JP3913075B2 - 照明装置および撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
カメラ等の撮影装置に用いられている照明装置に関して、光源から様々な方向に射出した光束を効率良く必要な照射範囲内に集光させるために、従来種々の提案がなされている。
【0002】
特に近年では、光源の前に配置されるフレネルレンズの代わりに、プリズムやライトガイド等の全反射を利用した光学部材を配置することによって、集光効率の向上と小型化とを図った照明装置が提案されている。
【0003】
一方、撮影レンズのズームが可能な撮影装置に、照射範囲が固定されたタイプの照明装置が搭載されると、特に必要照射範囲が狭いテレ状態において、不要な範囲にまで照明が行われることになり、エネルギロスが大きくなったり必要照射範囲内での光量不足が生じたりする。この不都合を解消するため、従来、撮影画角に応じて照明光の照射範囲を変更させることができるようにした照明装置が提案されている。
【0004】
照射範囲を可変としたタイプの照明装置としては、特開2001−66672号公報にて提案されているように、光源の前方に配置され、入射光束の少なくとも一部を全反射させて最も集光させた状態を形成する光学プリズムと、この光学プリズムの被写体側に配置した第1および第2の光学パネルとを有し、これら2つの光学パネルの相対的位置を変化させることによって照射範囲を可変とするものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報にて提案の照明装置では、光源からの光の集光発散を行わせるために、光源の前方に3つの光学部材を必要とし、部品点数が多くなるという問題がある。また、多くの光学部品のそれぞれに関して組立て位置精度が必要となることから、組立て作業が複雑化するという問題もある。
【0006】
また、上記公報にて提案の照明装置では、集光光学系を構成するための光学プリズムによって光源からの光を光源の径方向を含む断面(上下方向を含む側面断面)において略平行光化して第1の光学パネルに導くようにしている。しかしながら、光源からの光を略平行光化させるためには光学プリズムを上下方向に大型化せざるを得ず、さらに光学プリズムから射出した略平行光が入射する光学パネルも上下方向に大きなものにする必要がある。この結果、照明装置が上下方向に大型化してしまうという問題もある。
【0007】
そこで本発明は、従来に比べて少ない部品点数で構成でき、小型化(特に上下方向の小型化)を図れるようにした照明装置およびこれを備えた撮影装置を提供することを目的としている。
【0008】
さらに本発明は、上記目的に加え、光源からのエネルギを高い効率で利用でき、照射範囲が可変である場合には、各照射範囲内で均一な配光特性を得ることができるようにした照明装置を提供することを目的としている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記の目的を達成するために、本発明の照明装置は、光源と、この光源よりも照明方向前方に配置され、光源の径方向を含む断面において、光軸位置を含む中心部に正の屈折力を持つレンズ部を有するとともに周辺部に反射部を有する第1の光学部材と、第1の光学部材よりも照明方向前方に配置され、正の屈折力を持つ第2の光学部材とを有し、第1の光学部材は、光源からの光束が入射する第1の入射面としてのレンズ部と、該光源からの光束が入射する第2の入射面および該第2の入射面からの光束を反射する内面反射面により構成される反射部とを有し、該レンズ部および反射部は、上記径方向を含む断面において、光源から入射した光束を同一の集光領域に向けて集光させることを特徴とする。
【0010】
これにより、光源よりも前方には2つの光学部材が必要となるだけであるので、3つの光学部材を必要とする従来の照明装置に比べて部品点数を少なくすることが可能である。
【0011】
しかも、第1の光学部材によって、上記径方向を含む断面(光源が放電管の場合には、放電管の長手方向に直交する断面:多くの場合は上下方向を含む側面断面)において光源から入射した光束を略1点としての同一の集光領域(以下、集光点ともいう)に向けて集光させるようにしているので、光源からの光を略平行光化して前方の他の光学部材に導く光学プリズムを用いる従来の照明装置に比べて、各光学部材ひいては照明装置全体の小型化、特に上下方向の小型化を図ることが可能となる。
【0012】
そして、第2の光学部材に正の屈折力を持たせることにより、第1の光学部材から射出した集光点以降の発散光を必要照射範囲内に効率良く、かつ必要照射範囲内にて均一な配光分布となるように集光することが可能となる。
【0014】
また、上記発明において、第1の光学部材と第2の光学部材とを光軸方向において相対移動可能として光照射範囲を可変とすることにより、第1の光学部材と第2の光学部材との相対移動量が小さくても、大幅な照射範囲の変更が可能な照明装置を構成することができる。
【0015】
また、この場合において、第2の光学部材に、上記径方向を含む断面において、光軸位置を含む中心部に正の屈折力を持つ正レンズ部を設けるとともに、周辺部に正の屈折力を持つフレネルレンズ部を設け、第1の光学部材と第2の光学部材とを、少なくとも、第1の光学部材から射出した光が正レンズ部を通過する状態(第1の状態:例えば、ワイド状態)と、第1の光学部材から射出した光が正レンズ部およびフレネルレンズ部を通過する状態(第2の状態:例えばテレ状態)とに相対移動可能とすることが可能である。
【0016】
これにより、第1の状態においてむらのない配光特性が得られるとともに、第1の状態から第2の状態にかけて連続的な照射範囲変更を行うことが可能となる。
【0017】
また、上記発明において、光源として放電管を用いる場合に、第1の光学部材における放電管の長手方向(左右方向)両側に、放電管から入射した光束を集光する反射部を設けてもよい。これにより、左右方向に関して光を効率良く集光することが可能となる。
【0018】
そして、以上のような照明装置をスチルカメラ、ビデオカメラ等の撮影装置に搭載することにより、特に上下方向の照明開口が小さく、かつ被写体に対して良好な配光特性が得られる照明付き撮影装置を実現することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1から図10には、本発明の実施形態であるストロボ装置(照明装置)およびこのストロボ装置を搭載したカメラの構成を示している。図1および図2は上記ストロボ装置の光学系の縦断面(光源の径方向を含む断面)図、図3および図4は上記ストロボ装置の光学系の水平断面(光源の長手方向中心軸を含む断面)図、図5は上記ストロボ装置の光学系の一部を示す縦断面図である。
【0020】
また、図6は上記ストロボ装置を搭載したカメラの内部構造を示した分解斜視図であり、図7および図8は上記ストロボ装置の組立て状態を示す斜視図である。さらに、図9および図10は上記カメラの組立状態での内部構造を示す斜視図である。
【0021】
ここで、図1〜図5においては、光源の中心から射出した光線のトレース図も合わせて示している。
【0022】
図9および図10に示すように、本実施形態のストロボ装置は、カメラ本体21の上部に配置されている。
【0023】
図6において、カメラ本体21のレンズ鏡筒部25内に設けられた撮影光学系がズーム動作に伴って撮影光軸方向(前後方向)に移動すると、この撮影光学系の駆動機構を構成する部品に設けられた直進ピン211がレンズ鏡筒部25の上面に形成された直進溝212に沿って前後方向に移動する。
【0024】
レンズ鏡筒部25の上方にはカム板23が配置されており、このカム板23の下面には、直進ピン211が係合する不図示の駆動カムが形成されている。このため、直進ピン211が前後方向に移動すると、カム板23は図中の左右方向に移動する。
【0025】
また、カム板23には、ストロボ駆動カム231と、ファインダー駆動カム232とが形成されている。ストロボ駆動カム231には、ストロボ装置を構成する光源ユニット本体15に設けられたカムピン(図8の151)が係合し、ファインダー駆動カム232には、カメラ本体21に固定されるファインダー地板22のファインダー収納部222に収納保持されたファインダー光学系(図示せず)のうちの一部のレンズに設けられたカムピンが係合している。このため、カム板23が左右方向に移動すると、光源ユニット本体15とファインダー光学系のレンズとがそれぞれの光軸方向(前後方向)に移動し、ストロボズーム動作およびファインダーズーム動作が行われる。
【0026】
図6において、ストロボ装置は、前面光学素子(第2の光学部材)11、中間プリズム(第1の光学部材)12、放電管13、反射傘14、光源ユニット本体15、押さえゴム16により構成される。前面光学素子11は、ストロボ光の照射窓としてファインダー地板22に固定される。放電管13およびこの放電管13の後側に配置される反射傘14は、押さえゴム16によって光源ユニット本体15に固定され、中間プリズム12は、放電管13の前側に配置されて光源ユニット本体15に固定される。
【0027】
なお、放電管13は、不図示のリード線を介してカメラ本体21側の電源回路(図示せず)に接続されており、光源として光を発する。反射傘14は、放電管13から後方に向けて射出した光を反射して、放電管13側に戻す。放電管13は、押さえゴム16の弾性力によって反射傘14に押し付けられる。そして、これら、中間プリズム12、放電管13、反射傘14および光源ユニット本体15により光源ユニット1が構成される。
【0028】
前述したように、光源ユニット本体15に設けられたカムピン151とカム板23に形成されたストロボ駆動カム231とのカム作用によって光源ユニット(中間プリズム12、放電管13および反射傘14)1は、前面光学素子11に対して前後方向に一体的に移動する。これにより、前面光学素子11と中間プリズム12との間の間隔が変化して放電管13から射出された光の集光若しくは発散度合いが変化し、撮影レンズのズーム動作に伴ってストロボ光の照射範囲が変更される。
【0029】
図8は、光源ユニット1を下方から見た図である。光源ユニット本体15の下面には、ストロボ駆動カム231に係合するカムピン151と、ガイド突起152とが光源ユニット本体15に一体形成されている。ガイド突起152は、図6に示すファインダ地板22に形成されたレール221に係合するためのものである。
【0030】
さらに、図7および図8に示すように、光源ユニット本体15の上下面には摺動突起153が光源ユニット本体15に一体形成されている。これら摺動突起153は、光源ユニット1が前後移動する際にファインダ地板22およびその上面に取り付けられる上カバー(図示せず)に対して摺動し、光源ユニット1の上下方向のがたつきを抑え、滑らかな移動を可能とするためのものである。
【0031】
なお、これら摺動突起153と当接する部材はファインダ地板22でなくてもよく、例えばカメラの外装部材でもよい。
【0032】
図9は、撮影レンズがワイドの状態を、図10はテレの状態をそれぞれ示している。これらの図に示すように、ワイド状態では、前面光学素子11と中間プリズム12とが最も接近し、テレ状態では、前面光学素子11と中間プリズム12とが最も離れる。これらワイド状態とテレ状態との間での前面光学素子11と中間プリズム12との光軸方向における相対位置変化により、放電管13から射出された光の照射範囲が変化する。
【0033】
次に、ストロボ装置の動作および光学作用について、図1〜5を用いてさらに詳しく説明する。
【0034】
これらの図において、放電管13は、円筒形状を有するキセノン管である。反射傘14は、放電管13から射出した光束のうち後方に射出された成分を前方に反射させるものであり、反射面には、高反射率を有する光輝アルミ等の金属材料が貼り付けられ又は高反射率の金属蒸着面が形成されている。
【0035】
中間プリズム12は、放電管13からの射出光束を集光させ、所定の配光特性に制御するための光学部材である。また、前面光学素子11は、中間プリズム12の前方に配置され、図3および図4に示すように、光源側の入射面には、放電管13の長手方向における屈折力を有するシリンドリカルレンズ部111が形成されている。また、前面光学素子11の被写体側となる射出面における光軸中心部付近(光軸位置を含む中心部)には、図1および図2に示すように、上下方向における正の屈折力を有するシリンドリカルレンズ部112が形成されているとともに、シリンドリカルレンズ部112を挟んだ上下周辺部には、上下方向における正の屈折力を有するフレネルレンズ部113が形成されている。
【0036】
なお、前面光学素子11および中間プリズム12の材料としては、アクリル樹脂等の透過率の高い光学用樹脂材料が好ましい。
【0037】
以上のように構成される本実施形態の照明装置は、光源ユニット1(特に、中間プリズム12)と前面光学素子11との光軸方向における位置関係を変化させて上下方向および左右方向の照射範囲を、ズーム動作が可能な撮影レンズの焦点距離(つまりは画角)に対応するように変化させるものである。
【0038】
以下、図1および図2を用いて、上下方向の照射範囲変更を行うための最適形状の設定に関して説明する。
【0039】
なお、図1および図2において、各部に付した符号は、図3〜図10に対応している。
【0040】
反射傘14は、その反射面の形状を放電管13とほぼ同心形状の半円筒形状としている。これは、反射傘14での反射光を放電管13の中心部付近に戻すのに有効な形状である。これにより、放電管13のガラスの屈折による悪影響を受けにくくするとともに、放電管14から中間プリズム12に直接入射する光と反射傘14での反射を介した光とを放電管13のほぼ同一点(中心点)からの射出光として扱えるようになり、この後に続く光学系の全体を小型化することが可能となる。
【0041】
図5には、放電管13、反射傘14および中間プリズム12の径方向断面を示しており、これらとともに放電管13の中心部から射出した光束についての光線トレース図も合わせて示している。
【0042】
この径方向断面において、中間プリズム12の光源側の入射部分における光軸中心部付近には、正の屈折力を有する非球面のシリンドリカルレンズ部121が形成されている。また、このシリンドリカルレンズ部121を挟んだ上下周辺部には、平面形状の周辺入射面122,123が形成されている。さらに、周辺入射面122の上方および周辺入射面123の下方にはそれぞれ、非球面形状を有する反射面124,125が形成されている。シリンドリカルレンズ部121および反射面124,125は、放電管13から射出した光束を、略1点Pとしての集光領域(以下、集光点Pという)に向けて集光させる形状を有しており、これにより、集光点Pから前方に発散していく光束の広がり角度を、所定角度αに絞り込むことが可能になる。なお、中間プリズム12の被写体側となる射出面126は、平面形状に形成されている。
【0043】
以下、この中間プリズム12の上下方向における光学作用についてさらに詳しく説明する。まず、放電管13の中心部付近から前方に射出した光束のうち、光軸に対する角度が小さい成分に関しては、直接、シリンドリカルレンズ部121に入射する。この光束は、シリンドリカルレンズ部121の正の屈折力によって中間プリズム12の射出面126から射出した後、点P付近に集光する。
【0044】
また、放電管13の中心部付近から射出した光束のうち、光軸に対する角度が比較的大きな成分に関しては、屈折面122,123から中間プリズム12内に入射し、ここで屈折した後、反射面124,125に向かう。反射面124,125は、屈折面122,123から入射した光束に対して全反射条件を満たす形状に形成されているため、反射面124,125に入射した光束はほぼ全てが反射する。さらに、反射面124,125の形状により、ここで反射した光束は、上記シリンドリカルレンズ部121の屈折力による集光点Pと同一点(同一の集光領域)に集光する。
【0045】
一方、放電管13の中心から後方の反射傘14に向かった光束は、前述したように反射傘14の反射面形状が放電管13と同心形状の半円筒面であるため、再度、放電管13の中心に戻り、上述した中間プリズム12への直接入射光と同様な光路をたどって、点P付近に集光する。
【0046】
このように、放電管13の中心から射出した光束はすべて点P付近に集光する。また、このとき、集光後の光束の発散角度範囲も角度αに抑えられ、以下に説明する光学系において、取扱い易い光束に変換することが可能である。
【0047】
ところで、中間プリズム12の周辺入射面122,123は、光軸に対する角度が比較的大きな平面で構成されている。これは、図示の光路からも分かるように、反射面124,125で反射した光束が集光点Pに向かう際に、これら周辺入射面122,123で不要な反射をせず、効率良く射出面126側に導くことができるようにするためである。
【0048】
この周辺入射面122,123の角度としては、反射面124,125の最も後側の部分で反射した光線の光軸に対する角度とほぼ一致するように設定することが望ましく、これは最も光量ロスを少なくする理想的な角度となる。
【0049】
以上説明したように、中間プリズム12の各光学面の形状を設定することにより、放電管13からその全周囲に向かって射出した光束を、集光点Pから射出する角度範囲αの光束に変換することができる。
【0050】
しかも、中間プリズム12の各光学面での光路制御を屈折と反射という2種類の光学作用であるにもかかわらず、屈折光と反射光の光路の境界領域での特性変化が少なく、境界領域においてほぼ連続的な配光特性を得ることができる。
【0051】
次に、上述した集光点Pへの集光を利用した照射範囲変更について、図1および図2を用いて説明する。
【0052】
図1は、撮影レンズがワイド状態のときに対応したストロボ装置の光学配置図である。なお、以下この状態を、ストロボ装置に関してもワイド状態という。この図に示すように、ワイド状態では、前面光学素子11と中間プリズム12とが最も接近している。そしてこの状態では、中間プリズム12による集光点Pと前面光学素子11の入射面111の位置がほぼ一致する。
【0053】
但し、集光点Pと前面光学素子11の入射面との最適な位置関係は、撮影レンズに必要とされる焦点距離との関係によって適宜変化する。
【0054】
ここで、前面光学素子11の形状について詳しく説明する。前面光学素子11の入射面111には、上下方向に関してレンズ効果を持たせておらず、この面は、先に触れたようにおよび後に詳述するように、放電管13の長手方向の集光に利用している。
【0055】
一方、前面光学素子11の射出面側は、集光効果を持たせるための各種形状が設定されている。
【0056】
まず、光軸中心部付近には、図の紙面に対して垂直な方向に延びる非球面のシリンドリカルレンズ部112が形成されており、このシリンドリカルレンズ部112は、この図の断面での上下方向において正の屈折力を持つ。また、上下周辺部には、これもこの断面での上下方向において正の屈折力を持つフレネルレンズ部113,114が形成されている。
【0057】
なお、前面光学素子11の射出面側は、光学的にはすべてシリンドリカルレンズ面で構成することが望ましいが、すべてをシリンドリカルレンズ面で構成すると、周辺部で必要とされる屈折力が強いために周辺部形状の落ち込み(凹み)が大きくなり、カメラの外観部を構成する前面窓として用いるには不適となる。このため、本実施形態では、中心部をシリンドリカルレンズ面で構成し、周辺部をフレネルレンズ面で構成している。
【0058】
このように構成された前面光学素子11の光学的作用について説明する。図1に示すように、ワイド状態では、放電管13の中心から射出した光束は、ほぼ前面光学素子11の射出面中央部に形成されたシリンドリカルレンズ部112から射出している。一般にワイド状態における配光特性が最も配光むらを生じやすいが、本実施形態では、ワイド状態での照射光束をすべてシリンドリカルレンズ部112の連続的な非球面形状によって配光制御するように構成することによって、不連続な形状によって生ずる配光むらを極力排除し、ほぼ均一な配光特性が得られるように構成している。
【0059】
また、このワイド状態では、シリンドリカルレンズ部112と中間プリズム12による集光点Pとの距離が近いため、集光効果は弱く、比較的広い範囲へのストロボ光照射を行うことができる。
【0060】
一方、図2は、撮影レンズがテレ状態のときに対応したストロボ装置の光学配置図である。なお、以下この状態を、ストロボ装置に関してもテレ状態という。図2に示すように、テレ状態では、放電管13の中心から射出し、中間プリズム12により集光された光束は、集光点Pの以降、十分に広がって前面光学素子11の射出面のほぼ全体に導かれる。そして、射出面に形成されたシリンドリカルレンズ部112とフレネルレンズ部113,114の光学作用により、極めて狭い角度範囲に集光される。
【0061】
ここで、ワイド状態とテレ状態での前面光学素子11に対する中間プリズム12(光源ユニット1)の位置変化量(移動量)は、2.5mmである。この移動量は従来方式の照明装置に比べて極めて小さい。
【0062】
また、移動量がこれ以上少ないと、微少な移動量で大きな照射範囲変化を得ることになり、機構設計が困難になるが、本実施形態のような移動量レベルであれば、最も機構設計上、取扱いやすい寸法関係になっていると言える。
【0063】
次に、図3および図4を用いて、左右方向(放電管13の長手方向)の照射範囲変更について説明する。なお、図3および図4には、放電管13の中心からの光線トレース図も合わせて示している。
【0064】
図3は、図1に対応するワイド状態での左右方向の集光状態示している。この図に示すように、前面光学素子11の入射面側に、左右方向の照射範囲変更を行うための各種形状が形成されている。
【0065】
まず、光軸中心部付近にはシリンドリカルレンズ部111が形成されている。本実施形態では、ワイド状態で前面光学素子11に中間プリズム12が接近し、テレ状態で離れる構成を採っているため、テレ状態で強い集光効果を得ることができる。図3および図4の光線トレース図から見ても、ワイド状態よりテレ状態の方が集光力が強くなっていることが分かる。
【0066】
ここで、左右方向の集光に関して最も特徴的なのは、シリンドリカルレンズ部111の左右方向外側に形成されたプリズム部である。このプリズム部は、入射面115,116と内面反射面117,118とから形成されている。内面反射面117,118は、入射面115,116からの入射光に対して全反射条件を満たすように設定されている。本実施形態では、ワイド状態からテレ状態まで前面光学素子11に対する中間プリズム12の光軸方向位置を変化させることにより、入射面115,116からプリズム部内に入射する光束領域を変化させることによって、左右方向の大幅な照射範囲変更を可能としている。
【0067】
図3に示すワイド状態では、中間プリズム12から射出した光束のうち左右両端近傍の最小の光束がプリズム部に入射して光軸側に集光され、他の光束はシリンドリカルレンズ部111によって広い範囲に照射される。
【0068】
一方、図4に示すテレ状態では、プリズム部に入射する光束は最大となる。すなわち、入射面115,116のほぼ全体から光線がプリズム部に入射する。そして、これら多くの光束が光軸側に集光され、他の光束はシリンドリカルレンズ部111によって狭い範囲に照射される。したがって、テレ状態での十分な集光が行われる。
【0069】
このように、図1および図2に示した上下方向における全反射による集光効果を、左右方向に関しても応用することにより、少ない部品構成であるにもかかわらず、極めて効率良く集光を行わせることができる。
【0070】
以上のように構成されたストロボ装置の配光特性を図11および図12に示す。図11はワイド状態での上下方向および左右方向の配光特性を、図12はテレ状態における上下方向および左右方向の配光特性をそれぞれ示している。なお、両図とも、中心光量に対して50%の光量で規定した有効照射範囲を示している。
【0071】
これらの図から分かるように、ワイド状態からテレ状態に移行させることにより、照射範囲(角度)は、左右方向に関しては83.6°から39.4°に、また上下方向に関しては44.8°から16.9°へとそれぞれ大幅に変化させることができる。
【0072】
しかも、このときに配光分布はどの位置でもほぼ均一に保たれ、むらのない均一な配光特性を得ることが可能である。
【0073】
さらに、この照射範囲変化に伴う中心光量の増加は2倍以上に及び、極めて効率良く照射範囲の変更が達成されている。
【0074】
このように、本実施形態では、中間プリズム12(光源ユニット1)が前面光学素子11に対して僅か2.5mm移動するだけであるにもかかわらず、上下方向および左右方向ともに大幅に照射範囲を変更することができ、しかも配光特性も良好で、ガイドナンバーの大幅な増加を望むことができる。
【0075】
なお、本実施形態では、照射範囲可変タイプの照明装置について説明したが、本発明は、照射範囲固定タイプの照明装置にも適用することができる。例えば図1に示したワイド状態に相当する光学配置に固定された構成において、前面光学素子11を、上下周辺のフレネルレンズ部113,114を取り除いた光軸中心部付近のシリンドリカルレンズ部112のみを有するものとすることができる。これにより、きわめて小さな上下方向開口(前面光学素子)でありながらも、広い範囲にストロボ光を照射可能な照明装置を実現することができる。
【0076】
また、本実施形態では、直管型の放電管を光源として用いる場合について説明したが、本発明は点(若しくは球状)の光源を用いる場合にも適用することができ、この場合、上下方向のみならず左右方向の小型化も図ることができる。
【0077】
また、上記実施形態ではスチルカメラに搭載されたストロボ装置について説明したが、本発明は、ビデオカメラや携帯型情報端末に搭載される撮影装置に用いられる照明装置にも適用することができる。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光源よりも前方に2つの光学部材が必要となるだけであるので、部品点数を少なくすることができる。
【0080】
しかも、第1の光学部材のレンズ部および反射部によって、上記径方向を含む断面(一般に、上下方向を含む側面断面)において光源から入射した光束を同一の集光領域に向けて集光させるようにしているので、光源からの光を略平行光化して前方の他の光学部材に導く光学プリズムを用いる従来の照明装置に比べて、各光学部材ひいては照明装置全体の小型化、特に上下方向の小型化を図ることができる。
【0081】
さらに、第2の光学部材に正の屈折力を持たせることにより、第1の光学部材から射出した集光領域以降の発散光を必要照射範囲内に効率良く、かつ必要照射範囲内にて均一な配光分布となるように集光することができる。
【0082】
また、上記発明において、第1の光学部材と第2の光学部材とを光軸方向において相対移動可能とすれば、第1の光学部材と第2の光学部材との相対移動量が小さくても、大幅な照射範囲の変更が可能な照明装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態であるストロボ装置のワイド状態における光学配置および光線分布を示す、放電管の径方向を含む断面図である。
【図2】上記ストロボ装置のテレ状態における光学配置および光線分布を示す、放電管の径方向を含む断面図である。
【図3】上記ストロボ装置のワイド状態における光学配置および光線分布を示す、放電管の長手方向を含む断面図である。
【図4】上記ストロボ装置のテレ状態における光学配置および光線分布を示す、放電管の長手方向を含む断面図である。
【図5】上記ストロボ装置のうち光源ユニット(放電管、反射笠および中間プリズム)の光学配置および光線分布を示す、放電管の径方向を含む断面図である。
【図6】上記ストロボ装置を搭載したカメラの構成部品を分解して示した斜視図である。
【図7】上記ストロボ装置のうち光源ユニットの構成を示す上方斜視図である。
【図8】上記ストロボ装置のうち光源ユニットの構成を示す下方斜視図である。
【図9】上記ストロボ装置を搭載したカメラ(撮影レンズのワイド状態)の構成部品を組立状態で示した斜視図である。
【図10】上記ストロボ装置を搭載したカメラ(撮影レンズのテレ状態)の構成部品を組立状態で示した斜視図である。
【図11】上記ストロボ装置のワイド状態における配光特性を示した図である。
【図12】上記ストロボ装置のテレ状態における配光特性を示した図である。
【符号の説明】
1 光源ユニット
11 前面光学素子
12 中間プリズム
13 放電管
14 反射傘
15 光源ユニット本体
16 押さえゴム
21 カメラ本体
22 ファインダ地板
23 カム板
151 カムピン
152,153 摺動突起
221 レール
Claims (13)
- 光源と、
前記光源よりも照明方向前方に配置され、前記光源の径方向を含む断面において、光軸位置を含む中心部に正の屈折力を持つレンズ部を有するとともに周辺部に反射部を有する第1の光学部材と、
前記第1の光学部材よりも照明方向前方に配置され、正の屈折力を持つ第2の光学部材とを有し、
前記第1の光学部材は、前記光源からの光束が入射する第1の入射面としての前記レンズ部と、該光源からの光束が入射する第2の入射面および該第2の入射面からの光束を反射する内面反射面により構成される前記反射部とを有し、
前記レンズ部および反射部は、前記径方向を含む断面において、前記光源から入射した光束を同一の集光領域に向けて集光させることを特徴とする照明装置。 - 前記第2の光学部材は、前記径方向を含む断面において、光軸位置を含む中心部に正の屈折力を持つ正レンズ部を有するとともに、周辺部に正の屈折力を持つフレネルレンズ部を有することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
- 前記第1の光学部材による集光領域が、前記第1の光学部材と前記第2の光学部材の射出面との間に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。
- 前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とを光軸方向において相対移動させて光照射範囲を可変としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の照明装置。
- 前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とが、前記第1の光学部材による集光領域が前記第1の光学部材と前記第2の光学部材との間に位置する状態に相対移動可能であることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
- 前記第2の光学部材は、前記径方向を含む断面において、光軸位置を含む中心部に正の屈折力を持つ正レンズ部を有するとともに、周辺部に正の屈折力を持つフレネルレンズ部を有しており、
前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とが、少なくとも、前記第1の光学部材から射出した光束が前記正レンズ部を通過する状態と、前記第1の光学部材から射出した光が前記正レンズ部および前記フレネルレンズ部を通過する状態とに相対移動可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載の照明装置。 - 前記光源と前記第1の光学部材とが一体的に前記第2の光学部材に対して光軸方向に移動することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の照明装置。
- 前記光源が放電管であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の照明装置。
- 前記第2の光学部材における前記放電管の長手方向両側に、前記放電管からの光束を集光する反射部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
- 前記第2の光学部材における光軸位置を含む中心部に、前記放電管の長手方向において屈折力を有するシリンドリカルレンズ部が設けられていることを特徴とする請求項8又は9に記載の照明装置。
- 前記光源の後側に、前記光源から射出した光束を前記光源側に戻す反射部材を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の照明装置。
- 請求項1から11のいずれか1つに記載の照明装置を備えたことを特徴とする撮影装置。
- 請求項4から7のいずれか1つに記載の照明装置と、変倍可能な撮影光学系とを有し、
前記撮影光学系の変倍に応じて前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とを相対移動させて光照射範囲を可変としたことを特徴とする撮影装置。
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