JP4280527B2 - 照明装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、照明装置及びそれを用いた撮影装置に関し、特に光源から射出された光束に光学作用を及ぼす光学部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、カメラ等の撮影装置に用いられている照明装置は、光源と、この光源から発せられた光束を前方に導く反射鏡やフレネルレンズ等の光学部品とで構成されていた。
【0003】
このような照明装置では、光源から様々な方向に射出した光束を、効率よく必要照射画角内に集光させるための工夫がなされている。具体的には、光源の前側にフレネルレンズを配置するかわりに、プリズム・ライトガイド等の全反射を利用した光学部材を配置させ、集光効率の向上や小型化を図っている。
【0004】
この場合、光源から前方に射出した光束は正の屈折力を有するレンズによって集光され、また、光源から側方へ射出した光束は光学部材入射後前方に向けて反射させる全反射面によって集光され、同一の射出面から射出する。
【0005】
【特許文献1】
特開2000―250102号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、カメラの小型化の要請に伴い、ストロボ光を発光する照明装置にも小型化が必要となっている。このような背景から、上述のように光学部材の全反射を用いることによって小型・高効率化を実現した照明装置が提案されている。
【0007】
一方、照明装置としては、この小型・高効率化の要素の他に、必要とされる照射範囲に対して均一な配光特性を持たせることも重要である。
【0008】
従来の照明光学系では、光源からの直接光と反射傘やプリズムによる反射光とは異なった特性を持っているにもかかわらず、この両者を混在させて構成していた。このため、均一な配光特性を効率良く得ることができなかった。
【0009】
均一な配光特性が得られない原因として、まず第一に、直接光と反射光とでは集光方法自体が異なっていることが挙げられる。すなわち、直接光は、屈折によって制御されているため面形状の変化に伴なう特性変化が比較的なだらかであるのに対し、反射光は光源との位置関係や反射部自体の形状によって特性が大きく変化する傾向にある。このため、この両者の集光度合いを完全に一致させ、常に均一な配光を得るような構成をとることは極めて困難であった。
【0010】
また、均一な配光特性が得られないもう一つの原因として、光学部材内での光路長が一致していないことが挙げられる。すなわち、一般的に、光学部材内での光路長は、直接光が短く、反射光が長くなっているためである。このことは、光学部材の材料自体の透過率特性により、光路長が長い反射光の方が一般的に照度が弱まってしまうことを意味している。
【0011】
また、光学部材には一般的に色温度補正用の着色料を混入させているが、透過する長さが異なると、この色補正の効果が光路によって異なってしまい、均一な色補正をすることができない。
【0012】
そこで、従来の照明装置では、均一な配光特性を持たせるために、部分的に拡散部を設けて必要照射範囲全体を均一な配光となるような手法をとって光学特性の部分的な改善を図ってきた。
【0013】
しかし、このような拡散面を使用した照明装置では、必要範囲外の光束が発生したり、不要な拡散面で吸収される成分が増加するなどの原因によって効率の低下が生じるばかりではなく、原理的にも直接光と反射光が混在するという問題点や光路長の長さが異なり特性が一致しないという問題点に対しての根本的な解決にはなっていなかった。
【0014】
このため、均一な配光特性は得られず、本来の照明装置が持つ光学特性を最大限に生かすことができなかった。
【0015】
一方、照明装置はその特性上、瞬間的に大光量を発するため、撮影される者にとっては、強烈な閃光による残像が残り、撮影後にも苦痛を生じさせるものであった。これは、ストロボ発光部という小面積で特定の箇所に高輝度部が集中していることが原因になっている。この現象を緩和するためには、発光部の面積をできるだけ広げること、すなわち壁や天井でのバウンスをさせたり、拡散部材等を用いて発光部を広げて面光源化することが効果的であることが、以前より知られている。しかし、実際の製品には、このように広い発光面を形成することは困難である。
【0016】
さらに、従来のストロボ発光部の形態にとらわれない新規な発光部の形態も一方で望まれている。具体的には、従来のストロボ発光部では、ストロボパネルの前面を介して光源である閃光放電管の形状が直接見えるような構造となっていたが、これを直接見えないようにしたり、外観に露出される部分の形態を従来にない、たとえば細い2列の発光部にするなどの新しい形態とすることなどが望まれている。
【0017】
このような従来のデザインとは一線を画したストロボ発光部の形態は、従来の構成の延長では困難であり、今までに存在しなかった。
【0018】
以上のことから、本発明が解決しようとする課題は、拡散部材を用いることなく均一な配光特性を持った照明装置を提供することである。
【0019】
また、射出光が射出される射出面を広げることにより、照明時の眩しさを軽減した照明装置を提供することである。この際、単なる開口面の面積を増大させるだけでなく、広げた射出面の広い部分から光束を射出させるように工夫する必要がある。
【0020】
さらに、射出面の前方から、閃光放電管の形態を見えないように構成したり、従来にない射出面の形態を持った照明光学系の構成を提供することである。
【0021】
また、閃光放電管からの射出光をすべて一度反射光に変換することにより、いままでにない新たな特性を持った照明装置を提案するものであり、配光特性に優れ、眩しさを低減し、新規デザインに対応した新しい照明装置を提供することである。
【0022】
また、閃光放電管からのエネルギを高い効率で利用でき、小型で軽量なスチルカメラ、ビデオカメラ等に好適な照明装置及びそれを用いた撮影装置を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の照明装置は、円筒直管形状の光源と、この光源よりも照明方向前方に配置された光学部材とを有し、前記光学部材は、前記光源の径方向を含む面内において、前記光源からの光を前方に反射する反射面と、前記光源から発せられた光束のうち、該光源の射出光軸から周辺部までの領域の光束を前記反射面に向かわせる少なくとも一つの光学面とを有し、前記光源からの光束が全て前記反射面によって反射され反射光となり、これにより光学部材内を通る光束の光路長をほぼ一定に保つことを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0025】
図1〜図5は、本発明の実施形態である照明装置を示す。図1は照明装置を構成する閃光放電管の径方向の断面図、図2は図1の断面図に閃光放電管から射出した光線をトレースしたものである。また、図3は照明装置の射出光軸に対して直交する方向の断面図である。図4は照明装置の分解斜視図であり、図5は本実施形態の照明装置を搭載したカメラの斜視図である。
【0026】
図5において26はカメラ本体であり、このカメラ本体26の前面中央には撮影光軸方向に進退してズーミング及びフォーカシングを行うレンズ鏡筒25が設けられている。
【0027】
カメラ本体26の上面には、撮影準備動作(焦点調節動作及び測光動作)および撮影動作(フィルムやCCD等の撮像素子への露光)を開始させるためのレリーズボタン21及びカメラの電源スイッチ22が設けられている。
【0028】
カメラ本体26の前面のうち、中央上部には被写体像を観察するためのファインダ窓23が、ファインダ窓23の右側には被写体輝度を測定(測光)するための測光部24が、測光部24の右側には被写体に照明光を照射する照明装置27が設けられている。
【0029】
次に、本実施形態の照明装置27の光学特性を決める構成要素について、図4を用いて説明する。
【0030】
同図において1は、光学部材であり、この光学部材1はアクリル樹脂等の透過率の高い光学用樹脂材料により構成されている。2は、円筒直管形状の閃光放電管(キセノン管)である。
【0031】
3は、閃光放電管2から射出した光束のうち、射出光軸の後方に射出された光束を、前方へ反射する反射傘である。この反射傘3の内側の面は、高反射率を有する光輝アルミ等の金属材料により構成されている。
【0032】
上記構成のカメラにおいて、カメラの動作モードが例えば「ストロボオートモード」にセットされている場合には、レリーズボタン21がユーザーによって押された後に、測光部24で測定された外光の明るさと、装填された不図示の撮影フィルムやCCD等の撮像素子の感度とに応じて、照明装置27を発光させるか否かを中央演算装置28が判断する。
【0033】
中央演算装置28が撮影状況下において「照明装置を発光させる」と判定した場合には、中央演算装置28が発光信号を出力し、反射傘3に取り付けられた不図示のトリガーリード線を介して閃光放電管2を発光させる。
【0034】
閃光放電管2から射出した光束のうち、射出光軸後方に射出された光束は、反射傘3で反射され、光学部材1に入射する。光学部材1に入射した光束は、この光学部材1により所定の配光特性を持つように変換された後、被写体側に照射される。射出光軸前方に射出された光束は、光学部材1に直接入射してこの光学部材1により所定の配光特性に変換された後、被写体側に照射される。
【0035】
ここで、本実施形態の最大の特徴は、閃光放電管2から射出して光学部材1に入射した光束を、すべて光学部材1内で少なくとも一度全反射させた後に、被写体に向かうように構成した点である。言い換えると、基本的に屈折のみで被写体に向かう成分を排除した点である。
【0036】
次に、図1、図2を用いて本実施形態の照明装置における光学系の設定方法について説明する。図1、図2は、本実施形態の閃光放電管の径方向の断面図である。図2には、閃光放電管の内径中心部より射出した代表光線をトレースしている。なお、図1,図2では光線以外のすべての光学系の構成および形状は同一である。
【0037】
本実施形態の光学部材1の特徴点は以下の通りである。本実施形態では、光学部材1の入射面1a、1a’、反射面1b、1b’及び射出面1c、1c’の3つの面を曲面により構成している。これにより、閃光放電管から射出した光束は、射出光軸と平行な方向に方向変換されて被写体側に照射される。
【0038】
閃光放電管から射出した光束は、反射面1b、1b’で全反射される。なお、全反射とは、光の屈折率の高い媒質から屈折率の低い媒質に光が進むときに、入射角がある角度以上になると、境界面で光がすべて反射する現象をいう。
【0039】
射出面1c、1c’は、この射出面1c、1c’のほぼ全面から光が射出されるように構成されている。このように、全ての光束が反射面で反射されるような照明装置は、従来例のように直接光と反射光とを区別しなくて済むため数々の利点がある。
【0040】
具体的には、照明装置の構成が単純化される。また、直接光と反射光という特性の異なった成分を合成する必要がなくなるため、配光特性に優れた照明装置を実現しやすくなる。
【0041】
一方、従来の照明装置では、光学部材1内での光路長が直接光と反射光とで大きく異なっている。すなわち、一般的には、光学部材1内での光路長が直接光では短く、反射光では長くなっている。これは、光学部材1が持っている透過率特性により、光路長が長い反射光の方が光路長が短い直接光よりも照度が弱まることを意味している。
【0042】
また、光学部材1には、一般的に色温度補正用の着色料が混入されているが、透過する光の光路長の長さが異なると、色補正の効果が光路によって異なってしまい均一に色補正するのが困難となる。
【0043】
これに対して、本実施形態では、閃光放電管から照射された光束が全て反射面1b、1b’によって反射され反射光となる。これにより、光学部材1内を通る光束の光路長が、ほぼ一定に保たれるため、均一な色補正を可能とした照明装置27を提供することができる。
【0044】
次に、光学部材1の形状と閃光放電管から射出した光束が光学部材1内においてどのような挙動を示すか図2を用いて詳細に説明する。
【0045】
この種の閃光放電管2内の発光現象としては、照射効率を向上させるため、内径一杯に発光させる場合が多く、閃光放電管2の内径一杯でほぼ均一に発光していると考えて差し支えない。
【0046】
しかし、設計段階では、閃光放電管2から射出される光を効率よく制御するためには、閃光放電管2の内径全部の光束を同時に考えるより、理想的に閃光放電管2の中心に点光源があると仮定して光学系の形状を設計し、その後に、光源が有限の大きさを持っていること考慮した補正を行うことにより効率良く設計することができる。
【0047】
本実施形態もこの考え方に基づき、光源の発光部中心を形状決定の基準値と考え、以下のように光学部材1の形状を設定している。
【0048】
図2に示すように、光学部材1の入射面1a,1a’は,中心部が大きくくぼんだ略V字形状となっている。また、入射面1a,1a’は、曲面からなるシリンドリカルレンズ面により構成されており、射出光軸を境にして対称に配置されている。
【0049】
閃光放電管2から射出した光束は、入射面1a,1a’を透過する際に屈折され、射出光軸から離れる方向に導かれる。
【0050】
1b、1b’は、入射面1a,1a’により導かれた光束を、射出面1c、1c’側に方向変換させるとともに集光状態を整える反射面である。反射面1b、1b’は、面形状を鏡面化した全反射面により構成されており、安価に製造することができ、方向変換も効率よく行うことができる。
【0051】
射出面1c、1c’は、射出光軸を境に対称的に構成された略V字形状の曲面であり、シリンドリカルレンズ面により構成されている。反射面1b、1b’で方向変換された光束は、射出面1c、1c’から射出する際に屈折され、図2に示す断面に関して射出光軸方向と略平行な方向に方向転換される。
【0052】
一方、閃光放電管2から射出した光束のうち、後方に向かった光束は、閃光放電管2の中心軸と同心の円筒面で構成された反射傘3で反射されて、閃光放電管2の中心部付近に導かれ、前述の光路を経て、射出面1c、1c’から射出される。
【0053】
このように、閃光放電管2から射出した光束は、射出面1c、1c’からこの断面に関して射出光軸方向と略平行な方向に射出される。
【0054】
そして、閃光放電管2から射出した光束(複数の光線)は、その射出方向に応じて、射出面1c、1c’上で1対1に対応するように並んで配列させることができ、射出面1c、1c’上の同一点から複数の方向に向かう成分は存在しない。
【0055】
閃光放電管2から射出した光束を、同一方向に揃えた上で被写体側に射出することができる。射出面1c、1c’の形状がv字状でその中心部が大きくくぼんでいるため、広い射出面積を使って射出させることができる。
【0056】
さらに、このとき反射光路を使って光路を折りたたんでいるため、照明光学系の全体形状を大幅に小型化することができる。
【0057】
一方、本実施形態の照明装置27の特徴として、閃光放電管2から射出した光束のうち、射出光軸に対する角度が小さい成分が射出面1c、1c’の周辺部に導かれ、射出光軸に対する角度が比較的大きな成分が射出面1c、1c’の中央部付近に導かれている点が挙げられる。
【0058】
このような構成によれば、光学部材1内を通る光の光路長を均一にすることができ、照明装置27として望ましい特性を得ることができる。
【0059】
つまり、光学部材1としては、閃光放電管2から射出した光束をそのまま射出することが好ましくない場合がある。たとえば、照明装置27として写真撮影用のストロボ装置を考えた場合に、太陽光の昼光色に近い光束を放つ光源を用いることが望ましいが、光源である閃光放電管2の特性や発光を行わせるための電気回路の構成によっては、やや青みがかった色温度の高い光束となる場合がある。
【0060】
そこで、光学部材1に着色をほどこして、照明光の色温度を下げるような照明光学系が従来例として存在するが、このような照明光学系では、各光束の光路長によって色補正のばらつきが発生することが考えられる。
【0061】
これに対して、本実施形態では、光学部材1内での光路長を揃えることによって、均一な色補正が可能となるため、照明光として均一な光学特性を持たせることができる。
【0062】
また、閃光放電管2から射出された光束は、直接射出されることなく、反射面1b、1b’によって一度反射された後に、被写体側に照射される。つまり、閃光放電管2から射出された光束は、すべて反射光として扱われるため、光路長の均一化というメリットの他にも、種々の優れた特性を得ることができる。
【0063】
具体的には、閃光放電管2から照射された光束の配光特性を均一化することができる。また、上述した光学部材1の形状によれば、閃光放電管2を外部から視認できないように隠すことができるため、商品の品位を高めることができる。
【0064】
さらに、部分的に高輝度として認識される光学部材1の中央部(射出光軸の近傍)から射出される直接光成分がなくなり、射出光が均一化されるため、眩しさが軽減される。
【0065】
このように、本実施形態の照明装置27では、入射面1a,1a’、反射面1b,1b’及び射出面1c,1c’からなる3つの曲面によって、光路順序が決定され、更に、これらの曲面は、特性の急激な変化を行わせる変極点が存在しない連続的な曲面であるため、光学特性に優れた効率の良い照明装置を提供することができる。
【0066】
一方、本実施形態の光学部材の各曲面は、曲率の大きなシリンドリカルレンズによって構成されている。この形状は、各部品の加工精度による誤差や光学系の組み立て上の位置ずれの影響に対して強い構成とするのに有利である。
【0067】
つまり、本実施形態の光学部材1では、各曲面に到達する光束の位置が微妙にずれたとしても光学特性への影響が少ないため、光学特性が安定しているのである。
【0068】
このことは、光源の大きさがある一定の大きさを持つと仮定した場合でも大幅な光学特性の変化が生じにくく、光源の大きさの変化に対して連続した光学特性の変化が得られることを意味しており、均一な配光分布を持った照明光学系とするのに都合の良い構成となっていることもわかる。
【0069】
さらに、光学部材1の射出面1c、1c’の射出光軸付近のくぼみは、比較的小さいため、外観部品として使用しても商品の品位を損なうことがない。
【0070】
本実施形態では、光学部材1を1部品で構成しているが、必ずしも1部品であることが必須の構成ではなく、射出光軸を境にして2部品化してもよい。このように構成することによって、入・射出面に形成した、V字形状のくぼみがなくなり、光学部材1を容易に加工することが可能となり、全体形状を小型化した構成をとることも可能になる。
【0071】
また、本実施形態では、入射面と反射面を一つの部材で構成したが、これらを別部材、例えば入射面をレンズで、反射面をミラー部材で構成してもよい。
【0072】
本実施形態の照明装置27を、図1を用いて更に詳細に説明する。光学部材1の後端部(閃光放電管2に近い側の端部)における射出光軸方向の位置は、閃光放電管2の中心部の位置に概ね一致している。
【0073】
これは、光学部材1の後端部を、閃光放電管2の中心部に対応する位置から被写体側に寄せすぎると、閃光放電管2から射出した光束のうち、射出光軸に対して90°の角度に近い成分をうまく拾うことができず、閃光放電管2からこの方向に向かう射出光束を効率良く集光することができないためである。
【0074】
逆に、光学部材1の後端部を、閃光放電管2の光源中心の後側まで延ばして、効率よくすべての光束を集めようとすると、光学部材1の全体形状が大型化してしまうばかりか、反射面1b、1b’での全反射が困難となり、光学部材1から抜け出てしまう光束が増加して、閃光放電管2からの射出光束を効率良く利用できなくなるおそれがある。
【0075】
以上の理由から、光学部材1は、その後端部の射出光軸方向の位置が、閃光放電管2の光源中心とほぼ一致する位置まで延ばすように構成するのが、光学系の効率及び大きさの関係から望ましい。
【0076】
次に、光学部材1を1部品で構成した際の形状について詳細に説明する。まず、光学系の上下方向の寸法の理想形状に関して説明する。図1に示した、閃光放電管2の径方向を含む断面において、光学部材1の射出面1c、1c’の開口部の高さAと光学部材1の奥行きDとの比を以下の範囲にする。
【0077】
0.7 ≦ A/D ≦ 1.3 ・・・・(1)
上記式(1)の下限値である0.7未満になると、光学部材1は奥行きが深い形態になる。そして、このような形態にすると、反射面1b、1b’で全反射されずに光学部材1外に射出する成分が多数発生すること、また、反射面1b、1b’で反射された光束が、射出面1c、1c’に到達する前に射出光軸と交わってしまい本来想定している射出面1c、1c’の位置から射出できない成分が発生することなどから、効率の良い集光光学系とはならない。
【0078】
一方、上記式(1)の上限値である1.3を超えると、射出面の開口部分が広くなり過ぎてしまうばかりか、射出面1c、1c’上で光束の射出する位置が上下2箇所に分離してしまう傾向にあり、光学部材を1部品で構成しその全面を使って光束を射出させるという本実施形態の目的を達成することが困難となり、望ましくない。
【0079】
本実施形態の光学部材1に関して、実際の数値を(1)式に当てはめてみると、光学部材1の奥行きDが7.6mm、光学部材1の射出面の開口部高さAが7.2mmであり、A/Dは0.95となり、式(1)で示す範囲のほぼ中心の範囲であることがわかる。
【0080】
このように、光学部材1を構成することにより、光学部材1の形状を必要以上に大型化せずに、効率の良い光学系を構成することができる。
【0081】
次に、閃光放電管2を射出光軸方向から見た状態を、図3を用いて説明する。なお、同図における各部の番号は、図1、図2に対応しており、4は、カメラ本体26の外装部品を示す。
【0082】
光学部材1の形状の特徴としては、側面の光源側に近い部分に第1の全反射面1d、1d’を形成し、側面の射出面に近い部分に第2の全反射面1e、1e’を形成したことである。
【0083】
これにより、必要照射角度範囲外に向かう光束を2段階に分けて有効に活用できるようになり、射出面1c、1c’の全面を有効に使った照明光学系を実現することができる。
【0084】
図3では、射出光軸方向と平行に向かう光線が、閃光放電管2のどの位置から発しているかをトレースで示している。同図に示すように、射出面1c、1c’の全体から、射出光軸と平行に進む光が射出していることがわかり、与えられた開口面積に対して、効率良く集光が行われていることも容易に想像できる。
【0085】
本実施形態では、閃光放電管2から射出した光束が、射出面1c、1c’の全面から集光された状態で射出するストロボ光学系の構成を示した。しかし、本実施形態の照明装置は、ここに示した構成だけ限定されない。
【0086】
例えば、本実施形態では、光学部材1の反射面1b、1b’を全反射面としたが、金属蒸着面にしてもよい。この場合には、反射面1b、1b’に当たる角度の限定が少なくなるため、上下開口の狭い薄型の光学系を構成することも可能になる。
【0087】
また、反射傘3を、閃光放電管2の中心と同心である円筒形状に構成したが、楕円面等の2次曲面により構成してもよい。
(第2実施形態)
図6〜図10は、本発明の第2実施形態である照明装置を示している。図6は閃光放電管の径方向の断面図、図7は、図6に示した断面図に閃光放電管から射出した光線をトレースしたものである。また、図8は、照明装置の射出光軸に対して直交する方向の断面図である。
【0088】
図9は、照明装置の分解斜視図であり、図10は、照明装置が搭載されたカメラの斜視図である。尚、図10において、照明装置の構成については、図5と同様であり、対応する箇所は同一の番号で示している。また、各部の機能も第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
図9において、31、31’は光学部材であり、この光学部材31、31’は、射出光軸を挟んで対照的に構成された2つの部品からなり、その材料にはアクリル樹脂等の透過率の高い光学用樹脂材料を使用している。32は閃光を発する直管形状の閃光放電管(キセノン管)である。
【0090】
33は、閃光放電管32から射出した光束のうち、射出光軸の後方に射出された光束を前方に反射する反射傘である。反射傘33の内側の面は、高反射率を備えた光輝アルミ等の金属材料により形成されている。
【0091】
次に、図6、7を用いて本実施形態の照明装置を構成する光学部材31、31’について説明する。なお、図6、7は、本実施形態の閃光放電管32の径方向の断面図である。図7には、閃光放電管32の内径中心部から射出した代表光線をトレースしている。
【0092】
光学部材31、31’の入射面31a、31a’の形状は、閃光放電管32から射出した光束を、射出光軸に対して略60°傾けた方向に導くように構成されている。
【0093】
これは、光学部材31、31’の形状を簡易にするのに有効な形状であり、本実施形態の光学部材31、31’における、入射面31a、31a’、31b、31b’以外の形状は、すべて平面により構成することを可能にしている。
【0094】
また、製作を容易にするため、光学部材31、31’を、射出光軸を境として対称形状に構成するとともに共通部品で構成していることも特徴になっている。
【0095】
一方、閃光放電管32から射出した光束をすべて全反射によって導いていること、また、最も集光した状態を形成する構成をとっていることは、第1実施形態と同様である。
【0096】
本実施形態の光学部材31、31’は、第1実施形態の光学部材1よりも射出光軸方向の長さが短くなっている。このような形状は、光学部材31、31’を2部品で構成するとともに、入射面を後述するような形状にして第1実施形態よりも指向性を増加させることにより、実現可能とされている。
【0097】
ここで、第1の入射面31a、31’a及び第2の入射面31b、31’bは、非球面のシリンドリカルレンズで構成されている。第1の反射面31c、31’c及び第2の反射面31d、31’dは、平面で構成されている。また、射出面31e、31’eも、平面で構成されている。
【0098】
この場合、閃光放電管32から射出された光束は、少なくとも第2の反射面31d、31’d及び射出面31e、31’e必ず通過するように構成されている。
【0099】
本実施形態の光学部材31、31’の特徴は、一定の方向へ指向させるために入射面が複雑化するものの、他の部分の形状はできるだけシンプルな形で構成されており、製作を容易にできるようにしている点にある。
【0100】
閃光放電管32から射出した光束は、第1の入射面31a、31’a及び第2の入射面31b、31’bのうちいずれか一方に入射する。
【0101】
本実施形態では、閃光放電管32から射出した光束を射出光軸に対して60°傾いた方向に導くように光学部材31、31’の形状を構成している。
【0102】
即ち、第1の入射面31a、31’aは、閃光放電管32から前方に射出した光束のうち、射出光軸に対して大きな角度を持った成分を、射出光軸に対して60°傾けた方向に導くように構成している。
【0103】
一方、第2の入射面31b、31’bは、射出光軸に対して小さな角度を持った成分を、射出光軸方向と平行な方向に屈折させ、第1の全反射面31c、31’cに導くように構成している。
【0104】
第1の全反射面31c、31’cは、射出光軸に対して30°傾けて配置されている。このような角度で配置することにより、第2の入射面31b、31’bから導かれた光束を、射出光軸方向に対して60°傾いた方向に反射させることができる。
【0105】
このように、本実施形態では、閃光放電管32から射出した光束が、屈折または全反射により、射出光軸から60°傾いた方向に進むように光学部材31、31’の形状を工夫しているのである。
【0106】
また、第1の入射面31a、31’a及び第2の入射面31b、31’bとの間に隙間が生じないように構成している。
【0107】
第1の入射面31a、31’a及び第1の全反射面31c、31’cによって射出光軸に対して60°の角度をなす方向に方向転換された光束は、第2の全反射面31d、31’dにて反射され、射出面31e、31’eから射出される。この際、不要なロス成分となる全反射が発生しないように、全反射面31d、31’dと射出面31e、31’eの角度を調節してある。
【0108】
一方、閃光放電管32から射出した光束のうち、後方に射出された光束は、反射傘33が閃光放電管32の中心軸と同心の円筒面で構成されているため、反射傘33によって反射された後、再び閃光放電管32の中心部付近に導かれる。
【0109】
そして、その後は前述の光路と同様にして、光学部材31の射出面31e、31’eから射出されることになる。
【0110】
このように、閃光放電管32から射出された光束は、閃光放電管32の径方向を含む面内において、光学部材31、31’により射出光軸と平行な方向に方向転換され、高い集光効果が得られていることがわかる。
【0111】
一方、上述のように、本実施形態の形状で特徴的なことは、入射面31a、31’a、31b、31’b以外の面はすべて平面で構成していることである。
【0112】
これにより、製造が容易になるなどの製造面でのメリットが生じ、量産性に優れた照明装置を提供することができる。また、本実施形態では、光学部材31、31’を2部品化しているが、これも製造面での作りやすさを考慮したものである。すなわち、同形状の2部品で構成して、所定の光学特性が得られると言う点で、部品点数は増えるものの、大変作りやすい構成となっている。
【0113】
さらに、図7にも示すように、本実施形態でも第1実施形態と同様に、閃光放電管32から射出した光束(複数の光線)が、光学部材31、31’の射出面31e、31’e上で互いに交差・干渉することなく連続的に並んで被写体に到達するようにしている。すなわち、閃光放電管32から射出した光束(複数の光線)が、射出面上で1対1に対応し、かつ射出光軸と平行な成分に変換されるように光学部材31、31’を構成している。
【0114】
一方、上述のように光学部材31、31’の入射面及び反射面を構成することにより、光学系の奥行きを短かくすることができ、照明装置を小型化(主として射出光軸の方向)することができる。
【0115】
また、射出面31e、31’eの形状を上下に2分することで、中央部に、新たな空間を形成することができ、従来の構成とは異なった機能を持たせる可能性が生まれる。
【0116】
尚、本実施形態の射出面31e、31’eの形状は、集光性の高い光学系を実現するために考え出されたものであるが、この射出面形状を更に改良して、任意の配光特性を持たせることも可能である。
【0117】
次に、2部品で構成された光学部材31、31’の形状について詳細に説明する。
【0118】
まず、光学系の上下方向の寸法の理想形状に関して説明する。図6に示した光源の径方向を含む断面において、光学部材31、31’の射出面31e、31’eを含む開口部の高さAと光学部材31、31’の奥行きDとの比を以下の範囲にする。
【0119】
1.3 ≦ A/D ≦ 2.5 ・・・・(2)
上記式(2)の下限値である1.3未満になると、反射面31d、31’dで反射した光束が、反射後すぐに射出光軸と交差するように進む成分が増え、射出面31e、31’eでの屈折による補正が困難になるばかりでなく、場合によっては不要な全反射によって光学部材31、31’内にこもってしまい、有効な光束が減少してしまう。また、形態的にも、装置の外観部に現れる射出面31e、31’eが、急角度になり望ましくない。
【0120】
一方、上記式(2)の上限値である2.5を超えると、射出面の開口が広くなり過ぎてしまうとともに、射出面31e、31’eの位置が上下2箇所に遠く離れてしまう傾向にあり、望ましくない。
【0121】
本実施形態の場合について、実際の数値を当てはめてみると、光学部材31の奥行きDが5.8mm、光学部材31の射出面の開口部高さAが10.0mmであり、これらの値を式(2)に代入すると、A/D=1.72となり、上記関係式(2)の範囲に入っていることがわかる。
【0122】
次に、閃光放電管32から射出した光束が射出光軸に対して60°傾いた方向に向かうように、入射面31a,31’aの形状を構成した理由を説明する。
【0123】
ここで、閃光放電管32から射出した光束が、入射面31a,31’aを通過した後に向かう方向と射出光軸とのなす角度をθとすると、
45° ≦ θ ≦ 75° ・・・・・(3)
であることが望ましい。
【0124】
下限値である45°未満の場合には、光損失なく全反射面で反射させようとすると、光学部材31、31’の奥行きが長くなりすぎて照明装置の小型化を妨げるおそれがあるばかりでなく、第2の全反射面31d、31’dで全反射せずに透過してしまう光束成分が増加し、効率の良い照明装置を提供できなくなるおそれがある。
【0125】
一方、上限値である75°を超えてしまうと、上下の開口が広がり過ぎてしまうばかりでなく、すべての光束を第の全反射面31d、31d’にて全反射させることが困難となり照明装置の光損失が大きくなるおそれがある。
【0126】
このような大きさ・効率面での不具合を考慮した結果、上述の(3)で示す条件を満足させる必要がででくるのである。
【0127】
本実施形態では、大きさ・効率面の両立をはかるために、上記(3)の範囲のほぼ中央値である60°となるように入射面31a,31’aの形状を構成しているのである。
【0128】
このような形状上の条件を備えた光学部材31,31’によれば、小型で光損失が少なく効率の良い照明装置を提供することができる。
【0129】
次に、閃光放電管32の軸方向の形状について、図8を用いて説明する。尚、厳密には射出光軸中心で切った場合には、光学部材の断面形状が存在しないこと、また、入射面以降は、上下に分けられた光学部材中を進むことから、図8に示す断面の位置は、樹脂材料中を通るような位置に移動させた状態で表示している。図8において、各部の番号は図6、図7に対応している。
【0130】
まず、側面31f、31f’は、第1実施形態と異なり、閃光放電管32から射出した光束が光学部材31、31’の入射面31a、31’a、31b、31’bからすべて入射すると仮定して、形状を定めており、比較的傾斜角度が急角度の面で構成されている。このように側面31f、31f’を急角度の斜面によって構成することにより、効率良く集光させることができる。
【0131】
本実施形態は、照明光学系の全長を短縮させるとともに集光性を高めた照明装置の一例を示したもである。
【0132】
したがって、本発明は上述の形状に限定されない。即ち、本実施形態では反射面及び射出面の形状を、平面により構成したが、必ずしも平面のみで構成する必要はなく、いずれか一方を平面で構成して、他方の面を曲面で構成するようにしても良い。
【0133】
また、本実施形態では、射出面を平面で構成しているが、必ずしも平面に限定されるものではなく、曲面、フレネルレンズ、中央部に頂角が一定の複数のプリズム面を用いても良い。
(第3実施形態)
図11〜図15は、本発明の第3実施形態である照明装置を示している。図11は閃光放電管の径方向の断面図、図12は、図11に閃光放電管から射出した光束をトレースした図である。また、図13は、照明装置の射出光軸に対して直交する方向の断面図である、光学部材については一部射出光軸中心部以外の面で切った断面の形状を示している。
【0134】
図14は、照明装置の分解斜視図であり、図15は、照明装置を搭載したカメラの斜視図である。尚、図15において、発光部以外の構成については、図5と同様であり、対応する箇所は同一の番号で示している。また、各部の機能も第1実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0135】
図14において、41、41’は光学部材であり、射出光軸を挟んで対称に構成された2つの部品からなり、その材料にはアクリル樹脂等の透過率の高い光学用樹脂材料を使用している。42は、閃光を発する直管形状の閃光放電管(キセノン管)である。
【0136】
43は、閃光放電管42から射出した光束のうち、光射出方向の後方に射出された成分を前方に反射する反射傘であり、内面が高反射率を有する光輝アルミ等の金属材料で形成されている。閃光放電管42、反射傘43の構成は第1実施形態と同様である。
【0137】
光学部材41、41’には、以下に説明するような構成上の工夫が施されている。
【0138】
まず、光学部材41、41’の入射面41a、41’aの形状は、閃光放電管42から射出した光束を、ある一定方向、図示の例では第2実施形態と同様に、射出光軸に対して60°傾けた方向に導くように構成している。
【0139】
また、製作を容易にするため、光学部材41、41’は上下を反転させた共通部品で構成していることも特徴になっている。
【0140】
一方、閃光放電管42から射出した光束をすべて全反射によって導いていることは、第1及び第2実施形態と同様である。以下、図11〜図13を用いて本実施形態の光学部材41、41’について詳細に説明する。
【0141】
第3実施形態は、第1及び2実施形態に比べて、射出面41e、41’eの幅を細くしたこと、また、射出面41e、41’eの形状を射出光軸に対して垂直な平面とし照明装置として利用する際の取り扱いを容易にしている。これを実現するために、光学部材41、41’を2部品で構成するとともに、入射面、反射面の形状に工夫を加えて第1、第2実施形態以上に狭い領域から射出させる形状としている。以下、光学部材41、41’の形状上の特徴及び閃光放電管から射出した光束が光学部材41、41’内においてどのような挙動を示すかを説明する。
【0142】
41a、41’aは、非球面のシリンドリカルレンズで構成された第1の入射面、41b、41’bは、同じく非球面のシリンドリカルレンズで構成された第2の入射面である。
【0143】
41c、41’cは、平面で構成された第1の反射面、41d、41’dは、射出面から射出後1点に集光させるような集光性を与える曲面で構成された第2の反射面である。
【0144】
また、射出面41e、41’eは、射出光軸に対して垂直な平面で構成された幅の狭い光学面である。ここで、閃光放電管42から射出した光束は、閃光放電管42に直交する面内において、入射面、反射面、射出面の順に進み、少なくとも第2の反射面41d、41’d、射出面41e、41’eは必ず通過するように構成されている。
【0145】
そして、射出面41e、41’eを透過した光束は、図12に示すように1点に集光される。
【0146】
このように、本実施形態では、射出面41e、41’eから射出した光束が1点に集光されるように構成されているため、光学部材41、41’の各光学面の形状は複雑化するものの、射出面41e、41’eは幅が狭く射出光軸に垂直な方向に配置されているため、搭載機種に対して扱い易い形態となっている。
【0147】
次に、本実施形態で最も特徴的な入射面と反射面の形状について、さらに詳細に説明する。
【0148】
閃光放電管42からの射出光を入射させるための光学部材41、41’の入射面は、上述のように2種類の入射面に分割されている。また、本実施形態では、閃光放電管42から射出した光束を射出光軸に対して、60°傾けた方向へ導くように各部の形状を構成している。
【0149】
まず、入射面のうち、射出光軸に対して比較的大きな角度を持った成分が入射する第1の入射面41a、41’aは、閃光放電管42から射出された光束が射出光軸に対して60°傾いた方向に向かうように非球面形状で構成され、屈折後の光束が、全反射面41d、41’dに直接向かうように構成されている。
【0150】
一方、もう一つの入射面である第2の入射面41b、41’bから入射した光束は、この第2の入射面41b、41’bによる屈折だけでは射出光軸に対して60°の角度の方向に向かせるのが困難な成分であるため、本実施形態では、第1の全反射面41c、41’cを介することによって、所定の方向に導くように構成している。
【0151】
すなわち、第2の入射面41b、41’bから入射した光束は、第1の全反射面41c、41’cでの全反射を介して、射出光軸方向に対して60°傾いた成分に変換されるように構成されている。この時、第2の入射面41b、41’bは、非球面形状のシリンドリカルレンズによって構成されており、この第2の入射面41b、41’bを透過した光束は、一度射出光軸方向に対して平行に射出される。更に、第1の反射面41c、41’cを射出光軸に対して30°傾けて配置することにより、第2の入射面41b、41’bを透過した光束を射出光軸に対して60°傾けた方向に導くようにしている。
【0152】
このように、本実施形態では、特性の異なった2種類の入射面によって、閃光放電管42から射出したすべての光束が、屈折または全反射をした後に、射出光軸から60°傾いた光束として揃えられるように各部の面形状を構成している。また、このとき2種類の入射面の間に隙間が生じないように各部の面形状を工夫している。
【0153】
次に、第1の入射面41a、41’aによって屈折された光束及び第1の反射面41c、41’cによって反射された光束を、第2の全反射面41d、41’dによって全反射させ、射出面41e、41’eの方向へ導く。
【0154】
この際、射出面41e、41’eから射出した光束を1点に集光させるとともに射出光軸に対して上下の分布が均等となるように変換するために、所定の曲率を持たせるように構成している。
【0155】
一方、射出光軸の後方に向かった光束は、図示していないが、第2実施形態と同様に、後方に配置した反射傘43が閃光放電管42と同心の円筒面で構成されているため、反射傘43で反射された後、閃光放電管42の中心軸付近に導かれ、前述の光路を経て、光学部材41、41’の射出面41e、41’eから射出される。
【0156】
以上説明したように、閃光放電管42から射出した成分はすべて、狭い射出面41e、41’eから射出され、一様な配光分布を持って被写体側に照射される。
【0157】
一方、本実施形態でも、第2実施形態と同様に、光学部材41、41’を2部品化しており、これにより光学部材41、41’の製造を容易にしている。すなわち、光学部材41、41’を同形状の2部品で構成して、所定の光学特性が得られるという点で、部品点数は増えるものの、大変作りやすい構成になっている。
【0158】
さらに、図12にも示すように、本実施形態の基本的な考え方も第1及び第2実施形態と同様に、閃光放電管42から射出した光束(複数の光線)が、光学部材41、41’の射出面41e、41’e上に互いに交差・干渉することなく連続的に並んで到達するように構成することにある。すなわち、閃光放電管42から角度を振った光線が、射出面41e、41’e上で1対1に対応するようになっている。
【0159】
一方、このように光学部材41、41’の入射面及び反射面を定義することによって、光学系の奥行きを短縮させることが可能になる。
【0160】
また、射出面41e、41’eの形状を上下に2分することで、中央部には、第2実施形態以上の大きさを備えた空間を形成することができ、従来の構成とは異なった機能を持たせる可能性が生まれる。
【0161】
尚、集光性を高めたり、拡散度合いを高めたりするために、射出面41e、41’eの形状に改良を加えることもできる。
【0162】
次に、2部材に分かれた光学部材41、41’の形状について、第2実施形態と同様に、(2)式に示した関係式が成り立つかどうか、実際の形状寸法を当てはめてみる。
すなわち、(2)式において、光学部材41、41’の射出面の開口部高さAは11.4mm、光学部材41、41’の奥行きDは5.7mmとなり、これらの比であるA/Dは2.0となり、(2)の範囲にあることがわかる。
【0163】
次に、閃光放電管42の軸方向の形状について、図13に示す断面図を用いて説明する。尚、同図において、各部の番号は図11、図12に対応している。
【0164】
まず、側面41f、41f’は、第1実施形態と異なり、閃光放電管42から射出した光束が光学部材の入射面41a、41’a、41b、41’bからすべて入射すると仮定して、各面の形状を決定しており、比較的傾斜角度が大きい急角度の面で構成されている。このような急角度の斜面を持った側面形状とすることにより、効率良く集光させることができる。
【0165】
以上、本実施形態では、射出光軸に対して直交する面内に配置された射出面41e、41’eの図中上下方向の長さを短くして、配光特性を均一にしている。しかし、本実施形態の光学部材41、41’は上述の構成に限定されない。即ち、本実施形態の射出面41e、41’eの形状は、平面で構成したが、曲面で構成してもよい。
【0166】
また、本実施形態では、閃光放電管42の軸方向の集光については、側面に形成した全反射面についてのみ説明し、他の部分の形状については言及していないが、必ずしも平面や曲面に限定されるものではなく、フレネルレンズや中央部に頂角が一定の複数のプリズム面を形成して、集光性を高めるように構成してもよい。また、光学部材を一対の同一形状としたが、必ずしもこの構成には限定されず、異なった形状の光学部材を組み合わせても良い。
【0167】
さらに、以上説明した各実施形態は、以下に示す各発明を実施した場合の一例でもあり、下記の各発明は上記各実施形態に様々な変更や改良が加えられて実施されるものである。
【0168】
〔発明1〕 光源と、
この光源よりも照明方向前方に配置された光学部材とを有し、
前記光学部材は、前記光源の径方向を含む面内において、前記光源からの光を前方に反射する反射面と、前記光源から発せられた光束のうち、該光源の射出光軸から周辺部までの領域の光束を前記反射面に向かわせる少なくとも一つの光学面とを有することを特徴とする照明装置。
【0169】
〔発明2〕 前記光学面は、前記光源からの光を前記射出光軸を境にして前記射出光軸の方向とは異なる方向に振り分けることを特徴とする発明1に記載の照明装置。
【0170】
〔発明3〕 前記光学面として、前記光源からの光のうち前記射出光軸付近の光を前記反射面に向けて反射する面を含むことを特徴とする発明1に記載の照明装置。
【0171】
〔発明4〕 前記光学部材は、前記反射面で反射された光を射出する射出面を有し、この射出面は前記射出光軸を境にして一対となるように形成されていることを特徴とする発明1から3に記載の照明装置。
【0172】
〔発明5〕 発明1から4のいずれかに記載の照明装置を備えたことと特徴とする撮影装置。
【0173】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光学部材を光束が通過する長さに起因する光学特性の変化、すなわち、光学材料そのものの透過率や、色温度を補正のために光学材料に加えた着色材の色補正量の差がなくなり、配光ムラや色むらのない、均一な光学特性を持った照明装置を提供することができる。
【0174】
また、本発明の照明装置の構成にれば、射出面を広げることが可能であり、照明時の過剰な眩しさを軽減することができる。この際、単なる開口面の増大だけでなく、広げた射出面の広い面積から光束を射出させることが可能なため、その効果は大きい。
【0175】
さらに、光学系の射出面前面から、光源の形態が見えないような光学系や、従来にない射出面の形態を持った照明装置を提供することができる。
【0176】
また、基本的な光線制御を屈折および全反射によって制御しているため光量ロスが少なく、光源からのエネルギを高い効率で利用でき、小型で軽量なスチルカメラ、ビデオカメラ等に好適な照明装置及び撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の閃光放電管の径方向断面図。
【図2】 図1の断面図に閃光放電管から射出された光束をトレースした図。
【図3】 第1実施形態における照明装置の射出光軸に対して直交する方向の断面図。
【図4】 第1実施形態の照明装置の分解斜視図。
【図5】 第1実施形態の照明装置を搭載したカメラの斜視図。
【図6】 第2実施形態の閃光放電管の径方向断面図。
【図7】 図6の断面図に閃光放電管から射出された光束をトレースした図。
【図8】 第2実施形態における照明装置の射出光軸に対して直交する方向の断面図。
【図9】 第2実施形態の照明装置の分解斜視図。
【図10】 第2実施形態の照明装置を搭載したカメラの斜視図。
【図11】 第3実施形態の閃光放電管の径方向の断面図。
【図12】 図11の断面図に閃光放電管から射出された光束をトレースした図。
【図13】 第3実施形態における照明装置の射出光軸に対して直交する方向の断面図。
【図14】 第3実施形態の照明装置の分解斜視図。
【図15】 第3実施形態の照明装置を搭載したカメラの斜視図。
【符号の説明】
1、11、31、41 光学部材
12、32、42 閃光放電管
13、33、43 反射傘
3、34、44 カメラ本体の外装部材
21 レリーズボタン
22 電源スイッチ
23 ファインダ窓
24 測光部
25 レンズ鏡筒
26 カメラ本体
27 照明装置

Claims (5)

  1. 円筒直管形状の光源と、
    この光源よりも照明方向前方に配置された光学部材とを有し、
    前記光学部材は、前記光源の径方向を含む面内において、前記光源からの光を前方に反射する反射面と、前記光源から発せられた光束のうち、該光源の射出光軸から周辺部までの領域の光束を前記反射面に向かわせる少なくとも一つの光学面とを有し、前記光源からの光束が全て前記反射面によって反射され反射光となり、これにより光学部材内を通る光束の光路長をほぼ一定に保つことを特徴とする照明装置。
  2. 前記光学面は、前記光源からの光を、前記射出光軸を境にして前記射出光軸の方向とは異なる方向に振り分けることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
  3. 前記光学面として、前記光源からの光のうち前記射出光軸付近の光を前記反射面に向けて反射する面を含むことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
  4. 前記光学部材は、前記反射面で反射された光を射出する射出面を有し、この射出面は前記射出光軸を境にして一対となるように形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の照明装置。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の照明装置を備えたこと特徴とする撮影装置。
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