JP3903164B2 - 体圧分散マット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用者の体圧を適宜分散することのできる寝具に適した体圧分散マットに関する。
【0002】
【従来の技術】
障害者あるいは重症患者が長期間病床にある場合、衣類・寝具によって圧迫を受ける部位に蓐瘡を生ずる可能性がある。この蓐瘡の発生を抑制するため、障害者あるいは患者は所定時間毎に寝返りをして左右の体位変換を行う一方、エアーマット等の身体にフィットする寝具を使用し体圧を適宜分散させている。また、腰痛等の理由で通常の布団に寝られない状態の人も同様で、仰向けあるいは横臥状態に関係なく体圧を分散させる必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エアーマット等の寝具は安定感に欠け、ベッドに上がる時あるいはベッドで起き上がる時柔らかすぎて力が入らなかったり、使用者の重心が局部的に集中し移動が不自由であるという問題や通気性が悪いという問題があった。
【0004】
また、事務用椅子にあっては、座面と当接する臀部に一様に体圧を分散させるのが理想的ではあるが、実際には局部的に集中し不均一な体圧分布となっており、使用者の疲労感が増大する一因となっている。
【0005】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、寝具としてあるいは椅子の座面に使用することにより使用者の体圧を適宜分散することができるとともに通気性、使用感及び運動性の向上した体圧分散マットを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、上層と下層の2層構造を有するクッション材と、該クッション材を被覆する表皮とからなる身体支持用マットと、該身体支持用マットの上に配置される局部支持用マットとを備え、上記身体支持用マットの上記上層及び下層を粘弾性マットとファイバーマットでそれぞれ形成し、上記上層の粘弾性マットに凹凸加工を施すことにより多数の矩形ブロックを形成し、凸部で身体を支持するとともに凸部間の凹部で熱及び湿気を拡散し、運動性を高め、かつ上記局部支持用マットを粘弾性ウレタンを表皮でサンドイッチすることにより形成するとともに凹凸加工を施すことにより多数の矩形ブロックを形成し、凸部で身体の一部を支持するとともに凸部間の凹部で熱及び湿気を拡散するようにした体圧分散マットである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、上記身体支持用マットの上記矩形ブロックの各々を約50mm×50mmのサイズに形成したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、上記ファイバーマットをポリエステル繊維製としたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、上記ファイバーマットの少なくとも一部に複数の円柱状エラストマあるいはゲルを所定間隔で配置したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、上記局部支持用マットの上記矩形ブロックの各々を約100mm×100mmのサイズに形成したことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、上記局部支持用マットを椅子の座面に使用したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、上記矩形ブロックの少なくとも一部に球状あるいは半球状ゲルを埋め込んだことを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、上記身体支持用マットと上記局部支持用マットとの間に第2の身体支持用マットを介装させ、該第2の身体支持用マットを粘弾性ウレタンを表皮でサンドイッチすることにより形成するとともに凹凸加工を施すことにより多数の矩形ブロックを形成し、凸部で身体の一部を支持するとともに凸部間の凹部で熱及び湿気を拡散するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、上記第2の身体支持用マットの上記矩形ブロックの各々を約50mm×50mmのサイズに形成したことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至図3は、本発明の第1実施形態にかかる体圧分散マットMを示しており、使用者の身体全体を支持する身体支持用マット2と、使用者の腰、ふくらはぎ、踵等の身体の一部を支持する局部支持用マット4とからなる。
【0017】
身体支持用マット2は寝具として一般的に使用される約900mm×2000mmのサイズを有する一方、局部支持用マット4は身体を局部的に支持するため、例えば900mm×350〜400mmのサイズに製作される。
【0018】
身体支持用マット2はクッション材を表皮で被覆しており、クッション材は、図4に示されるように、上層2aと下層2bからなる2層構造を有し、上層2aは粘弾性マットで下層2bはファイバーマットで形成されている。上層2aの粘弾性マットは凹凸加工を施すことにより形成された多数の矩形ブロックを有し、各ブロックは約50mm×50mmのサイズで上方に向かって丸みを帯びた凸部が形成され、この凸部で身体を支持するとともに、凸部と凸部の間の凹部で熱や湿気を拡散する。一方、表皮は3層構造のスペースファブリックス製で、通気性及びクッション性に優れている。
【0019】
ベース材の下層ファイバーマットはポリエステル繊維製で、通気性がよくて燃えにくく、たとえ燃えても毒性ガスの発生が全くなく、リサイクル性に優れている。このファイバーマットは特殊成形を施して波形形状を呈しており折曲自在であることから、身体支持用マット2を適宜折り曲げることにより容易に収納することができる。
【0020】
一方、局部支持用マット4は、粘弾性ウレタンを伸縮性の良い表皮でサンドイッチし、熱プレスで凹凸加工を施すことにより形成された多数の矩形ブロックを有し、各ブロックは約100mm×100mmのサイズで、図5に示されるように、上方及び下方に向かって丸みを帯びた凸部が形成されている。この局部支持用マット4は、腰、ふくらはぎ、踵等の下に敷くことにより部分的除圧をするためのもので、凸部で身体の一部を支持するとともに凹部の隙間で熱や湿気を拡散する。局部支持用マット4はまた、二つ折りあるいは三つ折りにして枕として使用することも可能で、多目的に使用することができる。
【0021】
図6は、ウレタン単体と粘弾性ウレタンを使用した局部支持用マット4の厚さが50mmの場合の温度による硬度変化を示すグラフである。
図6からわかるように、ウレタン単体では25%硬度が比較的高く、寝具あるいは椅子の座面材料として使用するのに好適とは言えないが、局部支持用マット4の場合、熱プレスで凹凸加工を施して形成された多数の矩形ブロックを介して身体と粘弾性ウレタンが局部接触することから寝具等の材料に適した硬度となる。また、室温が約26℃以下の場合、身体が接触している部位のウレタン温度は体温により上昇してマット全体としての硬度が下がっているが、身体と接触していない部位のウレタン温度は室温とほぼ同じであることから硬度が高く、使用者の体形に応じた体圧分散が達成されるとともに寝具あるいは椅子における使用者の安定感が向上する。
【0022】
ここで、局部支持用マット4と身体支持用マット2の各ブロックの各辺のサイズの比を約2:1としたが、ブロックのサイズ比は必ずしもこの値に限定されるものではなく、局部支持用マット4の各ブロックを身体支持用マット2の各ブロックより大きくすることにより所定の効果が得られる。
【0023】
上記構成の身体支持用マット2と局部支持用マット4からなる体圧分散マットMは、凸部による点接触支持なので、衣服との摩擦抵抗が低く、起き上がりあるいは体動を容易に行うことができる。また、体動に伴い、凸部支持点も移動するので、ソフトなマッサージ効果を提供する。
【0024】
なお、上記実施形態において、本発明にかかる体圧分散マットMを身体支持用マット2と局部支持用マット4とからなる構成としたが、身体支持用マット2のみを寝具として使用できるばかりでなく、局部支持用マット4を椅子の座面に取り付けることにより臀部に加わる荷重を一様に分散させることもできる。
【0025】
図7は、凹凸加工を施す前の身体支持用マットの変形例2Aを示しており、下層2のファイバーマット全体に所定間隔で多数の円形開口2c,…,2cを形成し、円形開口2c,…,2cの各々に円柱状ゲル2d,…,2dを注入してマット全体の除圧性能を高めている。なお、円柱状ゲル2d,…,2dをファイバーマット全体に設けず、ファイバーマットの少なくとも一部、例えば頭、腰、踵に位置する部分に配置することにより、上層2aの粘弾性マットで除圧できなかった荷重を分散するようにしてもよい。
【0026】
円柱状ゲル2d,…,2dとしては、ポリオレフィン樹脂を架橋させることにより形成し、例えば、6〜8のショア硬度(C形)、約10%の反撥弾性、1300%以上の伸びを有する超低硬度エラストマを採用するのが好ましい。
【0027】
図8は、凹凸加工を施す前の局部支持用マットの変形例4Aを示しており、二つの粘弾性ウレタンの一方に所定間隔で複数の貫通孔4a,…,4aを形成し、貫通孔4a,…,4aの各々に半球状ゲル4b,…,4bを挿入することにより除圧性能を高めている。
【0028】
なお、図8(a)は二つの粘弾性ウレタンを接合する前の状態を、図8(b)は二つの粘弾性ウレタンを表皮でサンドイッチした状態をそれぞれ示しており、図8(b)の状態の粘弾性ウレタンに凹凸加工を施すことにより、各ブロックに一つの半球状ゲル4bが埋め込まれる。
【0029】
また、半球状ゲル4b,…,4bをすべてのブロックに埋め込まず、局部支持用マット4Aの中央部等の特定領域にのみ埋め込む構成とすることもできる。
【0030】
さらに、ゲル形状は半球状に限定されるものではなく球状ゲルを使用することもできる。
【0031】
図9は、本発明の第2実施形態にかかる体圧分散マットM1を示している。この体圧分散マットM1は、図1乃至図3に示される構成において、身体支持用マット2(以下、第1の身体支持用マットと称する)と局部支持用マット4との間に第2の身体支持用マット6を介装させることにより体圧分散性をさらに向上させることができ、体位変換ができない重傷者に対し効果を発揮する。
【0032】
第2の身体支持用マット6は、第1の身体支持用マット2と同じサイズ(約900mm×2000mm)ではあるが、局部支持用マット4と同様、粘弾性ウレタンを伸縮性の良い表皮でサンドイッチし、熱プレスで凹凸加工を施すことにより形成された多数の矩形ブロックを有している。各ブロックは約50mm×50mmのサイズで、局部支持用マット4と同様、上方及び下方に向かって丸みを帯びた凸部が形成され、この凸部で身体を支持するとともに、凸部と凸部の間の凹部で熱や湿気を拡散する。
【0033】
なお、上記第2実施形態において、体圧分散マットM1を3層構造、すなわち、第1の身体支持用マット2と、第1の身体支持用マット2の上に配置される第2の身体支持用マット6と、第2の身体支持用マット6の上に配置される局部支持用マット4とを有する構成としたが、各マット2,4,6は単独で使用できるばかりでなく、二つのマットを適宜組み合わせて使用することもできる。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明のうちで請求項1に記載の発明によれば、身体支持用マットを構成するクッション材の上層及び下層を粘弾性マットとファイバーマットでそれぞれ形成し、上層の粘弾性マットに凹凸加工を施して多数の矩形ブロックを形成することにより凸部で身体を支持するとともに凸部間の凹部で熱及び湿気を拡散するようにしたので、使用者の体圧を適宜分散することができるとともに通気性、使用感及び運動性を向上させることができる。
また、身体支持用マットの上に配置される局部支持用マットを粘弾性ウレタンを表皮でサンドイッチして形成し、さらに凹凸加工を施すことにより多数の矩形ブロックを形成したので、凸部で身体の一部を支持するとともに凸部間の凹部で熱及び湿気を拡散することができる。したがって、使用者の身体の一部、例えば腰、ふくらはぎ、踵等の下に敷くことにより通気性が向上するとともに背筋がまっすぐに伸び、腰が楽になるという効果を奏する。
【0035】
また、請求項2に記載の発明によれば、矩形ブロックの各々を約50mm×50mmのサイズに形成したので、使用者の身体が多数のブロックと局部接触することとなり、温度が伝達されやすく、通気性が向上する。
【0036】
また、請求項3に記載の発明によれば、ファイバーマットをポリエステル繊維製としたので、通気性が向上するとともに燃えにくくリサイクル性に優れている。
【0037】
また、請求項4に記載の発明によれば、ファイバーマットの少なくとも一部に複数の円柱状エラストマあるいはゲルを所定間隔で配置したので、粘弾性マットで除圧できない荷重を分散することができる。
【0039】
また、請求項5に記載の発明によれば、局部支持用マットの矩形ブロックの各々を約100mm×100mmのサイズに形成したので、使用者の身体の一部が多数のブロックと局部接触することとなり、温度が伝達されやすく、通気性が向上する。
【0040】
また、請求項6に記載の発明によれば、局部支持用マットを椅子の座面に使用したので、臀部に加わる荷重を分散させることができ着座感が向上する。
【0041】
また、請求項7に記載の発明によれば、局部支持用マットの矩形ブロックの少なくとも一部に球状あるいは半球状ゲルを埋め込んだので、除圧性能を向上させることができる。
【0042】
また、請求項8に記載の発明によれば、身体支持用マットと局部支持用マットとの間に第2の身体支持用マットを介装させるようにしたので、体圧分散性をさらに向上させることができる。
【0043】
また、請求項9に記載の発明によれば、第2の身体支持用マットの矩形ブロックの各々を約50mm×50mmのサイズに形成したので、使用者の身体の一部が多数のブロックと局部接触することとなり、温度が伝達されやすく、通気性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態にかかる体圧分散マットの正面図である。
【図2】 図1の体圧分散マットの部分側面図である。
【図3】 図1の体圧分散マットの部分底面図である。
【図4】 図1の体圧分散マットを構成する身体支持用マットの部分斜視図である。
【図5】 図1の体圧分散マットを構成する局部支持用マットの部分斜視図である。
【図6】 ウレタン単体と図1の体圧分散マットに使用される粘弾性ウレタンマットの25%硬度と温度との関係を示すグラフである。
【図7】 身体支持用マットの変形例で凹凸加工を施す前の状態を示す部分断面図である。
【図8】 局部支持用マットの変形例で凹凸加工を施す前の状態を示しており、(a)は二つの粘弾性ウレタンを接合する前の状態を示す部分分解斜視図で、(b)は二つの粘弾性ウレタンを表皮でサンドイッチした状態を示す部分断面図である。
【図9】 本発明の第2実施形態にかかる体圧分散マットの部分側面図である。
【図10】 図9の体圧分散マットの部分底面図である。
【符号の説明】
2 身体支持用マット
2a 上層
4a 下層
4 局部支持用マット
6 第2の身体支持用マット
M,M1 体圧分散マット
Claims (9)
- 上層と下層の2層構造を有するクッション材と、該クッション材を被覆する表皮とからなる身体支持用マットと、該身体支持用マットの上に配置される局部支持用マットとを備え、上記身体支持用マットの上記上層及び下層を粘弾性マットとファイバーマットでそれぞれ形成し、上記上層の粘弾性マットに凹凸加工を施すことにより多数の矩形ブロックを形成し、凸部で身体を支持するとともに凸部間の凹部で熱及び湿気を拡散し、運動性を高め、かつ上記局部支持用マットを粘弾性ウレタンを表皮でサンドイッチすることにより形成するとともに凹凸加工を施すことにより多数の矩形ブロックを形成し、凸部で身体の一部を支持するとともに凸部間の凹部で熱及び湿気を拡散するようにした体圧分散マット。
- 上記身体支持用マットの上記矩形ブロックの各々を約50mm×50mmのサイズに形成した請求項1に記載の体圧分散マット。
- 上記ファイバーマットをポリエステル繊維製とした請求項1あるいは2に記載の体圧分散マット。
- 上記ファイバーマットの少なくとも一部に複数の円柱状エラストマあるいはゲルを所定間隔で配置した請求項1乃至3のいずれか1項に記載の体圧分散マット。
- 上記局部支持用マットの上記矩形ブロックの各々を約100mm×100mmのサイズに形成した請求項1乃至4のいずれか1項に記載の体圧分散マット。
- 上記局部支持用マットを椅子の座面に使用した請求項5に記載の体圧分散マット。
- 上記矩形ブロックの少なくとも一部に球状あるいは半球状ゲルを埋め込んだ請求項5あるいは6に記載の体圧分散マット。
- 上記身体支持用マットと上記局部支持用マットとの間に第2の身体支持用マットを介装させ、該第2の身体支持用マットを粘弾性ウレタンを表皮でサンドイッチすることにより形成するとともに凹凸加工を施すことにより多数の矩形ブロックを形成し、凸部で身体の一部を支持するとともに凸部間の凹部で熱及び湿気を拡散するようにした請求項5乃至7のいずれか1項に記載の体圧分散マット。
- 上記第2の身体支持用マットの上記矩形ブロックの各々を約50mm×50mmのサイズに形成した請求項8に記載の体圧分散マット。
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