JP3904550B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物,発泡粒子及び型内成形体 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂組成物,発泡粒子及び型内成形体 Download PDF

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Description

本発明は,融着性に優れると共に,型内成形体を得るための成形温度を低くすることができ,かつ表面外観等に優れた型内発泡成形体を製造することのできるポリプロピレン系樹脂発泡粒子及びこれを用いてなる型内成形体,並びに上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂として最適なポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子から得られる型内発泡成形体は,ポリスチレン系樹脂発泡粒子による成形体に比較して,耐薬品性,耐衝撃性,圧縮歪回復性等に優れていることから,自動車等のバンパー芯材や各種包装資材等として好適に使用されている。
上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂組成物と発泡剤とを用いて製造される。
上記ポリプロピレン系樹脂組成物としては,その発泡適性等の面から,主としてプロピレンにエチレンや1−ブテン等のα−オレフィンを共重合させたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体等が用いられている。しかし,これらは共重合体であるがゆえに,重合体そのものの力学物性が低い。
そこで,上記ポリプロピレン系樹脂組成物の力学物性を向上させるために,共重合体中のコモノマー含量を低くする方法や,あるいはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体に直鎖状ポリエチレンを混合する方法(特許文献1参照)が提案されていた。しかし,このような方法によっても,成形体の力学物性を向上させるには限界があった。
一方,ポリプロピレンは,本来それ自体が剛性等の力学特性が優れる合成樹脂である。そのため,ポリプロピレン単独重合体により発泡粒子を得ることができれば,剛性が充分に高い発泡粒子成形体を得ることができる。しかし,ポリプロピレン単独重合体からなる発泡粒子によって成形体を得ようとする場合には,適切な発泡温度範囲が狭く,これら条件を精密に制御することは極めて困難である。
また,ポリプロピレン単独重合体からなる発泡粒子によって成形体を得ようとする場合には,発泡粒子同士を融着させるための圧力として,0.35MPaG(「G」:ゲージ圧;以下同様)を超える高圧の水蒸気が必要となる。
そのため,成形コストが高くなり,しかも成形サイクルが長くなると言う欠点がある。更に,成形範囲が非常に狭いという欠点があり,そのため,得られた成形体には粒子間の融着不良が生じたり,成形体表面の外観が悪くなる等の不具合が生ずるという問題があった。それ故,実際の工業的生産においては,ポリプロピレン単独重合体より発泡成形体を得ることはできなかった。
ところが,近年になって,いわゆるメタロセン系触媒を用いて得られたシンジオタクチック構造を有するポリプロピレンを発泡体の基材樹脂として用いる方法が提案された(特許文献2参照)。この提案により,プロピレン単独重合体による発泡体の製造が可能となった。
しかし,シンジオタクチック構造を有するポリプロピレンは,アイソタクチック構造を有するポリプロピレンに比較して融点が低く,機械的物性が劣るという問題があった。
また,後述する特許文献3においては,メタロセン系重合触媒を用いて重合されたアイソタクチックポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子が提案されている。
この場合には,発泡粒子の気泡径が比較的均一となるという特徴があるが,かかる発泡粒子を用いて成形体を得るには,比較的高圧の水蒸気が必要であり,更なる改良が望まれていた。
また,後述する特許文献4及び特許文献5には,いわゆるチーグラー型触媒により製造されたポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子及びその型内成形体が提案されている。
しかし,この場合には,基材樹脂としてエチレンを共重合させたポリプロピレン系樹脂を用いており,これから得られる発泡粒子を成形してなる成形体は,力学的特性が不充分であるという問題があった。
上記のような従来の発泡粒子を用いて,低い成形蒸気圧で発泡成形を行った場合には,表面外観及び機械的物性が優れた型内成形体を得ることはできなかった。
特開昭57−90027号公報(特許請求の範囲) 特開平4−224832号公報(特許請求の範囲) 特開平6−240041号公報(特許請求の範囲) 特開昭59−68340号公報(特許請求の範囲) 特開平2−91133号公報(特許請求の範囲)
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,表面外観及び機械的物性が優れた型内成形体を,低い成形蒸気圧で得ることができるポリプロピレン系樹脂発泡粒子,及びその型内成形体,並びに上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂として最適なポリプロピレン系樹脂組成物を提供しようとするものである。
第1の発明は,下記のプロピレン系重合体[A]80〜97重量%と,下記の樹脂[B]20〜3重量%(ただし,プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]との合計量は100重量%である)とからなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物にある。
プロピレン系重合体[A]:下記の要件(a)〜(c)を有する,プロピレン系重合体。
(a)プロピレンから得られる構造単位が100〜98モル%,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位が0〜2モル%存在すること(ただし,プロピレンから得られる構造単位と,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位との合計量は100モル%である)。
(b)13C−NMRで測定したときの,全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.5〜1.8%であり,かつプロピレンモノマー単位の1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.005〜0.4%であること。
(c)融点(Tm)が143℃以上であること。
樹脂[B]:テルペン系樹脂及び/または石油樹脂。
上記第1の発明のポリプロピレン系樹脂組成物は,上記(a)〜(c)の要件を有するプロピレン系重合体[A]を80〜97重量%,テルペン系樹脂及び/または石油樹脂を含有してなる樹脂[B]を20〜3重量%含有している。
そのため,上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,低温での加工性に優れると共に機械的物性に優れている。
また,上記第1の発明のポリプロピレン系樹脂組成物は,これを基材樹脂として発泡粒子を作製した場合,この発泡粒子を用いると,低い成形蒸気圧で成形を行うことができると共に,表面外観及び機械的物性が優れた型内成形体を得ることができる。
即ち,上記第1の発明のポリプロピレン系樹脂組成物は,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の最適な基材樹脂として利用することができる。
第2の発明は,上記第1の発明のポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子にある(請求項4)。
上記第2の発明においては,上記第1の発明のポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂として用いているので,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を容易に得ることができる。また,このポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いれば,低い成形蒸気圧で発泡成形を行うことができると共に,圧縮強度,引張強度等の機械的物性,及び表面外観に優れた型内成形体を得ることができる。
第3の発明は,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形型内において成形してなり,密度0.008〜0.5g/cm3を有する型内成形体であって,
かつ上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,上記第2の発明のものを用いてなることを特徴とする型内成形体にある(請求項5)。
上記第3の発明の型内成形体は,上記第2の発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて型内成形してなり,かつ上記密度を有している。
そのため,上記型内成形体は,低い成形蒸気圧で成形することができると共に,圧縮強度及び引張強度等の機械的物性に優れ,平滑性及び光沢性のような表面外観にも優れるものとなる。
上記第1の発明(請求項1)において,上記プロピレン系樹脂組成物は,上記プロピレン系重合体[A]と上記樹脂[B]とからなる。まず,上記プロピレン系重合体[A]は,上記要件(a)〜(c)を有するプロピレン系重合体である。以下に,プロピレン系重合体[A]について説明する。
まず,上記要件(a)は,プロピレンから得られる構造単位が100〜98モル%,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位が0〜2モル%存在することにある。
ここで,プロピレンから得られる構造単位と,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位との合計量は100モル%である。
したがって,要件(a)を満たすプロピレン系重合体としては,プロピレン単独重合体よりなるもの,或いはプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体よりなるものがある。
上記プロピレンと共重合されるコモノマーのエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとしては,具体的には,エチレン,1−ブテン,1−ペンテン,1−ヘキセン,1−オクテン,4−メチル−1−ブテン等を挙げることができる。
また,本発明では,上記プロピレン系重合体[A]として,本発明の目的を阻害しない範囲内において,従来チーグラー/ナッタ触媒においては重合が困難であった他のモノマーをプロピレンに共重合させたものを使用することができる。この場合,上記他のモノマーから得られる構造単位は,上記プロピレン系重合体[A]中で0.01〜20モル%が好ましく,0.05〜10モル%がより好ましい。。
そして,このようなプロピレン系重合体[A]を含有してなる上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,発泡粒子を製造するための基材樹脂として用いることができる。
こうした上記他のモノマーとしては,例えば,シクロペンテン,ノルボルネン,1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,8,8a,5−オクタヒドロナフタレン等の環状オレフィン,5−メチル−1,4−ヘキサジエン,7−メチル−1,6−オクタジエン等の非共役ジエン,スチレン,ジビニルベンゼン等の芳香族不飽和化合物などの一種又は二種以上を挙げることができる。
本発明で用いるプロピレン系重合体[A]は,上記要件(a),即ちプロピレン系重合体中のプロピレンから得られる構造単位を98モル%〜100モル%含有するプロピレン系(共)重合体樹脂であり,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位(コモノマーの構造単位)が0〜2モル%の割合で含有されていることが必要である。
コモノマーの構造単位が2モル%を越える場合には,曲げ強度及び引張強度などの機械的物性が低下する傾向にあるため,後述する樹脂[B]を混合して上記ポリプロピレン系樹脂組成物を作製すると,該ポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ強度及び引張強度などの機械的物性が大きく低下する。そして,そのようなポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂として得られる発泡粒子を使用して型内成形した場合,機械的強度の小さい型内成形体しか得ることができない。
また,上記プロピレン系重合体[A]においては,プロピレンから得られる構造単位が98.0〜99.5モル%,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位が0.5〜2.0モル%存在することが好ましい(ただし,プロピレンから得られる構造単位と,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位との合計量は100モル%である)。
この場合には,上記のように,プロピレンから得られる構造単位と,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位とが,必須成分となる。
そして,このようなプロピレン系重合体[A]を上記の範囲の含有量で含有する上記ポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とする発泡粒子は,型内成形したときに,二次発泡性に優れる。
また,上記プロピレン系重合体[A]においては,プロピレンから得られる構造単位を100モル%,即ちエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位を0モル%にすることができる。
この場合には,上記プロピレン系重合体は,所謂プロピレン単独重合体となる。そして,このようなプロピレン系重合体[A]を上記の範囲で含有する上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,これを基材樹脂として発泡粒子を製造し,該発泡粒子を型内で成形したときに得られる型内成形体の強度を一層優れたものとすることができる。
次に,上記(b)要件に示すように,上記プロピレン系重合体[A]は,13C−NMRで測定した全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.5〜1.8%であり,かつプロピレンモノマー単位の1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.005〜0.4%のものである。
この要件(b)はプロピレン系重合体の位置不規則単位の割合に関するものであり,かかる不規則単位は,プロピレン系重合体の結晶性を低下させる作用を有し,発泡適性を高める効果を示す。
上記2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.5%未満の場合,または上記1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.005%未満の場合には,そのようなポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂としたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形するとき,得られる型内成形体の圧縮永久歪を小さくする効果が劣るという問題がある。
一方,上記2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が1.8%を越える場合,または上記1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.4%を越える場合には,基材樹脂としての上記ポリプロピレン系樹脂組成物の機械的物性,例えば曲げ強度や引張強度等が低下するため,発泡粒子及びそれから得られる型内成形体の強度が低くなるという問題がある。
上記要件(b)における2,1−挿入に基づく位置不規則単位及び1,3−挿入に基づく位置不規則単位は,いずれも,これらの単位をその構造中に含有するプロピレン系重合体の結晶性を低下させる効果を有する。さらに具体的には,これらの位置不規則単位は,プロピレン系重合体に対して,その融点を低下させる作用と,その結晶化度を低下させる作用とを有している。
これら2つの作用は,かかるプロピレン系重合体を含む樹脂組成物を発泡に供した場合に,その発泡適性を高める効果を示すと共に得られる発泡体の圧縮永久歪を小さくする効果を示す。また,上記の位置不規則単位を有するプロピレン系重合体[A]は,後述する樹脂[B]との相溶性に優れるため両者を溶融混練した場合,非常によく混ざり合う。そのような樹脂組成物は,プロピレン系重合体[A]の上記した特長に加え,発泡粒子に加工して型内成形した場合に二次発泡性が良好であるという効果を奏する。
但し,プロピレン系重合体に含まれる位置不規則単位の割合が高すぎると,プロピレン系重合体の融点や結晶化度が低下している度合いが高いがために,かかるプロピレン系重合体をプロピレン系重合体[A]として使用して発泡に供した場合には,得られる発泡粒子中の気泡径が粗大になってしまう,といった問題が生ずるおそれがあり,その場合には,かかる発泡粒子から得られる成形体の外観が損なわれる,という問題がある。さらに,上述した如く,かかる発泡粒子から得られる型内成形体の強度が低くなるという問題も生ずる。
更に,上記プロピレン系重合体[A]は,上記要件(c)に示すように,融点(Tm)が143℃以上である。上記要件(a)及び要件(b)を満たしている場合であっても融点(Tm)が143℃未満の場合には,プロピレン系重合体の曲げ強度及び引張強度などの機械的物性が低下する傾向にある。そのためこの場合には,後述する樹脂[B]を混合して上記ポリプロピレン系樹脂組成物を作製すると,該ポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ強度及び引張強度などの機械的物性が大きく低下する。そして,そのようなポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂として得られる発泡粒子を使用して型内成形した場合,機械的強度の小さい型内成形体しか得ることができない。
ここで,プロピレン系重合体中のプロピレンから得られる構造単位,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位の分率,及び後述するアイソタクチックトリアッド分率は,13C−NMR法を用いて測定される値である。
13C−NMRスペクトルの測定法は,例えば下記の通りである。
即ち,直径10mmφのNMR用サンプル管内に,350〜500mg程度の試料を入れ,溶媒としてo−ジクロロベンゼン約2.0ml及びロック用に重水素化ベンゼン約0.5mlを用いて完全に溶解させた後,130℃にてプロトン完全デカップル条件下に測定した。
測定条件としては,フリップアングル65deg,パルス間隔 5T1以上(但し,T1はメチル基のスピン格子緩和時間の内の最長の値)を選択した。プロピレン系重合体においては,メチレン基及びメチン基のスピン格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いため,この測定条件では全ての炭素の磁化の回復は99%以上である。
なお,13C−NMR法での位置不規則単位の検出感度は,通常0.01%程度であるが,積算回数を増加することにより,これを高めることが可能である。
また,上記測定におけるケミカルシフトは,頭−尾結合しておりメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位5連鎖の第3単位目のメチル基のピークを21.8ppmとして設定し,このピークを基準として他の炭素ピークのケミカルシフトを設定した。
この基準を用いると,下記式[化1]中のPPP[mm]で示されるプロピレン単位3連鎖中の第2単位目のメチル基に基づくピークは21.3〜22.2ppmの範囲に,PPP[mr]で示されるプロピレン単位3連鎖中の第2単位目のメチル基に基づくピークは20.5〜21.3ppmの範囲に,PPP[rr]で示されるプロピレン単位3連鎖中の第2単位目のメチル基に基づくピークは19.7〜20.5ppmの範囲に現れる。
ここで,PPP[mm],PPP[mr],及びPPP[rr]はそれぞれ下記の式[化1]のように示される。
Figure 0003904550
更に,本発明において,上記プロピレン系重合体[A]は,プロピレンの2,1−挿入及び1,3−挿入に基づく位置不規則単位を含む下記式[化2]の部分構造(Ι)及び(ΙΙ)を特定量含有するものである。
Figure 0003904550
この様な部分構造は,例えばメタロセン系触媒を用いて重合反応を行った場合に,プロピレン系重合体の重合時に発生する位置不規則性により生ずると考えられている。
即ち,プロピレンモノマーは,通常,メチレン側が触媒中の金属成分と結合する方式,すなわち,いわゆる「1,2−挿入」にて反応するが,希には,「2,1−挿入」や「1,3−挿入」を起こすことがある。「2,1−挿入」は,「1,2−挿入」とは付加方向が逆となる反応形式であり,ポリマー鎖中に上記式[化2]の部分構造(Ι)で表される構造単位を形成する。
また,「1,3−挿入」とは,プロピレンモノマーのC−1とC−3とでポリマー鎖中に取り込まれるものであり,その結果として直鎖状の構造単位,すなわち上記式[化2]の部分構造(ΙΙ)を生ずるものである。
上記の各位置不規則単位の割合が本発明の範囲にあるプロピレン系重合体[A]は,適当な触媒を選定することにより得ることができる。具体的には,例えばヒドロアズレニル基を配位子として有するメタロセン系重合触媒等を用いて得ることができる。ここで,上記メタロセン系重合触媒とは,メタロセン構造を有する遷移金属化合物成分と,助触媒成分とからなるものである。各位置不規則単位の割合は,重合に用いる触媒の金属錯体成分の化学構造によって異なるが,一般には重合温度が高い方が大きくなる傾向にある。本発明においては,プロピレン系重合体[A]における各位置不規則単位の割合を上記特定の範囲にするため,重合温度は0〜80℃にすることが好ましい。
尚,金属錯体成分は,これをそのまま触媒成分として用いることもできるが,無機あるいは有機の,顆粒状ないしは微粒子状の固体である微粒子状担体に,上記金属錯体成分が担持された固体状触媒として用いてもよい。
微粒子状担体に金属錯体成分を担持させる場合,金属錯体成分の担持量は,担体1gあたり0.001〜10mmolであることが好ましく,より好ましくは,0.001〜5mmolであることがよい。
また,上記のヒドロアズレニル基を配位子として有するメタロセン触媒の中でも,金属原子として,チタン,ジルコニウム,ハフニウムを用いた触媒が好ましく,なかでも,ジルコニウムを有する錯体が,重合活性が高いという点で好ましい。
また,上記メタロセン系触媒の中でも,ジルコニウムジクロリド型の錯体が好適に使用されるが,その中でも,特に架橋型錯体を用いることが好ましい。
具体的には,メチレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,メチレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,メチレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,メチレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,エチレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,エチレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,エチレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,エチレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,イソプロピリデンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,イソプロピリデンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,イソプロピリデンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,イソプロピリデンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジフェニルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジフェニルシリレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジフェニルシリレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,ジフェニルシリレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,等が例示できる。
これらの中でも特に,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド,及びジメチルシリレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリドを用いることが好ましい。この場合には,上記の各位置不規則単位の割合を容易に本発明の範囲内にコントロールすることができると共に,後述する要件(d)を満足する(アイソタクチックトリアッド分率が97%以上の)プロピレン重合体を容易に得ることができる。
また,上記助触媒成分としては,メチルアルミノキサン,イソブチルアルミノキサン,メチルイソブチルアルミノキサン等のアルミノキサン類,トリフェニルボラン,トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン,塩化マグネシウム等のルイス酸,ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のイオン性化合物が例示できる。また,これらの助触媒成分を,他の有機アルミニウム化合物,例えば,トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムと併用して共存下に用いることも可能である。
上記プロピレン系重合体[A]の全ポリマー連鎖中のmm分率は,次の[数1]式で表される。ところで,上記式[化2]における部分構造(ΙΙ)では,1,3−挿入の結果として,プロピレンモノマーに由来するメチル基が1個相当分だけ消失している。
Figure 0003904550
この式において,ΣΙCH3は全メチル基(ケミカルシフトの19〜22ppmのピーク全て)の面積を示す。また,A<1>,A<2>,A<3>,A<4>,A<5>,A<6>,A<7>,A<8>及びA<9>は,それぞれ,42.3ppm,35.9ppm,38.6ppm,30.6ppm,36.0ppm,31.5ppm,31.0ppm,37.2ppm,27.4ppmのピークの面積であり,上記式[化2]における部分構造(Ι)及び(ΙΙ)で示した炭素の存在量比を示す。
また,全プロピレン挿入に対する2,1−挿入したプロピレンの割合,及び1,3−挿入したプロピレンの割合は,下記の[数2]に示す式で計算した。
Figure 0003904550
次に,上記プロピレン系重合体[A]は,該重合体[A]の融点をTm[℃],また,該重合体[A]をフィルムに成形した場合の水蒸気透過度をY[g/m2/24hr]とした場合に,TmとYとが次の式(1)を満足するものであることが好ましい。
(−0.20)・Tm+35≦Y≦(−0.33)・Tm+60 式(1)
上記水蒸気透過度は,JIS K7129(1992年)「プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法」により測定することができる。この測定においては,試験方法は赤外センサー法が採用され,また試験条件としては,試験温度40±0.5℃,相対湿度(90±2)%RHが採用される。
上記式(1)の範囲内にあるプロピレン系重合体[A]は,適度の水蒸気透過性を示す。適度の水蒸気透過性は,型内成形時において,成形に使用される飽和スチームの発泡粒子内への浸透を助長し,これにより発泡粒子の二次発泡性が高まり,発泡粒子間の空隙のない又は少ない型内成形体の製造が容易となる。
また,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法としては,樹脂粒子を水に分散させつつ発泡剤を含浸させた後,高温高圧下から低圧下に放出して発泡粒子化する方法が一般的であるが,この際,適度の水蒸気透過性は,樹脂粒子への水及び発泡剤の浸透を行いやすくする。その結果,樹脂粒子内における水及び発泡剤の分散が均一となり,得られる発泡粒子の気泡径を均一にし,また,発泡倍率を向上させることができる。
上記水蒸気透過度(Y)がプロピレン系重合体の融点(Tm)との関係で表現されているのは,発泡粒子の製造時の発泡温度や型内成形時の飽和スチーム温度が,一般的に基材樹脂であるプロピレン系重合体の融点(Tm)が高いほど高くなり,融点(Tm)が低いほど低くなることに基づいている。
上記水蒸気透過度(Y)が[(−0.20)・Tm+35]を下回る場合には,基材樹脂への水蒸気や発泡剤の浸透性が劣るようになり,逆に[(−0.33)・Tm+60]を上回る場合には,基材樹脂への水蒸気の浸透性が良くなり過ぎて,いずれにしても,発泡粒子の製造過程で樹脂粒子内における水や発泡剤の分散が不均一となりやすく,得られる発泡粒子の気泡径の均一性が低下するおそれがある。特に,上記水蒸気透過度(Y)が[(−0.33)・Tm+60]を上回る場合は,得られる発泡粒子内に粗大気泡が混在するおそれがある。
融点(Tm)と水蒸気透過度(Y)とが式(1)の関係を満たす様なプロピレン系重合体は,該重合体を製造するにあたって,適当な触媒を選定することにより得ることができる。具体的には,上記メタロセン系触媒の中でも,架橋型ビス{1,1’−(4―ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリドを金属錯体成分として用いることにより,好適に得ることが出来る。かかる金属錯体成分の好ましい例は,前述した通りである。
また,本発明において,プロピレン系重合体[A]の上記融点(Tm)は,143℃以上であるが,143℃〜160℃が好ましく,144℃〜158℃がより好ましい。
尚,プロピレン系重合体[A]の融点(Tm)は,JIS K7121(1987年)に記載の「一定の熱処理を行った後,融解温度を測定する場合」を採用し(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は,いずれも,毎分10℃を採用),熱流束DSC装置を使用し,加熱速度毎分10℃にてDSC曲線を描かせ,得られたDSC曲線上の融解ピークの頂点が採用される。尚,複数の頂点が観測された場合には,高温側のベースラインを基準に融解ピークの頂点が最も高いものが採用され,最も高い融解ピークの頂点が複数ある場合はそれらの相加平均値が採用される。
プロピレン系重合体[A]の融点(Tm)は,一般的には,コモノマーの含有量を少なくするほど,また上記各位置不規則単位の割合を少なくするほど高くすることができる。また,上記要件(a)〜(c)及び上記式(1)を満たすプロピレン系重合体[A]は,上記メタロセン系触媒を用いて得ることができる。
次に,上記第1の発明(請求項1)における,上記樹脂[B]に関して説明する。
上記樹脂[B]は,テルペン系樹脂及び/または石油樹脂である。
上記テルペン系樹脂は,(C58nの組成で表される炭化水素化合物,すなわちテルペンの単独重合体,またはテルペンと共重合可能なモノマーとテルペンとの共重合体が挙げられ,テルペノイドと呼ばれることもある。通常,上記nは,2〜30の整数であるが,8〜20の整数であることが好ましい。
上記組成式(C58nで表されるテルペンとしては,例えば,ピネン,ジペンテン,カレン,ミルセン,オシメン,リモネン,テルピノレン,テルピネン,サビネン,トリシクレン,ビサボレン,ジンギベレン,サンタレン,カンホレン,ミレン,トタレン等が挙げられる。上記テルペン系樹脂とは,これらの単独重合体または共重合体をいう。これら単独重合体または共重合体の中でも,特にピネン及びジペンテン等の重合体が好ましく,さらに,その重合体の水素添加物が好ましい。また,水素添加物の中でも,水添率80%以上,特に90%以上のものが好ましい。
また,上記樹脂[B]としては,上記テルペン系樹脂の1種のみを使用してもよく,また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また,上記石油樹脂は,従来公知の石油樹脂及び水添石油樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
この石油樹脂は,シクロペンタジエン等の石油系不飽和炭化水素,高級オレフィン系炭化水素,または芳香族炭化水素等を主原料(50重量%以上)とする樹脂である。これらの石油樹脂の中でも,水素化された水添石油樹脂が好ましい。
上記テルペン系樹脂及び上記石油樹脂は,いずれも炭化水素化合物であるため,これらと同様に炭化水素化合物である上記プロピレン系重合体[A]への溶解性は本質的に高い。
上記したごとく,上記樹脂[B]として,水素添加されたテルペン系樹脂及び/又は水素添加された石油樹脂を用いると,プロピレン系重合体[A]及びプロピレン系重合体[B]への溶解性をさらに高めることができる。
また,上記石油樹脂は,そのガラス転移温度(Tg)が,50℃以上であることが好ましい。
上記石油樹脂のガラス転位温度(Tg)が50℃未満の場合には,上記石油樹脂の軟化温度が低下する。そのため,工業的に取り扱うに当たって,特殊な装置や設備が必要となり,製造コストが高くなるおそれがある。より好ましくは,60℃以上がよく,さらにより好ましくは60〜100℃がよい。
上記石油樹脂のガラス転位温度(Tg)が100℃を超える場合には,上記石油樹脂が,上記プロピレン系重合体[A]中において分散し難くなり,その結果,発泡粒子の成形時の蒸気圧を低くすることができなくなるおそれがある。
上記ガラス転移温度(Tg)は,JIS K7121(1987年)に従って,熱流束DSC装置を使用して求めた補外ガラス転移開始温度を意味する。この測定に際しては,試験片の状態調節としてはJIS K7121(1987年)に記載された「標準状態で調整し転移温度を測定する場合」を採用する。
上記樹脂[B]としては,上記石油樹脂の1種のみを使用してもよく,また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また,上記樹脂[B]としては,上記テルペン系樹脂の1種または2種以上と上記石油樹脂の1種または2種以上とを組み合わせて使用してもよい。
上記プロピレン系重合体[A]に対して,上記樹脂[B]を混合してなるポリプロピレン系樹脂組成物は,低温加工性に優れると共に,機械的強度の低下が少ないという特徴がある。そして,当該ポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂として用いて得られる発泡粒子は,上記プロピレン系重合体[A]を単独で用いて得られる発泡粒子に比べて,型内成形に於ける二次発泡性に優れ,したがって,成形体の表面外観が優れるものになるという特徴がある。上記プロピレン系重合体[A]と上記樹脂[B]との配合比は,上記プロピレン系重合体[A]80〜97重量%に対して,上記樹脂[B]20〜3重量%(ただし,プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]との合計量は100重量%である)の範囲であることが必要である。
プロピレン系重合体[A]の配合比が80重量%未満である場合には,樹脂[B]の配合比が20重量%を越えるために,上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,機械的強度が大きく低下してしまう。そのため,かかるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とする発泡粒子を使用して得られる型内成形体は,強度が非常に低いものとなってしまう。
一方,プロピレン系重合体[A]の配合比が97重量%を越える場合には,樹脂[B]の配合比が3重量%未満となってしまうために,上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,低温での加工性が低下してしまう。そのため,かかるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とする発泡粒子を使用して,更に低温の成形蒸気圧にて型内成形を試みると,得られる型内成形体は,粒子間の間隙が大きく外観の悪い成形体となってしまうおそれがある。
上記プロピレン系重合体[A]と上記樹脂[B]との配合比は,好ましくは,上記プロピレン系重合体[A]83〜96重量%に対して,上記樹脂[B]17〜4重量%(ただし,プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]との合計量は100重量%)がよく,さらに好ましくは,上記プロピレン系重合体[A]85〜95重量%に対して,上記樹脂[B]15〜5重量%(ただし,プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]との合計量は100重量%)がよい。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は,本発明の目的を阻害しない範囲内において,更に必要に応じて,他のポリマー成分或いは,触媒中和剤,滑剤,結晶核剤,発泡剤,発泡核剤,帯電防止剤,着色剤,その他の添加剤等の添加物が含有されていても良い。但し,他のポリマー成分や添加物は,本発明の目的を阻害しない範囲内で,できる限り少量であることが望ましい。
即ち,プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]の合計量を100重量部とした場合,他のポリマー成分の添加量は40重量部以下にすることが好ましい。より好ましくは,30重量部以下がよく,さらに好ましくは15重量部以下がよい。また,もっとも好ましくは5重量部以下がよい。
また,プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]の合計量を100重量部とした場合,上記添加物の添加量(発泡剤のように最終的に気散してなくなるものは除く)は,添加物の使用目的にもよるが40重量部以下が好ましい。より好ましくは,30重量部以下がよく,さらに好ましくは0.001〜15重量部がよい。
次に,上記プロピレン系重合体[A]は,更に下記の要件(d)を有することが好ましい(請求項2)。
(d)頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部の13C−NMRで測定したアイソタクチックトリアッド分率が97%以上であること。
即ち,上記ポリプロピレン系樹脂組成物の構成成分であるプロピレン系重合体[A]として,既に述べた要件(a)〜(c)に加えて,更に頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部の,13C−NMR(核磁気共鳴法)で測定したアイソタクチックトリアッド分率(即ち,ポリマー鎖中の任意のプロピレン単位3連鎖のうち,各プロピレン単位が頭−尾で結合し,かつプロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合)が97%以上であるものを用いる。
なお,アイソタクチックトリアッド分率を,以下適宜,mm分率と記載する。mm分率が97%以上の場合には,上記ポリプロピレン系樹脂組成物の機械的物性がより高いものとなる。そのため,これを基材樹脂として用いて得られる発泡粒子からなる成形体の機械的物性もより高いものとすることができる。
なお,更に好ましくは,上記mm分率は98%以上であることがよい。
次に,上記プロピレン系重合体[A]は,更に下記の要件(e)を有することが好ましい(請求項3)。
(e)メルトフローレートが0.5〜100g/10分であること。
この場合には,工業的に有用な製造効率を保ちつつ上記ポリプロピレン系樹脂組成物を生産することができる。さらに,これを基材樹脂として用いて得られる発泡粒子からなる成形体は,その力学物性が優れるという効果を得ることができる。
上記メルトフローレート(MFR)が,0.5g/10分未満の場合には,上記ポリプロピレン系樹脂組成物の製造効率,なかでも後述する溶融混練を行う際の生産性が低下するおそれがある。また,MFRが上記の100g/10分を超える場合には,得られるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂として用いた発泡粒子をさらに成形して得られる成形体の圧縮強度,引張強度などの力学物性が低くなるおそれがある。なお,上記MFRは,1.0〜50g/10分であることがより好ましい。さらに好ましくは,1.0〜30g/10分がよい。上記MFRとは,JIS K6921−2(1997年)の表3に記載された条件に従って測定されたメルトマスフローレイトを意味する。
また,上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,これを基材樹脂としてポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得るための材料等として用いることができる。さらに,このポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形型内に充填して,加熱することにより発泡させて,型内成形体を得ることもできる。
次に,上記第2の発明(請求項4)において,上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,上記プロピレン系重合体[A]と上記樹脂[B]とからなる上記ポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とするものである。なお,ここに基材樹脂とは,発泡粒子を構成する基本となる樹脂成分を意味する。発泡粒子は,この基材樹脂と必要に応じて添加する他のポリマー成分或いは,発泡剤,触媒中和剤,滑剤,結晶核剤,帯電防止剤,発泡核剤,着色剤,その他の添加剤等の添加物からなる。但し,他のポリマー成分や添加物は,本発明の目的を阻害しない範囲内で,できる限り少量であることが望ましい。
即ち,プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]の合計量を100重量部とした場合,他のポリマー成分の添加量は40重量部以下にすることが好ましい。より好ましくは,30重量部以下がよく,さらに好ましくは15重量部以下がよい。また,もっとも好ましくは5重量部以下がよい。
また,プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]の合計量を100重量部とした場合,上記添加物の添加量(発泡剤のように最終的に気散してなくなるものは除く)は,添加物の使用目的にもよるが40重量部以下が好ましい。より好ましくは,30重量部以下がよく,さらに好ましくは0.001〜15重量部がよい。
上記の他のポリマー成分としては,例えば高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,エチレンとα−オレフィン(炭素数4以上)の共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂;ポリブテン樹脂;エチレン−プロピレン系ゴム;エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム;スチレン−ジエンブロック共重合体やスチレン−ジエンブロック共重合体のエチレン系二重結合の少なくとも一部を水素添加により飽和してなる水素添加ブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー;これら樹脂,エラストマー或いはゴムのアクリル酸系モノマーによるグラフト変成体等が挙げられる。
本発明ではこれら樹脂,エラストマー,ゴム或いはそれら変成物を単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。
上記発泡核剤としては,タルク,炭酸カルシウム,シリカ,酸化チタン,石膏,ゼオライト,ホウ砂,水酸化アルミニウム,ホウ酸亜鉛等の無機化合物の他,カーボン,リン酸系核剤,フェノール系核剤,アミン系核剤等の有機系核剤が挙げられる。これら各種添加剤の添加量は,その添加目的により異なるが,本発明の基材樹脂100重量部に対して15重量部以下であり,好ましくは8重量部以下,更には5重量部以下が最も好ましい。
本発明において,上記基材樹脂としてのプロピレン系重合体[A]と樹脂[B]とを混合するとき,及び,上記基材樹脂への上記その他の成分を混合するときには,液体と固体との混合或いは固体同士の混合により行なうこともできるが,一般には溶融混練が利用される。即ち,例えばロール,スクリュー,バンバリーミキサー,ニーダー,ブレンダー,ミル等の各種混練機を使って,上記プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]を,または上記基材樹脂とその他の成分等とを所望の温度で混練し,混練後は,発泡粒子の製造に適した大きさの樹脂粒子に成形することができる。
上記樹脂粒子は,例えば押出機内で溶融混練した後に,押出機先端に取り付けた微小穴を有する口金より混練物を紐状に押出し,しかる後に引取機を備えた切断機で規定の重量または大きさに切断することにより,柱状ペレット状のもの等を得ることができる。
また,一般に,樹脂粒子1個の重量が0.1〜20mgであれば,これを加熱発泡させて得られる発泡粒子の製造に支障はない。樹脂粒子1個の重量が0.2〜10mgの範囲にあって,更に粒子間の重量のばらつきが小さい場合には,発泡粒子の製造が容易になり,得られる発泡粒子の密度ばらつきも小さくなり,成形型内等への発泡粒子の充填性が良好となる。
上記樹脂粒子から発泡粒子を得る方法としては,上記のようにして作製した樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸した後,加熱発泡する方法,具体的には,例えば,特公昭49−2183号公報,同56−1344号公報,西ドイツ特開第1285722号公報,同第2107683号公報などに記載の方法を使用することができる。
即ち,まず密閉し開放できる圧力容器に揮発性発泡剤と共に樹脂粒子を入れ,基材樹脂の軟化温度以上に加熱して,樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させる。
その後,密閉容器内の内容物を密閉容器から低圧の雰囲気に放出した後,乾燥処理する。これにより,発泡粒子を得ることができる。
上記揮発性発泡剤としては,プロパン,ブタン,イソブタン,ペンタン,シクロペンタン,シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類や,トリクロロフルオロメタン,ジクロロジフルオロメタン,テトラクロロジフルオロエタン,ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類を挙げることができる。また,窒素,空気,二酸化炭素等の無機ガス類を用いることもできる。これらは単独で,または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
なお,上記発泡粒子を製造する方法においては,樹脂粒子中に予め分解型発泡剤を練り込んでおけば圧力容器中に発泡剤を配合しなくとも,上記発泡粒子を得ることが可能である。
上記分解型発泡剤としては,樹脂粒子の発泡温度で分解してガスを発生するものであれば使用することができる。具体的には,たとえば重炭酸ナトリウム,炭酸アンモニウム,アジド化合物,アゾ化合物等が挙げられる。
また,加熱発泡時には,樹脂粒子の分散媒として,水,アルコールなどを使用することが好ましい。更に樹脂粒子を分散媒に均一に分散させるために,酸化アルミニウム,第三リン酸カルシウム,ピロリン酸マグネシウム,酸化亜鉛,カオリンなどの難水溶性の無機物質,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,メチルセルロースなどの水溶性高分子系保護コロイド剤,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤を単独または2種以上混合して使用するのが好ましい。
更に,上記分散媒には,分散剤の分散力を強化する(分散剤の添加量を少なくしても容器内で樹脂粒子の融着を防止する)分散強化剤を添加してもよい。特に,見かけ密度が100g/L以上という低発泡の発泡粒子を製造する場合には,分散強化剤を使用することが好ましい。
このような分散強化剤としては,40℃の水100ccに対して少なくとも1mg以上溶解し得る無機物質であって,該化合物の陰イオンまたは陽イオンの少なくとも一方が2価または3価のものを用いることができる。このような無機物質としては,たとえば,塩化マグネシウム,硝酸マグネシウム,硫酸マグネシウム,塩化アルミニウム,硝酸アルミニウム,硫酸アルミニウム,塩化鉄,硫酸鉄,硝酸鉄等が例示される。
低圧の雰囲気に樹脂粒子を放出する際には,当該放出を容易にするため,前記と同様な無機ガス又は揮発性発泡剤を外部より密閉容器に導入することにより密閉容器内の圧力を一定に保持することが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,示差走査熱量測定によって求められるDSC曲線(但し,発泡粒子2〜4mgを示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で常温(20℃〜45℃)から200℃まで昇温した時に得られるDSC曲線)において,基材樹脂に固有の吸熱ピークに加え,更にそれよりも高温の吸熱ピークを示すことが好ましい。
上記DSC曲線に基材樹脂に固有の吸熱ピークに加え,更にそれよりも高温の吸熱ピークが現れる発泡粒子は,例えば特開2002−200635号公報等に記載された方法で製造することが可能であり,上記樹脂粒子を発泡させる際の条件,具体的には低圧の雰囲気に放出するまでの温度,圧力,時間等を制御することにより得られる。
上記した方法によって得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,大気圧下で熟成した後,必要に応じて気泡内圧を高めてから,水蒸気や熱風を用いて加熱することによって,より高発泡倍率の発泡粒子とすることが可能である。
次に,上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,これを加熱して二次発泡せしめるとともに相互に融着せしめた後に冷却することにより,型内成形体を製造することができる。
この場合には,様々な条件の金型等が使用される。
例えば,特公昭46−38359号公報に示されるごとく,大気圧または減圧下の凹凸一対の金型よりなるキャビティー内へポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填した後に,金型キャビティー内の体積を5〜70%減少させるように圧縮し,次いでスチーム等の熱媒をキャビティー内に導入してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を加熱融着させる圧縮成形法が挙げられる。
また,例えば特公昭51−22951号公報に示されるごとく,揮発性発泡剤または無機ガスの1種または2種以上で予め発泡粒子を処理して発泡粒子の二次発泡力を高め,次いでその二次発泡力を保持しつつ大気圧または減圧下の凹凸一対の金型よりなるキャビティー内に発泡粒子を充填した後,金型キャビティー内に熱媒を導入して発泡粒子を加熱融着させる加圧熟成成形法もある。
また,例えば特公平4−46217号公報に示されるごとく,圧縮ガスにより大気圧以上に加圧した金型キャビティーに,当該圧力以上に加圧した発泡粒子を充填した後,金型キャビティー内にスチーム等の熱媒を導入して発泡粒子を加熱融着させる圧縮充填成形法もある。
更に,例えば,特公平6−49795号公報に示されるごとく,特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡粒子を使用して大気圧または減圧下の凹凸一対の金型よりなるキャビティー内に発泡粒子を充填し,次いで,金型キャビティー内にスチーム等の熱媒を導入して発泡粒子を加熱融着させる常圧充填成形法もある。また,例えば特公平6−22919号公報に示されるごとく,上記の方法の組合わせによっても成形できる。
また,上記型内成形体には,必要に応じてその表面に表皮材を積層することができる。積層する表皮材は特に制限が無く,例えば,ポリオレフィン系エラストマーシート,OPS(2軸延伸ポリスチレンシート),高耐熱性OPS,HIPSなどのポリスチレン系樹脂フィルム,CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム),OPP(2軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリプロピレン系樹脂のフィルムあるいはポリエチレン系樹脂フィルム,ポリエステル系樹脂フィルム等の各種フィルム,またフェルト,不織布等の各種表皮材が挙げられる。また,上記表皮材としてポリオレフィン系エラストマーや耐衝撃性ポリプロピレン等からなる射出成形体を使用することもできる。
また,積層する表皮材の厚さには制限はないが,通常は15μm〜4000μmのものが用いられる。これらの表皮材には必要に応じて塗装又は印刷が施されてもよい。また,上記表皮材は上記型内成形体と嵌合されて積層されていても良いが,上記型内成形体の表面に接着一体化されて積層されていることが好ましい。両者が接着一体化していると,機械的強度,特に曲げ強度が高めることができる。その接着一体化は,発泡粒子の加熱融着成形(型内成形)と同時に行ってもよい。また,予め型内成形して得られた衝撃吸収材に後加工で表皮材を接着一体化してもよい。尚,必要に応じてホットメルト系の接着剤を用いて接着一体化を行うこともできる。
次に,上記第3の発明の型内成形体において,上記型内成形体の密度は0.008〜0.5g/cm3である。
上記型内成形体の密度が0.5g/cm3を越える場合には,軽量性,衝撃吸収性,断熱性といった発泡体の好ましい特性が充分に発揮されなくなり,低発泡倍率であるがゆえにコスト上の不利を招くおそれがある。
一方,密度が0.008g/cm3未満の場合には,独立気泡率が小さくなる傾向にあり,曲げ強度,圧縮強度等の機械的物性が不充分となるおそれがある。尚,上記型内成形体の密度とは,JIS K7222(1999年)で定義される見掛け全体密度を意味する。
本発明の型内成形体は,例えば包装容器,玩具,自動車部品,ヘルメット芯材,緩衝包装材等に好適である。
次に,本発明の実施例につき説明する。
[基材樹脂の製造]
基材樹脂を構成するプロピレン系重合体は,次の製造例1〜8に示す方法により合成した。
製造例1(プロピレン単独重合)
(i)[ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド]の合成
以下の反応は全て不活性ガス雰囲気で行い,また,反応には予め乾燥精製した溶媒を用いた。
(a)ラセミ・メソ混合物の合成
特開昭62−207232号公報に記載の方法に従って合成した2−メチルアズレン2.22gをヘキサン30mLに溶解し,フェニルリチウムのシクロヘキサン−ジエチルエーテル溶液15.6mL(1.0当量)を0℃にて少量ずつ添加した。
この溶液を室温で1時間撹拌した後,−78℃に冷却し,テトラヒドロフラン30mLを加えた。
次いで,ジメチルジクロロシラン0.95mLを加えた後,室温まで昇温し,更に50℃で90分間加熱した。この後,塩化アンモニウム飽和水溶液を加え,有機層を分離後,硫酸ナトリウムで乾燥し,溶媒を減圧下に留去した。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−:ジクロロメタン=5:1)で精製することにより,ビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−1,4−ジヒドロアズレニル)ジメチルシラン1.48gを得た。
上記で得られたビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−1,4−ジヒドロアズレニル)ジメチルシラン786mgをジエチルエーテル15mLに溶解し,−78℃でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.68mol/L)1.98mLを滴加し,徐々に室温に昇温し,その後室温にて12時間撹拌した。溶媒を減圧留去して得られた固体をヘキサンで洗浄し,減圧乾固した。
更に,トルエン−ジエチルエーテル混合溶媒(40:1)を20mL加え,−60℃にて四塩化ジルコニウム325mgを加え,徐々に昇温して室温で15分間撹拌した。
得られた溶液を減圧下に濃縮し,ヘキサンを加えて再沈殿させることにより,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリドよりなる,ラセミ/メソ混合物150mgを得た。
(b)ラセミ体の分離
上記の反応を繰り返して得たラセミ/メソ混合物887mgをガラス容器に入れ,ジクロロメタン30mLに溶解し,高圧水銀ランプで30分間光照射した。その後ジクロロメタンを減圧下に留去し,黄色固体を得た。
この固体にトルエン7mLを添加して撹拌後,静置することにより,黄色固体が沈殿として分離した。上澄みを除去し,固体を減圧乾固して,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリドよりなる,ラセミ体を437mg得た。
(ii)触媒の合成
(a)触媒担体の処理
脱塩水135mLと硫酸マグネシウム16gをガラス製容器に入れ,撹拌し溶液とした。この溶液にモンモリロナイト(クニミネ工業製「クニピア−F」)22.2gを加えた後,昇温し,80℃で1時間保持した。
次いで,脱塩水300mLを加えた後に濾過により,固形分を分離した。この固形分に,脱塩水46mLと硫酸23.4g及び硫酸マグネシウム29.2gを加えた後,昇温し,加熱還流下に2時間処理した後,脱塩水200mLを加え,濾過した。
更に脱塩水400mLを加えて濾過する,という操作を2回実施した。その後,固体を100℃で乾燥し,触媒担体としての化学処理モンモリロナイトを得た。
(b)触媒成分の調製
内容積1リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,脱水ヘプタン230mLを導入し,系内温度を40℃に保持した。
ここに,上記にて調製した,触媒担体としての化学処理モンモリロナイト10gを200mLのトルエンに懸濁させて添加した。
更に,別容器中に調製した,ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリドのラセミ体(0.15mmol)と,トリイソブチルアルミニウム(3mmol)とを,トルエン(計20mL)中にて混合したものをオートクレーブ内に添加した。
その後,プロピレンを10g/hrの速度で120分間導入し,更にその後に120分間,重合反応を継続した後,窒素雰囲気下に溶媒を留去,乾燥して固体触媒成分を得た。この触媒成分は,固体成分1gあたり,1.9gの重合体を含有するものであった。
(iii)プロピレンの重合(プロピレン単独重合)
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これに,トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液500mL(0.12mol),及び水素(3NL)を導入し,オートクレーブ内を75℃に昇温した。
その後,上記固体触媒成分(1.7g)をアルゴンで圧入して重合を開始させ,3時間重合反応を行った。
その後,反応系にエタノール100mLを圧入して反応を停止させ,残存ガス成分をパージすることで,14.9kgのポリマーを得た。
このポリマーは,プロピレンから得られる構造単位が100モル%であり,即ちプロピレン単独重合体である。これは上記要件(a)を満たす。
また,このポリマーはMFR(メルトフローレート)が12g/10分,アイソタクチックトリアッド分率が99.7%,融点(Tm)が143℃であり,上記要件(c),(d)及び(e)を満たしている。さらに,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が1.60%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.10%であり,上記要件(b)を満たしている。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー1」と称する。
(iv)水蒸気透過度の測定
上記で得られたポリマー1を厚み25ミクロンのフィルムに成形し,JIS K7129に記載の方法に従って水蒸気透過度Yを測定した(以下の製造例も同じ)結果,11.4(g/m2/24hr)であった。
なお,ポリマー1は,融点(Tm)が143℃であるため,上記式(1)からYは6.4≦Y≦12.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていた。
製造例2(プロピレン単独重合)
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これに,トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液500mL(0.12mol),及び水素(3NL)を導入し,オートクレーブ内を40℃に昇温した。
その後,上記固体触媒成分(3.0g)をアルゴンで圧入して重合を開始させ,3時間重合反応を行った。
その後,反応系にエタノール100mLを圧入して反応を停止させ,残存ガス成分をパージすることで,4.4kgのポリマーを得た。
このポリマーは,プロピレンから得られる構造単位が100モル%であり,即ちプロピレン単独重合体である。これは上記要件(a)を満たす。
また,このポリマーはMFRが2g/10分,アイソタクチックトリアッド分率が99.8%,融点(Tm)が152℃であり,上記要件(c),(d)及び(e)を満たしている。さらに,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.89%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.005%であり,上記要件(b)を満たしている。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー2」と称する。
また,上記ポリマー2について,上記ポリマー1と同様にして,フィルムに成形したときの水蒸気透過度Yを調べたところ,9.5(g/m2/24hr)であった。
なお,ポリマー2は,上記のように融点(Tm)が152℃であるため,上記式(1)からYは4.6≦Y≦9.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていた。
製造例3(プロピレン/エチレン共重合)
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液500mL(0.12mol)を添加し,オートクレーブ内を70℃に昇温した。その後,上記固体触媒成分(9.0g)を添加し,プロピレンとエチレンの混合ガス(プロピレン:エチレン=98.5:1.5;但し重量比)を圧力が0.7MPaとなるように導入して重合を開始させ,本条件下に3時間重合反応を行った。
その後,反応系にエタノール100mLを圧入して反応を停止させ,残存ガス成分をパージすることで,9.1kgのポリマーを得た。
このポリマーには,プロピレンから得られる構造単位が98.0モル%,エチレンから得られる構造単位が2.0モル%存在している。これは上記要件(a)を満足する。
このポリマーはMFRが13g/10分,アイソタクチックトリアッド分率が99.2%,融点(Tm)が143℃であり,上記要件(c),(d)及び(e)を満たしている。さらに,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が1.06%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.16%であり,上記要件(b)を満たしている。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー3」と称する。
また,ポリマー3について,上記ポリマー1と同様にして,フィルムに成形したときの水蒸気透過度Yを調べたところ,11.3(g/m2/24hr)であった。
なお,このポリマー3は,上記のように融点(Tm)が143℃であるため,上記式(1)からYは6.4≦Y≦12.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていた。
製造例4(プロピレン/1−ブテン共重合)
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液500mL(0.12mol)を添加し,オートクレーブ内を70℃に昇温した。その後,上記固体触媒成分(9.0g)を添加し,プロピレンと1−ブテンの混合ガス(プロピレン:1−ブテン=97:3;但し重量比)を圧力が0.6MPaとなるように導入して重合を開始させ,本条件下に3時間重合反応を行った。
その後,反応系にエタノール100mLを圧入して反応を停止させ,残存ガス成分をパージすることで,8.3kgのポリマーを得た。
このポリマーには,プロピレンから得られる構造単位が98.0モル%,1−ブテンから得られる構造単位が2.0モル%存在している。これは上記要件(a)を満足する。
また,このポリマーはMFRが7g/10分,融点(Tm)が146℃,アイソタクチックトリアッド分率が99.4%であり,上記要件(c),(d)及び(e)を満たしている。さらに,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が1.23%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.09%であった。ここで得られた重合体を「ポリマー4」と称する。
また,ポリマー4について,上記ポリマー1と同様に,フィルムに成形した後の水蒸気透過度Yを調べたところ,10.3(g/m2/24hr)であった。
なお,このポリマー4は,上記のように融点(Tm)が146℃であるため,上記式(1)からYは5.8≦Y≦11.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていた。
製造例5(プロピレン単独重合)
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,ジエチルアルミニウムクロリド(45g),丸紅ソルベー社製三塩化チタン触媒11.5gをプロピレン雰囲気下に導入した。更に気相部の水素濃度を7.0容量%に保持しながら,オートクレーブ内温60℃にて,プロピレンを9kg/hrの速度にて4時間にわたり,オートクレーブ内に導入した。
プロピレン導入を停止した後,更に1時間反応を継続し,反応系にブタノール100mLを添加して反応を停止させ,残存ガス成分をパージすることで,26kgのポリマーを得た。
このポリマーは,プロピレンから得られる構造単位が100モル%であり,即ちプロピレン単独重合体である。これは上記要件(a)を満足する。
このポリマーは,MFRが10g/10分,融点(Tm)が160℃,アイソタクチックトリアッド分率が97.0%であった。
また,このポリマーにおいては,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0%であった。即ち,このものは,上記要件(a),上記要件(c),上記要件(d)及び上記要件(e)は満足するが,上記要件(b)を満足しない。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー5」と称する。
このポリマー5について,上記ポリマー1と同様にして,フィルムに成形した後の水蒸気透過度Yを調べたところ,10.0(g/m2/24hr)であった。
なお,このポリマー5は,上記のように融点(Tm)が160℃であるため,上記式(1)からYは3.0≦Y≦7.2の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていなかった。
製造例6(プロピレン/エチレン共重合)
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,ジエチルアルミニウムクロリド(40g),丸紅ソルベー社製三塩化チタン触媒7.5gをプロピレン雰囲気下に導入した。更に気相部の水素濃度を7.0容量%に保持しながら,オートクレーブ内温60℃にて,プロピレンとエチレンの混合ガス(プロピレン:エチレン=97.0:3.0;但し重量比)を圧力が0.7MPaとなるように導入した。
混合ガス導入を停止した後,更に1時間反応を継続し,反応系にブタノール100mLを添加して反応を停止させ,残存ガス成分をパージすることで,35kgのポリマーを得た。
このポリマーには,プロピレンから得られる構造単位が96.0モル%,エチレンから得られる構造単位が4.0モル%存在している。これは上記要件(a)を満足しないものである。
また,このポリマーはMFRが12g/10分,融点(Tm)が143℃,アイソタクチックトリアッド分率が96.1%であった。
またこのポリマーは,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0%であった。即ち,このものは,上記要件(a),上記要件(c)及び上記要件(e)は満足するが,上記要件(b)を満足しない。
以下,ここで得られた重合体を「ポリマー6」と称する。
また,このポリマー6について,上記ポリマー1と同様にして,フィルムに成形した後の水蒸気透過度Yを調べたところ,15.7(g/m2/24hr)であった。
なお,このポリマー6は,上記のように融点(Tm)が143℃であるため,上記式(1)からYは6.4≦Y≦12.8の範囲内にあるべきところ,その範囲内に入っていなかった。
製造例7(プロピレン単独重合)
特開平6−240041号公報の実施例中の[基材樹脂の製造1]に記載の方法を適用して実施した。
すなわち,内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,東ソーアクゾ社製のメチルアルモキサン(平均オリゴマー度16)を120g,特開平4−268307号公報に記載の方法で合成したrac−ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド(150mg)をプロピレン雰囲気下に導入した。更に気相部の水素濃度を0.5容量%に保持しながら,オートクレーブ内温40℃にて,プロピレンを7kg/hrの速度にて3時間にわたり,オートクレーブ内に導入した。
プロピレン導入を停止した後,更に1時間反応を継続し,反応系にブタノール100mLを添加して反応を停止させ,残存ガス成分をパージすることで,9.4kgのポリマーを得た。本ポリマーを「ポリマー7」と称する。
このポリマー7は,MFR=9,融点(Tm)が150℃,アイソタクチックトリアッド分率が94.4%,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.25%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合は検出限界以下,すなわち0.005%未満であった。即ち,このものは,上記要件(a),上記要件(c)及び上記要件(e)は満足するが,上記要件(b)を満足しないものである。
なお,後述する表1においては,ポリマー7の1,3挿入に基づく位置不規則単位の割合は0%として表記した。
また,ポリマー7について,上記ポリマー1と同様にして,フィルムに成形した後の水蒸気透過度Yを調べたところ,4.8(g/m2/24hr)であった。
なお,このポリマー7は,融点(Tm)が150℃であるため,上記式(1)からYは5.0≦Y≦10.5の範囲内にあるべきところ,その範囲外であった。
製造例8(プロピレン単独重合)
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後,精製したn−ヘプタン60Lを導入し,東ソーアクゾ社製のメチルアルモキサン(平均オリゴマー度16)を120g,公知の方法[エイチ.ヤマザキ他(H.Yamazaki et.al),「ケミストリー レターズ」(“Chemistry Letters”),日本国,1989年,第18巻,p.1853]で合成したrac−ジメチルシリレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(100mg)をプロピレン雰囲気下に導入した。更に気相部の水素濃度を0.5容量%に保持しながら,オートクレーブ内温35℃にて,プロピレンを7kg/hrの速度にて5時間にわたり,オートクレーブ内に導入した。
プロピレン導入を停止した後,更に1時間反応を継続し,反応系にブタノール100mLを添加して反応を停止させ,残存ガス成分をパージすることで,6.7kgのポリマーを得た。本ポリマーを「ポリマー8」と称する。
このポリマー8は,MFR=17,融点(Tm)が143℃,アイソタクチックトリアッド分率が91.9%,2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が2.1%,1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合は0.43%であった。
即ち,このものは,上記要件(a),上記要件(c),及び上記要件(e)は満足するが,上記要件(b)を満足しないものである。
また,ポリマー8について,上記ポリマー1と同様にして,フィルムに成形した後の水蒸気透過度Yを調べたところ,13.1(g/m2/24hr)であった。
なお,このポリマー8は,融点(Tm)が143℃であるため,上記式(1)からYは6.4≦Y≦12.8の範囲内にあるべきところ,その範囲外であった。
以上の製造例1〜8の結果を表1に示す。
Figure 0003904550
表1からも知られるごとく,ポリマー1〜ポリマー4は,上記要件(a)〜(c)を満たし,上記プロピレン系重合体[A]に相当するものである。また,ポリマー1〜ポリマー4は,上記要件(d)及び(e)をも満足する。
一方,ポリマー5〜ポリマー8は,いずれも,上記要件(b)を満足していない。即ち,ポリマー5〜ポリマー8は,上記プロピレン系重合体[A]に相当しないものである。
次に,上記製造例1〜8により得られた各種プロピレン系重合体(ポリマー1〜8)を用いて,ポリプロピレン系樹脂組成物及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造し,さらに該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて型内成形体を作製した実施例につき説明する。
実施例1
まず,製造例1で得たポリマー1と水素添加された石油樹脂(荒川化学工業(株)製 商品名「アルコン P115」)とを97:3(重量比)で混合し,ポリプロピレン系樹脂組成物を作製した。
続いて,このポリプロピレン系樹脂組成物に酸化防止剤(吉富製薬(株)製 商品名「ヨシノックスBHT」0.05wt%,及びチバガイギー製 商品名「イルガノックス1010」0.10wt%)を加えて65mmφ単軸押出機で直径1mmのストランド状に押し出し,水槽にて冷却後,長さ2mmにカットして細粒ペレットを得た。
こうして得られた細粒ペレット1000gを水2500g,第三リン酸カルシウム200g,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2gと共に内容積5リットルのオートクレーブに入れ,更にイソブタン118gを加えて,130℃まで60分間で昇温した後,この温度で30分間保持した。
その後,オートクレーブ内の圧力を2.3MPaGに保持するために外部より圧縮窒素ガスを加えながら,オートクレーブ底部のバルブを開き内容物を大気下へ放出した。
以上の操作により得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を乾燥後,嵩密度を測定したところ,48g/Lであった。また,発泡粒子の気泡は,その平均径が300μであり,非常に均一なものであった。
なお,上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均径は,無作為に選んだ発泡粒子のほぼ中心部を通るように切断した発泡粒子の断面を顕微鏡にて観察して得られる顕微鏡写真又はこの断面を画面上に映し出したものにおいて,無作為に50点の気泡について各気泡の直径(最大長さ)を測定し,その平均値を示したものである。
次に,上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子用いて,以下のように型内成形体作製する。
まず,上記で得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子をホッパーにより圧縮空気を用いて逐次的にアルミニウム製の成形用金型に圧縮しながら充填した。その後,金型のチャンバにゲージ圧0.22MPaのスチーム(下記の表中では「成形蒸気圧」と表示)を通じて加熱成形(型内成形)し,型内成形体を得た。
この型内成形体は密度0.060g/cm3,縦300mm,横300mm,厚み50mmであり,表面の間隙も少なく,凹凸も無い表面外観が優れた成形体であった。また,型内成形体の中央部より破断し,その断面の融着度を測定したところ,90%であった。
なお,上記融着度は,型内成形体から作製した試験片を割断し,その断面における粒子破壊の数と粒子間破壊の数を目視にて計測し,両者の合計数に対する粒子破壊の割合(%)を表したものである。
また,同一成形条件で成形した別の成形体から,縦50mm,横50mm,厚さ25mmの試験片を作成し,JIS K7220(1999年)に従って,試験片温度23℃,圧縮速度10mm/分の条件にて圧縮試験を実施したところ,50%圧縮時(50%歪時と同義)の応力が0.71MPaであった。更に,同じ大きさの試験片を用い,JIS K6767(1976年)に記載の方法により,圧縮永久歪を測定したところ,11%であった。
これらの結果を下記の表2に示す。
(実施例2〜8)及び(比較例1〜9)
次に,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂として用いるポリプロピレン系樹脂組成物の組成を変え,また,イソブタン添加量,発泡温度,及び成形蒸気圧を変え,他は実施例1と同様にして,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子及び型内成形体を作製した。
なお,実施例7及び8においては,樹脂[B]として,水素添加されたテルペン系樹脂である,「クリアロンM−105」(ヤスハラケミカル社製)を用いた。
これらの結果を表2〜表5に示した。
なお,表2〜表5において,成形体外観の評価基準は次の通りである。
○ 表面の間隙が少なく,凹凸も無い表面外観が優れた成形体。
△ 表面の間隙がやや認められる又は表面凹凸がやや認められる表面外観が多少劣る成形体。
× 表面の間隙が多い又は表面凹凸が多い表面外観不良の成形体。
Figure 0003904550
Figure 0003904550
Figure 0003904550
Figure 0003904550
表2及び表3より知られるごとく,本発明の実施例にかかる実施例1〜8においては,ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡が非常に均一で,またこれを用いて型内成形を行った場合には,低い成形蒸気圧で成形することができると共に,得られた型内成形体は,融着度が高く,さらに表面外観にも優れていた。また機械的物性についても圧縮強度(50%圧縮時の応力)が高く,圧縮永久歪も小さいという優れたものであった。
このように,上記要件(a)〜(c)を満たすプロピレン系重合体[A]と樹脂[B]とを含有する上記ポリプロピレン系樹脂組成物は,これを基材樹脂としてポリプロピレン系樹脂発泡粒子を作製すると,該発泡粒子は非常に均一な気泡を有するものとなり,また,このようなポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた型内成形体は,非常に低い成形蒸気圧で成形することができると共に,融着度,表面外観及び機械的物性に優れるものであった。
一方,表4より知られるごとく,比較例1及び比較例2においては,実施例1〜3と同様にポリマー1を基材樹脂の成分として含有しているが,樹脂Bを含有しないポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂として用いている。比較例1においては,上記実施例1〜3と同程度の低い成形蒸気圧にて成形を行ったところ,融着度が不充分であり,強度や成形体外観に問題があった。また,比較例2においては,比較例1と同様のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて,成形蒸気圧を高くして型内成形体を作製した。このように成形蒸気圧を高くして成形した場合には,表4より知られるごとく,表強度や外観に優れた型内成形体を得ることができることがわかる。しかし,成形蒸気圧を高くする必要があるため,成形コストが高くなり,成形サイクルが長くなってしまうという問題が生じた。
また,比較例3〜5においては,それぞれ実施例4〜6と同様に,ポリマー2〜ポリマー4を使用したが,樹脂[B]を含有しないポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂として用いた。このような基材樹脂からなる比較例3〜5のポリプロピレン系樹脂発泡粒子では,表4より知られるごとく,比較例3〜5において得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を,それぞれ上記実施例4〜6と同程度の低い成形蒸気圧で成形を行うと,得られた型内成形体は,融着度が低く,成形体外観が悪く,強度が低いものとなった。
また,表5より知られるごとく,上記要件(b)の条件を満足しないポリマー5を用いた比較例6においては,得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,その気泡のバラツキが大きく,このようなポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて作製した型内成形体は,外観が悪く,機械的物性(50%圧縮時の応力)が不充分であり,圧縮永久歪も大きいものであった。
また,上記要件(a)及び上記要件(b)の条件を満足しないポリマー6を用いた比較例7においては,得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,その気泡のバラツキが大きく,このようなポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて作製した型内成形体は,機械的物性(50%圧縮時の応力)が不充分でああり,圧縮永久歪も大きいものであった。
また,上記要件(b)の条件を満足しないポリマー7を用いた比較例8においては,得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,その気泡のバラツキがあり,このようなポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて作製した型内成形体は,実施例4の成形蒸気圧と同等の成形蒸気圧で成形しても得られた成形体は外観が悪く,機械的物性(50%圧縮時の応力)の割りに,圧縮永久歪も大きいものであった。
また,上記要件(b)の条件を満足しないポリマー8を用いた比較例9においては,得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子には,粗大気泡が存在した。そして,このポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて成形した型内成形体は,圧縮強度(50%圧縮時の応力)が大きく低下したものであった。
以上のように,本発明にかかる実施例1〜8においては,低い成形蒸気圧で発泡成形を行うことができると共に,表面外観及び機械的物性が優れた型内成形体を得ることができた。
尚,製造例1と製造例2は,同じメタロセン系重合触媒を使用してプロピレン単独重合体を製造した例を示すが,得られたプロピレン単独重合体の性質が異なる。この理由は,重合温度の相違に基づくものである。即ち,重合温度が高い製造例1の方が得られるプロピレン単独重合体の各位置不規則単位の割合が高い。
また,製造例5及び6は,メタロセン系重合触媒とは異なるチーグラー/ナッタ触媒を使用したことにより,得られたプロピレン系重合体に位置不規則単位が形成されなかった例を示すものである。
また,製造例7は,製造例1とは異なるメタロセン系重合触媒を使用してプロピレン単独重合体を製造して例を示すが,公知文献に記載された条件では各位置不規則単位の割合が本発明の範囲を下回ることが分かる。なお,製造例7においては,重合温度が40℃であったが,重合温度を例えば70℃又はそれ以上に高めた場合には,得られるプロピレン単独重合体は位置不規則単位が本発明の範囲内に入ると予想されるが,その一方で,[mm]分率は製造例7のプロピレン単独重合体よりも更に低下するものと予想される。
また,製造例8は,製造例1及び製造例7とは異なるメタロセン系重合触媒を使用してプロピレン単独重合体を製造した例を示すが,使用されたメタロセン系重合触媒の金属錯体成分が適当でなかったため各位置不規則単位の割合が本発明の範囲を上回ったものである。

Claims (5)

  1. 下記のプロピレン系重合体[A]80〜97重量%と,下記の樹脂[B]20〜3重量%(ただし,プロピレン系重合体[A]と樹脂[B]との合計量は100重量%である)とからなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
    プロピレン系重合体[A]:下記の要件(a)〜(c)を有する,プロピレン系重合体。
    (a)プロピレンから得られる構造単位が100〜98モル%,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位が0〜2モル%存在すること(ただし,プロピレンから得られる構造単位と,エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位との合計量は100モル%である)。
    (b)13C−NMRで測定したときの,全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.5〜1.8%であり,かつプロピレンモノマー単位の1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合が0.005〜0.4%であること。
    (c)融点(Tm)が143℃以上であること。
    樹脂[B]:テルペン系樹脂及び/または石油樹脂。
  2. 請求項1において,上記プロピレン系重合体[A]は,更に下記の要件(d)を有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
    (d)頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部の13C−NMRで測定したアイソタクチックトリアッド分率が97%以上であること。
  3. 請求項1又は2において,上記プロピレン系重合体[A]は,更に下記の要件(e)を有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
    (e)メルトフローレートが0.5〜100g/10分であること。
  4. 請求項1〜3に記載のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂としてなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
  5. ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形型内において成形してなり,密度0.008〜0.5g/cm3を有する型内成形体であって,
    かつ上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は,上記請求項4に記載のものを用いてなることを特徴とする型内成形体。
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