JP3905756B2 - 補強半導体基板の製造方法及び製造装置 - Google Patents

補強半導体基板の製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多結晶又は単結晶の半導体基板、特に太陽電池の製造方法及び装置に関し、特に、強度を強化するために、補強材により補強した太陽電池セルの製造方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽電池セル用の半導体シリコン基板は、内周刃スライサ、外周刃スライサ、ワイヤーソーなどを用いて単結晶、又は多結晶の半導体インゴットから300〜350μm程度の厚さに切出される。太陽電池の製造においては、切出されたシリコン基板に光電変換を行うP/N接合を形成し、基板表面での光反射を小さくし基板内へ光の入射を増大させる反射防止膜や光電変換電流を効率良く取り出すための電極などが形成される。
【0003】
さらに、導電性の金属板からなるインターコネクタを太陽電池間に接続し、数十枚の太陽電池セルを含む太陽電池モジュールが製造される。太陽電池モジュールは、アレイ状に配列された数十枚の太陽電池セルの表側にガラス板が透明樹脂で接合されており、裏側に絶縁フィルム及び湿気を防ぐための防湿フィルムなどが設けられて、太陽電池セル回路の両端から外部に電流を取り出すための端子が引き出されている。
【0004】
このような太陽電池モジュールのコスト低減を図るには、コストの大きい部分を占める半導体シリコン基板を薄くし、高価なシリコン材料の使用量を削減する必要がある。しかし、シリコン基板を薄くすると、太陽電池モジュールの製造工程中で太陽電池セルの割れが発生しやすくなり歩留まりが低下するとともに、モジュールの品質、信頼性の低下が懸念される。このため、従来の量産太陽電池セルのシリコン基板は、300〜350μm程度の厚さとすることが一般的である。
【0005】
シリコンウェハを薄くスライスすればシリコン基板、太陽電池セル、さらには、大量電池モジュールの製造工程において、シリコン基板のエッジ部に目にみえない小さい亀裂、傷、欠けなどが発生しやすくなり、それらを基点に大きな割れに発展する確率が高くなる。工程中の割れは、材料の損失、割れた基板の取替え、割れた欠片を製造装置から除去するための追加作業が必要になるなど、太陽電池モジュール製造のコスト上昇の原因となる。特に、太陽電池モジュールの製造中に太陽電池シリコン基板が割れた場合、モジュール全体が不良となり損失が大きい。また、モジュール完成後に異常がなくてもシリコン基板が薄くなると使用中の温度サイクルなどにより割れが発生しやすくなる懸念があった。
【0006】
このような従来技術における課題に鑑み、出願人は、太陽電池セルの少なくとも部分的領域に補強材などを設けた補強太陽電池セルについて特許出願(特願2001−177995)し、工程中の割れの低減を実現した。図10、図11に従来行われていた補強された太陽電池セルの構成例を示す。図10は太陽電池セルの表面図、図11(a)は太陽電池セルの背面図、図11(c)は太陽電池セルの一部断面側面図を示す。太陽電池セル50は、シリコンウエハ51の表面には、グリッド状電極52、バスパー電極53が図10に示すように配置されている。また、太陽電池セル50の裏面は、アルミ電極によって覆われており、太陽電池セルの裏面における周辺部にエポキシ樹脂54によって補強されている。
【0007】
一般に、補強用のエポキシ樹脂54を図11に示すように成型する場合、ディスペンス法によって樹脂を塗布する方法が使われている。しかし、このような所定幅の塗布パターンを作成する場合、ディスペンサーのノズルの形状は数ミリメートル程度と小さいために、所定幅Wの塗布幅になるように、数周にわたって塗布を行っており、その結果タクトタイムが長くなるという問題があった。また、ノズルを複数本並べて所定の塗布幅で塗布する方法もあるが、この方法では、ノズルの数が多くなり、装置コストが高くなるという問題がある。
【0008】
また、樹脂を硬化させるために、塗布した後に熱処理を行うが、太陽電池セルを加熱した後で冷却した場合、太陽電池セルの線膨張係数の差により太陽電池セルの反りが発生する。図12は、熱処理温度と処理後の太陽電池セルの反りの量との関係を示すグラフである。図中の反り量は熱処理温度が120℃であるときを100として相対値として示している。図12に示すように、反りの程度は、熱処理の温度が高いほど増加する関係にあり、反りを小さくするためには熱処理温度を低く抑える必要があった。
【0009】
一方、熱処理温度は熱処理に要する時間と図13のグラフに示すような関係がある。図13では熱処理温度が100℃のときを100として相対値を示している。図13に示すように、熱処理温度を低くすると熱処理時間を長くする必要があり、タクトタイムがさらに増加することになる。
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、熱処理後の太陽電池セル等の反りを抑え、安価に樹脂塗布のタクトタイムを短縮することができる補強半導体基板の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の補強半導体基板の製造方法を提供する。
【0012】
補強半導体基板の製造方法は半導体基板の表面の周囲に熱硬化性材料を一定の塗布幅で塗布する塗布工程と、
塗布後に前記半導体基板を第1の熱処理温度で熱処理し、前記熱硬化性材料の粘度を低下させて前記塗布幅を広げる第1熱処理工程と、
第1の熱処理後に前記半導体基板を前記第1の熱処理温度より低温の第2の熱処理温度で熱処理し、前記熱硬化性材料を硬化させる第2熱処理工程とを備える。
【0013】
上記方法において、半導体基板は、シリコンインゴットをスライスして得られたシリコンウエハやシリコンウエハに処理を加えた基板、例えば、電極を付した太陽電池セルなどが含まれる。熱硬化性材料は、高温の熱雰囲気下における熱処理工程において硬化するエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂などが好適に使用できる。
【0014】
上記方法においては、熱処理工程を、第1の熱処理温度で熱処理する第1熱処理工程と、第2の熱処理温度で熱処理する第2熱処理工程とに分けることによって、熱処理温度に対する半導体基板の反り量や製造工程に要するタクトタイムについて調整することができ、半導体基板の反りや補強工程の時間の短縮を図ることができる。したがって、熱処理後の太陽電池セルの反りを抑え、安価に補強工程のタクトタイムを短縮することができる。
【0015】
本発明の補強半導体基板の製造方法は、具体的には以下のように種々の態様とすることができる。
【0017】
上記方法において、第1の熱処理温度を第2の熱処理温度より高くすることで、第1の熱処理での粘度低下による塗布幅の広がりに要する時間が短縮され、かつ第2の処理層での半導体基板の反りが少なくすることができる。好ましくは、第1の熱処理温度は、110℃から130℃であり、第2の熱処理温度は、90℃から110℃である。
【0018】
好ましくは、前記塗布工程は、ディスペンス法による。
【0019】
上記構成において、ディスペンス法は、ディスペンサーを用いてそのノズルから液状の熱硬化性材料を吐出しながら半導体基盤の表面に塗布する方法である。上述のように、ディスペンサーのノズルは細く小さいため、従来の製造方法によれば、熱硬化性材料が所定幅に塗布されるように、何周にもわたって半導体基板上を塗布したり、複数のディスペンサーを用いてノズルを並べて塗布することにより所定幅の塗布層を設けていた。しかし、上記方法においては、第1の熱処理温度を第2の熱処理温度より高くすることで、第1の熱処理での粘度低下による塗布幅の広がりに要する時間が設けられており、細い幅で塗布された熱硬化性材料の粘度の低下が図られるため、熱硬化剤がその周囲に流れての塗布層が広がる。よって、塗布幅を広くすることができ、あらかじめ塗布層を所定の幅に塗布する必要がないため、ノズルを複数設けたり数周回塗布する必要がない。よって、通常広く行われているディスペンス法を用いて安価に塗布を行うことができる。
【0020】
また、好ましくは、前記塗布工程は、印刷法によっても上記方法は好適に使用することができ、従来広く行われている印刷法を用いて安価に塗布を行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態に係る補強半導体の製造装置について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明にかかる補強半導体の製造方法の流れを示す基本概念図である。本実施形態は、未補強の太陽電池セルに補強材を付して割れないように補強した補強太陽電池セルを製造するものであり、図1に示すように、塗布工程#1、第1の熱処理工程#2、第2の熱処理工程#3の各工程を要する。第1及び第2の熱処理工程は、それぞれ所定の熱処理温度において処理がなされるので、それぞれ独立の装置を用いてもよいし、後述するように、装置の構造により単一の装置で温度管理することができるようにしてもよい。
【0023】
太陽電池セルに付される補強材のサイズは、幅が10mm、厚さは0.2〜0.3mmであることが好ましい。この値はセル製造工程において試験的に補強したセルを流し、製造歩留まりが向上し、かつ樹脂の材料使用量が少なくなる最適値を求めた結果である。
【0024】
本実施形態においては、外形125mm角、厚さは300μmの太陽電池セルを用いる。一般的に太陽電池セルはp型シリコンウエハーにnドーピングを行ない、反射防止膜を形成した後、表裏面に電極を形成して製造される。
【0025】
このようにして電極が形成された太陽電池セルは、図2に示すように、塗布工程#1においてその周囲にエポキシ樹脂11が塗布される。塗布されるエポキシ樹脂は樹脂の管理のしやすさ(冷暗所が必要でない)、コスト(1液性に比べ安価)、アウトガスの発生量(アウトガスはモジュールにする場合の阻害要因)から2液性のエポキシ樹脂(例えば、バンディコ株式会社製主材XJ4749、硬化材XJ4750)が望ましいが、特に1液性樹脂であっても良い。
【0026】
塗布方法は、ディスペンサーにて2液を混合した後塗布される。ディスペンサーとしてはプランジャー式、ギアポンプ式があるがこの場合どちらでもよい。このときの塗布幅Wはほぼノズル径と同程度の2〜3mmである。この幅は、上記の補強部の幅よりも小さいが、後述のように熱処理工程を経ることで、上記幅となる。このような塗布幅Wとすることにより、ノズル形状程度の幅で1周塗布することにより従来のように数周塗布するよりもはるかに塗布時間は短くて済む。また塗布幅が小さいのでノズルを複数用いる必要も無い。なおこのときのエポキシ樹脂の塗布量はセルサイズに比例し、上記太陽電池セル形状の場合1g程度である。
【0027】
塗布工程が終了すると、第1の熱処理工程が行われる。第1の熱処理工程は、本実施例において第1の熱処理温度は120℃とした。このように温度設定をしたのは、後述するように第1熱処理工程の熱処理温度として好適であるためである。従って、太陽電池セル1上に塗布された樹脂11は粘度の低下に伴い、エポキシ樹脂が流動して図3に示すように広がり、上述の好適な範囲である塗布幅W10mm、厚みH0.2〜0.3mmとなる。また、太陽電池セルにひびなどの損傷が生じている場合であっても、このときにひびの部分に樹脂が浸透するため、後の工程において硬化させることで、損傷部分の補強の効果が得られる。
【0028】
第1の熱処理工程では図2のように塗布されたセル1に熱処理を加え、塗布された樹脂の粘度を一時低下させている。図4に熱処理温度と熱処理後の一定時間経過後(図4においては40秒)の樹脂の粘度との関係を示す。なお図中粘度は熱処理温度が100℃の時を100とする相対値を示している。このように熱処理により樹脂の粘度は熱処理温度が高ければ低い粘度となる。
【0029】
次に第1の熱処理工程#2の終了後、太陽電池セルは第2の熱処理工程において処理される。第2の熱処理工程#3では図3のように第1の熱処理がなされたセル2に更に第2の熱処理温度で熱処理を加え、塗布された樹脂を熱硬化させる。
【0030】
第2の熱処理温度としては、後述するようにセルの基板の反りの関係上100℃が望ましい。このように第2の熱処理温度を第1の熱処理温度より低くすることにより、第1の熱処理での粘度低下による塗布幅の広がりに要する時間が短縮され、かつ第2の熱処理での太陽電池セル2の反りが少なくなる利点を有する。また、第2の熱処理工程は、第1の熱処理工程よりも熱処理温度が低くても、補強材を硬化ならしめることができるため、第1の熱処理工程よりも処理時間を長くしても太陽電池セルの反りの程度を小さくすることができる。
【0031】
本実施形態にかかる製造方法の効果を図5を用いて説明する。図5において、横軸は経過時間、縦軸は経過時間ごとの粘度(硬化時は硬度)の推定値を示す。図5でTは本実施例における条件での結果で、T11は第1の熱処理時間、T12は第2の熱処理時間を示す。2液性のエポキシの場合T11はT12に比べ短い時間で処理可能であり、T11の時間が必要以上に長いと硬化が開始され粘度が逆に大きくなる。すなわちT12の開始はT11による粘度管理を前もって実施し、硬化が開始される時間または粘度がこれ以上低下しない時間を開始時間とすると最適である。Tは、熱処理工程を1段階で行ったときの処理条件での結果で、T01は熱硬化中の本実施例の第1の熱処理に相当する時間(粘度低下中の時間)を示し、T02は熱硬化中の本実施例の第2の熱処理に相当する時間(硬化時間)を示している。このように本実施例では従来実施に比べタクト時間短縮に効果がある。
【0032】
またこの方法によると、第1の熱処理工程において塗布された補強材の粘度が低下して流動し塗布幅が広くなるため、補強材の塗布時において塗布幅を所定の幅にする必要がない。よって、ノズルを複数用いたり、あるいは数周回塗布する必要がなく、装置コストの削減、タクト短縮に効果がある。なお上記実施例としてディスペンサーによる樹脂の塗布の実施例を示したが、塗布装置としてはこれに限るわけでなく、印刷機、スプレー等によるパターンを形成可能な塗布装置であっても同様の効果が期待できる。印刷方式、スプレー方式の場合使用されるエポキシ樹脂はメンテナンスのしやすさから1液性のエポキシ樹脂が望ましいが、2液性のエポキシ樹脂であっても良い。また本実施例では発明者が試験に用いた樹脂を用いて粘度等の測定を行なったが、他の樹脂も同様な傾向を示し、本実施例で示す試験により熱処理温度と粘度の相関を得ることにより同様な効果が得られる。
【0033】
上述のように、第1及び第2の熱処理工程を行うために、それぞれの処理温度になるように独立した装置によって行うことも可能であるが、単一の装置を用いて上記各熱処理工程を行うようにすることもできる。以下、単一の装置を用いて第1及び第2の熱処理工程を行う場合について説明する。
【0034】
図6は、本発明に係る方法を実施するための装置の第1実施形態の構成を示す概略図である。図6に示すように、この装置は、塗布装置20、熱処理装置21とで構成されている。すなわち、塗布装置20によって補強前の太陽電池セルにエポキシ樹脂を塗布する。この塗布装置20は、ディスペンス法によりエポキシ樹脂を塗布する装置であるが、印刷法により塗布するものであってもよい。
【0035】
次に上記樹脂が塗布された太陽電池セル1は、搬送機によって、熱処理装置に投入され、連続的に出口方向へ搬送される。なお太陽電池セルの搬送機の機構は本発明に直接関係なく、詳細な説明は省略するがピックアンドプレースまたはコンベアのような広く用いられている搬送手段を用いている。
【0036】
熱処理装置は、炉内に第1のヒーター22、第2のヒーター23との2つのヒーターを備えている。第1のヒーター22は、所定の熱処理温度tに設定されており、第1のヒーターの近傍を通過する太陽電池セル1に第1の熱処理温度(120℃)を付与する。第2のヒーター23は、所定の熱処理温度tに設定されており、第2のヒーターの近傍を通過する太陽電池セル1に第2の熱処理温度(100℃)を付与する。このように同一炉内で第1の熱処理と第2の熱処理とを与えることが可能であるために装置コストが低減可能である。
【0037】
図7は、本発明に係る方法を実施するための装置の第2実施形態の構成を示す概略図である。図7に示すように、この装置は、塗布装置20、熱処理装置24とで構成されている。塗布装置20は、図6に示した塗布装置と同様のものが使用できる。
【0038】
上記樹脂が塗布された太陽電池セル1は、搬送機によって、熱処理装置に投入され、連続的に出口方向へ搬送される。熱処理装置24は、炉の外装26内にヒーター25を有しており、そのヒーターは、熱処理装置24の入口に近い部分にのみ設けられており、搬送路の下流側には設けられていない。したがって、太陽電池セル1は、熱処理装置24に搬入されるとすぐにヒーター25によって加熱されながら炉内を搬送され、ヒーター25が配置されていない部分まで進むとヒーターから遠ざかるため、温度が下がる。
【0039】
この実施形態の装置の熱処理装置の炉長方向の温度分布を図8に示す。横軸は炉長を示し、縦軸は太陽電池セル通過部の温度である。図8に示すように、温度分布はヒーター25が設けられている前半部27で高く、ヒーター25が配置されていない後半部28で低い温度分布になっている。炉内の温度分布は、炉の外装26の断熱性を調整することにより調整することができる。前半部27は前述した第1の熱処理部として、後半部28は第2の熱処理部とすることにより、所望の熱処理条件を与えることが可能となり、かつ熱源であるヒーターを少なくすることができる。したがって、装置コストが低減できる。
【0040】
図9は、本発明に係る方法を実施するための装置の第3実施形態の構成を示す概略図である。図9に示すように、この装置は、塗布装置20、熱処理装置29とで構成されている。塗布装置20は、図6に示した塗布装置と同様のものが使用できる。
【0041】
上記樹脂が塗布された太陽電池セル1は、搬送機によって、熱処理装置29に投入され、連続的に出口方向へ搬送される。なお、本実施形態において、太陽電池セルの搬送機の機構は、矢印61で示すように、熱処理装置29内で太陽電池セルの配置方向に対して垂直方向に上下動可能な構成とされており、後述するように太陽電池セルの位置高さを変えることで太陽電池セルのヒーターへの距離を調整して熱処理温度を調整することができる。
【0042】
熱処理装置29の炉内は、ヒーターの設置された炉内上部が炉内下部に比べて高温になっている。このような炉内を太陽電池セル1が搬送手段によって通過する。搬送装置は、太陽電池セルを搬送するリフター31を備えており、矢印61で示すように上下移動することができる。第1の熱処理部である図中矢印32に示す領域においてはリフター31が上昇し、太陽電池セルがヒーターに近い高温部を通過する。具体的には高温部は120℃である。次に、第2の熱処理部である図中矢印33に示す領域において、リフター22が下降し、太陽電池セルは低温部を通過する。具体的には低温部は100℃である。以上の動作により、ヒーターの加熱温度を調整することなく、リフターの位置調整で熱処理温度の調整が可能となり樹脂に所望の熱処理を加えることができるので、装置の構成・制御が容易となる。
【0043】
なお上記各熱処理装置においては、第1の熱処理温度を120℃、第2の熱処理温度を100℃としたが、後述するように、樹脂の濡れ性及び太陽電池セルの反りの評価により、110℃〜130℃の範囲でも良い、また第2の熱処理温度は樹脂の硬化状態及び反りの評価により、90℃〜110℃の範囲でも大きな差異は発生しない。
【0044】
(実施例)
第1及び第2の熱処理工程における熱処理温度の太陽電池セルの特性に与える影響を調べるために、エポキシ樹脂を塗布した太陽電池セルを第1及び第2の熱処理工程の熱処理温度を変化させて処理したあとの樹脂の特性を観察した。熱処理温度以外の処理条件は次の通りである。
【0045】
第1の熱処理工程については、炉の中に太陽電池セルを投入し、約1分間加熱した。一方、第2の熱処理工程においては、後述するように、第1の熱処理温度が120℃であるときが最適であったため、太陽電池セルを炉に投入した後第1の熱処理温度として120℃で1分間処理した後、第2の熱処理温度に温度調整し10分間熱処理した。第1の熱処理工程については、エポキシ樹脂の広がりの程度(濡れ性)と処理後の太陽電池セルの反りの程度を確認した。第2の熱処理工程については、エポキシ樹脂の硬化の程度と処理後の太陽電池セルの反りの程度を観察した。第1の熱処理工程に相当する結果を表1に、第2の熱処理工程に想定する結果を表2にそれぞれ示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003905756
【0047】
【表2】
Figure 0003905756
【0048】
上記表1及び表2の結果から、第1の熱処理温度は、110〜130℃が好ましく、第2の熱処理温度は、90〜110℃が好ましいことが判明した。
【0049】
以上説明したように、本発明にかかる補強半導体セルの製造方法によれば、装置のコストが低減させることができるとともに、太陽電池セルの反りを低減させ、かつタクトタイムを短縮することができる。また、第1の熱処理工程において塗布された補強材の粘度が減少し濡れ性を及ぼすため、補強材の塗布幅が広がるとともに、ひびなどの欠損がある場合は、そのひびに浸透し、欠損部分を補強することができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる補強半導体の製造方法の流れを示す基本概念図である。
【図2】 塗布工程を終えた太陽電池セルを示す図である。
【図3】 熱処理工程を終えた補強太陽電池セルを示す図である。
【図4】 熱処理温度と熱処理後の一定時間経過後の樹脂の粘度との関係を示すグラフである。
【図5】 本実施形態にかかる製造方法の効果を説明する図である。
【図6】 本発明に係る方法を実施するための装置の第1実施形態の構成を示す概略図である。
【図7】 本発明に係る方法を実施するための装置の第2実施形態の構成を示す概略図である。
【図8】 図7の実施形態の装置の熱処理装置の炉長方向の温度分布を示す図である。
【図9】 本発明に係る方法を実施するための装置の第3実施形態の構成を示す概略図である。
【図10】 従来の補強太陽電池セルの表面構造を示す図である。
【図11】 従来の補強太陽電池セルの構造を示す図であり、(a)は背面図であり(b)は側面図である。
【図12】 熱処理温度と太陽電池セルの処理後の反り量との関係を示すグラフである。
【図13】 熱処理温度と熱処理時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 未強太陽電池セル
2 補強太陽電池セル
10 基板
11 エポキシ樹脂
20 塗布装置
21、24、29 熱処理装置
22 第1のヒーター
23 第2のヒーター
25,30 ヒーター
27、32 第1熱処理部
28、33 第2熱処理部

Claims (13)

  1. 半導体基板の表面の周囲に熱硬化性材料を一定の塗布幅で塗布する塗布工程と、
    塗布後に前記半導体基板を第1の熱処理温度で熱処理し、前記熱硬化性材料の粘度を低下させて前記塗布幅を広げる第1熱処理工程と、
    第1の熱処理後に前記半導体基板を前記第1の熱処理温度より低温の第2の熱処理温度で熱処理し、前記熱硬化性材料を硬化させる第2熱処理工程とを備えることを特徴とする補強半導体基板の製造方法。
  2. 前記第1の熱処理温度は、110℃から130℃であることを特徴とする、請求項1に記載の補強半導体基板の製造方法。
  3. 前記第2の熱処理温度は、90℃から110℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の補強半導体基板の製造方法。
  4. 前記塗布工程は、ディスペンス法によることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の補強半導体基板の製造方法。
  5. 前記塗布工程は、印刷法によることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の補強半導体基板の製造方法。
  6. 前記第1熱処理工程は、前記第2熱処理工程よりも処理の時間が短いことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の補強半導体基板の製造方法。
  7. 前記熱硬化性材料はエポキシ樹脂であり、前記第2熱処理工程は、前記第1熱処理工程において前記エポキシ樹脂が硬化し始めたときに開始されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の補強半導体基板の製造方法。
  8. 前記第1熱処理工程及び前記第2熱処理工程は、それぞれ独立した炉内に前記半導体基板を通過させる工程であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の補強半導体基板の製造方法。
  9. 前記第1熱処理工程及び前記第2熱処理工程は、同一炉内で前記第1の熱処理温度及び前記第2の熱処理温度とを切りかえて温度調整を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の補強半導体基板の製造方法。
  10. 前記第1熱処理工程及び前記第2熱処理工程は、半導体基板が1つの炉内を通過する搬送路の少なくとも一部の近傍にヒーターを設けることにより、前記ヒーター近傍の搬送路と前記ヒーターから遠方の搬送路における半導体基板の温度分布により温度調整を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の補強半導体基板の製造方法。
  11. 前記第1熱処理工程及び前記第2熱処理工程は、半導体基板が炉内を通過する進行路に略平行に伸びるヒーターを備えた炉において使用され、前記半導体基板と前記ヒーターとの距離を変化させることにより温度調整を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の補強半導体基板の製造方法。
  12. 半導体基板の表面に熱硬化性材料一定の塗布幅で塗布する塗布手段と、
    前記塗布手段による熱硬化性材料が塗布された半導体基板を前記塗布幅が広がる程度に前記熱硬化性材料の粘度を低下させることができる第1の熱処理温度で熱処理する第1熱処理手段と、
    第1の熱処理がなされた半導体基板を前記第1の熱処理温度より低温でかつ前記熱硬化性材料を硬化させる第2の熱処理温度で熱処理する第2熱処理手段とを備えることを特徴とする補強半導体基板の製造装置。
  13. 前記第1熱処理手段及び前記第2熱処理手段が、1つの炉体内に備えられていることを特徴とする請求項12記載の補強半導体基板の製造装置。
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