以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。本発明の吸収性物品には例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
本発明の吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。表面シート及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば表面シートとしては、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
図1及び図2には本発明に係る吸収体の一実施形態の模式図が示されている。本実施形態の吸収体1は、十分な吸収容量を有しながらも、薄型で低坪量であることによって特徴付けられる。そのような特徴を有する吸収体1は、高吸収性ポリマー3を含む長繊維のウエブ(以下、ウエブ2という)、天然パルプ及び/又は合成繊維の積繊層又は不織布(以下、これらを総称して積繊層4ともいう)、並びにウエブ2及び積繊層4を被覆する繊維材料のシート(以下、繊維シート6ともいう)を備えて構成されている。図1及び図2においては、上面が着用者の肌に対向する面であり、下面が裏面シートに対向する面である。
図2は、図1における長手方向中央部での横断面の状態を示している。また図1においては、繊維シート6は省略されている。長繊維のウエブ2は、図1に示すように、吸収体1の長手方向に延びる縦長の矩形状をしている。積繊層4は、その長さがウエブ2の長さと一致するT字状をしている。T字状をしている積繊層4は、その横架部4aが、吸収性物品の前側部(つまり着用者の腹側部)に位置するように、吸収性物品に組み込まれる。ウエブ2は、T字状をしている積繊層4のT字の脚部4bの上側に該脚部4bと同幅で矩形状に配されている。
ウエブ2を構成する長繊維は親水性を有するものである。親水性を有する長繊維として本発明において用いられるものには、本来的に親水性を有する長繊維、及び本来的には親水性を有さないが、親水化処理が施されることによって親水性が付与された長繊維の双方が包含される。好ましい長繊維は本来的に親水性を有する長繊維であり、特にナイロンやアクリル、アセテートやレーヨンの長繊維が好ましい。とりわけ水分率が10%未満の繊維であるアセテートは湿潤しても嵩高性が保持されるので特に好ましい。アセテートとしては、セルローストリアセテート及びセルロースジアセテートが好ましい。ここで、水分率は25℃、相対湿度65%の環境下で測定した値である。
本明細書において親水性ウエブとは、その配向方向について測定されたクレム吸水度が好ましくは20mm以上、更に好ましくは30mm以上であるものを言う。クレム吸水度の測定は、例えば以下のように行われる。吸収体1の高吸収性ポリマーが含まれている部分から、高吸収性ポリマーを取り除き、吸収体1中における長繊維の捲縮率を維持した状態で、長繊維のウエブを用いて、クレム吸水度の測定を行う。測定には、0.3%の赤色2号(外添)で着色したイオン交換水を用いる。セットしてから30秒後の水面からの高さをクレム吸水度とする。なお、クレム吸水度は、JISP8141(1996)「紙及び板紙のクレム法による吸水度試験方法」に準じて測定する。測定方向は、吸収体1の長手方向のみを計測している。試験片は幅15mmとする。3点の試験片の測定値の平均値をもってクレム吸水度とする。試験片によっては幅方向でクレム吸水度にばらつきが出るが、その場合は幅方向で略平均(目視)した値を測定値とする。
吸収体から高吸収性ポリマーを取り除く操作を行うと、吸収体中でのウエブの密度ρ1と、高吸収性ポリマーが取り除かれた後のウエブの密度ρ2とが相違するおそれがある。そこで、吸収体から高吸収性ポリマーを取り除く前に、吸収体中でのウエブの密度ρ1を予め測定しておき、高吸収性ポリマーが取り除かれた後のウエブの密度ρ2が、予め測定された密度ρ1と同じになるように、高吸収性ポリマーが取り除かれた後のウエブの状態を調整した後に、クレム吸水度を測定する。密度ρ2を密度ρ1に合わせるためには、例えば高吸収性ポリマーが取り除かれた後のウエブを圧縮すればよく、その状態下にクレム吸水度を測定する。密度ρ1は、例えば0.03〜0.05g/cm3であった。
吸収体中でのウエブの密度ρ1(g/cm3)は、ウエブの坪量(g/cm2)と、ウエブの厚み(cm)とから算出される。ウエブの坪量は、吸収体から高吸収性ポリマーを取り除いた後の重量(g)と、面積(cm2)とから算出される。一方、ウエブの厚みは次の方法で測定される。吸収性物品から取り出された吸収体に予め24.5kPaの荷重を12時間掛けて、しわを伸ばした状態としておく。次に、吸収体上に5cm×5cmの大きさのアクリル板に重りを載せ、0.245kPaの荷重が加わった状態下に厚みを測定する。具体的には、カミソリ刃で吸収体の断面を切り出し、ウエブが含まれる吸収体の範囲を10倍の実体顕微鏡で観察し、吸収体中のウエブの厚みを測定する。測定点数は5点とし、その平均値をもって厚みとする。20%以上測定値が振れた場合はそのデータを削除し、別の測定値を追加する。
長繊維としては捲縮しているものを用いる。長繊維はその捲縮率(JIS L0208)が好ましくは10〜90%であり、更に好ましくは10〜60%、一層好ましくは10〜50%である。捲縮した長繊維からウエブを形成することで、該ウエブ中に高吸収性ポリマーを安定的に且つ多量に埋没担持することが容易となり、高吸収性ポリマーを多量に用いた場合であってもその極端な移動や脱落が起こりにくくなる。長繊維を捲縮させる手段に特に制限はない。また、捲縮は二次元的でもよく或いは三次元的でもよい。捲縮率は、長繊維を引き伸ばしたときの長さAと、元の長繊維の長さBとの差の、伸ばしたときの長さAに対する百分率で定義され、以下の式から算出される。
捲縮率=((A−B)/A)×100 (%)
元の長繊維の長さとは、長繊維が自然状態において、長繊維の両端部を直線で結んだ長さをいう。自然状態とは、長繊維の一方の端部を水平な板に固定し、繊維の自重で下方に垂らした状態をいう。長繊維を引き伸ばした時の長さとは、長繊維の捲縮がなくなるまで伸ばした時の最小荷重時の長さをいう。
長繊維の捲縮率は前述の通りであり、捲縮数は1cm当たり2〜25個、特に4〜20個、とりわけ10〜20個であることが好ましい。
長繊維の繊維径に特に制限はない。一般に1〜10dtex、特に1.7〜7.8dtexの長繊維を用いることで満足すべき結果が得られる。また、吸収体に耐よれ性やクッション性を付与したい場合は、特に2.1〜7.2dtexの繊維を用いることが好ましい。本発明において長繊維とは、繊維長をJIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した場合、好ましくは70mm以上、更に好ましくは80mm以上、一層好ましくは100mm以上である繊維のことをいう。ただし、測定対象とするウエブの全長が100mm未満である場合には、当該ウエブ中の繊維の好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは80%以上がウエブ全長にわたって延びている場合に、当該ウエブの繊維は長繊維であるとする。本発明で用いられる長繊維は一般に連続フィラメントと呼ばれるものである。また、連続フィラメントの束が一方向に配向したものは一般にトウと呼ばれている。従って、本発明における長繊維とは、連続フィラメントを含む概念のものである。また長繊維が配向したウエブとは、ウエブを形成する原料としての長繊維の束(いわゆるトウ)と、連続フィラメントのトウ層を含む概念のものである。また、該長繊維の一部が切断され繊維長が上記値を下回る繊維(切断された繊維)が、吸収体中に混合されても良い。
高吸収性ポリマーはウエブ中に埋没担持されている。埋没担持とは、高吸収性ポリマーが、捲縮した長繊維によって形成される空間内に入り込んで、着用者の激しい動作によっても該ポリマーの極端な移動や脱落が起こりにくくなっている状態を言う。このとき、長繊維は高吸収性ポリマーに絡みつき、あるいは引っ掛かりを生じ、あるいはまた、高吸収ポリマーは自身の粘着性により長繊維に付着している。長繊維が形成する空間は、外部から応力を受けても変形しやすく、また、長繊維全体で応力を吸収することができるので、空間が破壊されるのを防いでいる。高吸収性ポリマーは、その一部がウエブ2中に埋没担持されている。吸収体1の製造条件によっては高吸収性ポリマーのほぼ全部がウエブ2中に均一に埋没担持される場合もある。
高吸収性ポリマー3としては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状が不定形タイプ、塊状タイプ又は俵状タイプである場合には、ウエブに対して同量以上、10倍以下の坪量で埋没担持させることができる。また、球粒凝集タイプや球状タイプの場合には、ウエブに対して同量以上、5倍以下の坪量で埋没担持させることができる。これらの粒子形状は、特に高吸収量と薄型化を両立させたい場合は前者を、風合い(高吸収性ポリマーのしゃり感の低減)を重視する場合は後者を選択することが望ましい。高吸収性ポリマー3は、ウエブ2中に埋没担持されている。図1においては、高吸収性ポリマー3が、ウエブ2の厚み方向中央部から下部にわたる部位に偏倚して存在している状態が示されているが、吸収体1の製造条件によっては高吸収性ポリマー3のほぼ全部がウエブ2中に均一に埋没担持される場合もある。「均一」とは、吸収体1の厚み方向あるいは幅方向において、高吸収性ポリマーが完全に一様に配されている場合、及び吸収体1の一部を取り出した時に、高吸収性ポリマーの存在量のばらつきが、坪量で2倍以内の分布を持つ場合をいう。このようなばらつきは、吸収性物品を製造する上で、まれに高吸収性ポリマーが過剰に供給され、部分的に散布量が極端に高い部分が生じることに起因して生ずるものである。つまり前記の「均一」は、不可避的にばらつきが生ずる場合を包含するものであり、意図的にばらつきが生じるように高吸収性ポリマーを分布させた場合は含まれない。
高吸収性ポリマー3が図1に示すような状態で偏倚して存在している場合、液の拡散性が高く、吸収体全体での液の吸収性が高いことから、使い捨ておむつの吸収体として好適である。図1とは反対に、高吸収性ポリマー3が、ウエブ2の厚み方向中央部から上部にわたる部位に偏倚して存在している場合には、液のスポット吸収性が高いことから、軽失禁者用の失禁パッドや生理用ナプキンの吸収体として好適である。
長繊維は捲縮を有しているので、該長繊維は粒子を保持し得る多数の空間を有している。その空間内に高吸収性ポリマーが保持される。その結果、多量の高吸収性ポリマーを散布してもその極端な移動や脱落が起こりにくくなる。また着用者が激しい動作を行っても吸収体1の構造が破壊されにくくなる。使用する高吸収性ポリマーによって、捲縮率や使用する長繊維の量を適宜調節する。従来の吸収体においても繊維材料の量を多くすれば高吸収性ポリマーを多量に保持することは可能であったが、その場合には吸収体の坪量及び厚みが大きくなってしまう。これに対して本発明においては、繊維材料の量に対して高吸収性ポリマーの量を相対的に大きくすることが容易である。具体的には、吸収体全体で見たとき、好ましくは高吸収性ポリマーの坪量が長繊維の坪量以上、更に好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上となっている。これによって吸収体1の薄型化及び低坪量化が図られている。長繊維の坪量に対する高吸収性ポリマーの坪量の比率の上限値は、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落防止の観点から決定される。長繊維の捲縮の程度にもよるが、該上限値が10倍程度であれば、着用者が激しい動作を行っても高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落は起こりにくい。
高吸収性ポリマーの長繊維ウエブへの担持性は、ウエブによって形成される網目構造、及び高吸収性ポリマーの物性に関係している。網目構造の観点からは、本発明においては、ウエブの立体規則性、即ちウエブの捲縮率、繊度、密度等を制御することによって網目を制御し、高吸収性ポリマーの担持性が発現するようにしている。本発明においては、ウエブの構成繊維同士が接着されていないので、ウエブに形成される網目の大きさが、高吸収性ポリマーを保持可能な程度に変化し得る。ウエブにおける網目の大きさが変化し得ることで、不織布などの結合点を有する繊維集合体に高吸収性ポリマーを担持させる場合に比較して、ポリマーの担持性が高くなる。網目の大きさは、例えば(イ)繊維にテンションを加えた状態下に高吸収性ポリマーを散布した後、テンションを解放することにより、或いは(ロ)予めウエブのテンションを制御して特定の捲縮率を発現させた状態下に高吸収性ポリマーを散布し、更にウエブにテンションや圧力を加えることにより、制御することができる。
一方、高吸収性ポリマーの担持性に関係している高吸収性ポリマーの物性には形状、粒度分布、粒子サイズ、嵩密度、表面性状、内部摩擦係数、流動性、分散性、水分率、帯電性、付着性、凝集性などがある。これらのうち、高吸収性ポリマーの粒度分布及び粒子サイズについては、前述のウエブの網目構造と密接に関連している。高吸収性ポリマーの担持性は、更に着用者の動きによって吸収体に外力や振動が伝わったとき、吸収体内部におけるポリマーと長繊維との衝突回数にも影響を受ける。衝突回数の多い高吸収性ポリマーほど高吸収性ポリマーが長繊維の作り出す網目によってふるい分けが進み、結果担持性が低くなる。衝突回数は、ポリマーの流動性に影響を受けている。衝突回数は、流動性の高い高吸収性ポリマーほど多くなる。また、流動性が高く、一旦ウエブの拘束から逃れた高吸収性ポリマーは、その後容易に移動して、ウエブに担持され難くなる。
高吸収性ポリマーの流動性に関して、塊状タイプの高吸収性ポリマーと球粒凝集タイプのポリマーを比較すると、球粒凝集タイプの高吸収性ポリマーの方が、塊状タイプの高吸収性ポリマーよりも流動性が高い。その結果、球粒凝集タイプの高吸収性ポリマーよりも、塊状タイプの高吸収性ポリマーの方が担持性が高い。また球粒凝集タイプの高吸収性ポリマーは、表面が滑らかなので、繊維との摩擦や繊維への引っかかりの程度が塊状タイプの高吸収性ポリマーよりも低い。この観点からも、塊状タイプの高吸収性ポリマーの方が、球粒凝集タイプの高吸収性ポリマーよりも担持性が高い。このように、長繊維の捲縮率や高吸収性ポリマーの形状、長繊維と高吸収性ポリマーの混合比、長繊維ウエブへの高吸収性ポリマーの担持方法等を工夫することで、本発明の効果である吸収体を薄くすることができる。また、着用者の動作によっても吸収体の構造が破壊されにくく、高吸収性ポリマーの脱落が起こりにくい。
高吸収性ポリマーが埋没担持される程度の評価法として、次の方法を用いることができる。100mm×200mmに作製したウエブの長手方向中央部を切断し、100mm×100mmの試験片を得る。この切断面を真下にして、振幅5cmで1回/1秒の速度で左右に往復20回振動を与える。切断面からの落下したポリマーの重量を測定する。脱落した高吸収性ポリマーの重量が、試験片中に存在していた高吸収性ポリマーの全量に対して、25重量%以下、特に20重量%以下、とりわけ10重量%以下である場合、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落が起こり難くなっている状態であると言える。
高吸収性ポリマーが埋没担持される程度の評価として、前記の脱落評価試験に加えて次の方法によって測定される移動率も採用することができる。先ず、前記の脱落評価試験の測定に用いた100mm×100mmの測定サンプルの初期重量W0を予め測定しておく。脱落評価試験の測定が終わった後の測定サンプルを、長繊維の延びる方向と直交する方向にわたって切断し上下に二等分する。二等分された2つの分断片それぞれの重量を測定し、測定サンプルの初期重量W0の1/2から変化量の大きい方の分断片の重量を、移動率を算出するための重量W1として採用する。例えば2つの分断片の重量がW1’,W1”であるとすると、これらW1’,W1”が以下の式を満たす場合、W1=W1’とする。
|W1’−W0/2|>|W1”−W0/2|
このようにして決定されたW1の値と、測定サンプルの初期重量W0の値を用い、以下の式から移動率を算出する。
移動率(%)={1−W1/(W0/2)}×100
このようにして測定された移動率の値が40%以下、特に30%以下、とりわけ20%以下である場合、高吸収性ポリマーの移動が起こり難くなっている状態であると言える。
簡易的には、前記の脱落評価の試験を行った試験片に対して、次の評価法を行うこともできる。脱落評価の試験を行った試験片に対して、生理食塩水(0.9重量%NaCl)を50g均等に散布して、試験片の膨らみ方を目視観察する。試験片の厚みのばらつきが2倍以内の場合、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落が起こり難くなっている状態であると言える。
前記の各評価法においては、ウエブを水平方向で見たときに、高吸収ポリマーが同一坪量で散布してある領域から試験片をサンプリングする。
本実施形態に係る吸収体1においては、ウエブ2を構成する長繊維が、吸収体1の平面方向に一方向に配向している。長繊維が一方向に配向していることに起因して、吸収体1に液が吸収されると、該液は長繊維の配向方向へ優先的に拡散する。つまり吸収体の平面方向に優先的に拡散する。逆に、長繊維の配向方向と直交する方向への拡散は抑制される。長繊維が吸収性物品の長手方向に配向している場合には、吸収性物品の側部からの液漏れ(横漏れ)が効果的に防止される。
長繊維の配向は、長繊維の始点と終点とを結んだベクトルが平面方向に向いていればよく、始点と終点との間がねじれたり、絡み合うことなどにより、長繊維の一部が垂直方向(吸収体の厚み方向)に向いてしまうものを含む。より具体的には、長繊維の配向は、長繊維の始点と終点を結んだベクトルが平面方向に向いていればよく、始点と終点の間がねじれやからみあいなど、長繊維の一部が垂直方向(吸収体の厚み方向)に向いてしまうものを含む。より具体的には、長繊維の配向の程度は、配向度で表して1.2以上、特に1.4以上であることが好ましい。本実施形態において配向度はKANZAKI社のMicrowave molecular orientation analyzer MOA-2001Aを用いて測定する。サンプルサイズは長手方向100mm、幅50mmとし、3点の平均値を配向度とする。サンプルサイズがこの大きさに満たない場合は、複数のサンプルを互いに重ならないように配して測定する。
長繊維が吸収性物品の長手方向に配向している場合には、吸収体は、長繊維の配向方向を横切るような線状の接着ラインを有していないことが好ましい。かかる接着ラインが存在していると、長繊維の配向方向への液の円滑な拡散が遮断されてしまい、それに起因して横漏れが生じる可能性がある。
長繊維が吸収性物品の幅方向に配向している場合には、吸収性物品の長手方向への拡散が抑制され、スポット吸収性が得られる。この場合、側部からの液漏れ(横漏れ)を防止するために、吸収体は、長繊維の配向方向を横切るような線状の接着ラインを有していることが好ましい。「線状」とは、液体の浸透を抑制する連続的な線を意味し、個々のシール線等が途切れなく連続するものである必要はない。例えば、間欠のシール線を幾重にも重ねて並べることで液の移動を阻止できれば、それは線状である。また、線状は、直線状の他、曲線状、折れ線状であっても良い。線の幅は0.2〜15mm程度が好ましい。
接着ラインは、ウエブ2内にのみ形成されていても良い。或いは、繊維シート6を含む吸収体1の厚み方向全体にわたって接着ラインが形成されていても良い。更に、表面シートを含んで形成されていても良い。何れの場合においても、少なくとも吸収性物品の長手方向中央部に接着ラインが形成されていることが好ましい。また、接着ラインは、吸収体の幅方向の両側縁よりも外方に形成されていてもよい。このように接着ラインを設けることで、毛細管現象に起因して液がウエブ内を移動したとしても、接着ラインに突き当たってそれ以上の移動が阻止されるので、側部からの液漏れが生じにくくなる。
本実施形態に係る吸収体1においては、ウエブ2の下側に積繊層4が積層されている。積繊層4中には、高吸収性ポリマーが含まれていてもよく、或いは含まれていなくてもよい。積繊層4は、天然パルプ及び/若しくは合成繊維を堆積させて得られたものであるか、又は天然パルプ及び/若しくは合成繊維を原料とする不織布からなる。積繊層4が、天然パルプ及び/又は合成繊維を堆積させて得られたものである場合、該積繊層としては、従来の吸収性物品における吸収体として用いられているものと同様のものを用いることができる。積繊層4が、天然パルプ及び/又は合成繊維を原料とする不織布からなる場合、該不織布としては、例えばエアレイド不織布を用いることができる。ウエブ2の下側に積繊層4を配することで、該積繊層4が、排泄された液の一次ストック層として作用するので、液の排泄速度が高い場合(例えば尿が排泄される場合)であっても、液漏れを効果的に防止できる。この効果を一層顕著なものとする観点から、ウエブ2中に埋没担持される高吸収性ポリマーは、図1に示すように、ウエブ2の裏面シート対向面側に偏倚して埋没担持されていることが好ましい。更に、ウエブ2中に高吸収性ポリマーを含有させることに加えて、積繊層4中に高吸収性ポリマーを含有させることで、液漏れ効果が一層顕著なものとなる。その上、ウエブ2中に含有される高吸収性ポリマーが吸湿剤として作用するので、吸収性物品の着用中に、着装内の湿度上昇が抑えられ蒸れにくくなるという効果も奏される。
積繊層4に含まれる繊維が天然パルプである場合、該パルプとしては例えば木材パルプ等を用いることができる。積繊層4に含まれる繊維が合成繊維である場合、合成繊維としては、平均繊維長が好ましくは0.1〜30mm、更に好ましくは0.5〜25mm、一層好ましくは1.5〜15mmであって、一般に短繊維と呼ばれる範囲に属しているものを用いることができる。この繊維は、その繊度が好ましくは0.1〜7.8dtex、更に好ましくは0.5〜5.6dtex、一層好ましくは0.9〜3.4dtexである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の単独繊維及びこれら樹脂を2種以上含む複合繊維を用いることができる。種々の公知の機能性を付与できる点、あるいは繊維同士の溶融接着性、積繊層の嵩高性を付与できる点で複合繊維を用いることが好ましい。複合繊維としては芯鞘型、サイド・バイ・サイド型などが挙げられる。その合成繊維の断面形状は、円形、異形、C形、中空などである。単独繊維の場合は異形断面形状の繊維が好ましい。
合成繊維として合成パルプを用いることもできる。合成パルプとしては、例えばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を素材とするものが好適に用いられる。合成パルプは、その平均繊維長が、好ましくは0.1〜10mm、更に好ましくは0.5〜5mm、一層好ましくは0.9〜1.5mmであることが、木材パルプ等の天然パルプと同様に取り扱えるようになる点から好ましい。
天然パルプは一般に吸液性と拡散性が高い素材なので、これを用いることで、吸収体1の液吸収容量を高めることができる。一方、合成繊維は所定温度に加熱することで溶融する性質を有するので、これを含む積繊層4、或いは吸収体1全体を加熱して合成繊維を溶融させることで、吸収体全体としての強度を高めることができる。繊維として天然パルプを用いる場合には、積繊層4は、主として天然パルプを堆積させて得られたものからなる。一方、繊維として合成繊維を用いる場合には、積繊層4は、主としてエアレイド不織布等の不織布からなる。
積繊層4には、前述の繊維に加えて、レーヨンやコットン、リヨセル、テンセル、アセテート、ポリビニルアルコール繊維、アクリルなどの天然、又は(半)合成の親水性繊維の短繊維が含まれていてもよい。
図2に示すように、ウエブ2と積繊層4の積層体は、その全体が繊維シート6で被覆される。本実施形態においては1枚の繊維シート6が用いられている。繊維シート6は、積層体の上面及び左右両側面を被覆している。更に繊維シート6の左右両側部は、積層体の下面側に巻き込まれ、積層体の下面における幅方向中央部で重なり合っている。これによって、積層体の下面も繊維シート6によって被覆されている。
ウエブ2と積繊層4の積層体を繊維シート6によって被覆することで、該積層体中に含まれている高吸収性ポリマー3の極端な移動や脱落が効果的に防止される。更に、吸収体1全体としてのハンドリング性が良好になるので、それ単独で容易に搬送させることができる。また、所望の形状に容易に裁断あるいはくり抜くことができるようになるので、吸収性物品の形状に応じた吸収体を容易に製造できる。
特に、ウエブ2と積繊層4の積層体と、繊維シート6とを所定の手段によって接合することで、吸収体1は、該積層体と繊維シート6との接合、及び繊維シート6そのものの剛性に起因して剛性が高くなり、それによってハンドリング性が一層良好になる。ウエブ2及び積繊層4の積層体と、繊維シート6との接合手段としては、例えば接着剤による接着や、熱融着が挙げられる。
繊維シート6としては、高吸収性ポリマーの脱落を防止し得るに足る強度を有し、且つ排泄された液の透過を妨げない素材のものが適宜用いられる。例えばティッシュペーパーや液透過性を有する不織布等を用いることができる。不織布には、必要に応じて親水化処理や開孔処理を施してもよい。更にスリットを形成してもよい。或いは繊維シート6にエンボス加工を施して該シート6に柔軟加工を施してもよい。繊維シート6として不織布を用いる場合、該不織布としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を単独で用いた繊維、又はこれら複数の樹脂を用いた複合繊維等を原料とするものを用いることができる。例えばサーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布等が挙げられる。これらの不織布には、レーヨンやコットン、リヨセル、テンセル、アセテート、天然パルプ等の親水性繊維を共存させることもできる。
次に本実施形態に係る吸収体1の好ましい製造方法は次の通りである。先ず、先に述べた捲縮率を有する長繊維のトウを用意する。このトウに張力を加えて長手方向に引き伸ばした状態で搬送しながら所定手段によって開繊しウエブを得する。開繊には例えば圧縮空気を利用した空気開繊装置を用いることができる。長繊維は捲縮を有しているので、張力が加わることによって、該長繊維はその長手方向に容易に引き伸ばされた状態となる。開繊したウエブには、その上から高吸収性ポリマーが散布される。散布に際しては、開繊したウエブの搬送速度を減速した状態で、該ウエブをバキュームコンベア上に転写させる。ウエブは、該バキュームコンベア上で張力が緩められる。それによってウエブの引き伸ばし状態が解除され、長繊維は捲縮した状態に復帰する。またウエブは、その厚みが引き伸ばし状態時よりも大きくなり、高吸収性ポリマーの埋没担持性が向上する。この状態下に高吸収性ポリマーが散布される。捲縮状態となっている長繊維は、その繊維間に高吸収性ポリマーを収容し得る空隙を有する。この空隙に高吸収性ポリマーが埋没担持される。これにより、所望の坪量の高吸収性ポリマーを埋没担持させることができる。これに対して、ウエブに張力が加わって引き伸ばされた状態では、高吸収性ポリマーを収容するに足る十分な空隙が繊維間に形成されないので、高吸収性ポリマーを首尾良く埋没担持させることが容易でない。高吸収性ポリマーの散布と同時に、ウエブにおけるポリマーの散布面と反対側の面から吸引を行い、ポリマーの埋没担持を促進させることが効果的である。吸引の程度を適宜調整することで、ウエブの厚み方向におけるポリマーの分布を変えることができる。
前記の空気開繊装置に加えて又は該空気開繊装置に代えて、多数の円盤が軸周りに所定間隔おきに組み込まれたロールと、平滑な受けロールとの間にトウを通すことによっても該トウを開繊することができる。こうすることで、ウエブ内で長繊維の存在量や密度に濃淡が生じ、凹凸構造を得ることができる。このような凹凸構造を有するウエブ上に高吸収性ポリマーを散布することで、高吸収性ポリマーの一部が凹部に落ち込み、次いでウエブの幅を狭くすることで、隣り合う凸部の間に高吸収性ポリマーが挟み込まれてウエブ中に一層埋没する。
ウエブに高吸収性ポリマーが散布されるのに先立ち、ホットメルト粘着剤などの各種接着剤をウエブにロールコーター方式やスクリーン印刷方式等の接触方式やスプレー方式等の非接触方式により塗工する。塗工には、非接触で各パターンの切り替えが容易で接着剤の量を調整可能なスプレー方式の塗工が好ましく、散点状の接着を首尾良く行い得るスプレー塗工を用いることが好ましい。スプレー方式としては、スロットスプレー法、カーテンスプレー法、メルトブローン法、スパイラルスプレー法等が挙げられる。接着剤の塗工は、液の透過が妨げられない程度の低量であることが好ましい。この観点から、接着剤の塗工量は、3〜30g/m2、特に5〜15g/m2であることが好ましい。
接着剤の塗工完了後に、ウエブ上に高吸収性ポリマーを散布する。その結果、高吸収性ポリマーは、捲縮した長繊維によって形成された空間内に保持される。高吸収性ポリマーの散布後に、ロールやベルト等によりウエブを圧縮することで、高吸収性ポリマーのウエブへの埋没が一層顕著になる。このようにして、ウエブ中に高吸収性ポリマーが埋没担持される。
このようにして得られたウエブと、積繊装置等を用いて別途製造された積繊層とを積層する。この操作とは別に、繊維シートの一面にホットメルト粘着剤などの各接着剤を不連続に塗工する。そして塗工面にウエブと積繊層との積層体を載置して、該積層体を繊維シートで被覆する。このようにして吸収体1が得られる。
吸収体1が使い捨ておむつに用いられる場合には、該吸収体1が前記のどのような形態である場合でもその厚みが好ましくは1〜4mm、更に好ましくは1.5〜3mmという薄型のものである。生理用ナプキンに用いられる場合には、好ましくは0.5〜3mm、更に好ましくは1〜2mmである。失禁パッドとして用いられる場合には、好ましくは0.5〜4mm、更に好ましくは1〜3mmである。
前記の厚みを容易に実現させる観点から、本実施形態に係る吸収体1におけるウエブ2の坪量は、該ウエブ2が高吸収性ポリマーを含むか含まないかにかかわらず、該吸収体1を例えば使い捨ておむつに用いる場合には、120〜400g/m2、特に150〜300g/m2とすることが好ましい。生理用ナプキンに用いる場合には、35〜200g/m2、特に50〜150g/m2とすることが好ましい。失禁パッドに用いる場合には、35〜500g/m2、特に50〜400g/m2とすることが好ましい。
同様の観点から、本実施形態に係る吸収体1における積繊層4の坪量は、該積繊層4が高吸収性ポリマーを含むか含まないかにかかわらず、該吸収体1を例えば乳幼児用の使い捨ておむつに用いる場合には、20〜300g/m2、特に50〜200g/m2とすることが好ましい。生理用ナプキンに用いる場合には、20〜500g/m2、特に50〜300g/m2とすることが好ましい。失禁パッドに用いる場合には、20〜500g/m2、特に50〜300g/m2とすることが好ましい。
繊維シート6の坪量は、ウエブ2の坪量や積繊層4の坪量に比較すると、本発明において臨界的なものではない。繊維シート6の坪量は、5〜80g/m2程度、特に10〜50g/m2程度であれば十分である。
次に本発明の他の実施形態を図3ないし図6を参照しながら説明する。これらの実施形態に関し特に説明しない点については、先に述べた実施形態に関する説明が適宜適用される。また図3ないし図6において、図1及び図2と同じ部材には同じ符号を付してある。
図3(a)に示す実施形態の吸収体1は、積繊層4がT字状をしている。この形状は、図1に示す実施形態と同様である。一方、ウエブ2は、T字状をしている積繊層4の上側に、T字の横架部4aと同幅で矩形状に配されている。ウエブ2の長さは、積繊層4の長さと一致している。図3(a)に示す吸収体の変形例として、図3(b)に示すものが挙げられる。図3(b)に示す吸収体1は、T字の脚部4bくり抜き穴Hが設けられている以外は、図3(a)に示す吸収体と同様になっている。くり抜き穴Hは円形、楕円形、多角形等の形状であり得る。くり抜き穴Hを設ける目的は、吸収性物品の股間部における吸収体の柔軟性を向上させるためである。従来、股間部に幅広い吸収体が存在すると、吸収性物品の装着中に吸収体がよれて、吸収性能が不安定化し、また股下部のフィット性の欠如、肌トラブルの原因になるなどのデメリットがあった。単純にくり抜き穴Hを設けると吸収性能の低下が懸念されるが、積繊層4のくり抜き穴Hをウエブ2が覆い、あるいはくり抜き穴Hの裏面シート側にウエブ2が存在することで、吸収性の低下を補うことができる。着用中は、くり抜き穴Hは幅方向に圧縮を受け、一部が接触し、あるいは幅が狭くなり、拡散溝としての機能を果たすことができる。
図3(c)に示す実施形態の吸収体1では、積繊層4が、吸収性物品の股下部を挟んだ腹側部及び背側部にのみ配されており、且つ股下部には配されていない。各積繊層4は矩形をしている。一方、ウエブ2は、腹側部及び背側部に配された積繊層4の上側に、腹側部から背側部にわたって矩形状に連続して配されている。積繊層4とウエブ2とは同幅になっている。なお本実施形態においては、股下部の全部に積繊層4が配されていないが、これに代えて股下部の一部に積繊層4を配さないようにしてもよい。
図3(a)ないし(c)に示す実施形態の吸収体を備えた吸収性物品によれば、股下部が柔軟になり、吸収性物品が着用者の身体へフィットしやすくなる。これと共に吸収性能が高まる。
図4(a)に示す実施形態の吸収体1は、積繊層4がT字状をしている。T字状をしている積繊層4のT字の横架部4aは吸収性物品の腹側部に配されている。これと共にT字の脚部4bが、吸収性物品の腹側部から股下部にわたって配されている。且つ脚部4bは背側部には配されていない。一方、ウエブ2は、T字状をしている積繊層4のT字の脚部4bの上側に該脚部4bと同幅で、腹側部から背側部にわたって矩形状に配されている。
図4(b)に示す実施形態の吸収体1も、図4(a)に示す実施形態の吸収体と同様に、積繊層4がT字状をしている。但し、図4(a)に示す実施形態の吸収体と異なり、本実施形態における積繊層4は、T字の横架部4aが吸収性物品の背側部に配されている。これと共にT字の脚部4bが、吸収性物品の背側部から股下部にわたって配されている。且つ脚部4bは腹側部には配されていない。一方、ウエブ2に関しては、本実施形態と図4(a)に示す実施形態とは同じであり、T字状をしている積繊層4のT字の脚部4bの上側に該脚部4bと同幅で、腹側部から背側部にわたって矩形状に配されている。
図4(a)及び(b)に示す実施形態の吸収体を備えた吸収性物品によれば、吸収性物品のコンパクト化が図られる。また吸収性物品が着用者の身体へフィットしやすくなる。
図5に示す実施形態の吸収体1においては、積繊層4が、脚部4bが二股に分かれたT字状をしている。二股に分かれた脚部4bは、それぞれの幅が互いに同じになっている。また、その幅は、脚部4b,4b間の空間の幅とも同じになっている。T字状をしている積繊層4のT字の横架部4aは、吸収性物品の背側部に配されている。これと共にT字の脚部4bが、吸収性物品の背側部から股下部にわたって配されている。且つ脚部4bは腹側部には配されていない。一方、ウエブ2は、T字状をしている積繊層4のT字の脚部4bの上側に、腹側部から背側部にわたって矩形状に配されている。ウエブ2の幅は、二股に分かれた脚部4bそれぞれの外側の側縁間の距離と同じになっている。本実施形態の吸収体を備えた吸収性物品によれば、尿と便の吸収性を両立させることが容易となる。
図6(a)ないし(d)は、積繊層の他の形状を示している。なお、図6(a)ないし(d)においては上側が吸収性物品の腹側部に位置し、下側が背側部に位置する。図6(a)に示す積繊層は、吸収性物品の長手方向に延びる矩形の柱状部4cと、該柱状部4cの上端部の左右両側縁からそれぞれ側方に延出する一対の矩形の張り出し部4d,4dを備えた形状になっている。図6(b)に示す積繊層は、柱状部4cと、張り出し部4d,4dと、該柱状部4cの下端部の左右両側縁からそれぞれ側方に延出する一対の矩形の張り出し部4e,4eとを備えた形状になっている。図6(c)に示す積繊層は、柱状部4cと、張り出し部4d,4dと、該張り出し部4d,4dの側縁部から下方に垂下した矩形の垂下部4f,4fとを備えた形状になっている。図6(d)に示す積繊層は、長手方向の中央部が、内方に向かって湾曲している砂時計形状を有する柱状部4gと、該柱状部4gの上端部の左右両側縁からそれぞれ側方に延出する一対の矩形の張り出し部4d,4dを備えた形状になっている。図6(e)に示す積繊層は、柱状部4cと、該柱状部4cの長手方向中央部からそれぞれ側方に延出する一対の矩形の張り出し部4d,4dとを備えた形状になっている。このように、積繊層は、吸収性物品の長手方向に延びる矩形の柱状部と、該柱状部のから側方に延出する張り出し部を備えた種々の形状をとり得る。
本発明の吸収態は薄型であるため、高吸収性ポリマーが吸収体中で高密度に配合されている。また、身体へのフィット性や着用者の動きやすさを追及するため、吸収体は特に着用者の股下に対応する位置で幅が狭く(すなわち略T字型)なっている。このように、高濃度で高吸収性ポリマーが配合された幅の狭い吸収体で、吸収体への素早い液の取り込みと吸収体中での液の拡散性を確保するためには、本発明の各実施形態で用いる高吸収性ポリマーは以下のようなものを用いることが、吸収性能を維持向上させるために有効である。まず、その遠心脱水法による生理食塩水の吸水量が30g/g以上、特に30〜50g/gであることが、ポリマーの使用量の点や、液吸収後のゲル感が低下することを防止する点から好ましい。高吸収性ポリマーの遠心脱水法による吸収量の測定は以下のようにして行う。すなわち、高吸収性ポリマー1gを生理食塩水150mlで30分間膨潤させた後、250メッシュのナイロンメッシュ袋に入れ、遠心分離機にて143G(800rpm)で10分間脱水し、脱水後の全体重量を測定する。ついで、以下の式に従って遠心脱水法による吸水量(g/g)を算出する。
遠心脱水法による吸水量=(脱水後の全体重量−ナイロンメッシュ袋重量−乾燥時高吸収性ポリマー重量−ナイロンメッシュ袋液残り重量)/乾燥時高吸収性ポリマー重量
さらに、前述の各実施形態で用いられる高吸収性ポリマーは、以下の方法で測定される液通過時間が20秒以下、特に2〜15秒、とりわけ4〜10秒であることがゲルブロッキングの発生及びそれに起因する吸収性能の低下を防止し、また、吸収が間に合わないことに起因する液の素抜けによるもれの防止の点から好ましい。液通過時間の測定は以下の通りである。即ち、断面積4.91cm2(内径25mmφ)で底部に開閉自在のコック(内径4mmφ)が設けられた円筒管内に、該コックを閉鎖した状態で、該高吸収性ポリマー0.5gを生理食塩水とともに充填し、該生理食塩水により該高吸収性ポリマーを飽和状態に達するまで膨潤させる。膨潤した該高吸収性ポリマーが、沈降した後、該コックを開き、生理食塩水50mlを通過させる。該生理食塩水50mlが通過するのに要した時間を測定し、この時間を液通過時間とする。液通過時間は、高吸収性ポリマーのゲル強度を反映する指標のひとつである。液通過時間が短いものほどゲル強度は強くなる。
さらに、高吸収性ポリマーは、荷重下での通液速度が高いものを用いることがさらに好ましい。高吸収性ポリマーとしてその通液速度の値が30〜300ml/min、好ましくは32〜200ml/min、更に好ましくは35〜100ml/minのものを用いている。通液速度の値が30ml/min未満である場合、吸液によって飽和膨潤した高吸収性ポリマーどうしが荷重下に付着し合って、液の通過を妨げてしまいゲルブロッキング発生が起こりやすくなる。通液速度の値は大きければ大きいほどゲルブロッキングの発生を防止する観点から好ましい。通液速度が300ml/minを超える場合は、吸収体中の液の流れ性が高すぎて、特に一度に多量の排泄物が排泄された場合や、月齢の高い乳幼児或いは大人の例に見られるように排泄速度が速い場合、さらに吸収体の薄型化を図った場合に、液の固定が十分でなく、漏れを生じる可能性がある。また、一般に、通液速度を高めることは高吸収性ポリマーの架橋度を高くすることになり、高吸収性ポリマーの単位重量あたりの吸収容量が低くなり、多量の高吸収性ポリマーを使用しなければならない。これらの観点から通液速度の上限値は決定される。
高吸収性ポリマー21の通液速度の測定は、2.0kPa荷重下で行われる。この荷重は、吸収性物品を着用している間に吸収体に加わる体圧にほぼ相当する。通液速度の具体的な測定方法は、例えば特開2003−235889号公報の段落0005に記載されている。本発明においては、この公報に記載されている測定方法で用いられる試料の重量である0.200gを0.32gに変更して測定を行う。具体的には以下の手順で通液速度を測定する。
〔通液速度の測定方法〕
垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、金網(目開き150μm)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とが備えられた濾過円筒管を用意する。コックを閉鎖した状態で、該円筒管内に、850〜150μmの粒度に調整した測定試料0.32gを投入する。次に該円筒管内に0.9重量%の生理食塩水50mlを注ぐ。生理食塩水を注ぎ始めてから30分間静置した後、目開きが150μmで、直径が25mmである金網を先端に備えた円柱棒(21.2g)を、濾過円筒管内に挿入し、該金網と測定試料が接するようにする。1分経過後に、77.0gのおもりを円柱棒に取り付けて測定試料に荷重を加える。更に1分間静置した後にコックを開く。生理食塩水の液面が40mlの目盛り線から20mlの目盛り線に達するまでの時間(T1)(秒)を計測する。計測された時間T1(秒)を用い、次式から通液時間を算出する。なお式中、T0は濾過円筒管内に測定試料を入れないで計測された時間である。
通液速度(ml/min)=20×60/(T1−T0)
通液速度の更に詳細な測定方法は特開2003−235889号公報の段落0008及び0009に記載されている。測定装置は同公報の図1及び図2に記載されている。
前述の各実施形態で用い得る高吸収性ポリマーとしては、前記の各特性を満足するものであれば特に制限されないが、具体的には例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられる。尚、前記の各特性を満たすようにするためには、例えば、高吸収性ポリマーの粒子内部及び表面の架橋密度を調整したり、粒子表面に架橋密度勾配を設ければよい。或いは高吸収性ポリマーの粒子を非球形状の不定形粒子とすればよい。特に、本出願人の先の出願に係る特許第2721658号公報に記載の陰イオン界面活性剤を分散剤として用いた逆相懸濁重合重合法を採用することで、所望の通液速度を有する高吸収性ポリマー21が得られる。あるいは特開平7−184956号公報の第7欄28行〜第9欄第6行に記載の方法を用いることができる。
長繊維のウエブを有する本発明の吸収体は、フラップパルプを主体とする従来の吸収体に比較して繊維間の空隙の大きな疎な構造になっているので、該吸収体は液の透過性の良好なものでもある。従って、高吸収性ポリマーの吸収速度が遅い場合は、液が高吸収性ポリマーに吸収される前に吸収体を通過してしまい、該吸収体に十分吸収されない場合が起こりうる。この観点から、ウエブに含まれる高吸収性ポリマーは、充分に吸収速度の速いものであることが好ましい。それによって、吸収体に液を確実に保持できるようになる。高吸収性ポリマーの吸収速度は、当該技術分野においては一般にDW法の測定値によって表現される。DW法による吸収速度((ml/0.3g・30sec))は、DW法を実施する装置として一般的に知られている装置(Demand Wettability Tester)を用いて測定される。具体的には、生理食塩水の液面を等水位にセットしたポリマー散布台〔70mmφ、No.2濾紙をガラスフィルターNo.1上に置いた台〕上に、測定対象の高吸収性ポリマーを0.3g散布する。高吸収性ポリマーを散布した時点の吸水量を0とし、30秒後の吸水量(この吸収量は、生理食塩水の水位の低下量を示すビュレットの目盛りで測定される)を測定する。得られた吸収量の値を吸水速度とする。吸収速度は高吸収ポリマーの形状、粒径、かさ密度、架橋度等によって設計することができる。
吸収体がパルプを含まないか又は吸収体中の含有量が30重量%以下である実施形態においては、DW法に従い測定された吸収速度が2〜10(ml/0.3g・30sec)、特に4〜8(ml/0.3g・30sec)である高吸収性ポリマーが好ましく用いられる。なお、このような吸収速度を有する高吸収性ポリマーは、フラッフパルプを主体とする従来の吸収体においては、ゲルブロッキング、ひいては液漏れを発生させる原因になるとしてその使用が避けられていたものである。これに反して、本実施形態においてはウエブが疎な構造を有していることに起因して、ウエブ内への液の取り込みと取り込まれた液の通過速度が高いため、高吸収速度を有する高吸収性ポリマーを用いてもゲルブロッキングが起こりにくく、逆に液漏れが効果的に防止される。ここで、吸収体の重量には、吸収体を包む被覆シートの重量が含まれる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、種々の変更が可能である。例えば前記実施形態においては、積繊層4の上側に長繊維のウエブ2が配されていたが、これとは逆に、図7に示すように、積繊層4の下側に長繊維のウエブ2を配してもよい。積繊層4と長繊維のウエブ2の積層関係が図7に示すような場合には、吸収性物品に着用者の体圧が加わった場合、例えば着用者が寝た姿勢や座った姿勢の場合の吸収性が良好になるという利点がある。
また、繊維シート6の被覆の形態は、図2に示す形態に限られず、例えば図8(a)及び(b)に示すような形態を採用することもできる。図8(a)に示す吸収体1では、ウエブ2と積繊層4との積層体の上面を第1の繊維シート6aで被覆し、該積層体の下面及び左右両側面を第2の繊維シート6bで被覆している。第2の繊維シート6bの左右両側部は、積層体の上面側に巻き上げられており、第1の繊維シート6aの左右両側部と重なった状態になっている。図8(b)に示す吸収体1は、図2に示す吸収体と同様に、1枚の繊維シート6でウエブ2と積繊層4との積層体が被覆されている。但し、図2に示す吸収体では、積層体の下面において、繊維シート6の左右両側部が重なり合っているのに対し、図8(b)に示す吸収体1では、繊維シート6の左右両側部は、積層体の下面における左右両側部を被覆しているのみであり、該下面における幅方向中央部は繊維シート6に被覆されていない。
更に、繊維シート6の被覆の形態として、図9(a)ないし(c)に示す形態を採用することもできる。図9(a)に示す吸収体1は、上層吸収体1a及び下層吸収体1bを備えている。上層吸収体1aは、親水性を有する長繊維のウエブ2が、1枚の第1の繊維シート6aで被覆されてなるものである。ウエブ2中には、高吸収性ポリマー3が含まれている。下層吸収体1bは、積繊層4が、1枚の第2の繊維シート6bで被覆されてなるものである。積繊層4中には、高吸収性ポリマーが含まれていてもよく、或いは含まれていなくてもよい。第1及び第2の繊維シート6a,6bは同種のものであってもよく、或いは異種のものであってもよい。またそれらの坪量は同じでもよく、或いは異なっていてもよい。本実施形態の吸収体1によれば、長繊維のウエブ2を含む上層吸収体1aと、積繊層4を含む下層吸収体1bとを別個に製造しておき、吸収性物品の製造時に両吸収体を積層すればよいので、製造工程が複雑にならないという利点がある。
図9(b)に示す吸収体1は、上層吸収体1a及び下層吸収体1bを備えている点で図9(a)に示す吸収体と類似のものである。両者が相違する点は、図9(a)に示す吸収体では、各吸収体1a,1bがそれぞれ1枚の繊維シートで被覆されていたのに対して、図9(b)に示す吸収体1では、各吸収体1a,1bがそれぞれ2枚の繊維シートで被覆されている点である。各吸収体1a,1bにおいては、ウエブ2及び積繊層4がそれぞれそれらの上下面から2枚の繊維シートで被覆され、ウエブ2及び積繊層4の左右両側縁から延出した繊維シートどうしが互いに接合されている。本実施形態においても、図9(a)に示す実施形態と同様の効果が奏される。上層吸収体1a及び下層吸収体1bは互いに幅が異なっていてもよい。
図9(c)に示す吸収体1は、親水性を有する長繊維のウエブ2が、1枚の第1の繊維シート6aで被覆されてなる第1の吸収体1cを備えている。ウエブ2中には、高吸収性ポリマーが含まれている。第1の吸収体1cの下側には、積繊層4が積層されている。積繊層4中には、高吸収性ポリマーが含まれていてもよく、或いは含まれていなくてもよい。そして、第1の吸収体1cと積繊層4との積層体全体が、1枚の第2の繊維シート6bで被覆されている。本実施形態によれば、高吸収性ポリマー3を含むウエブ2が、第1の繊維シート6a及び第2の繊維シート6bによって二重に被覆されているので、高吸収性ポリマーの脱落が一層効果的に防止される。吸収体1cと積繊層4は互いに幅が異なっていてもよい。
また、前記の各実施形態においては、長繊維のウエブ2及び積繊層4の積層体が繊維シート6で被覆されていたが、吸収体の保形性が十分であり、また高吸収性ポリマーの脱落が甚だしくならない範囲において、繊維シートによる被覆を行わなくてもよい。
更に、前記の各実施形態においては、長繊維のウエブ2及び積繊層4の積層体を複数個積層してもよい。
〔実施例1〕
先ず、捲縮したアセテート長繊維のトウを用意した。この長繊維の繊維径は2.1dtexであった。トウの全繊維量は2.5万dtexであった。このトウを、伸張下に搬送し空気開繊装置を用いて開繊し、開繊ウエブを得た。次いで、多数の円盤が軸周りに所定間隔おきに組み込まれたロールと、平滑な受けロールとの間に開繊ウエブを通して、該ウエブを梳いた。その後、幅100mmに調節し、その搬送速度を減速した状態でバキュームコンベア上に転写し、当該バキュームコンベア上でのウエブの張力を緩めて捲縮を発現させた。ウエブ中の長繊維の捲縮率は30%、1cm当たりの捲縮数は15個であった。これによって長繊維間の空間を広げ、高吸収性ポリマーを入り込ませ易くし、またウエブを厚くして高吸収性ポリマーの埋没担持性を向上させた。ウエブ上に高吸収性ポリマーを散布し、該高吸収性ポリマーを開繊ウエブ中に埋没担持させた。ウエブの坪量は25g/m2、高吸収性ポリマーの坪量は110g/m2であった。
次に、開繊したフラッフパルプ100重量部と高吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合したものをT字状の型の上に積繊し、合計坪量300g/m2の積繊体を得た。T字状の型は、脚部の幅が100mmで、長さが100mm、横架部の幅が125mmで、長さが100mmあった。積繊体におけるフラッフパルプ及び高吸収ポリマーの坪量はそれぞれ150g/m2であった。積繊体上にウエブを重ね、これら全体をホットメルト粘着剤をスプレー塗工した坪量16g/m2のティッシュペーパーで包み図1及び図2に示す構造の吸収体を得た。吸収体全体の坪量は477g/m2、厚さは2.1mmであった。また開繊ウエブの坪量は25g/m2であった。
表面シートとして坪量25g/m2のエアスルー不織布を用いた。エアスルー不織布は、芯がポリプロピレン、鞘が直鎖状低密度ポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維(太さ2.1dtex、界面活性剤で表面の親水処理し液透過性を有する)から構成されていた。裏面シートとして坪量20g/m2の多孔質フィルムに、坪量20g/m2のポリプロピレン製スパンボンド不織布をホットメルト1.5g/m2で接着して複合化したものを用いた。多孔質フィルムは、密度0.925g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂100重量部に、炭酸カルシウム150重量部、及び第三成分としてエステル化合物4重量部を均一混合したものを、インフレーション成形した後、縦方向に2倍に一軸延伸したフィルムであった。それ以外は通常の使い捨ておむつの製造方法に従い使い捨ておむつを得た。吸収体は、ウエブの配向方向が、おむつの長手方向に一致するように配した。
〔実施例2〕
実施例1におけるウエブへの高吸収性ポリマーの散布坪量を260g/m2とした以外は実施例1と同様にして、高吸収性ポリマーを開繊ウエブ中に埋没担持させた。次に、開繊したフラッフパルプをT字状の型の上に積繊し、坪量100g/m2の積繊体を得た。T字状の型は、実施例1と同様のものである。積繊体上にウエブを重ね、これら全体を親水化処理した坪量16g/m2のスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMS)を用いて包み込み、吸収体を得た。吸収体全体の坪量は477g/m2、厚さは2.0mmであった。それ以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
〔実施例3〕
実施例1において、トウの開繊幅を125mmとし、高吸収ポリマーの散布量を90g/m2とした以外は実施例1と同様にして、吸収体及び使い捨ておむつを得た。
〔実施例4〕
実施例3において、高吸収ポリマーを埋没担持したウエブと、フラッフパルプと高吸収性ポリマーの混合の上限関係を逆にした以外は実施例3と同様にして、吸収体および使い捨ておむつを得た。
〔実施例5〕
実施例1において、長繊維の繊維径を6.7dtex、トウの全繊維量を1.7万dtex、ウエブ中の長繊維の捲縮率を24%、1cm当たりの捲縮数を10個、ウエブの平均坪量を30g/m2とした以外は実施例2と同様にして積層体を得た。それ以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
〔比較例1〕
開繊したフラッフパルプ100重量部と高吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合し、合計坪量520g/m2の積繊体を得た。フラッフパルプ及び高吸収ポリマーの坪量はそれぞれ260g/m2であった。得られた積繊体を坪量16g/m2のティッシュペーパーで包み吸収体を得た。積繊体とティッシュペーパーの間に、ホットメルト粘着剤5g/m2をスプレー塗工し、両者を接着した。吸収体全体の坪量は562g/m2、厚さは4.3mmであった。これら以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
〔比較例2〕
比較例1と同様に、開繊したフラッフパルプ100重量部と高吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合し、合計坪量300g/m2の積繊体を得た。フラッフパルプ及び高吸収ポリマーの坪量はそれぞれ150g/m2であった。それ以外は比較例1と同様にして吸収体を得た。吸収体全体の坪量は342g/m2、厚さは2.6mmであった。これら以外は実施例1と同様にして使い捨ておむつを得た。
〔比較例3〕
比較例1と同様に、開繊したフラッフパルプ100重量部と高吸収性ポリマー250重量部を気流中で均一混合し、合計坪量350g/m2の積繊体を得るべく試みたが、フラッフパルプ中に高吸収ポリマーが担持されず、満足な吸収体を得ることができなかった。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた吸収体について以下の方法で吸収容量を測定し、また構造安定性及び柔軟性を評価した。それらの結果を以下の表1に示す。
〔吸収容量〕
得られた吸収体を45°の傾斜版に固定し、吸収体の上方側の端部から200mmの位置に生理食塩水を一定量、一定間隔ごとに繰り返し注入し、吸収体の下方側の端部からもれだすまでの注入量を比較した。比較例1の吸収容量を1.0とした時の相対値を以下の計算式を用いて算出した。
吸収容量(相対値)=(サンプルの吸収容量)/(比較例1の吸収容量)
〔構造安定性〕
(1)ドライ時
100×200mmに作製した吸収体の中央部を切断し、100×100mmの吸収体を得た。切断面を真下にして、振幅5cmで1回/1秒の速度で20回振動を与えたとき、切断面からの落下したポリマーの量を測定した。以下の判断基準に従って高吸収ポリマーの埋没担持性を評価した。
混合した高吸収ポリマーのうち、
○:脱落した高吸収ポリマーの割合が10%以下である。
△:脱落した高吸収ポリマーの量が10%を超え、25%以下である。
×:脱落した高吸収ポリマーの量が25%を超える。
(2)ウエット時
100×200mmに切断した吸収体全面に、生理食塩水200gをほぼ均等に吸収させた後、静かに吸収体を持ち上げたとき、吸収体が破壊しないかどうかを目視判定した。また、脱落した高吸収性ポリマーの重量を測定し、別途測定しておいた脱落した高吸収性ポリマー単位重量あたりの遠心保持量で除することで脱落した高吸収性ポリマーのドライ時の重量を算出する。さらに、高吸収性ポリマーの配合量との関係から脱落した高吸収性ポリマーの割合を算出する。なお、高吸収性ポリマーの配合量は、あらかじめ重量を測定しておいた分析対象の吸収体をアスコルビン酸の水溶液に浸漬させ、十分な時間日光暴露をして、高吸収性ポリマーを完全に分解させる。水洗と分解を繰り返し、高吸収性ポリマーが完全に溶解した後乾燥させ、前記分解前の吸収体重量の差から高吸収性ポリマーの配合量を見積もることができる。
○:脱落した高吸収ポリマーの割合が10%以下であり、吸収体の破壊がない。
△:脱落した高吸収ポリマーの割合が10%を超え、25%以下であり、吸収体の破壊がない。
×:脱落した高吸収ポリマーの割合が25%を超える、あるいは吸収体が破壊する。
〔柔軟性〕
ハンドルオ・メーターを用いて吸収体の柔軟性を評価した。ハンドルオ・メーターの測定値は、その数値が小さい程、装着しやすさやフィット性が良好であることを示す。ハンドルオ・メーターによる測定方法は次の通りである。JIS L1096(剛軟性測定法)に準じて測定を行う。幅60mmの溝を刻んだ支持台上に、長手方向に150mm、幅方向に50mm切断した吸収体を、溝と直交する方向に配置する。吸収体の中央を厚み2mmのブレードで押した時に要する力を測定する。本発明で用いた装置は、大栄科学精機製作所製、風合い試験機(ハンドルオ・メーター法)、HOM−3型である。3点の平均値を測定値とする。得られた測定値に基づき、以下の基準に従って柔軟性を評価した。
○:ハンドルオ・メーターの測定値が2N以下である。
△:ハンドルオ・メーターの測定値が2Nを超え、4N以下である。
×:ハンドルオ・メーターの測定値が4Nを超える。
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の吸収体は、比較例の吸収体よりも繊維材料の使用割合が少ないにもかかわらず、吸収体の構造が安定していることが判る。また、薄く、低坪量且つ柔軟であるにもかかわらず、高い吸収容量を有していることが判る。
〔実施例6〕
本実施例は、長繊維のウエブの捲縮率と高吸収性ポリマーの担持率との関係を調べたものである。この長繊維の繊維径は2.1dtexであった。この長繊維のトウを、伸長下に搬送し空気開繊装置を用いて開繊し開繊ウエブを得た。次いで、多数の円盤が軸周りに所定間隔おきに組み込まれたロールと、平滑な受けロールとの間に開繊ウエブを通して、該ウエブを梳いた。その後、ウエブを幅100mmに調節し、その搬送速度を減速した状態でバキュームコンベア上に転写し、当該バキュームコンベア上でのウエブの張力を緩めて捲縮を発現させた。ウエブの張力を制御し、種々の捲縮率を有するアセテート長繊維のウエブを調整した。これによって長繊維間の空間を広げ、高吸収性ポリマーを入り込ませ易くし、またウエブを厚くして高吸収性ポリマーの埋没担持性を向上させた。ウエブ上に高吸収性ポリマーを散布し、該高吸収性ポリマーを開繊ウエブ中に埋没担持させた。ウエブの坪量は26g/m2であった。ポリマーの散布坪量は260g/m2であった。ポリマーとしては平均粒径330μmの塊状タイプのものを用いた。このようにして得られた吸収体について、前述の構造安定性(ドライ時)試験を行った。試験後にウエブ中に担持されていた高吸収性ポリマーの重量を、試験前にウエブ内に配合されていた高吸収性ポリマーの重量で除して100を乗じ、得られた値を高吸収性ポリマーの担持率(%)とした。結果を表2に示す。