JP3904098B2 - 改変ザルコシンオキシダーゼおよびその用途 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、ザルコシンオキシダーゼ活性を有する蛋白質を蛋白工学的手法により改変することにより得られる、プロリンに対する反応性が改変前の野生型ザルコシンオキシダーゼに比して低下した改変ザルコシンオキシダーゼ、および該酵素の製造法およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ザルコシンオキシダーゼ(EC 1.5.3.1)は、臨床的に筋疾患、腎疾患の診断の指標となっている体液中のクレアチン、クレアチニンの測定用酵素として、他の酵素、例えばクレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼと共に使用されている。ザルコシンオキシダーゼはその基質であるザルコシンに水、酸素の存在下で作用して、グリシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素を生成する。
【0003】
このようなザルコシンオキシダーゼは、バチルス属(特開昭54-52789号公報)、コリネバクテリウム属(J. Biochem. 89, 599 (1981))、シリンドロカルボン属(特開昭56-92790号公報)、シュードモナス属(特開昭60-43379号公報)等の細菌が生産することが知られている。とりわけ、アースロバクター・エスピーTE1826(FERM P-10637)の生産するザルコシンオキシダーゼは、従来のザルコシンオキシダーゼよりも熱安定性に優れ、かつ、Km値の小さい実用的な酵素であることが既に知られている(特開平2-265478号公報)。
【0004】
本発明者らは、既に、アースロバクター・エスピーTE1826(FERM P-10637)より抽出した染色体DNAよりザルコシンオキシダーゼ遺伝子の単離に成功し、そのDNAの全構造を決定し(Journal of Fermentation and Bioengineering Vol.75 No.4 pp239-244 (1993))、該ザルコシンオキシダーゼを遺伝子工学的手法によって形質転換体に高生産させることに成功し、高純度なザルコシンオキシダーゼを安価に大量供給することを可能にしている(特開平6-113840号公報)。
【0005】
しかしながら、ザルコシンオキシダーゼはアミノ酸の1種であるプロリンにも低いレベルではあるが、反応性を示すことが知られている(例えば、特開平5-115281号公報)。しかし、プロリン、特にL−プロリンは生体を構成する蛋白質の1成分であり、体液中に存在する可能性があるため、体液中のクレアチン、クレアチニンの測定の際に正誤差を生じる原因となり得る。実際、大澤らはクレアチニン測定用試薬における問題点として、該試薬中に含まれるザルコシンオキシダーゼのプロリンに対する反応性を挙げている(例えば臨床科学、20,144-152(1991)、生物試料分析、17,332-337(1994)参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、野生型ザルコシンオキシダーゼのプロリンに対する反応性を低下させることが望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々検討した結果、ザルコシンオキシダーゼ活性を有する蛋白質を蛋白工学的手法により改変することで、プロリンに対する反応性が野生型ザルコシンオキシダーゼに比して低下した改変ザルコシンオキシダーゼを造成することが可能であることを見いだした。
【0008】
すなわち、本発明は、ザルコシンオキシダーゼ活性を有する蛋白質を構成するアミノ酸配列の少なくとも1個のアミノ酸を付加、欠失、挿入あるいは置換により変異させた蛋白質であって、プロリンに対する反応性が改変前の蛋白質に比して低下したものであることを特徴とする改変ザルコシンオキシダーゼである。
【0009】
また、本発明は配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列をコードする遺伝子を他のアミノ酸をコードする遺伝子にて置換した遺伝子を組み込んだ発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養し、該培養物からプロリンに対する反応性が改変前の蛋白質に比して低下した改変ザルコシンオキシダーゼを採取することを特徴とする改変ザルコシンオキシダーゼの製造法である。
【0010】
さらに、本発明は上記プロリンに対する反応性が改変前のタンパク質に比して低下した改変ザルコシンオキシダーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素検出試薬を含むクレアチン測定用試薬である。
【0011】
また、本発明は上記プロリンに対する反応性が改変前のタンパク質に比して低下した改変ザルコシンオキシダーゼ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素検出試薬を含むクレアチニン測定用試薬である。
【0012】
【発明の実施態様】
本発明の改変される前のザルコシンオキシダーゼとしては、特に限定されるものではないが、例えば、バチルス属由来のザルコシンオキシダーゼ、シュードモナス属由来のザルコシンオキシダーゼなどが挙げられる。
【0013】
本発明ではその1例として、アースロバクター・エスピーTE1826(FERM P-10637)のザルコシンオキシダーゼ(特開平2-265478号公報、特開平6-113840号公報、Journal of Fermentation and Bioengineering Vol.75 No.4 pp239-244 (1993) に記載)を用いた。
アースロバクター・エスピーTE1826由来のザルコシンオキシダーゼのアミノ酸配列を、配列表の配列番号1に示す。また、これらのアミノ酸配列をコードするDNA配列を、配列表の配列番号3に示す。
【0014】
本発明の改変ザルコシンオキシダーゼは、ザルコシンオキシダーゼ活性を有する蛋白質を構成するアミノ酸配列の少なくとも1個のアミノ酸を付加、欠失、挿入あるいは置換により変異させた蛋白質であって、プロリンに対する反応性が改変前の蛋白質に比して低下したものである。
プロリンに対する反応性とは、本来の基質であるザルコシンを基質とした際の酵素活性に対する、プロリンを基質とした酵素活性の割合として定義される。
本発明ではプロリンに対する反応性が改変前の蛋白質に比して低下したものであるが、その低下の程度は、約70%以下である。
【0015】
本発明の一実施態様としては、ザルコシンオキシダーゼ活性を有する蛋白質を構成するアミノ酸配列の少なくとも1個のアミノ酸が、他のアミノ酸に置換してなる改変ザルコシンオキシダーゼがある。
【0016】
さらに、本発明の一実施態様としては、配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列の第345番目のフェニルアラニンが、他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列(配列表、配列番号2)を有する蛋白質である。
【0017】
また、本発明の一実施態様としては、他のアミノ酸がアラニン、グリシン、バリンあるいはイソロイシンである改変ザルコシンオキシダーゼがある。
【0018】
さらに、具体的な実施態様としては下記理化学的性質を有する改変ザルコシンオキシダーゼがある。
作用:水および酸素の存在下にザルコシンに作用して、グリシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素を生成する。
至適pH:7.5〜8.5
至適温度:40〜50℃
安定pH:6.5〜9.0(25℃、24時間処理)
安定温度:50℃以下(pH7.5、10分間処理)
基質特異性:プロリンに対する反応性が、改変前のタンパク質に比べて、70%以下である。
分子量:約43KDa
アミノ酸配列:配列表の配列番号2に記載される。
【0019】
本発明の改変ザルコシンオキシダーゼは、以下に示す手順で製造することが可能である。
まず、ザルコシンオキシダーゼ活性を有する蛋白質を構成するアミノ酸配列を改変する方法としては、通常、行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、ザルコシンオキシダーゼ活性を有する蛋白質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変蛋白質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(TransformerTM ;Clonetech 製,EXOIII/Mung Bean Deletion Kit ;Stratagene製)などを使用するか、またはPCRの利用が挙げられる。
【0020】
作成された改変蛋白質の遺伝情報を有するDNAは、プラスミドと連結された状態にて宿主微生物中に移入され、改変蛋白質を生産する形質転換体となる。この際のプラスミドとしては、例えばエシェリヒア・コリーを宿主微生物とする場合には、pBluescript 、pUC18などが使用できる。また、他の細菌、例えばバチルス属細菌を宿主とする場合には、pUB110、pHY300PLKなどが使用できる。
宿主微生物としては、例えばエシェリヒア・コリー W3110,エシェリヒア・コリーC600,エシェリヒア・コリーJM109,エシェリヒア・コリー DH5αなどが利用できる。他の宿主微生物としては、バチルス属細菌やシュードモナス属細菌などが使用できる。
宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア属に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAの移入を行なう方法などを採用することができ、更にエレクトロポレーション法を用いても良い。
【0021】
こうして得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量の改変蛋白質を安定して生産し得る。形質転換体である宿主微生物の培養形態は宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、通常、多くの場合は液体培養で行うが、工業的には通気撹拌培養を行うのが有利である。培地の栄養源としては、微生物の培養に通常、用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えばグルコ−ス、シュークロース、ラクトース、マルトース、フラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
【0022】
培養温度は菌が発育し、改変蛋白質を生産する範囲で適宜変更し得るが、エシェリヒア・コリーの場合、好ましくは20〜42℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、改変蛋白質が最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を終了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地pHは菌が発育し、改変蛋白質を生産する範囲で適宜変更し得るが、特に好ましくはpH6.0〜9.0程度である。
【0023】
培養物中の改変蛋白質を生産する菌体を含む培養液を、そのまま採取し利用することもできるが、一般には常法に従って、改変蛋白質が培養液中に存在する場合は濾過、遠心分離などにより、改変蛋白質含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。改変蛋白質が菌体内に存在する場合には、得られた培養物から濾過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また必要に応じてEDTA等のキレート剤及びまたは界面活性剤を添加して改変蛋白質を可溶化し、水溶液として分離採取する。
【0024】
このようにして得られた改変蛋白質含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、更に硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、或いは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈澱法により沈澱せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。吸着剤或いはゲル濾過剤などによるゲル濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーにより、精製された改変ザルコシンオキシダーゼを得ることができる。
【0025】
本発明のクレアチン測定用試薬は、上記プロリンに対する反応性が改変前のタンパク質に比して低下した改変ザルコシンオキシダーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素検出試薬を含む。
また、本発明のクレアチニン測定用試薬は、上記プロリンに対する反応性が改変前のタンパク質に比して低下した改変ザルコシンオキシダーゼ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素検出試薬を含む。
クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼとしては、従来から公知のものを使用することができる。また、過酸化水素検出試薬とは、改変ザルコシンオキシダーゼにより生成した過酸化水素をペルオキシダーゼとともに測定する試薬であり、例え4−アミノアンチピリンとフェノール誘導体またはアニリン誘導体がある。本発明ではこれらの過酸化水素測定試薬に限定されない。
【0026】
これらの試薬を用いて、クレアチンまたはクレアチニンを測定する方法は、従来、公知の方法である。本発明の測定試薬では、改変ザルコシンオキシダーゼがプロリンに対する反応性が改変前の蛋白質に比して低下したものであることから、体液中のプロリンの影響を受けることなく、正確、かつ、簡単にこれらの成分を測定することが可能となる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例中、ザルコシンオキシダーゼ活性の測定は以下のように行なった。
すなわち、48mMトリス−HCl緩衝液(pH8.0) 、95mMザルコシン、0.47mM 4−アミノアンチピリン、2.0mMフェノール、0.045%トリトンX−100、4.5U/mlペルオキシダーゼ中で、酵素を37℃,10分反応させ、500nmにおける吸光度を測定する。酵素活性の1単位(U)は、この条件下で1分間当たり1マイクロモルの過酸化水素を生成する酵素量とした。また、L−プロリンに対する反応性は、上記組成中のザルコシンをL−プロリンに置き換えた際の活性の相対比として測定した。
【0028】
実施例1 ザルコシンオキシダーゼの改変
ザルコシンオキシダーゼの遺伝情報を有する組換え体プラスミド、pSAOEP3 をジャーナル・オブ・ファーメンテーション・アンド・バイオエンジニアリング(Journal of Fermentation and Bioengineering) Vol.75 No.4 pp239-244 (1993) に記載の方法に従い、以下のようにして調製した。
まず、アースロバクター・エスピーTE1826(FERM P-10637)の染色体DNAを次の方法で分離した。同菌株を100mlの2×YT培地(1.6%ポリペプトン、1%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム(pH7.2))で37℃一晩振盪培養後、遠心(8000rpm、10分) により集菌した。15mMクエン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウムを含んだ溶液で菌体を洗浄した後、20%シュークロース、1mMEDTA、50mMトリス塩酸(pH7.6) を含んだ溶液5mlに懸濁させ、0.5mlのリゾチーム溶液(100mg/ml)を加えて、37℃、30分間保温した。次いで11mlの1%ラウロイルサルコシン酸、0.1M EDTA(pH9.6) を含む溶液を加えた。
【0029】
この懸濁液に臭化エチジウム溶液を0.5%塩化セシウムを約100%加え、撹拌混合し、55,000rpm 、20時間の超遠心でDNAを分取した。分取したDNAは、10mMトリス塩酸(pH8.0) 、1mM EDTAを含んだ溶液(TE)で透析し、精製DNA標品とした。
【0030】
精製DNA標品1μgを制限酵素 Sau3AI (東洋紡製)で部分分解反応させ、2kbp以上の断片に分解した後、SalIII東洋紡製)で切断した、pUC18 0.5μg を用い、M.G.Loftusらの BACKFILLING法(Biotechniques Vol12,No.2(1992))に従い、T4−DNAリガーゼ(東洋紡製)1ユニットで16℃、12時間反応させ、DNAを連結した。連結したDNAは、Hanahan の方法により作成したエシェリヒア・コリーJM109 のコンピテントセルを用いて形質転換した。使用したDNA1μg 当たり約 1×106 個の形質転換体のコロニーが得られた。得られたコロニーは50μg/mlアンピシリン、0.5%ザルコシン、0.005%パラロースアニリンおよび0.025%ソディウムハイドロジェンサルファイト入りL培地(1%ポリペプトン,0.5%酵母エキス,0.5%塩化ナトリウム)で37℃、18時間培養し、赤色コロニーを指標にザルコシンオキシダーゼ遺伝子の入った組換えDNAをスクリーニングした。
【0031】
その結果、約1,000 個のコロニーのうち1株の割合で赤色を示すコロニーを得た。この中の1株が保有するプラスミドには約8.7kbpの挿入DNA断片が存在しており、このプラスミドをpSAO1 とした。次いでpSAO1 より挿入DNA断片を種々の制限酵素により切断してpUC18にサブクローニングし、約1.7kbpの挿入DNA断片を有するpSAOEP3 を得た。
【0032】
配列表の配列番号3にpSAOEP3 の挿入DNA断片のDNA配列を、配列表の配列番号1にpSAOEP3 の挿入DNA断片中にコードされているザルコシンオキシダーゼのアミノ酸配列をそれぞれ記載している。
該組換えプラスミドpSAOEP3 を基に、配列表の配列番号5のオリゴヌクレオチドとDNA中の塩基を変換するキットであるTransformerTM (Clonetech製)を用い、TransformerTM のプロトコールに従い、変異処理操作を行った。その結果、配列表の配列番号1記載の第345番目のフェニルアラニンがアラニンに置換された改変蛋白質 F345A(配列表の配列番号2記載)の遺伝情報を有するDNAを保持するプラスミドを作成した。
【0033】
該改変ザルコシンオキシダーゼの遺伝情報を有するDNAを種々の制限酵素で切断してサブクローンを調製し、常法に従い、シーケンシング・キット(SEQUENING PRO 7-deaza-dGTP kit、東洋紡製)を用いて塩基配列を決定し、改変されていることを確認した。
該改変ザルコシンオキシダーゼの遺伝情報を有するDNAを保持する組換え体プラスミドでエシェリヒアコリーJM109 のコンピテントセルを形質転換し、形質転換体をそれぞれ得た。
【0034】
実施例2 形質転換体の培養と改変蛋白質の精製
2×YT培地(1.6%ポリペプトン、1%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム(pH7.2))50mlを500mlフラスコに分注し、121℃、15分間オートクレーブを行い放冷後、別途無菌濾過した50mg/mlアンピシリン(ナカライテスク製)を0.1%添加した。この培地に上記と同一組成の培地で、予め37℃で18時間振盪培養した形質転換体の培養液1mlを接種し、37℃で通気撹拌培養した。
【0035】
培養液より改変蛋白質を、ジャーナル・オブ・ファーメンテーション・アンド・バイオエンジニアリング(Journal of Fermentation and Bioengineering) Vol.75 No.4 pp239-244 (1993) 記載のザルコシンオキシダーゼの精製法に従い、超音波破砕、除核酸処理、硫酸アンモニウム塩析、DEAE-Sephadex カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーの工程を順次、実施し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて単一のバンドを形成するまで精製した。
【0036】
実施例3 改変蛋白質の評価
精製された改変ザルコシンオキシダーゼと野生型ザルコシンオキシダーゼの、L−プロリンに対する反応性をザルコシンに対する反応性を比較した。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から明らかなように、改変ザルコシンオキシダーゼ F345AのL−プロリンに対する反応性は、野生型ザルコシンオキシダーゼのL−プロリンに対する反応性より低下していることを示している。また、ザルコシンに対する絶対的な反応性を表す比活性は、野生型ザルコシンオキシダーゼが約20U/mgであるのに対し、改変ザルコシンオキシダーゼ F345Aは約18U/gmgとほとんど遜色なかった。
すなわち、改変ザルコシンオキシダーゼは絶対的な酵素性能をほとんど損なうことなく、L−プロリンに対する反応性が野生型ザルコシンオキシダーゼより低下していることが明らかとなった。
なお、他の性質は野性型ザルコシンオキシダーゼとほぼ、同じ性質であった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によって、ザルコシンオキシダーゼ活性を有する蛋白質を蛋白工学的手法を用いて改変し、プロリンに対する反応性が低下した改変ザルコシンオキシダーゼを供給することが可能となった。本発明の改変ザルコシンオキシダーゼは、細菌の系での遺伝子操作技術による大量生産を実施することができる。また、本発明の改変ザルコシンオキシダーゼを臨床的に筋疾患、腎疾患の診断の指標となっている体液中のクレアチン、クレアチニンの測定用酵素として、プロリンの影響を受けることなく、検体中のクレアチン、クレアチニンの量を正確,迅速に測定するために使用することができる。
【0040】
【配列表】
【0041】
【0042】
【0043】
Claims (3)
- 下記理化学的性質を有する改変ザルコシンオキシダーゼ。
作用:水および酸素の存在下にザルコシンに作用して、グリシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素を生成する。
至適pH:7.5〜8.5
至適温度:40〜50℃
安定pH:6.5〜9.0(25℃、24時間処理)
安定温度:50℃以下(pH7.5、10分間処理)
基質特異性:プロリンに対する反応性が、改変前のタンパク質に比べて、70%以下である。
分子量:43KDa
アミノ酸配列:配列表の配列番号2に記載される。 - 請求項1に記載されるプロリンに対する反応性が改変前のタンパク質に比して低下した改変ザルコシンオキシダーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素検出試薬を含むクレアチン測定用試薬。
- 請求項1に記載されるプロリンに対する反応性が改変前のタンパク質に比して低下した改変ザルコシンオキシダーゼ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素検出試薬を含むクレアチニン測定用試薬。
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