JP2004165483A - データ抽出方法及び装置、位置検出方法及び装置、並びに露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高精度に抽出対象のデータを抽出する。
【解決手段】モデル推定装置54は、背景であることが明らかな部分の輝度値の正規分布に基づいて推定される幾つかの確率密度関数の中から、背景がとりうる輝度値の範囲における、撮像データIMD2全体の輝度値の頻度分布に対する確率分布モデル(第1確率分布モデル)とのモデルのずれを示すカルバック・ライブラー情報量が最も少ない第2確率密度関数を求める。閾値決定装置55は、その第2確率密度関数に基づいて作成される背景の輝度値の頻度分布に基づいて、光源像とその背景との輝度値の閾値を決定し、抽出装置56が、その閾値を用いて撮像データIMD2を二値化して撮像データIMD2の中から光源像に対する各画素を抽出する。
【選択図】 図6
【解決手段】モデル推定装置54は、背景であることが明らかな部分の輝度値の正規分布に基づいて推定される幾つかの確率密度関数の中から、背景がとりうる輝度値の範囲における、撮像データIMD2全体の輝度値の頻度分布に対する確率分布モデル(第1確率分布モデル)とのモデルのずれを示すカルバック・ライブラー情報量が最も少ない第2確率密度関数を求める。閾値決定装置55は、その第2確率密度関数に基づいて作成される背景の輝度値の頻度分布に基づいて、光源像とその背景との輝度値の閾値を決定し、抽出装置56が、その閾値を用いて撮像データIMD2を二値化して撮像データIMD2の中から光源像に対する各画素を抽出する。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、データ抽出方法及び装置、位置検出方法及び装置、並びに露光装置に係り、更に詳しくは、光源像やその背景等の複数の被検出体の検出データが混在するデータの中から、少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出方法及び装置、光源像や物体等の検出対象の位置を検出する位置検出方法及び装置、その位置検出装置を備える露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子、液晶表示素子等を製造するためのリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)に形成されたパターンを、投影光学系を介してレジスト等が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、適宜「ウエハ」ともいう)上に転写する露光装置が用いられている。この種の装置としては、近年では、スループットを重視する観点から、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆる「ステッパ」)や、このステッパを改良したステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置などの逐次移動型の投影露光装置が主として用いられている。
【0003】
こうした露光装置においては、露光に先立ってレチクルとウエハとの位置合わせ(アライメント)行うためのウエハの位置検出や、投影光学系のコヒーレンスファクタσ(以下、「照明σ」という)の測定などにあたって、ウエハ(ウエハの外縁)像や、投影光学系へ入射する露光光(照明光)の入射瞳と共役な面に結像された照明光学系の光源像を検出している。そして、その検出結果、例えば、撮像データの画像全体の輝度値の分布状態に基づいて、ウエハWに対応する各画素を抽出してウエハ位置を検出したり、光源像に対応する各画素を抽出して投影光学系の結像特性に影響する照明σを測定したりしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のようなウエハ等の特定の抽出対象の輝度とその背景等の他の部分の輝度との差は、必ずしも明確ではない場合が多い。このような場合には、特定の抽出対象のみを高精度に抽出することが困難となる。
【0005】
また、特定の抽出対象や他の部分に、その表面上に固有のパターンが形成されている場合もある。この場合、それらの輝度値は、ある程度の範囲に分布するようになり、特定の抽出対象のみを抽出するのがさらに困難となる。
【0006】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、高精度に抽出対象のデータを抽出することができるデータ抽出方法及び装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、高精度に検出対象の位置を検出することができる位置検出方法及び装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第3の目的は、高精度な露光を実現することができる露光装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数の被検出体の検出データが混在するデータの中から、少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出方法であって、検出データ(IMD2)全体におけるデータ(I)の確率分布モデルである第1確率分布モデル(Pall(I))を作成する第1工程と;前記複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの正規分布(NA)に基づいて推定される幾つかの確率分布モデル(Ps(I))の中から、所定範囲(例えば、検出データIがμA−dからμA+dまで)内における前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量が最も小さい確率分布モデルである第2確率分布モデル(S=ScのときのPs(I))を求める処理を、少なくとも1つの特定の被検出体について実行する第2工程と;前記第2確率分布モデルに基づいて推定される頻度分布(Hs(I))に基づいて前記特定の被検出体と他の被検出体との検出データの閾値(T)を決定する第3工程と;前記閾値に基づいて前記特定の被検出体及び前記他の被検出体のいずれかの検出データを抽出する第4工程と;を含むデータ抽出方法である。
【0010】
これによれば、第2工程において、複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの正規分布に基づいて推定される幾つかの確率分布モデルの中から、データ全体の頻度分布に対する確率分布モデル(第1確率分布モデル)とのずれを示す情報量が最も小さい第2確率分布モデルが求められる。
【0011】
そして、第3工程において、その第2確率分布モデルに基づいて作成される頻度分布を、特定の被検出体のデータの頻度分布として推定し、この頻度分布に基づいて、その検出対象と他の被検出体との閾値を決定し、第4工程において、その閾値を用いてその検出対象のデータを抽出する。この閾値は、モデルのずれを示す情報量によって推定された特定の被検出体のデータの頻度分布に基づいて求められたものであり、統計的手法を用いて求められたものである。そのため、特定の被検出体の検出データと、他の被検出体との検出データとの差が明確でなく、それらの被検出体の検出データがある程度の範囲に分布しているような場合であっても、特定の被検出体のデータを精度良く抽出することができる。なお、その特定の被検出体は、例えば光源像や物体等の抽出対象自体であっても良いし、抽出対象以外の他の被検出体、例えばその光源像等の背景であっても良い。ここで、「被検出体」とは、何らかの検出方法によって属性データ(例えば輝度値)が検出された物体あるいは像のことを意味する。
【0012】
この場合、請求項2に記載のデータ抽出方法のごとく、前記特定の被検出体の検出データであることが明らかな幾つかの検出データの頻度分布に基づいて前記特定の被検出体の検出データの正規分布を推定する第5工程をさらに含むこととすることができる。
【0013】
これによれば、特定の被検出体(抽出対象あるいはその背景)のデータであることが明らかな一部のデータを用いて、その被検体の検出データの正規分布を精度良く推定することができる。
【0014】
上記請求項1又は2に記載のデータ抽出方法において、請求項3に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第2工程は、前記特定の被検出体の検出データの正規分布を、ある倍率で拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを作成する処理と、前記所定範囲内におけるその確率分布モデルと前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記倍率を変えながら繰り返し実行する情報量算出工程と;該情報量算出工程で作成された確率分布モデルのうち、前記第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルを前記第2確率分布モデルとして求め、当該第2確率分布モデルが得られたときの倍率を前記特定の被検出体における正規分布の拡大倍率として決定する倍率決定工程と;を含むこととすることができる。
【0015】
これによれば、第2工程では、前述の特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを、その拡大倍率を変更しながら次々に作成していき、作成された確率分布モデルの中から、第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルの拡大倍率を求める。こうすることによって、何らかの方法ですでに求められている特定の被検出体の検出データの正規分布に基づいて、検出データ全体におけるその被検出体の確率分布モデル(第2確率分布モデル)を求めることができる。
【0016】
この場合、請求項4に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第3工程では、前記倍率決定工程において決定された拡大倍率で前記特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大することによって得られる頻度分布の頻度が例えば1以下等の適切な頻度の値を前記閾値として決定することとすることができる。
【0017】
これによれば、統計的手法を用いて推定された特定の被検出体の頻度分布において頻度がほぼ0となる値が特定の被検出体と他の被検出体とのデータの閾値となるため、その特定の被検出体のデータを余すことなく精度良く抽出することができる。
【0018】
上記請求項1〜4のいずれか一項に記載のデータ抽出方法において、請求項5に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第2工程における前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることとすることができる。
【0019】
上記請求項1〜5のいずれか一項に記載のデータ抽出方法において、請求項6に記載のデータ抽出方法のごとく、前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布の中から、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量が最も小さい正規分布が得られたときの範囲を前記所定範囲として決定する第6工程と;をさらに含むこととすることができる。
【0020】
この場合、請求項7に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第6工程は、前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布を推定する処理と、その正規分布と前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記範囲を変えながら繰り返し実行する情報量算出工程と;該情報量算出工程において推定された正規分布のうち、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を前記所定範囲として決定する範囲決定工程と;を含むこととすることができる。
【0021】
これによれば、第6工程では、すべての検出データのうち、特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれるデータの正規分布を次々に作成していき、作成された正規分布の中から、特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を求める。こうすることによって、何らかの方法で特定の被検出体における一部の検出データの正規分布が求めることができれば、本発明のデータ抽出方法を実行することによって、上述のような統計的手法を用いて、特定の被検出体の検出データのとりうる範囲を精度良く求めることができるようになる。
【0022】
上記請求項6又は7に記載のデータ抽出方法において、請求項8に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第6工程における前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることとすることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、検出対象の位置を検出する位置検出方法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載のデータ抽出方法を用いて少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出工程と;該データ抽出工程において抽出された検出データに基づいて、前記少なくとも1つの被検出体である検出対象の位置を検出する位置検出工程と;を含む位置検出方法である。
【0024】
これによれば、統計的手法を用いて抽出された検出対象の検出データに基づいて検出対象の位置を検出することができるため、高精度に検出対象の位置を検出することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、複数の被検出体の検出データが混在するデータの中から、少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出装置であって、検出データ全体におけるデータの確率分布モデルである第1確率分布モデルを作成するデータ分布作成装置(51)と;前記複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの正規分布に基づいて推定される幾つかの確率分布モデルの中から、所定範囲内における前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量が最も小さい確率分布モデルである第2確率分布モデルを求める処理を、少なくとも1つの特定の被検出体について実行するモデル推定装置(54)と;前記第2確率分布モデルに基づいて作成される頻度分布に基づいて前記特定の被検出体と他の被検出体との検出データの閾値を決定する閾値決定装置(55)と;前記閾値に基づいて前記特定の被検出体及び前記他の被検出体のいずれかの検出データを抽出する抽出装置(56)と;を備えるデータ抽出装置である。
【0026】
これによれば、モデル推定装置において、複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの値の正規分布に基づいて推定される幾つかの確率分布モデルの中から、データ分布作成装置において作成されたデータ全体の頻度分布に対する確率分布モデル(第1確率分布モデル)とのモデルのずれを示す情報量が最も小さい第2確率分布モデルが求められる。そして、閾値決定装置は、その第2確率分布モデルに基づいて作成される頻度分布に基づいて、その検出対象と他の被検出体との閾値を決定し、抽出装置が、その閾値を用いてその検出対象のデータを抽出する。
【0027】
この閾値は、モデルのずれを示す情報量によって推定された特定の被検出体の頻度分布に基づいて求められたものであり、統計的手法を用いて求められたものであるため、特定の被検出体の検出データと、他の被検出体との検出データとの差が明確でなく、その被検出体のデータがある程度の範囲に分布しているような場合であっても、高精度に特定の被検出体のデータを抽出することができる。
【0028】
この場合、請求項11に記載のデータ抽出方法のごとく、前記特定の被検出体の検出データであることが明らかな幾つかの検出データの頻度分布に基づいて前記特定の被検出体の検出データの正規分布を推定する正規分布推定装置(52)をさらに備えることとすることができる。
【0029】
これによれば、正規分布推定装置において、全体の検出データの中から、特定の被検出体(抽出対象あるいは背景)のデータであることが明らかな一部のデータを用いて、その被検体の検出データの正規分布が精度良く推定される。
【0030】
上記請求項10又は11に記載のデータ抽出装置において、請求項12に記載のデータ抽出装置のごとく、前記モデル推定装置は、前記特定の被検出体の検出データの正規分布を、ある倍率で拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを作成する処理と、前記所定範囲内におけるその確率分布モデルと前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記倍率を変えながら繰り返し実行する情報量算出装置と;該情報量算出装置で作成された確率分布モデルのうち、前記第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルを前記第2確率分布モデルとして求め、当該第2確率分布モデルが得られたときの倍率を前記特定の被検出体における正規分布の拡大倍率として決定する倍率決定装置と;を備えることとすることができる。
【0031】
これによれば、モデル推定装置において、情報量算出装置は、前述の特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを、その拡大倍率を変更しながら次々に作成していき、作成された確率分布モデルの中から、第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルの拡大倍率を求める。こうすることによって、何らかの方法ですでに求められている特定の被検出体の検出データの正規分布に基づいて、検出データ全体におけるその被検出体の確率分布モデル(第2確率分布モデル)を求めることができる。
【0032】
この場合、請求項13に記載のデータ抽出装置のごとく、前記閾値決定装置は、前記倍率決定装置において決定された拡大倍率で前記特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大することによって得られる頻度分布の頻度が例えば1以下等の適切な頻度の値を前記閾値として決定することとすることができる。
【0033】
これによれば、統計的手法を用いて推定された特定の被検出体の頻度分布において頻度がほぼ0となる値が閾値として設定されるため、その特定の被検出体のデータを余すことなく抽出することができる。
【0034】
上記請求項10〜13のいずれか一項に記載のデータ抽出装置において、請求項14に記載のデータ抽出装置のごとく、前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることとすることができる。
【0035】
上記請求項10〜14のいずれか一項に記載のデータ抽出装置において、請求項15に記載のデータ抽出装置のごとく、前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布の中から、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量が最も小さい正規分布が得られたときの範囲を前記所定範囲として決定する範囲決定装置(53)をさらに備えることとすることができる。
【0036】
この場合、請求項16に記載のデータ抽出装置のごとく、前記範囲決定装置は、前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布を推定する処理と、その正規分布と前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記範囲を変えながら繰り返し実行する情報量算出装置と;該情報量算出装置で推定された正規分布のうち、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を前記所定範囲として決定する決定装置と;を備えることとすることができる。
【0037】
これによれば、範囲決定装置では、すべての検出データのうち、特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれるデータの正規分布を次々に作成していき、作成された正規分布の中から、特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を求める。こうすることによって、すでに何らかの方法で得られている特定の被検出体の検出データの正規分布を求めることができれば、範囲決定装置によって、特定の被検出体の検出データのとりうる範囲を精度良く求めることができるようになる。
【0038】
上記請求項15又は16に記載のデータ抽出装置において、請求項17に記載のデータ抽出装置のごとく、前記範囲決定装置における前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることとすることができる。
【0039】
請求項18に記載の発明は、検出対象の位置を検出する位置検出装置であって、請求項10〜17のいずれか一項に記載のデータ抽出装置(83)と;該データ抽出装置において抽出された検出データに基づいて前記少なくとも1つの被検出体である前記検出対象の位置を検出する検出装置(84)と;を備える位置検出装置(81)である。
【0040】
これによれば、請求項10〜17のいずれか一項に記載のデータ抽出装置において、統計的手法によって検出された検出対象のデータを用いて検出対象の位置を検出することができるため、高精度に検出対象の位置を検出することができる。
【0041】
請求項19に記載の発明は、露光光を物体に照射する露光装置(100)であって、前記露光光(IL)の光路上に配置された投影光学系(PL)と;前記投影光学系を介して投影されたピンホールパターン(PH1〜PHN)を介した光源像を撮像する撮像装置(952)と;検出対象を前記撮像装置によって撮像された前記光源像とする請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置である。
【0042】
露光装置における投影光学系の波面収差を計測する場合には、ピンホールパターンに露光光を照射することによってピンホールパターンから発生するほぼ球面波である露光光の投影光学系の瞳面における波面をマイクロレンズアレイによって分割し(波面分割)、そのマイクロレンズアレイのマイクロレンズ毎に得られるスポット像の基準となるべき位置からのずれを検出し、例えばツェルニケの多項式等を用いて波面収差を求めている。
【0043】
ツェルニケの多項式を用いて波面収差を精度良く求めるためには、投影光学系の瞳位置や大きさに基づいて、スポット像のずれを求めるための基準となる基準位置を補正することが必要となる。そこで、本発明の露光装置では、撮像装置によって撮像された光源像を検出対象として、その像の位置を、請求項18に記載の位置検出装置を用いて精度良く検出する。したがって、本発明の露光装置では、波面収差を精度良く計測することができる。本発明の露光装置では、精度良く計測された波面収差を調整したうえで露光を実行すれば、高精度な露光を実現することができる。
【0044】
請求項20に記載の発明は、露光光を物体に照射する露光装置であって、前記露光光の光路上に配置された投影光学系と;前記投影光学系を介して投影された光源像を撮像する撮像装置と;検出対象を前記撮像装置によって撮像された前記光源像とする請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置である。
【0045】
照明σは、投影光学系における入射瞳面における光源像の大きさと、その入射瞳の大きさとの比で定義される。入射瞳の大きさが既知であり、投影光学系における入射瞳面の位置及びその入射瞳面の共役面である撮像装置の受光面の位置が既知であり、投影光学系における入射瞳面における光源像に対する撮像装置の受光面における光源像の倍率も既知であるとすると、撮像された光源像の大きさから照明σを求めることができる。本発明では、撮像装置によって撮像された光源像を検出対象として、その光源像の位置や大きさを位置検出装置において精度良く検出することができるため、高精度に照明σを計測することができる。
【0046】
請求項21に記載の発明は、露光光を物体に照射する露光装置であって、前記露光光の光路上に配置された投影光学系と;前記物体上に転写された光源の転写像を撮像する撮像装置(例えばAS)と;検出対象を前記転写像とする請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置である。
【0047】
これによれば、撮像装置によって撮像された光源の転写像を検出対象として、その転写像の位置や大きさを位置検出装置において精度良く検出することができるため、高精度に照明σを計測することができる。
【0048】
上記請求項20又は21に記載の露光装置において、請求項22に記載の露光装置のごとく、前記位置検出装置において検出された前記検出対象の位置に基づいて、前記投影光学系の光軸を調整する調整装置をさらに備えることとすることができる。
【0049】
これによれば、位置検出装置において精度良く検出された検出対象の位置に基づいて投影光学系の光軸を調整することができるため、高精度な露光を実現することができる。
【0050】
請求項23に記載の発明は、露光光を物体に照射する露光装置であって、前記物体を含む領域中の複数の観測点における観測値を観測する観測装置と;検出対象を前記物体とする、請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置である。
【0051】
これによれば、請求項18に記載の位置検出装置によって、物体の位置を精度良く検出することができる。そのため、例えば、この精度良く検出された物体の位置に基づいて物体を位置制御しながら露光を実行すれば、高精度な露光を実現することができる。
【0052】
この場合、請求項24に記載の発明は、前記位置検出装置によって検出された前記物体の位置に基づいて前記物体を位置制御する位置制御装置をさらに備えることとすることができる。
【0053】
これによれば、その位置検出装置において精度良く検出された物体の位置に基づいて、物体を位置制御することができるため、高精度な露光を実現することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。
【0055】
図1には、本発明に係るデータ抽出方法および位置検出方法の実施に好適な一実施形態に係る露光装置100が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。この露光装置100は、露光装置本体60と、光学特性測定装置70とを備えている。
【0056】
前記露光装置本体60は、光源6及び照明光学系12を含む照明系、レチクルRを保持するレチクルステージRST、投影光学系PL、物体としてのウエハWが搭載されるステージ装置であるウエハステージWST、アライメント検出系AS、レチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置及び姿勢を制御するステージ制御系19、並びに装置全体を統括制御する主制御系20等を備えている。
【0057】
前記光源6としては、ここでは、ArFエキシマレーザ光源(出力波長193nm)が用いられている。なお、光源6として、F2レーザ光源(出力波長157nm)等の真空紫外域のパルス光を出力する光源や、KrFエキシマレーザ光源(出力波長248nm)などの近紫外域のパルス光を出力する光源などを用いても良い。
【0058】
前記光源6は、実際には、照明光学系12、レチクルステージRST、投影光学系PL、及びウエハステージWST等から成る露光装置本体60が収納されたチャンバ(不図示)が設置されたクリーンルームとは別のクリーン度の低いサービスルームに設置されており、そのチャンバにビームマッチングユニット(BMU)と呼ばれる光軸調整用光学系を少なくとも一部に含む不図示の送光光学系を介して接続されている。この光源6は、主制御系20からの制御情報TSに基づいて、内部のコントローラにより、レーザ光LBの出力のオン・オフ、レーザ光LBの1パルスあたりのエネルギ、発振周波数(繰り返し周波数)、中心波長及びスペクトル半値幅などが制御されるようになっている。
【0059】
前記照明光学系12は、シリンダレンズ、ビームエキスパンダ及びズーム光学系(いずれも不図示)、並びにオプティカルインテグレータ(ホモジナイザ)として機能する、フライアイレンズ又は内面反射型インテグレータ(ロッドインテグレータ等)あるいは回折光学素子(本実施形態ではフライアイレンズ222)等を含むビーム整形・照度均一化光学系220、照明系開口絞り板224、第1リレーレンズ228A、第2リレーレンズ228B、固定レチクルブラインド230A、可動レチクルブラインド230B、光路折り曲げ用のミラーM及びコンデンサレンズ232等を備えている。
【0060】
前記ビーム整形・照度均一化光学系220は、光透過窓217を介して不図示の送光光学系に接続されている。このビーム整形・照度均一化光学系220は、光源6でパルス発光され、光透過窓217を介して入射したレーザビームLBの断面形状を、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダを用いて整形する。そして、ビーム整形・照度均一化光学系220内部の射出端側に位置するフライアイレンズ222は、レチクルRを均一な照度分布で照明するために、前記断面形状が整形されたレーザビームの入射により、照明光学系12の瞳面とほぼ一致するように配置されるその射出側焦点面に多数の点光源(光源像)から成る面光源(2次光源)を形成する。この2次光源から射出されるレーザビームを以下においては、「照明光IL」と呼ぶものとする。
【0061】
フライアイレンズ222の射出側焦点面の近傍に、円板状部材から成る照明系開口絞り板224が配置されている。この照明系開口絞り板224には、ほぼ等角度間隔で、例えば通常の円形開口より成る開口絞り(通常絞り)、小さな円形開口より成りコヒーレンスファクタであるσ値を小さくするための開口絞り(小σ絞り)、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り(輪帯絞り)、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形開口絞り(図1ではこのうちの2種類の開口絞りのみが図示されている)等が配置されている。
【0062】
この照明系開口絞り板224は、主制御系20からの制御信号MLCにより制御されるモータ等の駆動装置240の駆動で回転されるようになっている。これにより、いずれかの開口絞りが照明光ILの光路上に選択的に設定され、光源面の形状が、輪帯、小円形、大円形、あるいは四つ目等に制限される。なお、本実施形態では、開口絞り板224を用いて、照明光学系12の瞳面上での照明光の光量分布(2次光源の形状や大きさ)、すなわちレチクルRの照明条件を変更するものとしたが、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ)222の入射面上での照明光の強度分布あるいは照明光の入射角度範囲を可変として、前述の照明条件の変更に伴う光量損失を最小限に抑えることが好ましい。このために、開口絞り板224の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えば照明光学系12の光路上に交換して配置される複数の回折光学素子、照明光学系12の光軸に沿って移動可能な少なくとも1つのプリズム(円錐プリズムや多面体プリズムなど)、及びズーム光学系の少なくとも1つを含む光学ユニットを光源6とオプティカルインテグレータ(フライアイレンズ)222との間に配置する構成を採用することができる。
【0063】
照明系開口絞り板224から出た照明光ILの光路上に、固定レチクルブラインド230A、可動レチクルブラインド230Bを介在させて第1リレーレンズ228A及び第2リレーレンズ228Bから成るリレー光学系が配置されている。
【0064】
固定レチクルブラインド230Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置され、レチクルR上の照明領域を規定する矩形開口が形成されている。また、この固定レチクルブラインド230Aの近傍(レチクルRのパターン面に対する共役面)に走査方向(ここではY軸方向とする)及び非走査方向(X軸方向)にそれぞれ対応する方向の位置及び幅が可変の開口部を有する可動レチクルブラインド230Bが配置されている。走査露光の開始時及び終了時には、主制御系20の制御により、その可動レチクルブラインド230Bを介してレチクルR上の照明領域をさらに制限することによって、不要な部分の露光が防止されるようになっている。
【0065】
リレー光学系を構成する第2リレーレンズ228B後方の照明光ILの光路上には、当該第2リレーレンズ228Bを通過した照明光ILをレチクルRに向けて反射する折り曲げミラーMが配置され、このミラーM後方の照明光ILの光路上にコンデンサレンズ232が配置されている。
【0066】
以上の構成において、フライアイレンズ222の入射面、可動レチクルブラインド230Bの配置面、及びレチクルRのパターン面は、光学的に互いに共役に設定され、フライアイレンズ222の射出側焦点面に形成される光源面(照明光学系12の瞳面)、投影光学系PLのフーリエ変換面(瞳面)は光学的に互いに共役となるように設定されている。
【0067】
このようにして構成された照明光学系12の作用を簡単に説明すると、光源6からパルス発光されたレーザビームLBは、ビーム整形・照度均一化光学系220に入射して断面形状が整形され、フライアイレンズ222に入射する。これにより、フライアイレンズ222の射出側焦点面に前述した2次光源が形成される。
【0068】
上記の2次光源から射出された照明光ILは、照明系開口絞り板224上のいずれかの開口絞りを通過し、第1リレーレンズ228Aを経て固定レチクルブラインド230A、可動レチクルブラインド230Bの矩形開口を通過する。そして、第2リレーレンズ228Bを通過してミラーMによって光路が垂直下方に折り曲げられ、コンデンサレンズ232を経て、レチクルステージRST上に保持されたレチクルR上の矩形の照明領域を均一な照度分布で照明する。
【0069】
前記レチクルステージRST上にはレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、ここでは、リニアモータ等から成る不図示のレチクルステージ駆動部によって、投影光学系PLの光軸AXに垂直なXY平面内で微小駆動可能であるとともに、所定の走査方向(Y軸方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
【0070】
レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって、移動鏡15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報(又は速度情報)は、ステージ制御系19を介して主制御系20に送られ、主制御系20は、この位置情報(又は速度情報)に基づいて、ステージ制御系19及びレチクルステージ駆動部(図示省略)を介してレチクルステージRSTを移動させる。
【0071】
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLは、例えば、両側テレセントリックな縮小系であり、共通のZ軸方向の光軸AXを有する不図示の複数のレンズエレメントから構成されている。また、この投影光学系PLとしては、投影倍率βが例えば1/4、1/5、1/6などのものが使用されている。このため、上述のようにして、照明光(露光光)ILによりレチクルR上の照明領域が照明されると、そのレチクルRに形成されたパターンが投影光学系PLによって投影倍率βで縮小された像(部分倒立像)が、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上のスリット状の露光領域に投影され転写される。
【0072】
なお、本実施形態では、上記の複数のレンズエレメントのうち、特定のレンズエレメント(例えば、所定の5つのレンズエレメント)がそれぞれ独立に移動可能となっている。かかるレンズエレメントの移動は、特定レンズエレメントを支持するレンズ支持部材を支持し、鏡筒部と連結する、特定レンズごとに設けられた3個のピエゾ素子等の駆動素子によって行われるようになっている。すなわち、特定レンズエレメントを、それぞれ独立に、各駆動素子の変位量に応じて光軸AXに沿って平行移動させることもできるし、光軸AXと垂直な平面に対して所望の傾斜を与えることもできるようになっている。そして、これらの駆動素子を駆動するための駆動指示信号は、主制御系20からの指令MCDに基づいて結像特性補正コントローラ251によって出力され、これによって各駆動素子の変位量が制御されるようになっている。
【0073】
こうして構成された投影光学系PLでは、主制御系20による結像特性補正コントローラ251を介したレンズエレメントの移動制御により、ディストーション、像面湾曲、非点収差、コマ収差、又は球面収差等の光学特性が調整可能となっている。
【0074】
前記ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方で、不図示のベース上に配置され、このウエハステージWST上には、ウエハホルダ25が載置されている。このウエハホルダ25上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。ウエハホルダ25は不図示の駆動部により、投影光学系PLの光軸直交面に対し、任意方向に傾斜可能で、かつ投影光学系PLの光軸AX方向(Z方向)にも微動可能に構成されている。また、このウエハホルダ25は光軸AX回りの微小回転動作も可能になっている。
【0075】
また、ウエハステージWSTの+Y方向側には、後述する波面センサ90を着脱可能とするためのブラケット構造が形成されている。
【0076】
ウエハステージWSTは、走査方向(Y軸方向)の移動のみならず、ウエハW上の複数のショット領域を、前述の照明領域と共役な露光領域に位置させることができるように、走査方向に垂直な方向(X軸方向)にも移動可能に構成されている。そして、このウエハステージWST等によって、ウエハW上の各ショット領域を走査(スキャン)露光する動作と、次のショットの露光開始位置(加速開始位置)まで移動する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作が実行される。このウエハステージWSTは、モータ等を含むウエハステージ駆動部24によりXYの2次元方向に駆動される。
【0077】
ウエハステージWSTのXY平面内での位置は、ウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)18によって、移動鏡17を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)は、ステージ制御系19を介して主制御系20に送られ、主制御系20は、この位置情報(又は速度情報)に基づき、ステージ制御系19及びウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTの駆動制御を行う。
【0078】
前記アライメント検出系ASは、投影光学系PLの側面に配置されている。本実施形態では、ウエハW上に形成されたストリートラインや位置検出用マーク(ファインアライメントマーク)を観測する結像アライメントセンサから成るオフ・アクシス方式の顕微鏡がアライメント検出系ASとして用いられている。このアライメント検出系ASの詳細な構成は、例えば、特開平9−219354号公報に開示されている。アライメント検出系ASによる観測結果は、主制御系20に供給される。
【0079】
更に、図1の装置には、ウエハW表面の露光領域内部及びその近傍の領域のZ軸方向(光軸AX方向)の位置を検出するための斜入射方式のフォーカス検出系(焦点検出系)の一つである、多点フォーカス位置検出系(21,22)が設けられている。この多点フォーカス位置検出系(21,22)は、光ファイバ束、集光レンズ、パターン形成板、レンズ、ミラー、及び照射対物レンズ(いずれも不図示)から成る照射光学系21と、集光対物レンズ、回転方向振動板、結像レンズ、受光用スリット板、及び多数のフォトセンサを有する受光器(いずれも不図示)から成る受光光学系22とから構成されている。この多点フォーカス位置検出系(21,22)の詳細な構成等については、例えば、特開平6−283403号公報に開示されている。多点フォーカス位置検出系(21,22)による検出結果は、ステージ制御系19に供給される。
【0080】
前記光学特性測定装置70は、波面センサ90と、波面データ処理装置80と、位置検出装置81とから構成されている。
【0081】
前記波面センサ90は、図2に示されるように、表示板91、コリメータレンズ92、レンズ93a及びレンズ93bから成るリレーレンズ系93、並びに強度分割光学系としてのハーフミラー960を備えており、この順序で光軸AX1上に配置されている。また、リレーレンズ系93から出射された光は、ハーフミラー960で2つに分岐されるが、その一方の光軸に沿って、波面分割光学系としてのマイクロレンズアレイ94、並びに撮像装置としてのCCD951が配置されている。また、他方の光軸に沿って、撮像装置としてのCCD952が配置されている。さらに、波面センサ90は、入射した光の光路を設定するミラー96a、96b、並びにコリメータレンズ92、リレーレンズ系93、ハーフミラー960、マイクロレンズアレイ94、CCD951、952、及びミラー96a、96bを収納する収納部材97をさらに備えている。
【0082】
前記標示板91は、例えばガラス基板を基材とし、ウエハホルダ25に固定されたウエハWの表面と同じ高さ位置(Z軸方向位置)に、光軸AX1と直交するように配置されている(図1参照)。この標示板91の表面には、図3に示されるように、その中央部に開口91aが形成されている。また、表示板91の表面における開口91aの周辺には、3組以上(図3では、4組)の2次元位置検出用マーク91bが形成されている。この2次元位置検出用マーク91bとしては、本実施形態では、Y軸方向に沿って形成されたラインアンドスペースマーク91cと、X軸方向に沿って形成されたラインアンドスペースマーク91dとの組合せが採用されている。なお、ラインアンドスペースマーク91c、91dは、上述のアライメント検出系ASによって検出可能となっている。また、開口91a及び2次元位置検出用マーク91bを除く標示板91の表面は、反射面加工がなされている。かかる反射面加工は、例えば、ガラス基板にクロム(Cr)を蒸着することによって行われている。
【0083】
図2に戻り、前記コリメータレンズ92は、開口91aを通って入射した光を平面波に変換する。
【0084】
図4(A)は、マイクロレンズアレイ94の平面図であり、図4(B)は、マイクロレンズアレイ94が、図4(A)における線分A−A’線断面図(端面図)である。
【0085】
図4(A)及び図4(B)によって総合的に示されるように、マイクロレンズアレイ94は、一辺の長さがD1である正方形状の多数のマイクロレンズ98がマトリクス状に稠密に配列されたものである。なお、マイクロレンズ98は、正の屈折力を有するレンズである。
【0086】
ここで、各マイクロレンズ98の光軸は互いにほぼ平行になっている。なお、図4においては、マイクロレンズ98が、7×7マトリクス状に配列されたものが、一例として示されている。
【0087】
こうしたマイクロレンズアレイ94は、平行平面ガラス板にエッチング処理を施すことにより作成される。マイクロレンズアレイ94は、リレーレンズ系93を介した後にハーフミラー960で反射された光を、入射したマイクロレンズ98ごとに、開口91aの像をそれぞれ異なる位置に結像する。
【0088】
図2に戻り、前記CCD951は、マイクロレンズアレイ94の各マイクロレンズ98によって開口91aに形成された後述するピンホールパターンを介した像が結像される結像面、開口91aの形成面の光学的な共役面に受光面を有している。すなわち、CCD951は、その受光面に結像されたピンホールパターンを介した多数の像を撮像する。この撮像結果は、撮像データIMD1として波面データ処理装置80に送信される。
【0089】
前記CCD952は、ハーフミラー960を透過した光を受光する受光面を有しており、その受光面に結像された像を撮像する。この受光面は、投影光学系の瞳面と共役な面となっている。この撮像結果は、撮像データIMD2として位置検出装置81に供給される。
【0090】
前記収納部材97は、その内部に、コリメータレンズ92、リレーレンズ系93、ハーフミラー960、マイクロレンズアレイ94、及びCCD951、952をそれぞれ支持する不図示の支持部材を有している。なお、ミラー96a,96bは、収納部材97の内面に取り付けられている。また、前記収納部材97の外形は、上述したウエハステージWSTのブラケット構造と嵌合する形状となっており、ウエハステージWSTに対して着脱自在となっている。
【0091】
前記波面データ処理装置80は、図5に示されるように、主制御装置30と記憶装置40とを備えている。主制御装置30は、(a)波面データ処理装置80の動作全体を制御するとともに、波面測定結果データWFAを主制御系20へ供給する制御装置39と、(b)波面センサ90からの撮像データIMD1を収集する撮像データ収集装置31と、(c)撮像データIMD1に基づいてスポット像の位置を検出する位置情報検出装置32と、(d)位置情報検出装置32により検出されたスポット像位置に基づいて、投影光学系PLの波面収差を算出する波面収差算出装置33とを含んでいる。
【0092】
また、上述の制御装置39と、撮像データ収集装置31と、位置情報検出装置32と、波面収差算出装置33とは、必要に応じて記憶装置40に格納されているデータを読み出したり、データを記憶装置40に格納したりすることができるようになっている。
【0093】
また、本実施形態では、波面データ処理装置80を上記のように、各種の装置を組み合わせて構成したが、波面データ処理装置80の少なくとも一部を計算機システムとして構成し、主制御装置30を構成する上記の各装置の少なくとも一部の機能を波面データ処理装置80に内蔵されたプログラムによって実現することも可能である。
【0094】
図6には、位置検出装置81の構成が示されている。図6に示されるように、位置検出装置81は、主制御装置50と、記憶装置61とを備えている。主制御装置50は、(a)位置検出装置81の動作全体を制御するとともに、抽出対象である光源像の中心位置や大きさ等を示す位置情報データPOSを、主制御系20や波面データ処理装置80へ供給する制御装置89と、(b)波面センサ90から撮像データIMD2を収集する撮像データ収集装置82と、(c)撮像データIMD2から光源像のデータを抽出するデータ抽出装置83と、(d)データ抽出装置83によって抽出された光源像のデータに基づいて、その光源像の位置を検出する検出装置84とを備えている。
【0095】
データ抽出装置83は、(a)撮像データIMD2全体の輝度値Iの頻度分布Hall(I)とともに、撮像データIMD2全体の輝度値Iの第1確率分布モデルである確率密度関数Pall(I)を作成するデータ分布作成装置51と、(b)撮像データIMD2全体の中で、光源像以外の部分である背景を示す部分であることが明らかな部分(後述する背景部A)の輝度値Iの頻度分布HA(I)に基づいて、背景の輝度値Iの正規分布NAを推定する正規分布推定装置52と、(c)背景の輝度値Iの正規分布NAの平均値μAを中心とする、ある範囲(μA−n≦I≦μA+n)に含まれる輝度値Iを有する画素の正規分布Nnの中から、正規分布推定装置52において推定された背景の輝度値Iの正規分布NAとのずれを示すカルバック・ライブラー情報量(以下、「KLI」と総称する)が最も小さい正規分布を求め、その正規分布が得られたときの範囲(μA−d≦I≦μA+d)を、背景の輝度値がとりうる範囲として決定する範囲決定装置53と、(d)背景部Aの輝度値Iの正規分布NAに基づいて推定される幾つかの確率密度関数Ps(I)の中から、範囲決定装置53において決定された背景の輝度値Iがとりうる範囲(μA−d≦I≦μA+d)内における確率密度関数Pall(I)とのずれを示すKLIが最も小さい第2確率分布モデルである確率密度関数(S=ScのときのPs(I))を求める処理を実行するモデル推定装置54と、(e)その確率密度関数(S=ScのときのPs(I))に基づいて作成される頻度分布Hs(I)に基づいて光源像とその背景との輝度の閾値Tを決定する閾値決定装置55と、(f)閾値決定装置55において決定された閾値Tに基づいて撮像データIMD2を二値化することによって光源像のデータを抽出する抽出装置56と、を備えている。
【0096】
検出装置84は、抽出装置56において作成された二値データに基づいて光源像の位置情報データPOSを算出する。
【0097】
また、上述の制御装置89と、撮像データ収集装置82と、データ抽出装置83の各装置51〜56と、検出装置84とは、必要に応じて記憶装置61に格納されているデータを読み出したり、データを記憶装置61に格納したりすることができるようになっている。
【0098】
また、本実施形態では、位置検出装置81を上記のように、各種の装置を組み合わせて構成したが、位置検出装置81の少なくとも一部を計算機システムとして構成し、主制御装置50を構成する上記の各装置の少なくとも一部の機能を位置検出装置81に内蔵されたプログラムによって実現することも可能である。
【0099】
以下、本実施形態の露光装置100による露光動作を、図7に示されるフローチャートに沿って、適宜他の図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、ウエハW上への1層目の露光がすでに終了しており、2層目以降の露光を行うものとして説明する。また、以下の動作の前提として、波面センサ90は、ウエハステージWSTに装着されており、波面データ処理装置80及び位置検出装置81と、主制御系20とが接続されているものとする(図1の端点c、d参照)。
【0100】
また、ウエハステージWSTに装着された波面センサ90の標示板91の開口91aとウエハステージWSTとの位置関係は、2次元位置マーク91bをアライメント検出系ASで観察することにより、正確に求められているものとする。すなわち、ウエハ干渉計18から出力される位置情報(速度情報)に基づいて、開口91aのXY位置を正確に検出することができ、かつ、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを移動制御することにより、開口91aを所望のXY位置に精度良く位置決めできるものとする。なお、本実施形態では、開口91aとウエハステージWSTとの位置関係は、アライメント検出系ASによる4つの2次元位置マーク91bの位置の検出結果に基づいて、特開昭61−44429号公報等に開示されている、いわゆるエンハンストグローバルアライメント(以下、「EGA」という)等と同様な統計的な手法を用いて正確に検出される。
【0101】
図7に示される処理では、まず、サブルーチン101において、投影光学系PLの波面収差が測定される。この波面収差の測定では、図8に示されるように、まず、ステップ111において、不図示のレチクルローダにより、図9に示される波面収差測定用の測定用レチクルRTがレチクルステージRSTにロードされる。測定用レチクルRTには、図9に示されるように、複数個(図9では、9個のピンホールパターンPHj(j=1〜9))のピンホールパターンPH1〜PHNがX軸方向及びY軸方向に沿ってマトリクス状に形成されている。なお、ピンホールパターンPH1〜PHNは、図9において点線で示されるスリット状の照明領域の大きさの領域内に形成されている。
【0102】
引き続き、ウエハステージWST上に配置された不図示の基準マーク板を使用した測定用レチクルRTの位置計測、例えば、レチクルアライメント検出系(不図示)による、投影光学系PLを介した測定用レチクルのレチクルアライメントマークと対応する基準マーク板との相対位置の検出、更にアライメント検出系ASを使用したベースラインの測定等が行われる。そして、収差測定が行われる最初のピンホールパターンPH1が投影光学系PLの光軸AX上に位置するように、レチクルステージRSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、レチクル干渉計16が検出したレチクルステージRSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してレチクルステージ駆動部を制御することにより行われる。
【0103】
図8に戻り、次に、ステップ112において、波面センサ90の標示板91の開口91aが、ピンホールパターンPH1の投影光学系PLに関する共役位置(ピンホールパターンPH1の場合には、光軸AX上)にウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、ウエハ干渉計18が検出したウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。この際、主制御系20は、多点フォーカス位置検出系(21,22)の検出結果に基づいて、ピンホールパターンPH1のピンホールを介した像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を一致させるべく、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。
【0104】
以上のようにして、最初のピンホールパターンPH1からの球面波に関する投影光学系PLの波面収差測定のための光学的な各装置の配置が終了する。こうした、光学的配置について、波面センサ90の光軸AX1及び投影光学系PLの光軸AXに沿って展開したものが、図10に示されている。
【0105】
こうした光学配置において、照明光学系12から照明光ILが射出されると、測定用レチクルRTの最初のピンホールパターンPH1に到達した光が、球面波となってピンホールパターンPH1から射出される。そして、その光は、投影光学系PLを介した後、波面センサ90の標示板91の開口91aに集光される。なお、最初のピンホールパターンPH1以外のピンホールパターンPH2〜PHNを通過した光は、開口91aには到達しないようになっている。こうして開口91aに集光された光の波面は、投影光学系PLの波面収差を含んだ略球面となる。
【0106】
開口91aを通過した光は、コリメータレンズ92により平行光に変換され、さらにリレーレンズ系93を介した後、ハーフミラー960に入射する。ハーフミラー960で反射された入射光の一部は、ミラー96bでさらに反射された後、マイクロレンズアレイ94に入射する。ここで、マイクロレンズアレイ94に入射する光の波面は、投影光学系PLの波面収差を反映したものとなっている。すなわち、投影光学系PLに波面収差が無い場合には、図10において点線で示されるように、その波面WFは光軸AX1と直交する平面となるが、投影光学系PLに波面収差が有る場合には、図10において二点鎖線で示されるように、その波面WF’は光軸AX1と直交する平面とはならず、その平面上の位置に応じた角度の傾きを有する面となる。
【0107】
マイクロレンズアレイ94は、マイクロレンズ98(図4参照)ごとに、開口91aの像を、標示板91の光学的な共役面すなわちCCD951の撮像面(受光面)に結像させる。マイクロレンズ98に入射した光の波面が光軸と直交する場合には、そのマイクロレンズ98の光軸とCCD951の撮像面の交点を中心とするスポット像が、CCD951の撮像面に結像される。しかし、マイクロレンズ98に入射した光の波面が傾いている場合には、その傾き量に応じた距離だけ、そのマイクロレンズ98の光軸と撮像面の交点からずれた点を中心とするスポット像がCCD951の撮像面に結像される。一方、ハーフミラー960を透過した光は、CCD952の撮像面に入射する。
【0108】
図8に戻り、次いで、ステップ113において、CCD951、952により、それら撮像面(受光面)に形成された像の撮像が行われる。CCD951の撮像により得られた撮像データIMD1は、波面データ処理装置80に送信される。波面データ処理装置80では、撮像データ収集装置31が撮像データIMD1を収集し、記憶装置40に撮像データIMD1を格納する。また、CCD952の撮像により得られた撮像データIMD2は、位置検出装置81に送信される。位置検出装置81では、撮像データ収集装置82が撮像データIMD2を収集し、撮像データIMD2を記憶装置61に格納する。
【0109】
次に、ステップ114において、撮像データIMD1に基づいて、各スポット像の位置情報が検出される。かかる位置情報の算出にあたり、波面データ処理装置80の位置情報検出装置32は、記憶装置40から、撮像データIMD1を読み出す。引き続き、位置情報検出装置32は、マイクロレンズアレイ94によりCCD951の撮像面に形成された各スポット像の光強度分布の重心を算出することにより、各スポット像の中心位置を算出する。位置情報検出装置32は、こうして求められた各スポット像の中心位置を、マイクロレンズアレイ94によりCCD951の撮像面に形成された各スポット像の位置情報として、記憶装置40に格納する。
【0110】
次いで、ステップ115において、位置検出装置81は、撮像データIMD2に基づいて光源像のデータ抽出および位置検出処理を実行する。図11、図12には、位置検出装置81において実行されるステップ115のデータ抽出および位置検出処理のサブルーチンを示すフローチャートが示されている。図11に示されるように、まず、ステップ121において、データ抽出装置83のデータ分布作成装置51は、記憶装置61に格納されている撮像データIMD2を読み出す。
【0111】
図13には、撮像データIMD2の一例が示されている。図13では、撮像データIMD2が、その画像イメージのまま、マトリクス状(正方形状)に示されている。図13に示されるように、この撮像データIMD2には、略中心部に点線で示される光源像Bが含まれており、光源像Bではそれ以外の背景の部分よりも輝度値が高くなっている。図13では、光源像Bは楕円状に示されているが、光源像Bとその背景の境界は実際には明確ではない。また、光源像Bの内部においても、その輝度は、均一でなく、ある程度の範囲に分布しており、前述のように2次光源がフライアイレンズ222による多数の点光源である場合には、図13に示されるように、蜂の巣のような形状となる。しかも、光源像Bの蜂の巣のような形状の部分の中には、その輝度値が、背景における輝度値よりも低くなっている部分が存在する場合もある。
【0112】
本実施形態では、この光源像Bを抽出対象とするが、前述のように光源像Bの輝度が均一でない場合、光源像Bに対応する画素を直接抽出するのは困難である。したがって、本実施形態では、この光源像Bよりも輝度が均一である背景(撮像データIMD2の中の光源像B以外の部分)を特定の被検出体として抽出することによって、結果的に、抽出対象である光源像Bのデータを抽出する。
【0113】
図11に戻り、ステップ123において、データ抽出装置83のデータ分布作成装置51は、撮像データIMD2全体の輝度値Iの頻度分布Hall(I)を作成する。図14には、頻度分布Hall(I)の一例が示されている。図14に示されるグラフでは、横軸が、輝度値Iを表し、縦軸がその輝度値Iに対応する撮像データIMD2の画素数を表している。データ分布作成装置51は、作成した頻度分布Hall(I)を、記憶装置61に格納する。
【0114】
次に、ステップ125において、図13に示されるような背景部Aを指定する。ここでは、撮像データIMD2の中から、背景であることが明らかな部分が背景部Aとして選択される。なお、この指定は、位置検出装置81に備えられたマンマシンインタフェースである入出力装置(不図示)による操作によって行われるようにすればよい。この場合、その入出力装置の表示装置に、図13に示されるような撮像データIMD2の画像が表示されると、オペレータは、その表示された画像を参照しながら、確実に光源像Bではないと思われる部分、例えば左上の部分を背景部Aとして、その入出力装置の入力インタフェースであるポインティングデバイスや入力キーなどを用いて指定する。この指定がオペレータの指示によって確定されると、その背景部Aの指定情報は、正規分布推定装置52に送信される。
【0115】
次に、ステップ127において、正規分布推定装置52は、背景部Aにおける輝度値Iの頻度分布HA(I)を作成する。そして、ステップ129において、正規分布推定装置52は、その頻度分布HAに基づいて背景の輝度の平均値μAおよび分散σA 2を算出し、背景部Aの正規分布NA(μA、σA 2)を推定する(第5工程)。以下の式(1)に正規分布NAを示す。
【0116】
【数1】
【0117】
正規分布推定装置52は、平均値μA等の正規分布NAに関する情報を、記憶装置61に格納する。
【0118】
次に、ステップ131において、範囲決定装置53は、内部に備えるカウンタnの値(以下、「カウンタ値n」と呼ぶ)を「1」に初期化する。
【0119】
次いで、ステップ133において、範囲決定装置53は、頻度分布Hall(I)と、前述の正規分布NAの平均値μAを記憶装置61から読み出し、頻度分布Hall(I)において、背景の輝度の平均値μAを中心とする±nの範囲内にある輝度値Iを有する画素についての平均値μnおよび分散σn 2を算出し、以下の式(2)に示す正規分布Nn(μn、σn 2)を推定する。
【0120】
【数2】
【0121】
次に、ステップ135において、範囲決定装置53は、正規分布NAと正規分布Nnとのモデルのずれを示すKLIを算出する。なお、「KLI」とは、ある分布モデルが、基準モデルから見てどれだけずれているかを示す情報量であり、この情報量が0に近ければ近いほどその分布モデルと基準モデルが似ていることになる。なお、分布モデルをq(x)とし、基準モデルをp(x)とすると、KLIは、以下の式(3)で表される。“E”は期待値を表す。
【0122】
【数3】
【0123】
ここでは、基準となるモデルが正規分布NAであり、比較される分布モデルが正規分布Nnであるので、上述の式(3)のp(x)にNAを代入し、q(x)にNnを代入すると、以下の式(4)のようになる。
【0124】
【数4】
【0125】
したがって、正規分布NAの平均値μA及び分散σA 2と、正規分布Nnの平均値μn及び分散σn 2とがわかれば、正規分布NAを基準モデルとし、正規分布Nnを比較モデルとするKLIを求めることができる。
【0126】
なお、ここで、カウンタ値n=1であるので、範囲決定装置53は、頻度分布Hallにおいて輝度値IがμA+1からμA−1の範囲内にある各画素についての輝度値Iの平均値μn及び分散σn 2を算出し、そのときの平均値μn及び分散σn 2を用いて式(4)を計算し、n=1のときのKLIを算出する。算出されたn=1のときのKLIは、記憶装置61に保持される。
【0127】
次に、ステップ137において、範囲決定装置53はカウンタ値nをインクリメントする(n←n+1)。そして、ステップ139において、nが設定値ncを越えたか否かが判断される。なお、この設定値ncとしては、μA−ncとμA−ncとで挟まれる範囲が、背景における輝度値Iがとりうる範囲より大きくなるように設定される必要がある。
【0128】
ここで、設定値ncが2より大きいとすると、その判断は否定され、処理はステップ133に戻る。ステップ133において、範囲決定装置53は、頻度分布Hall(I)において、輝度値がμA+2からμA−2の範囲内にある輝度値を有する画素についての輝度値の平均値μn及び分散σn 2を算出してn=2のときの正規分布Nnを推定し、ステップ135において、そのときの平均値μn及び分散σn 2を用いて式(4)を計算し、n=2のときのKLIを算出する。このとき算出されたn=2のときのKLIは、記憶装置61に格納される。
【0129】
そして、ステップ139において設定値ncを越えるまで、ステップ137→ステップ139→ステップ133→ステップ135の処理が繰り返し実行され、ステップ133において、範囲決定装置53は、カウンタ値nにおける平均値μn及び分散σn 2を算出してそれぞれのnについての正規分布Nnを推定し、ステップ135において、そのときの平均値μn及び分散σn 2を用いて式(4)を計算し、そのときのカウンタ値におけるKLIを算出し、それらを記憶装置61に格納する。図14に示されるように、n=4のときには、輝度値がμA+4からμA−4の範囲内にある輝度値を有する画素、すなわち、頻度分布Hall(I)のうち斜線で示される部分に含まれる画素だけが選択され、これらの画素の平均値μn及び分散σn 2が算出される。
【0130】
ステップ139において、カウンタ値nが設定値ncを越えていた場合、その判断は肯定され、処理はステップ141に進む。
【0131】
ステップ141において、範囲決定装置53は、これまでに算出した各カウンタ値1〜ncまでのそれぞれのKLIを記憶装置61から読み出し、それらの中でKLIが最小となるカウンタ値nの値をdとして求める。範囲決定装置53は、その値dを、背景の輝度の範囲を規定する値dとして決定する。範囲決定装置53は、この背景の輝度値の範囲を規定する値dを記憶装置61に格納する。なお、上述のステップ131〜ステップ139を第6工程とする。そのうち、ステップ131〜ステップ139を情報量算出工程とし、ステップ141を範囲決定工程とする。なお、範囲決定装置53は、上述の情報量算出工程を実行する情報量算出装置(不図示)と、上述の範囲決定工程を実行する決定装置(不図示)とを備えるような構成となっていても良い。
【0132】
以上述べたように、ステップ131〜ステップ141の処理において、範囲決定装置53は、背景部Aの輝度値Iの正規分布NAの平均値μAを中心とする、ある範囲n(nは自然数)に含まれる撮像データIMD2の輝度値Iの正規分布Nnの中から、背景部Aの輝度値の正規分布NAとのずれを示すカルバック・ライブラー情報量が最も小さい正規分布を求め、その正規分布が得られたときのカウンタ値nを撮像データIMD2に含まれる背景の輝度の範囲を規定する値dとして決定する。すなわち、ステップ131〜ステップ141の処理において、背景であることが明らかな部分である背景部Aの平均値μA及び分散σA 2に基づいて、撮像データIMD2に含まれる背景がとりうる輝度値の範囲を推定した。
【0133】
以下の処理では、撮像データIMD2に含まれる背景の輝度値Iの頻度分布Hsを推定する。この頻度分布Hsは、背景の一部である背景部Aの正規分布NA(μA、σA)を何倍か(ここではS倍とする)に拡大したものとして表すことができ、以下の式(5)のように表される。
【0134】
Hs=S×NA(μA、σA 2) …(5)
【0135】
NA(μA、σA 2)はすでに推定されているため、以下の処理でS(これを拡大倍率と呼ぶ)を推定すれば、撮像データIMD2に含まれる背景の頻度分布Hsを推定できたことになる。
【0136】
撮像データIMD2に含まれる背景の輝度値Iは、撮像データIMD2全体の輝度値Iの頻度分布Hall(I)において、平均値μAを中心とする、±dの範囲に存在すると考えられる。したがって、以下の処理では、平均値μAを中心とする±dの範囲において、頻度分布Hall(I)とのずれが最も小さいHsにおける拡大倍率Sの値を求める。
【0137】
また、以下の処理では、拡大倍率Sを求めるために、以下の式(6)、式(7)に示すように、撮像データIMD2全体の輝度値Iの頻度分布Hall(I)と、撮像データIMD2に含まれる背景の輝度値Iの頻度分布Hs(I)とを、撮像データIMD2全体の画素数Mで正規化して確率密度関数Pall(I)、Ps(I)に変換し、平均値μAを中心とする±dの範囲における確率密度関数Pall(I)、Ps(I)との間のモデルのずれが算出される。
【0138】
Pall(I)=Hall(I)/M …(6)
【0139】
Ps(I)=Hs(I)/M …(7)
【0140】
図12に進み、ステップ143において、データ分布作成装置51は、撮像データIMD2全体の頻度分布Hall(I)に対する確率密度関数Pall(I)を作成する(第1工程)。データ分布作成装置51は、作成した確率密度関数Pall(I)を記憶装置61に格納する。
【0141】
次に、ステップ145において、モデル推定装置54は、カウンタSの値(以下「カウンタ値S」と称す。)を「1」で初期化する。なお、ここでは、カウンタ値Sを「1」ではなく、撮像データIMD2全体の画素数M(M≫1)に初期化してもよく、その方が、後述するカウンタ値Sによって制御されるループ処理の繰り返し回数を少なくすることができ、結果的に全体の演算時間を短縮することができる。
【0142】
次いで、ステップ147において、モデル推定装置54は、背景部Aの輝度値Iの頻度分布HA(I)を、記憶装置61から読み出し、前述の式(5)に示すその頻度分布HA(I)のS倍の頻度分布Hs(I)を作成し、ステップ149において、式(7)を用いて確率密度関数Ps(I)を算出する。
【0143】
次いで、ステップ151において、モデル推定装置54は、以下の式(8)に示すように、確率密度関数Pall(I)と確率密度関数Ps(I)とのモデルのずれを示すKLIを求める。求められたKLIは、記憶装置61に格納される。
【0144】
【数5】
【0145】
次に、ステップ153においてカウンタ値Sがインクリメントされ(S←S+1)、ステップ155において、カウンタ値Sが設定値を越えたか否かが判断される。この設定値は、ステップ145において設定された初期値よりも大きい値であって、確率密度関数Pall(I)と確率密度関数Ps(I)とのモデルのずれが充分に大きくなるような値が設定される。
【0146】
ここでは、カウンタ値Sが設定値を越えていないものとして説明を進める。カウンタ値Sが設定値を越えていない場合には、ステップ155における判断は否定され、処理はステップ147に戻る。
【0147】
ステップ147では、モデル推定装置54は、背景部Aの頻度分布HA(I)を記憶装置61から読み出し、頻度分布HA(I)のS倍の頻度分布Hs(I)を作成し、ステップ149において、上述の式(7)を用いて確率密度関数Ps(I)を算出する。
【0148】
次いで、ステップ151において、モデル推定装置54は、上述の式(8)に示すように、確率密度関数Pall(I)(基準モデル)と確率密度関数Ps(I)(比較モデル)とのモデルのずれを示すKLIを求める。求められたKLIは記憶装置61に格納される。
【0149】
以降、ステップ155において、カウンタ値Sが設定値を越えるまで、ステップ153→ステップ155→ステップ147→ステップ149→ステップ151の処理が繰り返し実行される。ステップ151において、そのときのカウンタ値Sにおける確率密度関数Pall(I)と確率密度関数Ps(I)とのモデルのずれを示すKLIが算出され、算出されたKLIは、記憶装置61に格納される。ステップ155において、カウンタ値Sが設定値を越えると、その判断は肯定され、処理はステップ157に進む。
【0150】
ステップ157では、モデル推定装置54は、ステップ151で算出され記憶装置61に格納された全てのKLIを読み出し、その中から最小のKLIを求め、そのときのカウンタ値Sを拡大倍率Scとして決定する。なお、ステップ145〜ステップ157を第2工程とし、そのうち、ステップ145〜ステップ155を情報量算出工程とし、ステップ157を倍率決定工程とする。モデル推定装置54は、上述の情報量算出工程を実行する情報量算出装置(不図示)と、上述の倍率決定工程を実行する倍率決定装置(不図示)とを備えるような構成となっていても良い。
【0151】
次に、ステップ159において、閾値決定装置55は、以下の式(9)を計算して、撮像データIMD2に含まれる背景の輝度の頻度分布Hs(I)を作成する。
【0152】
Hs=Sc×NA(μA、σA 2) …(9)
【0153】
次に、ステップ161において、閾値決定装置55は、ステップ159において求められた頻度分布Hs(I)の頻度が1以下となる輝度を、光源像Bとその背景との輝度の閾値Tとして決定する(第3工程)。閾値決定装置55は、決定した閾値Tを記憶装置61に格納する。なお、頻度分布Hs(I)の形状から、その頻度が1以下となる輝度が2つ得られることが考えられるが、本実施形態では、撮像データIMD2の全体の頻度分布Hall(I)の分布状態に合わせて、その2つの輝度の少なくとも一方が閾値Tとして選択される。次に、ステップ163において、抽出装置56は、記憶装置61から閾値Tを読み出し、撮像データIMD2をその閾値Tと比較して二値データに変換する(第4工程)。これにより、光源像Bに対応する画素と、その背景に対応する画素とが、明確に区別される。その二値データは、記憶装置61に格納される。
【0154】
次に、ステップ165において、検出装置84は、上述のデータ抽出工程、すなわちステップ121〜ステップ163に示される工程によって抽出され、記憶装置61に格納されている二値データを用いて、光源像Bの中心位置や大きさなどの光源像Bの位置情報を検出する。
【0155】
検出された光源像Bの位置情報は、記憶装置61に格納される。そして、制御装置89は、記憶装置61から光源像Bの位置情報を読み出して、位置情報データPOSとして出力する。出力された位置情報データPOSは、主制御系20と波面データ処理装置80へ供給される。波面データ処理装置80へ供給された位置情報データPOSは、制御装置89を介して波面収差算出装置33に供給される。この後、処理は、図8のステップ116に移行する。
【0156】
図8に戻り、ステップ116において、波面データ処理装置80の波面収差算出装置33は、記憶装置40から、マイクロレンズアレイ94によりCCD951の撮像面に形成された各スポット像の位置情報を読み出して、測定用レチクルRTにおける最初のピンホールパターンPH1を介した光に関する投影光学系PLの波面収差を算出する。かかる波面収差の算出は、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置と、検出されたスポット像位置との差から、ツェルニケ多項式の係数を求めることにより行われる。本実施形態では、波面収差算出装置33は、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置と検出されたスポット像位置との差を求める際には、制御装置89から供給された位置情報データPOSに含まれる光源像Bの中心位置や大きさなどに基づいて、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置(スポット像のずれ量を算出するための基準位置)を補正する。このようにすれば、波面センサ90に入射される光の光軸のずれに起因する、波面収差が無いときの各スポット像の基準位置の誤差をキャンセルすることができ、より高精度に波面収差を求めることができる。
【0157】
次に、ステップ117において、全てのピンホールパターンに関して投影光学系PLの波面収差を算出したか否かが判定される。この段階では、最初のピンホールパターンPH1についてのみ投影光学系PLの波面収差を測定しただけなので、否定的な判定がなされ、処理はステップ118に移行する。
【0158】
ステップ118では、波面センサ90の標示板91の開口91aが、次のピンホールパターンPH2の投影光学系PLに関する共役位置にウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、ウエハ干渉計18によって検出されたウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。なお、このときも、主制御系20が、多点フォーカス位置検出系(21,22)の検出結果に基づいて、ピンホールパターンPH2を介した像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を一致させるべく、必要に応じて、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。
【0159】
そして、上記のピンホールパターンPH1の場合と同様にして、投影光学系PLの波面収差が測定される。そして、波面収差の測定結果は、ピンホールパターンPH2の位置とともに、記憶装置40に格納される。
【0160】
以後、上記と同様にして、全てのピンホールパターンに関する投影光学系PLの波面収差を順次測定され、開口パターンごとの測定結果が開口パターンの位置とともに、記憶装置40に格納される。こうして全てのピンホールパターンに関する投影光学系PLの波面収差が測定されると、ステップ117において肯定的な判定がなされる。そして、制御装置39は、記憶装置40から波面収差の測定結果を読み出し、その測定結果を波面測定結果データWFAとして主制御系20へ供給する。この後、処理は図7のステップ102に移行する。
【0161】
ステップ102では、主制御系20が、制御装置39から供給された波面測定結果データWFAに基づいて、投影光学系PLの波面収差の測定が許容値以下であるか否かを判定する。この判定が肯定的である場合には、処理はステップ104に移行する。一方、判定が否定的である場合には、処理はステップ103に移行する。この段階では、判定が否定的であり、処理がステップ103に移行したとして、以下の説明を行う。
【0162】
ステップ103では、主制御系20が、投影光学系PLの波面収差の測定結果に基づき、現在発生している波面収差を低減させるように、投影光学系PLの波面収差の調整を行う。かかる波面収差の調整は、主制御系20が、結像特性補正コントローラ251を介してレンズエレメントの移動制御を行うことや、場合によっては、人手により投影光学系PLのレンズエレメントのXY平面内での移動やレンズエレメントの交換を行うことによりなされる。
【0163】
引き続き、サブルーチン101において、調整された投影光学系PLに関する波面収差が上記と同様にして測定される。以後、ステップ102において肯定的な判断がなされるまで、投影光学系PLの波面収差の調整(ステップ103)と、波面収差の測定(ステップ101)が繰り返し実行される。そして、ステップ102において肯定的な判断がなされると、処理は、ステップ104に移行する。
【0164】
ステップ104では、波面センサ90をウエハステージWSTから取り外し、波面データ処理装置80や位置検出装置81と、主制御系20との接続を切断した後、主制御系20の制御のもとで、不図示のレチクルローダにより、転写したいパターンが形成されたレチクルRがレチクルステージRSTにロードされる。なお、このとき、測定用レチクルRTは、すでにレチクルステージRSTからアンロードされているものとする。また、不図示のウエハローダにより、露光対象であるウエハWがウエハステージWSTにロードされる。
【0165】
次に、ステップ105において、主制御系20の制御のもとで、露光準備用計測が行われる。すなわち、ウエハステージWST上に配置された不図示の基準マーク板を使用したレチクルアライメントや、更にアライメント検出系ASを使用したベースラインの測定等の準備作業が行われる。なお、ここでは、ウエハWに対する露光が2層目以降の露光であるので、既に形成されている回路パターンと重ね合わせ精度良く回路パターンを形成するために、アライメント検出系ASを使用した上述のEGA計測により、ウエハW上におけるショット領域の配列座標が高精度で検出される。
【0166】
次いで、ステップ106において、露光が行われる。この露光動作にあたって、まず、ウエハWのXY位置が、ウエハW上の最初のショット領域(ファースト・ショット)の露光のための走査開始位置(加速開始位置)となるように、ウエハステージWSTが移動される。この移動は、ウエハ干渉計18からの位置情報(速度情報)や、基準座標系と配列座標系との位置関係の検出結果等に基づき、主制御系20によりステージ制御系19及びウエハステージ駆動部24等を介して行われる。同時に、レチクルRのXY位置が、走査開始位置(加速開始位置)となるように、レチクルステージRSTが移動される。この移動は、主制御系20によりステージ制御系19及び不図示のレチクル駆動部等を介して行われる。
【0167】
そして、主制御系20からの指示に応じて、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを走査方向(互いに逆方向)に同期移動させつつ、レチクルRのパターンをウエハW上に転写する。なお、この同期移動中には、レチクル干渉計16によって検出されるレチクルステージRSTのXY位置の情報、多点フォーカス位置検出系(21,22)及びウエハ干渉計18によって検出されるウエハステージWSTのZ位置の情報、XY位置の情報に基づいて、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの相対位置関係が適切に保たれるよう、レチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置制御が行われる。
【0168】
こうして、最初のショット領域の露光が終了すると、次のショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)となるように、ウエハステージWSTが移動されるとともに、レチクルRのXY位置が、走査開始位置(加速開始位置)となるように、レチクルステージRSTが移動される。そして、当該ショット領域に関する走査露光が、上述の最初のショット領域と同様にして行われる。以後、同様にして各ショット領域について走査露光が行われ、露光が完了する。
【0169】
そして、ステップ107において、不図示のアンローダにより、露光が完了したウエハWがウエハホルダ25からアンロードされる。こうして、1枚のウエハWの露光処理が終了する。
【0170】
以上詳細に説明したように、本実施形態のデータ抽出装置83では、モデル推定装置54において、背景の輝度値Iの正規分布NAに基づいて推定される幾つかの確率密度関数Ps(I)の中から、撮像データIMD2全体の頻度分布Hall(I)に対応する確率分布関数Pall(I)とのモデルのずれを示すカルバック・ライブラー情報量が最も小さい確率密度関数(S=ScのときのPs(I))が求められる。そして、閾値決定装置55は、その確率密度関数に基づいて推定される背景の輝度値Iの頻度分布Hs(I)に基づいて、光源像Bとその背景との輝度値の閾値Tを決定し、抽出装置56が、その閾値Tを用いて撮像データIMD2を二値化して光源像Bを抽出する。
【0171】
この閾値Tは、モデルのずれを示すKLIによって推定された背景の輝度値Iの頻度分布Hs(I)に基づいて求められたもの、すなわち統計的手法を用いて求められたものであるため、背景の輝度値と、光源像Bとの輝度値との差が明確でなく、光源像Bの輝度値がある程度の範囲に分布しているような場合であっても、高精度に光源像Bの画素を抽出することができる。
【0172】
なお、本実施形態では、正規分布推定装置52において、撮像データIMD2の中から、背景の画素であることが明らかな部分、すなわち前述の背景部Aの各画素の輝度値を用いて、背景の輝度値Iの正規分布NAを精度良く推定することができる。
【0173】
また、本実施形態では、KLIのような統計的手法を用いて推定された背景の輝度の頻度分布Hs(I)において、その分布の頻度がほぼ0となる値が閾値Tとして設定されるため、背景である画素を余すことなく抽出することができる。
【0174】
また、本実施形態では、範囲決定装置53が、撮像データIMD2のうち、背景部Aの輝度値Iの正規分布NAの平均値μAを中心とする、カウンタ値nによって定まる範囲に含まれるデータの正規分布Nnを、カウンタ値nを1つずつ増やしながら作成していき、作成された正規分布Nnの中から、背景部Aの輝度値Iの正規分布NAとのずれが最も小さい正規分布Nnの範囲を求める。上述のような処理を実行することによって、背景の輝度値Iのとりうる範囲を精度良く求めることができるようになる。
【0175】
また、本実施形態の位置検出装置81によれば、データ抽出装置83において統計的手法を用いて精度良く抽出された、光源像Bとその背景との輝度値Iの閾値Tに基づいて作成された撮像データIMD2の二値データに基づいて、光源像Bの位置を検出することができるため、光源像Bの位置を高精度に検出することができる。
【0176】
また、本実施形態の露光装置100によれば、その露光装置100における投影光学系の波面収差を計測する場合には、測定用レチクルRTのピンホールパターンPHNに照明光ILを照射することによって形成される波面をマイクロレンズアレイ94によって分割し、マイクロレンズアレイ94のマイクロレンズ98毎に得られるスポット像と基準位置とのずれを検出し、例えばツェルニケの多項式等を用いて波面収差を求めている。
【0177】
ツェルニケの多項式を用いて波面収差を精度良く求めるためには、投影光学系PLの瞳位置や大きさに基づいて波面収差を求めるための基準位置のずれを補正することが必要となる。そこで、本実施形態では、前述のように、CCD952によって撮像された光源像Bを検出対象として、その光源像Bの位置を、位置検出装置81を用いて精度良く検出する。そして、検出された光源像Bの位置や大きさに基づいてそのずれが補正される。したがって、本実施形態では、波面収差を精度良く計測することができる。
【0178】
さらに、本実施形態では、この投影光学系PLの波面収差に基づいて、投影光学系PLの収差を調整し、十分に諸収差が低減された投影光学系PLによりレチクルRに形成された所定のパターンがウエハW表面に投影されるので、所定のパターンをウエハWに精度良く転写することができる。
【0179】
なお、上記実施形態では、測定用レチクルRTにおける開口パターンの数を9つとしたが、所望の波面収差の測定精度に応じて、数を増減することが可能である。また、マイクロレンズアレイ94におけるマイクロレンズ98の配列数や配列態様も、所望の波面収差の測定精度に応じて変更することが可能である。
【0180】
また、上記実施形態では、位置検出の対象像をスポット像としたが、他の形状のパターンの像であってもよい。
【0181】
また、上記実施形態では、投影光学系PLの波面収差測定及び波面収差調整を、露光装置が組み立てられた後の定期メンテナンス時等に行い、その後のウエハの露光に備える場合について説明したが、露光装置の製造における投影光学系PLの調整時に、上記の実施形態と同様にして、波面収差の調整を行ってもよい。なお、露光装置の製造時における投影光学系PLの調整にあたっては、上記の実施形態において行われる投影光学系PLを構成する一部のレンズエレメントの位置調整に加えて、他のレンズエレメントの位置調整、レンズエレメントの再加工、レンズエレメントの交換等を行うことが可能である。
【0182】
また、上記実施形態では、露光装置における投影光学系PLの波面収差の計測であったが、露光装置に限らず、他の種類の装置における結像光学系の諸収差の計測にも本発明を適用することができる。
【0183】
さらに、光学特性測定装置70は、光学系の収差測定以外の様々な光学系の光学特性の測定(例えば、反射鏡の形状等の様々な光学系の光学特性の計測)にも適用することができる。例えば、この光学特性測定装置70を用いて、照明σの計測も実行することができる。例えば、レチクルRをレチクルステージRSTに保持しない状態、あるいはレチクルステージRST上に照射される光を遮蔽しないガラスレチクルを保持した状態とし、前述のステップ112(図8参照)の動作と同様に、波面センサ90の標示板91の開口91aが光軸AX上に位置するように、ウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、前述と同様に、主制御系20が、ウエハ干渉計18によって検出されたウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。こうした光学配置において、照明系から射出された照明光ILが、投影光学系PLを介した後、波面センサ90の標示板91の開口91aに到達するようになる。
【0184】
開口91aを通過した光は、コリメータレンズ92により平行光に変換され、さらにリレーレンズ系93を介した後、ハーフミラー960に入射する。ハーフミラー960を透過した光は、CCD952に入射する。このとき、CCD952により、それら撮像面(受光面)に形成された光源像の撮像が行われる。
【0185】
その撮像データIMD2は、位置検出装置81に送信され、その後、前述のステップ121〜165(図11、図12参照)における動作を実行することによって、データ抽出装置83において光源像に対応する各画素が抽出され、検出装置84によって、その光源像の位置や大きさが検出される。その光源像の位置や大きさを示す位置情報データPOSは、位置検出装置81から主制御系20に送信される。
【0186】
照明σは、投影光学系PLにおける入射瞳面における光源像の大きさと、その入射瞳の大きさとの比で定義される。入射瞳の大きさが既知であり、投影光学系PLにおける入射瞳面の位置及びその入射瞳面の共役面である波面センサ90のCCD952の撮像面の位置が既知であり、投影光学系PLにおける入射瞳面における光源像に対するCCD952の撮像面における光源像の倍率も既知であるとすると、主制御系20において、位置情報データPOSに含まれる、CCD952によって撮像された光源像の大きさから照明σを求めることができる。
【0187】
すなわち、照明σを求める際にも、CCD952によって撮像された光源像を検出対象として、光源像の大きさを位置検出装置81において精度良く検出することができるため、高精度に照明σを計測することができる。
【0188】
また、測定用ウエハに光源像を転写する従来の照明σの計測にも、位置検出装置81を適用することができる。なお、この場合には、測定用ウエハに転写された光源像を撮像するアライメント検出系ASで撮像された撮像データを位置検出装置81に入力できるように、アライメント検出系ASと位置検出装置81とが接続されている必要がある。
【0189】
以下に、測定用ウエハに光源像を転写する場合の照明σの計測について説明する。まず、測定用ウエハに光源像を転写する。かかる転写を行う際には、まず、微小開口パターンが形成された測定用レチクルをレチクルステージRSTにロードするとともに、測定用ウエハをウエハステージWSTにロードする。引き続き、測定用レチクルの配置位置と測定用ウエハの配置位置との関係を、投影光学系PLに関する共役関係から所定量ずれた位置関係(投影光学系PLの瞳面と測定用ウエハの表面と互いに光学的共役位置となる位置関係)となるようにし、照明系により測定用レチクルを照明する。そして、測定用レチクルの微小開口パターンを通過し、投影光学系PLを介した後の光によって測定用ウエハの表面が露光され、その測定用ウエハ上に光源像が転写される。そして、光源像が転写された測定用ウエハを、ウエハステージWSTからアンロードし、不図示の現像装置により現像する。引き続き、現像された測定用ウエハを再びウエハステージWSTにロードする。
【0190】
次に、アライメント検出系ASの観察視野内に、測定用ウエハ上の光源像の形成領域が位置するように、ウエハステージWSTを移動させる。かかるウエハステージの移動は、主制御系20がウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを駆動することにより行われる。
【0191】
次いで、アライメント検出系ASにより、測定用ウエハの表面における光源像を含む領域が撮像される。その撮像データは、位置検出装置81に送信されることによって、位置検出装置81において前述のステップ121〜165(図11、図12参照)における動作が実行され、撮像データの中から転写された光源像に対応する各画素の抽出が実行される。
【0192】
以上述べたように、アライメント検出系ASによって撮像された測定用ウエハ上に形成された光源の転写像を検出対象としても、その転写像の位置や大きさを位置検出装置81によって精度良く検出することができるため、高精度に照明σを計測することができる。
【0193】
なお、照明σが測定される照明条件は、通常照明に限られるものではなく、輪帯照明や4極照明等でもよい。すなわち、照明光学系の瞳面上で照明光が分布する領域は、円形や楕円形等に限られるものではなく、輪帯、あるいは照明光学系の光軸からほぼ等距離に分布する複数の局所領域等であってもよい。
【0194】
また、位置検出装置81において検出された光源像の位置に基づいて、前述のビームマッチングユニットを用いて照明光ILの光軸を調整するようにしてもよい。このようにすれば、位置検出装置81において精度良く検出された光源像の位置に基づいて照明光ILの光軸を調整することができるため、高精度な露光を実現することができる。なお、上述の場合には、光源像が転写されたウエハを現像して得られるレジスト像を検出するものとしたが、ウエハに転写される光源像の潜像を検出してもよい。さらに、この潜像検出に用いる感光材料は、フォトレジストに限られるものではなく光磁気材料等でもよい。また、光源像の転写像の撮像はアライメント検出系ASでなく、光源像の転写像を観察することができる別の観察装置を用いてもよい。
【0195】
また、上記実施形態では、光源像に対応する画素を抽出するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ウエハ等の物体に対応する画素の抽出にも用いることが可能である。
【0196】
例えば、露光装置においては、露光に先立ってレチクルRとウエハWとの位置合わせ(アライメント)を高精度に行う必要がある。この高精度な位置合わせを行うためには、高精度にウエハWの位置検出を行うことが必要であり、このための様々な技術が提案されている。
【0197】
こうした位置検出方法では、ウエハWの移動を規定する基準座標系と、ウエハW上のショット領域の配列に関する配列座標系(ウエハ座標系)との位置関係の高精度な検出(詳細(ファイン)アライメント)を行うために、ウエハW内の数箇所に配設されているファインアライメントマーク(回路パターンとともに転写された詳細位置合わせマーク)を計測する。そして、最小二乗近似等で各ショット領域の配列座標を求めた後、露光に際しては、その演算結果を用い、ウエハステージWSTの精度に任せてステッピングを行うEGAが広く用いられている。
【0198】
かかるEGAのためには、ウエハW上の所定箇所に形成されたファインアライメントマークを高倍率で観測する必要があるが、高倍率で観測を行うには、観測視野が必然的に狭いものとなる。そこで、狭い観測視野で確実にファインアライメントマークを捉えるために、例えば、ファインアライメントに先立って、以下のような、基準座標系と配列座標系との位置関係の検出を行っている。
【0199】
まず、位置検出の対象物であるウエハWについて、そのウエハWの外縁形状を観測装置(不図示、プリアライメント検出系とも呼ばれる)によって観測する。そして、観測装置によって観測されたウエハW外縁のノッチやオリエンテーションフラットの位置やウエハW外縁の位置等に基づいて、所定の精度で、基準座標系と配列座標系との位置関係が検出される。この検出を「プリアライメント」という。
【0200】
上述したプリアライメントの方法では、前述のように、ウエハWの外縁の位置を少なくとも数箇所(ウエハは略円形なので、例えば3箇所)検出する必要がある。かかるウエハの外縁の位置検出に、上述の位置検出装置81と同様な位置検出装置を適用すれば、精度良くウエハWの外縁の位置を検出することができる。
【0201】
上述したように、露光工程の際に位置制御の制御対象となるウエハW等の物体の位置検出にも、位置検出装置81と同様の位置検出装置を用いて、それらの制御対象の位置を精度良く検出することができる。露光の際に、それらの物体の位置制御を行う位置制御装置である主制御系20では、精度良く検出された物体の位置に基づいて、物体を位置制御することができるため、結果的に高精度な露光を実現することができる。
【0202】
また、上記実施形態では、抽出対象を1つの光源像や1つの物体としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、抽出対象が複数あってもよい。また、被検出体が複数存在し、その中から少なくとも1つの被検出体を抽出対象として抽出する場合にも、本発明を適用することができる。なお、この場合、図11、図12に示すステップ125〜ステップ163に示されるようなデータ抽出工程を、抽出対象毎に実行するようにすればよい。また、複数の他の被検出体(背景)を抽出して、抽出対象である被検出体を抽出する際にも、背景ごとにステップ125〜ステップ163に示されるようなデータ抽出工程を実行すれば、その抽出対象を抽出することができる。
【0203】
また、上記実施形態では、モデルのずれを示す情報量として、カルバック・ライブラーの情報量を算出したが、モデルのずれを示す情報量であれば、シャノンの情報量や他の情報量であってもよい。また、モデルのずれを示す尺度として情報量基準AIC(赤池情報量基準)等を用いてもよい。
【0204】
また、上記実施形態では、検出データを、撮像装置によって得られた撮像データIMD2等としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検出対象が光源像である場合には、その光源像の光の強度を測定できるセンサによって測定され、その光源像が被検出体となっている検出データであればよく、検出対象が物体である場合には、その物体の形状を測定可能なセンサによって測定され、その物体が被検出体となっている検出データであればよい。
【0205】
また、上記実施形態では、オプティカルインテグレータとしてフライアイレンズ222が用いられるとしたが、その代わりに、マイクロフライアイレンズが用いられてもよい。この場合には、フライアイレンズ222を用いられたときよりも光源像の強度分布がより均一となるので、光源像に対応する各画素の抽出がより容易となる。また、オプティカルインテグレータとして内面反射型インテグレータ(ロッドインテグレータ等)を用いることもできるが、この場合には、光源像としてその虚像を検出することになる。
【0206】
また、上記実施形態の露光装置の光源6としては、F2レーザ光源、ArFエキシマレーザ光源、KrFエキシマレーザ光源などの紫外パルス光源に限らず、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプを用いることも可能である。また、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良い。
【0207】
また、上記実施形態では、走査型露光装置の場合を説明したが、本発明は、投影光学系を備える露光装置であれば、ステップ・アンド・リピート機、ステップ・アンド・スキャン機、ステップ・アンド・スティッチング機を問わず適用することができる。
【0208】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶標示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシーン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0209】
また、上記実施形態では、露光装置について説明したが、露光装置以外の装置、例えば顕微鏡等を使用した物体の観察装置、工場の組み立てライン、加工ライン、検査ラインにおける対象物のデータの抽出に用いることもできる。
【0210】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のデータ抽出方法及び装置によれば、統計的手法を用いて、抽出対象と他の被検出体とのデータの閾値を抽出することができるため、高精度に抽出対象のデータを抽出することができる。
【0211】
また、本発明の位置検出方法及び装置によれば、本発明のデータ抽出方法及び装置を用いて検出対象のデータを抽出することができるので、その抽出されたデータに基づいて高精度に検出対象の位置を検出することができる。
【0212】
また、本発明の露光装置によれば、本発明の位置検出装置を用いて、光源像や物体の位置を高精度に検出したうえで、それらの位置を調整したり、それらの位置に基づいて位置制御を行いながら露光を実行したりすることができるため、高精度な露光を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の波面センサの構成を概略的に示す図である。
【図3】図2の標示板の表面状態を説明するための図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、図2のマイクロレンズアレイの構造を示す図である。
【図5】波面データ処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図1の露光装置における露光動作の処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7の収差測定サブルーチンにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】測定用レチクルに形成された測定用パターンの例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態におけるスポット像の撮像時における光学配置を説明するための図である。
【図11】図8のデータ抽出および位置検出処理サブルーチンにおける処理を説明するためのフローチャート(その1)である。
【図12】図8のデータ抽出および位置検出処理サブルーチンにおける処理を説明するためのフローチャート(その2)である。
【図13】撮像データIMD2のイメージ図である。
【図14】頻度分布Hall(I)の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
20…主制御系(位置制御装置)、51…データ分布作成装置、52…正規分布推定装置、53…範囲決定装置、54…モデル推定装置、55…閾値決定装置、56…抽出装置、81…位置検出装置、83…データ抽出装置、84…検出装置、952…CCD、100…露光装置、AS…アライメント検出系、IMD2…撮像データ、PL…投影光学系、PH1〜PHN…ピンホールパターン。
【発明の属する技術分野】
本発明は、データ抽出方法及び装置、位置検出方法及び装置、並びに露光装置に係り、更に詳しくは、光源像やその背景等の複数の被検出体の検出データが混在するデータの中から、少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出方法及び装置、光源像や物体等の検出対象の位置を検出する位置検出方法及び装置、その位置検出装置を備える露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子、液晶表示素子等を製造するためのリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)に形成されたパターンを、投影光学系を介してレジスト等が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、適宜「ウエハ」ともいう)上に転写する露光装置が用いられている。この種の装置としては、近年では、スループットを重視する観点から、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆる「ステッパ」)や、このステッパを改良したステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置などの逐次移動型の投影露光装置が主として用いられている。
【0003】
こうした露光装置においては、露光に先立ってレチクルとウエハとの位置合わせ(アライメント)行うためのウエハの位置検出や、投影光学系のコヒーレンスファクタσ(以下、「照明σ」という)の測定などにあたって、ウエハ(ウエハの外縁)像や、投影光学系へ入射する露光光(照明光)の入射瞳と共役な面に結像された照明光学系の光源像を検出している。そして、その検出結果、例えば、撮像データの画像全体の輝度値の分布状態に基づいて、ウエハWに対応する各画素を抽出してウエハ位置を検出したり、光源像に対応する各画素を抽出して投影光学系の結像特性に影響する照明σを測定したりしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のようなウエハ等の特定の抽出対象の輝度とその背景等の他の部分の輝度との差は、必ずしも明確ではない場合が多い。このような場合には、特定の抽出対象のみを高精度に抽出することが困難となる。
【0005】
また、特定の抽出対象や他の部分に、その表面上に固有のパターンが形成されている場合もある。この場合、それらの輝度値は、ある程度の範囲に分布するようになり、特定の抽出対象のみを抽出するのがさらに困難となる。
【0006】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、高精度に抽出対象のデータを抽出することができるデータ抽出方法及び装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、高精度に検出対象の位置を検出することができる位置検出方法及び装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第3の目的は、高精度な露光を実現することができる露光装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数の被検出体の検出データが混在するデータの中から、少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出方法であって、検出データ(IMD2)全体におけるデータ(I)の確率分布モデルである第1確率分布モデル(Pall(I))を作成する第1工程と;前記複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの正規分布(NA)に基づいて推定される幾つかの確率分布モデル(Ps(I))の中から、所定範囲(例えば、検出データIがμA−dからμA+dまで)内における前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量が最も小さい確率分布モデルである第2確率分布モデル(S=ScのときのPs(I))を求める処理を、少なくとも1つの特定の被検出体について実行する第2工程と;前記第2確率分布モデルに基づいて推定される頻度分布(Hs(I))に基づいて前記特定の被検出体と他の被検出体との検出データの閾値(T)を決定する第3工程と;前記閾値に基づいて前記特定の被検出体及び前記他の被検出体のいずれかの検出データを抽出する第4工程と;を含むデータ抽出方法である。
【0010】
これによれば、第2工程において、複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの正規分布に基づいて推定される幾つかの確率分布モデルの中から、データ全体の頻度分布に対する確率分布モデル(第1確率分布モデル)とのずれを示す情報量が最も小さい第2確率分布モデルが求められる。
【0011】
そして、第3工程において、その第2確率分布モデルに基づいて作成される頻度分布を、特定の被検出体のデータの頻度分布として推定し、この頻度分布に基づいて、その検出対象と他の被検出体との閾値を決定し、第4工程において、その閾値を用いてその検出対象のデータを抽出する。この閾値は、モデルのずれを示す情報量によって推定された特定の被検出体のデータの頻度分布に基づいて求められたものであり、統計的手法を用いて求められたものである。そのため、特定の被検出体の検出データと、他の被検出体との検出データとの差が明確でなく、それらの被検出体の検出データがある程度の範囲に分布しているような場合であっても、特定の被検出体のデータを精度良く抽出することができる。なお、その特定の被検出体は、例えば光源像や物体等の抽出対象自体であっても良いし、抽出対象以外の他の被検出体、例えばその光源像等の背景であっても良い。ここで、「被検出体」とは、何らかの検出方法によって属性データ(例えば輝度値)が検出された物体あるいは像のことを意味する。
【0012】
この場合、請求項2に記載のデータ抽出方法のごとく、前記特定の被検出体の検出データであることが明らかな幾つかの検出データの頻度分布に基づいて前記特定の被検出体の検出データの正規分布を推定する第5工程をさらに含むこととすることができる。
【0013】
これによれば、特定の被検出体(抽出対象あるいはその背景)のデータであることが明らかな一部のデータを用いて、その被検体の検出データの正規分布を精度良く推定することができる。
【0014】
上記請求項1又は2に記載のデータ抽出方法において、請求項3に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第2工程は、前記特定の被検出体の検出データの正規分布を、ある倍率で拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを作成する処理と、前記所定範囲内におけるその確率分布モデルと前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記倍率を変えながら繰り返し実行する情報量算出工程と;該情報量算出工程で作成された確率分布モデルのうち、前記第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルを前記第2確率分布モデルとして求め、当該第2確率分布モデルが得られたときの倍率を前記特定の被検出体における正規分布の拡大倍率として決定する倍率決定工程と;を含むこととすることができる。
【0015】
これによれば、第2工程では、前述の特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを、その拡大倍率を変更しながら次々に作成していき、作成された確率分布モデルの中から、第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルの拡大倍率を求める。こうすることによって、何らかの方法ですでに求められている特定の被検出体の検出データの正規分布に基づいて、検出データ全体におけるその被検出体の確率分布モデル(第2確率分布モデル)を求めることができる。
【0016】
この場合、請求項4に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第3工程では、前記倍率決定工程において決定された拡大倍率で前記特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大することによって得られる頻度分布の頻度が例えば1以下等の適切な頻度の値を前記閾値として決定することとすることができる。
【0017】
これによれば、統計的手法を用いて推定された特定の被検出体の頻度分布において頻度がほぼ0となる値が特定の被検出体と他の被検出体とのデータの閾値となるため、その特定の被検出体のデータを余すことなく精度良く抽出することができる。
【0018】
上記請求項1〜4のいずれか一項に記載のデータ抽出方法において、請求項5に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第2工程における前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることとすることができる。
【0019】
上記請求項1〜5のいずれか一項に記載のデータ抽出方法において、請求項6に記載のデータ抽出方法のごとく、前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布の中から、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量が最も小さい正規分布が得られたときの範囲を前記所定範囲として決定する第6工程と;をさらに含むこととすることができる。
【0020】
この場合、請求項7に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第6工程は、前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布を推定する処理と、その正規分布と前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記範囲を変えながら繰り返し実行する情報量算出工程と;該情報量算出工程において推定された正規分布のうち、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を前記所定範囲として決定する範囲決定工程と;を含むこととすることができる。
【0021】
これによれば、第6工程では、すべての検出データのうち、特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれるデータの正規分布を次々に作成していき、作成された正規分布の中から、特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を求める。こうすることによって、何らかの方法で特定の被検出体における一部の検出データの正規分布が求めることができれば、本発明のデータ抽出方法を実行することによって、上述のような統計的手法を用いて、特定の被検出体の検出データのとりうる範囲を精度良く求めることができるようになる。
【0022】
上記請求項6又は7に記載のデータ抽出方法において、請求項8に記載のデータ抽出方法のごとく、前記第6工程における前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることとすることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、検出対象の位置を検出する位置検出方法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載のデータ抽出方法を用いて少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出工程と;該データ抽出工程において抽出された検出データに基づいて、前記少なくとも1つの被検出体である検出対象の位置を検出する位置検出工程と;を含む位置検出方法である。
【0024】
これによれば、統計的手法を用いて抽出された検出対象の検出データに基づいて検出対象の位置を検出することができるため、高精度に検出対象の位置を検出することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、複数の被検出体の検出データが混在するデータの中から、少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出装置であって、検出データ全体におけるデータの確率分布モデルである第1確率分布モデルを作成するデータ分布作成装置(51)と;前記複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの正規分布に基づいて推定される幾つかの確率分布モデルの中から、所定範囲内における前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量が最も小さい確率分布モデルである第2確率分布モデルを求める処理を、少なくとも1つの特定の被検出体について実行するモデル推定装置(54)と;前記第2確率分布モデルに基づいて作成される頻度分布に基づいて前記特定の被検出体と他の被検出体との検出データの閾値を決定する閾値決定装置(55)と;前記閾値に基づいて前記特定の被検出体及び前記他の被検出体のいずれかの検出データを抽出する抽出装置(56)と;を備えるデータ抽出装置である。
【0026】
これによれば、モデル推定装置において、複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの値の正規分布に基づいて推定される幾つかの確率分布モデルの中から、データ分布作成装置において作成されたデータ全体の頻度分布に対する確率分布モデル(第1確率分布モデル)とのモデルのずれを示す情報量が最も小さい第2確率分布モデルが求められる。そして、閾値決定装置は、その第2確率分布モデルに基づいて作成される頻度分布に基づいて、その検出対象と他の被検出体との閾値を決定し、抽出装置が、その閾値を用いてその検出対象のデータを抽出する。
【0027】
この閾値は、モデルのずれを示す情報量によって推定された特定の被検出体の頻度分布に基づいて求められたものであり、統計的手法を用いて求められたものであるため、特定の被検出体の検出データと、他の被検出体との検出データとの差が明確でなく、その被検出体のデータがある程度の範囲に分布しているような場合であっても、高精度に特定の被検出体のデータを抽出することができる。
【0028】
この場合、請求項11に記載のデータ抽出方法のごとく、前記特定の被検出体の検出データであることが明らかな幾つかの検出データの頻度分布に基づいて前記特定の被検出体の検出データの正規分布を推定する正規分布推定装置(52)をさらに備えることとすることができる。
【0029】
これによれば、正規分布推定装置において、全体の検出データの中から、特定の被検出体(抽出対象あるいは背景)のデータであることが明らかな一部のデータを用いて、その被検体の検出データの正規分布が精度良く推定される。
【0030】
上記請求項10又は11に記載のデータ抽出装置において、請求項12に記載のデータ抽出装置のごとく、前記モデル推定装置は、前記特定の被検出体の検出データの正規分布を、ある倍率で拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを作成する処理と、前記所定範囲内におけるその確率分布モデルと前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記倍率を変えながら繰り返し実行する情報量算出装置と;該情報量算出装置で作成された確率分布モデルのうち、前記第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルを前記第2確率分布モデルとして求め、当該第2確率分布モデルが得られたときの倍率を前記特定の被検出体における正規分布の拡大倍率として決定する倍率決定装置と;を備えることとすることができる。
【0031】
これによれば、モデル推定装置において、情報量算出装置は、前述の特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを、その拡大倍率を変更しながら次々に作成していき、作成された確率分布モデルの中から、第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルの拡大倍率を求める。こうすることによって、何らかの方法ですでに求められている特定の被検出体の検出データの正規分布に基づいて、検出データ全体におけるその被検出体の確率分布モデル(第2確率分布モデル)を求めることができる。
【0032】
この場合、請求項13に記載のデータ抽出装置のごとく、前記閾値決定装置は、前記倍率決定装置において決定された拡大倍率で前記特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大することによって得られる頻度分布の頻度が例えば1以下等の適切な頻度の値を前記閾値として決定することとすることができる。
【0033】
これによれば、統計的手法を用いて推定された特定の被検出体の頻度分布において頻度がほぼ0となる値が閾値として設定されるため、その特定の被検出体のデータを余すことなく抽出することができる。
【0034】
上記請求項10〜13のいずれか一項に記載のデータ抽出装置において、請求項14に記載のデータ抽出装置のごとく、前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることとすることができる。
【0035】
上記請求項10〜14のいずれか一項に記載のデータ抽出装置において、請求項15に記載のデータ抽出装置のごとく、前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布の中から、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量が最も小さい正規分布が得られたときの範囲を前記所定範囲として決定する範囲決定装置(53)をさらに備えることとすることができる。
【0036】
この場合、請求項16に記載のデータ抽出装置のごとく、前記範囲決定装置は、前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布を推定する処理と、その正規分布と前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記範囲を変えながら繰り返し実行する情報量算出装置と;該情報量算出装置で推定された正規分布のうち、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を前記所定範囲として決定する決定装置と;を備えることとすることができる。
【0037】
これによれば、範囲決定装置では、すべての検出データのうち、特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれるデータの正規分布を次々に作成していき、作成された正規分布の中から、特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を求める。こうすることによって、すでに何らかの方法で得られている特定の被検出体の検出データの正規分布を求めることができれば、範囲決定装置によって、特定の被検出体の検出データのとりうる範囲を精度良く求めることができるようになる。
【0038】
上記請求項15又は16に記載のデータ抽出装置において、請求項17に記載のデータ抽出装置のごとく、前記範囲決定装置における前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることとすることができる。
【0039】
請求項18に記載の発明は、検出対象の位置を検出する位置検出装置であって、請求項10〜17のいずれか一項に記載のデータ抽出装置(83)と;該データ抽出装置において抽出された検出データに基づいて前記少なくとも1つの被検出体である前記検出対象の位置を検出する検出装置(84)と;を備える位置検出装置(81)である。
【0040】
これによれば、請求項10〜17のいずれか一項に記載のデータ抽出装置において、統計的手法によって検出された検出対象のデータを用いて検出対象の位置を検出することができるため、高精度に検出対象の位置を検出することができる。
【0041】
請求項19に記載の発明は、露光光を物体に照射する露光装置(100)であって、前記露光光(IL)の光路上に配置された投影光学系(PL)と;前記投影光学系を介して投影されたピンホールパターン(PH1〜PHN)を介した光源像を撮像する撮像装置(952)と;検出対象を前記撮像装置によって撮像された前記光源像とする請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置である。
【0042】
露光装置における投影光学系の波面収差を計測する場合には、ピンホールパターンに露光光を照射することによってピンホールパターンから発生するほぼ球面波である露光光の投影光学系の瞳面における波面をマイクロレンズアレイによって分割し(波面分割)、そのマイクロレンズアレイのマイクロレンズ毎に得られるスポット像の基準となるべき位置からのずれを検出し、例えばツェルニケの多項式等を用いて波面収差を求めている。
【0043】
ツェルニケの多項式を用いて波面収差を精度良く求めるためには、投影光学系の瞳位置や大きさに基づいて、スポット像のずれを求めるための基準となる基準位置を補正することが必要となる。そこで、本発明の露光装置では、撮像装置によって撮像された光源像を検出対象として、その像の位置を、請求項18に記載の位置検出装置を用いて精度良く検出する。したがって、本発明の露光装置では、波面収差を精度良く計測することができる。本発明の露光装置では、精度良く計測された波面収差を調整したうえで露光を実行すれば、高精度な露光を実現することができる。
【0044】
請求項20に記載の発明は、露光光を物体に照射する露光装置であって、前記露光光の光路上に配置された投影光学系と;前記投影光学系を介して投影された光源像を撮像する撮像装置と;検出対象を前記撮像装置によって撮像された前記光源像とする請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置である。
【0045】
照明σは、投影光学系における入射瞳面における光源像の大きさと、その入射瞳の大きさとの比で定義される。入射瞳の大きさが既知であり、投影光学系における入射瞳面の位置及びその入射瞳面の共役面である撮像装置の受光面の位置が既知であり、投影光学系における入射瞳面における光源像に対する撮像装置の受光面における光源像の倍率も既知であるとすると、撮像された光源像の大きさから照明σを求めることができる。本発明では、撮像装置によって撮像された光源像を検出対象として、その光源像の位置や大きさを位置検出装置において精度良く検出することができるため、高精度に照明σを計測することができる。
【0046】
請求項21に記載の発明は、露光光を物体に照射する露光装置であって、前記露光光の光路上に配置された投影光学系と;前記物体上に転写された光源の転写像を撮像する撮像装置(例えばAS)と;検出対象を前記転写像とする請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置である。
【0047】
これによれば、撮像装置によって撮像された光源の転写像を検出対象として、その転写像の位置や大きさを位置検出装置において精度良く検出することができるため、高精度に照明σを計測することができる。
【0048】
上記請求項20又は21に記載の露光装置において、請求項22に記載の露光装置のごとく、前記位置検出装置において検出された前記検出対象の位置に基づいて、前記投影光学系の光軸を調整する調整装置をさらに備えることとすることができる。
【0049】
これによれば、位置検出装置において精度良く検出された検出対象の位置に基づいて投影光学系の光軸を調整することができるため、高精度な露光を実現することができる。
【0050】
請求項23に記載の発明は、露光光を物体に照射する露光装置であって、前記物体を含む領域中の複数の観測点における観測値を観測する観測装置と;検出対象を前記物体とする、請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置である。
【0051】
これによれば、請求項18に記載の位置検出装置によって、物体の位置を精度良く検出することができる。そのため、例えば、この精度良く検出された物体の位置に基づいて物体を位置制御しながら露光を実行すれば、高精度な露光を実現することができる。
【0052】
この場合、請求項24に記載の発明は、前記位置検出装置によって検出された前記物体の位置に基づいて前記物体を位置制御する位置制御装置をさらに備えることとすることができる。
【0053】
これによれば、その位置検出装置において精度良く検出された物体の位置に基づいて、物体を位置制御することができるため、高精度な露光を実現することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。
【0055】
図1には、本発明に係るデータ抽出方法および位置検出方法の実施に好適な一実施形態に係る露光装置100が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。この露光装置100は、露光装置本体60と、光学特性測定装置70とを備えている。
【0056】
前記露光装置本体60は、光源6及び照明光学系12を含む照明系、レチクルRを保持するレチクルステージRST、投影光学系PL、物体としてのウエハWが搭載されるステージ装置であるウエハステージWST、アライメント検出系AS、レチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置及び姿勢を制御するステージ制御系19、並びに装置全体を統括制御する主制御系20等を備えている。
【0057】
前記光源6としては、ここでは、ArFエキシマレーザ光源(出力波長193nm)が用いられている。なお、光源6として、F2レーザ光源(出力波長157nm)等の真空紫外域のパルス光を出力する光源や、KrFエキシマレーザ光源(出力波長248nm)などの近紫外域のパルス光を出力する光源などを用いても良い。
【0058】
前記光源6は、実際には、照明光学系12、レチクルステージRST、投影光学系PL、及びウエハステージWST等から成る露光装置本体60が収納されたチャンバ(不図示)が設置されたクリーンルームとは別のクリーン度の低いサービスルームに設置されており、そのチャンバにビームマッチングユニット(BMU)と呼ばれる光軸調整用光学系を少なくとも一部に含む不図示の送光光学系を介して接続されている。この光源6は、主制御系20からの制御情報TSに基づいて、内部のコントローラにより、レーザ光LBの出力のオン・オフ、レーザ光LBの1パルスあたりのエネルギ、発振周波数(繰り返し周波数)、中心波長及びスペクトル半値幅などが制御されるようになっている。
【0059】
前記照明光学系12は、シリンダレンズ、ビームエキスパンダ及びズーム光学系(いずれも不図示)、並びにオプティカルインテグレータ(ホモジナイザ)として機能する、フライアイレンズ又は内面反射型インテグレータ(ロッドインテグレータ等)あるいは回折光学素子(本実施形態ではフライアイレンズ222)等を含むビーム整形・照度均一化光学系220、照明系開口絞り板224、第1リレーレンズ228A、第2リレーレンズ228B、固定レチクルブラインド230A、可動レチクルブラインド230B、光路折り曲げ用のミラーM及びコンデンサレンズ232等を備えている。
【0060】
前記ビーム整形・照度均一化光学系220は、光透過窓217を介して不図示の送光光学系に接続されている。このビーム整形・照度均一化光学系220は、光源6でパルス発光され、光透過窓217を介して入射したレーザビームLBの断面形状を、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダを用いて整形する。そして、ビーム整形・照度均一化光学系220内部の射出端側に位置するフライアイレンズ222は、レチクルRを均一な照度分布で照明するために、前記断面形状が整形されたレーザビームの入射により、照明光学系12の瞳面とほぼ一致するように配置されるその射出側焦点面に多数の点光源(光源像)から成る面光源(2次光源)を形成する。この2次光源から射出されるレーザビームを以下においては、「照明光IL」と呼ぶものとする。
【0061】
フライアイレンズ222の射出側焦点面の近傍に、円板状部材から成る照明系開口絞り板224が配置されている。この照明系開口絞り板224には、ほぼ等角度間隔で、例えば通常の円形開口より成る開口絞り(通常絞り)、小さな円形開口より成りコヒーレンスファクタであるσ値を小さくするための開口絞り(小σ絞り)、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り(輪帯絞り)、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形開口絞り(図1ではこのうちの2種類の開口絞りのみが図示されている)等が配置されている。
【0062】
この照明系開口絞り板224は、主制御系20からの制御信号MLCにより制御されるモータ等の駆動装置240の駆動で回転されるようになっている。これにより、いずれかの開口絞りが照明光ILの光路上に選択的に設定され、光源面の形状が、輪帯、小円形、大円形、あるいは四つ目等に制限される。なお、本実施形態では、開口絞り板224を用いて、照明光学系12の瞳面上での照明光の光量分布(2次光源の形状や大きさ)、すなわちレチクルRの照明条件を変更するものとしたが、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ)222の入射面上での照明光の強度分布あるいは照明光の入射角度範囲を可変として、前述の照明条件の変更に伴う光量損失を最小限に抑えることが好ましい。このために、開口絞り板224の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えば照明光学系12の光路上に交換して配置される複数の回折光学素子、照明光学系12の光軸に沿って移動可能な少なくとも1つのプリズム(円錐プリズムや多面体プリズムなど)、及びズーム光学系の少なくとも1つを含む光学ユニットを光源6とオプティカルインテグレータ(フライアイレンズ)222との間に配置する構成を採用することができる。
【0063】
照明系開口絞り板224から出た照明光ILの光路上に、固定レチクルブラインド230A、可動レチクルブラインド230Bを介在させて第1リレーレンズ228A及び第2リレーレンズ228Bから成るリレー光学系が配置されている。
【0064】
固定レチクルブラインド230Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置され、レチクルR上の照明領域を規定する矩形開口が形成されている。また、この固定レチクルブラインド230Aの近傍(レチクルRのパターン面に対する共役面)に走査方向(ここではY軸方向とする)及び非走査方向(X軸方向)にそれぞれ対応する方向の位置及び幅が可変の開口部を有する可動レチクルブラインド230Bが配置されている。走査露光の開始時及び終了時には、主制御系20の制御により、その可動レチクルブラインド230Bを介してレチクルR上の照明領域をさらに制限することによって、不要な部分の露光が防止されるようになっている。
【0065】
リレー光学系を構成する第2リレーレンズ228B後方の照明光ILの光路上には、当該第2リレーレンズ228Bを通過した照明光ILをレチクルRに向けて反射する折り曲げミラーMが配置され、このミラーM後方の照明光ILの光路上にコンデンサレンズ232が配置されている。
【0066】
以上の構成において、フライアイレンズ222の入射面、可動レチクルブラインド230Bの配置面、及びレチクルRのパターン面は、光学的に互いに共役に設定され、フライアイレンズ222の射出側焦点面に形成される光源面(照明光学系12の瞳面)、投影光学系PLのフーリエ変換面(瞳面)は光学的に互いに共役となるように設定されている。
【0067】
このようにして構成された照明光学系12の作用を簡単に説明すると、光源6からパルス発光されたレーザビームLBは、ビーム整形・照度均一化光学系220に入射して断面形状が整形され、フライアイレンズ222に入射する。これにより、フライアイレンズ222の射出側焦点面に前述した2次光源が形成される。
【0068】
上記の2次光源から射出された照明光ILは、照明系開口絞り板224上のいずれかの開口絞りを通過し、第1リレーレンズ228Aを経て固定レチクルブラインド230A、可動レチクルブラインド230Bの矩形開口を通過する。そして、第2リレーレンズ228Bを通過してミラーMによって光路が垂直下方に折り曲げられ、コンデンサレンズ232を経て、レチクルステージRST上に保持されたレチクルR上の矩形の照明領域を均一な照度分布で照明する。
【0069】
前記レチクルステージRST上にはレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、ここでは、リニアモータ等から成る不図示のレチクルステージ駆動部によって、投影光学系PLの光軸AXに垂直なXY平面内で微小駆動可能であるとともに、所定の走査方向(Y軸方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
【0070】
レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって、移動鏡15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報(又は速度情報)は、ステージ制御系19を介して主制御系20に送られ、主制御系20は、この位置情報(又は速度情報)に基づいて、ステージ制御系19及びレチクルステージ駆動部(図示省略)を介してレチクルステージRSTを移動させる。
【0071】
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLは、例えば、両側テレセントリックな縮小系であり、共通のZ軸方向の光軸AXを有する不図示の複数のレンズエレメントから構成されている。また、この投影光学系PLとしては、投影倍率βが例えば1/4、1/5、1/6などのものが使用されている。このため、上述のようにして、照明光(露光光)ILによりレチクルR上の照明領域が照明されると、そのレチクルRに形成されたパターンが投影光学系PLによって投影倍率βで縮小された像(部分倒立像)が、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上のスリット状の露光領域に投影され転写される。
【0072】
なお、本実施形態では、上記の複数のレンズエレメントのうち、特定のレンズエレメント(例えば、所定の5つのレンズエレメント)がそれぞれ独立に移動可能となっている。かかるレンズエレメントの移動は、特定レンズエレメントを支持するレンズ支持部材を支持し、鏡筒部と連結する、特定レンズごとに設けられた3個のピエゾ素子等の駆動素子によって行われるようになっている。すなわち、特定レンズエレメントを、それぞれ独立に、各駆動素子の変位量に応じて光軸AXに沿って平行移動させることもできるし、光軸AXと垂直な平面に対して所望の傾斜を与えることもできるようになっている。そして、これらの駆動素子を駆動するための駆動指示信号は、主制御系20からの指令MCDに基づいて結像特性補正コントローラ251によって出力され、これによって各駆動素子の変位量が制御されるようになっている。
【0073】
こうして構成された投影光学系PLでは、主制御系20による結像特性補正コントローラ251を介したレンズエレメントの移動制御により、ディストーション、像面湾曲、非点収差、コマ収差、又は球面収差等の光学特性が調整可能となっている。
【0074】
前記ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方で、不図示のベース上に配置され、このウエハステージWST上には、ウエハホルダ25が載置されている。このウエハホルダ25上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。ウエハホルダ25は不図示の駆動部により、投影光学系PLの光軸直交面に対し、任意方向に傾斜可能で、かつ投影光学系PLの光軸AX方向(Z方向)にも微動可能に構成されている。また、このウエハホルダ25は光軸AX回りの微小回転動作も可能になっている。
【0075】
また、ウエハステージWSTの+Y方向側には、後述する波面センサ90を着脱可能とするためのブラケット構造が形成されている。
【0076】
ウエハステージWSTは、走査方向(Y軸方向)の移動のみならず、ウエハW上の複数のショット領域を、前述の照明領域と共役な露光領域に位置させることができるように、走査方向に垂直な方向(X軸方向)にも移動可能に構成されている。そして、このウエハステージWST等によって、ウエハW上の各ショット領域を走査(スキャン)露光する動作と、次のショットの露光開始位置(加速開始位置)まで移動する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作が実行される。このウエハステージWSTは、モータ等を含むウエハステージ駆動部24によりXYの2次元方向に駆動される。
【0077】
ウエハステージWSTのXY平面内での位置は、ウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)18によって、移動鏡17を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)は、ステージ制御系19を介して主制御系20に送られ、主制御系20は、この位置情報(又は速度情報)に基づき、ステージ制御系19及びウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTの駆動制御を行う。
【0078】
前記アライメント検出系ASは、投影光学系PLの側面に配置されている。本実施形態では、ウエハW上に形成されたストリートラインや位置検出用マーク(ファインアライメントマーク)を観測する結像アライメントセンサから成るオフ・アクシス方式の顕微鏡がアライメント検出系ASとして用いられている。このアライメント検出系ASの詳細な構成は、例えば、特開平9−219354号公報に開示されている。アライメント検出系ASによる観測結果は、主制御系20に供給される。
【0079】
更に、図1の装置には、ウエハW表面の露光領域内部及びその近傍の領域のZ軸方向(光軸AX方向)の位置を検出するための斜入射方式のフォーカス検出系(焦点検出系)の一つである、多点フォーカス位置検出系(21,22)が設けられている。この多点フォーカス位置検出系(21,22)は、光ファイバ束、集光レンズ、パターン形成板、レンズ、ミラー、及び照射対物レンズ(いずれも不図示)から成る照射光学系21と、集光対物レンズ、回転方向振動板、結像レンズ、受光用スリット板、及び多数のフォトセンサを有する受光器(いずれも不図示)から成る受光光学系22とから構成されている。この多点フォーカス位置検出系(21,22)の詳細な構成等については、例えば、特開平6−283403号公報に開示されている。多点フォーカス位置検出系(21,22)による検出結果は、ステージ制御系19に供給される。
【0080】
前記光学特性測定装置70は、波面センサ90と、波面データ処理装置80と、位置検出装置81とから構成されている。
【0081】
前記波面センサ90は、図2に示されるように、表示板91、コリメータレンズ92、レンズ93a及びレンズ93bから成るリレーレンズ系93、並びに強度分割光学系としてのハーフミラー960を備えており、この順序で光軸AX1上に配置されている。また、リレーレンズ系93から出射された光は、ハーフミラー960で2つに分岐されるが、その一方の光軸に沿って、波面分割光学系としてのマイクロレンズアレイ94、並びに撮像装置としてのCCD951が配置されている。また、他方の光軸に沿って、撮像装置としてのCCD952が配置されている。さらに、波面センサ90は、入射した光の光路を設定するミラー96a、96b、並びにコリメータレンズ92、リレーレンズ系93、ハーフミラー960、マイクロレンズアレイ94、CCD951、952、及びミラー96a、96bを収納する収納部材97をさらに備えている。
【0082】
前記標示板91は、例えばガラス基板を基材とし、ウエハホルダ25に固定されたウエハWの表面と同じ高さ位置(Z軸方向位置)に、光軸AX1と直交するように配置されている(図1参照)。この標示板91の表面には、図3に示されるように、その中央部に開口91aが形成されている。また、表示板91の表面における開口91aの周辺には、3組以上(図3では、4組)の2次元位置検出用マーク91bが形成されている。この2次元位置検出用マーク91bとしては、本実施形態では、Y軸方向に沿って形成されたラインアンドスペースマーク91cと、X軸方向に沿って形成されたラインアンドスペースマーク91dとの組合せが採用されている。なお、ラインアンドスペースマーク91c、91dは、上述のアライメント検出系ASによって検出可能となっている。また、開口91a及び2次元位置検出用マーク91bを除く標示板91の表面は、反射面加工がなされている。かかる反射面加工は、例えば、ガラス基板にクロム(Cr)を蒸着することによって行われている。
【0083】
図2に戻り、前記コリメータレンズ92は、開口91aを通って入射した光を平面波に変換する。
【0084】
図4(A)は、マイクロレンズアレイ94の平面図であり、図4(B)は、マイクロレンズアレイ94が、図4(A)における線分A−A’線断面図(端面図)である。
【0085】
図4(A)及び図4(B)によって総合的に示されるように、マイクロレンズアレイ94は、一辺の長さがD1である正方形状の多数のマイクロレンズ98がマトリクス状に稠密に配列されたものである。なお、マイクロレンズ98は、正の屈折力を有するレンズである。
【0086】
ここで、各マイクロレンズ98の光軸は互いにほぼ平行になっている。なお、図4においては、マイクロレンズ98が、7×7マトリクス状に配列されたものが、一例として示されている。
【0087】
こうしたマイクロレンズアレイ94は、平行平面ガラス板にエッチング処理を施すことにより作成される。マイクロレンズアレイ94は、リレーレンズ系93を介した後にハーフミラー960で反射された光を、入射したマイクロレンズ98ごとに、開口91aの像をそれぞれ異なる位置に結像する。
【0088】
図2に戻り、前記CCD951は、マイクロレンズアレイ94の各マイクロレンズ98によって開口91aに形成された後述するピンホールパターンを介した像が結像される結像面、開口91aの形成面の光学的な共役面に受光面を有している。すなわち、CCD951は、その受光面に結像されたピンホールパターンを介した多数の像を撮像する。この撮像結果は、撮像データIMD1として波面データ処理装置80に送信される。
【0089】
前記CCD952は、ハーフミラー960を透過した光を受光する受光面を有しており、その受光面に結像された像を撮像する。この受光面は、投影光学系の瞳面と共役な面となっている。この撮像結果は、撮像データIMD2として位置検出装置81に供給される。
【0090】
前記収納部材97は、その内部に、コリメータレンズ92、リレーレンズ系93、ハーフミラー960、マイクロレンズアレイ94、及びCCD951、952をそれぞれ支持する不図示の支持部材を有している。なお、ミラー96a,96bは、収納部材97の内面に取り付けられている。また、前記収納部材97の外形は、上述したウエハステージWSTのブラケット構造と嵌合する形状となっており、ウエハステージWSTに対して着脱自在となっている。
【0091】
前記波面データ処理装置80は、図5に示されるように、主制御装置30と記憶装置40とを備えている。主制御装置30は、(a)波面データ処理装置80の動作全体を制御するとともに、波面測定結果データWFAを主制御系20へ供給する制御装置39と、(b)波面センサ90からの撮像データIMD1を収集する撮像データ収集装置31と、(c)撮像データIMD1に基づいてスポット像の位置を検出する位置情報検出装置32と、(d)位置情報検出装置32により検出されたスポット像位置に基づいて、投影光学系PLの波面収差を算出する波面収差算出装置33とを含んでいる。
【0092】
また、上述の制御装置39と、撮像データ収集装置31と、位置情報検出装置32と、波面収差算出装置33とは、必要に応じて記憶装置40に格納されているデータを読み出したり、データを記憶装置40に格納したりすることができるようになっている。
【0093】
また、本実施形態では、波面データ処理装置80を上記のように、各種の装置を組み合わせて構成したが、波面データ処理装置80の少なくとも一部を計算機システムとして構成し、主制御装置30を構成する上記の各装置の少なくとも一部の機能を波面データ処理装置80に内蔵されたプログラムによって実現することも可能である。
【0094】
図6には、位置検出装置81の構成が示されている。図6に示されるように、位置検出装置81は、主制御装置50と、記憶装置61とを備えている。主制御装置50は、(a)位置検出装置81の動作全体を制御するとともに、抽出対象である光源像の中心位置や大きさ等を示す位置情報データPOSを、主制御系20や波面データ処理装置80へ供給する制御装置89と、(b)波面センサ90から撮像データIMD2を収集する撮像データ収集装置82と、(c)撮像データIMD2から光源像のデータを抽出するデータ抽出装置83と、(d)データ抽出装置83によって抽出された光源像のデータに基づいて、その光源像の位置を検出する検出装置84とを備えている。
【0095】
データ抽出装置83は、(a)撮像データIMD2全体の輝度値Iの頻度分布Hall(I)とともに、撮像データIMD2全体の輝度値Iの第1確率分布モデルである確率密度関数Pall(I)を作成するデータ分布作成装置51と、(b)撮像データIMD2全体の中で、光源像以外の部分である背景を示す部分であることが明らかな部分(後述する背景部A)の輝度値Iの頻度分布HA(I)に基づいて、背景の輝度値Iの正規分布NAを推定する正規分布推定装置52と、(c)背景の輝度値Iの正規分布NAの平均値μAを中心とする、ある範囲(μA−n≦I≦μA+n)に含まれる輝度値Iを有する画素の正規分布Nnの中から、正規分布推定装置52において推定された背景の輝度値Iの正規分布NAとのずれを示すカルバック・ライブラー情報量(以下、「KLI」と総称する)が最も小さい正規分布を求め、その正規分布が得られたときの範囲(μA−d≦I≦μA+d)を、背景の輝度値がとりうる範囲として決定する範囲決定装置53と、(d)背景部Aの輝度値Iの正規分布NAに基づいて推定される幾つかの確率密度関数Ps(I)の中から、範囲決定装置53において決定された背景の輝度値Iがとりうる範囲(μA−d≦I≦μA+d)内における確率密度関数Pall(I)とのずれを示すKLIが最も小さい第2確率分布モデルである確率密度関数(S=ScのときのPs(I))を求める処理を実行するモデル推定装置54と、(e)その確率密度関数(S=ScのときのPs(I))に基づいて作成される頻度分布Hs(I)に基づいて光源像とその背景との輝度の閾値Tを決定する閾値決定装置55と、(f)閾値決定装置55において決定された閾値Tに基づいて撮像データIMD2を二値化することによって光源像のデータを抽出する抽出装置56と、を備えている。
【0096】
検出装置84は、抽出装置56において作成された二値データに基づいて光源像の位置情報データPOSを算出する。
【0097】
また、上述の制御装置89と、撮像データ収集装置82と、データ抽出装置83の各装置51〜56と、検出装置84とは、必要に応じて記憶装置61に格納されているデータを読み出したり、データを記憶装置61に格納したりすることができるようになっている。
【0098】
また、本実施形態では、位置検出装置81を上記のように、各種の装置を組み合わせて構成したが、位置検出装置81の少なくとも一部を計算機システムとして構成し、主制御装置50を構成する上記の各装置の少なくとも一部の機能を位置検出装置81に内蔵されたプログラムによって実現することも可能である。
【0099】
以下、本実施形態の露光装置100による露光動作を、図7に示されるフローチャートに沿って、適宜他の図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、ウエハW上への1層目の露光がすでに終了しており、2層目以降の露光を行うものとして説明する。また、以下の動作の前提として、波面センサ90は、ウエハステージWSTに装着されており、波面データ処理装置80及び位置検出装置81と、主制御系20とが接続されているものとする(図1の端点c、d参照)。
【0100】
また、ウエハステージWSTに装着された波面センサ90の標示板91の開口91aとウエハステージWSTとの位置関係は、2次元位置マーク91bをアライメント検出系ASで観察することにより、正確に求められているものとする。すなわち、ウエハ干渉計18から出力される位置情報(速度情報)に基づいて、開口91aのXY位置を正確に検出することができ、かつ、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを移動制御することにより、開口91aを所望のXY位置に精度良く位置決めできるものとする。なお、本実施形態では、開口91aとウエハステージWSTとの位置関係は、アライメント検出系ASによる4つの2次元位置マーク91bの位置の検出結果に基づいて、特開昭61−44429号公報等に開示されている、いわゆるエンハンストグローバルアライメント(以下、「EGA」という)等と同様な統計的な手法を用いて正確に検出される。
【0101】
図7に示される処理では、まず、サブルーチン101において、投影光学系PLの波面収差が測定される。この波面収差の測定では、図8に示されるように、まず、ステップ111において、不図示のレチクルローダにより、図9に示される波面収差測定用の測定用レチクルRTがレチクルステージRSTにロードされる。測定用レチクルRTには、図9に示されるように、複数個(図9では、9個のピンホールパターンPHj(j=1〜9))のピンホールパターンPH1〜PHNがX軸方向及びY軸方向に沿ってマトリクス状に形成されている。なお、ピンホールパターンPH1〜PHNは、図9において点線で示されるスリット状の照明領域の大きさの領域内に形成されている。
【0102】
引き続き、ウエハステージWST上に配置された不図示の基準マーク板を使用した測定用レチクルRTの位置計測、例えば、レチクルアライメント検出系(不図示)による、投影光学系PLを介した測定用レチクルのレチクルアライメントマークと対応する基準マーク板との相対位置の検出、更にアライメント検出系ASを使用したベースラインの測定等が行われる。そして、収差測定が行われる最初のピンホールパターンPH1が投影光学系PLの光軸AX上に位置するように、レチクルステージRSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、レチクル干渉計16が検出したレチクルステージRSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してレチクルステージ駆動部を制御することにより行われる。
【0103】
図8に戻り、次に、ステップ112において、波面センサ90の標示板91の開口91aが、ピンホールパターンPH1の投影光学系PLに関する共役位置(ピンホールパターンPH1の場合には、光軸AX上)にウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、ウエハ干渉計18が検出したウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。この際、主制御系20は、多点フォーカス位置検出系(21,22)の検出結果に基づいて、ピンホールパターンPH1のピンホールを介した像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を一致させるべく、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。
【0104】
以上のようにして、最初のピンホールパターンPH1からの球面波に関する投影光学系PLの波面収差測定のための光学的な各装置の配置が終了する。こうした、光学的配置について、波面センサ90の光軸AX1及び投影光学系PLの光軸AXに沿って展開したものが、図10に示されている。
【0105】
こうした光学配置において、照明光学系12から照明光ILが射出されると、測定用レチクルRTの最初のピンホールパターンPH1に到達した光が、球面波となってピンホールパターンPH1から射出される。そして、その光は、投影光学系PLを介した後、波面センサ90の標示板91の開口91aに集光される。なお、最初のピンホールパターンPH1以外のピンホールパターンPH2〜PHNを通過した光は、開口91aには到達しないようになっている。こうして開口91aに集光された光の波面は、投影光学系PLの波面収差を含んだ略球面となる。
【0106】
開口91aを通過した光は、コリメータレンズ92により平行光に変換され、さらにリレーレンズ系93を介した後、ハーフミラー960に入射する。ハーフミラー960で反射された入射光の一部は、ミラー96bでさらに反射された後、マイクロレンズアレイ94に入射する。ここで、マイクロレンズアレイ94に入射する光の波面は、投影光学系PLの波面収差を反映したものとなっている。すなわち、投影光学系PLに波面収差が無い場合には、図10において点線で示されるように、その波面WFは光軸AX1と直交する平面となるが、投影光学系PLに波面収差が有る場合には、図10において二点鎖線で示されるように、その波面WF’は光軸AX1と直交する平面とはならず、その平面上の位置に応じた角度の傾きを有する面となる。
【0107】
マイクロレンズアレイ94は、マイクロレンズ98(図4参照)ごとに、開口91aの像を、標示板91の光学的な共役面すなわちCCD951の撮像面(受光面)に結像させる。マイクロレンズ98に入射した光の波面が光軸と直交する場合には、そのマイクロレンズ98の光軸とCCD951の撮像面の交点を中心とするスポット像が、CCD951の撮像面に結像される。しかし、マイクロレンズ98に入射した光の波面が傾いている場合には、その傾き量に応じた距離だけ、そのマイクロレンズ98の光軸と撮像面の交点からずれた点を中心とするスポット像がCCD951の撮像面に結像される。一方、ハーフミラー960を透過した光は、CCD952の撮像面に入射する。
【0108】
図8に戻り、次いで、ステップ113において、CCD951、952により、それら撮像面(受光面)に形成された像の撮像が行われる。CCD951の撮像により得られた撮像データIMD1は、波面データ処理装置80に送信される。波面データ処理装置80では、撮像データ収集装置31が撮像データIMD1を収集し、記憶装置40に撮像データIMD1を格納する。また、CCD952の撮像により得られた撮像データIMD2は、位置検出装置81に送信される。位置検出装置81では、撮像データ収集装置82が撮像データIMD2を収集し、撮像データIMD2を記憶装置61に格納する。
【0109】
次に、ステップ114において、撮像データIMD1に基づいて、各スポット像の位置情報が検出される。かかる位置情報の算出にあたり、波面データ処理装置80の位置情報検出装置32は、記憶装置40から、撮像データIMD1を読み出す。引き続き、位置情報検出装置32は、マイクロレンズアレイ94によりCCD951の撮像面に形成された各スポット像の光強度分布の重心を算出することにより、各スポット像の中心位置を算出する。位置情報検出装置32は、こうして求められた各スポット像の中心位置を、マイクロレンズアレイ94によりCCD951の撮像面に形成された各スポット像の位置情報として、記憶装置40に格納する。
【0110】
次いで、ステップ115において、位置検出装置81は、撮像データIMD2に基づいて光源像のデータ抽出および位置検出処理を実行する。図11、図12には、位置検出装置81において実行されるステップ115のデータ抽出および位置検出処理のサブルーチンを示すフローチャートが示されている。図11に示されるように、まず、ステップ121において、データ抽出装置83のデータ分布作成装置51は、記憶装置61に格納されている撮像データIMD2を読み出す。
【0111】
図13には、撮像データIMD2の一例が示されている。図13では、撮像データIMD2が、その画像イメージのまま、マトリクス状(正方形状)に示されている。図13に示されるように、この撮像データIMD2には、略中心部に点線で示される光源像Bが含まれており、光源像Bではそれ以外の背景の部分よりも輝度値が高くなっている。図13では、光源像Bは楕円状に示されているが、光源像Bとその背景の境界は実際には明確ではない。また、光源像Bの内部においても、その輝度は、均一でなく、ある程度の範囲に分布しており、前述のように2次光源がフライアイレンズ222による多数の点光源である場合には、図13に示されるように、蜂の巣のような形状となる。しかも、光源像Bの蜂の巣のような形状の部分の中には、その輝度値が、背景における輝度値よりも低くなっている部分が存在する場合もある。
【0112】
本実施形態では、この光源像Bを抽出対象とするが、前述のように光源像Bの輝度が均一でない場合、光源像Bに対応する画素を直接抽出するのは困難である。したがって、本実施形態では、この光源像Bよりも輝度が均一である背景(撮像データIMD2の中の光源像B以外の部分)を特定の被検出体として抽出することによって、結果的に、抽出対象である光源像Bのデータを抽出する。
【0113】
図11に戻り、ステップ123において、データ抽出装置83のデータ分布作成装置51は、撮像データIMD2全体の輝度値Iの頻度分布Hall(I)を作成する。図14には、頻度分布Hall(I)の一例が示されている。図14に示されるグラフでは、横軸が、輝度値Iを表し、縦軸がその輝度値Iに対応する撮像データIMD2の画素数を表している。データ分布作成装置51は、作成した頻度分布Hall(I)を、記憶装置61に格納する。
【0114】
次に、ステップ125において、図13に示されるような背景部Aを指定する。ここでは、撮像データIMD2の中から、背景であることが明らかな部分が背景部Aとして選択される。なお、この指定は、位置検出装置81に備えられたマンマシンインタフェースである入出力装置(不図示)による操作によって行われるようにすればよい。この場合、その入出力装置の表示装置に、図13に示されるような撮像データIMD2の画像が表示されると、オペレータは、その表示された画像を参照しながら、確実に光源像Bではないと思われる部分、例えば左上の部分を背景部Aとして、その入出力装置の入力インタフェースであるポインティングデバイスや入力キーなどを用いて指定する。この指定がオペレータの指示によって確定されると、その背景部Aの指定情報は、正規分布推定装置52に送信される。
【0115】
次に、ステップ127において、正規分布推定装置52は、背景部Aにおける輝度値Iの頻度分布HA(I)を作成する。そして、ステップ129において、正規分布推定装置52は、その頻度分布HAに基づいて背景の輝度の平均値μAおよび分散σA 2を算出し、背景部Aの正規分布NA(μA、σA 2)を推定する(第5工程)。以下の式(1)に正規分布NAを示す。
【0116】
【数1】
【0117】
正規分布推定装置52は、平均値μA等の正規分布NAに関する情報を、記憶装置61に格納する。
【0118】
次に、ステップ131において、範囲決定装置53は、内部に備えるカウンタnの値(以下、「カウンタ値n」と呼ぶ)を「1」に初期化する。
【0119】
次いで、ステップ133において、範囲決定装置53は、頻度分布Hall(I)と、前述の正規分布NAの平均値μAを記憶装置61から読み出し、頻度分布Hall(I)において、背景の輝度の平均値μAを中心とする±nの範囲内にある輝度値Iを有する画素についての平均値μnおよび分散σn 2を算出し、以下の式(2)に示す正規分布Nn(μn、σn 2)を推定する。
【0120】
【数2】
【0121】
次に、ステップ135において、範囲決定装置53は、正規分布NAと正規分布Nnとのモデルのずれを示すKLIを算出する。なお、「KLI」とは、ある分布モデルが、基準モデルから見てどれだけずれているかを示す情報量であり、この情報量が0に近ければ近いほどその分布モデルと基準モデルが似ていることになる。なお、分布モデルをq(x)とし、基準モデルをp(x)とすると、KLIは、以下の式(3)で表される。“E”は期待値を表す。
【0122】
【数3】
【0123】
ここでは、基準となるモデルが正規分布NAであり、比較される分布モデルが正規分布Nnであるので、上述の式(3)のp(x)にNAを代入し、q(x)にNnを代入すると、以下の式(4)のようになる。
【0124】
【数4】
【0125】
したがって、正規分布NAの平均値μA及び分散σA 2と、正規分布Nnの平均値μn及び分散σn 2とがわかれば、正規分布NAを基準モデルとし、正規分布Nnを比較モデルとするKLIを求めることができる。
【0126】
なお、ここで、カウンタ値n=1であるので、範囲決定装置53は、頻度分布Hallにおいて輝度値IがμA+1からμA−1の範囲内にある各画素についての輝度値Iの平均値μn及び分散σn 2を算出し、そのときの平均値μn及び分散σn 2を用いて式(4)を計算し、n=1のときのKLIを算出する。算出されたn=1のときのKLIは、記憶装置61に保持される。
【0127】
次に、ステップ137において、範囲決定装置53はカウンタ値nをインクリメントする(n←n+1)。そして、ステップ139において、nが設定値ncを越えたか否かが判断される。なお、この設定値ncとしては、μA−ncとμA−ncとで挟まれる範囲が、背景における輝度値Iがとりうる範囲より大きくなるように設定される必要がある。
【0128】
ここで、設定値ncが2より大きいとすると、その判断は否定され、処理はステップ133に戻る。ステップ133において、範囲決定装置53は、頻度分布Hall(I)において、輝度値がμA+2からμA−2の範囲内にある輝度値を有する画素についての輝度値の平均値μn及び分散σn 2を算出してn=2のときの正規分布Nnを推定し、ステップ135において、そのときの平均値μn及び分散σn 2を用いて式(4)を計算し、n=2のときのKLIを算出する。このとき算出されたn=2のときのKLIは、記憶装置61に格納される。
【0129】
そして、ステップ139において設定値ncを越えるまで、ステップ137→ステップ139→ステップ133→ステップ135の処理が繰り返し実行され、ステップ133において、範囲決定装置53は、カウンタ値nにおける平均値μn及び分散σn 2を算出してそれぞれのnについての正規分布Nnを推定し、ステップ135において、そのときの平均値μn及び分散σn 2を用いて式(4)を計算し、そのときのカウンタ値におけるKLIを算出し、それらを記憶装置61に格納する。図14に示されるように、n=4のときには、輝度値がμA+4からμA−4の範囲内にある輝度値を有する画素、すなわち、頻度分布Hall(I)のうち斜線で示される部分に含まれる画素だけが選択され、これらの画素の平均値μn及び分散σn 2が算出される。
【0130】
ステップ139において、カウンタ値nが設定値ncを越えていた場合、その判断は肯定され、処理はステップ141に進む。
【0131】
ステップ141において、範囲決定装置53は、これまでに算出した各カウンタ値1〜ncまでのそれぞれのKLIを記憶装置61から読み出し、それらの中でKLIが最小となるカウンタ値nの値をdとして求める。範囲決定装置53は、その値dを、背景の輝度の範囲を規定する値dとして決定する。範囲決定装置53は、この背景の輝度値の範囲を規定する値dを記憶装置61に格納する。なお、上述のステップ131〜ステップ139を第6工程とする。そのうち、ステップ131〜ステップ139を情報量算出工程とし、ステップ141を範囲決定工程とする。なお、範囲決定装置53は、上述の情報量算出工程を実行する情報量算出装置(不図示)と、上述の範囲決定工程を実行する決定装置(不図示)とを備えるような構成となっていても良い。
【0132】
以上述べたように、ステップ131〜ステップ141の処理において、範囲決定装置53は、背景部Aの輝度値Iの正規分布NAの平均値μAを中心とする、ある範囲n(nは自然数)に含まれる撮像データIMD2の輝度値Iの正規分布Nnの中から、背景部Aの輝度値の正規分布NAとのずれを示すカルバック・ライブラー情報量が最も小さい正規分布を求め、その正規分布が得られたときのカウンタ値nを撮像データIMD2に含まれる背景の輝度の範囲を規定する値dとして決定する。すなわち、ステップ131〜ステップ141の処理において、背景であることが明らかな部分である背景部Aの平均値μA及び分散σA 2に基づいて、撮像データIMD2に含まれる背景がとりうる輝度値の範囲を推定した。
【0133】
以下の処理では、撮像データIMD2に含まれる背景の輝度値Iの頻度分布Hsを推定する。この頻度分布Hsは、背景の一部である背景部Aの正規分布NA(μA、σA)を何倍か(ここではS倍とする)に拡大したものとして表すことができ、以下の式(5)のように表される。
【0134】
Hs=S×NA(μA、σA 2) …(5)
【0135】
NA(μA、σA 2)はすでに推定されているため、以下の処理でS(これを拡大倍率と呼ぶ)を推定すれば、撮像データIMD2に含まれる背景の頻度分布Hsを推定できたことになる。
【0136】
撮像データIMD2に含まれる背景の輝度値Iは、撮像データIMD2全体の輝度値Iの頻度分布Hall(I)において、平均値μAを中心とする、±dの範囲に存在すると考えられる。したがって、以下の処理では、平均値μAを中心とする±dの範囲において、頻度分布Hall(I)とのずれが最も小さいHsにおける拡大倍率Sの値を求める。
【0137】
また、以下の処理では、拡大倍率Sを求めるために、以下の式(6)、式(7)に示すように、撮像データIMD2全体の輝度値Iの頻度分布Hall(I)と、撮像データIMD2に含まれる背景の輝度値Iの頻度分布Hs(I)とを、撮像データIMD2全体の画素数Mで正規化して確率密度関数Pall(I)、Ps(I)に変換し、平均値μAを中心とする±dの範囲における確率密度関数Pall(I)、Ps(I)との間のモデルのずれが算出される。
【0138】
Pall(I)=Hall(I)/M …(6)
【0139】
Ps(I)=Hs(I)/M …(7)
【0140】
図12に進み、ステップ143において、データ分布作成装置51は、撮像データIMD2全体の頻度分布Hall(I)に対する確率密度関数Pall(I)を作成する(第1工程)。データ分布作成装置51は、作成した確率密度関数Pall(I)を記憶装置61に格納する。
【0141】
次に、ステップ145において、モデル推定装置54は、カウンタSの値(以下「カウンタ値S」と称す。)を「1」で初期化する。なお、ここでは、カウンタ値Sを「1」ではなく、撮像データIMD2全体の画素数M(M≫1)に初期化してもよく、その方が、後述するカウンタ値Sによって制御されるループ処理の繰り返し回数を少なくすることができ、結果的に全体の演算時間を短縮することができる。
【0142】
次いで、ステップ147において、モデル推定装置54は、背景部Aの輝度値Iの頻度分布HA(I)を、記憶装置61から読み出し、前述の式(5)に示すその頻度分布HA(I)のS倍の頻度分布Hs(I)を作成し、ステップ149において、式(7)を用いて確率密度関数Ps(I)を算出する。
【0143】
次いで、ステップ151において、モデル推定装置54は、以下の式(8)に示すように、確率密度関数Pall(I)と確率密度関数Ps(I)とのモデルのずれを示すKLIを求める。求められたKLIは、記憶装置61に格納される。
【0144】
【数5】
【0145】
次に、ステップ153においてカウンタ値Sがインクリメントされ(S←S+1)、ステップ155において、カウンタ値Sが設定値を越えたか否かが判断される。この設定値は、ステップ145において設定された初期値よりも大きい値であって、確率密度関数Pall(I)と確率密度関数Ps(I)とのモデルのずれが充分に大きくなるような値が設定される。
【0146】
ここでは、カウンタ値Sが設定値を越えていないものとして説明を進める。カウンタ値Sが設定値を越えていない場合には、ステップ155における判断は否定され、処理はステップ147に戻る。
【0147】
ステップ147では、モデル推定装置54は、背景部Aの頻度分布HA(I)を記憶装置61から読み出し、頻度分布HA(I)のS倍の頻度分布Hs(I)を作成し、ステップ149において、上述の式(7)を用いて確率密度関数Ps(I)を算出する。
【0148】
次いで、ステップ151において、モデル推定装置54は、上述の式(8)に示すように、確率密度関数Pall(I)(基準モデル)と確率密度関数Ps(I)(比較モデル)とのモデルのずれを示すKLIを求める。求められたKLIは記憶装置61に格納される。
【0149】
以降、ステップ155において、カウンタ値Sが設定値を越えるまで、ステップ153→ステップ155→ステップ147→ステップ149→ステップ151の処理が繰り返し実行される。ステップ151において、そのときのカウンタ値Sにおける確率密度関数Pall(I)と確率密度関数Ps(I)とのモデルのずれを示すKLIが算出され、算出されたKLIは、記憶装置61に格納される。ステップ155において、カウンタ値Sが設定値を越えると、その判断は肯定され、処理はステップ157に進む。
【0150】
ステップ157では、モデル推定装置54は、ステップ151で算出され記憶装置61に格納された全てのKLIを読み出し、その中から最小のKLIを求め、そのときのカウンタ値Sを拡大倍率Scとして決定する。なお、ステップ145〜ステップ157を第2工程とし、そのうち、ステップ145〜ステップ155を情報量算出工程とし、ステップ157を倍率決定工程とする。モデル推定装置54は、上述の情報量算出工程を実行する情報量算出装置(不図示)と、上述の倍率決定工程を実行する倍率決定装置(不図示)とを備えるような構成となっていても良い。
【0151】
次に、ステップ159において、閾値決定装置55は、以下の式(9)を計算して、撮像データIMD2に含まれる背景の輝度の頻度分布Hs(I)を作成する。
【0152】
Hs=Sc×NA(μA、σA 2) …(9)
【0153】
次に、ステップ161において、閾値決定装置55は、ステップ159において求められた頻度分布Hs(I)の頻度が1以下となる輝度を、光源像Bとその背景との輝度の閾値Tとして決定する(第3工程)。閾値決定装置55は、決定した閾値Tを記憶装置61に格納する。なお、頻度分布Hs(I)の形状から、その頻度が1以下となる輝度が2つ得られることが考えられるが、本実施形態では、撮像データIMD2の全体の頻度分布Hall(I)の分布状態に合わせて、その2つの輝度の少なくとも一方が閾値Tとして選択される。次に、ステップ163において、抽出装置56は、記憶装置61から閾値Tを読み出し、撮像データIMD2をその閾値Tと比較して二値データに変換する(第4工程)。これにより、光源像Bに対応する画素と、その背景に対応する画素とが、明確に区別される。その二値データは、記憶装置61に格納される。
【0154】
次に、ステップ165において、検出装置84は、上述のデータ抽出工程、すなわちステップ121〜ステップ163に示される工程によって抽出され、記憶装置61に格納されている二値データを用いて、光源像Bの中心位置や大きさなどの光源像Bの位置情報を検出する。
【0155】
検出された光源像Bの位置情報は、記憶装置61に格納される。そして、制御装置89は、記憶装置61から光源像Bの位置情報を読み出して、位置情報データPOSとして出力する。出力された位置情報データPOSは、主制御系20と波面データ処理装置80へ供給される。波面データ処理装置80へ供給された位置情報データPOSは、制御装置89を介して波面収差算出装置33に供給される。この後、処理は、図8のステップ116に移行する。
【0156】
図8に戻り、ステップ116において、波面データ処理装置80の波面収差算出装置33は、記憶装置40から、マイクロレンズアレイ94によりCCD951の撮像面に形成された各スポット像の位置情報を読み出して、測定用レチクルRTにおける最初のピンホールパターンPH1を介した光に関する投影光学系PLの波面収差を算出する。かかる波面収差の算出は、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置と、検出されたスポット像位置との差から、ツェルニケ多項式の係数を求めることにより行われる。本実施形態では、波面収差算出装置33は、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置と検出されたスポット像位置との差を求める際には、制御装置89から供給された位置情報データPOSに含まれる光源像Bの中心位置や大きさなどに基づいて、波面収差が無いときに期待される各スポット像位置(スポット像のずれ量を算出するための基準位置)を補正する。このようにすれば、波面センサ90に入射される光の光軸のずれに起因する、波面収差が無いときの各スポット像の基準位置の誤差をキャンセルすることができ、より高精度に波面収差を求めることができる。
【0157】
次に、ステップ117において、全てのピンホールパターンに関して投影光学系PLの波面収差を算出したか否かが判定される。この段階では、最初のピンホールパターンPH1についてのみ投影光学系PLの波面収差を測定しただけなので、否定的な判定がなされ、処理はステップ118に移行する。
【0158】
ステップ118では、波面センサ90の標示板91の開口91aが、次のピンホールパターンPH2の投影光学系PLに関する共役位置にウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、主制御系20が、ウエハ干渉計18によって検出されたウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。なお、このときも、主制御系20が、多点フォーカス位置検出系(21,22)の検出結果に基づいて、ピンホールパターンPH2を介した像が結像される像面に波面センサ90の標示板91の上面を一致させるべく、必要に応じて、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ軸方向に微少駆動する。
【0159】
そして、上記のピンホールパターンPH1の場合と同様にして、投影光学系PLの波面収差が測定される。そして、波面収差の測定結果は、ピンホールパターンPH2の位置とともに、記憶装置40に格納される。
【0160】
以後、上記と同様にして、全てのピンホールパターンに関する投影光学系PLの波面収差を順次測定され、開口パターンごとの測定結果が開口パターンの位置とともに、記憶装置40に格納される。こうして全てのピンホールパターンに関する投影光学系PLの波面収差が測定されると、ステップ117において肯定的な判定がなされる。そして、制御装置39は、記憶装置40から波面収差の測定結果を読み出し、その測定結果を波面測定結果データWFAとして主制御系20へ供給する。この後、処理は図7のステップ102に移行する。
【0161】
ステップ102では、主制御系20が、制御装置39から供給された波面測定結果データWFAに基づいて、投影光学系PLの波面収差の測定が許容値以下であるか否かを判定する。この判定が肯定的である場合には、処理はステップ104に移行する。一方、判定が否定的である場合には、処理はステップ103に移行する。この段階では、判定が否定的であり、処理がステップ103に移行したとして、以下の説明を行う。
【0162】
ステップ103では、主制御系20が、投影光学系PLの波面収差の測定結果に基づき、現在発生している波面収差を低減させるように、投影光学系PLの波面収差の調整を行う。かかる波面収差の調整は、主制御系20が、結像特性補正コントローラ251を介してレンズエレメントの移動制御を行うことや、場合によっては、人手により投影光学系PLのレンズエレメントのXY平面内での移動やレンズエレメントの交換を行うことによりなされる。
【0163】
引き続き、サブルーチン101において、調整された投影光学系PLに関する波面収差が上記と同様にして測定される。以後、ステップ102において肯定的な判断がなされるまで、投影光学系PLの波面収差の調整(ステップ103)と、波面収差の測定(ステップ101)が繰り返し実行される。そして、ステップ102において肯定的な判断がなされると、処理は、ステップ104に移行する。
【0164】
ステップ104では、波面センサ90をウエハステージWSTから取り外し、波面データ処理装置80や位置検出装置81と、主制御系20との接続を切断した後、主制御系20の制御のもとで、不図示のレチクルローダにより、転写したいパターンが形成されたレチクルRがレチクルステージRSTにロードされる。なお、このとき、測定用レチクルRTは、すでにレチクルステージRSTからアンロードされているものとする。また、不図示のウエハローダにより、露光対象であるウエハWがウエハステージWSTにロードされる。
【0165】
次に、ステップ105において、主制御系20の制御のもとで、露光準備用計測が行われる。すなわち、ウエハステージWST上に配置された不図示の基準マーク板を使用したレチクルアライメントや、更にアライメント検出系ASを使用したベースラインの測定等の準備作業が行われる。なお、ここでは、ウエハWに対する露光が2層目以降の露光であるので、既に形成されている回路パターンと重ね合わせ精度良く回路パターンを形成するために、アライメント検出系ASを使用した上述のEGA計測により、ウエハW上におけるショット領域の配列座標が高精度で検出される。
【0166】
次いで、ステップ106において、露光が行われる。この露光動作にあたって、まず、ウエハWのXY位置が、ウエハW上の最初のショット領域(ファースト・ショット)の露光のための走査開始位置(加速開始位置)となるように、ウエハステージWSTが移動される。この移動は、ウエハ干渉計18からの位置情報(速度情報)や、基準座標系と配列座標系との位置関係の検出結果等に基づき、主制御系20によりステージ制御系19及びウエハステージ駆動部24等を介して行われる。同時に、レチクルRのXY位置が、走査開始位置(加速開始位置)となるように、レチクルステージRSTが移動される。この移動は、主制御系20によりステージ制御系19及び不図示のレチクル駆動部等を介して行われる。
【0167】
そして、主制御系20からの指示に応じて、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを走査方向(互いに逆方向)に同期移動させつつ、レチクルRのパターンをウエハW上に転写する。なお、この同期移動中には、レチクル干渉計16によって検出されるレチクルステージRSTのXY位置の情報、多点フォーカス位置検出系(21,22)及びウエハ干渉計18によって検出されるウエハステージWSTのZ位置の情報、XY位置の情報に基づいて、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの相対位置関係が適切に保たれるよう、レチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置制御が行われる。
【0168】
こうして、最初のショット領域の露光が終了すると、次のショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)となるように、ウエハステージWSTが移動されるとともに、レチクルRのXY位置が、走査開始位置(加速開始位置)となるように、レチクルステージRSTが移動される。そして、当該ショット領域に関する走査露光が、上述の最初のショット領域と同様にして行われる。以後、同様にして各ショット領域について走査露光が行われ、露光が完了する。
【0169】
そして、ステップ107において、不図示のアンローダにより、露光が完了したウエハWがウエハホルダ25からアンロードされる。こうして、1枚のウエハWの露光処理が終了する。
【0170】
以上詳細に説明したように、本実施形態のデータ抽出装置83では、モデル推定装置54において、背景の輝度値Iの正規分布NAに基づいて推定される幾つかの確率密度関数Ps(I)の中から、撮像データIMD2全体の頻度分布Hall(I)に対応する確率分布関数Pall(I)とのモデルのずれを示すカルバック・ライブラー情報量が最も小さい確率密度関数(S=ScのときのPs(I))が求められる。そして、閾値決定装置55は、その確率密度関数に基づいて推定される背景の輝度値Iの頻度分布Hs(I)に基づいて、光源像Bとその背景との輝度値の閾値Tを決定し、抽出装置56が、その閾値Tを用いて撮像データIMD2を二値化して光源像Bを抽出する。
【0171】
この閾値Tは、モデルのずれを示すKLIによって推定された背景の輝度値Iの頻度分布Hs(I)に基づいて求められたもの、すなわち統計的手法を用いて求められたものであるため、背景の輝度値と、光源像Bとの輝度値との差が明確でなく、光源像Bの輝度値がある程度の範囲に分布しているような場合であっても、高精度に光源像Bの画素を抽出することができる。
【0172】
なお、本実施形態では、正規分布推定装置52において、撮像データIMD2の中から、背景の画素であることが明らかな部分、すなわち前述の背景部Aの各画素の輝度値を用いて、背景の輝度値Iの正規分布NAを精度良く推定することができる。
【0173】
また、本実施形態では、KLIのような統計的手法を用いて推定された背景の輝度の頻度分布Hs(I)において、その分布の頻度がほぼ0となる値が閾値Tとして設定されるため、背景である画素を余すことなく抽出することができる。
【0174】
また、本実施形態では、範囲決定装置53が、撮像データIMD2のうち、背景部Aの輝度値Iの正規分布NAの平均値μAを中心とする、カウンタ値nによって定まる範囲に含まれるデータの正規分布Nnを、カウンタ値nを1つずつ増やしながら作成していき、作成された正規分布Nnの中から、背景部Aの輝度値Iの正規分布NAとのずれが最も小さい正規分布Nnの範囲を求める。上述のような処理を実行することによって、背景の輝度値Iのとりうる範囲を精度良く求めることができるようになる。
【0175】
また、本実施形態の位置検出装置81によれば、データ抽出装置83において統計的手法を用いて精度良く抽出された、光源像Bとその背景との輝度値Iの閾値Tに基づいて作成された撮像データIMD2の二値データに基づいて、光源像Bの位置を検出することができるため、光源像Bの位置を高精度に検出することができる。
【0176】
また、本実施形態の露光装置100によれば、その露光装置100における投影光学系の波面収差を計測する場合には、測定用レチクルRTのピンホールパターンPHNに照明光ILを照射することによって形成される波面をマイクロレンズアレイ94によって分割し、マイクロレンズアレイ94のマイクロレンズ98毎に得られるスポット像と基準位置とのずれを検出し、例えばツェルニケの多項式等を用いて波面収差を求めている。
【0177】
ツェルニケの多項式を用いて波面収差を精度良く求めるためには、投影光学系PLの瞳位置や大きさに基づいて波面収差を求めるための基準位置のずれを補正することが必要となる。そこで、本実施形態では、前述のように、CCD952によって撮像された光源像Bを検出対象として、その光源像Bの位置を、位置検出装置81を用いて精度良く検出する。そして、検出された光源像Bの位置や大きさに基づいてそのずれが補正される。したがって、本実施形態では、波面収差を精度良く計測することができる。
【0178】
さらに、本実施形態では、この投影光学系PLの波面収差に基づいて、投影光学系PLの収差を調整し、十分に諸収差が低減された投影光学系PLによりレチクルRに形成された所定のパターンがウエハW表面に投影されるので、所定のパターンをウエハWに精度良く転写することができる。
【0179】
なお、上記実施形態では、測定用レチクルRTにおける開口パターンの数を9つとしたが、所望の波面収差の測定精度に応じて、数を増減することが可能である。また、マイクロレンズアレイ94におけるマイクロレンズ98の配列数や配列態様も、所望の波面収差の測定精度に応じて変更することが可能である。
【0180】
また、上記実施形態では、位置検出の対象像をスポット像としたが、他の形状のパターンの像であってもよい。
【0181】
また、上記実施形態では、投影光学系PLの波面収差測定及び波面収差調整を、露光装置が組み立てられた後の定期メンテナンス時等に行い、その後のウエハの露光に備える場合について説明したが、露光装置の製造における投影光学系PLの調整時に、上記の実施形態と同様にして、波面収差の調整を行ってもよい。なお、露光装置の製造時における投影光学系PLの調整にあたっては、上記の実施形態において行われる投影光学系PLを構成する一部のレンズエレメントの位置調整に加えて、他のレンズエレメントの位置調整、レンズエレメントの再加工、レンズエレメントの交換等を行うことが可能である。
【0182】
また、上記実施形態では、露光装置における投影光学系PLの波面収差の計測であったが、露光装置に限らず、他の種類の装置における結像光学系の諸収差の計測にも本発明を適用することができる。
【0183】
さらに、光学特性測定装置70は、光学系の収差測定以外の様々な光学系の光学特性の測定(例えば、反射鏡の形状等の様々な光学系の光学特性の計測)にも適用することができる。例えば、この光学特性測定装置70を用いて、照明σの計測も実行することができる。例えば、レチクルRをレチクルステージRSTに保持しない状態、あるいはレチクルステージRST上に照射される光を遮蔽しないガラスレチクルを保持した状態とし、前述のステップ112(図8参照)の動作と同様に、波面センサ90の標示板91の開口91aが光軸AX上に位置するように、ウエハステージWSTを移動させる。かかる移動は、前述と同様に、主制御系20が、ウエハ干渉計18によって検出されたウエハステージWSTの位置情報(速度情報)に基づいて、ステージ制御系19を介してウエハステージ駆動部24を制御することにより行われる。こうした光学配置において、照明系から射出された照明光ILが、投影光学系PLを介した後、波面センサ90の標示板91の開口91aに到達するようになる。
【0184】
開口91aを通過した光は、コリメータレンズ92により平行光に変換され、さらにリレーレンズ系93を介した後、ハーフミラー960に入射する。ハーフミラー960を透過した光は、CCD952に入射する。このとき、CCD952により、それら撮像面(受光面)に形成された光源像の撮像が行われる。
【0185】
その撮像データIMD2は、位置検出装置81に送信され、その後、前述のステップ121〜165(図11、図12参照)における動作を実行することによって、データ抽出装置83において光源像に対応する各画素が抽出され、検出装置84によって、その光源像の位置や大きさが検出される。その光源像の位置や大きさを示す位置情報データPOSは、位置検出装置81から主制御系20に送信される。
【0186】
照明σは、投影光学系PLにおける入射瞳面における光源像の大きさと、その入射瞳の大きさとの比で定義される。入射瞳の大きさが既知であり、投影光学系PLにおける入射瞳面の位置及びその入射瞳面の共役面である波面センサ90のCCD952の撮像面の位置が既知であり、投影光学系PLにおける入射瞳面における光源像に対するCCD952の撮像面における光源像の倍率も既知であるとすると、主制御系20において、位置情報データPOSに含まれる、CCD952によって撮像された光源像の大きさから照明σを求めることができる。
【0187】
すなわち、照明σを求める際にも、CCD952によって撮像された光源像を検出対象として、光源像の大きさを位置検出装置81において精度良く検出することができるため、高精度に照明σを計測することができる。
【0188】
また、測定用ウエハに光源像を転写する従来の照明σの計測にも、位置検出装置81を適用することができる。なお、この場合には、測定用ウエハに転写された光源像を撮像するアライメント検出系ASで撮像された撮像データを位置検出装置81に入力できるように、アライメント検出系ASと位置検出装置81とが接続されている必要がある。
【0189】
以下に、測定用ウエハに光源像を転写する場合の照明σの計測について説明する。まず、測定用ウエハに光源像を転写する。かかる転写を行う際には、まず、微小開口パターンが形成された測定用レチクルをレチクルステージRSTにロードするとともに、測定用ウエハをウエハステージWSTにロードする。引き続き、測定用レチクルの配置位置と測定用ウエハの配置位置との関係を、投影光学系PLに関する共役関係から所定量ずれた位置関係(投影光学系PLの瞳面と測定用ウエハの表面と互いに光学的共役位置となる位置関係)となるようにし、照明系により測定用レチクルを照明する。そして、測定用レチクルの微小開口パターンを通過し、投影光学系PLを介した後の光によって測定用ウエハの表面が露光され、その測定用ウエハ上に光源像が転写される。そして、光源像が転写された測定用ウエハを、ウエハステージWSTからアンロードし、不図示の現像装置により現像する。引き続き、現像された測定用ウエハを再びウエハステージWSTにロードする。
【0190】
次に、アライメント検出系ASの観察視野内に、測定用ウエハ上の光源像の形成領域が位置するように、ウエハステージWSTを移動させる。かかるウエハステージの移動は、主制御系20がウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを駆動することにより行われる。
【0191】
次いで、アライメント検出系ASにより、測定用ウエハの表面における光源像を含む領域が撮像される。その撮像データは、位置検出装置81に送信されることによって、位置検出装置81において前述のステップ121〜165(図11、図12参照)における動作が実行され、撮像データの中から転写された光源像に対応する各画素の抽出が実行される。
【0192】
以上述べたように、アライメント検出系ASによって撮像された測定用ウエハ上に形成された光源の転写像を検出対象としても、その転写像の位置や大きさを位置検出装置81によって精度良く検出することができるため、高精度に照明σを計測することができる。
【0193】
なお、照明σが測定される照明条件は、通常照明に限られるものではなく、輪帯照明や4極照明等でもよい。すなわち、照明光学系の瞳面上で照明光が分布する領域は、円形や楕円形等に限られるものではなく、輪帯、あるいは照明光学系の光軸からほぼ等距離に分布する複数の局所領域等であってもよい。
【0194】
また、位置検出装置81において検出された光源像の位置に基づいて、前述のビームマッチングユニットを用いて照明光ILの光軸を調整するようにしてもよい。このようにすれば、位置検出装置81において精度良く検出された光源像の位置に基づいて照明光ILの光軸を調整することができるため、高精度な露光を実現することができる。なお、上述の場合には、光源像が転写されたウエハを現像して得られるレジスト像を検出するものとしたが、ウエハに転写される光源像の潜像を検出してもよい。さらに、この潜像検出に用いる感光材料は、フォトレジストに限られるものではなく光磁気材料等でもよい。また、光源像の転写像の撮像はアライメント検出系ASでなく、光源像の転写像を観察することができる別の観察装置を用いてもよい。
【0195】
また、上記実施形態では、光源像に対応する画素を抽出するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ウエハ等の物体に対応する画素の抽出にも用いることが可能である。
【0196】
例えば、露光装置においては、露光に先立ってレチクルRとウエハWとの位置合わせ(アライメント)を高精度に行う必要がある。この高精度な位置合わせを行うためには、高精度にウエハWの位置検出を行うことが必要であり、このための様々な技術が提案されている。
【0197】
こうした位置検出方法では、ウエハWの移動を規定する基準座標系と、ウエハW上のショット領域の配列に関する配列座標系(ウエハ座標系)との位置関係の高精度な検出(詳細(ファイン)アライメント)を行うために、ウエハW内の数箇所に配設されているファインアライメントマーク(回路パターンとともに転写された詳細位置合わせマーク)を計測する。そして、最小二乗近似等で各ショット領域の配列座標を求めた後、露光に際しては、その演算結果を用い、ウエハステージWSTの精度に任せてステッピングを行うEGAが広く用いられている。
【0198】
かかるEGAのためには、ウエハW上の所定箇所に形成されたファインアライメントマークを高倍率で観測する必要があるが、高倍率で観測を行うには、観測視野が必然的に狭いものとなる。そこで、狭い観測視野で確実にファインアライメントマークを捉えるために、例えば、ファインアライメントに先立って、以下のような、基準座標系と配列座標系との位置関係の検出を行っている。
【0199】
まず、位置検出の対象物であるウエハWについて、そのウエハWの外縁形状を観測装置(不図示、プリアライメント検出系とも呼ばれる)によって観測する。そして、観測装置によって観測されたウエハW外縁のノッチやオリエンテーションフラットの位置やウエハW外縁の位置等に基づいて、所定の精度で、基準座標系と配列座標系との位置関係が検出される。この検出を「プリアライメント」という。
【0200】
上述したプリアライメントの方法では、前述のように、ウエハWの外縁の位置を少なくとも数箇所(ウエハは略円形なので、例えば3箇所)検出する必要がある。かかるウエハの外縁の位置検出に、上述の位置検出装置81と同様な位置検出装置を適用すれば、精度良くウエハWの外縁の位置を検出することができる。
【0201】
上述したように、露光工程の際に位置制御の制御対象となるウエハW等の物体の位置検出にも、位置検出装置81と同様の位置検出装置を用いて、それらの制御対象の位置を精度良く検出することができる。露光の際に、それらの物体の位置制御を行う位置制御装置である主制御系20では、精度良く検出された物体の位置に基づいて、物体を位置制御することができるため、結果的に高精度な露光を実現することができる。
【0202】
また、上記実施形態では、抽出対象を1つの光源像や1つの物体としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、抽出対象が複数あってもよい。また、被検出体が複数存在し、その中から少なくとも1つの被検出体を抽出対象として抽出する場合にも、本発明を適用することができる。なお、この場合、図11、図12に示すステップ125〜ステップ163に示されるようなデータ抽出工程を、抽出対象毎に実行するようにすればよい。また、複数の他の被検出体(背景)を抽出して、抽出対象である被検出体を抽出する際にも、背景ごとにステップ125〜ステップ163に示されるようなデータ抽出工程を実行すれば、その抽出対象を抽出することができる。
【0203】
また、上記実施形態では、モデルのずれを示す情報量として、カルバック・ライブラーの情報量を算出したが、モデルのずれを示す情報量であれば、シャノンの情報量や他の情報量であってもよい。また、モデルのずれを示す尺度として情報量基準AIC(赤池情報量基準)等を用いてもよい。
【0204】
また、上記実施形態では、検出データを、撮像装置によって得られた撮像データIMD2等としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検出対象が光源像である場合には、その光源像の光の強度を測定できるセンサによって測定され、その光源像が被検出体となっている検出データであればよく、検出対象が物体である場合には、その物体の形状を測定可能なセンサによって測定され、その物体が被検出体となっている検出データであればよい。
【0205】
また、上記実施形態では、オプティカルインテグレータとしてフライアイレンズ222が用いられるとしたが、その代わりに、マイクロフライアイレンズが用いられてもよい。この場合には、フライアイレンズ222を用いられたときよりも光源像の強度分布がより均一となるので、光源像に対応する各画素の抽出がより容易となる。また、オプティカルインテグレータとして内面反射型インテグレータ(ロッドインテグレータ等)を用いることもできるが、この場合には、光源像としてその虚像を検出することになる。
【0206】
また、上記実施形態の露光装置の光源6としては、F2レーザ光源、ArFエキシマレーザ光源、KrFエキシマレーザ光源などの紫外パルス光源に限らず、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプを用いることも可能である。また、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良い。
【0207】
また、上記実施形態では、走査型露光装置の場合を説明したが、本発明は、投影光学系を備える露光装置であれば、ステップ・アンド・リピート機、ステップ・アンド・スキャン機、ステップ・アンド・スティッチング機を問わず適用することができる。
【0208】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶標示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシーン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0209】
また、上記実施形態では、露光装置について説明したが、露光装置以外の装置、例えば顕微鏡等を使用した物体の観察装置、工場の組み立てライン、加工ライン、検査ラインにおける対象物のデータの抽出に用いることもできる。
【0210】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のデータ抽出方法及び装置によれば、統計的手法を用いて、抽出対象と他の被検出体とのデータの閾値を抽出することができるため、高精度に抽出対象のデータを抽出することができる。
【0211】
また、本発明の位置検出方法及び装置によれば、本発明のデータ抽出方法及び装置を用いて検出対象のデータを抽出することができるので、その抽出されたデータに基づいて高精度に検出対象の位置を検出することができる。
【0212】
また、本発明の露光装置によれば、本発明の位置検出装置を用いて、光源像や物体の位置を高精度に検出したうえで、それらの位置を調整したり、それらの位置に基づいて位置制御を行いながら露光を実行したりすることができるため、高精度な露光を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の波面センサの構成を概略的に示す図である。
【図3】図2の標示板の表面状態を説明するための図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、図2のマイクロレンズアレイの構造を示す図である。
【図5】波面データ処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図1の露光装置における露光動作の処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7の収差測定サブルーチンにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】測定用レチクルに形成された測定用パターンの例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態におけるスポット像の撮像時における光学配置を説明するための図である。
【図11】図8のデータ抽出および位置検出処理サブルーチンにおける処理を説明するためのフローチャート(その1)である。
【図12】図8のデータ抽出および位置検出処理サブルーチンにおける処理を説明するためのフローチャート(その2)である。
【図13】撮像データIMD2のイメージ図である。
【図14】頻度分布Hall(I)の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
20…主制御系(位置制御装置)、51…データ分布作成装置、52…正規分布推定装置、53…範囲決定装置、54…モデル推定装置、55…閾値決定装置、56…抽出装置、81…位置検出装置、83…データ抽出装置、84…検出装置、952…CCD、100…露光装置、AS…アライメント検出系、IMD2…撮像データ、PL…投影光学系、PH1〜PHN…ピンホールパターン。
Claims (24)
- 複数の被検出体の検出データが混在するデータの中から、少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出方法であって、
検出データ全体におけるデータの確率分布モデルである第1確率分布モデルを作成する第1工程と;
前記複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの正規分布に基づいて推定される幾つかの確率分布モデルの中から、所定範囲内における前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量が最も小さい確率分布モデルである第2確率分布モデルを求める処理を、少なくとも1つの特定の被検出体について実行する第2工程と;
前記第2確率分布モデルに基づいて推定される頻度分布に基づいて前記特定の被検出体と他の被検出体との検出データの閾値を決定する第3工程と;
前記閾値に基づいて前記特定の被検出体及び前記他の被検出体のいずれかの検出データを抽出する第4工程と;を含むデータ抽出方法。 - 前記特定の被検出体の検出データであることが明らかな幾つかの検出データの頻度分布に基づいて前記特定の被検出体の検出データの正規分布を推定する第5工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のデータ抽出方法。
- 前記第2工程は、
前記特定の被検出体の検出データの正規分布を、ある倍率で拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを作成する処理と、前記所定範囲内におけるその確率分布モデルと前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記倍率を変えながら繰り返し実行する情報量算出工程と;
該情報量算出工程で作成された確率分布モデルのうち、前記第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルを前記第2確率分布モデルとして求め、当該第2確率分布モデルが得られたときの倍率を前記特定の被検出体における正規分布の拡大倍率として決定する倍率決定工程と;を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ抽出方法。 - 前記第3工程では、前記倍率決定工程において決定された拡大倍率で前記特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大することによって得られる頻度分布に基づいて前記閾値を決定することを特徴とする請求項3に記載のデータ抽出方法。
- 前記第2工程における前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のデータ抽出方法。
- 前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布の中から、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量が最も小さい正規分布が得られたときの範囲を前記所定範囲として決定する第6工程と;をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のデータ抽出方法。
- 前記第6工程は、
前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布を推定する処理と、その正規分布と前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記範囲を変えながら繰り返し実行する情報量算出工程と;
該情報量算出工程において推定された正規分布のうち、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を前記所定範囲として決定する範囲決定工程と;を含むことを特徴とする請求項6に記載のデータ抽出方法。 - 前記第6工程における前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることを特徴とする請求項6又は7に記載のデータ抽出方法。
- 検出対象の位置を検出する位置検出方法であって、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のデータ抽出方法を用いて少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出工程と;
該データ抽出工程において抽出された検出データに基づいて、前記少なくとも1つの被検出体である検出対象の位置を検出する位置検出工程と;を含む位置検出方法。 - 複数の被検出体の検出データが混在するデータの中から、少なくとも1つの被検出体の検出データを抽出するデータ抽出装置であって、
検出データ全体におけるデータの確率分布モデルである第1確率分布モデルを作成するデータ分布作成装置と;
前記複数の被検出体のうちのいずれか1つの被検出体の検出データの正規分布に基づいて推定される幾つかの確率分布モデルの中から、所定範囲内における前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量が最も小さい確率分布モデルである第2確率分布モデルを求める処理を、少なくとも1つの特定の被検出体について実行するモデル推定装置と;
前記第2確率分布モデルに基づいて作成される頻度分布に基づいて前記特定の被検出体と他の被検出体との検出データの閾値を決定する閾値決定装置と;
前記閾値に基づいて前記特定の被検出体及び前記他の被検出体のいずれかの検出データを抽出する抽出装置と;を備えるデータ抽出装置。 - 前記特定の被検出体の検出データであることが明らかな幾つかの検出データの頻度分布に基づいて前記特定の被検出体の検出データの正規分布を推定する正規分布推定装置をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のデータ抽出装置。
- 前記モデル推定装置は、
前記特定の被検出体の検出データの正規分布を、ある倍率で拡大したときに得られる分布に基づく確率分布モデルを作成する処理と、前記所定範囲内におけるその確率分布モデルと前記第1確率分布モデルとのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記倍率を変えながら繰り返し実行する情報量算出装置と;
該情報量算出装置で作成された確率分布モデルのうち、前記第1確率分布モデルとのずれが最も小さい確率分布モデルを前記第2確率分布モデルとして求め、当該第2確率分布モデルが得られたときの倍率を前記特定の被検出体における正規分布の拡大倍率として決定する倍率決定装置と;を備えることを特徴とする請求項10又は11に記載のデータ抽出装置。 - 前記閾値決定装置は、前記倍率決定装置において決定された拡大倍率で前記特定の被検出体の検出データの正規分布を拡大することによって得られる頻度分布の頻度に基づいて前記閾値を決定することを特徴とする請求項12に記載のデータ抽出装置。
- 前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載のデータ抽出装置。
- 前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布の中から、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量が最も小さい正規分布が得られたときの範囲を前記所定範囲として決定する範囲決定装置をさらに備えることを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載のデータ抽出装置。
- 前記範囲決定装置は、
前記特定の被検出体の検出データの正規分布の平均値を中心とする、ある範囲に含まれる検出データの正規分布を推定する処理と、その正規分布と前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれを示す情報量を算出する処理とを、前記範囲を変えながら繰り返し実行する情報量算出装置と;
該情報量算出装置で推定された正規分布のうち、前記特定の被検出体の検出データの正規分布とのずれが最も小さい正規分布の範囲を前記所定範囲として決定する決定装置と;を備えることを特徴とする請求項15に記載のデータ抽出装置。 - 前記範囲決定装置における前記情報量はカルバック・ライブラーの情報量であることを特徴とする請求項15又は16に記載のデータ抽出装置。
- 検出対象の位置を検出する位置検出装置であって、
請求項10〜17のいずれか一項に記載のデータ抽出装置と;
該データ抽出装置において抽出された検出データに基づいて前記少なくとも1つの被検出体である検出対象の位置を検出する検出装置と;を備える位置検出装置。 - 露光光を物体に照射する露光装置であって、
前記露光光の光路上に配置された投影光学系と;
前記投影光学系を介して投影されたピンホールパターンを介した光源像を撮像する撮像装置と;
検出対象を前記撮像装置によって撮像された前記光源像とする請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置。 - 露光光を物体に照射する露光装置であって、
前記露光光の光路上に配置された投影光学系と;
前記投影光学系を介して投影された光源像を撮像する撮像装置と;
検出対象を前記撮像装置によって撮像された前記光源像とする請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置。 - 露光光を物体に照射する露光装置であって、
前記露光光の光路上に配置された投影光学系と;
前記物体上に転写された光源の転写像を撮像する撮像装置と;
検出対象を前記転写像とする請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置。 - 前記位置検出装置において検出された前記検出対象の位置に基づいて、前記投影光学系の光軸を調整する調整装置をさらに備えることを特徴とする請求項20又は21に記載の露光装置。
- 露光光を物体に照射する露光装置であって、
前記物体を含む領域中の複数の観測点における観測値を観測する観測装置と;
検出対象を前記物体とする、請求項18に記載の位置検出装置と;を備える露光装置。 - 前記位置検出装置によって検出された前記物体の位置に基づいて前記物体を位置制御する位置制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項23に記載の露光装置。
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