JP3908062B2 - プラズマトーチの構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマ形成用のガスを噴出するプラズマトーチの構造に関するものであり、特にタンディッシュ内の溶鋼を加熱・精錬するためのプラズマトーチの構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマトーチから噴出するガスを高温のプラズマガスとし、該プラズマガスを用いて金属プロセスにおける精錬、溶解、加熱、溶射、表面改質あるいは廃棄物等の処理を行う方法が知られている。カソードプラズマトーチと対象物との間あるいはアノードプラズマトーチと対象物との間にプラズマアークを発生させる移行型プラズマトーチと、プラズマトーチ内のアノードとカソードとの間にプラズマアークを発生させる非移行型プラズマトーチとが用いられている。移行型プラズマトーチにおいては、1対のプラズマトーチを用い、一方をアノードプラズマトーチ、他方をカソードプラズマトーチとしてプラズマアークを発生させることもできる。
【0003】
従来、図3に示すようなプラズマトーチの構造が知られていた。図3は特開平7−303970号公報の図2に基づいている。カソードプラズマトーチを用いた移行型プラズマトーチの場合、カソード電極端15と先端ノズル14の間でまずプラズマアーク(パイロットアーク22)を発生させ、そのプラズマアークを加熱対象物23に移行させることによりカソード電極端15と加熱対象物23との間にプラズマアーク(メインアーク24)を発生させる。この場合加熱対象物23がアノードの役割をする。アノードプラズマトーチを用いた場合は、トーチの先端がアノード電極端となり、同様に加熱対象物との間にプラズマアークを発生させる。
【0004】
タンディッシュ内溶鋼の加熱装置の1種類として図2に示すようにツイントーチ加熱装置と呼ばれるものが提供されている。容器30としてのタンディッシュの蓋26に設けられた天井壁に、プラズマ形成用のガスを噴出する1対のプラズマトーチ(1、1a)が挿入、進退自在に設けられている。プラズマトーチの一方をアノードプラズマトーチ1a、他方をカソードプラズマトーチ1とする。直流電源装置27の正側にアノードプラズマトーチ1aを接続し、負側にカソードプラズマトーチ1を接続し、各プラズマトーチと溶鋼(溶融金属28)との間にプラズマアークを形成することにより溶鋼を加熱する。電流はアノードトーチ1aの電極端からメインアークを経由して加熱対象物に流れ、更にカソードトーチ1のメインアークを経由してカソードトーチ1の電極端に流れる。このような加熱装置31は、例えば特開平8−5247号公報に開示されている。
【0005】
プラズマトーチのカソードおよびアノードの電極端は、プラズマアークによる熱により高温になる。例えば図3に示すカソードプラズマトーチにおいて、カソード電極端15は通電用銅チューブ18に接続され、通電用銅チューブ18の内部には冷却水仕切管19が配置されて二重管構造になった冷却水通路20を形成して冷却水が循環し、カソード電極端15を冷却する。また、先端ノズル14はカソード電極端15の周囲を囲むように配置され、先端ノズル14の上部に二重管となったノズル筒16が配置され、ノズル筒16の外筒部(ノズル外筒)と内筒部(ノズル内筒)との間に冷却水仕切筒17が配置されて三重管構造になった冷却水通路20を形成しており、ノズル筒16の内部を冷却水が循環して先端ノズル14を冷却する。また、ノズル筒16と通電用銅チューブ18との間にはアルゴンガス供給路13が設けてある。
【0006】
プラズマトーチを長時間使用すると、カソードあるいはアノードの電極端15は熱により溶損するため取り替える必要がある。プラズマトーチは軸方向に長いものや曲管を持っているものもあり、製作コストを下げるため、組み立て・部品交換を容易にするため、部品の接合に互換性を持たせるためといったような理由により、溶損した先端部のみを取り替えられるようにねじ構造でつなげた構造となっている。図3においては、電極端15と通電用銅チューブ18との間がねじ部21によって結合されている。同図の場合は、先端ノズル14とノズル筒16の間もネジ部21によって接合されているが、特にツイントーチ加熱装置においては、先端ノズル14とノズル外筒16との接合部に他方のトーチとの間でプラズマアークが発生するサイドアークが発生しやすく、ねじ止め構造として交換可能とする部分は、電極端15のみでしか採用できない。
【0007】
ノズル筒2の先端に配置される先端ノズル14は、上記のようにパイロットアーク22を発生させる電極として機能するほか、プラズマアークの安定性のためにも必要である。この先端ノズル14はアークからの輻射熱を受けるため熱伝導性の良好な銅が使用される。そして、先端ノズル14の上部に連結されているノズル外筒及びノズル内筒は、薄肉化による冷却水圧損の低減と耐食性と強度確保の点からステンレス鋼管が採用されている。そして、先端ノズルとノズル内筒及びノズル外筒との接合部においては、上述のとおり通常はねじ止め構造とはせず、そのかわりに銀ロウによって接合されていた。ロウ接合は、接合する母材である先端ノズルとノズル内外筒とを溶融させることなく、接合部の間隙中に溶融した銀ロウを流入させ、冷却・凝固させて接合を行う接合方法であるため、接合に伴う母材の性質劣化が少ない。そのためロウ接合は、銅製の先端ノズルとステンレス鋼製のノズル内外筒という異種金属同士の接合に好適である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
銀ロウ接合においては、接合界面に流し込んだ銀ロウが十分に行き渡り、銀ロウが銅製先端ノズル7及びステンレス鋼製ノズル筒と良好に接合することが必要である。一方、ステンレス材料は、ロウ付けの際の加熱時に表面に厚い安定な不動態皮膜(Cr23)を生じることで、ロウが流れ込みにくくなりやすい。そして、銀ロウ接合は大気中で通常ノズル内筒側を接合した後に外筒側の接合作業を実施する。そのため、特にノズル外筒側の接合部の接合状況は目視で確認することができない状態となり、接合部が銀ロウによって完全に接合されたか否かの確認ができず、不安があった。銀ロウでの接合が不完全な場合、溶鋼過熱中のアークによる輻射熱により接合部に熱応力が発生し、接合部が部分的に外れ、ノズル筒2内を循環する冷却水の水漏れが発生するという問題があった。
【0009】
本発明は、プラズマトーチのノズル筒における先端ノズルとノズル内筒外筒との接合部において、健全な接合を実現することの可能なプラズマトーチの構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)プラズマ形成用のガスを噴出するプラズマトーチにおいて、前記プラズマトーチの中央部にプラズマアーク発生用電極端9を配設し、該アーク発生用電極端9を包囲してノズル筒2を配設し、ノズル筒2は先端ノズル7とノズル外筒部とノズル内筒部を有し、先端ノズル7とノズル外筒部との接合部は熱間等方圧加圧接合されてなることを特徴とするプラズマトーチの構造。
(2)前記ノズル外筒部はノズル外筒3と接合部材4によって構成され、先端ノズル7と接合部材4との接合部が熱間等方圧加圧接合されてなり、接合部材4とノズル外筒3との接合部が溶接接合されてなることを特徴とする上記(1)に記載のプラズマトーチの構造。
(3)先端ノズル7とノズル内筒部との接合部は熱間等方圧加圧接合されてなることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のプラズマトーチの構造。
(4)前記ノズル内筒部はノズル内筒5と接合部材4によって構成され、先端ノズル7と接合部材4との接合部が熱間等方圧加圧接合されてなり、接合部材4とノズル内筒5との接合部が溶接接合されてなることを特徴とする上記(3)に記載のプラズマトーチの構造。
【0011】
【発明の実施の形態】
高圧ガス(Ar、窒素などの不活性ガス)を圧力媒体として、高い等方圧力と高温との相乗効果を利用して、異種金属同士の拡散接合、あるいは反応焼結や緻密化を行う方法として、熱間等方圧加圧法(Hot Isostatic Pressing:HIP法)が知られている。HIP法による異種金属同士の拡散接合の場合、高圧ガスを圧力媒体として金属同士を密着し、高温雰囲気において金属接触部での拡散接合がなされる。異種金属同士を接合する際、溶融溶接では脆い金属間化合物の生成など冶金的な問題が生じることがある。それに対し、熱間等方圧加圧法による拡散接合を用いた場合には、加圧によって母材を密着させ、母材の融点以下の温度条件で、接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合を行うので、異種金属同士の接合であっても健全な接合部を形成することが可能になる。
【0012】
本発明のプラズマトーチの構造を図1を用いて説明する。
通電用銅チューブ11を取り囲むように、ノズル筒2が配置される。ノズル筒2は、外筒部(ノズル外筒3)、内筒部(ノズル内筒5)及び冷却水仕切筒6による三重管構造となっており、先端には先端ノズル7が配置される。本発明のノズル筒2においては、ノズル外筒部を構成するステンレス鋼部材と先端ノズル7(銅製)との接合部あるいはノズル内筒部を構成するステンレス鋼部材と先端ノズル7の接合部について、熱間等方圧加圧接合部41を形成する。
【0013】
ノズル外筒部がステンレス鋼製のノズル外筒3によって構成される場合、ノズル外筒3の先端部と先端ノズル7との接合部を熱間等方圧加圧接合する。ノズル内筒部についても同様である。
【0014】
一方、ノズル外筒3あるいはノズル内筒5は、いずれも長尺であり、長すぎるために熱間等方圧加圧装置内に装入できない場合がある。本発明においては、ノズル外筒部をステンレス鋼製のノズル外筒3とステンレス鋼製の接合部材4とで構成し、ノズル外筒3と先端ノズル7とを接合部材4を介して接合する方法を採用することができる。まずは接合部材4と先端ノズル7との接合部を熱間等方圧加圧接合する。接合部材4は小さな部材として形成することができるので、接合部材4と先端ノズル7とを組み合わせた部材は容易に熱間等方圧加圧装置内に装入することが可能になる。
【0015】
熱間等方圧加圧接合に当たっては、まず先端ノズル7と接合部材4とを組合わせた上で型枠の中に入れ、全体を真空チャンバー内に入れて、内部を減圧して先端ノズル7と接合部材4の接合部を減圧した上で型枠を密閉する(キャニング)。そしてこの型枠を熱間等方圧加圧装置内に装入し、装置内を高温・高圧状態に保持する。先端ノズル7と接合部材4との組み合わせにおいて、両者の接合部は減圧され、両者の外側は高圧に加圧されているので、圧力によって両者の接合部が密着し、密着面を通して原子の拡散により接合が進行していく。
【0016】
接合前処理として、素材接合面の機械加工及び有機溶剤による脱脂・洗浄処理を実施する。次に先端ノズル7用素材と接合部材4用素材とを組合わせた上でパイプ状型枠の中に入れ、真空チャンバー内に挿入する。真空チャンバー内を真空にし、接合面間隙の空気を排出することで、より強固な接合が得られる。真空度としては、10-1〜10-4Torrに排気処理される。この真空状態で電子ビーム溶接にて型枠に蓋をシール溶接して密閉化する。ここまでの前処理が終わった状態で、熱間等方圧加圧装置内に型枠を装入し、熱間等方圧加圧処理を行う。拡散溶接の処理温度は、一般に素材の融点(絶対温度)の5〜8割の温度で、雰囲気圧力をアルゴンガス等の不活性ガスを用いて10〜200MPaまで昇圧させる。処理時間としては、昇温・昇圧を同時に行って目標値に達するまでの時間となり、1〜5時間程度が一般的である。
【0017】
パイプ状のステンレス鋼製品と銅製品とを熱間等方圧加圧装置で拡散接合する場合、円筒面を接合面とすることによって、突合わせ面を接合面とした場合より広い接合面が得られるので、気密性と接合強度に優れたものが製作できる。また等圧加圧による接合であるため、材料の変形がほとんど生じないという利点もある。結局、最終製品の接合強度としては、常温から800℃までの高温においても、母材以上の強度が得られる。
【0018】
先端ノズル7とノズル内筒外筒との接合面、あるいは先端ノズル7と接合部材4との接合面は円環状の形状をなしているので、従来は均一に加圧しつつ加熱することが困難であったが、本発明においては熱間等方圧加圧接合を採用しているので、接合部を均一に加圧しつつ高温保持することが可能となり、良好な拡散接合部を形成することができる。その結果、先端ノズル7と接合部材4との間の熱間等方圧加圧接合部41においては、先端ノズルも接合部材も、それぞれの母材部に比較して結晶粒が小さくなる。
【0019】
接合部材4と先端ノズル7との間を熱間等方圧加圧接合して熱間等方圧加圧接合部41を形成した後、ノズル外筒3と接合部材4との接合部について溶接接合して溶接接合部42を形成する。ノズル外筒3と接合部材4とはともにステンレス鋼であって同種溶接となるので、通常の溶接接合によって容易に接合することができ、かつ健全な接合部を形成することができる。溶接方法としては、一般的にはTIG(タングステンイナートガスアーク)溶接を、場合によっては被覆アーク溶接を採用することができる。
【0020】
ノズル内筒部と先端ノズル7との接合についても、ステンレス鋼製のノズル内筒5とステンレス鋼製の接合部材4とを用いて、上記ノズル外筒部と同様に接合部を形成することができる。
【0021】
ノズル筒2の組み立てに際しては、まず先端ノズル7にノズル内筒部用の接合部材4とノズル外筒部用の接合部材4とを組み付け、組み付けた部材を熱間等方圧加圧装置に装入し、各接合部を熱間等方圧加圧接合する。次に内筒部用の接合部材4にノズル内筒5を組み付け、接合部材4とノズル内筒5との接合部を外周側から溶接接合する。さらに外筒部用の接合部材4にノズル外筒3を組み付け、接合部材4とノズル外筒3との接合部を外周から溶接接合する。その後、ノズル外筒3とノズル内筒5との間に冷却水仕切筒6を装入することにより、三重管としてのノズル筒2が完成する。
【0022】
以上のように形成したノズル筒2の内周側に、プラズマトーチ用電極を配設する。電極は、通電用銅チューブ11とその先端に配設する筒状電極8によって構成される。筒状電極8の先端がアーク発生のための電極端9となる。通電用銅チューブ11内には冷却水仕切筒10を装入し、給水路12を形成する。通電用銅チューブ11の先端と筒状電極8にはねじ部21が存在し、通電用銅チューブのねじ部と筒状電極8のねじ部とを螺合することにより、筒状電極8が通電用銅チューブ11に結合される。筒状電極8の先端が電極端9を形成し、通電用銅チューブ11に通電することにより、電極端9と加熱対象物との間にメインアークを形成する。通電用銅チューブ11及び筒状電極8は、共に銅製とする。
【0023】
筒状電極8の外周と、ノズル筒2のノズル内筒5との間がアルゴンガス供給路13となり、電極端9と先端ノズル7との間からアルゴンガスが供給される。
【0024】
プラズマ加熱開始時には、電極端9と先端ノズル7との間に電圧を印加すると共にアルゴンガス供給路13にアルゴンガスを供給してパイロットアークを発生させ、その後電極端9と加熱対象物との間に電圧を印加しつつ電極端と先端ノズル間の電圧を切ることで、プラズマアークを電極端9と加熱対象物との間に移行させる。カソードトーチ1においては、電極端9がカソード、加熱対象物がアノードの役割をし、アノードトーチ1aにおいては、電極端9がアノード、加熱対象物がカソードの役割を果たす。
【0025】
プラズマ加熱は、カソードトーチ1あるいはアノードトーチ1aのいずれか一方のみを用いて行うことができる。カソードトーチ1のみを用いて溶融金属の加熱を行う場合を例にとると、溶融金属の容器底部にアノードを配置し、該アノードとカソードトーチ1の電極端9との間に電圧を印加することにより、電極端と溶融金属との間にプラズマアークを形成して溶融金属を加熱することができる。
【0026】
1対のプラズマトーチを準備し、その一方をカソードトーチ1、他方をアノードトーチ1aとして加熱を行うこともできる。直流電源装置27の正側にアノードトーチ1aの電極端9を接続し、負側にカソードトーチ1の電極端9を接続し、各プラズマトーチと加熱対象物との間にプラズマアークを形成することにより加熱を行う。電流はアノードトーチ1aの電極端9からメインアークを経由して加熱対象物に流れ、更にカソードトーチ1のメインアークを経由してカソードトーチ1の電極端9に流れる。
【0027】
本発明のプラズマトーチは、図2に示すタンディッシュ内の溶鋼加熱に用いると特に好ましい。容器30としてのタンディッシュの蓋26に設けられた天井壁に、カソードプラズマトーチ1及びアノードプラズマトーチ1aが挿入され、進退自在に設けられている。タンディッシュ内のトーチが設置された部分が加熱室25となる。直流電源装置27の正側にアノードプラズマトーチ1aを接続し、負側にカソードプラズマトーチ1を接続し、各プラズマトーチと溶鋼(溶融金属28)との間にプラズマアークを形成することにより溶鋼を加熱する。電流はアノードトーチ1aの電極端からメインアークを経由して溶鋼に流れ、更にカソードトーチ1のメインアークを経由してカソードトーチ1の電極端に流れる。
【0028】
加熱対象物としては、溶鋼をはじめとする溶融金属のみならず、廃棄物等を加熱することも可能である。
【0029】
【実施例】
次に本発明の一実施の形態に係る溶鋼の加熱用のプラズマトーチを適用した溶鋼の加熱装置の実施例について説明する。
【0030】
図2に示すように、最大40トンの溶鋼をタンディッシュに入れた状態で、アノードトーチとカソードトーチとにより加熱を実施し、従来のトーチと図1に示すような本発明によるトーチとの耐久性の比較試験を実施した。
【0031】
トーチ中心部の通電用銅チューブ11と筒状電極8との接合部は、従来トーチも本発明トーチもともにねじ接合部43による接合とした。トーチ外周におけるノズル筒3先端の先端ノズル7の接合について、従来トーチにおいてはステンレス鋼製のノズル外筒2と銅製の先端ノズル7の接合部、ノズル内筒5と先端ノズル7との接合部について、いずれも銀ロウ接合によって接合を行った。
【0032】
本発明のトーチのノズル筒2において、ステンレス鋼製のノズル外筒3と銅製の先端ノズル7との間にステンレス鋼製の接合部材4を装入し、同様にステンレス鋼製のノズル内筒5と銅製の先端ノズル7との間にもステンレス鋼製の接合部材4を装入した。まず先端ノズル7と2種の接合部材4との接合部を熱間等方圧加圧接合による熱間等方圧加圧接合部41とした。
【0033】
まず、接合面の前処理として、有機溶剤により、2つの接合部の脱脂・洗浄作業を行った。次いで先端ノズル7と接合部材4とを組合わせた上で型枠の中に入れ、全体を真空チャンバー内に入れて、内部を5×10-4Torr以上に減圧して先端ノズル7と接合部材4の接合部を減圧し、電子ビーム溶接にて型枠に蓋をシール溶接して密閉した(キャニング)。そしてこの型枠を熱間等方圧加圧装置内に装入し、装置内を高温・高圧状態に保持した。熱間等方圧加圧接合条件としては、圧力媒体としてArガスを用い、圧力を100MPa、温度を銅の融点1356Kの79%に相当する1075Kとし、時間を2時間として拡散接合を行った。
【0034】
その後、ノズル内筒5を接合部材4と連結し、接合部をTIG溶接による溶接接合部42とした。さらにノズル内筒3を接合部材4と連結し、同様に接合部をTIG溶接による溶接接合部42とした。
【0035】
従来のトーチ10本と今回のトーチ10本とで同じ量の冷却水及びアルゴンガスを流し、またほぼ同一の最大電流値7000[A]、平均電流値4000[A]となるように運転を実施した。
【0036】
従来トーチの場合は、80%のトーチが平均5.6時間でノズル筒2のノズル外筒3と先端ノズル7との接合部、あるいはノズル内筒5と先端ノズル7との接合部において水漏れが発生して使用不可能になった。残り20%のトーチは接合部からの水漏れ発生はなく、平均192時間後に先端ノズルの銅の溶損により水漏れして使用不可能となった。
【0037】
それに対し、本発明によるトーチの場合は、接合部からの水漏れは全くなく、先端ノズルの銅の溶損による水漏れに起因してノズル交換が発生し、寿命は平均193時間と従来の4.5倍に改善された。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、プラズマトーチのノズル筒における銅製の先端ノズルとステンレス鋼製のノズル内筒外筒との接合部において、熱間等方圧加圧接合を用いることにより、従来の銀ろう付けと比較し、接合部の健全性を改善することができ、プラズマトーチの寿命を向上することができる。
【0039】
本発明はまた、先端ノズルとノズル内筒外筒との間に接合部材を配置することにより、熱間等方圧加圧装置に容易に装入して接合を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカソードトーチを示す縦断面図である。
【図2】本発明によるタンディッシュ内溶鋼加熱装置を示す断面図である。
【図3】従来のカソードトーチを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 プラズマトーチ(カソードトーチ)
1a アノードトーチ
2 ノズル筒
3 ノズル外筒
4 接合部材
5 ノズル内筒
6 冷却水仕切筒
7 先端ノズル
8 筒状電極
9 電極端
10 冷却水仕切筒
11 通電用銅チューブ
12 給水路
13 アルゴンガス供給路
14 先端ノズル
15 電極端
16 ノズル内外筒
17 冷却水仕切筒
18 通電用銅チューブ
19 冷却水仕切筒
20 冷却水通路
21 ネジ部
22 パイロットアーク
23 加熱対象物
24 メインアーク
25 加熱室
26 蓋
27 加熱装置
28 溶融金属
29 注入ノズル
30 容器
41 熱間等方圧加圧接合部
42 溶接接合部
43 ねじ接合部

Claims (4)

  1. プラズマ形成用のガスを噴出するプラズマトーチにおいて、前記プラズマトーチの中央部にプラズマアーク発生用電極端を配設し、該アーク発生用電極端を包囲してノズル筒を配設し、該ノズル筒は先端ノズルとノズル外筒部とノズル内筒部を有し、先端ノズルとノズル外筒部との接合部は熱間等方圧加圧接合されてなることを特徴とするプラズマトーチの構造。
  2. 前記ノズル外筒部はノズル外筒と接合部材によって構成され、先端ノズルと接合部材との接合部が熱間等方圧加圧接合されてなり、接合部材とノズル外筒との接合部が溶接接合されてなることを特徴とする請求項1に記載のプラズマトーチの構造。
  3. 前記先端ノズルとノズル内筒部との接合部は熱間等方圧加圧接合されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマトーチの構造。
  4. 前記ノズル内筒部はノズル内筒と接合部材によって構成され、先端ノズルと接合部材との接合部が熱間等方圧加圧接合されてなり、接合部材とノズル内筒との接合部が溶接接合されてなることを特徴とする請求項3に記載のプラズマトーチの構造。
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