JP3906048B2 - 水晶デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータ等の情報処理装置や携帯電話等の電子装置において、時間および周波数の高精度の基準源として使用される温度補償型の水晶デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ等の情報処理装置や携帯電話等の電子装置において時間および周波数の高精度の基準源として使用される温度補償型の水晶デバイスは、一般に、四角板状の水晶基板に電圧印加用の電極を形成して成る水晶振動子と、この水晶振動子の温度補償を行なう半導体素子とを、水晶振動子収納用パッケージ内に気密に収容することによって形成されている。
【0003】
前記水晶振動子収納用パッケージは、一般に、酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、上面中央部に水晶振動子を収容する空所を形成するための凹部を、下面中央部に半導体素子を収容する空所となる凹部を、それぞれ有するとともに、各凹部表面から外表面にかけて導出された、タングステン、モリブデン等の高融点金属等の金属材料から成る配線層を有する基体と、鉄−ニッケル−コバルト合金、鉄−ニッケル合金等の金属材料、または酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックス材料から成る蓋体とから構成されている。
【0004】
そして、水晶振動子の電極を基体上面の凹部内表面に露出する配線層及びその周辺の基体表面に固定材を介して取着することにより、水晶振動子を凹部内に接着固定するとともに配線層に電気的に接続し、また、基体下面の凹部内に半導体素子を収容するとともに半導体素子の電極を配線層に電気的に接続し、しかる後、基体の上面に蓋体を接着材による接着やシーム溶接等の接合手段により取着して基体と蓋体とから成る容器内部に水晶振動子を気密に収容するとともに基体下面の凹部内に収容した半導体素子を蓋体や封止用樹脂で封止することによって製品としての水晶デバイスが完成する。
【0005】
なお、水晶振動子を取着するための固定材としては、一般に、エポキシ樹脂等の有機樹脂と、銀粉末等の導電性粉末とを主材として混合して成る導電性接着材が使用されている。
【0006】
また、蓋体を基体にシーム溶接で取着する場合、通常、予め基体の凹部周囲に枠状のロウ付け用メタライズ層を形成しておくとともにこのメタライズ層に金属枠体をロウ付けし、金属枠体に蓋体をシーム溶接する方法が用いられる。
【0007】
更に前記水晶デバイスの外部電気回路基板への実装は、基体の外表面に導出された配線層を外部電気回路基板の配線導体に半田等の導電性接続材を介して接続することによって行われ、水晶振動子は配線層を介し外部電気回路に電気的に接続されるとともに外部電気回路から印加される電圧に応じて所定の周波数で振動し、基準信号を外部電気回路に供給する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の水晶デバイスは、基体が酸化アルミニウム質焼結体で形成されており、該酸化アルミニウム質焼結体の比誘電率は9〜10(室温、1MHz)と高いことから、基体に設けた配線層を伝わる水晶振動子の基準信号及び半導体素子の駆動信号の伝搬速度が遅く、そのため基準信号を高周波とし信号の高速伝搬を要求される水晶振動子は収容が不可となり、基準信号の周波数が低いものに特定されるという欠点を有していた。
【0009】
またこの従来の水晶デバイスにおいては、基体に形成されている配線層がタングステンやモリブデン、マンガン等の高融点金属材料により形成されており、該タングステン等はその比電気抵抗が5.4μΩ・cm(20℃)以上と高いことから配線層に水晶振動子の基準信号や半導体素子の駆動信号を伝搬させた場合、基準信号や駆動信号に大きな減衰が生じ、基準信号や駆動信号を外部電気回路や水晶振動子と半導体素子との間に正確、かつ確実に伝搬させることができないという欠点を有していた。
【0010】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたものであり、その目的は、基体に搭載した半導体素子により水晶振動子の温度補償を有効に行なうことができ、かつ水晶振動子の基準信号を外部電気回路に高速、かつ正確、確実に供給することができる水晶デバイスを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上面に水晶振動子の搭載部を有し、該搭載部から外表面にかけて配線層が導出されている基体と、前記搭載部の前記配線層に導電性の固定材を介して固定されている水晶振動子とから成る水晶デバイスであって、前記基体がLi2Oを5〜30重量%含有する屈伏点が400〜800℃のリチウム珪酸ガラスを20〜80体積%と、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイト、フォルステライトの少なくとも1種から成るフィラー成分を20〜80体積%の割合で含む形成体を焼成して得られたクォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイトの少なくとも1種の結晶相を含有する焼結体で、前記配線層が2.5μΩ・cm(20℃)以下の比電気抵抗を有する金属材で形成されており、かつ前記固定材は、ゴム粒子および導電性粉末を添加したエポキシ樹脂から成り、弾性率が3.6GPa以下であるとともに、前記水晶振動子は、前記配線層の一部に形成された断面形状が台形の、前記固定材の中の突起を挟んで前記配線層に接着固定されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の水晶デバイスによれば、基体を、Li2Oを5〜30重量%含有する屈伏点が400〜800℃のリチウム珪酸ガラスを20〜80体積%と、クォーツ、トリジマイト、エンスタタイト、フォルステライトの少なくとも1種から成るフィラー成分を20〜80体積%の割合で含む形成体を焼成して得られたクォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイトの少なくとも1種の結晶相を含有する焼結体で形成し、かかる焼結体の比誘電率が約5(室温、1MHz)と低いことから、基体に設けた配線層を伝わる水晶振動子の基準信号や半導体素子の駆動信号等の伝搬速度を速いものとして基準信号を高周波とし信号の高速伝搬を要求する水晶振動子の収容が可能となって基準信号の周波数を非常に高いものとなすことができる。
【0014】
また同時に上記焼結体は焼成温度が850〜1100℃と低いことから基体と同時焼成により形成される配線層を比電気抵抗が2.5μΩ・cm(20℃)以下と低い銅や銀、金で形成することができ、その結果、配線層に水晶振動子の基準信号や半導体素子の駆動信号等を伝搬させた場合、基準信号や駆動信号に大きな減衰が生じることはなく、基準信号や駆動信号を外部電気回路や水晶振動子と半導体素子との間に正確、かつ確実に伝搬させることが可能となる。
【0015】
更に本発明の水晶デバイスによれば、基体に水晶振動子を固定する固定材として、ゴム粒子および導電性粉末を添加したエポキシ樹脂から成り、弾性率が3.6GPa以下であるものを使用するとともに、前記水晶振動子は、前記配線層の一部に形成された断面形状が台形の、前記固定材の中の突起を挟んで前記配線層に接着固定されていることから、この断面形状が台形の突起がスペーサーとなって配線層と水晶振動子との間に一定のスペースが確保され、このスペースに十分な固定材が入り込んで水晶振動子を配線層に極めて強固に接着固定することができるとともに、水晶振動子の作動時に熱が基体と水晶振動子に繰り返し作用して基体と水晶振動子との間に両者の熱膨張係数差に起因する熱応力が繰り返し発生したとしても、その熱応力は固定材を適度に変形させることによって吸収され、固定材に機械的な破壊が招来することはなく、その結果、基体に水晶振動子を長期間にわたり確実、強固に固定することが可能となり、水晶デバイスの長期信頼性を高いものとなすことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に本発明の水晶デバイスについて添付の図面を基にして詳細に説明する。
図1は本発明の水晶デバイスの一実施例を示す断面図であり、図1において、1は基体、2は配線層、3は蓋体である。この基体1と蓋体3とにより形成される容器4内に水晶振動子5を気密に収容するとともに、基体1下面に半導体素子6を搭載収容することにより水晶デバイス7が形成される。
【0017】
前記基体1は、Li2Oを5〜30重量%含有する屈伏点が400〜800℃のリチウム珪酸ガラスを20〜80体積%と、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイト、フォルステライトの少なくとも1種から成るフィラー成分を20〜80体積%の割合で含む形成体を焼成して得られたクォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイトの少なくとも1種の結晶相を含有するガラス質の焼結体で形成されており、その上下両面に凹部1a、1bが設けてあり、上面の凹部1a内には水晶振動子5が収容され、下面の凹部1bには前記水晶振動子5の温度補償を行なうための半導体素子6がロウ材、ガラス、有機樹脂等の接着材を介して接着固定され、搭載収容される。
【0018】
また前記基体1は、上下の凹部1a、1bの表面から外表面にかけて配線層2が導出されており、配線層2の基体1上面側の凹部1a表面に露出する部位に水晶振動子5の電極が導電性接着材等の固定材8を介して接着固定され、基体1下面側の凹部1bに露出する部位には半導体素子6の電極がボンディングワイヤ等の導電性接続部材9を介して接続される。
【0019】
前記焼結体から成る基体1は、例えば、リチウム珪酸ガラスとクォーツ、クリストバライトなどのフィラー成分にアクリル樹脂を主成分とするバインダー及び分散剤、可塑剤、有機溶媒を加えて泥漿物を作るとともに該泥漿物をドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってグリーンシート(生シート)となし、しかる後、前記グリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層し、約850℃〜1100℃の温度で焼成することによって製作される。
【0020】
前記基体1をLi2Oを5〜30重量%含有する屈伏点が400〜800℃のリチウム珪酸ガラスを20〜80体積%と、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイト、フォルステライトの少なくとも1種から成るフィラー成分を20〜80体積%の割合で含む形成体を焼成して得られたクォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイトの少なくとも1種の結晶相を含有する焼結体で形成すると、基体1の比誘電率が約5(室温、1MHz)と低い値になり、その結果、基体1に設けた配線層2を伝わる水晶振動子5の基準信号や半導体素子6の駆動信号の伝搬速度を速いものとして基準信号を高周波とし信号の高速伝搬を要求する水晶振動子5の収容が可能となって基準信号の周波数を非常に高いものとなすことができる。
【0021】
また上述の焼結体はその焼成温度が850℃〜1100℃と低いことから、基体1と同時焼成により形成される配線層2を比電気抵抗が2.5μΩ・cm(20℃)以下と低い銅や銀、金で形成することができ、その結果、配線層2に水晶振動子5の基準信号や半導体素子6の駆動信号等を伝搬させた場合、基準信号や駆動信号に大きな減衰が生じることはなく、基準信号や駆動信号を外部電気回路や水晶振動子と半導体素子との間に正確、かつ確実に伝搬させることが可能となる。
【0022】
なお、前記基体1を形成する焼結体は、リチウム珪酸ガラスを20〜80体積%、フィラー成分を20〜80体積%の割合とするのは、リチウム珪酸ガラスの量が20体積%より少ない、言い換えればフィラー成分が80体積%より多いと液相焼結することができずに高温で焼成する必要があり、その場合、配線層2を銅や銀、金等の融点が低い金属材料で形成しようとしてもかかる金属材料は融点が低いことから焼成時に溶融してしまって配線層2を基体1と同時焼成により形成することができなくなり、またリチウム珪酸ガラスの量が80体積%を超える、言い換えればフィラー成分が20体積%より少ないと焼結体の特性がリチウム珪酸ガラスの特性に大きく依存し、材料特性の制御が困難となるとともに焼結開始温度が低くなるために配線層2との同時焼成が困難となってしまうためである。
【0023】
また前記基体1に使用する焼結体は、Li2Oを5〜30重量%、好適には5〜20重量%の割合で含有するリチウム珪酸ガラスを用いることが重要であり、このようなリチウム珪酸ガラスを用いることによりリチウム珪酸を析出させることができる。なお、Li2Oの含有量が5重量%より少ないと、焼結時にリチウム珪酸の結晶の生成量が少なくなって高強度化が達成できず、30重量%より多いと誘電正接が100×10-4を超えるため基体1としての特性が劣化する。
【0024】
また、この焼結体中にはPbを実質的に含まないことが望ましい。これは、Pbが毒性を有するため、Pbを含有すると製造工程中での被毒を防止するための格別な装置及び管理を必要とするために焼結体を安価に製造することができないためである。なお、Pbが不純物として不可避的に混入する場合を考慮すると、Pbの量は0.05重量%以下であることが望ましい。
【0025】
更に前記焼結体の屈伏点が400〜800℃、特に400〜650℃であることも、リチウム珪酸ガラス及びフィラー成分から成る混合物を成形する場合に添加する有機バインダー、溶剤の焼成時における効率的な除去及び基体1と同時に焼成される配線層2との焼成条件のマッチングを図るために重要である。屈伏点が400℃より低いとリチウム珪酸ガラスが低い温度で焼結を開始するために、例えば、銀や銅等の焼結開始温度が600〜800℃の金属材料を用いた配線層2との同時焼成ができず、また成形体の緻密化が低温で開始するために有機バインダー、溶媒が分解揮散できなくなって、焼結体中に残留し、焼結体の特性に悪影響を及ぼす結果になるためである。一方、屈伏点が800℃より高いと、リチウム珪酸ガラスを多くしないと焼結しにくくなるためであり、高価なリチウム珪酸ガラスを大量に必要とするために焼結体のコストを高めることにもなるためである。
【0026】
上記特性を満足するリチウム珪酸ガラスとしては、例えば、
SiO2−Li2O−Al2O3、
SiO2−Li2O−Al2O3−MgO−TiO2、
SiO2−Li2O−Al2O3−MgO−Na2O−F、
SiO2−Li2O−Al2O3−K2O−Na2O−ZnO、
SiO2−Li2O−Al2O3−K2O−P2O5、
SiO2−Li2O−Al2O3−K2O−P2O5−ZnO−Na2O、
SiO2−Li2O−MgO、
SiO2−Li2O−ZnO
等の組成物が挙げられ、このうち、SiO2は、リチウム珪酸を形成するために必須の成分であり、ガラス全量中60〜85重量%の割合で存在し、SiO2とLi2Oとの合量がガラス全量中65〜95重量%であることがリチウム珪酸結晶を析出させる上で望ましい。
【0027】
一方、フィラー成分としては、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイト、フォルステライトの少なくとも1種を20〜80体積%、特に30〜70体積%の割合で配合することが望ましい。このようなフィラー成分の組合せにより焼結体の焼結を促進することができ、中でもクォーツ/フォルステライト比が0.427以上であれば、比誘電率が高いフォルステライトを焼結中に比誘電率の低いエンスタタイトに変えることができる。
【0028】
上記のリチウム珪酸ガラスおよびフィラー成分は、リチウム珪酸ガラスの屈伏点に応じ、その量を適宜調整することが望ましい。すなわち、リチウム珪酸ガラスの屈伏点が400℃〜600℃と低い場合、低温での焼結性が高まるためフィラー成分の含有量は50〜80体積%と比較的多く配合できる。これに対して、リチウム珪酸ガラスの屈伏点が650℃〜850℃と高い場合、焼結性が低下するためフィラー成分の含有量は20〜50体積%と比較的少なく配合することが望ましい。このリチウム珪酸ガラスの屈伏点は配線層2の焼成条件に合わせて制御することが望ましい。
【0029】
さらにリチウム珪酸ガラスは、フィラー成分無添加では収縮開始温度は700℃以下で、850℃以上では溶融してしまい、配線層2を基体1に同時焼成により被着形成することができない。しかし、フィラー成分を20〜80体積%の割合で混合しておくと、焼成温度を上昇させ、結晶の析出とフィラー成分を液相焼結させるための液相を形成させることができる。このフィラー成分の含有量の調整により基体1と配線層2との同時焼成条件をマッチングさせることができる。さらに、原料コストを下げるために高価なリチウム珪酸ガラスの含有量を減少させることができる。
【0030】
例えば、配線層2として銅を主成分とする金属材料により構成する場合、配線層2の焼成は600〜1100℃で行なわれるため、同時焼成を行なうには、リチウム珪酸ガラスの屈伏点は400℃〜650℃で、フィラー成分の含有量は50〜80体積%であるのが好ましい。また、このように高価なリチウム珪酸ガラスの配合量を低減することにより焼結体のコストも低減できる。
【0031】
このリチウム珪酸ガラスとフィラー成分との混合物は、適当な成形用の有機バインダー、溶剤等を添加した後、所望の成形手段、例えばドクターブレード法、圧延法、金型プレス法等によりシート状等の任意の形状に成形後、焼成する。
【0032】
焼成にあたっては、まず、成形のために添加した有機溶剤、溶媒成分を除去する。有機バインダー、溶剤成分の除去は通常700℃前後の大気雰囲気中で行なわれるが、配線層2として銅を用いる場合には、水蒸気を含有する100〜700℃の窒素雰囲気中で行なわれる。このとき、成形体の収縮開始温度は700〜850℃程度であることが望ましく、かかる収縮開始温度がこれより低いと有機バインダー、溶剤成分の除去が困難となるため、成形体中のリチウム珪酸ガラスの特性、特に屈伏点を前述したように制御することが必要となる。
【0033】
焼成は、850℃〜1100℃の酸化性雰囲気中で、あるいは配線層2と同時焼成する場合には非酸化性雰囲気中で行なわれ、これにより相対密度90%以上まで緻密化される。このときの焼成温度が850℃より低いと緻密化することができず、一方、1100℃を超えると配線層2との同時焼成で配線層2が溶融してしまう。なお、配線層2として銅を用いる場合には、850℃〜1100℃の非酸化性雰囲気中で行なわれる。
【0034】
また前記基体1に形成されている配線層2は、凹部1a、1b内に収容されている水晶振動子5および半導体素子6と外部電気回路基板の配線導体とを電気的に接続する作用をなし、例えば、金、銀、銅等の比電気抵抗が2.5μΩ・cm(20℃)以下の金属材により形成されており、銅から成る場合であれば、銅粉末に適当な有機溶剤、有機バインダー等を添加混合して得た金属ペーストを、基体1となるグリーンシートの表面にスクリーン印刷法等で所定パターンに印刷塗布しておくことによって形成される。
【0035】
前記配線層2は、その露出する表面をニッケル、金等の耐食性およびロウ材との濡れ性の良好な金属から成るめっき層(不図示)で被覆しておくと、配線層2の酸化腐食を良好に防止することができるとともに、配線層2に対する半田等のロウ材の濡れ性を良好とすることができ、外部電気回路基板の配線導体に対する配線層2の接続をより一層容易、かつ確実なものとすることができる。従って、前記配線層2は、その露出する表面をニッケル、金等のめっき層、例えば、順次被着された厚み1μm〜10μmのニッケルまたはニッケル合金めっき層、厚み0.1〜3μmの金めっき層で被覆しておくことが好ましい。
【0036】
また前記配線層2の表面をニッケル、金等のめっき層で被覆する場合、その最表面の算術平均粗さ(Ra)を1.5μm以下、自乗平均平方根粗さ(Rms)を1.8μm以下としておくと最表面の光の反射率が40%以上となって水晶振動子5の電極を配線層2に固定材8を介して固定する際、および半導体素子6の電極を配線層2にボンディングワイヤ等の導電性接続部材9を介して電気的接続する際、その位置決め等の作業が容易となる。従って、前記配線層2の表面をニッケル、金等のめっき層で被覆する場合、その最表面の算術平均粗さ(Ra)を1.5μm以下、自乗平均平方根粗さ(Rms)を1.8μm以下としておくことが好ましい。
【0037】
更に前記配線層2の表面を被覆するニッケル、金等からなるめっき層の最表面の算術平均粗さ(Ra)を1.5μm以下、自乗平均平方根粗さ(Rms)を1.8μm以下とするには配線層2を従来周知のワット浴にイオウ化合物等の光沢剤を添加した電解ニッケルめっき液に浸漬して配線層2の表面にニッケルめっき層を被着させ、しかる後、シアン系の電解金めっき液中に浸漬し、ニッケルめっき層表面に金めっき層を被着させることによって行なわれる。
【0038】
前記配線層2のうち基体1上面側の凹部1a表面に露出する部位には水晶振動子5が固定材8を介して固定されており、該固定材8は、ゴム粒子および導電性粉末を添加したエポキシ樹脂の弾性率が3.6GPa以下のもので形成されている。
【0039】
前記固定材8はその弾性率が3.6GPa以下であり、変形し易いことから、水晶振動子5の温度補償を行なう半導体素子6が作動時に熱を発生し、その熱が基体1と水晶振動子5に繰り返し作用して基体1と水晶振動子5との間に両者の熱膨張係数差に起因する熱応力が繰り返し発生したとしても、その熱応力は固定材8を適度に変形させることによって吸収され、固定材8に機械的な破壊が招来することはなく、その結果、基体1に水晶振動子5を長期間にわたり確実、強固に固定することが可能となり、水晶デバイス7の長期信頼性を高いものとなすことができる。
【0040】
前記固定材8はその弾性率が3.6GPaを超えると水晶振動子5の温度補償を行なう半導体素子6の発した熱が基体1と水晶振動子5の両者に繰り返し作用し、基体1と水晶振動子5との熱膨張係数差に起因する熱応力が固定材8に繰り返し作用した場合に固定材8に機械的な破壊を招来して水晶振動子5の固定材8を介しての固定が破れ、水晶デバイス7の信頼性が大きく低下してしまう。従って、前記固定材8はその弾性率が3.6GPa以下のものに特定され、2.8GPa以下のものであることがより一層好ましい。
【0041】
前記弾性率が3.6GPa以下の固定材8としては、例えば、アクリルゴム、イソプレンゴム等のゴム粒子を添加したエポキシ樹脂に対して、銀粉末等の導電性粉末を15乃至60重量%の割合で添加したものが好適に使用される。
【0042】
また前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ゴム変性型、ウレタン変性型等のエポキシ樹脂、特に未硬化時に粘液状(室温)のものが好適に使用される。この場合、エポキシ樹脂へのゴム粒子の添加量を増加させることにより固定材8の弾性率を低下させることができ、エポキシ樹脂の状態(構造、架橋度、重合度、硬化剤の種類等)に応じて適宜ゴム粒子の添加量を制御することにより固定材の弾性率を3.6GPa以下とすることができる。またエポキシ樹脂へのゴム粒子の添加量が50重量%を超えると、未硬化の樹脂組成物の流動性が大きく低下し、水晶振動子5の電極と配線層2との間に固定材8を均一に介在させることが困難となり、水晶振動子5を基体1に強固に固定することが困難となる傾向にある。従って、エポキシ樹脂中にゴム粒子を添加する場合、その添加量は、固定材8の弾性率を3.6GPa以下とする範囲で、50重量%以下としておくことが好ましい。
【0043】
前記固定材8は、またその弾性率が0.1GPa未満になると、変形し易くなりすぎるため水晶振動子5を基体1の凹部1a内の所定位置に確実に接着固定しておくことが困難となる傾向がある。従って、前記固定材8はその弾性率を3.6GPa以下の範囲で、かつ0.1GPa以上としておくことが好ましい。
【0044】
なお、前記弾性率が3.6GPa以下の固定材8は、上述のエポキシ樹脂組成物に限らず、シリコーン樹脂等の低弾性率の熱硬化性樹脂、またはシリコーン樹脂等にシリカ等のフィラー成分を添加した樹脂組成物に導電性粉末を添加することにより形成してもよい。
【0045】
また前記水晶振動子5が固定材8を介して接着固定されている基体1は、その上面に蓋体3が取着され、これによって基体1と蓋体3とから成る容器4内部に水晶振動子5が気密に収容される。
【0046】
前記蓋体3は、鉄−ニッケル−コバルト合金、鉄−ニッケル合金等の金属材料や、酸化アルミニウム質焼結体等のセラミック材料により形成され、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金のインゴット(塊)に圧延加工、打ち抜き加工等の周知の金属加工を施すことによって形成される。
【0047】
更に前記蓋体3の基体1への取着は、ロウ材、ガラス、有機樹脂接着剤等の接合材を介して行う方法や、シーム溶接等の溶接法により行うことができ、例えば、蓋体3をシーム溶接にて取着する場合は通常、基体1上面の凹部1a周囲に枠状のロウ付け用メタライズ層11を配線層2と同様の方法で被着させておくとともに、該ロウ付け用メタライズ層11に金属枠体12を銀ロウ等のロウ材を介してロウ付けし、しかる後、前記金属枠体12に金属製の蓋体3を載置させるとともに蓋体3の外縁部をシーム溶接することによって行われる。この場合、金属枠体12は、その上面と側面との間の角部に曲率半径が5〜30μmの丸みを形成しておくと金属枠体12の上面側にバリが形成されることがなく、この金属枠体12の上面に蓋体3をシーム溶接する際に両者を信頼性高く気密に、かつ強固に接合させることができる。従って、前記金属枠体12はその上面と側面との間の角部を曲率半径が5〜30μmの丸みをもたせるようにしておくことが好ましい。
【0048】
また更に、前記金属枠体12は、その下面と側面との間の角部に曲率半径が40〜80μmの丸みを形成しておくと、該金属枠体12をロウ付け用メタライズ層11にロウ材を介して接合する際、ロウ付け用メタライズ層11と金属枠体12の下面側角部との間に空間が形成されるとともに該空間にロウ材の大きな溜まりが形成されて金属枠体12のロウ付け用メタライズ層11への接合が強固となる。従って、前記金属枠体12をロウ付け用メタライズ層11にロウ材を介して強固に接合させるには金属枠体12の下面と側面との間の角部に曲率半径が40〜80μmの丸みを形成しておくことが好ましい。
【0049】
また一方、前記基体1の下面に設けた凹部1bには水晶振動子5の温度補償を行なうための半導体素子6が収容固定されており、該半導体素子6によって水晶振動子5の振動周波数が温度変化によって変動するのを制御し、常に一定とする作用をなす。
【0050】
前記半導体素子6はガラス、樹脂、ロウ材等の接着材を介して基体1の下面に設けた凹部1bの底面に接着固定され、半導体素子6の各電極はボンディングワイヤ等の導電性接続部材9を介して基体1の凹部1bに露出する配線層2に電気的に接続されている。
【0051】
また前記基体1の凹部1b内に収容されている半導体素子6は凹部1b内に充填させた封止樹脂10によって気密に封止されている。
【0052】
なお、前記半導体素子6の封止は封止樹脂10で行なうものに限定されるものではなく、基体1の下面に蓋体を、凹部1bを塞ぐように取着させることによって行なってもよい。
【0053】
かくして上述の水晶デバイス7によれば、配線層2を外部電気回路に接続し、水晶振動子5の電極に所定の電圧を印加させることによって水晶振動子5が所定の振動数で振動するとともに、半導体素子6により水晶振動子5の温度補償が行なわれ、コンピュータ等の情報処理装置や携帯電話等の電子装置において時間および周波数の高精度の基準源として使用される。
【0054】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば、図2に示すように、配線層2の一部に突起13を形成しておくと、この突起13がスペーサーとなって配線層2と水晶振動子5との間に一定のスペースが確保され、このスペースに十分な固定材8が入り込んで水晶振動子5を配線層2に極めて強固に接着固定することができる。
【0055】
また上述の水晶デバイス7では基体1上面に凹部1aを設け、該凹部1a内に水晶振動子5を収容するようになしたが、これを図3に示す如く、平坦な基体1上に水晶振動子5を搭載固定し、該固定された水晶振動子5を椀状の蓋体3で気密に封止するようになした水晶デバイス7にも適用し得る。
【0056】
【発明の効果】
本発明の水晶デバイスによれば、基体をLi2Oを5〜30重量%含有する屈伏点が400〜800℃のリチウム珪酸ガラスを20〜80体積%と、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイト、フォルステライトの少なくとも1種から成るフィラー成分を20〜80体積%の割合で含む形成体を焼成して得られたクォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイトの少なくとも1種の結晶相を含有する焼結体で形成し、かかる焼結体の比誘電率が約5(室温、1MHz)と低いことから、基体に設けた配線層を伝わる水晶振動子の基準信号や半導体素子の駆動信号等の伝搬速度を速いものとして基準信号を高周波とし信号の高速伝搬を要求する水晶振動子の収容が可能となって基準信号の周波数を非常に高いものとなすことができる。
【0057】
また同時に上記焼結体は焼成温度が850〜1100℃と低いことから基体と同時焼成により形成される配線層を比電気抵抗が2.5μΩ・cm(20℃)以下と低い銅や銀、金で形成することができ、その結果、配線層に水晶振動子の基準信号や半導体素子の駆動信号等を伝搬させた場合、基準信号や駆動信号に大きな減衰を生じることはなく、基準信号や駆動信号を外部電気回路や水晶振動子と半導体素子との間に正確、かつ確実に伝搬させることが可能となる。
【0058】
更に本発明の水晶デバイスによれば、基体に水晶振動子を固定する固定材として、ゴム粒子および導電性粉末を添加したエポキシ樹脂から成り、弾性率が3.6GPa以下であるものを使用するとともに、前記水晶振動子は、前記配線層の一部に形成された断面形状が台形の、前記固定材の中の突起を挟んで前記配線層に接着固定されていることから、この断面形状が台形の突起がスペーサーとなって配線層と水晶振動子との間に一定のスペースが確保され、このスペースに十分な固定材が入り込んで水晶振動子を配線層に極めて強固に接着固定することができるとともに、水晶振動子の作動時に熱が基体と水晶振動子に繰り返し作用して基体と水晶振動子との間に両者の熱膨張係数差に起因する熱応力が繰り返し発生したとしても、その熱応力は固定材を適度に変形させることによって吸収され、固定材に機械的な破壊が招来することはなく、その結果、基体に水晶振動子を長期間にわたり確実、強固に固定することが可能となり、水晶デバイスの長期信頼性を高いものとなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水晶デバイスの一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の水晶デバイスの他の実施例を示す要部断面図である。
【図3】本発明の水晶デバイスの他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・基体
1a・・・・凹部
1b・・・・凹部
2・・・・・配線層
3・・・・・蓋体
4・・・・・容器
5・・・・・水晶振動子
6・・・・・半導体素子
7・・・・・水晶デバイス
8・・・・・固定材
9・・・・・導電性接続部材
10・・・・封止樹脂
11・・・・ロウ付け用メタライズ層
12・・・・金属枠体
13・・・・突起
Claims (1)
- 上面に水晶振動子の搭載部を有し、該搭載部から外表面にかけて配線層が導出されている基体と、前記搭載部の前記配線層に導電性の固定材を介して固定されている水晶振動子とから成る水晶デバイスであって、
前記基体がLi2Oを5〜30重量%含有する屈伏点が400〜800℃のリチウム珪酸ガラスを20〜80体積%と、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイト、フォルステライトの少なくとも1種から成るフィラー成分を20〜80体積%の割合で含む形成体を焼成して得られたクォーツ、クリストバライト、トリジマイト、エンスタタイトの少なくとも1種の結晶相を含有する焼結体で、前記配線層が2.5μΩ・cm以下の比電気抵抗を有する金属材で形成されており、かつ前記固定材は、ゴム粒子および導電性粉末を添加したエポキシ樹脂から成り、弾性率が3.6GPa以下であるとともに、前記水晶振動子は、前記配線層の一部に形成された断面形状が台形の、前記固定材の中の突起を挟んで前記配線層に接着固定されていることを特徴とする水晶デバイス。
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