JP3904110B2 - 光学特性測定方法及び光学特性測定装置、光学系の調整方法、並びに露光装置 - Google Patents

光学特性測定方法及び光学特性測定装置、光学系の調整方法、並びに露光装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学特性測定方法及び光学特性測定装置、光学系の調整方法、並びに露光装置に係り、より詳しくは、被検光学系の光学特性を測定する光学特性測定方法及び光学特性測定装置、前記光学特性測定方法を使用する光学系の調整方法、並びに前記光学特性測定装置を備える露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子、液晶表示素子等を製造するためのリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「マスク」と総称する)に形成されたパターン(以下、「レチクルパターン」とも呼ぶ)を投影光学系を介してレジスト等が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、適宜「基板」と総称する)上に転写する露光装置が用いられている。こうした露光装置としては、いわゆるステッパ等の静止露光型の露光装置や、いわゆるスキャニング・ステッパ等の走査露光型の露光装置が主として用いられている。
【0003】
かかる露光装置においては、レチクルに形成されたパターンを基板に、高い解像力で、忠実に投影する必要がある。このため、投影光学系は、諸収差が十分に抑制された良好な光学特性を有するように設計されている。
【0004】
しかし、完全に設計どおりに投影光学系を製造することは困難であり、実際に製造された投影光学系には様々な要因に起因する諸収差が残存してしまう。このため、実際に製造された投影光学系の光学特性は、設計上の光学特性とは異なるものとなってしまう。
【0005】
そこで、実際に製造された投影光学系のような被検光学系の収差等の光学特性を測定するための様々な技術が提案されている。かかる様々な提案技術の中で、(1)ピンホールを用いて発生させた球面波を被検光学系に入射し、被検光学系を通過した後のピンホール像を一旦平行光に変換して、その波面を複数に分割する、(2)その分割された波面ごとにスポット像を形成し、分割波面ごとのスポット像の形成位置に基づいて被検光学系の波面収差を測定する、という波面収差測定技術が注目されている。
【0006】
こうした波面収差測定技術を使用する波面収差測定装置では、例えば、入射光の波面を分割して分割波面ごとにスポット像を形成する波面分割素子として、平行光の理想波面と平行な2次元平面に沿って微小なレンズが多数配列されたマイクロレンズアレイを採用することにより、簡単に構成することができる。この場合には、マイクロレンズアレイが形成した多数のスポット像をCCD等の撮像素子によって撮像し、各スポット像の撮像波形の重心を重心法により求めたり、各スポット像の撮像波形とテンプレート波形との最大相関位置を相関法により求めたりしてスポット像位置を検出する。そして、検出された各スポット像位置の設計位置からのズレから、例えば波面形状のツェルニケ多項式展開における係数を算出して、波面収差を求めていた。
【0007】
かかる波面収差の測定を、例えば露光装置における両側テレセントリックな投影光学系に適用するにときには、レチクルのピンホールパターンを通過した光が、投影光学系を介することにより集光された後に波面分割することがおこなわれている。そして、分割波面ごとにスポット像を結像させ、多数のスポット像の位置関係から波面の傾きを求め、波面を再構成することにより波面収差を求めることができる。かかるレチクルのピンホールパターンを利用すると、開口数(以下、「NA」とも記す)の大きな露光装置における投影光学系に、回折により広範囲で均一強度の光を入射させることができる。
【0008】
しかし、投影光学系のNAが大きいことから、レチクルにおけるピンホールパターンの大きさは、測定用光の波長すなわち露光光の波長程度の大きさとすることが必要となる。このため、ピンホールパターンを通過して投影光学系に入射する光量が非常に少なくなり、必要な測定時間が非常に長くなってしまう。そこで、投影光学系に入射する光の光量の確保と、広範囲で均一性の高い光の投影光学系への入射の確保とを両立させるために、ピンホールパターンに代えて測定用光の波長程度より大きな径の開口パターンをレチクルに形成し、照明光を、レモンスキン板等の拡散板を介した後にレチクルに照射する方法が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した拡散板を使用する従来の波面収差測定方法では、測定用光の波長程度より大きな開口パターンを使用するので、投影光学系には回折されていない光が入射することになる。このため、投影光学系の瞳面においては、拡散板による光の拡散ムラに起因する光量分布の不均一が必然的に発生する。
【0010】
かかる光量分布の不均一が分割波面内で発生することなると、その分割波面に対するスポット像の形状が光量分布の不均一さに応じて変化する。この結果、スポット像位置の検出精度が低下してしまい、ひいては波面収差の測定精度の低下を招いていた。
【0011】
ところで、近年における半導体デバイスにおける高集積化の進展に伴う露光精度の向上の要請から、露光装置における投影光学系の波面収差測定の精度の向上が強く求められている。このため、拡散板による拡散ムラに起因する波面収差の測定精度の低下を防止することできる技術が、強く求められている。
【0012】
本発明は、こうした事情のもとでなされたものであり、その第1の目的は、被検光学系の光学特性を迅速にかつ精度良く測定することができる光学特性測定方法及び光学特性測定装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の第2の目的は、光学系の光学特性を迅速にかつ精度良く調整することができる光学系の調整方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の第3の目的は、所定のパターンを基板に精度良く転写することができる露光装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学特性測定方法は、光拡散部材(DF)、所定のパターンが形成されたマスク(PT、PT’)、及び被検光学系(PL)を順次介した後、受光用開口(91a)に到達した光に基づいて、前記被検光学系の光学特性を測定する光学特性測定方法であって、前記受光用開口に到達する光に対して、前記光拡散部材、前記マスク、及び前記受光用開口の少なくとも1つの位置を変化させ、前記受光用開口を介した光を波面分割して複数のパターン像を形成し、前記複数のパターン像それぞれの位置情報を検出するパターン像位置検出工程と;前記パターン像位置検出工程において検出された前記複数のパターン像それぞれの位置情報に基づいて、前記被検光学系の光学特性を算出する光学特性算出工程と;を含む光学特性測定方法である。
【0016】
これによれば、パターン像位置検出工程において、光拡散部材を介して所定のパターンが形成されたマスクを照射するとともに、光拡散部材、マスク、及び受光用開口の少なくとも1つの位置を変化させて、受光用開口を介した光を波面分割して複数のパターン像を形成する。そして、複数のパターン像それぞれの位置情報を検出する。この結果、光拡散部材による光の拡散ムラが一種の平均化効果によって低減した状態での複数のスポット像の位置情報を迅速に検出することができる。
【0017】
引き続き、光学特性算出工程において、パターン像位置検出工程で検出された複数のスポット像の位置情報に基いて、被検光学系の光学特性が算出される。この光学特性の算出結果においては、光拡散部材による光の拡散ムラに起因する光学特性の測定結果の精度低下が抑制されている。
【0018】
したがって、本発明の光学特性測定方法によれば、被検光学系の光学特性を迅速にかつ精度良く測定することができる。
【0019】
本発明の光学特性測定方法では、前記パターン像位置検出工程において、前記マスクと前記受光用開口との前記被検光学系に関する共役位置関係を維持しつつ、前記マスクと前記光拡散部材とを相対移動させることとすることができる。
【0020】
ここで、前記所定のパターンを円形開口とし、前記相対移動のストロークを前記円形開口の径程度とすることができる。
【0021】
また、本発明の光学特性測定方法では、前記パターン像位置検出工程において、前記光拡散部材と前記マスクとの位置関係を維持しつつ、前記マスクと前記受光用開口とを相対移動させることとすることができる。
ここで、前記所定のパターンを複数の開口とし、前記マスクと前記受光用開口との相対移動を、前記受光用開口が前記複数の開口それぞれの前記被検光学系に関する共役位置を順次巡る相対移動とすることができる。
【0022】
また、本発明の光学特性測定方法では、前記パターン像をスポット像とすることができる。
【0023】
また、本発明の光学特性測定方法では、前記光学特性を波面収差とすることができる。
【0024】
本発明の光学特性測定装置は、所定のパターンが形成されたマスク(PT、PTA)及び被検光学系(PL)を順次介した後、受光用開口(91a)に到達した光に基づいて、前記被検光学系の光学特性を測定する光学特性測定装置であって、入射した光を拡散させて、前記マスクへ向けて射出する光拡散部材(DF)と;前記受光用開口を有し、該受光用開口に介した光を波面分割して複数のパターン像を形成し、該複数のパターン像の情報を検出する像情報検出装置(90)と;前記受光用開口に到達する光に対して、前記光拡散部材、前記マスク、及び前記像検出装置の少なくとも1つの位置を変化させる駆動装置(23,24)と;前記像情報検出装置による検出結果に基づいて、前記複数のパターン像それぞれの位置情報を算出する位置情報算出装置(32)と;前記位置情報算出装置によって算出された前記複数のパターン像それぞれの位置情報に基づいて、前記被検光学系の光学特性を算出する光学特性算出装置(33)と;を備える光学特性測定装置である。
【0025】
これによれば、光拡散部材を介した光がマスクに照射するとともに、駆動装置が、光拡散部材、マスク、及び像情報検出装置(すなわち受光用開口)の少なくとも1つの位置を変化させる。この状態で、像検出装置が、受光用開口を介した光を波面分割して複数のパターン像を形成する。そして、位置情報算出装置が、形成された複数のパターン像それぞれの位置情報を検出する。引き続き、光学特性算出装置が、位置情報算出装置によって検出された複数のスポット像の位置情報に基いて、被検光学系の光学特性を算出する。すなわち、本発明の光学特性測定装置は、上述した本発明の光学特性測定方法を使用して、被検光学系の光学特性を測定することができる。
【0026】
したがって、本発明の光学特性測定装置によれば、被検光学系の光学特性を迅速にかつ精度良く測定することができる。
【0027】
本発明の光学特性測定装置では、前記像情報検出装置が、前記受光用開口を介した光を波面分割して前記複数のパターンを形成する波面分割部材(94)と;前記複数のパターン像の検出する像検出装置(95)と;を備える構成とすることができる。
【0028】
ここで、前記波面分割部材を、複数のレンズ要素(94a)が配列されたマイクロレンズアレイとすることができる。
【0029】
また、本発明の光学特性測定装置では、前記光学特性を波面収差とすることができる。
【0030】
本発明の光学系の調整方法は、光学系の光学特性を調整する光学系の調整方法であって、前記光学系の光学特性を、本発明の光学特性測定方法を用いて測定する光学特性測定工程と;前記光学特性測定工程における測定結果に基づいて、前記光学系の光学特性を調整する光学特性調整工程と;を含む光学系の調整方法である。
【0031】
これによれば、光学特性測定工程において、本発明の光学特性測定方法により、光学系の光学特性が精度良く測定される。そして、光学特性調整工程において、精度良く測定された光学特性に基づいて、光学系の光学特性が調整される。したがって、光学系の光学特性を所望の特性を迅速にかつ精度良く調整することができる。
【0032】
本発明の露光装置は、露光光を基板に照射することにより、所定のパターンを前記基板(W)に転写する露光装置であって、露光光の光路上に配置された投影光学系(PL)と;前記投影光学系を被検光学系とする本発明の光学特性測定装置と;を備える露光装置である。
【0033】
これによれば、本発明の光学特性測定装置により精度良く光学特性が測定され、光学特性が良好に調整されていることが保証された投影光学系を使用して、所定のパターンを基板に転写することができる。したがって、所定のパターンを基板に精度良く転写することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。
【0035】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る露光装置100の概略構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。この露光装置100は、露光装置本体60と波面収差測定装置70とを備えている。
【0036】
前記露光装置本体60は、照明系10、光拡散部材としてのレモンスキン板DFを保持する保持部材DFH、レチクルRを保持するレチクルステージRST、被検光学系としての投影光学系PL、基板(物体)としてのウエハWが搭載されるステージ装置としてのウエハステージWST、アライメント検出系AS、レチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置及び姿勢を制御するステージ制御系19、並びに装置全体を統括制御する主制御系20等を備えている。
【0037】
前記照明系10は、光源、フライアイレンズ等のオプティカルインテグレータからなる照度均一化光学系、リレーレンズ、可変NDフィルタ、レチクルブラインド、及びダイクロイックミラー等(いずれも不図示)を含んで構成されている。こうした照明系の構成は、例えば、特開平10−112433号公報に開示されている。この照明系10では、回路パターン等が描かれたレチクルR上のレチクルブラインドで規定されたスリット状の照明領域部分を照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。
【0038】
前記保持部材DFH上には、レモンスキン板DFが、例えば真空吸着により固定できるようになっている。この保持部材DFHは、平面視で中空のロ字状の形状をしており、レモンスキン板DFを介した照明光ILは、保持部材DFHの中空部を通過するようになっている。また、保持部材DFHは、露光装置本体60における不図示の筐体部材に固定されている。なお、投影光学系PLの波面収差の測定時にのみレモンスキン板DFが保持部材DFH上に搭載され、パターン転写露光動作には、レモンスキン板DFは、保持部材DFHから取り除かれるようになっている。
【0039】
前記レチクルステージRST上にはレチクルRが、例えば真空吸着により固定されるようになっている。レチクルステージRSTは、ここでは、磁気浮上型の2次元リニアアクチュエータから成る不図示のレチクルステージ駆動部によって、レチクルRの位置決めのため、照明系10の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内で微少駆動可能であるとともに、所定の走査方向(ここではY方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。さらに、本実施形態では上記磁気浮上型の2次元リニアアクチュエータはX駆動用コイル、Y駆動用コイルの他にZ駆動用コイルを含んでいるため、Z方向にも微小駆動可能となっている。
【0040】
レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置はレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって、移動鏡15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報(又は速度情報)はステージ制御系19を介して主制御系20に送られ、主制御系20は、この位置情報(又は速度情報)に基づき、ステージ制御系19及びレチクルステージ駆動部23を介してレチクルステージRSTを駆動する。
【0041】
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLとしては、例えば両側テレセントリックな縮小系であり、共通のZ軸方向の光軸AXを有する不図示の複数のレンズエレメントから構成されている。また、この投影光学系PLとしては、投影倍率βが例えば1/4、1/5、1/6などのものが使用されている。このため、上述のようにして、照明光(露光光)ILによりレチクルR上の照明領域が照明されると、そのレチクルRに形成されたパターンが投影光学系PLによって投影倍率βで縮小された像(部分倒立像)が表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上のスリット状の露光領域に投影され転写される。
【0042】
なお、本実施形態では、上記の複数のレンズエレメントのうち、特定のレンズエレメント(例えば、所定の5つのレンズエレメント)がそれぞれ独立に移動可能となっている。かかるレンズエレメントの移動は、特定レンズエレメントを支持するレンズ支持部材を支持し、鏡筒部と連結する、特定レンズごとに設けられた3個のピエゾ素子等の駆動素子によって行われるようになっている。すなわち、特定レンズエレメントを、それぞれ独立に、各駆動素子の変位量に応じて光軸AXに沿って平行移動させることもできるし、光軸AXと垂直な平面に対して所望の傾斜を与えることもできるようになっている。そして、これらの駆動素子に与えられる駆動指示信号が、主制御系20からの指令MCDに基づいて結像特性補正コントローラ51によって制御され、これによって各駆動素子の変位量が制御されるようになっている。
【0043】
こうして構成された投影光学系PLでは、主制御系20による結像特性補正コントローラ51を介したレンズエレメントの移動制御により、ディストーション、像面湾曲、非点収差、コマ収差、又は球面収差等の光学特性が調整可能となっている。
【0044】
前記ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方で、不図示のベース上に配置され、このウエハステージWST上には、ウエハホルダ25が載置されている。このウエハホルダ25上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。ウエハホルダ25は不図示の駆動部により、投影光学系PLの光軸直交面に対し、任意方向に傾斜可能で、かつ投影光学系PLの光軸AX方向(Z方向)にも微動可能に構成されている。また、このウエハホルダ25は光軸AX回りの微小回転動作も可能になっている。
【0045】
また、ウエハステージWSTの+Y方向側には、後述する波面センサ90を着脱可能とするためのブラケット構造が形成されている。
【0046】
ウエハステージWSTは走査方向(Y方向)の移動のみならず、ウエハW上の複数のショット領域を前記照明領域と共役な露光領域に位置させることができるように、走査方向に垂直な方向(X方向)にも移動可能に構成されており、ウエハW上の各ショット領域を走査(スキャン)露光する動作と、次のショットの露光開始位置まで移動する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作を行う。このウエハステージWSTはモータ等を含むウエハステージ駆動部24によりXY2次元方向に駆動される。
【0047】
ウエハステージWSTのXY平面内での位置はウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)18によって、移動鏡17を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)はステージ制御系19を介して主制御系20に送られ、主制御系20は、この位置情報(又は速度情報)に基づき、ステージ制御系19及びウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTの駆動制御を行う。
【0048】
前記アライメント検出系ASは、投影光学系PLの側面に配置され、本実施形態では、ウエハW上に形成されたストリートラインや位置検出用マーク(ファインアライメントマーク)を観測する結像アライメントセンサから成るオフ・アクシス方式の検出系が用いられている。このアライメント検出系ASの詳細な構成は、例えば特開平9−219354号公報に開示されている。アライメント検出系ASによる観測結果は、主制御系20に供給される。
【0049】
更に、図1の装置には、ウエハW表面の露光領域内部及びその近傍の領域のZ方向(光軸AX方向)の位置を検出するための斜入射光式のフォーカス検出系(焦点検出系)の一つである、多点フォーカス位置検出系(21,22)が設けられている。この多点フォーカス位置検出系(21,22)は、光ファイバ束、集光レンズ、パターン形成板、レンズ、ミラー、及び照射対物レンズ(いずれも不図示)から成る照射光学系21と、集光対物レンズ、回転方向振動板、結像レンズ、受光用スリット板、及び多数のフォトセンサを有する受光器(いずれも不図示)から成る受光光学系22とから構成されている。この多点フォーカス位置検出系(21,22)の詳細な構成等については、例えば特開平6−283403号公報に開示されている。多点フォーカス位置検出系(21,22)による検出結果は、ステージ制御系19に供給される。
【0050】
前記波面収差測定装置70は、波面センサ90と、波面データ処理装置80とから構成されている。
【0051】
前記波面センサ90は、図2に示されるように、標示板91、コリメータレンズ92、レンズ93a及びレンズ93bから成るリレーレンズ系93、波面分割素子としてのマイクロレンズアレイ94、並びに撮像装置としてのCCD95を備えており、この順序で光軸AX1上に配置されている。また、波面センサ90は、波面センサ90に入射した光の光路を設定するミラー96a,96b,96c、並びにコリメータレンズ92、リレーレンズ系93、マイクロレンズアレイ94、CCD95、及びミラー96a,96b,96cを収納する収納部材97を更に備えている。
【0052】
前記標示板91は、例えばガラス基板を基材とし、ウエハホルダ25に固定されたウエハWの表面と同じ高さ位置(Z方向位置)に、光軸AX1と直交するように配置されている(図1参照)。この標示板91の表面には、図3に示されるように、その中央部に開口91aが形成されている。また、標示板91の表面における開口91aの周辺には、3組以上(図3では、4組)の2次元位置検出用マーク91bが形成されている。この2次元位置検出用マーク91bとしては、本実施形態では、X方向に沿って形成されたラインアンドスペースマーク91cと、Y方向に沿って形成されたラインアンドスペースマーク91dとの組合せが採用されている。なお、ラインアンドスペースマーク91c,91dは、上述のアライメント検出系ASによって観察可能となっている。また、開口91a及び2次元位置検出用マーク91bを除く標示板91の表面は反射面加工がなされている。かかる反射面加工は、例えば、ガラス基板にクロム(Cr)を蒸着することによって行われている。
【0053】
図2に戻り、前記コリメータレンズ92は、開口91aを通って入射した光を平面波に変換する。
【0054】
前記マイクロレンズアレイ94は、図4に示されるように、マトリクス状に正の屈折力を有する正方形状の多数のマイクロレンズ94aが稠密に配列されたものである。ここで、各マイクロレンズ94aの光軸は互いにほぼ平行となっている。なお、図4においては、マイクロレンズ94aが7×7のマトリクス状に配列されたものが、一例として示されている。マイクロレンズ94aは、正方形状に限らず長方形状であってもよく、また、マイクロレンズ94aは、全てが同一形状でなくともよい。また、マイクロレンズアレイ94におけるマイクロレンズ94aの配列は、不等ピッチ配列でもよいし、また、斜め並び配列であってもよい。
【0055】
こうしたマイクロレンズアレイ94は、平行平面ガラス板にエッチング処理を施すことにより作成される。マイクロレンズアレイ94は、リレーレンズ系93を介した光を入射したマイクロレンズ94aごとに、開口91aの像をそれぞれ異なる位置に結像する。
【0056】
なお、コリメータレンズ92、リレーレンズ系93、マイクロレンズアレイ94、及びミラー96a,96b,96cから成る光学系を、以下では「波面収差測定光学系」というものとする。
【0057】
図2に戻り、前記CCD95は、マイクロレンズアレイ94の各マイクロレンズ94aによって開口91aに形成された後述する開口パターンの像が結像される結像面、すなわち、波面収差測定光学系における開口91aの形成面の共役面に受光面を有し、その受光面に結像された多数の開口パターンの像を撮像する。この撮像結果は、撮像データIMDとして波面データ処理装置80に供給される。
【0058】
前記収納部材97は、その内部に、コリメータレンズ92、リレーレンズ系93、マイクロレンズアレイ94、及びCCD95をそれぞれ支持する不図示の支持部材を有している。なお、ミラー96a,96b,96cは、収納部材97の内面に取り付けられている。また、前記収納部材97の外形は、上述したウエハステージWSTのブラケット構造と嵌合する形状となっており、ウエハステージWSTに対して着脱自在となっている。
【0059】
前記波面データ処理装置80は、図5に示されるように、主制御装置30と記憶装置40とを備えている。主制御装置30は、(a)主制御系20の制御の下で波面データ処理装置80の動作全体を制御するとともに、波面測定結果データWFAを主制御系20へ供給する制御装置39と、(b)波面センサ90からの撮像データIMDを収集する撮像データ収集装置31と、(c)像データに基づいてスポット像の位置を算出する位置情報算出装置としての位置算出装置32と、(d)位置検出装置32により検出されたスポット像位置に基づいて、投影光学系PLの波面収差を算出する波面収差算出装置33とを含んでいる。
【0060】
また、記憶装置40は、(a)撮像データを格納する撮像データ格納領域41と、(b)算出されたスポット像位置を格納するスポット像位置格納領域42と、(c)波面収差データを格納する波面収差データ格納領域43とを有している。
【0061】
本実施形態では、波面データ処理装置80を上記のように、各種の装置を組み合わせて構成したが、波面データ処理装置80を計算機システムとして構成し、主制御装置30を構成する上記の各装置の機能を波面データ処理装置80に内蔵されたプログラムによって実現することも可能である。
【0062】
以下、本実施形態の露光装置100による露光動作を、図6に示されるフローチャートに沿って、適宜他の図面を参照しながら説明する。
【0063】
なお、以下の動作の前提として、波面センサ90はウエハステージWSTに装着されており、また、波面データ処理装置80と主制御系20とが接続されているものとする。
【0064】
また、ウエハステージに装着された波面センサ90の標示板91の開口91aとウエハステージWSTとの位置関係は、2次元位置マーク91bをアライメント検出系ASで観察することにより、正確に求められているものとする。すなわち、ウエハ干渉計18から出力される位置情報(速度情報)に基づいて、開口91aのXY位置が正確に検出でき、かつ、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを移動制御することにより、開口91aを所望のXY位置に精度良く位置決めできるものとする。なお、本実施形態では、開口91aとウエハステージWSTとの位置関係は、アライメント検出系ASによる4つの2次元位置マーク91bの位置の検出結果に基づいて、特開昭61−44429号公報等に開示されているいわゆるエンハンストグローバルアライメント(以下、「EGA」という)等の統計的な手法を用いて正確に検出される。
【0065】
図6に示される処理では、まず、サブルーチン101において、投影光学系PLの波面収差が測定される。この波面収差の測定では、図7に示されるように、まず、ステップ111において、保持部材DFH上にレモンスキン板DFが載置されるとともに、不図示のレチクルローダにより、図8に示される波面収差測定用の測定用レチクルRTがレチクルステージRSTにロードされる。測定用レチクルRTには、図8に示されるように、複数個(図8では、9個)の開口パターンPH1〜PHN(図8では、N=9)がX方向及びY方向に沿ってマトリクス状に形成されている。なお、開口パターンPH1〜PHNは、図8において点線で示されるスリット状の照明領域の大きさの領域内に形成されている。また、本実施形態では、開口パターンPH1〜PHNそれぞれは円形開口パターンとされている。円形開口パターンの直径は、照明光ILの波長程度あるいは波長以下に設定される。なお、本実施形態では、円形開口パターンの直径は、被検光学系のNAの範囲内では球面波と見なせる光を通過させる程度であればよく、照明光ILの波長よりも大きく設定されている。
【0066】
引き続き、ウエハステージWST上に配置された不図示の基準マーク板を使用したレチクルアライメントや、更にアライメント検出系ASを使用したベースライン量の測定等が行われる。そして、収差測定が行われる最初の開口パターンPH1が投影光学系PLの光軸AX上に位置するように、レチクルステージRSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、レチクル干渉計16が検出したレチクルステージRSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してレチクル駆動部23を制御することにより行われる。
【0067】
図7に戻り、次に、ステップ112において、波面センサ90の標示板91の開口91aが、開口パターンPH1の投影光学系PLに関する共役位置(開口パターンPH1の場合には、光軸AX上)、すなわち開口パターンPH1に関する測定初期位置にウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、ウエハ干渉計18が検出したウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。この際、主制御系20は、多点フォーカス位置検出系(21,22)の検出結果に基づいて、開口パターンPH1の像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を一致させるべく、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。
【0068】
以上のようにして、最初の開口パターンPH1からの球面波に関する投影光学系PLの波面収差測定のための光学的な各装置の配置が終了する。こうした、光学的配置について、波面センサ90の光軸AX1及び投影光学系PLの光軸に沿って展開したものが、図9に示されている。
【0069】
こうした光学配置において、照明系10から照明光ILが射出されると、測定用レチクルRTの最初の開口パターンPH1に到達した光が、球面波となって開口パターンPHから出射する。そして、投影光学系PLを介した後、波面センサ90の標示板91の開口91aに集光される。なお、最初の開口パターンPH1以外の開口パターンPH2〜PHNを通過した光は、開口パターン91aには到達しない。こうして開口91aに集光された光の波面は、投影光学系PLの波面収差を含んだものとなっている。
【0070】
なお、光の波面には、投影光学系PLの波面収差だけでなく、ピンホールパターンPH1のピンホール像が結像される像面(投影光学系PLの像面)と、波面センサ90の標示板91の上面との間におけるX、Y、Z方向の位置ずれ成分(例えば、傾斜成分、光軸方向の位置ずれ成分等)を含んでいる可能性がある。そこで、波面収差測定装置70で求められる波面収差データから上述した位置ずれ成分を算出し、この位置ずれ成分に基づいて、ウエハステージWSTの位置を制御する。これにより、高精度な波面収差測定を行うことができる。
【0071】
開口91aを通過した光は、コリメータレンズ92によりほぼ平行光に変換され、さらにリレーレンズ系93を介した後、マイクロレンズアレイ94に入射する。ここで、マイクロレンズアレイ94に入射する光の波面は、投影光学系PLの波面収差を反映したものとなっている。すなわち、投影光学系PLに波面収差が無い場合には、図9において点線で示されるように、その波面WFが光軸AX1と直交する平面となるが、投影光学系PLに波面収差が有る場合には、図9において二点鎖線で示されるように、その波面WF’は位置に応じた角度で傾くことになる。
【0072】
マイクロレンズアレイ94は、各マイクロレンズ94aごとに、開口91aの像を、標示板91の共役面すなわちCCD95の撮像面に結像される。マイクロレンズ94aに入射した光の波面が光軸AX1と直交する場合には、そのマイクロレンズ94aの光軸と撮像面の交点を中心とするスポット像が、撮像面に結像される。また、マイクロレンズ94aに入射した光の波面が傾いている場合には、その傾き量に応じた距離だけ、そのマイクロレンズ94aの光軸と撮像面の交点からずれた点を中心とするスポット像が撮像面に結像される。
【0073】
図7に戻り、次いで、ステップ113において、開口パターンPH1と開口91aとの共役位置関係を維持した同期移動をさせながら、CCD95により、その撮像面に形成された像の撮像を行う。かかる同期移動は、レチクルステージRSTを+Y方向又は−Y方向へ速度VRで移動されるとともに、ウエハステージWSTをレチクルステージRSTの駆動方向の反対方向へ速度VW(=β・VR)で移動させることによって行われる。ここで、レチクルステージRSTの移動は、主制御装系20が、ステージ制御系19を介してレチクルステージ駆動部23を制御することにより行われる。また、ウエハステージWSTの移動は、主制御装系20が、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。
【0074】
なお、ステップ113におけるレチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期移動では、レチクルステージRSTの移動距離が開口パターンPH1の径程度以上であればよい。また、上述した速度VR及び速度VWは、レチクルステージRSTの移動距離及びウエハステージWSTの移動距離と、CCD95にとってスポット像撮像として必要な受光時間(撮像時間)とに基いて定められる。
【0075】
以上のようにして行われる撮像では、マイクロレンズアレイ94によって波面分割される光、すなわち開口パターンPH1、投影光学系PL、標示板91の開口91a、コリメータレンズ92、及びリレー光学系を順次介した光におけるレモンスキン板DFによる拡散ムラに起因する光強度分布の不均一性は、上述した撮像期間における同期移動により低減されている。この結果、波面形状を精度良く反映した位置にスポット像が結像される。
【0076】
この撮像により得られた撮像データIMDは、波面データ処理装置80に供給される。波面データ処理装置80では、撮像データ収集装置31が撮像データIMDを収集し、撮像データ格納領域41に収集した撮像データを格納する。
【0077】
次に、ステップ114において、撮像結果に基づいて、各スポット像の位置情報が検出される。かかる位置情報の算出にあたり、位置算出装置32は、撮像データ格納領域41から、撮像結果のデータを読み出す。引き続き、位置算出装置32は、マイクロレンズアレイ94によりCCD95の撮像面に形成された各スポット像の光強度分布の重心を算出することにより、各スポット像の中心位置を算出する。位置算出装置32は、こうして求められた各スポット像の中心位置を、マイクロレンズアレイ94によりCCD95の撮像面に形成された各スポット像の位置情報として、スポット像位置格納領域42に格納する。
【0078】
次いで、ステップ115において、波面収差算出装置33が、スポット像位置格納領域42からスポット像位置の検出結果を読み出して、測定用レチクルRTにおける最初の開口パターンPH1を介した光に関する投影光学系PLの波面収差を算出する。かかる波面収差の算出は、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置と、検出されたスポット像位置の差から、ツェルニケ多項式の係数を求めることにより行われる。こうして、算出された波面収差は、開口パターンPH1の位置とともに、波面収差データ格納領域43に格納される。
【0079】
次に、ステップ116において、全ての開口パターンに関して投影光学系PLの波面収差を算出したか否かが判定される。この段階では、最初の開口パターンPH1についてのみ投影光学系PLの波面収差を測定しただけなので、否定的な判定がなされ、処理はステップ117に移行する。
【0080】
ステップ117では、波面センサ90の標示板91の開口91aが、次の開口パターンPH2の投影光学系PLに関する共役位置、すなわち開口パターンPH2に関する測定初期位置にウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、ウエハ干渉計18が検出したウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。なお、このときも、主制御系20が、多点フォーカス位置検出系(21,22)の検出結果に基づいて、開口パターンPH2の像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を一致させるべく、必要に応じて、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。
【0081】
ピンホールパターンPH2のピンホール像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を移動させる場合も、前述したように、波面収差測定装置70で求められる波面収差データから上述した位置ずれ成分を算出し、この位置ずれ成分に基づいて、ウエハステージWSTの位置を制御する。こうした制御は、各ピンホールパターン毎に行うことが望ましい。
【0082】
そして、上記の開口パターンPH1の場合と同様にして、投影光学系PLの波面収差が測定される。そして、波面収差の測定結果は、開口パターンPH2の位置とともに、波面収差データ格納領域43に格納される。
【0083】
以後、上記と同様にして、全ての開口パターンに関する投影光学系PLの波面収差が順次測定され、開口パターンごとの測定結果が開口パターンの位置とともに、波面収差データ格納領域43に格納される。こうして全ての開口パターンに関する投影光学系PLの波面収差が測定されると、ステップ117において肯定的な判定がなされる。そして、制御装置39が、波面収差データ格納領域43から波面収差の測定結果を読み出し、波面測定結果データWFAとして主制御系20へ供給する。この後、処理が図6のステップ102に移行する。
【0084】
ステップ102では、主制御系20が、制御装置39から供給された波面測定結果データWFAに基づいて、投影光学系PLの波面収差の測定が許容値以下であるか否かを判定する。この判定が肯定的である場合には、処理がステップ104に移行する。一方、判定が否定的である場合には、処理はステップ103に移行する。この段階では、判定が否定的であり、処理がステップ103に移行したとして、以下の説明を行う。
【0085】
ステップ103では、主制御系20が、投影光学系PLの波面収差の測定結果に基づき、現在発生している波面収差を低減させるように、投影光学系PLの波面収差の調整を行う。かかる波面収差の調整は、制御装置39が、結像特性補正コントローラ51を介してレンズエレメントの移動制御を行うことや、場合によっては、人手により投影光学系PLのレンズエレメントのXY平面内での移動やレンズエレメントの交換を行うことによりなされる。
【0086】
引き続き、サブルーチン101において、調整された投影光学系PLに関する波面収差が上記と同様にして測定される。以後、ステップ102において肯定的な判断がなされるまで、投影光学系PLの波面収差の調整(ステップ103)と、波面収差の測定(ステップ101)が繰り返される。そして、ステップ102において肯定的な判断がなされると、保持部材DFH上からレモンスキン板DFが除去された後、処理はステップ104に移行する。
【0087】
ステップ104では、波面センサ90をウエハステージWSTから取り外し、波面データ処理装置80と主制御系20との接続を切断した後、主制御系20の制御のもとで、不図示のレチクルローダにより、転写したいパターンが形成されたレチクルRがレチクルステージRSTにロードされる。また、不図示のウエハローダにより、露光したいウエハWがウエハステージWSTにロードされる。
【0088】
次に、ステップ105において、主制御系20の制御のもとで、露光準備用計測が行われる。すなわち、ウエハステージWST上に配置された不図示の基準マーク板を使用したレチクルアライメントや、更にアライメント検出系ASを使用したベースライン量の測定等の準備作業が行われる。また、ウエハWに対する露光が第2層目以降の露光であるときには、既に形成されている回路パターンと重ね合わせ精度良く回路パターンを形成するため、アライメン検出系ASを使用した上述のEGA計測により、ウエハW上におけるショット領域の配列座標が高精度で検出される。
【0089】
次いで、ステップ106において、露光が行われる。この露光動作にあたって、まず、ウエハWのXY位置が、ウエハW上の最初のショット領域(ファースト・ショット)の露光のための走査開始位置となるように、ウエハステージWSTが移動される。ウエハ干渉計18からの位置情報(速度情報)等(第2層目以降の露光の場合には、基準座標系と配列座標系との位置関係の検出結果、ウエハ干渉計18からの位置情報(速度情報)等)に基づき、主制御系20によりステージ制御系19及びウエハステージ駆動部24等を介して行われる。同時に、レチクルRのXY位置が、走査開始位置となるように、レチクルステージRSTが移動される。この移動は、主制御系20によりステージ制御系19及び不図示のレチクル駆動部等を介して行われる。
【0090】
次に、ステージ制御系19が、主制御系20からの指示に応じて、多点フォーカス位置検出系(21,22)によって検出されたウエハのZ位置情報、レチクル干渉計16によって計測されたレチクルRのXY位置情報、ウエハ干渉計18によって計測されたウエハWのXY位置情報に基づき、不図示のレチクル駆動部及びウエハステージ駆動部24を介して、ウエハWの面位置の調整を行いつつ、レチクルRとウエハWとを相対移動させて走査露光を行う。
【0091】
こうして、最初のショット領域の露光が終了すると、次のショット領域の露光のための走査開始位置となるように、ウエハステージWSTが移動されるとともに、レチクルRのXY位置が、走査開始位置となるように、レチクルステージRSTが移動される。そして、当該ショット領域に関する走査露光が、上述の最初のショット領域と同様にして行われる。以後、同様にして各ショット領域について走査露光が行われ、露光が完了する。
【0092】
そして、ステップ107において、不図示のアンローダにより、露光が完了したウエハWがウエハホルダ25からアンロードされる。こうして、1枚のウエハWの露光処理が終了する。
【0093】
以後のウエハの露光においては、ステップ101〜103の投影光学系PLに関する波面収差の測定及び調整が必要に応じて行われながら、ステップ104〜107のウエハ露光作業が行われる。
【0094】
以上説明したように、本第1の実施形態では、測定用レチクルRTと波面収差測定装置70における受光用の開口91aとを投影光学系PLに関する共役位置関係を維持して同期移動させている最中に、レモンスキン板DF、測定用レチクルRTに形成された開口パターンのいずれか、投影光学系PL、開口91a、コリメータレンズ92、及びリレー光学系93を順次介した光を波面分割し、分割波面ごとに形成されるスポット像の位置情報を検出する。この結果、レモンスキン板DFによる光の拡散ムラに起因するスポット像位置情報の検出結果の精度低下を抑制することができ、迅速にかつ精度良く各スポット像の位置情報を検出することができる。
【0095】
そして、本実施形態では、精度良く検出された各スポット像の位置情報の検出結果に基づいて、投影光学系PLの波面収差を求める。したがって、本実施形態によれば、投影光学系PLの光学特性である波面収差特性を迅速にかつ精度良く測定することができる。
【0096】
また、精度良く求められた投影光学系PLの波面収差に基づいて、投影光学系PLの収差を調整し、十分に諸収差が低減された投影光学系PLによりレチクルRに形成された所定のパターンがウエハW表面に投影されるので、所定のパターンをウエハWに精度良く転写することができる。
【0097】
なお、本第1の実施形態では、測定用レチクルRTに投影光学系PLの波面収差測定用の開口パターンPH1〜PHNのみを形成したが、波面センサ90自体による波面収差の発生を測定するために、開口パターンPH1〜PHNよりも格段に大きな開口パターンを測定用レチクルRTに較正用開口パターンとして形成してもよい。かかる較正用開口パターンを使用した場合にも、レモンスキン板DFによる拡散ムラが、波面センサ90の波面収差の測定結果における測定精度の低下を招くことになるが、上述した投影光学系PLの波面収差測定の場合と同様にして、波面センサ90の開口91aに到達する光が経由するレモンスキン板DFの領域を変化させて、CCD95によりスポット像を撮像することにより、波面形状を精度良く反映した位置に結像されたスポット像を撮像することができる。この結果、波面センサ90の較正に使用される波面センサ90の波面収差を精度良く測定でき、ひいては投影光学系PLの波面収差を非常に精度良く測定することができる。なお、標示板91に結像された較正用開口パターン像が開口91aよりも十分に大きければ、開口91aに到達する光が経由するレモンスキン板DFの領域を変化させるためには、波面センサ90のみを移動させることとすることができる。
【0098】
また、本第1の実施形態では、スポット像の撮像の際に、レモンスキン板DFを固定し、測定用レチクルRTと波面収差測定装置70における受光用の開口91aとを同期移動させた。これに対して、測定用レチクルRTと波面収差測定装置70における受光用の開口91aとの位置を固定し、レモンスキン板DFを移動させるようにしてもよい。こうしたレモンスキン板DFの移動は、保持部材DFHを可動とし、例えば、ボイスコイルモータやピエゾ素子により、保持部材DFHを駆動するようにすればよい。
【0099】
かかるレモンスキン板DFの移動は、測定用レチクルRTにおけるパターン形成面と平行な方向の移動であってもよいし、また、測定用レチクルRTにおけるパターン形成面と垂直な方向の移動であってもよい。
【0100】
また、測定用レチクルRTと波面収差測定装置70における受光用の開口91aとの同期移動及びレモンスキン板DFの移動を組み合わせてもよい。
【0101】
また、本第1の実施形態では、測定用レチクルRTと波面収差測定装置70における受光用の開口91aとの同期移動中にCCD95の各画素において連続的に受光した光量の総和に基づいてスポット像位置を求めた。これに対して、測定用レチクルRTと波面収差測定装置70における受光用の開口91aとが互いに投影光学系PLに関する共役位置であるような、複数の測定用レチクルRTと波面収差測定装置70における受光用の開口91aとの位置関係それぞれにおいて、CCD95による撮像を行い、複数の撮像結果について同一画素位置の和を算出した後に、算出された和画像に基づいてスポット像位置を求めることもできる。さらに、複数の撮像結果ごとにスポット像候補位置を算出し、これらのスポット像候補位置の平均をスポット像位置として求めることも可能である。
【0102】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、第1の実施形態の場合と同一又は同等な要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0103】
図10には、本発明の第2の実施形態に係る露光装置100Aの概略構成が示されている。この露光装置100Aは、上述した第1の実施形態の露光装置100と同様に、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。この露光装置100Aは、露光装置本体60Aと波面収差測定装置70Aとを備えている。
【0104】
前記露光装置本体60Aは、上述した第1の実施形態の露光装置本体60(図1参照)と比べて、保持部材DFHを備えていない点のみが相違している。
【0105】
前記波面収差測定装置70Aは、波面センサ90と、波面データ処理装置80Aとから構成されている。すなわち、波面収差測定装置70Aは、第1の実施形態の場合と同様に構成された波面センサ90と、第1の実施形態の波面データ処理装置80とは異なる構成を有する波面データ処理装置80Aとを備えている。
【0106】
前記波面データ処理装置80Aは、図11に示されるように、主制御装置30Aと記憶装置40Aとを備えている。主制御装置30Aは、(a)主制御系20の制御の下で波面データ処理装置80Aの動作全体を制御するとともに、波面測定結果データWFAを主制御系20へ供給する制御装置39と、(b)波面センサ90からの撮像データIMDを収集する撮像データ収集装置31と、(c)撮像データ収集装置31によって収集された像データに基づいてスポット像の位置を算出する位置情報演算装置32Aと、(d)位置情報演算装置32Aにより算出されたスポット像位置に基づいて、投影光学系PLの波面収差を算出する波面収差算出装置33とを含んでいる。ここで、位置情報演算装置32Aは、(i)撮像データ収集装置31によって収集された複数の像データを合成して、スポット像位置を算出するための位置算出用データを作成する像データ合成装置34と、(ii)位置算出用データに基づいて、スポット像の位置を算出する位置検出装置32とを有している。
【0107】
また、記憶装置40Aは、(a)撮像データを格納する撮像データ格納領域41と、(b)算出されたスポット像位置を格納するスポット像位置格納領域42と、(c)波面収差データを格納する波面収差データ格納領域43と、(d)位置算出用データを格納する位置算出用データ格納領域44とを有している。
【0108】
本実施形態では、波面データ処理装置80Aを上記のように、各種の装置を組み合わせて構成したが、第1の実施形態の場合と同様にして、波面データ処理装置80Aを計算機システムとして構成し、主制御装置30Aを構成する上記の各装置の機能を波面データ処理装置80Aに内蔵されたプログラムによって実現することも可能である。
【0109】
以下、本実施形態の露光装置100Aによる露光動作を説明する。なお、本実施形態の露光装置100Aによる露光動作は、上述した第1の実施形態の露光装置100による露光動作と比べて、図6におけるサブルーチン101の処理すなわち投影光学系PLの波面収差測定処理のみが相違する。そこで、この相違点に主に着目して、以下の説明を行う。
【0110】
なお、以下の動作の前提として、上述した第1の実施形態の場合と同様に、波面センサ90はウエハステージWSTに装着されており、また、波面データ処理装置80と主制御系20とが接続されているものとする。
【0111】
また、第1の実施形態の場合と同様に、ウエハステージに装着された波面センサ90の標示板91の開口91aとウエハステージWSTとの位置関係は、2次元位置マーク91bをアライメント検出系ASで観察することにより、正確に求められているものとする。
【0112】
本実施形態では、まず、図6のサブルーチン101において、投影光学系PLの波面収差が測定される。このサブルーチン101では、図12に示されるように、まず、ステップ121において、図13(A)〜図13(C)で総合的に示されるような測定用レチクルセットRAが不図示のレチクルローダによりレチクルステージRSTにロードされる。
【0113】
この測定用レチクルセットRAは、図13(A)に示されるように、測定用レチクルRTA、スペーサSP、及びレモンスキン板DFとを備えて構成されている。ここで、測定用レチクルRTAとレモンスキン板DFとは、スペーサSPを介して固定的に接続されている。なお、スペーサSPとしては、平面視で中空のロ字状の形状を有しており、レモンスキン板DFを介した照明光ILは、スペーサSPの中空部を通過して測定用レチクルRTAに到達できるようになっている。
【0114】
測定用レチクルRTAは、例えば図13(B)に示されるように、複数個(図13(B)では、9個)の開口パターン群PHG1〜PHGN(図13(B)では、N=9)がX方向及びY方向に沿ってマトリクス状に形成されている。なお、開口パターン群PHG1〜PHGNは、図13(B)において点線で示されるスリット状の照明領域の大きさの領域内に形成されている。
【0115】
開口パターン群PHGj(j=1〜N)それぞれは、例えば図13(C)に示されるように、複数個(図13(C)では、5個)の開口パターンPHj1〜PHjM(図13(B)では、M=5)を有している。なお、開口パターンPHjk(k=1〜M)は、波面収差の測定において開口パターンPHjkの全てがほぼ同一点とみなせる程度に近接して形成されている。
【0116】
引き続き、ウエハステージWST上に配置された不図示の基準マーク板を使用したレチクルアライメントや、更にアライメント検出系ASを使用したベースライン量の測定等が行われる。そして、収差測定が行われる最初の開口パターンPH1が投影光学系PLの光軸AX上に位置するように、レチクルステージRSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、レチクル干渉計16が検出したレチクルステージRSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してレチクル駆動部23を制御することにより行われる。
【0117】
図12に戻り、次に、ステップ122において、波面センサ90の標示板91の開口91aが、開口パターンPH11の投影光学系PLに関する共役位置、すなわち開口パターン群PHG1に関する初期撮像位置にウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、ウエハ干渉計18が検出したウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。この際、主制御系20は、多点フォーカス位置検出系(21,22)の検出結果に基づいて、開口パターンPH11の像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を一致させるべく、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。
【0118】
以上のようにして、最初の開口パターンPH11からの球面波に関する投影光学系PLの波面収差測定のための光学的な各装置の配置が終了する。こうした、光学的配置について、波面センサ90の光軸AX1及び投影光学系PLの光軸に沿って展開したものが、図14に示されている。
【0119】
こうした光学配置において、照明系10から照明光ILが射出されると、測定用レチクルRTの最初の開口パターンPH11に到達した光が、球面波となって開口パターンPH11から出射する。そして、投影光学系PLを介した後、波面センサ90の標示板91の開口91aに集光される。なお、最初の開口パターンPH11以外の開口パターンを通過した光は、開口パターン91aには到達しない。こうして開口91aに集光された光の波面は、ほぼ球面ではあるが、投影光学系PLの波面収差を含んだものとなっている。
【0120】
開口91aを通過した光は、第1の実施形態の場合と同様にして、コリメータレンズ92により平行光に変換され、さらにリレーレンズ系93を介した後、マイクロレンズアレイ94に入射する。ここで、マイクロレンズアレイ94に入射する光の波面は、投影光学系PLの波面収差を反映したものとなっている。すなわち、投影光学系PLに波面収差が無い場合には、図14において点線で示されるように、その波面WFが光軸AX1と直交する平面となるが、投影光学系PLに波面収差が有る場合には、図14において二点鎖線で示されるように、その波面WF’は位置に応じた角度で傾くことになる。
【0121】
マイクロレンズアレイ94は、各マイクロレンズ94aごとに、開口91aにおける開口パターン像を、標示板91の共役面すなわちCCD95の撮像面に結像させる。マイクロレンズ94aに入射した光の波面が光軸AX1と直交する場合には、そのマイクロレンズ94aの光軸と撮像面の交点を中心とするスポット像が、撮像面に結像される。また、マイクロレンズ94aに入射した光の波面が傾いている場合には、その傾き量に応じた距離だけ、そのマイクロレンズ94aの光軸と撮像面の交点からずれた点を中心とするスポット像が撮像面に結像される。
【0122】
図12に戻り、次いで、ステップ123において、CCD95により、その撮像面に形成された像の撮像が行われる。この撮像により得られた撮像データIMDは、波面データ処理装置80に供給される。波面データ処理装置80では、撮像データ収集装置31が撮像データIMDを収集し、撮像データ格納領域41に収集した撮像データを格納する。
【0123】
次に、ステップ124において、開口パターン群PHG1に含まれる全ての開口パターンPH1kについての撮像が完了した否かが判定される。この段階では、開口パターンPH11についての撮像が完了したのみなので、否定的な判定がなされ、処理がステップ125へ移行する。
【0124】
ステップ125では、開口パターン群PHG1に関連する次の撮像位置(この段階では、開口パターンPH12の投影光学系PLに関する共役位置)に、波面センサ90の標示板91の開口91aが位置するようにウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、ウエハ干渉計18が検出したウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。なお、このときも、主制御系20が、多点フォーカス位置検出系(21,22)の検出結果に基づいて、開口パターン群PHG2における最初の開口パターンPH21の像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を一致させるべく、必要に応じて、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。
【0125】
以後、ステップ124において、肯定的な判定がなされるまで、ステップ123〜125の処理が繰り返される。そして、開口パターン群PHG1に含まれる全ての開口パターンPH1kについての撮像が完了し、ステップ124において肯定的な判定がなされると、処理がステップ126へ移行する。
【0126】
ステップ126では、撮像結果に基づいて、各スポット像の位置情報が検出される。かかる位置情報の算出にあたり、まず、位置情報演算装置32Aの像データ合成装置34が、撮像データ格納領域41から、開口パターン群PHG1に含まれる開口パターンPH1kそれぞれについての撮像結果データを読み出す。そして、開口パターンPH1kそれぞれについての撮像結果データにおける同一画素位置のデータを足し合わせることにより、スポット像位置算出のための位置算出用データを求める。かかる位置算出用データでは、マイクロレンズアレイ94によって波面分割される光、すなわち開口パターンPH11〜PH1Mのいずれか、投影光学系PL、標示板91の開口91a、コリメータレンズ92、及びリレー光学系を順次介した光におけるレモンスキン板DFによる拡散ムラに起因する光強度分布の不均一性が、拡散ムラに対する平均化効果により低減されている。この結果、波面形状を精度良く反映した位置にスポット像が結像される。像データ合成装置34は、こうして求められた位置算出用データを位置算出用データ格納領域44に格納する。
【0127】
次に、位置算出装置32が、位置算出用データ格納領域44から位置算出用データを読み出す。引き続き、位置算出装置32は、マイクロレンズアレイ94によりCCD95の撮像面に形成された各スポット像の合成像の光強度分布の重心を算出することにより、各スポット像の中心位置を算出する。位置算出装置32は、こうして求められた各スポット像の中心位置を、マイクロレンズアレイ94によりCCD95の撮像面に形成された各スポット像の位置情報として、スポット像位置格納領域42に格納する。
【0128】
次いで、ステップ127において、波面収差算出装置33が、スポット像位置格納領域42からスポット像位置の検出結果を読み出して、測定用レチクルRTにおける最初の開口パターン群PHG1の位置を通過した光に関する投影光学系PLの波面収差を算出する。かかる波面収差の算出は、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置と、検出されたスポット像位置の差から、ツェルニケ多項式の係数を求めることにより行われる。こうして、算出された波面収差は、開口パターン群PHG1の位置とともに、波面収差データ格納領域43に格納される。
【0129】
次に、ステップ128において、全ての開口パターン群に関して投影光学系PLの波面収差を算出したか否かが判定される。この段階では、最初の開口パターン群PHG1についてのみ投影光学系PLの波面収差を測定しただけなので、否定的な判定がなされ、処理はステップ129に移行する。
【0130】
ステップ129では、波面センサ90の標示板91の開口91aが、次の開口パターン群PHG2についての初期撮像位置となるように、ウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、ウエハ干渉計18が検出したウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。なお、このときも、主制御系20が、多点フォーカス位置検出系(21,22)の検出結果に基づいて、開口パターン群PHG2の開口パターンPH21の像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を一致させるべく、必要に応じて、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。
【0131】
そして、上記の開口パターン群PHG1の場合と同様にして、投影光学系PLの波面収差が測定される。そして、波面収差の測定結果は、開口パターン群PHG2の位置とともに、波面収差データ格納領域43に格納される。
【0132】
以後、上記と同様にして、全ての開口パターン群を通過した光に関する投影光学系PLの波面収差が順次測定され、開口パターン群ごとの測定結果が開口パターン群の位置とともに、波面収差データ格納領域43に格納される。こうして全ての開口パターン群に関する投影光学系PLの波面収差が測定されると、ステップ128において肯定的な判定がなされる。そして、制御装置39が、波面収差データ格納領域43から波面収差の測定結果を読み出し、波面測定結果データWFAとして主制御系20へ供給する。この後、処理が図6のステップ102に移行する。
【0133】
この後、第1の実施形態と同様にして、投影光学系PLの波面収差が許容値以下となるまで、ステップ102→103→101のループ処理が繰り返される。そして、投影光学系PLの波面収差が許容値以下となると、第1の実施形態の場合と同様にして、ステップ104〜107が実行されて、レチクルRに形成されたパターンが、ウエハWの各ショット領域に転写される。
【0134】
以上説明したように、本第2の実施形態では、レモンスキン板DFにおける通過位置が互いに異なるが、投影光学系PLの波面収差特性の測定ではほぼ同一点とみなせる複数の開口パターンを通過した光それぞれが、投影光学系PL、開口91a、コリメータレンズ92、及びリレー光学系93を順次介した後に波面分割し、分割波面ごとに形成されるスポット像を撮像する。そして、通過した開口パターンそれぞれについて得られた撮像結果を同一画素位置ごとに足し合わせる合成を行い、その合成結果からスポット像の位置情報を検出する。この結果、レモンスキン板DFによる光の拡散ムラに起因するスポット像位置情報の検出結果の精度低下を抑制することができ、迅速にかつ精度良く各スポット像の位置情報を検出することができる。
【0135】
そして、本実施形態では、精度良く検出された各スポット像の位置情報の検出結果に基づいて、投影光学系PLの波面収差を求める。したがって、本実施形態によれば、投影光学系PLの光学特性である波面収差特性を迅速にかつ精度良く測定することができる。
【0136】
また、精度良く求められた投影光学系PLの波面収差に基づいて、投影光学系PLの収差を調整し、十分に諸収差が低減された投影光学系PLによりレチクルRに形成された所定のパターンがウエハW表面に投影されるので、所定のパターンをウエハWに精度良く転写することができる。
【0137】
なお、本第2の実施形態では、同一の開口パターン群に含まれる開口パターンごとの撮像にあたって、波面収差測定装置70Aが装着されたウエハステージWSTを移動させたが、レチクルステージRSTが十分なストロークで2次元駆動可能な場合には、レチクルステージRSTを移動させることとすることもできる。
【0138】
また、レチクルステージRSTがウエハステージWSTと同程度に大きなストロークで2次元駆動可能な場合には、測定用レチクルRTAに代えて第1の実施形態で使用した測定用レチクルRTを使用し、ウエハステージWSTの位置を固定した上で、標示板91の開口91aの共役位置に開口パターンPH1〜PHNを順次移動させ、スポット像の撮像を行うこととしてもよい。
【0139】
また、本第2の実施形態では、同一の開口パターン群における複数の開口パターンそれぞれの開口パターンについての撮像結果の合成をしてスポット像位置を求めたが、複数の撮像結果ごとにスポット像候補位置を算出し、これらのスポット像候補位置の平均をスポット像位置として求めることも可能である。
【0140】
また、本第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態の場合と同様に、較正用パターンが更に形成された測定用レチクルを用いる変形を行うことができる。
【0141】
なお、上記の各実施形態では、測定用レチクルRTにおける開口パターンを9つとしたが、所望の波面収差の測定精度に応じて、数を増減することが可能である。また、マイクロレンズアレイ94におけるマイクロレンズ94aの配列数や配列態様も、所望の波面収差の測定精度に応じて変更することが可能である。
【0142】
また、上記の各実施形態では、位置検出の対象像をスポット像としたが、他の形状のパターンの像であってもよい。
【0143】
また、上記の各実施形態では、露光にあたっては波面収差測定装置70を露光装置本体60から切り離したが、波面収差測定装置70を露光装置本体60に装着したままで露光してもよいことは勿論である。
【0144】
また、上記の各実施形態では、投影光学系PLの波面収差測定及び波面収差調整を、露光装置が組み立てられた後の定期メンテナンス時等に行い、その後のウエハの露光に備える場合について説明したが、露光装置の製造における投影光学系PLの調整時に、上記の実施形態と同様にして、波面収差の調整を行ってもよい。なお、露光装置の製造時における投影光学系PLの調整にあたっては、上記の実施形態において行われる投影光学系PLを構成する一部のレンズエレメントの位置調整に加えて、他のレンズエレメントの位置調整、レンズエレメントの再加工、レンズエレメントの交換等を行うことが可能である。
【0145】
また、上記の各実施形態では、走査型露光装置の場合を説明したが、本発明は、投影光学系を備える露光装置であれば、ステップ・アンド・リピート機、ステップ・アンド・スキャン機、ステップ・アンド・スティッチング機を問わず適用することができる。
【0146】
また、上記の各実施形態では、露光装置における投影光学系の収差測定に本発明を適用したが、露光装置に限らず、他の種類の装置における結像光学系の諸収差の計測にも本発明を適用することができる。
【0147】
さらに、光学系の収差測定以外であっても、例えば反射鏡の形状等の様々な光学系の光学特性の測定にも本発明を適用することができる。
【0148】
《デバイスの製造》
次に、本実施形態の露光装置及び方法を使用したデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造について説明する。
【0149】
まず、設計ステップにおいて、デバイスの機能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、マスク製作ステップにおいて、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ウエハ製造ステップにおいて、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0150】
次に、ウエハ処理ステップにおいて、上記のステップで用意されたマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路等を形成する。
【0151】
このウエハ処理ステップは、例えば、半導体デバイスの製造にあたっては、ウエハの表面を酸化させる酸化ステップ、ウエハ表面に絶縁膜を形成するCVDステップ、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する電極形成ステップ、ウエハにイオンを打ち込むイオン打込みステップといったウエハプロセスの各段階の前処理工程と、後述する後処理工程を有している。前処理工程は、ウエハプロセスの各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0152】
ウエハプロセスの各段階において、前処理工程が終了すると、レジスト処理ステップにおいてウエハに感光剤が塗布され、引き続き、露光ステップにおいて上記で説明した露光装置10によってマスクの回路パターンをウエハに焼付露光する。次に、現像ステップにおいて露光されたウエハが現像され、引き続き、エッチングステップにおいて、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、レジスト除去ステップにおいて、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0153】
以上のようにして、前処理工程と、レジスト処理ステップからレジスト除去ステップまでの後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0154】
こうしてウエハ処理ステップが終了すると、組立ステップにおいて、ウエハ処理ステップにおいて処理されたウエハを用いてチップ化する。この組み立てには、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)やパッケージング工程(チップ封入)等の工程が含まれる。
【0155】
最後に、検査ステップにおいて、組立ステップで作製されたデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
【0156】
以上のようにして、精度良く微細なパターンが形成されたデバイスが、高い量産性で製造される。
【0157】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の光学特性測定方法によれば、被検光学系の光学特性を精度良く測定することができる。
【0158】
また、本発明の光学特性測定装置によれば、本発明の光学特性測定方法を使用して被検光学系の光学特性を測定するので、被検光学系の光学特性を迅速にかつ精度良く測定することができる。
【0159】
また、本発明の光学系の調整方法によれば、本発明の光学特性測定方法によって精度良く測定された光学系の光学測定に基づいて、光学系の光学特性を調整するので、光学系の光学特性を所望の特性を迅速にかつ精度良く調整することができる。
【0160】
また、本発明の露光装置によれば、投影光学系の光学特性を測定する本発明の光学特性測定装置を備えるので、本発明の光学特性測定装置により精度良く光学特性が測定され、光学特性が良好に調整されていることが保証された投影光学系を使用して、所定のパターンを基板に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の波面センサの構成を概略的に示す図である。
【図3】図2の標示板の表面状態を説明するための図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、図2のマイクロレンズアレイの構成を示す図である。
【図5】図1の主制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】図1の装置による露光動作における処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】図6の収差測定サブルーチンにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】第1の実施形態における測定用レチクルに形成された測定用パターンの例を示す図である。
【図9】第1の実施形態におけるスポット像の撮像時における光学配置を説明するための図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図11】図10の主制御系の構成を示すブロック図である。
【図12】第2の実施形態における収差測定サブルーチンにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】第2の実施形態における測定用レチクルセットの構成例を説明するための図である。
【図14】第2の実施形態におけるスポット像の撮像時における光学配置を説明するための図である。
【符号の説明】
23…レチクルステージ駆動部(駆動装置)、24…ウエハステージ駆動部(駆動装置)、32…位置算出装置(位置情報算出装置)、33…波面収差算出装置(光学特性算出装置)、70…波面収差測定装置、90…波面センサ(像情報検出装置)、91a…開口(受光用開口)、94…マイクロレンズアレイ(波面分割部材)、94a…マイクロレンズ(レンズ要素)、95…CCD(像検出装置)、98…マイクロレンズ(レンズ要素)、99…ミラー駆動機構(波面分割光学系交換装置の一部)、DF…レモンスキン板(光拡散部材)、PL…投影光学系(被検光学系)、PT,PTA…測定用レチクル(マスク)、W…ウエハ(基板)。

Claims (15)

  1. 光拡散部材、所定のパターンが形成されたマスク、及び被検光学系を順次介した後、受光用開口に到達した光に基づいて、前記被検光学系の光学特性を測定する光学特性測定方法であって、
    前記受光用開口に到達する光に対して、前記光拡散部材、前記マスク、及び前記受光用開口の少なくとも1つの位置を変化させ、前記受光用開口を介した光を波面分割して複数のパターン像を形成し、前記複数のパターン像それぞれの位置情報を検出するパターン像位置検出工程と;
    前記パターン像位置検出工程において検出された前記複数のパターン像それぞれの位置情報に基づいて、前記被検光学系の光学特性を算出する光学特性算出工程と;を含む光学特性測定方法。
  2. 前記パターン像位置検出工程では、前記マスクと前記受光用開口との前記被検光学系に関する共役位置関係を維持しつつ、前記マスクと前記光拡散部材とを相対移動させる、ことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
  3. 前記所定のパターンは円形開口であり、
    前記相対移動のストロークは前記円形開口の径程度である、ことを特徴とする請求項2に記載の光学特性測定方法。
  4. 前記パターン像位置検出工程では、前記光拡散部材と前記マスクとの位置関係を維持しつつ、前記マスクと前記受光用開口とを相対移動させる、ことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
  5. 前記所定のパターンは複数の開口であり、
    前記マスクと前記受光用開口との相対移動は、前記受光用開口が、前記複数の開口それぞれの前記被検光学系に関する共役位置を順次巡る相対移動である、ことを特徴とする請求項4に記載の光学特性測定方法。
  6. 前記パターン像位置検出工程では、前記相対移動により、前記複数の開口のそれぞれを通過した光について検出される前記複数のパターン像を合成し、合成した結果に基づいて、前記複数のパターン像それぞれの位置情報を検出することを特徴とする請求項5に記載の光学特性測定方法。
  7. 前記パターン像は、スポット像であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学特性測定方法。
  8. 前記光学特性は、波面収差であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学特性測定方法。
  9. 所定のパターンが形成されたマスク及び被検光学系を順次介した後、受光用開口に到達した光に基づいて、前記被検光学系の光学特性を測定する光学特性測定装置であって、
    入射した光を拡散させて、前記マスクへ向けて射出する光拡散部材と;
    前記受光用開口を有し、該受光用開口を介した光を波面分割して複数のパターン像を形成し、該複数のパターン像の情報を検出する像情報検出装置と;
    前記受光用開口に到達する光に対して、前記光拡散部材、前記マスク、及び前記像情報検出装置の少なくとも1つの位置を変化させる駆動装置と;
    前記像情報検出装置による検出結果に基づいて、前記複数のパターン像それぞれの位置情報を算出する位置情報算出装置と;
    前記位置情報算出装置によって算出された前記複数のパターン像それぞれの位置情報に基づいて、前記被検光学系の光学特性を算出する光学特性算出装置と;を備える光学特性測定装置。
  10. 前記像情報検出装置は、
    前記受光用開口を介した光を波面分割して前記複数のパターンを形成する波面分割部材と;
    前記複数のパターン像を検出する像検出装置と;を備えることを特徴とする請求項に記載の光学特性測定装置。
  11. 前記波面分割部材は、複数のレンズ要素が配列されたマイクロレンズアレイであることを特徴とする請求項10に記載の光学特性測定装置。
  12. 前記マスクは、複数の開口を備え、
    前記駆動装置は、前記受光用開口が前記複数の開口それぞれの前記被検光学系に関する共役位置を順次巡るように、前記マスクと前記像情報検出装置とを相対移動させることを特徴とする請求項9に記載の光学特性測定装置。
  13. 前記光学特性は、波面収差であることを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載の光学特性測定装置。
  14. 光学系の光学特性を調整する光学系の調整方法であって、
    前記光学系の光学特性を、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学特性測定方法を用いて測定する光学特性測定工程と;
    前記光学特性測定工程における測定結果に基づいて、前記光学系の光学特性を調整する光学特性調整工程と;を含む光学系の調整方法。
  15. 露光光を基板に照射することにより、所定のパターンを前記基板に転写する露光装置であって、
    露光光の光路上に配置された投影光学系と;
    前記投影光学系を被検光学系とする請求項13のいずれか一項に記載の光学特性測定装置と;を備える露光装置。
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