JP3909555B2 - 保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩およびそれらの誘導体の調製方法 - Google Patents

保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩およびそれらの誘導体の調製方法 Download PDF

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Description

【0001】
関連出願の引照
本出願は、1998年6月1日の出願に係る米国特許仮出願一連番号60/087,433号に対する優先権を主張する。
政府助成の研究または開発に関する申告
本発明は一部、米国エネルギー省の助成金DE-FG02-89ER14029によって援助された。米国政府は本発明に所定の権利を有する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、保護トリアルキルアンモニウム塩、とくにそのキラル型の製造方法に関する。トリメチルアンモニウム塩は、医薬化合物の鍵となる中間体である、L−カルニチンの調製にとくに有用である。とくに、本発明は、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩、とくにそのキラル型の製造方法に関する。
【0003】
(関連技術の説明)
L−カルニチンは多くの医薬化合物の調製において鍵となる中間体である。1,2−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(スキーム1参照)は、L−カルニチンに至る2つの経路に使用されてきた。この中間体の使用は、しかしながら、この鍵となる光学的に純粋な3−炭素の出発原料である、エピクロロヒドリンおよびクロロジヒドロキシプロパンがかなり高価であるため、工業的には重要でない。第一の合成においては、(S)−エピクロロヒドリンはトリメチルアミンで処理し、(S)−1−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムスルファートを形成させる。これを、ついでクロロ基をシアニドで置換して、ニトリルに変換する。加水分解によりスキーム3に示すようにL−カルニチンが生成する(Reimschuesselら, 米国特許第4,594,452号, 1986年; Kimbrell & Russell, 米国特許第5,077,435号, 1991年)。他の合成経路では、(R)−1−クロロ−2,3−ジヒドロキシプロパンをトリメチルアミンで処理し、1,2−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(この構造はスキーム1にによって示す。)を産生させる。ジオールをついで塩化チオニルによって処理し、(S)−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドに変換する。これをついで加水分解して、L−カルニチンを生成させる(Katayamaら, 米国特許第4,814,506号, 1989年)。経済的かつ信頼できる方法の必要性がある。
【0004】
(発明の概要)
本発明は、保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩の製造方法において、反応混合物中で保護3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンを、反応混合物の溶媒中塩基の存在下に、低級アルキル化剤と反応させて保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造することを含む、上記方法に関する。好ましい実施態様においては、この方法により、保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩が製造される。
【0005】
とくに、本発明は、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩の製造方法において、反応混合物中、3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタールを、反応混合物の溶媒中塩基の存在下に、低級アルキル化剤と反応させて(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を製造することを含む、上記方法に関する。さらに、本発明は、3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタールを含有する反応混合物中において、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩を調製する方法に関する。
【0006】
本発明はさらに、(S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンから保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を調製する方法に関する。とくに、本発明は、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩を調製する方法を提供する。
【0007】
本発明はまた、保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩からの1,2−ジヒドロキシプロピル−3−トリメチルアンモニウム塩の調製に関する。
【0008】
本発明はさらに、保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩からL−カルニチンを調製する方法に関する。
【0009】
(目的)
本発明の目的は、保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造する新規な方法を提供することにある。とくに、カルニチンの製造、とくにキラル型の製造の鍵となる中間体である保護トリメチルアンモニウム塩を提供することが本発明の目的である。とくに、本発明は、簡単かつ経済的な方法に関する。これらの目的および他の目的は以下の記述および図面を参照すれば順次明らかになろう。
【0010】
(好ましい態様の説明)
本発明は、式
Figure 0003909555
(式中、R1およびR2は一体化可能な保護基である)を有する保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を反応混合物中に製造する、スキーム1に示す方法において、反応混合物中で、式
Figure 0003909555
(式中、R1およびR2は同じ保護基である)を有する保護3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパン塩を、反応混合物の溶媒中塩基の存在下に低級アルキル化剤と反応させることによって、保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造することを含む、上記方法に関する。
【0011】
保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩の製造方法において、アルキル化剤は、保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩を産生するハロゲン化メチルである。本方法の一実施態様においては、ハロゲン化メチルは、保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムイオジドを産生するヨウ化メチルである。他の実施態様においては、アルキル化剤は、保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムスルファートを産生するジメチル硫酸である。好ましい方法においては、塩基は水酸化ナトリウムである。好ましい方法においては、溶媒は含水アルコールである。
【0012】
保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造する方法においては、保護基は、アルキルオキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、ハロ、スルホニルオキシ、スルファート、ホスフェート、サッカライドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。さらに、この方法では、保護基はアルキリデン、アリーリデン、アシリデンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアセタールである。好ましい方法においては、保護基は1,2−ジヒドロキシ−3−トリアルキルアンモニウムプロパンイソプロピリデンアセタールである2,2−ジメチル硫酸のようなgem−ジメトキシアセタールである。
【0013】
保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造する方法においては、無機塩基は好ましくは水酸化ナトリウムもしくはカリウムまたは炭酸ナトリウムもしくはカリウムである。アルキル化剤は、アルキルハライド(Br,I,Cl,F)、スルファート、トシレートまたはスルホネートである。溶媒は好ましくは水または低級アルカノール(炭素原子1〜4個)であり、最も好ましくはメタノールである。反応は10℃〜70℃、最適には25℃〜50℃で実施される。
【0014】
保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造する好ましい方法においては、保護3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンは反応混合物中、式:
Figure 0003909555
(式中、R1およびR2は一体化可能な保護基である)を有する保護酪酸アミドから製造され、その中で反応混合物は塩基およびハロゲンを含有するホフマン転位反応であり、保護3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンが製造される。保護酪酸アミドは、反応溶媒中酸および保護基を含む反応混合物中において、3,4−ジヒドロキシ酪酸アミドから製造される。
【0015】
本発明はさらに、3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンから保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を調製する方法を提供する。この方法は(1)3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを水酸化アンモニウムと反応させて3,4−ジヒドロキシ酪酸アミドを製造し、(2)3,4−ジヒドロキシ酪酸アミドを保護基と反応させて、保護酪酸アミドを製造し、(3)保護酪酸アミドを、塩基および次亜塩素酸ナトリウムを含有するホフマン転位反応中で反応させて、保護3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンを製造し、ついで(4)保護3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンを反応溶媒中塩基の存在下にアルキル化剤と反応させて保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造する各工程ならなる。
【0016】
3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンから保護トリアルキルアンモニウム塩を調製する方法においては、工程(4)におけるアルキル化剤は、保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩である保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を産生するハロゲン化メチルである。保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造する好ましい方法においては、ハロゲン化メチルは、保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムイオジドの産生を生じるヨウ化メチルである。保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩を製造する別の方法においては、アルキル化剤は保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムスルファートの産生を生じるジメチル硫酸である。
【0017】
3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンから保護トリアルキルアンモニウム塩を製造する方法においては、3,4−ヒドロキシ酪酸アミドの1および2ヒドロキシ基に付加して保護酪酸アミドを製造する保護基は2,2−ジメトキシプロパンである。
【0018】
本発明は好ましくは、反応混合物中、3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタールを低級アルキル化剤と、反応混合物の溶媒中、塩基の存在下に反応させることを含む(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を製造する方法に関する。とくに本発明は、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩の調製に関する。
【0019】
3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタールから(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を製造する方法において、アルキル化剤はハロゲン化メチルである。一実施態様においては、ハロゲン化メチルは、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウムイオジドである(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を製造する、ヨウ化メチルである。他の実施態様においては、アルキル化剤は、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウムスルファートである(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を産生するジメチル硫酸である。好ましい方法においては、塩基は水酸化ナトリウムである。好ましい方法においては、溶媒は含水メタノールである。
【0020】
3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタールから、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を製造する方法においては、無機塩基は好ましくは水酸化ナトリウムもしくはカリウムまたは炭酸ナトリウムもしくはカリウムである。アルキル化剤は、アルキルハライド(Br,I,Cl,F)、スルファート、トシレートまたはスルホネートである。溶媒は好ましくは水または低級アルカノール(炭素原子1〜4個)であり、最も好ましくはメタノールである。反応は10℃〜70℃、最適には25℃〜50℃で実施される。
【0021】
Figure 0003909555
スキーム1は、3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン()からの保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩()の合成を示す。反応式1において、R1およびR2は互いに異種または一体化可能ないずれかの保護基であり、Xは任意のハロゲン、たとえば塩素、臭素、フッ素またはヨウ素である。反応において、は室温での水酸化アンモニウムとの反応により、3,4−ジヒドロキシブチルアミド()に変換される。水を除去したのち、は溶媒中に保護基と酸を含有する反応混合物中で保護酪酸アミド()に変換される。この反応は定量的であり、保護酪酸アミド()を産生し、これは濃縮乾固すると結晶化させることができる。ホフマン転位反応は、を完全に保護3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパン()に変換し、これはついで塩基の存在下アルキル化剤からなる反応において保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩()に変換される。この変換に適したアルキル化剤には、ハロゲン化メチルたとえばヨウ化メチルまたはジメチル硫酸が包含される。この反応はすべてのを本質的にに変換する。保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩()は酸の存在下に保護基を除去することにより3,2−ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩()に変換することができる。別法として、スキーム3に示すようにはカルニチン()に変換される。
【0022】
を得るのに重要な工程は、保護アミド()に対するホフマン転位反応を通じて、4−炭素中間体()を純粋な3−炭素一級アミン()に光学特異的にかつ定量的に変換する1−炭素鎖低下工程である。ホフマン転位反応では、一級アミンは強塩基の存在下にClまたはBrと反応してカルボニル炭素原子を失ったアミンを形成する。しかしながら、γ−ヒドロキシアミドに対するこのような反応は、ラクトンを形成するアルコールの官能の関与により、通常は起こらない。
【0023】
本発明の一つの重要な局面は、アルコール官能の関与が、干渉するアルコール官能と遮断基または保護基をタイアップして回避できることである。ジヒドロキシ酪酸アミド()の3および4ヒドロキシル基は、それらに限定されるものではないが、アルキルオキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、ハロ、スルホニルオキシ、スルファート、ホスフェートまたはサッカライドからなる群の成分を包含する保護基の任意の組み合わせによって保護することができる。保護された酪酸アミド()、保護された3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパン()、および保護されたジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩()はR1およびR2が保護基である場合が示されている。保護基(R1およびR2)は、保護基がgem−ジメトキシアセタールである場合に同種であるかまたは一体化できるアセタールを形成する。すなわち、保護基は、アルキリデン、アリーリデンまたはアシリデン基の任意の組み合わせとすることが可能であり、それにはプロピリデン、ベンジリデン、エチリデンおよびメチリデンのようなアセタールが包含される。好ましい実施態様においては、保護基は2,2−ジメトキシプロパンのようなgem−ジメトキシアセタールであり、これはジヒドロキシ酪酸アミド()の3および4ヒドロキシル基と環状アセタールを形成し、保護されたジヒドロキシ酪酸アミド(スキーム2の3a)を形成する。への変換におけるメチルイオジド、クロリド、フルオリド、またはブロミドの使用は対応するのハライド塩を直接生成する。別法としてジメチル硫酸の使用は直接、の硫酸メチル塩を与える。これはイオン交換樹脂によりヒドロキシドまたはハライド対イオンに交換することができる。
【0024】
の合成の出発原料としての(S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン()の使用は、が再生可能な天然資源から高収率および大量に合成できるので、従来技術の方法に比較して便利である。を合成する安価な方法には、置換基としてヘキソースを含有し、かつヘキソース置換基の4位に結合する他の糖を含有するヘキソース原料を、中間体として(S)−3,4−ジヒドロキシ酪酸を経由して変換することによる内部環状エステル、たとえばラクトンの合成方法を開示するR.Hollingsworthの米国特許第5,319,110号;置換基としてヘキソースを含有し、かつヘキソース置換基の4位に結合する他の糖を含有するヘキソース原料を、中間体として(S)−3,4−ジヒドロキシ酪酸を経由して変換することによる(S)−3,4−ヒドロキシ酪酸塩の合成方法を開示するR.Hollingsworthの米国特許第5,374,773号;置換D−ヘキソースから(S)−3,4−ジヒドロキシ酪酸塩の合成を開示するR.Hollingsworthの米国特許第5,292,939号;キラルなラクトンの他の製造方法を開示するR.Hollingsworthの米国特許第5,808,107号に記載されている。これらの参考文献は引用により本明細書に導入される。
【0025】
3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタールから、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を製造する好ましい方法においては、(S)−3−ヒドロキシ酪酸−γ−ラクトン()またはその遊離酸を、スキーム2に示すように、(S)−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩(5a)に変換する。(S)−1,2−ジヒドロキシプロピル−3−トリアルキルアンモニウム塩のこの保護型は、L−カルニチンへの好収率での変換による合成経路がある中間体である。(S)−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩(スキーム2における5a)は、スキーム3に示すように数工程でカルニチン()に容易に変換することができる。トリメチルアミノジオキソラン(5a)も酸加水分解により対応するジオール()に変換できる。
Figure 0003909555
Figure 0003909555
【0026】
スキーム2は、3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン(1)から、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩(5a)(1,2−ジヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパンイソプロピリデンアセタール)の合成を示す。スキーム2において、XはハロゲンたとえばBr,I,F,またはClである。この反応においては、1は水酸化アンモニウムとの室温での反応により、3,4−ジヒドロキシ酪酸アミドに変換される。水を除去したのち、2は、溶媒たとえばアセトン中に保護基たとえば2,2−ジメトキシプロパンおよび酸を含有する反応混合物中で、保護酪酸アミド(3a)に変換される。この反応は定量的であり、保護酪酸アミド(3a)を産生し、これは濃縮乾固すると結晶化させることができる。ホフマン転位反応は、3aを3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタール(4a)に完全に変換し、これはついで、塩基の存在下にアルキル化剤からなる反応中で(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩(5a)に変換される。変換に適したアルキル化剤にはヨウ化メチルのようなハロゲン化メチルまたはジメチル硫酸が包含される。この反応では本質的にすべての4aが5aに変換される。(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩(5a)は、酸の存在下、保護基の除去により、2,3−ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩(6)に変換される。
【0027】
この反応順序は従来技術に対していくつかの利点がある。第一に、きわめて高価な光学的に純粋なエピクロロヒドリンの使用が回避される。第二に、ガス状のトリメチルアミンを使用しない。第三に、合成は、デンプン、ラクトースおよび各種の容易に入手できる安価な炭水化物原料から高収率および高い光学純度で容易に得られる、(S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン(1)から出発する。(S)−2,3−ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩(6)は保護アミド(3または3a)から純粋にかつ効率的に得られ、これは引き続いて、(S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン(1)から定量的に得られる。この経路はL−カルニチン(9)の商業製造への経済的な発展性のある道を提供する。
【0028】
(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩5aはL−カルニチンのような化合物の合成のための前駆体である。たとえばスキーム3において、L−カルニチン()は5aから合成される。HOAcおよびハライドからなる反応中、5aは1−ハロ−2−オキシアセチル−プロピルトリメチルアンモニウム塩()に変換される。ついで求核置換反応により、中のハロゲン原子がシアニドイオンで置換され、1−ニトリル−2−オキシアセチル−プロピルトリアルキルアンモニウム塩()が生じ、これはついで酸の存在下でL−カルニチン()に変換される。
【0029】
(S)−2,3−ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩(6)も、たとえばL−カルニチン(9)等の他の化合物の前駆体である。L−カルニチンの製造には6の一級ヒドロキシルを選択的にハロゲン化し、化合物、1−ハロ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造し、これをついでナトリウムシアニドとの求核反応によって3−ニトリル−2−ヒドロキシプロパントリアルキルアンモニウム塩に変換する。ついで、3−ニトリル−2−ヒドロキシプロパントリメチルアンモニウム塩を酸の存在下にL−カルニチン(9)に変換する。Katayamaらの米国特許第4,814,506号におけるL−カルニチンの合成では、6は(R)−1−クロロ−2,3−プロパンジオールから作成される中間体であり、そこでは(R)−1−クロロ−2,3−プロパンジオールは(R)および(S)体のラセミ混合物から、選択的に(S)体を代謝する微生物で処理して回収される。従来技術に反して、本発明は3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンから6を調製する経済的な方法を提供する。
【0030】
以下の実施例は、本発明の更なる理解を促進することを意図するものである。
例1
この例は、(S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン()から(2,2−ジメチル1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウムスルファート()の製造方法を示す。
(S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン()(51g,0.5モル)を30%水酸化アンモニウム110ml(0.85モル)で室温において14時間処理して、アミド()に変換した。ついでこの溶液を、減圧下約50℃においてもはや水が除去できなくなるまでシロップへと濃縮した。アセトン(500ml)および2,2−ジメトキシプロパン(104g,1モル)を加えた。硫酸(2ml)をついで加え、混合物を塩化カルシウム乾燥管で湿気から保護して60℃で30分間加熱し、室温で12時間攪拌した。酸化銀(20g)を加え、混合物を1時間攪拌した。ついでメタノール(200ml)を加え、混合物をろ過し、濃縮乾固した。保護アミド()は濃縮時に結晶化し、そのまま次工程に使用した。保護アミド()への変換は実質的に定量的であった。少量をアセトンから再結晶すると白色の結晶が得られ、融点98−100℃を示した。[α]589=−15.4(CHCl3, c=1),1H-NMR(CDCl3, 300 MHZ)δ6.10(s, 1H),5.65(s, 1H),4.43(m, 1H),4.14(dd, 1H, J=8.1 and 6.3 Hz),3.63(dd, 1H, J=8.1 and 6.8 Hz),2.55(dd, 1H, J=15.3 and 7.5 Hz),2.46(dd, 1H, J=15.3 and 4.8 Hz),1.42(s, 3H),1.35(s, 3H);13C-NMR(CDCl3, 75MHZ)δ172.86,109.50,72.21,69.05,40.07,26.90,25.50.
【0031】
保護アミド()(0.08g,0.005モル)を10〜12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液(5ml)で処理し、混合物をすべての固体が溶消するまで(約5分)攪拌した。水酸化ナトリウム(0.8gを水5mlに溶解)を混合物に加え、この溶液を50〜60℃に加温し、ついでこの温度に24時間保持すると、この時点までに、3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタール()への変換が完了した。1H-NMRスペクトルはへの100%の変換を指示した。
【0032】
この方法では、は単離されず、ジメチル硫酸(6当量)、水酸化ナトリウム(0.85g,0.021モル)および2mlのメタノールを加えてさらに(12時間)攪拌し、直接トリメチルアミノ誘導体()に変換した。プロトンNMRスペクトル(図1)は(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウムスルファート()への完全な変換を明瞭に指示した。分析により、メチンプロトンシグナルはトリプレット(J=〜8 Hz)として4.12ppmに現れ、トリメチルアミノ基に隣接するメチレンのプロトンは3.4ppmにおけるダブレット(J=〜8 Hz)であり、ジオキソラン環上のメチレン基のシグナルは3.59ppmにおける硫酸メチル陰イオンのメチレン基により部分的に不明瞭であることが明らかにされた。
【0033】
例2
本例は(S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン()からの保護酪酸アミド()の製造方法を示す。この例では、は反応混合物から回収された。
(S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン(51g,0.5モル)を30%水酸化アンモニウム110ml(0.85モル)により室温において14時間処理して、アミド()に変換した。ついでこの溶液を、減圧下に約50℃においてもはや水が除去できなくなるまでシロップへと濃縮した。アセトン(500ml)および遮断基2,2−ジメトキシプロパン(104g,1モル)を加えた。硫酸(2ml)をついで加え、混合物を塩化カルシウム乾燥管で湿気から保護して60℃で30分間加熱し、室温で12時間攪拌した。次に、20gの酸化銀を加え、混合物をさらに1時間攪拌した。ついで混合物にメタノール(200ml)を加え、それをろ過し、濃縮乾固すると、保護酪酸アミド()が結晶化した。
【0034】
保護酪酸アミド()の調製は実質的に定量的であった。少量をアセトンから結晶化すると白色の結晶が得られ、融点106〜108℃を示した。保護酪酸アミド()は、例えば、3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデン()およびスキーム3に示すようにカルニチン()の合成に用いられる(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩()、同じくカルニチンの合成に用いられる1,2−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩()のような化合物の合成に使用される。
【0035】
例3
本例は保護酪酸アミド()から、ホフマン転位反応による3−アミノ−1,2ジヒドロキシプロパンイソプロピリデン()の調製方法を示す。この例では、に変換される代わりに反応混合物から回収された。
保護アミド0.08g(0.005モル)を10〜12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液(5ml)で処理し、この混合物をすべての固体が溶消するまで攪拌した(約5分)。水酸化ナトリウム(0.8gを水5mlに溶解)を混合物に加え、この溶液を50〜60℃に加温し、この温度に24時間保持すると、この時点までに、3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデン()への変換が完了した。1H-NMRスペクトルは()の()への100%変換を指示した。
【0036】
3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデン(4)は、例1に示すように、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩(5)、またカルニチンの合成にも用いられる2,3−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(6)のような化合物の合成に使用される。
【0037】
例4
本例は、(S)−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩()からL−カルニチン()を調製する方法を示す。
S−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩をHOAcおよびハロゲン化剤である、臭化水素と反応させて、(S)−1−ブロモ−2−オキシアセチル−プロパントリメチルアンモニウムアセタール()を製造する。別法として、ハロゲン化剤は塩化チオニルであってもよい。をNaCNと反応させて臭素を置換すると、ニトリル中間体()が得られ、これをついで酸の存在下にL−カルニチン()に変換する。
【0038】
例5
本例は、2,3−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(6)からのL−カルニチン(9)の調製方法を示す。(S)−2,3−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(6)を臭化水素でハロゲン化して、(S)−3−ブロモ−2−ヒドロキシプロパントリメチルアンモニウム塩に変換する。(S)−1−ブロモ−2−ヒドロキシプロパントリメチルアンモニウム塩を青酸ソーダ(NaCN)と反応させて臭素を置換すると、ニトリル中間体が生成し、これを酸の存在下にL−カルニチン(9)に変換する。別法として、6のハロゲン化は、塩化チオニルを用いても達成することができる。
【0039】
以上の記述は本発明の例示のみを意図したものであり、本発明は本明細書に記載された特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、スキーム2に示す(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム(1,2−ジヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパンイソプロピリデンアセタール)のプロトンNMR(1H NMR)を示すグラフである。

Claims (18)

  1. ヒドロキシル基を保護した保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を調製する方法において、
    (a)3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを水酸化アンモニウムと反応させて3,4−ジヒドロキシ酪酸アミドを製造し、
    (b)3,4−ジヒドロキシ酪酸アミドをヒドロキシル基の保護基と反応させて、ヒドロキシル基を保護した保護酪酸アミドを製造し、
    (c)保護酪酸アミドを、塩基および次亜塩素酸ナトリウムを含有するホフマン転位反応中で反応させて、ヒドロキシル基を保護した保護3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンを製造し、及び、
    (d)保護3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンを反応溶媒中塩基の存在下にアルキル化剤と反応させ、ヒドロキシル基を保護した保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造することを含む、上記方法。
  2. 工程(d)におけるアルキル化剤はハロゲン化メチルであり、ヒドロキシル基を保護した保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩である前記保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を生成させる、請求項1に記載の方法。
  3. ハロゲン化メチルはヨウ化メチルであり、ヒドロキシル基を保護した保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムイオジドである前記保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を生成させる、請求項2に記載の方法。
  4. 工程(d)におけるアルキル化剤はジメチル硫酸であり、ヒドロキシル基を保護した保護ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムスルファートである前記保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩を製造する、請求項1に記載の方法。
  5. 塩基は水酸化ナトリウムである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 溶媒は含水アルコールである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
  7. 保護基は2,2−ジメトキシプロパンである、請求項1に記載の方法。
  8. (2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を調製する方法において、
    (a)3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを水酸化アンモニウムと反応させて3,4−ジヒドロキシ酪酸アミドを製造し、
    (b)3,4−ジヒドロキシ酪酸アミドを保護基と反応させて、保護酪酸アミドを製造し、
    (c)保護酪酸アミドを、塩基および次亜塩素酸ナトリウムを含有するホフマン転位反応中で反応させて、3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタールを製造し、及び、
    (d)3−アミノ−1,2−ジヒドロキシプロパンイソプロピリデンアセタールを反応溶媒中塩基の存在下にアルキル化剤と反応させ、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を製造することを含む、上記方法。
  9. アルキル化剤はハロゲン化メチルであり、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩である(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を生成させる、請求項8に記載の方法。
  10. ハロゲン化メチルはヨウ化メチルであり、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウムイオジドである(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を生成させる、請求項9に記載の方法。
  11. アルキル化剤はジメチル硫酸であり、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウムスルファートである(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を生成させる、請求項10に記載の方法。
  12. 溶媒は含水アルコールである、請求項8、10、又は11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 塩基は水酸化ナトリウムである、請求項8、10、又は11のいずれか一項に記載の方法。
  14. (2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩はキラルである、請求項8、10、又は11のいずれか一項に記載の方法。
  15. さらに、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩を酸と反応させて2,3−ジヒドロキシプロパントリアルキルアンモニウム塩を生成させる、請求項8に記載の方法。
  16. (2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリアルキルアンモニウム塩は(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)トリメチルアンモニウム塩であり、これを酸と反応させて2,3−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩を生成させる、請求項8に記載の方法。
  17. 2,3−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩はキラルである、請求項8に記載の方法。
  18. 請求項1に記載の保護ジヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩をL−カルニチンに変換する工程を含んでなる、L−カルニチンを調製する方法。
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