JP2011079757A - β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の製造方法 - Google Patents

β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、β−D−グルコピラノシルアミンの長鎖脂肪酸誘導体組成物を、工業的に簡便で安価に製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】長鎖飽和脂肪酸クロリドと長鎖不飽和脂肪酸クロリドとを特定の比率で含む原料と、β−D−グルコピラノシルアミンとを、好ましくは炭素数4以下のアルコールを反応溶媒として反応させると、良好な中空繊維状有機チューブを形成できるβ−D−グルコピラノシルアミンの長鎖脂肪酸誘導体組成物を、煩雑な工程を伴うことなく、工業的に簡便に製造することができることを見出した。
【選択図】図1

Description

本発明は、医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野で重要なβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体の組成物の製造方法に関する。
β−D−グルコピラノシルアミンのアミノ基に長鎖飽和脂肪酸をアミド結合させた誘導体は界面活性剤として用いることができることが非特許文献1に開示されており、また、炭素数12〜41の長鎖不飽和脂肪酸をアミド結合させた誘導体は中空繊維状有機ナノチューブの構成単位として用いることができることが特許文献1および2に開示されている。このように、β−D−グルコピラノシルアミンは医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野で重要な化合物である。しかしながら、上記化合物類の長鎖脂肪酸部分の脂肪酸組成に関する詳細な研究例は報告されていない。
したがって、例えば、β−D−グルコピラノシルアミンのアミノ基に長鎖飽和脂肪酸をアミド結合させた誘導体と、炭素数12〜41の長鎖不飽和脂肪酸をアミド結合させた誘導体との混合物がどのような機能を持つかという点はこれまで知られていなかった。
また、β−D−グルコピラノシルアミンのアミノ基にステアリン酸をアミド結合させた誘導体を、水溶液からの再結晶による中空繊維状有機ナノチューブ形成条件に供した場合、有機ナノチューブは得られない(非特許文献2)か、または、大部分が塊状で一部得られる程度(特許文献1)であると報告されている。
なお、長鎖脂肪酸とは、炭素数12以上の脂肪酸を意味する慣用名である。長鎖脂肪酸類は、一般には天然油脂から得られるものが工業品として流通している。したがって、天然油脂の産地、気候、収穫時期等の影響により含有される脂肪酸の組成が異なることが知られている。特に、不飽和脂肪酸類の場合は工業的な精製法の難易度からその影響が大きい。このような天然油脂由来の製品の一つであるオレイン酸クロリドは、高純度品の工業的な入手は困難であり、流通品の純度(ガスクロマトグラフィー分析による脂肪酸組成)は各社の試薬カタログによれば、例えば、Merck社製は70%、Sigma−Aldrich社製は85%、関東化学製は65%、東京化成工業製は55%、と記載されている。
特許文献1で開示される中空繊維状有機ナノチューブの工業的な製造を考えた場合、長鎖不飽和脂肪酸部分の原料としてオレイン酸クロリドを使用するのがコスト上有利であるが、上述のごとく、オレイン酸クロリドはその純度(脂肪酸組成)が入手経路、入手時期等により変動する。したがって、工業原料を用いた場合には、特許文献1で開示される中空繊維状有機ナノチューブを、安定した品質を保って大量に製造することが困難であるという課題があった。
また、天然油脂由来のオレイン酸を原料とした製品には、リノール酸等の、分子内に複数の炭素−炭素二重結合を有する長鎖多価不飽和脂肪酸類が、不純物として一定量混入することが知られている。リノール酸等の長鎖多価不飽和脂肪酸類は自動酸化を受けやすく、過酸化脂質の生成による分解や着色といった品質低下の原因となる(非特許文献3およびその引用文献)。したがって、特許文献1で開示される中空繊維状有機ナノチューブを、天然油脂由来の工業原料である市販のオレイン酸クロリドを原料として製造した場合、リノール酸等の長鎖多価不飽和脂肪酸誘導体の混入を免れないことから、製造された中空繊維状有機ナノチューブが自動酸化による分解を受けやすいという問題があった。
特開2004−224717号公報 特開2008− 30185号公報
Carbohydrate Research, 266 211−219 (1995) Langmuir, 21, 743−750 (2005) 化学工学論文集、 27, 76−84 (2001)
本発明は、β−D−グルコピラノシルアミンの長鎖飽和脂肪酸誘導体と長鎖不飽和脂肪酸誘導体とを含む、品質の安定したβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物、特に中空繊維状有機チューブを工業的に製造するためのβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、品質の安定したβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物、特にこの誘導体からなる中空繊維状有機チューブを工業的に製造するための手段に関して鋭意検討した結果、β−D−グルコピラノシルアミンの長鎖飽和脂肪酸誘導体を主成分とし、β−D−グルコピラノシルアミンの長鎖不飽和脂肪酸誘導体を特定の比率で含む組成物が良好な中空繊維状有機チューブを形成できることを見出した。さらに該組成物の製造方法に関する研究を重ねた結果、β−D−グルコピラノシルアミンに長鎖飽和脂肪酸クロリドと長鎖不飽和脂肪酸クロリドとを一括して反応させた場合に、前記組成物が容易に調製できることを見出した。また、前記反応を炭素数4以下のアルコール反応溶媒中で実施した場合に、煩雑な分離・精製工程を経ることなく、反応溶液から直接、目的とする組成物を回収できることを見出し、本発明を完成したのである。
本発明で提供される製造方法は、脂肪酸組成中の飽和脂肪酸比率が高く、不飽和脂肪酸比率が低い、品質の安定したβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物、特にこの誘導体からなる中空繊維状有機チューブを形成するための組成物を、工業的に容易に製造できるという効果を有しており、利用価値は高い。
また、反応溶媒又は再結晶(精製)溶媒として、炭素数が4以下のアルコールを用いた場合は、二重結合を含むβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体の含有量を減らすことができるので、質の安定したβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物、特にこの誘導体からなる中空繊維状有機チューブを形成するための組成物を容易に得ることができる。
実施例1で得られた中空繊維状有機チューブの電子顕微鏡写真。 実施例1で得られた中空繊維状有機チューブの拡大電子顕微鏡写真。 実施例2で得られた中空繊維状有機チューブの電子顕微鏡写真。
本発明は、第一に、β−D−グルコピラノシルアミンと長鎖脂肪酸クロリドとを反応溶媒中で反応させ、下記一般式(1)で示される誘導体を含むβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を製造する方法であって、前記長鎖脂肪酸クロリドは、総炭素数12〜22、かつ、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸クロリド(以下、「不飽和脂肪酸クロリド(a1)」ともいう。)及び二つ以上有する不飽和脂肪酸クロリド(以下、「不飽和脂肪酸クロリド(a2)」ともいう。)の少なくとも一方と、総炭素数12〜18の飽和脂肪酸クロリド(以下、「飽和脂肪酸クロリド(b)」ともいう。)と、を含み、
前記長鎖2種類の不飽和脂肪酸クロリド及び前記飽和脂肪酸クロリドの全量を100モル%とした場合、該不飽和脂肪酸クロリドの添加割合が、0.5モル%〜50モル%であることを特徴とするβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の製造方法である。
尚、前記不飽和脂肪酸クロリド(a1)と前記不飽和脂肪酸クロリド(a2)とを併せて、不飽和脂肪酸クロリド(a)と総称する。
〔但し、式(1)中のRC(O)は長鎖脂肪酸クロリド(RC(O)Cl)の残基を示す。〕
第二に、炭素−炭素二重結合を一つ有する前記不飽和脂肪酸クロリド及び二つ以上有する前記不飽和脂肪酸クロリドの総和を100モル%とする場合、炭素−炭素二重結合を一つ含む該不飽和脂肪酸クロリドは40〜100モル%であるβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の製造方法である。
第三に、前記反応溶媒は、炭素数4以下のアルコールであり、該反応溶液から析出したβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を回収する、請求項1または2に記載のβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の製造方法。
第四に、本発明は、前記製造方法により回収された前記β−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を、炭素数4以下のアルコールにより溶解させ、その後、該β−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を析出させて、精製されたβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を回収することを特徴とする精製β−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の製造方法である。
本発明の製造方法で使用するβ−D−グルコピラノシルアミンは、例えば、(1)D−グルコースの水溶液に、重炭酸アンモニウムを飽和させて37℃で数日間反応させた後、脱塩する方法(特許文献1、合成例1)、(2)触媒量の重炭酸アンモニウム存在下でD−グルコースを濃アンモニア水に溶解し、42℃で36時間反応後、減圧濃縮と凍結乾燥する方法(非特許文献1)、(3)7Nのアンモニア/メタノール溶液にD−グルコースを加え、40℃で24時間反応させた後、減圧濃縮する方法などで調製したものを使用することができる。
これらの方法で調製したβ−D−グルコピラノシルアミンは、通常、未反応のD−グルコース等の不純物を含有しているため、H−NMR等の分析手段により純度を確認して、純度を考慮した仕込み組成として、長鎖脂肪酸クロリドとの反応に用いることが好ましい。なお、7Nのアンモニア/メタノール溶液とは、7モル/リットル濃度のアンモニアを含むメタノール溶液を意味する慣用表現である。
つぎに、前述のごとく調製したβ−D−グルコピラノシルアミンに長鎖脂肪酸クロリドを反応させる。
本工程におけるβ−D−グルコピラノシルアミンと長鎖脂肪酸クロリドの総使用量との仕込み比は、特に限定されるものではないが、具体的にはβ−D−グルコピラノシルアミンの1モルに対して総使用量として0.5〜2.5モル(好ましくは0.8〜2モル)の長鎖脂肪酸クロリドを反応させることができる。この場合は、トータルのコストを最小限にすることができるので好ましい。また、収率とコストを勘案すると、β−D−グルコピラノシルアミンに対して、長鎖脂肪酸クロリドの総使用量を化学量論量付近から3倍程度過剰となる範囲で反応させることがコスト的に好ましく、例えば、1.0〜2.0モル、好ましくは1.1〜1.8モルとすることができる。
前記長鎖脂肪酸クロリドは、総炭素数12〜22、かつ、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸クロリド(a1)及び二つ以上有する不飽和脂肪酸クロリド(a2)の少なくとも一方からなる不飽和脂肪酸クロリド(a)と、総炭素数12〜18の飽和脂肪酸クロリド(b)と、を含む。
長鎖脂肪酸クロリドは、不飽和脂肪酸クロリド(a)及び飽和脂肪酸クロリド(b)を全量としてもよく、不飽和脂肪酸クロリド(a)及び飽和脂肪酸クロリド(b)を一部に含有するものであってもよい。
長鎖脂肪酸クロリドが、不飽和脂肪酸クロリド(a)及び飽和脂肪酸クロリド(b)を一部に含有するものである場合、不飽和脂肪酸クロリド(a)及び飽和脂肪酸クロリド(b)が、原料の長鎖脂肪酸クロリドにおける有効成分であり、これらの有効成分の含有量は、長鎖脂肪酸クロリドの全量を100モル%とした場合に、100モル%未満であり、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、85モル%以上が更に好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
また、反応に際しては、不飽和脂肪酸クロリド(a1)及び/又は不飽和脂肪酸クロリド(a2)と、飽和脂肪酸クロリド(b)とを予め混合したものを反応させても良く、同時に反応系に加えても良く、また、任意の順で反応系に加えても良い。
長鎖脂肪酸クロリドの総使用量に対する割合は、不飽和脂肪酸クロリド(a)〔不飽和脂肪酸クロリド(a1)及び/又は不飽和脂肪酸クロリド(a2)〕と、飽和脂肪酸クロリド(b)との総和を100モル%とした場合に、
(1)モル分率で0.5%〜50%が不飽和脂肪酸クロリド(a)であり、50%〜99.5%が飽和脂肪酸クロリド(b)である。
(2)より好ましくは、モル分率で1%〜40%が不飽和脂肪酸クロリド(a)であり、60%〜99%が飽和脂肪酸クロリド(b)である。
(3)更に好ましくは、モル分率で3%〜30%が不飽和脂肪酸クロリド(a)であり、70%〜97%が飽和脂肪酸クロリド(b)である。
(4)特に好ましくは、モル分率で5%〜20%が不飽和脂肪酸クロリド(a)であり、80%〜95%が飽和脂肪酸クロリド(b)である。
総炭素数12〜22、かつ、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸クロリド(a)の使用量が少なすぎる場合、平均外径が100〜4000nmである中空繊維状有機チューブの調製が困難となる場合があり、また、使用量が多すぎる場合は不飽和脂肪酸原料の不純物として不可避の多価不飽和脂肪酸誘導体の混入量が増加し中空繊維状有機チューブの品質が不安定化する場合がある。
また、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸クロリド(a)は、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸クロリド(a1)及び二つ以上有する不飽和脂肪酸クロリド(a2)の少なくとも一方からなる。これらのうち、不飽和脂肪酸クロリド(a)は、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸クロリド(a1)が好ましく、不飽和脂肪酸クロリド(a)の全量を100モル%とした場合に、不飽和脂肪酸クロリド(a1)が、40〜100モル%が好ましく、60モル%以上がより好ましく、80モル%以上が更に好ましい。
総炭素数12〜22、かつ、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸クロリド(a1)の具体例としては、ミリストレイン酸クロリド(炭素数14)、パルミトレイン酸クロリド(炭素数16)、オレイン酸クロリド(炭素数18)などが例示される。これらのうち、原料入手の容易性を考慮すると、オレイン酸クロリドが好適である。炭素−炭素二重結合を二つ以上有する不飽和脂肪酸クロリドの具体例としては、炭素−炭素二重結合を二つ有するリノール酸クロリド(炭素数18)などが例示される。
また、これらの不飽和脂肪酸クロリド(a)は、複数の異種のものを併用することもできる。また、天然油脂を出発原料とした結果、数種の飽和および不飽和の脂肪酸クロリドの混合物が市販されている場合もある。このような混合物も本発明の目的を損なわない限り、すなわち、本発明の組成範囲内に含まれる組成範囲内(飽和および不飽和の脂肪酸クロリドのうちの所定範囲内の不飽和脂肪酸クロリド)であれば、好適に使用することができる。
総炭素数12〜18の飽和脂肪酸クロリド(b)としては、ラウリン酸クロリド(炭素数12)、トリデカン酸クロリド(炭素数13)、ミリスチン酸クロリド(炭素数14)、ペンタデカン酸クロリド(炭素数15)、パルミチン酸クロリド(炭素数16)、ステアリン酸クロリド(炭素数18)などが例示され、原料入手の容易性を考慮すると、ラウリン酸クロリドまたはミリスチン酸クロリドが好ましく、反応生成物の回収率を考慮するとミリスチン酸クロリドがより好適である。
また、これらの飽和脂肪酸クロリド(b)は、複数の異種のものを併用することもできる。また、天然油脂を出発原料とした結果、数種の飽和および不飽和の脂肪酸クロリドの混合物が市販されている場合もある。このような混合物も本発明の目的を損なわない限り、すなわち、本発明の組成範囲内に含まれる組成範囲内(飽和および不飽和の脂肪酸クロリドのうちの所定範囲内の飽和脂肪酸クロリド)であれば、好適に使用することができる。
不飽和脂肪酸クロリド(a)として、オレイン酸クロリドであり、飽和脂肪酸クロリド(b)として、ラウリン酸クロリド及びミリスチン酸クロリドの両方又は一方、好ましくはその一方であり、かつ、前記不飽和脂肪酸クロリド(a)および前記飽和脂肪酸クロリド(b)の全量を100モル%とした場合、この不飽和脂肪酸クロリド(a)の添加割合が1〜40モル%(好ましくは3〜30モル%)であり、該飽和脂肪酸クロリド(b)の添加割合が60〜99モル%(好ましくは70〜97モル%)とすることができる。
また、不飽和脂肪酸クロリド(a)として、オレイン酸クロリド及びリノール酸クロリドであり、飽和脂肪酸クロリド(b)として、ラウリン酸クロリド、ミリスチン酸クロリド、パルミチン酸及びステアリン酸であり、かつ、前記不飽和脂肪酸クロリド(a)および前記飽和脂肪酸クロリド(b)の全量を100モル%とした場合、この不飽和脂肪酸クロリド(a)の添加割合が1〜40モル%(好ましくは3〜30モル%)であり、該飽和脂肪酸クロリド(b)の添加割合が60〜99モル%(好ましくは70〜97モル%)とすることができる。この場合、不飽和脂肪酸クロリド(a)のうちのオレイン酸クロリドの添加割合は、50モル%以上、好ましくは60モル%以上、90モル%以下、好ましくは80モル%以下とすることができる。また、この場合、飽和脂肪酸クロリド(b)のうちの、ラウリン酸クロリド及びミリスチン酸クロリドの両方又は一方、好ましくはその一方の添加割合は、80モル%以上、好ましくは90モル%以上、100モル%以下、好ましくは90モル%以下とすることができる。
分子内に複数の炭素−炭素二重結合を有する長鎖多価不飽和脂肪酸類は、結晶性が低くなる。この傾向は分子内に含まれる炭素−炭素二重結合の数が多くなるとさらに顕著になり、溶液から再結晶する際には、炭素−炭素二重結合を多く含む誘導体の含有量が多くなるほど、再結晶で得られる結晶の収率が下がる。このため、炭素−炭素二重結合を含む誘導体の総量を少なくすることが好ましい。例えば、組成物全体に対して、炭素−炭素二重結合を含む誘導体の総和は、50%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。従って、この誘導体の原料となる不飽和脂肪酸クロリドは、例えば、飽和及び不飽和に関わらず、これらの脂肪酸クロリド全体に対して、炭素−炭素二重結合を含む誘導体の総和は、50%モル以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。
分子内に二重結合を二つ以上含む誘導体(二つの例;リノレオイル誘導体等)は、再結晶を妨げる影響が大きい上に、自然酸化を受けやすく、着色や分解を引き起こすので、特に総量を少なくすることが好ましい。分子内に二重結合を二つ以上含む長鎖多価脂肪酸誘導体の総和は、組成物全体に対して、20%以下が好ましく、より好ましくは2%以下である。従って、これらの脂肪酸クロリド全体に対して、分子内に二重結合を二つ以上含む長鎖多価脂肪酸誘導体の総和は、組成物全体に対して、20モル%以下が好ましく、より好ましくは2モル%以下である。
β−D−グルコピラノシルアミンと長鎖脂肪酸クロリドとの反応は、反応溶媒中で行なわれる。反応溶媒として好ましいのは極性溶媒であり、例えばアルコール又はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などである。
この反応溶媒として炭素数4以下のアルコールを使用することが好ましい。炭素数4以下のアルコールとしては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−ブタノールを例示することができ、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、2−プロパノールであり、メタノールが最も好ましい。これらのうちの1種でも、2種以上を用いても良い。反応溶媒として用いる炭素数4以下のアルコールの使用量は、β−D−グルコピラノシルアミンの使用量1gに対して3〜50mlが好ましく、さらに好ましくは5〜40ml、より好ましくは7〜20mlである。アルコールの使用量が多すぎる場合は目的の組成物の析出量が減少し、使用量が少なすぎる場合は不純物の含有量が増加する。また、極性溶媒中には50重量%以下、好ましくは30重量%以下の水が含まれていても本発明の反応を実施することができる。また、二層分離しない程度の量の非極性溶媒を含んでいてもよい。
反応溶媒の好ましい使用量は、β−D−グルコピラノシルアミンの仕込み量1gに対して3〜50mlの反応溶媒を使用するのが好適である。反応溶媒の使用量が少なすぎると反応の進行が不十分となり、多すぎる場合はコストが上昇する。
また、上記反応において副生する酸の捕捉剤として塩基性物質を共存させることができる。この場合の塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸三ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などの3級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−イソプロピルエチルアミン、N−メチルアミノピリジンなどの2級アミン、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミンなどの1級アミンなどのアミン、アンモニア等を例示することができる。これらの1種は2種以上を用いることができる。これらのうち、反応性とコストを考慮するとトリエチルアミン等の第3級アミンが好適である。また、塩基性物質の添加量は、長鎖脂肪酸クロリドの添加量1モルに対して0.5モルから2.0モルが好ましく、さらに好ましくは1.0モルから1.5モルである。
反応温度は低いほうが副生成物の発生を抑えることができるが、反応時間が長時間になる傾向があり、反応温度を高くすれば反応の進行が加速されて反応時間が短くて済む。反応温度は−5〜35℃、更に好ましくは0〜25℃の範囲である。この場合の好ましい反応時間は各種条件設定により異なるが、好ましくは5分〜50時間、さらに好ましくは10分〜10時間である。
反応液からは、溶媒抽出、溶媒洗浄、再結晶、活性炭処理、各種クロマトグラフィー等の常法により、β−D−グルコピラノシルアミンの長鎖脂肪酸誘導体の組成物を分離して得ることができる。更に、この分離した長鎖脂肪酸誘導体の組成物を、所定の溶媒(再結晶のための溶媒、精製のための溶媒)を用いて精製することもできる。
前記の分離方法のうちで好ましいのは、反応で生成したβ−D−グルコピラノシルアミンの長鎖脂肪酸誘導体組成物が、再結晶によって反応溶媒から析出することであり、反応溶媒として原料は溶解するが、反応で生成したβ−D−グルコピラノシルアミンの長鎖脂肪酸誘導体組成物に対しては貧溶媒である反応溶媒を用いた場合は、再結晶のために溶媒の追加や留去などの操作をする必要がないのでエネルギーや廃液処理の面からも優れている。精製方法においても、前記の如く、再結晶によって精製溶媒から析出することが好ましい。
この精製溶媒としては、炭素数4以下のアルコールを使用することが好ましい。炭素数4以下のアルコールとしては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−ブタノールを例示することができ、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、2−プロパノールであり、メタノールが最も好ましい。反応溶媒として用いる炭素数4以下のアルコールの使用量は、β−D−グルコピラノシルアミンの使用量1gに対して3〜50mlが好ましく、さらに好ましくは5〜40ml、より好ましくは7〜20mlである。アルコールの使用量が多すぎる場合は目的の組成物の析出量が減少し、使用量が少なすぎる場合は不純物の含有量が増加する。
本発明では反応液または精製のための溶解液から生成物が析出してくるので、反応液または溶解液(「反応液等」ともいう。)の保持条件によって得られる生成物の純度が影響を受ける。反応液は低温に保持した方が結晶の収率は向上するが、不純物まで析出してくるので純度は下がる。反応終了後の反応液は好ましくは−5〜30℃、さらに好ましくは0〜25℃に保持すると良い結果を得られるが、工業的に最も簡便な方法は、反応温度または溶解温度を維持してそのまま結晶を析出させることである。
本発明では反応液から直接生成物が析出してくるので、原料を添加中にすでに生成物が析出を始めることがあるが、原料の添加後も反応温度と攪拌を保つことが、析出物の組成を均一にするために有効である。前記溶解液から目的性生物を得る場合においても同様である。この時間に限定はないが、好ましくは5分以上10時間以内、さらに好ましくは10分以上5時間以内である。この後で、攪拌を止めて生成物を析出させるための時間は、長いほうが収率が良くなるが、工業的には短い方がコストが少なくて済むので、好ましくは5分以上50時間以内、さらに好ましくは10分以上30時間以内である。この他に、再結晶を促進するために、種となるβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体の固体を接触させたり、気体や固体片を接触させたり、貧溶媒を添加したりすることもできる。
再結晶によって、溶液中にβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の結晶が析出したら、ろ過や遠心分離など、公知の固液分離方法によってβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の固体を回収することができる。また、再溶解と再結晶を繰り返して精製し、不純物濃度を下げることもできる。
本発明の製造方法により、上記式(1)で示される誘導体を製造することができる。
また、本発明の製造方法により得られるβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物としては、下記式(2)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミン(以下、「オレオイル誘導体」ともいう。)、下記式(3)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン(以下、「ラウロイル誘導体」ともいう。)、及び下記式(4)で示されるミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミン(以下、「ミリストイル誘導体」ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含む組成物とすることができる。この場合、原料として用いる長鎖脂肪酸クロリドとして、オレイン酸クロリド、ラウリン酸クロリド及びミリスチン酸クロリドから選ばれる少なくとも1種を含有する原料を用いることにより得られる。
特に、本発明の製造方法により得られるβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を、中空繊維状有機チューブの原料とする場合には、上記式(2)で示されるオレオイル−β−D−グルコピラノシルアミンと、上記式(3)で示されるラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミンおよび上記式(4)で示されるとミリストイル−β−D−グルコピラノシルアミンの少なくとも一方を含む組成物とすることが好ましい。
以下に、本発明を実施例を挙げて、本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<HPLC条件>
β−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の分離分析をするため、結晶をメタノールに溶解して、次の測定条件でHPLC測定を行った
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、有機物の分析、分離に汎用される周知の方法であり、使用するカラムの種類、溶出溶媒、検出方法などの諸条件は、その目的により選択される。本発明では下記の条件を採用した場合に得られるチャート上の相対面積比で、組成物を構成するβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体の組成比率を規定する。
具体的に、以下に示すHPLC条件において、高速液体クロマトグラフィーを実施した。その代表例としての実施例1における、β−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の各保持時間に現れる各成分名を下記表1に示す。
尚、この各成分が所定の化合物であることは、各ピーク位置でのHPLC流出液を分取し、MALDI−TOF MS法(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)によって各々の成分の分子量を決定することによって同定した。
そして、チャートの現われる各成分ピークの全面積を100%とした場合、各成分ピークの各面積の百分率(%)を表3に示す。
<HPLC条件>
ポンプ 日立L−6000
検出器 日立L−4200
データ処理機 日立D−2500
カラム 関東化学 マイティシルRP−18 GP 150−4.6(5μm)
溶出溶媒 メタノール/0.05Mリン酸二水素ナトリウム水溶液(V/V)=80/20
カラム温度 40℃
検出波長 210nm
流速 0.9ml/min.
測定時間 0〜40分
一般的に脂肪酸残基中の炭化水素鎖は波長210nmでは光吸収を示さないので、検出波長210nmにおける光吸収は、各誘導体に共通するβ−D−グルコピラノシルアミド部分に起因する。また、式(1)の各誘導体は脂肪酸残基の炭化水素鎖部分が異なるだけなので、210nmにおけるモル吸光係数もほぼ同じと考えられる。HPLC測定では、リテンションタイムが長くなるほど吸収波形の半値幅が大きくなる傾向はあるものの、上記の理由から、各誘導体の示した吸光ピーク面積の比率が、各誘導体のモル濃度の比率を反映すると考えることは合理的である。したがって本発明ではHPLC測定で波長210nmにおける各誘導体の吸光ピーク面積を、組成物を構成するβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体のモル組成比率を反映する数値として用いるのである。
また、実施例及び実験例において、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸クロリドとして、和光純薬工業株式会社製「オレイン酸クロリド」、並びに、飽和脂肪酸クロリドとして、東京化成工業株式会社製「ミリスチン酸クロリド」及び東京化成工業株式会社製「ラウリン酸クロリド」を用いた。そして、実施例等における、上記「オレイン酸クロリド」、上記「ミリスチン酸クロリド」及び上記「ラウリン酸クロリド」の添加モル量は、不純物を含んだ原料の質量(添加量)を、その原料の名称(例えば「ラウリン酸クロリド」)に基づく分子量で換算して算出したモル量を意味する。
また、実施例で使用した脂肪酸クルリドの仕込みモル比(以下、「仕込みモル分率(%)」ともいう。)を表2に示す。この仕込みモル比とは、前記のとおりに、不純物を含んだ原料の質量(添加量)を、その原料の名称に基づく分子量で換算して算出したモル量から得られたモル比である。
<実験例1>
和光純薬製のD−(+)−グルコース (13.0g,72.2mmol)と7Nアンモニア/メタノール(30ml)および回転子を肉厚ガラス容器に入れ、密栓後、反応容器を40℃に加温しマグネチックスターラーによる攪拌を行った。24時間後、開封し、内容物をナス型フラスコに移した。つぎに、20℃の水浴上で真空ポンプに連結し、減圧下でアンモニア/メタノールを除去した。3時間後にフラスコ内容物が乾固したのでかきとり、β−D−グルコピラノシルアミンの粗生成物(14.4g)を得た。H−NMR分析により、本粗生成物はモル分率でβ−D−グルコピラノシルアミン46%、α−グルコース19%、β−グルコース29%、および、ジ−β−D−グルコピラノシルアミン6%からなる混合物であることを確認した。
<実施例1>
上記<実験例1>で調製したβ−D−グルコピラノシルアミン46%、α−グルコース19%、β−グルコース29%、および、ジ−β−D−グルコピラノシルアミン6%からなる混合物(14.3g、β−D−グルコピラノシルアミンの純分33.2mmol)にメタノール(200ml)を加えて溶解した。この溶液を氷冷し、攪拌しながら、和光純薬製のオレイン酸クロリド(3.30ml,9.98mmol)を約3分間かけて滴下した。つぎに、同温で東京化成工業製のミリスチン酸クロリド(4.00ml,14.7mmol)を約4分間かけて滴下した。つぎに、同温でトリエチルアミン(7.00ml,50.2mmol)を約7分間で滴下した。さらに、同温で、東京化成工業製のミリスチン酸クロリド(6.80ml,25.0mmol)を約7分間かけて滴下した。その後、同温で1時間攪拌した後、4℃で18時間静置した。
つぎに、生成した固体を吸引濾過(濾紙No.5C)で回収し、メタノール(50ml)で洗浄した。得られた無色の固体を減圧乾燥し、β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を得た。このβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の重量を測定したところ、5.67gであった。この固体に、メタノール(310ml)を加え、外浴温度55℃で緩やかに攪拌しながら溶解した。その後、攪拌を止めて外浴をはずして25℃まで自然放冷し、そのまま18時間静置した。析出した無色の結晶を吸引濾過(濾紙No.5C)で回収し、0℃のメタノール(50ml)で洗浄した。得られた無色の結晶を減圧乾燥し、重量を測定したところ、2.34gであった。走査型電子顕微鏡により本品の10,000倍写真を撮影したところ、図1のように、均一な中空繊維状有機チューブが形成されていることがわかった。走査型電子顕微鏡のサンプリングでは、平均的なチューブ径を測定するために、まず得られた有機チューブ全体を軽く攪拌した後、その一部を採り、試料台上の導電粘着テープにスパーテルで押し付けて固定した。このとき、有機チューブが折れたり潰れたりするので、板状に潰れた形状のチューブは測定対象から外し、10,000倍の画面上で、折れた有機チューブの断面が環状に見えているものを測定対象に選択した。そして図1に示したように、断面に有機チューブの長手方向と垂直方向に補助線aを引き、補助線aと接する断面上で外径および内径を読み取った。写真画面上のスケールの長さに基づいて、画面上で読み取ったチューブの外径および内径を換算した。図1の画面上に環状の断面が見えているチューブすべてについて同じ操作を繰り返し、外径と内径の各々について全ての換算値を平均して測定値とした。
尚、そのチューブの形状が十二分に視認できるように、その拡大写真を図2に示す。
また、実施例1により得られたβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物について、前述の条件で測定したHPLCチャート上の相対面積比を表3に示した。
また、実施例1により得られたβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を用いて製造された中空繊維状有機チューブについて、下記の耐候性試験を行った。
[耐候性試験]:実施例1で得られた無色の結晶を減圧乾燥したもの1gを、めのう乳鉢で粉砕して、赤外線透過サンプル作成用の錠剤成型器でプレスして白色の錠剤としたものを、耐候性試験機(ATLAS社製UVCON)にかけて耐候試験した。60℃で波長350nm以下の紫外線を4時間照射することを3回繰り返し、色差計(日本電色工業株式会社製色彩色差計SZ−Σ80)を用いて、紫外線照射前の色彩(L1,a1,b1)及び照射後の色彩(L2,a2,b2)を測定し、これらの測定値から下式〔B〕により色差(ΔE)を算出した。
ΔE=〔(L1−L2)+(a1−a2)+(b1−b2)1/2 〔B〕
12時間後のΔEの値が10より小さい場合を○、10以上の場合を×と評価した。
この結果を表3に示す。以下の他例についても同様に耐候試験を行なった。その結果を表3に示す。
<実施例2>
前記<実験例1>と同様の方法で調製したβ−D−グルコピラノシルアミン32.4mmolを含む混合物に、メタノール(120ml)を加えて溶解した。この溶液を氷冷し、内温4℃で攪拌しながら、和光純薬製のオレイン酸クロリド(0.80ml,2.42mmol)を約1分間かけて滴下した。つぎに、同温で東京化成工業製のラウリン酸クロリド(5.00ml,21.6mmol)を約5分間かけて滴下した。つぎに、同温でトリエチルアミン(7.00ml,50.2mmol)を約7分間で滴下した。さらに、同温で、東京化成工業製のラウリン酸クロリド(5.60ml,24.2mmol)を約5分間かけて滴下した。その後、同温で1時間攪拌した後、4℃で18時間静置した。
つぎに、生成した固体を吸引濾過(濾紙No.5C)で回収し、メタノール(50ml)で洗浄した。得られた無色の固体を減圧乾燥し、β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を得た。このβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の重量を測定したところ、4.38gであった。この固体に、メタノール(145ml)を加え、外浴温度55℃で緩やかに攪拌しながら溶解した。その後、攪拌を止めて外浴をはずして25℃まで自然放冷し、そのまま18時間静置した。析出した無色の結晶を吸引濾過(濾紙No.5C)で回収し、0℃のメタノール(50ml)で洗浄した。得られた無色の結晶を減圧乾燥し、重量を測定したところ、0.82gであった。本品の10,000倍写真を電子顕微鏡で撮影したところ、図3のように外径約300−400nmの中空繊維状有機チューブが形成されていることがわかった。実施例1と同様に、写真上で断面の測定のできる有機チューブの外径と内径をすべて計測し、平均外径を350nm、平均内径を300nmと算出した。また、実施例2により得られたβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物について、前述の条件で測定したHPLCチャート上の相対面積比を表3に示した。
<実施例3>
前記<実験例1>と同様の方法で調製したβ−D−グルコピラノシルアミン33.2mmolを含む混合物に、メタノール(200ml)を加えて溶解した。この溶液を氷冷し、内温4℃で攪拌しながら、和光純薬製のオレイン酸クロリド(1.65ml,4.99mmol)を約2分間かけて滴下した。つぎに、同温で東京化成工業製のミリスチン酸クロリド(5.30ml,19.5mmol)を約5分間かけて滴下した。つぎに、同温でトリエチルアミン(7.00ml,50.2mmol)を約7分間で滴下した。さらに、同温で、東京化成工業製のミリスチン酸クロリド(6.70ml,24.6mmol)を約7分間かけて滴下した。その後、同温で1時間攪拌した後、4℃で18時間静置した。
つぎに、生成した固体を吸引濾過(濾紙No.5C)で回収し、0℃のメタノール(50ml)で洗浄した。得られた無色の固体を減圧乾燥し、β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を得た。このβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の重量を測定したところ、7.22gであった。
実施例1と同様に、この固体の10,000倍写真を電子顕微鏡で撮影し、画面上で読み取ったチューブの外径および内径を換算し、平均外径を400nm、平均内径を350nmと算出した。
また、実施例3により得られたβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物について、前述の条件で測定したHPLCチャート上の相対面積比を表3に示した。
<実施例4>
前記<実験例1>と同様の方法で調製したβ−D−グルコピラノシルアミン32.4mmolを含む混合物に、メタノール(65ml)を加えて溶解した。この溶液を氷冷し、攪拌しながら、和光純薬製のオレイン酸クロリド(2.10ml,6.35mmol)を約3分間かけて滴下した。つぎに、同温で東京化成工業製のミリスチン酸クロリド(4.00ml,14.7mmol)を約4分間かけて滴下した。つぎに、同温でトリエチルアミン(6.20ml,44.5mmol)を約7分間で滴下した。さらに、同温で、東京化成工業製のミリスチン酸クロリド(5.70ml,21.0mmol)を約6分間かけて滴下した。その後、同温で1時間攪拌した後、18時間静置した。
つぎに、生成した固体を吸引濾過(濾紙No.5C)で回収し、0℃のメタノール(30ml)で洗浄した。得られた無色の固体を減圧乾燥し、β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を得た。このβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の重量を測定したところ、8.45gであった。
実施例1と同様に、この固体の10,000倍写真を電子顕微鏡で撮影し、画面上で読み取ったチューブの外径および内径を換算し、平均外径を400nm、平均内径を350nmと算出した。
また、実施例4により得られたβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物前述の条件で測定したHPLCチャート上の相対面積比を表3に示した。
<実施例5>
前記<実験例1>と同様の方法で調製したβ−D−グルコピラノシルアミン33.2mmolを含む混合物に、メタノール(200ml)を加えて溶解した。この溶液を氷冷し、内温4℃で攪拌しながら、和光純薬製のオレイン酸クロリド(1.65ml,4.99mmol)を約2分間かけて滴下した。つぎに、同温で東京化成工業製のミリスチン酸クロリド(5.30ml,19.5mmol)を約5分間かけて滴下した。つぎに、同温でトリエチルアミン(7.00ml,50.2mmol)を約7分間で滴下した。さらに、同温で、東京化成工業製のミリスチン酸クロリド(6.70ml,24.6mmol)を約7分間かけて滴下した。その後、同温で1時間攪拌した後、4℃で18時間静置した。
つぎに、生成した固体を吸引濾過(濾紙No.5C)で回収し、メタノール(50ml)で洗浄した。得られた無色の固体を減圧乾燥し、β−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物を得た。このβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物の重量を測定したところ、5.90gであった。この固体に、メタノール(330ml)を加え、外浴温度55℃で緩やかに攪拌しながら溶解した。その後、攪拌を止めて外浴をはずして25℃まで自然放冷し、そのまま18時間静置した。析出した無色の結晶を吸引濾過(濾紙No.5C)で回収し、0℃のメタノール(50ml)で洗浄した。得られた無色の結晶を減圧乾燥し、重量を測定したところ、3.72gであった。本品を実施例1と同じ方法で電子顕微鏡観察し、10,000倍の写真画面上に環状の断面が見えているチューブすべてについて外径と内径を計測した結果、平均外径が約1,000nm、平均内径が900nmの中空繊維状有機チューブが形成されていることがわかった。また、実施例5により得られたβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体組成物について、前述の条件で測定したHPLCチャート上の相対面積比を表3に示した。
表3は、得られた組成物のHPLCチャート上の相対面積比を示す。得られたβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の示したピーク面積の相対比は、組成物を構成するβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体のモル組成比率を反映するものと考えられる。なお、ラウロイル誘導体は、ラウロイル−β−D−グルコピラノシルアミン誘導体の略記であり、その他の誘導体についても同様に略記した。
表3の結果は、本発明の製造方法によって、仕込み組成に近い組成のβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物が得られたことを示す。
原料の長鎖脂肪酸クロリドは、本発明により脂肪酸誘導体となる。従って、実施例により得られたβ−D−グルコピラノシルアミン誘導体のモル組成比率が、その原料として用いられた長鎖脂肪酸クロリドの組成も表す。
表3では、原料の長鎖脂肪酸クロリドにおける有効成分の量として、原料中の有効成分由来の誘導体(1)−(7)の総和を示す。また、表3では、原料中の不飽和脂肪酸クロリド及び飽和脂肪酸クロリドの含有量として、それらの誘導体の総和を示し、更に、有効成分中の含有割合を示す。
表3の結果より、本発明の製造方法によって、得られたβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物は、均一な中空繊維状有機ナノチューブを自己形成するものであった。
但し、実施例3及び4では、再結晶を行わずに有機ナノチューブが得られたが、実施例3及び4により得られた有機ナノチューブは、耐候性は良くなかった。
本発明のβ−D−グルコピラノシルアミンの長鎖脂肪酸誘導体組成物の製造方法は、例えば、平均外径が100〜4000nmである中空繊維状有機チューブを製造するための組成物の簡便な製造方法として、医薬、農薬、化粧品、機能性材料等の分野で好適に使用できる。
・図1および図3の右下の「1μm」の数字と直上の横線は、電子顕微鏡写真中のスケールを表し、画面上で横線の全長が1μmであることを示す。
・図2の右下の「100nm」の数字と真上の横線は、電子顕微鏡写真中のスケールを表し、画面上で横線の全長が100nmであることを示す。

Claims (4)

  1. β−D−グルコピラノシルアミンと長鎖脂肪酸クロリドとを反応溶媒中で反応させ、下記一般式(1)で示される誘導体を含むβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を製造する方法であって、
    前記長鎖脂肪酸クロリドは、総炭素数12〜22、かつ、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸クロリド及び二つ以上有する不飽和脂肪酸クロリドの少なくとも一方と、総炭素数12〜18の飽和脂肪酸クロリドと、を含み、
    前記2種類の不飽和脂肪酸クロリド及び前記飽和脂肪酸クロリドの全量を100モル%とした場合、該不飽和脂肪酸クロリドの添加割合が、0.5モル%〜50モル%であることを特徴とする、β−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の製造方法。
    〔但し、式(1)中のRC(O)は前記長鎖脂肪酸クロリド(RC(O)Cl)の残基を示す。〕
  2. 炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を一つ有する前記不飽和脂肪酸クロリド及び二つ以上有する前記不飽和脂肪酸クロリドの総和を100モル%とした場合、炭素鎖中に炭素−炭素二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸クロリドは、40〜100モル%である請求項1に記載のβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の製造方法。
  3. 前記反応溶媒は、炭素数4以下のアルコールであり、該反応溶液から析出したβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を回収する、請求項1または2に記載のβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載により回収された前記β−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を、炭素数4以下のアルコールにより溶解させ、その後、該β−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を析出させて、精製されたβ−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物を回収することを特徴とする精製β−D−グルコピラノシルアミン長鎖脂肪酸誘導体組成物の製造方法。
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