JP3906321B2 - 床暖房装置及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正温度係数特性を有するPTCヒータを備えた床暖房装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
快適な暖房装置として床暖房装置が多用されている。この床暖房装置には、電気式床暖房装置や温水式床暖房装置がある。
電気式床暖房装置は、設置の容易さ、メンテナンスの容易さ等により、温水式床暖房装置より優れているが、床暖房装置は通常、床下に設置されるため、火災防止の観点から十分な安全処置が必要である。
この安全装置として、サーモスタット、温度ヒューズが従来より設置されているが、これらは機械的な装置であるから、故障という問題を消し去ることができない。
【0003】
従来では、床暖房装置として、温度の上昇とともに電気抵抗値が増大する正温度係数特性(PTC特性)を有する発熱体からPTCヒータを構成し、自己温度を制御可能としたものがある。
このPTCヒータを備えた床暖房装置としては、PTC特性を有するチュービングヒータを電気カーペットに用いた床暖房装置(特開昭60-9084号)、自己温度制御型発熱素子を用いた床暖房パネル(特開平6-313570号)、自己温度制御機能を有する発熱体を備えた床暖房用ヒータ(実開昭59-168989号)、PTC特性を有する面状発熱体と非制御発熱体とを組み合わせて発熱体全体が温度制御される暖房装置(実開平3-84582号)、PTCヒータを内装した床暖房パネル(実開平4-129021号)、PTC特性を有する面状ヒータの両面にそれぞれ保持板を挟んだ床暖房パネル(実用新案登録3043854号)がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭60-9084号では、ヒータは自己温度制御機能を有する、と記載されているが、床暖房の安全装置としてのPTC特性に関する具体的な記載がない。
特開平6-313570号では、発熱素子は一定温度の自己温度制御が可能であるため過熱又は加熱不足を来すことがない、と記載され、かつ、サーモスタットは法規上設けるものであって、本発明の構成要件ではない、と記載されているが、外部からの加熱、例えば、床暖房装置以外の暖房装置等の加熱によって異常な高温になった場合、確実に昇温を防ぐことが可能か否かについては記述がない。
【0005】
実開昭59-168989号では、ヒータは、自己温度制御機能を有するので、温度制御可能と考えられるが、床暖房用として具体的な温度制御、外部加熱時の昇温防止については記述がない。
実開平3-84582号では、発熱体の材料としてカーボン素子と熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン)とをPTC特性を有するように複合化したものが挙げられる、と記載されているが、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン等を用いたのみでは自己温度制御する温度が高いか、通常の発熱量が不足するといった問題が生じるものと考えられる。
【0006】
実開平4-129021号では、自己温度制御により異常昇温が防止されることになり、この結果、床暖房パネルの上面に断熱するものが置かれても異常温度とならず、カーペットや絨毯を敷くことも可能となることが記載されており、熱閉塞状態での過熱防止が可能であると考えられるが、外部加熱による異常な高温時については記載されていない。
実用新案登録3043854号では、自己温度制御することによりサーモスタット等の温度制御装置が不要となる、と記載されているが、具体的な温度制御並びに外部加熱時の昇温防止については記載がない。
【0007】
即ち、以上説明した従来例では、ヒータの自己温度制御が可能であっても、外部から加熱された時に異常な温度上昇が発生するという問題点があり、異常な高温時に電流を遮断する温度ヒューズが不可欠となる。
さらに、ヒータを構成する発熱体がPTC特性を有することから、低温時でヒータに通電を開始すると、急激に大きな電流が流れることになることになるため、ブレーカが作動する等の不都合が発生する。この不都合を回避するため、複雑なブレーカ設計や遅延リレー設計が必要となるが、従来例では、この点が考慮されていない。
また、特開昭60-9084号、特開平6-313570号、実開昭59-168989号、実開平3-84582号及び実用新案登録3043854号で示される従来例では、床を布団等で熱閉塞した場合に、温度が上昇し、床材が傷む問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ヒータが熱閉塞状態にある時並びに外部から加熱された時の異常な昇温を防止するとともに、低温でヒータに通電を開始した際にブレーカが作動する等の不都合を回避できる床暖房装置及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そのため、本発明はPTCヒータのヒータ温度75℃及び30℃での発熱量Pを所定値に設定し、周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値Pmaxを所定値に設定し、かつ、周囲温度が0℃での突入電流値Iを所定値に設定して前記目的を達成しようとするものである。
具体的には、本発明の床暖房装置は、一対の電極を被覆し温度の上昇とともに電気抵抗値が増大する正温度係数特性を有する発熱体から形成されるPTCヒータと、このPTCヒータの上面を覆う蓋材を有し前記PTCヒータが収納されるとともに床を構成し木材から形成される箱状体とを備え、前記PTCヒータは、ヒータ温度75℃での発熱量PがP(75℃)≦40W/m2であり、ヒータ温度30℃での発熱量PがP(30℃)≧90W/m2であり、前記PTCヒータの周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値PmaxがPmax≦0.40W/m2あり、前記PTCヒータの周囲温度が0℃での突入電流値IがI(0℃)≦7A/m2であることを特徴とする。
【0010】
本発明では、PTCヒータの電極間に電流を流すと、発熱体で発熱されて床暖房される。この発熱体はPTC特性を有するため、温度上昇とともに電気抵抗値が増大し、一定温度になった時には、それ以上電流が流れることがなく、過熱が防止される。
このPTCヒータは、ヒータ温度75℃での発熱量PがP(75℃)≦40W/m2であるから、熱閉塞状態、つまり、絨毯、カーペット、布団等でヒータから発生する熱が籠もる場合において、温度が異常に上昇することがない。換言すれば、ヒータ温度75℃での発熱量Pが40W/m2を越える場合では、床が75℃を越える温度に昇温する可能性があり、床材の変色や反り等の問題が発生する。しかも、PTCヒータは、ヒータ温度30℃での発熱量PがP(30℃)≧90W/m2であるから、床暖房に必要な発熱量を得ることができる。
【0011】
また、PTCヒータの周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値PmaxがPmax≦0.40W/m2であるから、外部からの加熱で異常に高温になっても、PTCヒータが異常に加熱することがない。そのため、サーモスタットや温度ヒューズ等の安全装置を別途設けることを要しない。
さらに、PTCヒータの周囲温度が0℃での突入電流値IがI(0℃)≦7A/m2であるから、低温で通電を開始した時の突入電流が小さいからブレーカが作動することがない。そのため、ブレーカ設計や遅延リレー設計を容易に行うことができる。
【0012】
ここで、本発明では、前記PTCヒータを直熱式、つまり、被加熱部を直接加熱する方式としてもよい。
この構成では、外部からの加熱状態をPTCヒータが直接検知するから、ヒータの異常な昇温を確実に阻止することができる。
また、前記PTCヒータを、前記電極をそれぞれ被覆した複数の電極被覆部材が互いに所定間隔離れて面状発熱抵抗シートに取り付けられた面状発熱体としてもよい。
この構成では、床暖房に際して、広い発熱面積を確保できる。
これに対して、前記PTCヒータを、線状に形成された線状発熱体としてもよい。
この構成では、ヒータの配置スペースが小さいことから、床の局所的な暖房を行える。
【0013】
本発明の床暖房装置の製造方法は、前記PTCヒータを前記電極とともに発熱組成物を押し出して成形した後、70℃以上150℃以下で熱処理をしたことを特徴とする。
ここで、熱処理とは、PTCヒータを前記温度に設定された恒温槽の内部に所定時間(例えば、24時間)放置することをいう。
このように、PTCヒータを熱処理することにより、70℃以上を履歴した際に、PTCヒータの抵抗値の規定に比べた実測値の変動(抵抗値変動)が小さくて済む。そのため、抵抗値が規定値に比べて大きすぎることがないので、必要な発熱量を得ることができるとともに、抵抗値が規定値に比べて小さすぎることがないので、熱閉塞時の最高温度が高くなることがない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態において、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
図1から図3には本発明の第1実施形態が示されている。図1は第1実施形態にかかる床暖房装置1の分解斜視図である。
図1において、床暖房装置10は、蓋材1Aを備えた箱状体1と、この箱状体1の下面に取り付けられたPTCヒータ2と、このPTCヒータ2と蓋材1Aとの間に介装された均熱板3と、この均熱板3と蓋材1Aとの間に配設された断熱材4とを備えた床暖房パネルである。この床暖房装置1には必要に応じてPTCヒータ2の温度調節用の温度センサーや漏電感知用のアース等の安全装置を設けても良い。
【0015】
箱状体1は、木材から形成されるもので、他の床パネルとともに床を構成するものである。
箱状体1の上面には必要に応じてカーペット、絨毯等が敷設されている。蓋材1Aは表面を仕上げ加工した床表面材である。
第1実施形態で適用される床構造は特に限定されるものではなく、コンクリート床、根太直付き床、荒床等の床構造が含まれる。また、床暖房装置を床の上に施工するものでもよい。
また、床パネルはフローリング、Pタイル、コルクタイル、石材、畳、絨毯・カーペット、塩ビシート等から形成される。
【0016】
PTCヒータ2は箱状体1の上方に位置する被加熱部を直接加熱する直熱式であり、1枚又は複数枚(図1では4枚)の面状発熱体から構成される。
図2及び図3にはPTCヒータ2の詳細な構成が示されている。図2はPTCヒータ2の一部を破断した斜視図であり、図3は、その平面図である。
図2及び図3において、PTCヒータ2を構成する面状発熱体は、一対の電極13をそれぞれ被覆した複数の電極被覆部材14が互いに所定間隔離れて面状発熱抵抗シート12に取り付けられ、これらの面状発熱抵抗シート12及び電極被覆部材14の周りに外装材15が設けられた構造である。
【0017】
面状発熱抵抗シート12及び電極被覆部材14は、熱可塑性樹脂及び導電性粒子を備えた発熱組成物から形成され、正温度係数特性を有する発熱体である。
この熱可塑性樹脂としては、結晶性熱可塑性樹脂が好ましく、具体的には、ポリオレフィン樹脂及びその共重合樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキシド及びノニル樹脂、ポリスルフォン等を挙げることができる。
【0018】
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン類、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン等のポリプロピレン類、ポリブテン、4−メチルペンテン−1樹脂等を挙げることができる。
また、第1実施形態においては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体等のエチレン−アクリレート系共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体等のオレフィンとビニル化合物との共重合体及びフッ素含有エチレン系重合体、ならびに、これらの変成物も使用できる。
【0019】
前記酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等を挙げることができる。
前記ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン66、ナイロン610 等を挙げることができる。
前記ポリアセタールは、単一重合体であっても共重合体であってもよい。
前記熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。
また、前記結晶性熱可塑性樹脂としては、前記のほかに、例えば、トランス−1,3−ポリイソプレン、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン等のジエン系重合体及び共重合体等も使用することができる。
【0020】
前記各種の結晶性熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上をポリマーブレンド等として併用してもよい。
もっとも、前記各種の結晶性熱可塑性樹脂の中でも、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のオレフィン系共重合体やトランス−1,4−ポリイソプレン等が好ましい。
前記各種の結晶性熱可塑性樹脂は、必要に応じて他のポリマーや添加物との組成物として使用することもできる。
【0021】
前記導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック粒子、グラファイト粒子等の粒状物、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の金属微粒子、金属粉体、金属酸化粉体等の粉状物、炭素繊維等の繊維状物、導電性無機材料(ITO等)、チタン酸バリウム(BaTiO3),チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の正温度係数特性を有する無機材料等を挙げることができる。これらの中でもカーボンブラック粒子、グラファイト粒子等の粒状物、特に、カーボンブラック粒子が好ましい。
前記各種の導電性粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合物として併用してもよい。
導電性粒子の粒径としては、特に制限はないが、例えば、平均粒径が通常10〜200 nm、好ましくは、15〜100 nmである。導電性粒子が繊維状である場合には、そのアスペクト比は通常1〜1000、好ましくは、1〜100 程度である。
【0022】
前記結晶性樹脂と導電性粒子との配合割合は、重量比として、通常、10〜80:90〜20、好ましくは、55〜75:45〜25である。導電性粒子の配合割合がこの範囲より少ないと電極被覆部材14の抵抗値が大きくなり、面状発熱体1が実用上、十分に発熱しないことがあり、一方、導電性粒子の配合割合がこの範囲より多いと正温度係数特性が十分に発現しないことになる。
電極被覆部材14の発熱組成物の比抵抗値は仕様や目的に応じて適宜選定することができるが、通常の場合、10〜50000 Ω・cm、好ましくは、40〜20000 Ω・cmである。
前記結晶性樹脂と導電性粒子とを混合し成形して電極被覆部材14が得られるが、この成形時又は成形後において前記発熱組成物中の熱可塑性結晶性樹脂を架橋して発熱組成物を硬化させることが好ましい。この発熱組成物を硬化させると、正温度特性が改良されるとともに、面状発熱体の熱変形あるいは熱軟化等による不良を防止することができる。
【0023】
結晶性熱可塑性樹脂の架橋は架橋剤及び/又は放射線を利用して行うことができる。前記架橋剤は、結晶性熱可塑性樹脂の種類に応じて、有機過酸化物、硫黄化合物、オキシム類、ニトロソ化合物、アミン化合物、ポリアミン化合物等から適宜選択して決定することができる。
例えば、前記結晶性熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂等である場合には、好適な架橋剤として、例えば、有機過酸化物を利用することができる。この有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、tert−ブチルペルオキシベンゼン等を挙げることができる。
【0024】
これらの中でも、特に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が好ましい。なお、これらの各種の有機過酸化物は1種単独で使用してもよいし、必要に応じて、トリアリルシアヌレートやジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等の架橋補助剤を添加してもよい。
前記有機過酸化物の使用割合は、前記結晶性樹脂100 重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは、0.05〜2重量部である。この割合が0.01重量部未満では、架橋化が不十分となり、正温度係数特性が十分に発現しなかったり、高温領域での抵抗の低下がみられる等の問題が生じやすい。一方、5重量部を越えると、架橋化度が高くなりすぎて、成形性が低下したり、正温度係数特性の低下する現象がみられることになる。
【0025】
電極13は、電極用導線の単線13Aを互いに交差することなく複数本平行かつ平板状に一列に並んで形成されており、この単線13Aは具体的な太さが単線13Aの数との関係で決定される。なお、この電極13は、図示の電極用導線の単線13Aに限定されるものではなく、金属テープ、導電性ペーストから構成してもよい。
電極被覆部材14は断面矩形状かつ長尺状に形成されており、発熱抵抗シート12の両側において長さ方向に沿って2本融着されている。
【0026】
PTCヒータ2はヒータ温度75℃での発熱量PがP(75℃)≦40W/m2である。
この条件を満たさない場合、通常考えられる熱閉塞状態(絨毯、カーペットあや布団等による断熱)において、75℃を越えて昇温する可能性があり、床材が反ったり変色したりする。
PTCヒータ2はヒータ温度30℃での発熱量PがP(30℃)≧90W/m2、好ましくは、P(30℃)≧100W/m2である。
この条件を満たさない場合、床暖房に必要な熱量が得られない。
PTCヒータ2は、その周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値PmaxがPmax≦0.40W/m2である。
この条件を満たさない場合、外部からの加熱で異常に高温になった時にヒータの発熱による昇温の可能性がある。
PTCヒータ2は、その周囲温度が0℃での突入電流値IがI(0℃)≦7A/m2である。
以上の条件は発熱組成物の成分、配合比等を設定することにより決定される。
【0027】
外装材15は、電気的な絶縁層として機能する合成樹脂フィルムが使用される。この合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンを例示できる。
外装材15は接着層を介して面状発熱抵抗シート12及び電極被覆部材14に接着固定される。この接着層としては、面状発熱抵抗シート12及び電極被覆部材14との接着性に優れる材料であればよいが、特に、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系の場合、ポリエチレン系共重合体、ポリプロピレン系共重合体、あるいは、これらの変性樹脂が好ましい。
【0028】
図1において、隣り合うPTCヒータ2の電極13同士はリード線16で接続されている。
均熱板3は、アルミ板や鋼板から形成される所定厚さの平板である。この均熱板3により、PTCヒータ2の上面の局所発熱を防止するとともに、PTCヒータ2の強度を大きなものにできる。
断熱材4はPTCヒータ2の熱を下方から放出させないようにするためのもので、例えば、ウレタン系やポリオレフィン系の発泡体や繊維質から構成される。
【0029】
次に、第1実施形態の床暖房装置1を製造する方法について説明する。
まず、箱状体1及びPTCヒータ2等を別々に製造し、これらを組み立てる。PTCヒータ2を製造するため、発熱組成物から面状発熱抵抗シート12及び電極被覆部材14をそれぞれ押出成形する。電極被覆部材14は、電極用導線の単線13Aを複数互いに交差することなく平行な状態で押出成形機のダイに通し、これらの電極用導線とともに発熱組成物を押し出すという共押出法により製造される。
【0030】
PTCヒータ2を電極13とともに発熱組成物を押し出して成形した後、70℃以上150℃以下で熱処理をし、その後、−20℃以上0℃以下で熱処理をし、さらにその後、30℃以上50℃以下で熱処理をする。これらの熱処理を複数回繰り返してもよい。このように異なる温度で熱処理を繰り返すことにより、70℃以上の履歴だけではなく、あらゆる温度での経時変化を小さくすることができる。
ここで、熱処理とは、前記温度で設定された恒温槽にPTCヒータ2を所定時間(例えば、24時間)放置することをいう。
PTCヒータ2を70℃以上150℃以下で熱処理しないと、70℃以上を履歴した際に、PTCヒータ2の抵抗値の規定に比べた実測値の変動(抵抗値変動)が大きくなる。一方、抵抗値が規定値に比べて小さいと、熱閉塞時の最高温度が高くなる。
【0031】
従って、第1実施形態によれば、▲1▼一対の電極13を被覆し温度の上昇とともに電気抵抗値が増大する正温度係数特性を有する発熱体から形成されるPTCヒータ2を備えて床暖房装置を構成し、このPTCヒータ2は、ヒータ温度75℃での発熱量PがP(75℃)≦40W/m2としたから、熱閉塞状態、つまり、絨毯、カーペット、布団等でヒータ2から発生する熱が籠もる場合において、温度が異常に上昇することがない。
しかも、▲2▼PTCヒータ2は、ヒータ温度30℃での発熱量PがP(30℃)≧90W/m2であるから、床暖房に必要な発熱量を得ることができる。
さらに、▲3▼PTCヒータ2は、その周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値PmaxがPmax≦0.40W/m2であるから、外部からの加熱で異常に高温になっても、PTCヒータ2が異常に加熱することがない。そのため、サーモスタットや温度ヒューズ等の過昇温度防止装置を別途設けることを要しない。
その上、▲4▼PTCヒータ2は、その周囲温度が0℃での突入電流値IがI(0℃)≦7A/m2であるから、低温で通電を開始した時の突入電流が小さくなり、ブレーカが作動することがない。そのため、ブレーカ設計や遅延リレー設計を容易に行うことができる。
【0032】
また、第1実施形態では、▲5▼PTCヒータ2は直熱式、つまり、被加熱部を直接加熱する方式であるから、外部からの加熱状態をPTCヒータ2が直接検知することになり、ヒータ2の異常な昇温を確実に阻止することができる。
さらに、▲6▼PTCヒータ2を、電極13をそれぞれ被覆した複数の電極被覆部材14が互いに所定間隔離れて面状発熱抵抗シート12に取り付けられた面状発熱体としたから、床暖房に際して、広い発熱面積を確保できる。
【0033】
さらに、▲7▼第1実施形態の床暖房装置の製造方法は、PTCヒータ2を電極13とともに発熱組成物を押し出して成形した後、70℃以上150℃以下で熱処理をしたから、抵抗値変動が小さくて済む。そのため、抵抗値が規定値に比べて大きすぎることがないので、必要な発熱量を得ることができるとともに、抵抗値が規定値に比べて小さすぎることがないので、熱閉塞時の最高温度が高くなることがない。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態を図4に基づいて説明する。第2実施形態の床暖房装置20は、PTCヒータ2が収納される箱状体21の構造並びに均熱板3がない点で第1実施形態と相違するもので、他の構造は第1実施形態と同じである。
図4は第2実施形態の床暖房装置20の分解斜視図である。
図4において、第2実施形態の床暖房装置20は、前記PTCヒータ2と、このPTCヒータ2を収納する箱状体21とを備え、この箱状体21は平面矩形状のラワン合板の上部にPTCヒータ2を収納するための凹部を形成したもので、この凹部と大きさが一致するラワン合板からなる蓋材21AでPTCヒータ2の上面を覆う構造である。この蓋材21Aは接着剤でPTCヒータ2に固定されている。
【0035】
第2実施形態のPTCヒータ2は、蓋材21Aの上方に位置する被加熱部を直接加熱する直熱式であり、1枚又は複数枚(図4では3枚)の面状発熱体から構成される。
PTCヒータ2を構成する面状発熱体は、第1実施形態と同様、一対の電極13をそれぞれ被覆した複数の電極被覆部材14が互いに所定間隔離れて面状発熱抵抗シート12に取り付けられ、これらの面状発熱抵抗シート12及び電極被覆部材14の周りに外装材15が設けられた構造であるが、この外装材15の上面に必要に応じてアルミ層が形成されている。
第2実施形態の床暖房装置20は第1実施形態の床暖房装置10と同様に製造されるものであり、その作用効果は▲1▼〜▲7▼で示す第1実施形態の作用効果と同じである。
【0036】
次に、本発明の第3実施形態を図5に基づいて説明する。第3実施形態はPTCヒータ2を収納する部材が第2実施形態と相違するもので、他の構造は第2実施形態と同じである。
図5は第3実施形態の床暖房装置30の分解斜視図である。
図5において、第3実施形態の床暖房装置30は、前記PTCヒータ2と、このPTCヒータ2を収納する合成樹脂製袋31とを備え、図示しない床材に収納される構成である。PTCヒータ2は第1及び第2実施形態と同様に直熱式である。
合成樹脂製袋31は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の平面矩形状の2枚の合成樹脂製シート32,33の端縁を熱シールして袋状に形成される。
第3実施形態の床暖房装置30は第1実施形態の床暖房装置10と同様に製造されるものであり、その作用効果は▲1▼〜▲7▼で示す第1実施形態の作用効果と同じである。
【0037】
次に、本発明の第4実施形態を図6及び図7に基づいて説明する。第4実施形態はPTCヒータ200の構造並びに均熱板を設けた点が第2実施形態と相違するもので、他の構造は第2実施形態と同じである。
図6は第4実施形態の床暖房装置40の分解斜視図である。
図6において、床暖房装置40は、蓋材41Aを備えた箱状体41と、この箱状体41に収納されたPTCヒータ200と、このPTCヒータ200と蓋材41Aとの間に介装された均熱板3と備えた床暖房パネルである。床暖房装置40には必要に応じてPTCヒータ200の温度調節用の温度センサーや漏電防止用のアースを設けても良い。
箱状体41は平面矩形状のラワン合板の上部にPTCヒータ2を収納するための凹部を形成したもので、蓋材41Aは凹部と大きさが一致するラワン合板から形成されている。
【0038】
第4実施形態のPTCヒータ200は、蓋材41Aの上方に位置する被加熱部を直接加熱する直熱式であり、1本又は複数本(図6では3本)の線状発熱体から構成される。
図7はPTCヒータ200の斜視図である。図7において、PTCヒータ200は一対の電極130を被覆し温度の上昇とともに電気抵抗値が増大する正温度係数特性を有する発熱体から断面矩形形の長尺状に形成されるものであり、電極130は、互いに所定間隔離れて平行に配置された1本の電線から構成されている。
【0039】
PTCヒータ200の発熱体は前記PTCヒータ2の発熱体と同じ材質から構成されている。
各PTCヒータ200は前記PTCヒータ2と同様に、隣り合う電極130はリード線16で接続されている。
第3実施形態の床暖房装置30は第1実施形態の床暖房装置10と同様に製造されるものであり、▲1▼〜▲5▼▲7▼で示す第1実施形態の作用効果と同じ作用効果を奏することができる他に、PTCヒータ200を、線状に形成された線状発熱体としたから、床の局所的な暖房を行える。
【0040】
【実施例】
以下に前記実施形態の効果を確認するために、実施例について説明する。
〔実施例1〕
実施例1は第1実施形態に対応するもので、次の条件で床暖房装置10を製造した。
▲1▼PTCヒータ2の製造
熱可塑性樹脂:直鎖状低密度ポリエチレン(Dow製Affinity PT1450)
導電性粒子:カーボンブラック(CB)(三菱化成工業株式会社製ダイアブラックE)
配合比:熱可塑性樹脂123kg/カーボンブラック(CB)77kg
混練:二軸押出機で押出混練した。
架橋剤配合:日本油脂株式会社製パーヘキシン25B 123g
タンブラーブレンダーで20分間混合した。
面状発熱抵抗シート12の成形:
一軸押出Tダイ成形機で成形し、幅160mm、厚さ0.5mmのシートを得た。
【0041】
電極被覆部材14の成形:
面状発熱抵抗シート12と同様に、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)57kgとカーボンブラック43kgとを二軸押出混練した。
導線13Aを15本平行にした状態で、上記の材料を一軸押出機で電線被覆形成し、電極13を得た。
PTCヒータ2の加工:
前記面状発熱抵抗シート12の160mm幅の両端に前記電極13が設けられた電極被覆部材14を熱により融着した。さらに、接着層としてエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)を積層したPETフィルム(外装材15)を熱によりラミネートした。このようにして、100V用PTCヒータ2を得た。
【0042】
PTCヒータ2の熱処理:
PTCヒータ2に70℃24時間、−20℃24時間、40℃24時間の熱処理をした。
熱処理後のPTCヒータ2の23℃の抵抗値R(23℃)は191Ω/mであった。
▲2▼床暖房装置10の組立
鋼板(760mm×425mm×12mm)の箱状体1の裏側にPTCヒータ2(680mm×720mm)を2枚配置し、厚さ80μmのアルミ粘着シートを均熱板3としてそれぞれ貼り付け、さらに、電極13にリード線16を接続した。箱状体1の内部にはウレタン系の断熱材4を収納し、箱状体1に蓋材1Aを配置して床暖房装置10としての床暖房パネルを得た。
【0043】
▲3▼PTCヒータ2の性状試験
ヒータ温度75℃での発熱量P:
恒温槽(タバイエスペック製PSL-2S)中で長さ300mmのPTCヒータ2に100Vの電圧を印加しながら、PTCヒータ2の温度を熱電対にて測定した。ヒータ温度が75℃の時の消費電力を測定した。消費電力=発熱量P(75℃)とする。消費電力はHEWLETT PACKARD製デジタルマルチメータ3478Aによって電圧を測定しながら日置製クランプオンリークハイテスター3263にて電流を測定して求めた。
ヒータ温度30℃での発熱量P:
前述と同様に、ヒータ温度30℃での発熱量Pを求めた。
PTヒータ2の発熱量の最大値Pmax:
恒温槽中で恒温槽の温度を75℃から140℃まで昇温させながらPTCヒータ2に通電して発熱量を測定した。発熱量が最小値を示した温度以上(PTCヒータ2の周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上)で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値Pmaxを求めた。
ヒータの周囲温度が0℃での突入電流値I:
恒温槽中での恒温槽の温度が0℃の時にPTCヒータ2に100Vの電圧を印加し、直流値の最大値I(0℃)とした。
【0044】
熱閉塞時の最高温度:
長さ300mmのPTCヒータ2を断熱材(30倍発泡ポリプロピレン;厚さ150mm)で両側から挟み込み熱閉塞状態とした。周囲温度30℃で100Vの電圧を印加し、3時間以上通電した。PTCヒータ2の長さ方向の中央部に両端を含めて幅方向を4等分する5点の温度を熱電対で測定した。その時の最高値を最高温度とした。
140℃での温度上昇:
恒温槽の温度が140℃の中で100Vの電圧を3時間印加し、熱閉塞時と同様にヒータ温度を測定し、温度上昇を求めた。
通常時の床面温度:
室温17℃の測定室内で根太間に30倍発泡ポリエチレン断熱材45mmを敷き、その上に前記床暖房用パネル10及び厚さ12mmの床暖房用床材を敷設した。100Vの電圧を3時間印加した時の床材表面の温度を測定した。
熱サイクル時の経時変化:
恒温槽で−20℃から70℃の温度範囲で熱サイクル処理を行った。熱サイクルの条件は昇降温速度が1℃/minであり、10℃ステップで昇降温し、その温度で20分保持した。15サイクル経過後の23℃の抵抗値の変化率を測定した。
【0045】
〔実施例2〕
実施例2は第1実施形態に対応するもので、熱可塑性樹脂をエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)〔DPDJ6182;日本ユニカー株式会社製〕とし、導電性粒子であるカーボンブラックとの配合比を熱可塑性樹脂122kg/カーボンブラック39kgとした以外は実施例1と同様に床暖房パネル10を製造した。PTCヒータ2の抵抗値R(23℃)は185Ω/mであった。
【0046】
〔実施例3〕
実施例3は第2実施形態に対応するものである。
▲1▼PTCヒータ2の製造
実施例3のPTCヒータ2は熱可塑性樹脂を直鎖状低密度ポリエチレン(Dow製Affinity PL1845)とし、この樹脂と導電性粒子であるカーボンブラックとの配合比を熱可塑性樹脂126kg/カーボンブラック74kgとし、ヒータ幅を235mmとし、実施例1のPET層の上にアルミ層を積層した以外は実施例1のPTCヒータ2と構成が同じである。PTCヒータ2の抵抗値R(23℃)は133Ω/mであった。
▲2▼床暖房装置20の組立
厚さ9mm、幅750mm及び長さ606mmのラワン板からなる箱状体21に3枚のPTCヒータ2を収納する凹部を切削加工し、リード線6を取り付けたPTCヒータ2を設置し、厚さ9mmのラワン板からなる蓋材21AでPTCヒータ2の上面を覆って木質の床暖房用パネルを製造した。
▲3▼PTCヒータ2の性状試験
実施例1と同様に試験を行った。
【0047】
〔実施例4〕
実施例4は第2実施形態に対応するものである。
▲1▼PTCヒータ2の製造
実施例4のPTCヒータ2は熱可塑性樹脂を直鎖状低密度ポリエチレン〔モアテック1018CN:出光石油化学株式会社製〕とし、この樹脂と導電性粒子であるカーボンブラックとの配合比を熱可塑性樹脂128kg/カーボンブラック72kgとした以外は実施例3のPTCヒータ2と構成が同じである。PTCヒータ2の抵抗値R(23℃)は198Ω/mであった。
▲2▼床暖房装置20の組立
実施例3と同じである。
▲3▼PTCヒータ2の性状試験
実施例3と同じである。
【0048】
〔実施例5〕
実施例5は第2実施形態に対応するものである。
▲1▼PTCヒータ2の製造
実施例5のPTCヒータ2は熱可塑性樹脂をエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)〔DPDJ6182;日本ユニカー株式会社製〕とし、この樹脂と導電性粒子であるカーボンブラックとの配合比を熱可塑性樹脂127kg/カーボンブラック73kgとし、200V用ヒータとした以外は実施例3のPTCヒータ2と構成が同じである。PTCヒータ2の抵抗値R(23℃)は450Ω/mであった。
▲2▼床暖房装置20の組立
実施例3と同じである。
▲3▼PTCヒータ2の性状試験
印加する電圧を200Vとした以外は実施例3と同じである。
【0049】
〔実施例6〕
実施例6は第3実施形態に対応するもので、実施例2と同様に100V用PTCヒータ2を製造した。PTCヒータ2の抵抗値R(23℃)は210Ω/mであった。
床暖房装置40は厚さ1mm、幅750mm及び長さ303mmのポリプロピレン製シート32,33を2枚重ねて端部を熱シールして合成樹脂製袋31を製造し、この袋31の内部にPTCヒータ2を収納し、熱シールにより封止して床暖房装置30を得た。PTCヒータ2の性状試験は第2実施例と同じである。
【0050】
〔比較例1〕
比較例1は熱可塑性樹脂を高密度ポリエチレン〔出光ポリエチレン440M;出光石油化学株式会社製〕とし、導電性粒子であるカーボンブラックとの配合比を熱可塑性樹脂130kg/カーボンブラック70kgとした以外は実施例1と同様に床暖房パネル10を製造した。PTCヒータの抵抗値R(23℃)は210Ω/mであった。
〔比較例2〕
比較例2は熱可塑性樹脂を高密度ポリエチレン〔出光ポリエチレン440M;出光石油化学株式会社製〕とし、導電性粒子であるカーボンブラックとの配合比を熱可塑性樹脂135kg/カーボンブラック65kgとした以外は実施例1と同様に床暖房パネル10を製造した。PTCヒータの抵抗値R(23℃)は631Ω/mであった。
〔比較例3〕
比較例3は熱可塑性樹脂を直鎖状低密度ポリエチレン(Dow製Affinity EG8100)とし、導電性粒子であるカーボンブラックとの配合比を熱可塑性樹脂106kg/カーボンブラック94kgとした以外は実施例1と同様に床暖房パネル10を製造した。PTCヒータ2の抵抗値R(23℃)は93Ω/mであった。
【0051】
〔比較例4〕
架橋剤を添加しないことを除いて実施例3と同様に100V用のPTCヒータ2を有する床暖房装置を製造した。
〔比較例5〕
熱処理を施さないことを除いて実施例3と同様に100V用のPTCヒータ2を有する床暖房装置を製造した。
これらの実施例及び比較例の試験結果を次の表1に表す。
【0052】
【表1】
【0053】
この表1によれば、実施例1〜6では、いずれもPTCヒータ2が必要な条件を満たしている。この時、熱閉塞時の最高温度,140℃での温度上昇から実施例1〜6(サーモスタット、温度ヒューズのない床暖房装置)は十分に安全性を保持している。
これに対して、比較例1では、PTCヒータは、ヒータ温度75℃での発熱量PがP(75℃)≦40W/m2という条件を満たしておらず、熱閉塞時の最高温度が90℃となり、床材に損害を与えることが推定される。
比較例2では、PTCヒータは、ヒータ温度30℃での発熱量PがP(30℃)≧90W/m2という条件を満たしておらず、通常時の床面温度が22℃となり、床暖房装置としての十分な発熱量を達成していない。
【0054】
比較例3では、PTCヒータの周囲温度が0℃での突入電流値IがI(0℃)≦7A/m2という条件を満たしていないので、床暖房装置に低温時の突入電流が大きいため、ブレーカや遅延タイマーの設計が困難となる。
比較例4では、PTCヒータは、その周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値PmaxがPmax≦0.40W/m2である、という条件を満たしていないので、140℃でヒータの発熱による昇温が見られる。熱閉塞時の温度は73℃と良好であるが、外部からの加熱等によって周囲の温度が異常に高くなると、再び発熱によって昇温し、熱暴走の危険性がある。
【0055】
比較例5では、PTCヒータの熱処理を行っていないことにより、初期の性状は全て条件を満足するが、熱サイクルでの経時変化で抵抗値が低下することによりPTCヒータは、ヒータ温度75℃での発熱量PがP(75℃)≦40W/m2という条件並びにPTCヒータの周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値PmaxがPmax≦0.40W/m2である、という条件を逸脱する可能性がある。
【0056】
なお、本発明では、前記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲であれば次に示す変形例を含むものである。
例えば、前記各実施の形態では、電極被覆部材14を、複数本の単線13Aを平行にかつ平板状に配列した電極13と発熱組成物とを共押出成形して形成し、かつ、断面矩形状としたが、本発明では、電極被覆部材14に設けられる電極を、複数の単線を縒って断面円形状に形成したものや1本の太い単線から形成したものでもよく、さらには、PTCヒータ2を構成する面状発熱体を発熱抵抗シート12自体に電極用導線の単線を縒って形成した電極線又は1本の太い電極線を設けた構造のものでもよい。
【0057】
さらに、電極被覆部材14に電極13の単線13Aを一列に配列して設けたが、本発明では、電極13の単線13Aを複数列に配列して設けてもよい。
また、電極被覆部材14は発熱抵抗シート12に2本融着されたが、電極被覆部材14の本数は3本以上であってもよい。
また、電極被覆部材14の断面形状は、台形、三角形、五角形等の種々の形状でよい。
【0058】
さらに、本発明で適用される床暖房装置は、床暖房パネル以外に、床に組み込まれる電気カーペット、キッチンマット(台所で使用される足元のヒータ)及び足温器でもよい。
また、本発明の床暖房装置はPTCヒータ2,200に蓄熱材を設けて被加熱部を蓄熱材を介して間接的に加熱する蓄熱式であってもよい。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、一対の電極を被覆し温度の上昇とともに電気抵抗値が増大する正温度係数特性を有する発熱体から形成されるPTCヒータを備え、このPTCヒータは、ヒータ温度75℃での発熱量PがP(75℃)≦40W/m2であり、ヒータ温度30℃での発熱量PがP(30℃)≧90W/m2であり、前記PTCヒータの周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値PmaxがPmax≦0.40W/m2であり、前記PTCヒータの周囲温度が0℃での突入電流値IがI(0℃)≦7A/m2であるから、ヒータが熱閉塞状態にある時並びに外部から加熱された時の異常な昇温を防止するとともに、低温でヒータに通電を開始した際にブレーカが作動する等の不都合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる床暖房装置の分解斜視図である。
【図2】第1実施形態のPTCヒータの一部を破断した斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる床暖房装置の分解斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかる床暖房装置の分解斜視図である。
【図6】本発明の第4実施形態にかかる床暖房装置の分解斜視図である。
【図7】第4実施形態のPTCヒータの斜視図である。
【符号の説明】
10,20,30,40 床暖房装置
2,200 PTCヒータ
12 発熱抵抗シート
13.130 電極
14 電極被覆部材
Claims (5)
- 一対の電極を被覆し温度の上昇とともに電気抵抗値が増大する正温度係数特性を有する発熱体から形成されるPTCヒータと、このPTCヒータの上面を覆う蓋材を有し前記PTCヒータが収納されるとともに床を構成し木材から形成される箱状体とを備え、前記PTCヒータは、ヒータ温度75℃での発熱量PがP(75℃)≦40W/m2であり、ヒータ温度30℃での発熱量PがP(30℃)≧90W/m2であり、前記PTCヒータの周囲温度が抵抗値の最大値を示す温度以上で140℃以下の温度範囲での発熱量の最大値PmaxがPmax≦0.40W/m2あり、前記PTCヒータの周囲温度が0℃での突入電流値IがI(0℃)≦7A/m2であることを特徴とする床暖房装置。
- 請求項1記載の床暖房装置において、前記PTCヒータは被加熱部を直接加熱する直熱式であることを特徴とする床暖房装置。
- 請求項1又は2に記載の床暖房装置において、前記PTCヒータは、前記電極をそれぞれ被覆した複数の電極被覆部材が互いに所定間隔離れて面状発熱抵抗シートに取り付けられた面状発熱体であることを特徴とする床暖房装置。
- 請求項1又は2に記載の床暖房装置において、前記PTCヒータは、線状に形成された線状発熱体であることを特徴とする床暖房装置。
- 請求項1から4のいずれかに記載された床暖房装置を製造する方法であって、前記PTCヒータを前記電極とともに発熱組成物を押し出して成形した後、70℃以上150℃以下で熱処理をしたことを特徴とする床暖房装置の製造方法。
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