JP3913537B2 - 線維芽細胞増殖促進剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、線維芽細胞増殖促進剤に関するものである。更に詳しくは、本発明は、少量で効果的に、線維芽細胞の増殖促進活性を有する線維芽細胞増殖促進剤に関するものである。
本明細書において百分率は、特に断りのない限り重量による表示である。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
線維芽細胞は、結合織形成細胞ともいい、疎性結合組織の細胞成分のうちで最も重要なものである。動物個体内の殆どすべての組織中に分散して存在する中胚葉由来の細胞で、臓器の形態形成に重要な役割を果たす結合織細胞の中核をなす。線維芽細胞は、間葉より分化し、刺激が加わると、粗面小胞体やゴルジ体の増大と特殊顆粒の形成などが起こって、膠原線維を産生するようになる。さらに、組織に外傷が加えられたり、内因性の障害によって臓器の実質細胞が失われた場合、線維芽細胞が分裂増殖して肉芽から瘢痕形成によって欠落した部分を修復する機能を有している(生化学事典、第3版、第792頁、東京化学同人、1998年)。
【0003】
この線維芽細胞の増殖を促進する効果を有する因子の研究が進められている。線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor:以下、FGFと略記することがある。)は、1970年代に血管新生因子として発見され、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)や塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が研究され、その構造や広範な細胞増殖促進作用が明らかにされてきた〔[ネイチャー(Nature)、第249巻、第123頁、1974年]、及び[アニュアル・レビュー・バイオケミストリー(Annual Review Biochemistry)、第58巻、第575乃至606頁、1989年]〕。
当初、これらは、線維芽細胞に特異的に作用すると考えられていたが、現在では間葉系細胞、神経細胞、上皮細胞などに広く効果を示し、特に血管内皮細胞に強い活性を有することが明らかにされている。
【0004】
この他に、現在まで、線維芽細胞の増殖を促進する効果を有する因子が、動物及び植物を起源として種々報告されており、「繊維芽細胞増殖促進作用を有する胎盤由来蛋白加水分解物」(特開平5−301896号公報)、「乳由来線維芽細胞増殖因子」(特開平8−119867号公報)、「線維芽細胞増殖剤及びこれを配合した皮膚外用剤」(特開平11−255657号公報)、「線維芽細胞増殖促進剤」(特開平10−36283号公報)、「植物抽出物含有線維芽細胞増殖促進剤」(特開平10−45615号公報)、「線維芽細胞増殖因子FGF−10」(再表97/020929号公報)、「線維芽細胞増殖因子11」(特表平11−506917号公報)、「線維芽細胞増殖因子15」(特表平11−506919号公報)、「線維芽細胞増殖因子13」(特表平11−507504号公報)等が開示されている。
【0005】
しかしながら、従来より少量で、より高い線維芽細胞増殖促進効果を有し、大量生産が可能で汎用性が高い、新規な線維芽細胞増殖促進剤が求められていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、血清又は血清中に存在するリポプロテインに着目した。
【0007】
すなわち、血清中には、コレステロール、コレステロールエステル、トリグリセリド、リン脂質、遊離脂肪酸等の脂質が存在する。これらの脂質は、そのままでは血清には溶解しないので、アポリポプロテインと結合したリポプロテインの微粒子として血清中に存在している。アポリポプロテインは、アポリポプロテインAからEまでの5つに分類され、その中でアポリポプロテインAはA−I、A−IIに分かれている。
【0008】
アポリポプロテインA−II(以下、アポA−IIと略記することがある。)は、ヒトやサルから単離される分子量約8.6キロダルトンのタンパク質であり、ウシ由来のアポA−IIは、本発明者等がウシ血清より、抗菌性タンパク質として初めて単離し[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry)、第123巻、第675乃至679頁、1998年]、「抗菌性ペプチドおよび抗菌剤」(特開平10−1498号公報)として既に特許出願した。
【0009】
アポA−IIの生理機能は、現在まで不明な点が多いが、アポリポプロテインE3と結合してヘテロダイマーを形成した場合には、低密度リポプロテイン受容体との結合が著しく低下し[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第251巻、第6289乃至6295頁、1978年]、in vitroでは肝性トリグリセリドリパーゼを活性化し[フェブス・レター(FEBS Letter)、第131巻、第366乃至368頁、1981年]、及びレシチン・コレステロール・アシルトランスフェラーゼを抑制する効果[バイオキミカ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica Biophysica Acta)、第530巻、第258乃至266頁、1978年]等が知られている。
【0010】
かかるアポA−II又は血清から単離される特定のアミノ酸配列を有するペプチドについて研究を進めた結果、特定のペプチドが、従来より少量でより高い線維芽細胞増殖促進効果を有し、大量生産が可能で汎用性が高いことを見出し、本発明を完成した。
【0011】
前記課題を解決する本発明の第一の発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、該ペプチドのカルボキシル基をアミド化又はアシル化した誘導体、薬学的に許容される該ペプチドの塩、又はこれらの2以上の混合物を有効成分とする線維芽細胞増殖促進剤であり、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、血清から単離されることを望ましい態様としている。
前記課題を解決する本発明の第二の発明は、配列番号2乃至4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド、該ペプチドのカルボキシル基をアミド化又はアシル化した誘導体、薬学的に許容される該ペプチドの塩、又はこれらの2以上の混合物を有効成分とする線維芽細胞増殖促進剤であり、配列番号2乃至配列番号4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、化学的に合成されるもの、又は配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを酵素処理し、得られるペプチド混合物から単離されることを望ましい態様としている。
前記課題を解決する本発明の第三の発明は、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、該ペプチドのカルボキシル基をアミド化又はアシル化した誘導体、薬学的に許容される該ペプチドの塩、又はこれらの2以上の混合物を有効成分とする線維芽細胞増殖促進剤であり、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、血清から単離されることを望ましい態様としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤の有効成分であるペプチドの出発原料は血清であることが好ましい。例えば、市販のヒト血清、成牛血清、ウシ新生児血清、ウシ胎児血清等を使用することが好ましい。これらを出発原料として、本発明の有効成分であるペプチドを単離精製することができる。例えば、ヒト血清又はウシ胎児血清を、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、及び逆相クロマトグラフィー等の順序で処理し、線維芽細胞増殖促進活性を有する画分を順次に精製することによって、本発明の有効成分である特定のアミノ酸配列を有するペプチドを単離精製することができる。
【0013】
使用する疎水性クロマトグラフィー用の樹脂は、ブチル基を有する樹脂が好ましく、例えば、市販のブチル・トヨパール650M(東ソー社製)、ブチル・トヨパール650S(東ソー社製)、ブチル・セファロース4FF(ファルマシア社製)等を例示することができる。
【0014】
使用するゲル濾過用担体は、500キロダルトンの排除限界分子量を有する担体が好ましく、市販のTSKGel G3000SW(東ソー社製)、Asahipak GFA−50F(旭化成社製)、PROTEIN PAK 300(日本ウォーターズ社製)等を例示することができる。
【0015】
使用する逆相クロマトグラフィー用担体は、リガンドとして炭素数4の直鎖状炭化水素が好ましく、例えば、PROTEIN C4(バイダック社製)、マイクロボンダスフェアーC4(日本ウォーターズ社製)、YMC−Pak C4(ワイエムシー社製)等を例示することができる。
【0016】
かかる方法により単離精製されたペプチドは、配列番号1又は5で表される特定のアミノ酸配列を有しており、高い線維芽細胞増殖促進活性を有している。
なお、配列番号1及び配列番号5のN末端1残基目のアミノ酸は、ピログルタミン酸(5−ピロリドン−2−カルボン酸)であり、グルタミン酸のα−アミノ基とγ−カルボキシル基が脱水・環化して生じる分子内ラクタムである。また、かかる方法により、配列番号1又は5で表されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列を有し、高い線維芽細胞増殖促進活性を有するペプチドを単離精製することもできる。
【0017】
配列番号2乃至4で表されるアミノ酸配列を有するペプチドは、配列番号1又は5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドとほぼ同等の高い線維芽細胞増殖促進活性を有する。
【0018】
かかる配列番号2乃至4で表されるアミノ酸配列を有するペプチドは、化学合成によって作製することが好ましい。合成には、ペプチド自動合成装置(アプライド・バイオシステムズ社製、Model 433A)を使用し、シェパード等[ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティー・パーキンI(Journalof Chemical Society Perkin I)、第538ページ、1981年]による固相法、及び同装置の使用説明書に基づいてペプチドを合成することが可能である。
【0019】
また、配列番号2乃至4で表されるアミノ酸配列を有するペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを酵素処理し、得られるペプチド混合物から単離することによって精製することが可能である。使用する酵素としては、例えばアミノペプチダーゼM、及びカルボキシペプチダーゼY等のエキソペプチダーゼ、並びにエンドペプチダーゼが可能である。ペプチド混合物から配列番号2乃至4で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを単離する方法としては、例えば逆相クロマトグラフィーを用いることが可能であり、リガンドとして炭素数4又は18の直鎖状炭化水素が好ましく、例えば、PROTEIN C4(バイダック社製)、及びPROTEIN & PEPTIDE C18(バイダック社製)が例示できる。
【0020】
また、かかる方法により、配列番号2乃至4で表されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列を有し、高い線維芽細胞増殖促進活性を有するペプチドを単離精製することもできる。
【0021】
かかる配列番号1〜5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドは、各々のアミノ酸配列に翻訳可能な遺伝子を化学合成し、遺伝子工学的手法を用いて大量に製造することもできる。
【0022】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤は、上記アミノ酸配列で表されるペプチド、薬学的に許容される該ペプチドの誘導体、薬学的に許容される該ペプチドの塩類、又はこれらの2以上の混合物を有効成分とするものである。薬学的に許容される該ペプチドの誘導体は、ペプチドの一部置換体又は付加化合物等のペプチド誘導体であり、カルボキシル基をアミド化又はアシル化した誘導体である。薬学的に許容される該ペプチドの塩類としては、例えばリン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の酸付加塩を例示することができる。
【0023】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤の線維芽細胞増殖促進効果は、例えば以下の方法により確認することができる。すなわち、ヒト及びマウス等の線維芽細胞を使用して、生細胞に取り込まれた3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(以下、MTTと略記する。)が、ミトコンドリア内の還元酵素によって開裂されて生成されるホルマザンを測定することで生細胞数を定量化するMTT法、細胞増殖においてDNAが合成される際に取り込まれる放射ラベルされた3H−チミジンを定量することで生細胞数を定量化する3H−チミジン法、及び同様に細胞増殖においてDNAが合成される際に取り込まれる5−ブロモ−2'デオキシウリジン(以下、BrdUと記載する。)を定量することで生細胞数を定量化するBrdU法等の方法により確認することができる。
【0024】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤は、毒性が極めて低く、LD50は100mg/体重kg以上であるため、ヒト又は動物に対して安全に使用することができる。
さらに、本発明の線維芽細胞増殖促進剤は、特に創傷治癒剤、血管新生促進剤等として適用することが可能であり、一般的な医薬製剤の形態でヒト又は動物に投与することができる。例えば、創傷治癒剤として使用する場合、外用剤の場合は有効成分が外用剤1g当たり少なくとも0.2mg含有されていることが好ましく、また、皮下投与剤の場合は創傷面当たり有効成分は少なくとも20mgの割合で皮下投与されることを望ましい態様としている。
【0025】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤は、医薬品としてのみならず、食品、飼料、化粧品等のようにヒト又は動物の体内に取り入れられ、又は体表面に適用される製品として使用することができる。また、本発明の線維芽細胞増殖促進剤で、それらの製品又は原料素材を処理することができる。
上記医薬品、食品、飼料、化粧品等は、本発明の線維芽細胞増殖促進剤の有効成分であるペプチドの他に、これらに通常用いられる原料を混合し、必要に応じて撹拌、加熱、乳化等することにより、調製することができる。
また、本発明の線維芽細胞増殖促進剤は、直接、ヒト又は動物の線維芽細胞や血管内皮細胞に作用させることが可能であり、また線維芽細胞増殖用の動物組織培養用培地の添加剤等として利用することも可能である。
【0026】
次に試験例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
試験例1
この試験は、マウス線維芽細胞Balb/c,3T3を用いて、比色定量法であるMTT法により、細胞の増殖に対する本発明の線維芽細胞増殖促進剤の効果を調べるために行った。
(1)試料の調製
後記する実施例1で製造した配列番号1に記載のペプチドを、それぞれ4、10、20、40、80、及び160μg/mlの濃度となるように、5%ウシ胎児血清(エキテック・バイオ社製)を含むRPMI−1640(ギブコ社製。カタログNo.31800−022)培地で希釈して、それぞれ試料1a、試料1b、試料1c、試料1d、試料1e及び試料1fを調製し、これら一群を試料群1とした。また、実施例3で製造した配列番号2、配列番号3、及び配列番号4に記載のペプチドを、試料群1と同様の濃度群になるように5%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地で希釈して、それぞれ試料2a乃至試料2f、試料3a乃至試料3f、及び試料4a乃至試料4fを調製し、各試料の一群をそれぞれ試料群2、試料群3、及び試料群4とした。
【0028】
コントロール試験として、ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を使用し、それぞれ4、10、20、40、80、及び160μg/mlの濃度となるように、5%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地で希釈して、対照試料1a、対照試料1b、対照試料1c、対照試料1d、対照試料1e、及び対照試料1fを調製し、これら一群を対照試料群1とした。更に、上記ペプチド及びコントロール試験で使用したウシ血清アルブミンを含まない5%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地を陰性試料とした。
【0029】
(2)試験方法
マウス線維芽細胞Balb/c,3T3(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから購入)を、10%ウシ胎児血清(エキテック・バイオ社製)を含むRPMI−1640(ギブコ社製。カタログNo.31800−022)培地を用いて、5%炭酸ガス存在下、37℃で培養した。増殖期の細胞をトリプシン(ギブコ社製)処理して回収した後、RPMI−1640溶液で2回洗浄した。その後、細胞を2×104/mlとなるように、5%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地に懸濁し、この懸濁液50μlを96穴マイクロプレート(ヌンク社製)中で12時間培養した。培養後、ウェル内の培地をピペットで吸い取り、ダルベッコリン酸緩衝液で2回洗浄した。その後、試料群1乃至試料群4の各試料、対照試料群1の各対照試料、及び陰性試料を、それぞれ50μl添加して48時間培養した。培養後、5mg/mlの濃度にダルベッコリン酸緩衝液で希釈されたMTT溶液(シグマ社製)を、ウェルあたり5μlずつ添加して3時間培養し、その後、ウェル内の溶液をピペットで静かに吸い出して全量を捨てた。ここに、2−プロパノールで0.04規定となるように希釈した塩酸溶液100μlを加えて、ウェル内に形成されたフォルマザンを十分に溶解した後、マイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの570nmの吸光度を測定した。試料1乃至試料4、対照試料、及び陰性試料はそれぞれ5回ずつ測定し、試料群1乃至試料群4、及び対照試料群1の増殖活性は、陰性試料の活性を100%としたときの相対活性として算出した。
【0030】
(3)試験結果
この試験の結果は、表1に示すとおりである。表1は各試料の線維芽細胞の増殖結果を示す表である。表1から明らかなとおり、試料群1、試料群2、試料群3、及び試料群4は、全て、対照試料群1に比して、線維芽細胞の増殖促進活性が確認された。対照試料群1であるウシ血清アルブミンには線維芽細胞の増殖促進活性が存在しなかったことから、本発明の線維芽細胞増殖促進剤には、線維芽細胞の増殖促進活性が存在することが明らかである。また、試料群1及び試料群3は、試料群2及び試料群4より高い増殖活性を示した。
この試験の結果、本発明の線維芽細胞増殖促進剤の添加によって、線維芽細胞の増殖は効果的に促進されることが明らかになった。
【0031】
【表1】
Figure 0003913537
【0032】
試験例2
この試験は、マウス線維芽細胞Balb/c,3T3を用いて、BrdU法により、細胞の増殖に対する本発明の線維芽細胞増殖促進剤の効果を調べるために行った。
(1)試料の調製
実施例1で製造した配列番号1に記載のペプチド、実施例3で製造した配列番号3に記載のペプチド、及び実施例2で製造した配列番号5に記載のペプチドを、それぞれ40μg/mlの濃度となるように、5%ウシ胎児血清(エキテック・バイオ社製)を含むRPMI−1640(ギブコ社製。カタログNo.31800−022)培地で希釈して、それぞれ試料5、試料6、及び試料7とした。また、ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を、40μg/mlの濃度となるように、5%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地で希釈して、対照試料とした。更に、5%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地を陰性試料とした。
【0033】
(2)試験方法
マウス線維芽細胞Balb/c,3T3を、10%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地を用いて、5%炭酸ガス存在下、37℃で培養した。増殖期の細胞をトリプシン処理して回収した後、RPMI−1640溶液で2回洗浄した。その後、細胞を5×104/mlとなるように5%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地に懸濁し、この懸濁液100μlを96穴マイクロプレートに添加してコンフルエントに達するまで4日間培養した。培養後、ウェル内の培地をピペットで吸い取り、ダルベッコリン酸緩衝液で2回洗浄した。その後、RPMI−1640培地を100μl添加して24時間培養した。ウェル内の培養液を除去し、試料5、試料6、試料7、対照試料、及び陰性試料を100μl添加して12時間培養し、BrdUラベリング&ディテクションキットIII(ベーリンガー社製)を使用して、DNA標識をした後、マイクロプレートリーダーにより405nmの吸光度を測定した。試料5、試料6、試料7、対照試料、及び陰性試料はそれぞれ5回ずつ測定し、試料5、試料6、試料7、及び対照試料の増殖活性は、陰性試料の活性を100%としたときの相対活性として算出した。
【0034】
(3)試験結果
この試験の結果は、表2に示すとおりである。表2は、各試料の線維芽細胞の増殖結果を示す表である。表2から明らかなとおり、試料5、試料6、及び試料7である配列番号1、配列番号3、及び配列番号5のペプチドは、対照試料であるウシ血清アルブミンに比して、線維芽細胞内DNAに取り込まれるBrdUの量が多いことが確認された。
この試験の結果、本発明の線維芽細胞増殖促進剤によって、DNAが合成される際に効果的に細胞内にBrdUが取り込まれ、線維芽細胞の増殖を促進していることが明らかになった。
【0035】
【表2】
Figure 0003913537
【0036】
試験例3
この試験は、後記する実施例1で調製した線維芽細胞増殖促進効果を有するペプチドのアミノ酸配列を決定するために行った。
実施例1で製造したペプチド0.2mgに蒸留水160μlを添加し、50mMジチオスレイトール(和光純薬社製。以下、DTTと略記することがある。)、5mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(和光純薬社製。以下、EDTAと略記することがある。)を含む250mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)を40μl添加して溶解し、これにピログルタミン酸アミノペプチダーゼ溶液(宝酒造社製。濃度:0.5U/ml)を8μl添加して37℃で8時間酵素処理した。その後、反応液にクロロホルム・メタノール(クロロホルム:メタノール=2:1)溶液を10ml添加して沈殿させ、遠心分離によって沈殿物を回収した。この沈殿物に、さらにエタノール・エーテル(エタノール:エーテル=3:2)溶液を10ml添加して遠心分離を行い、沈殿物を回収した。
【0037】
回収した沈殿物の一部(80μg)を6M尿素(和光純薬社製)を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)100μlで溶解し、さらに10mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を200μl添加し、その後リシルエンドペプチダーゼ溶液(和光純薬社製。濃度:1μg/50μl)を50μl添加して37℃で8時間酵素処理した。これとは別に、沈殿物の一部(80μg)を6M尿素を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)50μlで溶解し、さらに50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)を200μl添加し、エンドプロテアーゼAsp−N溶液(ベーリンガー社製。濃度:0.4mg/ml)を5μl添加して37℃で8時間酵素処理した。
【0038】
前記リシルエンドペプチダーゼ及びエンドプロテアーゼAsp−Nの2種類の反応液中のペプチド断片を、C18−ODSカラムを用いた逆相クロマトグラフィーによりそれぞれ精製し、得られたペプチド断片のアミノ酸配列を気相式自動アミノ酸シーケンサー(アプライド・バイオシステムズ社製。Model 473A)を用いて測定した。
その結果、それぞれのペプチド断片のアミノ酸配列から、ペプチド全体のアミノ酸配列を決定し、このペプチドが配列番号1に示されるアミノ酸配列を有することを確認した。
【0039】
【実施例】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1
市販のウシ胎児血清(シグマ社製)400mlに、5M塩化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製)100mlを添加し、これを疎水性クロマト樹脂(東ソー社製。ブチル・トヨパール650M)に添加して吸着させ、この吸着樹脂をカラムに充填し、1M塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、0.15M塩化ナトリウム水溶液及び蒸留水で溶出し、得られた線維芽細胞増殖促進活性を有する蒸留水溶出画分を、ゲル濾過担体(東ソー社製。TSKGel G3000SW)を使用し、0.1M塩化ナトリウム含有10mMリン酸緩衝液(pH6.9)を移動相に用いたゲル濾過を行い、分子量約10キロダルトン付近の線維芽細胞増殖促進活性を有する画分を回収した。
【0041】
さらに、この画分を、逆相クロマト担体(バイダック社製。PROTEIN C4)を使用し、0.1%トリフルオロ酢酸(和光純薬工業社製)を含む32〜56%アセトニトリル(和光純薬工業社製)を用いた直線濃度勾配溶出法による逆相クロマトグラフ法により、アセトニトリル濃度48〜50%に溶出される線維芽細胞増殖促進活性を有するピークを回収した。
この回収液を凍結乾燥し、線維芽細胞増殖促進効果を有するペプチドの精製標品約2.4mgを得た。試験例3に記載したように、かかるペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1に記載の通りであった。
【0042】
実施例2
健康な成人男性50人から提供された血清400mlを使用して、実施例1と同様の方法により、線維芽細胞増殖促進効果を有するペプチドの精製を行った。精製されたペプチドの標品は約1.8mgであり、前記試験例3と同一の方法によりアミノ酸配列を決定した結果、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有していることが確認された。
【0043】
実施例3
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するペプチドを、以下の方法により製造した。
尚、ペプチドの合成は、自動アミノ酸合成装置(アプライド・バイオシステムズ社製。Model 433A)を用いた。
20%ピペリジン含有N−メチルピロリドン(アプライド・バイオシステムズ社製。以下、N−メチルピロリドンをNMPと略記する)により、ペプチド合成用固相樹脂であるHMP樹脂(アプライド・バイオシステムズ社製)のアミノ保護基であるFmoc基を切断除去し、NMPで洗浄した後、 Fmoc−スレオニン[具体的には、合成するペプチドのC末端アミノ酸に相当するFmoc−アミノ酸(アプライド・バイオシステムズ社製)]をFastMoc(登録商標)リージェントキット(アプライド・バイオシステムズ社製)を使用して縮合させ、NMPで洗浄した。次に、前記Fmoc基の切断、続いて、C末端から2番目のアミノ酸に相当するFmoc−アラニンの縮合、及び洗浄を行い、さらにFmoc−アミノ酸の縮合及び洗浄を繰り返し、保護ペプチド樹脂を作製し、樹脂より粗製ペプチドを回収した。
【0044】
前記粗製ペプチドは、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略記することがある。)によりペプチドの精製を行った。使用するカラムは逆相系のC18−ODS(メルク社製。Lichrospher100)を例示することができる。得られた精製ペプチドはHPLC分析を行い、精製物が単一であることを更に確認した。また、精製ペプチドのアミノ酸配列を、前記試験例3と同一の方法により決定した結果、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有していた。
尚、同様の方法により配列番号2及び3に記載のアミノ酸配列を有するペプチドも製造した。
【0045】
実施例4
1錠当たり次の組成の線維芽細胞増殖促進剤の錠剤を常法により製造した。
実施例3で製造した配列番号3のペプチド:50.0mg、乳糖(和光純薬工業社製):115.0mg、結晶セルロース(和光純薬工業社製):30.0mg、ポリビニルピロリドン:5.0mg。
【0046】
実施例5
実施例4で製造した線維芽細胞増殖促進剤0.2g、ダルベッコ改変イーグル培地(ギブコ社製。カタログNo.12100−046)13.4g、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業社製)3.7g、ストレプトマイシン(明治製菓社製)0.05g、ペニシリン(明治製菓社製)10万単位を、注射用蒸留水(大塚製薬社製)982mlに溶解し、滅菌済み0.22μmポリビニリデンジフルオライド膜(ミリポア社製)で濾過滅菌して、線維芽細胞増殖用培地を作製した。
【0047】
【発明の効果】
以上記載したとおり、本発明は線維芽細胞増殖促進剤に関するものであり、効果的に線維芽細胞を増殖することが可能である。また、天然物から単離する事が可能であり、且つ化学的にも合成が可能であることから大量に供給することができ、食品、医薬品、飼料、化粧品等に配合することが可能であり、汎用性が高い。
【0048】
【配列表】
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Claims (6)

  1. 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、該ペプチドのカルボキシル基をアミド化又はアシル化した誘導体、薬学的に許容される該ペプチドの塩、又はこれらの2以上の混合物を有効成分とする線維芽細胞増殖促進剤
  2. 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、血清から単離されるものである請求項に記載の線維芽細胞増殖促進剤
  3. 配列番号2乃至配列番号4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド、該ペプチドのカルボキシル基をアミド化又はアシル化した誘導体、薬学的に許容される該ペプチドの塩、又はこれらの2以上の混合物を有効成分とする線維芽細胞増殖促進剤
  4. 配列番号2乃至配列番号4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、化学的に合成されるものであるか、又は配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを酵素処理し、得られるペプチド混合物から単離されるものである、請求項に記載の線維芽細胞増殖促進剤
  5. 配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、該ペプチドのカルボキシル基をアミド化又はアシル化した誘導体、薬学的に許容される該ペプチドの塩、又はこれらの2以上の混合物を有効成分とする線維芽細胞増殖促進剤
  6. 配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、血清から単離されるものである請求項に記載の線維芽細胞増殖促進剤
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