JP3913023B2 - 行動支援システムおよび行動支援装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、行動支援システムおよび行動支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平10−295652号公報には、集団遠隔監視装置に関する以下の技術が記載されている。兵士の生理的状態をセンスするセンサと、位置を判定する衛星航法装置とを具備した兵士ユニットを個々の兵士に着用させる。兵士ユニットからの生理的データおよび位置信号を遠隔地で受信する指揮官/衛生兵ユニットで兵士の位置とその兵士が死傷したかを監視し適切な診断および戦術の決定を行う。指令ユニットは複数の指揮官/衛生兵ユニットからの情報をとりまとめ、一定地域内での友軍の位置を確認して、友軍砲火の危険を回避する。
【0003】
現在、隊員との情報通信には、有線電話又は無線機(音声)を使用している。
また、画像は、写真で取得している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
相手との関係で行動する被支援者の行動を容易にし、危険を回避し易いことが望まれている。
例えば、戦術行動時の隊員の作戦行動を容易にし、危険を回避し易いことが望まれていたり、警察等の監視システムに適用され、警察関係者の行動を容易にし危険を回避し易いことが望まれている。
被支援者の行動の効率化による行動目的の円滑な遂行が実行されることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、相手との関係で行動する被支援者の行動を容易にし、危険を回避し易い行動支援システムおよび行動支援装置を提供することである。
本発明の他の目的は、例えば、戦術行動時の隊員の作戦行動を容易にし、危険を回避し易い行動支援システムおよび行動支援装置を提供することである。
本発明の更に他の目的は、例えば、警察等の監視システムに適用され、警察関係者の行動を容易にし危険を回避し易い行動支援システムおよび行動支援装置を提供することである。
本発明の更に他の目的は、被支援者の行動の効率化による行動目的の円滑な遂行が実行され易い行動支援システムおよび行動支援装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以下に、[発明の実施の形態]で使用する番号・符号を用いて、[課題を解決するための手段]を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明の実施の形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものであるが、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0007】
本発明の行動支援システムは、相手との関係で行動する被支援者(10)の前記行動を支援する行動支援システムであって、前記被支援者(10)に装着可能に設けられた行動支援装置(20)と、前記行動支援装置(20)と通信可能に設けられた管制用装置(41)とを備え、前記管制用装置(41)は、少なくとも地形データと前記相手の位置を示すデータを含む特定地図データを生成または更新し、前記行動支援装置(20)は、表示部(25)と、前記管制用装置(41)から前記生成または更新された特定地図データを入力する入力部と、前記行動支援装置(20)を装着している前記被支援者(10)の位置を測定する測位部(23)と、前記入力された特定地図データと前記被支援者(10)の位置とを照合し、前記照合した結果を前記表示部(25)に表示するプロセッサ(21)とを備えている。
【0008】
本発明の行動支援システムにおいて、前記特定地図データには、前記行動支援装置(20)を装着している前記被支援者(10)の味方の人数を示すデータが含まれ、前記管制用装置(41)は、前記行動支援装置(20)を装着している前記被支援者(10)が行動可能か否かの判定を行い、前記判定の結果に基づいて、前記特定地図データを生成または更新する。
【0009】
本発明の行動支援システムにおいて、前記管制用装置(41)は、前記被支援者(10)が前記行動支援装置(20)の使用を許可されているか否かの認証を行い、前記認証の結果に基づいて、前記特定地図データを生成または更新する。
【0010】
本発明の行動支援システムにおいて、前記管制用装置(41)は、前記認証の結果、前記被支援者(10)が前記行動支援装置(20)の使用を許可されていた場合、前記行動支援装置(20)を動作可能な状態にする。
【0011】
本発明の行動支援装置は、相手との関係で行動する被支援者(10)の前記行動を支援し、前記被支援者(10)に装着可能に設けられた行動支援装置(20)であって、カメラ(26)と、前記カメラ(26)により撮像された画像を画像処理して移動物を検出するプロセッサ(21)と、前記検出された移動物を表示する表示部(25)とを備えている。
【0012】
本発明の行動支援システムは、相手との関係で行動する被支援者(10)の前記行動を支援する行動支援システムであって、前記被支援者(10)に装着可能に設けられた行動支援装置(20)と、前記行動支援装置(20)と通信可能に設けられた管制用装置(41)とを備え、前記管制用装置(41)は、前記相手の情報および前記被支援者(10)の味方の情報とを有し、前記行動支援装置(20)は、前記管制用装置(41)から前記相手の情報および前記被支援者(10)の味方の情報を入力する入力部と、カメラ(26)と、前記カメラ(26)により撮像された画像を画像処理して移動物を検出するプロセッサ(21)と、前記検出された移動物を表示する表示部(25)とを備え、前記プロセッサ(21)は、前記相手の情報および前記被支援者(10)の味方の情報と、前記検出された移動物のデータとを照合し、前記照合の結果を前記表示部(25)に表示させる。
【0013】
本発明の行動支援システムは、相手との関係で行動する被支援者(10)の前記行動を支援する行動支援システムであって、前記被支援者(10)に装着可能に設けられた行動支援装置(20)と、前記行動支援装置(20)と通信可能に設けられた管制用装置(41)とを備え、前記管制用装置(41)は、少なくとも地形データと前記相手の位置および前記被支援者(10)の味方の位置を示すデータを含む特定地図データを生成または更新し、前記行動支援装置(20)は、表示部(25)と、前記管制用装置(41)から前記生成または更新された特定地図データを入力する入力部と、前記行動支援装置(20)を装着している前記被支援者(10)の位置を測定する測位部(23)と、前記入力された特定地図データと前記被支援者(10)の位置とを照合し、前記照合の結果として、前記被支援者(10)と前記相手および/または前記味方との位置的関係を求め、前記位置的関係を前記表示部(25)に表示させるプロセッサ(21)とを備えている。
【0014】
本発明の行動支援システムにおいて、前記行動支援装置(20)は、前記位置的関係を示すデータを前記管制用装置(41)に出力する。
【0015】
本発明の行動支援システムは、階層構造を有する複数の味方のうちのいずれか単一の味方である情報元から受ける情報に基づいて、相手との関係で行動する被支援者(10)の前記行動を支援する行動支援システムであって、前記被支援者(10)が有し前記情報元から前記情報を受ける行動支援装置(20)と、前記行動支援装置(20)と通信可能に設けられた管制用装置(41)とを備え、前記管制用装置(41)は、前記複数の味方および前記相手に関するリアルタイムの情報に基づいて、前記被支援者(10)の前記情報元となるべき候補の優先順位が前記複数の味方のうちの少なくとも一部に付されてなる直属上層管理データを生成または更新し、前記生成または更新された直属上層管理データを前記行動支援装置(20)に送信し、前記行動支援装置(20)は、受信した前記直属上層管理データを参照して、前記優先順位が最高の第1の前記味方を前記情報元と認定し前記第1の味方から前記情報を受け、前記第1の味方から前記情報を受けることができないときに前記優先順位が前記第1の味方の次に高い第2の前記味方を前記情報元と認定し、前記第2の味方から前記情報を受ける。
【0016】
本発明の行動支援システムにおいて、前記行動支援装置(20)は、前記第1の味方から前記情報を受けることができないときに前記第2の味方が前記行動支援装置(20)を有する前記被支援者(10)である場合には、前記被支援者(10)が前記情報元として前記情報を発信する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の行動支援システムの一実施形態として、戦術行動支援システムを説明する。本実施形態の戦術行動支援システムは、例えば、陸上自衛隊の隊員用システムや警察等の監視用システムに適用され、戦術行動時の隊員等の作戦行動を容易にし、危険を回避するために用いられる。
【0018】
図2は、本発明の行動支援システムが適用される組織を示している。図2に示す組織は、たとえば陸上自衛隊における「師団・連隊指揮層」に相当する中央本部指揮層1をトップとする階層構造とされ、その下には順に、中隊指揮層(指揮所レベル)2、小隊指揮層(小隊長)3、個人(隊員)10が位置している。
【0019】
中央本部指揮層1は、作戦立案を行う。中隊指揮層(指揮所レベル)2は、基地局を有し、大規模管制を行う。小隊指揮層(小隊長)3は、基地局を有し、個人管制を行う。
【0020】
図11に示すように、小隊指揮層(小隊長)3は、指揮所で隊員10の管制を行う。その指揮所は、大型トラック90の内部に設けられる。図1に示すように、その指揮所には、管制用コンピュータ41と、通信基地局42と、ディスプレイ43と、マイク44と、スピーカ45とが設けられている。
【0021】
これらの通信基地局42と、ディスプレイ43と、マイク44と、スピーカ45は、管制用コンピュータ41に接続されている。
管制用コンピュータ41は、後述するように、戦術地図データの管理、敵味方情報の管理、隊員行動可否の管理、本人認証情報の管理を行う。
【0022】
図9および図10に示すように、隊員10は、装備品20を装備している。図1に示すように、その装備品20には、プロセッサ21と、通信機22と、GPS(Global Positioning System)ユニット23と、方位センサ24と、HMD(Helmet Mounted Display)25と、カメラ26と、イヤホンマイク/スピーカ27と、コントローラ28とが含まれる。
【0023】
図1、図9および図10に示すように、通信機22と、GPSユニット23と、方位センサ24と、HMD25と、カメラ26と、イヤホンマイク/スピーカ27は、隊員10のヘルメット70に搭載されている。プロセッサ21と、バッテリは、隊員10が背中等に装着するハーネス状ユニット80に収納されている。コントローラ28は、隊員10の左手首(利き手と逆の手首)に装着されている。
【0024】
図1に示すように、これらの通信機22と、GPSユニット23と、方位センサ24と、HMD25と、カメラ26と、イヤホンマイク/スピーカ27と、コントローラ28は、プロセッサ21に接続されている。
プロセッサ21は、後述するように、戦術地図データの管理、敵自動検出画像処理、敵味方識別処理、個人認証処理を行う。
【0025】
GPSユニット23により、隊員10は、自己位置が明確になり、目標地点、行動予定を確認可能である。地図情報等の各種表示内容は、軽量シースルーのHMD25に投影される。隊員10は、HMD25によって通常の視界が遮られることがない。
【0026】
カメラ26は、小型デイ・ナイトカメラであり、隊員10の目前の情報(画像)を撮像する。装備品20には、メモリ(図示せず)が設けられている。メモリは、10秒前の画像、イヤホンマイク/スピーカ27により取得した音響(周囲の護衛、エンジン音等)、位置方位データなどを保存する。メモリに保存された各種データは、所定のタイミングで通信機22から送信される。
【0027】
例えば、GPSユニット23による位置データやコントローラ28やカメラ26を介して入力された敵の情報が上層3に定期的に送信される。これにより、管制用コンピュータ41は、その隊員10や敵の位置をリアルタイムに知ることができ、これにより、戦術地図データ(後述する)を更新することができる。
【0028】
プロセッサ21は、カメラ26により撮像した画像のうち動的物体にHMD25上で自動的にマーキングし、隊員10に注意を喚起する。イヤホンマイク/スピーカ27は、骨伝導音響を用いたものであり、隊員10の耳を塞がないため、隊員10は、実音響を得ることができる。イヤホンスピーカ27からは、コントローラ28の操作や管制用コンピュータ41からの指令に応答して、敵装備データ等の情報や動的物体を補足した旨の情報が音で隊員10に提供される。
【0029】
本実施形態の戦術行動支援システムは、以下の(1)〜(5)の各機能を有し、各機能を必要に応じて組合せ、隊員の戦術行動を支援する。
【0030】
(1) GPSユニット23(および方位センサ24)により得た、その隊員10の位置情報(および方位情報)を戦術地図データと照合し、照合結果をHMD25に出力させ、その隊員10に自らの位置を知らせる機能。
【0031】
敵味方情報や植生データ等を有する戦術地図データを、管制用コンピュータ41から隊員10が装備するプロセッサ21へ転送し、隊員10が装備するGPSユニット23による位置データ(および方位センサ24による方位データ)と上記戦術地図データを照合した結果を、隊員10が装備するHMD25に表示する。
【0032】
(2) 隊員10の周囲を自動で監視して、敵を自動で検出して、隊員10へ警報する機能。
(3) 味方情報又は敵情報(位置等)を隊員10へ連絡し、相対した人物が味方あるいは敵か否かを自動で隊員10へ伝達する機能。
【0033】
隊員10に搭載のカメラ26により撮像された画像又は他隊員10が取得した画像等の情報をプロセッサ21で画像処理し、自動で敵を発見する。敵を発見したら、隊員10へ注意を促し、敵の位置をHMD25に表示する。隊員10に搭載のGPSユニット23および方位センサ24の情報と、戦術地図データベースの情報を照合し、目前の人物が敵と判断できる場合には、隊員10へ注意を促す。味方と判断できる場合には、射撃しないように隊員10へ命令する。
【0034】
(4) 通信応答の有無から、味方の生死状態を判断する機能。
決まった周期で隊員10へ命令を送り、隊員10からの返答を確認することにより、隊員10が行動可能な状態かどうかを判断する。隊員10からの返答がない場合には、隊員10が行動不能状態と判断する。
【0035】
(5) 一元管理した個人情報(指紋、声紋、網膜等)と照合することにより、味方のみに装備品の使用を許可するための本人認証機能を持つ機能。
隊員10が装備品を装着した際に、隊員10のプロセッサが本人認証に必要な情報(指紋、声紋等)を取得し、情報を中央センタへデータ転送し、予め登録された個人と確認できれば、隊員10プロセッサへ作動許可信号を送信し、装備品が使用可能になる。
【0036】
(6) 作戦立案に必要な敵及び味方のデータ(隊員の位置、数、装備等)を各階層レベルで管理し、各階層が独立して作戦を立案/遂行できるシステム。
上層での作戦立案の後、作戦内容だけではなく、作戦立案情報(敵味方の展開、人数、位置および装備を含むデータ等)も下層へ伝送する。上層との連絡が途絶えた場合には、予め受け取った作戦立案情報を元に、下層にて作戦を立案する。孤立しても過去の他部隊の詳細情報をもとに、作戦を立案可能である。
【0037】
次に、図3を参照して、上記(1)の機能について説明する。
【0038】
ステップS1に示すように、上層3(小隊指揮層(小隊長)3)の管制用コンピュータ41で管理されている戦術地図データが通信基地局42から隊員10(個人)の通信機22を介してプロセッサ21に送信される。
【0039】
ここで、戦術地図データとは、通常の地形データに、敵の位置、人数および装備のデータと、味方の位置、人数および装備のデータと、植生データ(隊員等が通行可能なエリアか否か等を示し、地形データを含む)とが追加されているものである。
【0040】
なお、この戦術地図データは、時々刻々と変わるものであり、例えば、図5のステップS32の結果や、図6のステップS40の結果や、図7のステップS63の結果が反映される。
また、図3のステップS1の戦術地図データの転送は、所定の周期で行われてもよいし、戦術地図データが更新される度に行われてもよい。
【0041】
ステップS2に示すように、GPSユニット23は、その隊員10の位置を示すデータを取得してプロセッサ21に出力するとともに、方位センサ24は、その隊員10の方位を検出し、その方位を示すデータをプロセッサ21に出力する。ステップS2では、プロセッサ21は、隊員10の居場所とその隊員10が向いている向きを示す位置方位データを得る。
【0042】
次に、ステップS3に示すように、プロセッサ21は、戦術地図データと位置方位データとを照合する。プロセッサ21は、その照合の結果として、戦術地図データとの関係における隊員10の存在する現在の位置と向きを確認する。その戦術地図データとの関係における隊員10の存在する現在の位置と向きを示すデータは、自己位置データとして、他の処理(例えば、図5のステップS22など)でも使用される。
【0043】
次に、ステップS4に示すように、プロセッサ21は、自己位置データに基づいて、状況把握処理を行う。すなわち、その隊員10に対して敵が接近しているか否か、および、その隊員10が遂行予定の作戦との関係で敵が予定外の場所にいるか否か等を判断する。
【0044】
次に、ステップS5に示すように、プロセッサ21は、ステップS4の状況把握処理の結果、問題があるか否かを判定する。ステップS5の判定の結果、問題があれば(ステップS5−Y)、HMD25に、その生じている問題(敵が接近している等)を表示する。ステップS5の判定の結果、問題がない場合(ステップS5−N)には、ステップS6に進む。
【0045】
ステップS6では、その隊員10がコントローラ28を介してプロセッサ21に表示要求を入力することの待ちの状態となる。
次に、ステップS7では、ステップS6の結果として、表示要求(戦術地図データを見たいとの要求)があったか否かが判定される。
【0046】
ステップS7の判定の結果、表示要求があった場合(ステップS7−Y)には、HMD25に、ステップS3での照合結果(自己位置データ)を表示する(ステップS8)。ステップS7の判定の結果、表示要求がなかった場合(ステップS7−N)には、戦術地図データまたは位置方位データのデータ更新待ちとなる。そして、戦術地図データまたは位置方位データのデータ更新がなされると、ステップS1またはS2に戻る。
【0047】
次に、図4および図5を参照して、上記(2)および(3)の機能について説明する。
【0048】
図4を参照して、周囲自動監視について説明する。
【0049】
ステップS11に示すように、カメラ26は、画像データを取得する。このカメラ26は、小型遠隔デイ・ナイトカメラであり、距離測定機能を有している。カメラ26により撮像された画像データは、プロセッサ21に出力される。ステップS12に示すように、プロセッサ21は、画像処理を行い、移動物の検出処理を行う。
【0050】
ステップS12の画像処理の結果として、移動物の有無が判定される(ステップS13)。ステップS13の結果、移動物が有ると判定された場合(ステップS13−Y)には、その移動物がHMD25に表示される(ステップS14)。この移動物のデータは、移動物データとして、他の処理(例えば、図5のステップS23など)で使用される。移動物データは、上層3(小隊指揮層3)に通報される(ステップS15)。なお、ステップS13の結果、移動物が無いと判定された場合(ステップS13−N)には、ステップS11に戻る。
【0051】
図5を参照して、敵味方識別について説明する。
この敵味方識別が行われるケースは、隊員10が自らコントローラ28を介して入力した物体について、敵味方識別を行うケース(ステップS21,S22)と、図4の周囲自動監視の結果として検出された移動物について、敵味方識別を行うケース(ステップS23,S24)の、2通りのケースがある。
【0052】
ステップS21に示すように、隊員10は、自己の前方に敵と思しき人(物体)を発見したときなどに、コントローラ28を操作して位置照合要求確認をプロセッサ21に入力する。すると、ステップS22に示すように、プロセッサ21は、その敵と思しき物体の位置と方位を特定するために、図3のステップS3の結果として得られる自己位置データに基づいて、その隊員10の位置と方位を確認する。ステップS22の後は、ステップS25に進む。
【0053】
ステップS23に示すように、プロセッサ21は、図4のステップS14、S15で前述した移動物データを上層3から入力する。または、ステップS23において、プロセッサ21は、その隊員10のカメラ26により撮像された移動物データ(ステップS14)を、そのまま(上層3を経ることなく)入力することができる。
【0054】
ステップS23において、上層3からプロセッサ21に入力される移動物データは、その隊員10のカメラ26により撮像されたものに限られるものではなく、他の隊員10のカメラ26により撮像されたものも含まれる。
【0055】
次に、ステップS24に示すように、必要に応じて、隊員10がコントローラ28を操作して、その移動物との間の距離データをプロセッサ21に入力することができる。その距離データは、上層3からその隊員10に送信された味方の距離データであることができる(上層3は、各隊員10のGPSユニット23によるデータに基づいて、全味方(隊員10)の位置を認識している)。または、ステップS24でコントローラ28から入力されるデータは、上記距離データに代えて、カメラ26により取得した方位データであることができる。このステップS24は、省略されることができる。
【0056】
次に、ステップS25に示すように、プロセッサ21は、上層3から入手した味方情報(位置)と、ステップS21で入力された位置照合要求確認に係る敵と思しき物体またはステップS23で入力された自己位置の目前の移動物(移動物データ)とを照合する。
【0057】
ステップS26に示すように、プロセッサ21は、ステップS21で入力された位置照合要求確認に係る敵と思しき物体またはステップS23で入力された移動物が、味方と照合したか否かを判定する。
【0058】
そのステップS26の判定の結果、その敵と思しき物体または移動物が味方と照合したら、プロセッサ21は、隊員10に対し、誤認識注意を警告する(ステップS27)。その警告は、HMD25に対する表示を介して行ってもよいし、イヤホンマイク/スピーカ27を介して行ってもよい。
【0059】
ステップS26の判定の結果、その敵と思しき物体または移動物が味方と照合しなければ、ステップS28に進む。ステップS28においては、プロセッサ21は、上層3から入手した敵情報(位置)と、その敵と思しき物体または自己位置の目前の移動物(移動物データ)とを照合する。ステップS29に示すように、プロセッサ21は、ステップS28の結果、その敵と思しき物体または移動物が敵と照合したか否かを判定する。
【0060】
そのステップS29の判定の結果、その敵と思しき物体または移動物が敵と照合したら、プロセッサ21は、敵がいる旨をHMD25に表示する(ステップS30)。ステップS29の判定の結果、その敵と思しき物体または移動物が敵と照合しなければ、プロセッサ21は、不明である旨をHMD25に表示する(ステップS31)。
【0061】
ステップS27、S30およびS31のそれぞれの後は、プロセッサ21は、その敵と思しき物体または移動物が味方であるか、敵であるか、不明であるかの識別結果を上層3に通報する(ステップS32)。
【0062】
次に、図6を参照して、上記(4)の機能(行動可否判定)について説明する。
【0063】
ステップS31に示すように、上層3の管制用コンピュータ41は、定期的に(例えば10分間隔)、通信基地局42を介して通信機22に、特定の判定信号を送信する。
ステップS32に示すように、上層3の管制用コンピュータ41は、その判定信号の送信後は、隊員10からの返答待ちの状態となる。
【0064】
ステップS33に示すように、下層10の通信機22は、上層3からの判定信号を受信する。
ステップS33の後、その隊員10がその判定信号に応答して返答できる場合(ステップS34−Y)には、イヤホンマイク/スピーカ27を介して入力した音声またはコントローラ28への操作によって生成した返答信号を、通信機22から通信基地局42に送信する(ステップS35)。
【0065】
その隊員10が返答することが不可能である場合(S34−N)には、ステップS33において判定信号を受信した時点から所定時間経過後に、返答信号が無い旨を示す返答無し信号が通信基地局42に送信される(ステップS36)。
【0066】
上層3は、ステップS32の下層10からの返答待ちの状態において、下層10から返答信号を受信したか、返答無し信号を受信したかを判定する(ステップS37)。
【0067】
そのステップS37の判定の結果、返答信号を受信していれば(ステップS37−Y)、管制用コンピュータ41は、その隊員10の生存(行動可能であること)を確認する(ステップS38)。
【0068】
そのステップS37の判定の結果、返答無し信号を受信していれば(ステップS37−N)、管制用コンピュータ41は、その隊員10が行動不可能であることを確認する(ステップS39)。
【0069】
管制用コンピュータ41は、その隊員10の生存/行動不可能状態(ステップS38、S39)を反映させるように、戦術地図データを更新する(ステップS40)。戦術地図データの更新には、例えば、マーキングの変更等が含まれる。
【0070】
次に、図7を参照して、上記(5)の機能(本人認証)について説明する。
【0071】
ステップS51に示すように、管制用コンピュータ41は、認証可能な(未だ本人認証がなされていない)隊員10(控えの隊員10)を認証可能リストで管理している。
【0072】
ステップS52に示すように、隊員10がそれまで装備していた装備品20を取り外すと、そのプロセッサ21に取り外し通知が出力される。プロセッサ21は、その取り外し通知に応答して、装備品20の全ての機能を停止させる。
また、プロセッサ21は、その取り外し通知に応答して、管制用コンピュータ41に対して、その装備品20が取り外された旨およびその装備品20を取り外した隊員10を示す取り外し信号を送信する(ステップS52)。
【0073】
ステップS52の後には、管制用コンピュータ41は、取り外し信号に応答して、その取り外された装備品20を直前まで装備していた隊員(取り外し信号によって示される隊員)10を、認証可能リストに追加する(ステップS53)。
【0074】
装備品20が取り付けられるときには、その装備品20を取り付けた人は、その人のIDをコントローラ28に入力する(ステップS54)。
【0075】
さらに、その人は、認証情報(声紋等)をコントローラ28またはイヤホンマイク/スピーカ27等に入力する。その認証情報およびステップS54で入力されたIDの情報は、通信機22を介して通信基地局42に送信され、管制用コンピュータ41に取得される(ステップS55)。
【0076】
管制用コンピュータ41は、取得したID情報と、最新の認証可能リストを照合する(ステップS56)。管制用コンピュータ41は、その照合の結果、取得したID情報が認証可能リストにあるか否かを判定する(ステップS57)。
【0077】
ステップS57の判定の結果、その取得したID情報が認証可能リストにあれば(ステップS57−Y)、管制用コンピュータ41は、取得した認証情報と、認証可能リストのそのIDに対応する認証情報とを照合する(ステップS58)。
【0078】
管制用コンピュータ41は、ステップS58の照合の結果、両者が一致した場合(ステップS59−Y)には、本人認証を完了し(ステップS60)、その認証された隊員10の情報を認証可能リストから削除する(ステップS61)。
【0079】
また、管制用コンピュータ41は、本人認証を完了した場合(ステップS60)、通信基地局42を介して動作許可信号をプロセッサ21に送信して、その認証された隊員10が装備している装備品20の全ての機能の作動を可能な状態にする(ステップS62)。
【0080】
ステップS57の判定の結果が不一致であった場合、またはステップS59の判定の結果が不一致であった場合には、管制用コンピュータ41は、その装備品20を取り付けている人は、敵のなりすましであると判断する(ステップS63)。その場合、管制用コンピュータ41は、その装備品20の全ての機器の機能を停止させたままの状態とする。また、その場合、管制用コンピュータ41は、戦術地図データを更新して、その装備品20の位置には敵がいること(敵が装備品20を取り付けていること)旨の内容に変更する(ステップS64)。
【0081】
また、ステップS60で本人認証が完了した後、その認証された人に装備品20が継続して取り付けられている状態において、定期的に(例えば30分間隔で)IDの入力が要求される(ステップS65)。この場合、再度、ステップS54に戻り、それ以下のステップが実行される。
【0082】
次に、図8を参照して、本実施形態の他の機能について説明する。
【0083】
図8において、符号Aの部隊または隊員が最上層であり、そのAの下層にそれぞれ符号AA、AB、ACで示される部隊または隊員が位置している。符号AAの部隊または隊員の下層にそれぞれ符号AAA、AAB、AAC、AADで示される部隊または隊員が位置している。
【0084】
例えば、符号Aは、前述の中隊指揮層(指揮所レベル)2であることができ、符号AA、AB、ACのそれぞれは、小隊指揮層(小隊長)3であることができ、符号AAA、AAB、AAC、AADのそれぞれは、隊員10であることができる。
【0085】
作戦立案に必要な敵及び味方のデータ(隊員の位置、数、装備等)を各階層レベルで管理し、各階層が独立して作戦を立案/遂行できるように構成されている。
上層での作戦立案の後、作戦内容だけではなく、作戦立案情報(敵味方の展開、人数、位置および装備を含むデータ等)も下層へ伝送する。上層との連絡が途絶えた場合には、予め受け取った作戦立案情報を元に、下層にて作戦を立案する。孤立しても過去の他部隊の詳細情報をもとに、作戦を立案可能である。
ここで、上層との連絡が途絶えた場合の指揮命令系統が明確かつ効率的になるように以下の工夫がなされている。
【0086】
命令元は、各部隊または隊員の展開位置や装備のリアルタイムの状況に基づいて(戦術地図データを参照することが可能)、部隊間のコミュニケーション断の場合を想定して、効果的な作戦遂行が可能となるように、作戦を遂行する各部隊の直属上層の優先順位を決定し、その優先順位を示すデータを直属上層管理データとして、各部隊または隊員へ配信する。
【0087】
その直属上層管理データは、一旦、各部隊または隊員へ配信された後に、命令元(直属上層管理データの発行元)が、各部隊または隊員もしくは敵の展開位置や装備の状況・変化をリアルタイムに反映して、新たな直属上層管理データを生成する。その新しく生成された(変更された)直属上層管理データは、その都度、各部隊または隊員へ再配信される。
上層との通信が途絶えた部隊または隊員は、その通信が途絶える直前の直属上層管理データに基づいて行動する(指揮命令される)。
【0088】
符号81は、部隊または隊員Aから部隊または隊員ABに配信された直属上層管理データを示している。この直属上層管理データに従って、部隊または隊員ABは、1番目がAなので、まず、部隊または隊員Aから情報(命令・指示等)をもらおうとする。もし、部隊または隊員ABと部隊または隊員Aとの通信が断の場合には、自らが命令元となり、手持ちのデータをもとに部隊または隊員Aの仕事を代行する。
【0089】
符号82は、部隊または隊員AACに配信された直属上層管理データを示している。この直属上層管理データに従って、部隊または隊員AACは、1番目が部隊または隊員AAなので、まず、部隊または隊員AAから情報をもらおうとする。もし、部隊または隊員AACが通信断等の問題により、部隊または隊員AAから情報を得られない場合には、2番目の部隊または隊員AAAから情報をもらおうとする。さらに、部隊または隊員AACが部隊または隊員AAAから情報をもらえなかった場合には、部隊または隊員AABから情報収集を試み、それも不可能であれば、部隊または隊員AB、部隊または隊員AC…という具合に、親との通信状態によって、直属上層管理データをもとに、次の親を自動的に探しに行く。
【0090】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
・隊員10は、刻々と変わる戦術地図を元に行動でき、的確な行動ができる。
・隊員10は、敵発見が確実となり、危険から回避できる。
・敵味方を識別できることにより、誤認識を防ぐことができる。
・行動不能の隊員を考慮した作戦を立案することができる。
・敵に装備を取られても、敵はその装備を使用できず、情報を守ることができる。
・命令元との通信が不可能になったときにも、それに変わる命令元があるため、効果的な作戦遂行が可能である。
【0091】
【発明の効果】
本発明の行動支援システムによれば、相手との関係で行動する被支援者の行動を容易にし、危険を回避し易い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の行動支援システムの一実施形態の戦術行動支援システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態の戦術行動支援システムが適用される組織を示す図である。
【図3】図3は、本実施形態の戦術行動支援システムの一機能である地図データ表示の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本実施形態の戦術行動支援システムの他の機能である周囲自動監視の動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本実施形態の戦術行動支援システムの更に他の機能である敵味方識別の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施形態の戦術行動支援システムの更に他の機能である行動可否判定の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施形態の戦術行動支援システムの更に他の機能である本人認証の動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本実施形態の戦術行動支援システムの他の機能である指揮命令権の承継の動作を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本実施形態の戦術行動支援システムのうちの隊員が装備する装備品の一部を示す模式図である。
【図10】図10は、本実施形態の戦術行動支援システムのうちの隊員用装備品を装備した隊員のイメージを模式的に示す図である。
【図11】図11は、本実施形態の戦術行動支援システムのうちの指揮所のイメージを模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 中央本部指揮層
2 中隊指揮層(指揮所レベル)
3 小隊指揮層(小隊長)
10 隊員
20 装備品
21 プロセッサ
22 通信機
23 GPSユニット
24 方位センサ
25 HMD
26 カメラ
27 イアホンマイク/スピーカ
28 コントローラ
41 管制用コンピュータ
42 通信基地局
43 ディスプレイ
44 マイク
45 スピーカ
A 部隊または隊員
AA 部隊または隊員
AB 部隊または隊員
AC 部隊または隊員
AAA 部隊または隊員
AAB 部隊または隊員
AAC 部隊または隊員
AAD 部隊または隊員
Claims (9)
- 相手との関係で行動する被支援者の前記行動を支援する行動支援システムであって、
前記被支援者に装着可能に設けられた行動支援装置と、
前記行動支援装置と通信可能に設けられた管制用装置とを備え、
前記管制用装置は、前記行動支援装置を装着している前記被支援者が行動可能か否かの判定を行い、前記判定の結果に基づいて、少なくとも地形データ、前記相手の位置を示すデータ、及び前記行動支援装置を装着している前記被支援者の味方の人数を示すデータを含む特定地図データを生成または更新し、
前記行動支援装置は、
表示部と、
前記管制用装置から前記生成または更新された特定地図データを入力する入力部と、
前記行動支援装置を装着している前記被支援者の位置を測定する測位部と、
前記入力された特定地図データと前記被支援者の位置とを照合し、前記照合した結果を前記表示部に表示するプロセッサと
を備えた行動支援システム。 - 請求項1に記載の行動支援システムにおいて、
前記管制用装置は、前記被支援者が前記行動支援装置の使用を許可されているか否かの認証を行い、前記認証の結果に基づいて、前記特定地図データを生成または更新する
行動支援システム。 - 請求項2記載の行動支援システムにおいて、
前記管制用装置は、前記認証の結果、前記被支援者が前記行動支援装置の使用を許可されていた場合、前記行動支援装置を動作可能な状態にする
行動支援システム。 - 請求項1記載の行動支援システムにおいて、
前記行動支援装置は、
カメラを更に備え
前記プロセッサは、前記カメラにより撮像された画像を画像処理して移動物を検出し、
前記表示部は、前記検出された移動物を表示する
行動支援システム。 - 請求項4記載の行動支援システムにおいて、
前記プロセッサは、前記相手の情報および前記被支援者の味方の情報と、前記検出された移動物のデータとを照合し、前記照合の結果を前記表示部に表示させる
行動支援システム。 - 請求項1記載の行動支援システムにおいて、
前記プロセッサは、前記入力された特定地図データと前記被支援者の位置とを照合し、前記照合の結果として、前記被支援者と前記相手および/または前記味方との位置的関係を求め、前記位置的関係を前記表示部に表示させる
行動支援システム。 - 請求項6記載の行動支援システムにおいて、
前記行動支援装置は、前記位置的関係を示すデータを前記管制用装置に出力する
行動支援システム。 - 請求項1記載の行動支援システムにおいて、
前記行動支援装置は、階層構造を有する複数の味方のうちのいずれか単一の味方である 情報元から受ける情報を受け、
前記管制用装置は、前記複数の味方および前記相手に関するリアルタイムの情報に基づいて、前記被支援者の前記情報元となるべき候補の優先順位が前記複数の味方のうちの少なくとも一部に付されてなる直属上層管理データを生成または更新し、前記生成または更新された直属上層管理データを前記行動支援装置に送信し、
前記行動支援装置は、受信した前記直属上層管理データを参照して、前記優先順位が最高の第1の前記味方を前記情報元と認定し前記第1の味方から前記情報を受け、前記第1の味方から前記情報を受けることができないときに前記優先順位が前記第1の味方の次に高い第2の前記味方を前記情報元と認定し、前記第2の味方から前記情報を受ける
行動支援システム。 - 請求項8記載の行動支援システムにおいて、
前記行動支援装置は、前記第1の味方から前記情報を受けることができないときに前記第2の味方が前記行動支援装置を有する前記被支援者である場合には、前記被支援者が前記情報元として前記情報を発信する
行動支援システム。
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