JP3909267B2 - 原盤露光装置及び原盤露光方法 - Google Patents

原盤露光装置及び原盤露光方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原盤露光装置及び原盤露光方法に係り、特に、トラックピッチの狭小化による光情報記録媒体の高密度記録を実現する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
光情報記録媒体の技術分野においては、記録密度の向上がますます重要な技術的課題になっており、従来より、情報トラックに沿った線記録密度の改善とトラックピッチの狭小化による面記録密度の改善の両面から、かかる技術的課題の解決が図られている。
【0003】
ところで、光ディスク基板の元になる光ディスク原盤のカッティングは、レーザ光源より出射された一定強度のレーザビームを光変調器にてパルス状に強度変調し、このパルス状に強度変調されたレーザビームを対物レンズにて光ディスク原盤のフォトレジスト層に集光することにより行われるが、図8に示すように、フォトレジスト層に照射されるレーザスポット101内のレーザの強度分布は、レーザスポット101の中心部が最も高強度で周辺部分に至るに従って漸次低強度となるガウシアン分布になっており、かつ、フォトレジスト層の感度は、レーザスポット101内のレーザ強度の最高値と最低値との間の所定の値Lに設定されているので、カッティングされたピット102の周辺には、フォトレジスト層の感度L以下のレーザビームで露光された低露光部103を生じる。そして、線記録密度を改善するために変調信号のパルス幅を狭小化してゆくと、図9に示すように、変調信号のパルス幅がフォトレジスト層上に集光されるレーザスポット101の直径よりも小さくなった段階で、隣接するピット102の間のスペース部分において、各ピット102の周辺部分に生じた低露光部103が互いに重なり合い、いわゆる「かぶり」という現象を生じる。フォトレジストの露光強度は、フォトレジスト層上に照射されるレーザビームの強度とレーザスポットの照射時間との積算値であるから、低露光部103のかぶりを生じると、ピット形成部分のフォトレジスト層の露光強度とスペース形成部分のフォトレジスト層の露光強度を厳密にコントロールすることが困難になり、ピット長の大型化及びスペース長の小型化を生じてピットエッジ位置がトラック方向へシフトし、再生信号のジッターが大きくなる。
【0004】
トラックピッチの狭小化による面記録密度の改善を図る場合も同様であって、トラックピッチがフォトレジスト層上に集光されるレーザスポット101の直径よりも小さくなると、フォトレジスト層上に形成すべきランド部分に隣接トラックのピットをカッティングするためのレーザスポットが互いに重なり合って低露光部103のかぶりを生じ、ピット形成部分のフォトレジスト層の露光強度とランド形成部分のフォトレジスト層の露光強度を厳密にコントロールすることが困難になり、ピット幅の大型化及びランド幅の小型化を生じて、隣接トラック間で信号のクロストークを生じやすくなる。
【0005】
かかる不都合を解消するため、本願出願人は先に、原盤又は光情報記録媒体を回転駆動するディスク回転部と、前記原盤又は光情報記録媒体の情報記録面と対向に配置され、補正信号にてパルス状に強度変調されたエネルギービーム(レーザビーム)を前記情報記録面に照射する光学ヘッドと、当該光学ヘッドを前記原盤又は光情報記録媒体の半径方向に移送するキャリッジと、情報信号を出力するフォーマッタと、カッティングクロックの発生部と、前記フォーマッタから供給された情報信号より補正信号を生成して前記光学ヘッドに供給する信号補正部とを備えた光情報記録装置において、先行する隣接トラックに記録する情報信号と記録しようとするトラックに記録する情報信号と後行する隣接トラックに記録する情報信号を第1乃至第3のメモリに分けて記憶し、記録しようとするトラックへの情報記録に際して、論理回路により各メモリに記憶された情報信号の論理積をとり、先行する隣接トラックに記録する情報信号及び/又は後行する隣接トラックに記録する情報信号とオーバーラップする情報信号についてそのレベル及び/又はパルス長を信号補正回路にて補正することを特徴とする光情報記録装置を提案した(特開2001−148139参照)。
【0006】
このように、先行する隣接トラックに記録する情報信号と記録しようとするトラックに記録する情報信号と後行する隣接トラックに記録する情報信号を第1乃至第3のメモリに取り込んで論理回路により各メモリに記憶された情報信号の論理積をとると、原盤又は光情報記録媒体の半径方向に関する各トラックに記録される情報信号のオーバーラップ状態を検出することができるので、信号補正回路にてオーバーラップする情報信号のレベル及び/又はパルス長を補正することによって、情報信号のオーバーラップ状態(レーザビームのかぶりの状態)に関わりなく、同一の情報信号に対応するマーク(ピット)を原盤又は光情報記録媒体に記録することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、本願出願人が先に提案した光情報記録装置は、フォーマッタに蓄えられた情報信号を、各情報信号ごとに、前後の隣接トラックに記録される情報信号を参照して補正するので、複雑な構成の信号補正回路が必要になるという問題がある。特に、DVD−ROM等に採用されているCLVフォーマットの光ディスク原盤をカッティングする装置においては、原盤又は光情報記録媒体の1回転当たりのチャンネルビット数が各トラックごとに変化するため、さらに複雑な構成の信号補正回路が必要になる。また、CLVフォーマットの光ディスク原盤をカッティングする装置においては、本装置に備えられるCLV回路の誤差により1周後に露光する隣接トラックの情報信号を正確に予測することは困難であり、したがって隣接トラック間で信号のクロストークを生じない光ディスク原盤をカッティングすることは事実上困難である。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高記録密度にして再生信号のジッター及びクロストークを抑制することができ、かつCLVフォーマットの光ディスク原盤のカッティングにも容易に対応することが可能な原盤露光装置及び原盤露光方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の目的を達成するため、原盤露光装置に関しては、レーザ光源と、当該レーザ光源より出射されたレーザビームを光ディスク原盤に集光する対物レンズとを備えた原盤露光装置において、前記レーザ光源より出射されたレーザビームを分割する第1のビーム分割手段と、当該第1のビーム分割手段によって分割されたレーザビームの一方を前記光ディスク原盤にカッティングしようとするピット列の露光信号にしたがって強度変調する第1の光変調器と、前記第1のビーム分割手段によって分割されたレーザビームの他方を前記露光信号とは逆位相の信号にしたがって強度変調する第2の光変調器と、当該第2の光変調器によって強度変調されたレーザビームを分割し、分割された2つのレーザビームを前記第1の光変調器によって強度変調されたレーザビームの照射部分の内周側及び外周側に照射する第2のビーム分割手段とを備えるという構成にした。
【0010】
このように、レーザ光源より出射されたレーザビームを第1のビーム分割手段で分割して、それぞれ光ディスク原盤にカッティングしようとするピット列の露光信号及びそれと逆位相の信号にしたがって強度変調し、かつ、逆位相の信号にしたがって強度変調されたレーザビームを第2のビーム分割手段によってさらに分割して、ピット列の露光信号にしたがって強度変調されたレーザビームの内周側及び外周側に照射すると、カッティングしようとするピットの周囲における他のピットの配列状態に応じてランド部に対するレーザビームのかぶりを均一化することができるので、トラックピッチを狭小化してもピットサイズ及びピット形状の変動を抑制することができ、高記録密度光ディスクのジッター及びクロストークを低減することができる。また、CLV方式の原盤露光装置についても、1周後に露光される隣接トラックの露光信号を正確に予測する必要がないので、複雑な信号補正回路を必要とせず、原盤露光装置の構成を簡略化できると共に、正確なピット列のカッティングが可能になる。
【0011】
また、本発明は、前記第2の光変調器に信号削り回路を備え、当該第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームのオン期間と前記第1の光変調器にて強度変調されたレーザビームのオン期間とが時間的に重ならないようにするという構成にした。
【0012】
このように、第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームのオン期間と第1の光変調器にて強度変調されたレーザビームのオン期間とが時間的に重ならないようにすると、隣接するトラック間で光ディスク原盤の半径方向にピットが揃う領域においてランド部にレーザビームが照射されないので、ランド部におけるレーザビームの過露光を防止することができ、トラックピッチを狭小化してもピットサイズ及びピット形状の変動を抑制することができて、高記録密度光ディスクのジッター及びクロストークを低減することができる。
【0013】
また、本発明は、前記第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームの照射経路にアッテネータを備え、前記第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームのオン期間におけるレーザ強度を前記光ディスク原盤に設けられたフォトレジスト層の感度以下に調整するという構成にした。
【0014】
このように、第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームのオン期間におけるレーザ強度を前記光ディスク原盤に設けられたフォトレジスト層の感度以下に調整すると、ランド部におけるレーザビームの過露光を防止することができるので、トラックピッチを狭小化してもピットサイズ及びピット形状の変動を抑制することができ、高記録密度光ディスクのジッター及びクロストークを低減することができる。
【0015】
また、本発明は、前記第1及び第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームの照射経路に偏光ビームスプリッタを備えると共に、前記第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームの照射経路に当該レーザビームの偏光軸を90度傾ける1/2波長板を備え、前記偏光ビームスプリッタにて前記第1の光変調器にて強度変調されたレーザビームと前記第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームとを合成するという構成にした。
【0016】
このように、レーザビームの照射経路に偏光ビームスプリッタと1/2波長板とを備え、第1の光変調器にて強度変調されたレーザビームと第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームとを合成すると、簡単な構成で3ビームを合成することができるので、原盤露光装置の構成の簡略化を図ることができる。
【0017】
また、本発明は、前記第2のビーム分割手段として、0次光及び±1次光を発生し、かつ、前記0次光の強度を前記±1次光の強度の1/5以下にする回折格子を備えるという構成にした。
【0018】
このように、第2のビーム分割手段として回折格子を備えると、簡単な構成でレーザビームを分割することができるので、原盤露光装置の構成の簡略化を図ることができる。また、当該回折格子として0次光の強度が±1次光の強度の1/5以下になるものを備えると、0次光の悪影響を回避することができるので、ピットサイズ及びピット形状の変動を抑制することができ、高記録密度光ディスクのジッター及びクロストークを低減することができる。
【0019】
また、本発明は、前記第2のビーム分割手段として、2周波の信号を入力することにより入射レーザビームを2ビームに分割する音響光学偏向素子を備えるという構成にした。
【0020】
このように、第2のビーム分割手段として2周波の信号を入力することにより入射レーザビームを2ビームに分割する音響光学偏向素子を備えると、入力信号を変更することによって所定強度の分割レーザビームを任意に生成することができるので、ランド部における露光強度を任意に調整することができ、ピットサイズ及びピット形状の変動をより厳密に抑制することができて、高記録密度光ディスクのジッター及びクロストークをより一層低減することができる。
【0021】
また、本発明は、前記第2のビーム分割手段によって分割されたレーザビームの前記光ディスク原盤上における照射間隔を前記光ディスク原盤にカッティングされるピット列のピッチと等しくし、かつ、当該第2のビーム分割手段によって分割された各レーザビームの照射位置を前記ピット列の中心から等距離の位置に配置するという構成にした。
【0022】
このように、第2のビーム分割手段によって分割されたレーザビームの光ディスク原盤上における照射間隔を光ディスク原盤にカッティングされるピット列のピッチと等しくし、かつ、当該第2のビーム分割手段によって分割された各レーザビームの照射位置をピット列の中心から等距離の位置に配置すると、ランド部の中心に第2のビーム分割手段によって分割されたレーザビームを照射することができるので、ランド部におけるレーザビームの露光量を均一化することができ、ピットサイズ及びピット形状の変動を抑制することができて、高記録密度光ディスクのジッター及びクロストークを低減することができる。
【0023】
一方、本発明は、前記の目的を達成するため、原盤露光方法に関しては、レーザ光源と当該レーザ光源より出射されたレーザビームを光ディスク原盤に集光する対物レンズとを備えた原盤露光装置を用い、前記光ディスク原盤に一定ピッチのピット列をカッティングする原盤露光方法において、前記レーザ光源より出射されたレーザビームを分割し、当該分割されたレーザビームの一方を前記光ディスク原盤にカッティングしようとするピット列の露光信号にしたがって強度変調すると共に前記分割されたレーザビームの他方を前記露光信号とは逆位相の信号にしたがって強度変調し、当該逆位相の信号にしたがって強度変調されたレーザビームを前記ピット列の露光信号にしたがって強度変調されたレーザビームの照射部分の内周側及び外周側に照射し、カッティングしようとするピットの周囲における前記レーザビームのかぶりの強度を均一化するという構成にした。
【0024】
このように、レーザ光源より出射されたレーザビームを分割して、分割された各レーザビームをそれぞれ光ディスク原盤にカッティングしようとするピット列の露光信号及びそれと逆位相の信号にしたがって強度変調し、かつ、逆位相の信号にしたがって強度変調されたレーザビームをピット列の露光信号にしたがって強度変調されたレーザビームの内周側及び外周側に照射すると、カッティングしようとするピットの周囲における他のピットの配列状態に応じてランド部に対するレーザビームのかぶりを均一化することができるので、トラックピッチを狭小化してもピットサイズ及びピット形状の変動を抑制することができ、高記録密度光ディスクのジッター及びクロストークを低減することができる。また、CLV方式の原盤を露光する際にも、1周後に露光される隣接トラックの露光信号を正確に予測する必要がないので、複雑な信号補正回路を必要とせず、原盤露光装置の構成を簡略化できると共に、正確なピット列のカッティングが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る原盤露光装置の一例を図1乃至図4に基づいて説明する。図1は実施形態例に係る原盤露光装置の平面図、図2は実施形態例に係る原盤露光装置の要部側面図、図3は実施形態例に係る原盤露光装置に備えられる光変調器の機能と光ディスク原盤の露光状態とを示す説明図、図4は実施形態例に係る原盤露光装置に備えられる第2のビーム分割手段の構成を示す図である。
【0026】
これらの図に示すように、本例の原盤露光装置は、光ディスク原盤1と、当該光ディスク原盤1を回転駆動するターンテーブル2と、所定の位置に固定された固定テーブル3と、前記ターンテーブル2と前記固定テーブル3との間に配置された移動テーブル4とから主に構成されている。
【0027】
光ディスク原盤1は、例えばガラス板などをもって形成された平滑なディスク状基板の表面に、均一厚さのフォトレジスト層を形成してなる。
【0028】
ターンテーブル2は、前記光ディスク原盤1を着脱可能に装着し、装着された光ディスク原盤1を所要の回転駆動方式で回転駆動する。光ディスク原盤1の回転駆動方式には、CAV方式、ZCLV方式又はCLV方式があり、製造しようとする光ディスクの回転駆動方式に応じて選択される。
【0029】
固定テーブル3上には、レーザ光源11と、レーザ光源11から出射されたレーザビーム12の光路を変更する第1のミラー13と、レーザビーム12中に含まれるノイズを除去するノイズイータ14と、レーザビーム12を2分割する第1のハーフミラー(第1のビーム分割手段)15と、ハーフミラー15によって分割されたレーザビーム16を光ディスク原盤1にカッティングしようとするピット列の露光信号にしたがって強度変調する第1の光変調器17と、前記ハーフミラー15によって分割されたレーザビーム18を前記露光信号とは逆位相の信号にしたがって強度変調する第2の光変調器19と、レーザビーム18の偏光軸を90度傾ける1/2波長板20と、レーザビーム16の光路を移動テーブル4側に変更する第2のミラー21と、レーザビーム18の光路を移動テーブル4側に変更する第3のミラー22とからなる固定光学系が搭載される。
【0030】
図3に、露光信号S1と逆位相の信号S2との関係を示す。露光信号S1は、光ディスク原盤1のフォトレジスト層にピットをカッティングするためのレーザビームを生成する信号であり、逆位相の信号S2は、ランド部におけるフォトレジスト層の露光強度を調整するためのレーザビームを生成する信号である。図3の例においては、露光信号S1が、11Tの信号と3Tの信号との組合せによって構成されている。一方、逆位相の信号S2は、露光信号S1のオン期間でオフに反転し、露光信号S1のオフ期間でオンに反転するように極性が調整されると共に、露光信号S1のオン期間と逆位相の信号S2のオン期間とが時間的に重ならないように、逆位相の信号S2の立上がりのタイミングが露光信号S1の立ち下がりのタイミングよりも遅延され、かつ、逆位相の信号S2の立下がりのタイミングが露光信号S1の立ち上がりのタイミングよりも速められている。逆位相の信号S2の立上がり・立ち下がりのタイミングは、第2の光変調器19に備えられた信号削り回路によって調整される。
【0031】
なお、前記第2の光変調器19にて強度変調されたレーザビーム18のレーザ強度は、光ディスク原盤1に形成されたフォトレジスト層を現像したときにピットが形成されない程度の低レベルに調整される。レーザビーム18のレーザ強度調整は、前記第2の光変調器19にて行うこともできるし、前記第2の光変調器19を通過したレーザビーム18の照射経路に減衰フィルタや波長板などのアッテネータを配置することによっても行うことができる。
【0032】
移動テーブル4上には、前記第2の光変調器19によって強度変調されたレーザビーム18を分割する第2のビーム分割手段23と、当該第2のビーム分割手段23によって分割されたレーザビーム24,25のビーム径を拡張するビームエキスパンダ26と、レーザビーム24,25の光路を変更する第4のミラー27と、レーザビーム16とレーザビーム24,25とを合成する偏光ビームスプリッタ28と、合成されたレーザビーム29を2分割する第2のハーフミラー30と、合成されたレーザビーム29を光ディスク原盤1のフォトレジスト層に集光する対物レンズ31と、合成されたレーザビーム29を受光し、対物レンズ31のデフォーカスを検出するフォーカス検出器32とからなる移動光学系が搭載される。この移動テーブル4は、前記対物レンズ31を前記光ディスク原盤1の半径方向に移送するように所定の範囲で往復駆動される。
【0033】
前記第2のビーム分割手段23としては、回折格子、ウェッジプリズム、又は複数のハーフミラーとミラーの組合せなどの光学部品のほか、図4に示すように、ドライバ回路41の入力端に2周波の信号f1,f2が入力された音響光学偏向素子42を用いることができる。このように、第2のビーム分割手段23として、2周波の信号f1,f2を入力することにより入射レーザビームを2ビームに分割する音響光学偏向素子42を備えると、回折格子やウェッジプリズムなどの光学部品を用いた場合とは異なり、入力信号f1,f2を変更することによって所定強度の分割レーザビームを任意に生成することができるので、ランド部における露光強度及び前記第2のビーム分割手段23によって分割されたレーザビーム24,25の間隔を任意に調整することができ、ピット列に形成されるピットのピット長及びスペース長をより厳密に制御することができる。なお、前記第2のビーム分割手段23として回折格子を用いる場合には、0次光の悪影響を回避するため、0次光の強度が±1次光の強度の1/5以下になる回折格子を用いることが特に好ましい。
【0034】
ランド部の中心に第2のビーム分割手段23によって分割されたレーザビーム24,25を照射し、ランド部におけるレーザビーム16,24,25の露光量を均一化するため、図3にハッチングで示すように、前記第2のビーム分割手段23によって分割されたレーザビーム24,25の光ディスク原盤1上における照射間隔dは、光ディスク原盤1にカッティングされるピット列のピッチpと等しくなるように調整され、また、当該レーザビーム24,25の光ディスク原盤1上における照射位置は、前記ピット列の中心からそれぞれ等距離の位置に配置される。
【0035】
以下、前記実施形態例に係る原盤露光装置を用いた光ディスク原盤の露光方法及びその効果を、図5及び図6を用いて説明する。図5は本発明に係る原盤露光方法を従来技術に係る原盤露光方法と比較して示す説明図、図6は本発明に係る原盤露光方法の効果を従来技術に係る原盤露光方法の効果と比較して示す表図である。
【0036】
本発明に係る原盤露光方法は、前記ターンテーブル2に前記光ディスク原盤1を装着し、前記対物レンズ31を当該光ディスク原盤1のカッティング開始位置に位置付ける。次いで、前記ターンテーブル2を起動して前記光ディスク原盤1を所要の回転駆動方式にて回転駆動すると共に前記レーザ光源11、ノイズイータ14、第1の光変調器17及び第2の光変調器19を起動し、レーザ光源11から出射されたレーザビーム12が安定した後、前記移動テーブル4を駆動して前記対物レンズ31を前記光ディスク原盤1の半径方向に移送する。
【0037】
ランド部にレーザビーム24,25を照射しない従来の技術においては、図5(a)〜(d)に示すように、カッティングしようとするピット102の周囲のピット配列に応じてカッティングしようとするピット102の周辺部分におけるフォトレジスト層の露光強度の分布が変動するため、カッティングされたピット102のサイズ及び形状の変動が大きくなる。
【0038】
即ち、図5(a)に示すように、記録トラック111にピット102をカッティングしようとする場合において、記録トラック111に隣接する先行トラック112に形成されるピット102a及び後行トラック113に形成されるピット102bが光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102の形成位置と重なり合わず、かつ、記録トラック111上でピット102の前後に形成されるピット102c,102dとピット102との間に大きなスペースが形成される場合には、各ピットの露光に伴って発生する低露光部103が互いに重なり合わないために低露光部103のかぶりが発生せず、ピット102が意図したサイズ及び形状に形成されやすい。
【0039】
ところが、図5(b)に示すように、後行トラック113に形成されるピット102bが光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102の形成位置と重なり合うと、ピット102bの周囲に発生する低露光部103とピット102の周囲に発生する低露光部103とが互いに重なり合って低露光部103のかぶりが発生するため、ピット102のピット幅が大きくなりやすい。
【0040】
また、図5(c)に示すように、後行トラック113に形成されるピット102bが光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102の形成位置と重なり合い、かつ、ピット102と記録トラック111上で当該ピット102の前後に形成されるピット102c,102dとの間のスペース長が小さい場合には、ピット102b,102c,102dの周囲に発生する低露光部103とピット102の周囲に発生する低露光部103とがそれぞれ互いに重なり合って低露光部103のかぶりが発生するため、ピット102のピット長及びピット幅がさらに大きくなりやすい。
【0041】
さらに、図5(d)に示すように、先行トラック112に形成されるピット102a及び後行トラック113に形成されるピット102bが光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102の形成位置と重なり合い、かつ、ピット102と記録トラック111上で当該ピット102の前後に形成されるピット102c,102dとの間のスペース長が小さい場合には、ピット102a,102b,102c,102dの周囲に発生する低露光部103とピット102の周囲に発生する低露光部103とがそれぞれ互いに重なり合って低露光部103のかぶりが発生するため、ピット102のピット長及びピット幅がより一層大きくなりやすい。
【0042】
これに対して、本発明に係る原盤露光方法は、ランド部にレーザビーム24,25を照射するので、図5(e)〜(h)に示すように、カッティングしようとするピット102の周囲のピット配列に関わりなく、カッティングしようとするピット102の周辺部分におけるフォトレジスト層の露光強度の分布を均一化することができ、カッティングしようとするピット102のサイズ及び形状の変動を抑制することができる。
【0043】
即ち、図5(e)に示すように、先行トラック112にピット102aを形成する際においては、先行トラック112と記録トラック111との間のランド部には、光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102aの形成位置と重なり合わない位置にレーザビーム24,25が照射され、補正露光部104aが形成される。また、記録トラック111にピット102を形成する際においては、先行トラック112と記録トラック111との間のランド部及び後行トラック113と記録トラック111との間のランド部には、光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102の形成位置と重なり合わない位置にレーザビーム24,25が照射され、補正露光部104bが形成される。さらに、後行トラック113にピット102bを形成する際においては、後行トラック113と記録トラック111との間のランド部には、光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102bの形成位置と重なり合わない位置にレーザビーム24,25が照射され、補正露光部104cが形成される。このとき、各ピットの露光に伴って発生する低露光部103は互いに重なり合わず、低露光部103のかぶりは発生しない。したがって、ピット102の周辺部分におけるフォトレジスト層の露光強度の分布が均一化されるので、レーザビーム16,24,25のレーザ強度を適宜調整することによって、ピット102を意図したサイズ及び形状に形成しやすくなる。
【0044】
また、図5(f)に示すように、後行トラック113に形成されるピット102bが光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102の形成位置と重なり合う場合には、ピット102bとピット102の間のランド部には補正露光部104bが形成されないが、ピット102bの周囲に発生する低露光部103とピット102の周囲に発生する低露光部103とが互いに重なり合って低露光部103のかぶりが発生するため、やはりピット102の周辺部分におけるフォトレジスト層の露光強度の分布が均一化される。したがって、この場合にも、レーザビーム16,24,25のレーザ強度を適宜調整することによって、ピット102を意図したサイズ及び形状に形成しやすくなる。
【0045】
さらに、図5(g)に示すように、後行トラック113に形成されるピット102bが光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102の形成位置と重なり合い、かつ、ピット102と記録トラック111上で当該ピット102の前後に形成されるピット102c,102dとの間のスペース長が小さい場合には、ピット102bとピット102の間のランド部、ピット102aとピット102cの間のランド部及びピット102aとピット102dの間のランド部には補正露光部104bが形成されないが、ピット102bの周囲に発生する低露光部103とピット102の周囲に発生する低露光部103、ピット102cの周囲に発生する低露光部103とピット102の周囲に発生する低露光部103及びピット102dの周囲に発生する低露光部103とピット102の周囲に発生する低露光部103とが互いに重なり合って低露光部103のかぶりが発生するため、やはりピット102の周辺部分におけるフォトレジスト層の露光強度の分布が均一化される。したがって、この場合にも、レーザビーム16,24,25のレーザ強度を適宜調整することによって、ピット102を意図したサイズ及び形状に形成しやすくなる。
【0046】
加えて、図5(h)に示すように、先行トラック112に形成されるピット102a及び後行トラック113に形成されるピット102bが光ディスク原盤1の半径方向に関してピット102の形成位置と重なり合い、かつ、ピット102と記録トラック111上で当該ピット102の前後に形成されるピット102c,102dとの間のスペース長が小さい場合には、ピット102の周囲に補正露光部104a,104bがまったく形成されないが、ピット102a,102b,102c,102dの周囲に発生する低露光部103とピット102の周囲に発生する低露光部103とがそれぞれ互いに重なり合って低露光部103のかぶりが発生するため、やはりピット102の周辺部分におけるフォトレジスト層の露光強度の分布が均一化される。したがって、この場合にも、レーザビーム16,24,25のレーザ強度を適宜調整することによって、ピット102を意図したサイズ及び形状に形成しやすくなる。
【0047】
図6(a)に示すように、従来技術に係る原盤露光方法を適用して光ディスク原盤にトラックピッチが0.32μmで、ピットピッチが60nmで3Tに相当するピットを露光した場合においては、光ディスク基板に形成されるピットのピット長が2.6T〜3.5Tの範囲でばらつくのに対して、図6(b)に示すように、本発明に係る原盤露光方法を適用して前記と同様のピットを露光した場合においては、光ディスク基板に形成されるピットのピット長のばらつきが2.8T〜3.3Tの範囲に縮小され、ジッターの軽減に効果があることがわかった。また、図6(a)に示すように、従来技術に係る原盤露光方法を適用して光ディスク原盤にトラックピッチが0.32μmで、ピットピッチが60nmで3Tに相当するピットを露光した場合においては、光ディスク基板に形成されるピットのピット幅が115nm〜147nmの範囲でばらつくのに対して、図6(b)に示すように、本発明に係る原盤露光方法を適用して前記と同様のピットを露光した場合においては、光ディスク基板に形成されるピットのピット幅のばらつきが143nm〜148nmの範囲に縮小され、記録密度の向上に効果があることがわかった。
【0048】
なお、前記実施形態例においては、3T信号に対応するピットを露光する場合を例にとって説明したが、他の信号に対応するピットを形成する場合についても同様の効果があることは勿論である。例えば、11T信号に対応するピットなどの長いピットを露光する場合において、当該ピットの前端部及び/又は後端部と隣接トラックのピットとが光ディスク原盤の半径方向に関して重なり合うと、従来技術に係る原盤露光方法を適用した場合には、図7に示すように、記録しようとするピットの前端部と後端部とが鉄アレイ状に膨らみ、前端部及び後端部におけるピット幅が中央部におけるピット幅よりも約4%も大きくなる。これに対して、本発明に係る原盤露光方法を適用した場合には、ピットの中央部におけるピット幅に対する前端部及び後端部におけるピット幅の増加を約2%に低減することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、レーザ光源より出射されたレーザビームを第1のビーム分割手段で分割して、それぞれ光ディスク原盤にカッティングしようとするピット列の露光信号及びそれと逆位相の信号にしたがって強度変調し、かつ、逆位相の信号にしたがって強度変調されたレーザビームを第2のビーム分割手段によってさらに分割して、ピット列の露光信号にしたがって強度変調されたレーザビームの内周側及び外周側に照射するので、カッティングしようとするピットの周囲における他のピットの配列状態に応じてランド部に対するレーザビームのかぶりを均一化することができ、トラックピッチを狭小化してもピットサイズ及びピット形状の変動を抑制することができて、高記録密度光ディスクのジッター及びクロストークを低減することができる。また、CLV方式の原盤を露光する場合にも、1周後に露光される隣接トラックの露光信号を正確に予測する必要がないので、複雑な信号補正回路を必要とせず、原盤露光装置の構成を簡略化できると共に、正確なピット列のカッティングが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例に係る原盤露光装置の平面図である。
【図2】実施形態例に係る原盤露光装置の要部側面図である。
【図3】実施形態例に係る原盤露光装置に備えられる光変調器の機能と光ディスク原盤の露光状態とを示す説明図である。
【図4】実施形態例に係る原盤露光装置に備えられる第2のビーム分割手段の構成を示す図である。
【図5】本発明に係る原盤露光方法を従来技術に係る原盤露光方法と比較して示す説明図である。
【図6】本発明に係る原盤露光方法の効果を従来技術に係る原盤露光方法の効果と比較して示す表図である。
【図7】長いピットの変形状態を示す光ディスクの要部平面図である。
【図8】低露光部の発生原理を示す説明図である。
【図9】かぶりの発生原理を示す説明図である。
【符号の説明】
1 光ディスク原盤
2 ターンテーブル
3 固定テーブル
4 移動テーブル
11 レーザ光源
15 第1のハーフミラー(第1のビーム分割手段)
17 第1の光変調器
19 第2の光変調器
23 第2のビーム分割手段
28 偏光ビームスプリッタ
31 対物レンズ
102a,102b,102c,102d ピット
103 低露光部
104a,104b 補正露光部

Claims (8)

  1. レーザ光源と、当該レーザ光源より出射されたレーザビームを光ディスク原盤に集光する対物レンズとを備えた原盤露光装置において、前記レーザ光源より出射されたレーザビームを分割する第1のビーム分割手段と、当該第1のビーム分割手段によって分割されたレーザビームの一方を前記光ディスク原盤にカッティングしようとするピット列の露光信号にしたがって強度変調する第1の光変調器と、前記第1のビーム分割手段によって分割されたレーザビームの他方を前記露光信号とは逆位相の信号にしたがって強度変調する第2の光変調器と、当該第2の光変調器によって強度変調されたレーザビームを分割し、分割された2つのレーザビームを前記第1の光変調器によって強度変調されたレーザビームの照射部分の内周側及び外周側に照射する第2のビーム分割手段とを備えたことを特徴とする原盤露光装置。
  2. 請求項1に記載の原盤露光装置において、前記第2の光変調器に信号削り回路を備え、当該第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームのオン期間と前記第1の光変調器にて強度変調されたレーザビームのオン期間とが時間的に重ならないようにしたことを特徴とする原盤露光装置。
  3. 請求項1に記載の原盤露光装置において、前記第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームの照射経路にアッテネータを備え、前記第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームのオン期間におけるレーザ強度を前記光ディスク原盤に設けられたフォトレジスト層の感度以下に調整することを特徴とする原盤露光装置。
  4. 請求項1に記載の原盤露光装置において、前記第1及び第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームの照射経路に偏光ビームスプリッタを備えると共に、前記第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームの照射経路に当該レーザビームの偏光軸を90度傾ける1/2波長板を備え、前記偏光ビームスプリッタにて前記第1の光変調器にて強度変調されたレーザビームと前記第2の光変調器にて強度変調されたレーザビームとを合成することを特徴とする原盤露光装置。
  5. 請求項1に記載の原盤露光装置において、前記第2のビーム分割手段として、0次光及び±1次光を発生し、かつ、前記0次光の強度を前記±1次光の強度の1/5以下にする回折格子を備えたことを特徴とする原盤露光装置。
  6. 請求項1に記載の原盤露光装置において、前記第2のビーム分割手段として、2周波の信号を入力することにより入射レーザビームを2ビームに分割する音響光学偏向素子を備えたことを特徴とする原盤露光装置。
  7. 請求項1に記載の原盤露光装置において、前記第2のビーム分割手段によって分割されたレーザビームの前記光ディスク原盤上における照射間隔を前記光ディスク原盤にカッティングされるピット列のピッチと等しくし、かつ、当該第2のビーム分割手段によって分割された各レーザビームの照射位置を前記ピット列の中心から等距離の位置に配置したことを特徴とする原盤露光装置。
  8. レーザ光源と当該レーザ光源より出射されたレーザビームを光ディスク原盤に集光する対物レンズとを備えた原盤露光装置を用い、前記光ディスク原盤に一定ピッチのピット列をカッティングする原盤露光方法において、前記レーザ光源より出射されたレーザビームを分割し、当該分割されたレーザビームの一方を前記光ディスク原盤にカッティングしようとするピット列の露光信号にしたがって強度変調すると共に前記分割されたレーザビームの他方を前記露光信号とは逆位相の信号にしたがって強度変調し、当該逆位相の信号にしたがって強度変調されたレーザビームを前記ピット列の露光信号にしたがって強度変調されたレーザビームの照射部分の内周側及び外周側に照射し、カッティングしようとするピットの周囲における前記レーザビームのかぶりの強度を均一化することを特徴とする原盤露光方法。
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