであり、上から94,000、67,000、43,000および30,000の分子量を表す。
【図2】アドゼベリンの分子量39,000の断片(C39)の部分的アミノ酸配列と、そのゲルゾリンおよびビリンの対応部分のアミノ酸配列との比較を示す。
【図3】アドゼベリンのサーモリシン分解によって得られる断片のN末端アミノ酸配列とその予期される位置をゲルゾリンと比較して示す。
【図4】ウシアドゼベリンのcDNAの制限酵素地図を示す。PCRで示した部分はMDBK細胞のRNAから逆転写およびPCRによって得られたcDNAを示す。19、5および21で示す部分は、ウシ副腎髄質のλgt11 cDNAライブラリーから単離してアドゼベリンのcDNA構築に使用した個々のcDNAを示する。
【図5】本発明で明らかにされたウシアドゼベリンのアミノ酸配列を、ヒトゲルゾリンおよびヒトビリンの対応するセグメントのアミノ酸配列と比較して示す。配列の右側に示す番号はアドゼベリン、ゲルゾリン、ビリンのセグメント番号である。セグメント1と4、セグメント2と5、およびセグメント3と6の間に最大の相同性が存在する。高度に保存されたモチーフを図中にボックスで囲んで示す。また、推定されるポリホスホイノシチド結合部位を点線で囲んで示す。さらに、下に楕円で囲んだ番号で示す模式図は、これらのタンパク質の6個の相同セグメントである。
【図6】大腸菌における発現とアドゼベリンの精製を示す電気泳動の写真である。図中、Aは大腸菌におけるアドゼベリンの発現を示すSDS−PAGE分析である。形質転換体を0.4mM IPTGの存在下(レーン3)または不在下(レーン2)にインキュベートした3時間後に、ペレット化した細胞をSDSサンプルバッファーに溶解して、加熱し、SDS−ポリアクリルアミドゲルにのせた。電気泳動の後、ゲルをクマシー(Coomassie)ブリリアントブルーで染色した。矢印はアドゼベリンのバンドを示す。なお、レーン1は分子量マーカーである。図中、Bは大腸菌で発現させたアドゼベリンを精製した後に行ったイムノブロット分析である。精製アドゼベリンをSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に移し取った。ブロットをポンソー(Ponceau)Sで染色(レーン2)し、脱染色した後、アフィニティー精製したアドゼベリンに対する抗体で免疫検出した(レーン3)。なお、レーン1は分子量マーカーである。
【図7】大腸菌で発現したアドゼベリンのアクチン重合に対する効果を粘度計によって測定した結果を示す。0.1mM CaCl(A)または1mM EGTA(B)を含むバッファーP中でアクチンを重合させた。図中、○および△で示すのは、アクチンのみの存在下で重合を行った結果を示し、●および▲で示すのは、アクチンに1:30のモル比で加えたアドゼベリンの存在下に行った結果を示す。矢印で示す時点で、1:30のモル比でアクチン溶液にアドゼベリンを加えた。
【図8】ウシ副腎の皮質と髄質の境界領域におけるアドゼベリンとmRNAの発現を示す光学顕微鏡写真(生物の形態を示す写真)である。各写真の上側が皮質に対応し、下側が髄質に対応する。セクションをトルイジンブルーで染色する(パネルa)か、あるいは抗−アドゼベリンウサギ抗体で染色し、次いで蛍光結合抗−ウサギイムノグロブリンで染色した(パネルbおよびe)。パネルdは、パネルeと同じ視野を位相差顕微鏡によって観察した像である。インサイチュハイブイダイゼーションの像をパネルcおよびfに示す。なお、パネルa−cは120×の倍率であり、パネルd−fは280×の倍率である。
【図9】ヒトアドゼベリンのアミノ酸配列とウシアドゼベリンのアミノ酸配列を比較した結果を示す図である。図中、上段はヒト、下段はウシのアミノ酸配列を示す。両者が完全に一致しているアミノ酸を*で、類似性の高いアミノ酸を・で示す。また、四角で囲んだ部分は、リン脂質が結合すると推定されている領域を示す。

Claims (5)

  1. 配列表の配列番号5に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列、またはこのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加したアミノ酸配列をコードする塩基配列あって、かつアクチンフィラメント切断活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含むDNA。
  2. 請求項1記載のDNAを含有する組換えベクター。
  3. 請求項2記載の組換えベクターにより形質転換された原核または真核宿主細胞。
  4. 請求項3記載の宿主細胞を培養し、産生されたタンパク質を分離、精製することを特徴とするアクチンフィラメント切断活性を有する組換えタンパク質の製造方法。
  5. 請求項3記載の宿主細胞を培養して得られる培養清を分離、精製して得られる組換えアドゼベリンタンパク質。
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