JP3903016B2 - 手書き文字認識装置及び方法、並びにプログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タブレットなどのポインティングデバイスを用いて手書き入力した文字を認識するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
PDA(Personal Digital Assistants)は、携帯型の情報端末装置として、ビジネスマンなどの間で広く使われている。PDAは、手のひらサイズの小型のものであり、その大きさの制約から一般に、入出力デバイスとして平面型表示装置(液晶表示装置など)と透明のタブレットとを重ねて構成したタッチパネルを備えるものが多い。
【0003】
PDAにおける文字入力の方法として、ハードウェアキーボードやソフトウェアキーボードから入力するものもあるが、ペン操作でタブレット上に手書き入力し、手書き入力された文字を文字認識して入力するものが多い。手書き入力された文字の認識精度を低下させることなく、認識速度を向上させるための技術が、従来より数多く提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−162269号公報
【特許文献2】
特開平7−302305号公報
【0005】
上記した特許文献1、2の技術では、ユーザ毎に認識速度を調整することは考えられていなかった。これに対して、手書き文字入力に慣れていない者は、文字認識を行うまでの入力期間を長くとって、確実に文字を入力したいと考える。一方、手書き文字入力に慣れている者は、文字認識を行うまでの入力期間を短くして、素早く文字を入力したいと考える。このため、従来からの手書き文字認識において、ユーザが手書き文字入力に慣れている度合いに従って、文字認識を行うまでの入力時間をユーザが設定できるようにしたものがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、入力期間を長く設定した場合においては、手書き文字の認識の精度を高くすることはできる。しかしながら、「く」や「し」などといった一画だけで入力にも時間を必要としない単純な文字でも、設定した入力期間を経過するまでは文字認識結果を得ることができない。このため、必ずしも手書き文字認識に好適な入力環境を提供しているとは言えなかった。
【0007】
一方、入力期間を短く設定した場合においては、単純な文字の認識は高速に快適に行える。しかしながら、画数が多く入力に時間を要する文字では、文字を入力する途中で設定した時間が経過してしまう場合もある。例えば、ユーザが「ほ」という一文字を入力しようとしたのに、「しま」という二文字に認識されてしまうということなどである。このように文字認識を開始させるまでの入力期間を短く設定すると、手書き入力した文字が誤認識されてしまう場合が多くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、手書き入力された文字の認識速度を高めても、高い精度で文字認識を行うことができる手書き文字認識装置及び方法、並びに手書き文字認識のためのプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる手書き文字認識装置は、
文字を1ストロークずつ手書きで入力する手書き入力手段と、
前記手書き入力手段により手書き文字の1ストロークが入力される度に、該1ストロークの入力から予め設定された第1時間を経過するまでの時間を計時する第1の計時手段と、
前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時するまでに、前記手書き入力手段から入力された手書き文字のストロークを順次保存する文字ストローク保存手段と、
前記文字ストローク保存手段に新たなストロークが追加して保存される度に、当該時点で前記文字ストローク保存手段に保存された手書き文字のストロークを、辞書に登録された文字のパターンと照合することにより文字認識する文字認識手段と、
前記文字認識手段が新たに文字認識を行う度に、該認識した結果の文字を選択候補として順次追加して表示する文字表示手段と、
前記文字表示手段により追加して表示された選択候補の文字のうちから所望の文字をユーザに選択させる文字選択手段と、
前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時する前に前記文字選択手段により文字が選択されたときに、該選択された文字を最終認識結果として確定するとともに、前記文字選択手段により文字が選択されないまま前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時したときに、前記文字認識手段により最後に認識された文字を最終認識結果として確定する確定手段と、
前記文字表示手段により表示された選択候補の文字のうちから前記文字認識手段により最後に認識された文字以外の文字が選択されたときに、該選択された文字が認識された後に前記手書き入力手段から入力されたストロークを残して前記文字ストローク保存手段に保存されているストロークを消去するストローク消去手段と
を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の手書き文字認識装置では、ストロークの入力毎に第1時間の計時が新たに行われ、第1時間の経過を計時したときに、文字認識の結果が確定される。つまり、手書き文字の最後のストロークを入力してから第1時間を経過したときに、文字認識の結果が確定されるので、1ストローク目の入力から文字認識結果の確定までの時間は、ストローク数が少ない文字では短く、ストローク数が多い文字では長くなる。
【0011】
これにより、第1時間として比較的短い時間を設定して、ストローク数の少ない文字では速く文字認識の確定結果を得ることができる。一方、第1時間として比較的短い時間を設定しても、ストローク数の多い文字について全てのストロークを入力し終わる前に第1時間の経過が計時され、文字認識の結果が確定してしまうことがなく、ユーザが手書き入力した文字を正確に文字認識することができるようになる。
【0012】
上記手書き文字認識装置は、
ユーザの選択により前記第1時間を設定する第1時間設定手段をさらに備えるものとすることができる。
【0013】
上記手書き文字認識装置は、
前記手書き文字入力手段からの手書き文字のストロークの入力態様の履歴を記憶する履歴記憶手段と、
前記履歴記憶手段に記憶された入力態様の履歴に基づいて、前記第1時間の設定を変更する第1設定変更手段とをさらに備えるものとすることもできる。
ここで、前記手書き文字入力手段から手書き文字の1ストロークが入力された時間間隔を計測する時間間隔計測手段をさらに備える場合には、
前記手書き文字のストロークの入力態様は、前記時間間隔計測手段が計測した時間間隔とすることができる。
【0014】
このように第1時間の設定を変更できるようにすることで、ユーザ毎の手書き文字入力の習熟度に従って素早く文字認識結果を確定させることができる。また、手書き文字のストロークの入力態様の履歴により第1時間の設定を変更できるようにすることで、各ユーザが自分の手書き文字入力に対する習熟度を意識することなく、適切な時間設定を行うことができるようになる。
【0015】
上記手書き文字認識装置は、
前記手書き入力手段により前記手書き文字の最初の1ストローク目が入力されてから予め設定された第2時間が経過するまでの時間を計時する第2の計時手段をさらに備えるものとすることができる。この場合において、
前記第1の計時手段は、前記第2の計時手段が前記第2時間の経過を計時してから前記第1時間を経過するまでの時間と、前記第2時間を経過した以降に前記手書き入力手段により手書き文字の1ストロークが入力されてから前記第1時間を経過するまでの時間とを計時し、
前記文字認識手段は、前記第2の計時手段が前記第2時間の経過を計時した以降に、前記文字ストローク保存手段に保存された手書き文字のストロークを文字認識するものとすることができる。
【0016】
この場合、文字認識手段により最初に文字認識が行われるまでには、ある程度のストローク保存手段に保存されている場合が多くなる。これにより、文字認識手段がストローク保存手段に保存されたストロークを辞書と比較しても文字認識不能となってしまう場合が少なくて済むようになる。
【0017】
ここで、上記手書き文字認識装置は、
ユーザの選択により前記第2時間を設定する第2時間設定手段をさらに備えるものとすることができる。
【0018】
前記手書き文字入力手段からの手書き文字のストロークの入力態様の履歴を記憶する履歴記憶手段と、
前記履歴記憶手段に記憶された入力態様の履歴に基づいて、前記第2時間の設定を変更する第2設定変更手段とをさらに備えるものとすることもできる。
ここで、前記手書き文字入力手段により前記手書き文字の最初の1ストローク目が入力されてから前記確定手段により認識結果の文字が確定するまでの時間を計測する確定時間計測手段をさらに備える場合には、
前記手書き文字のストロークの入力態様は、前記確定時間計測手段が計測した確定までの時間とすることができる。
【0019】
上記のように第2時間についても設定を変更できるようにすることで、ユーザ毎の手書き文字入力の習熟度に従って素早く文字認識結果を確定させることができる。また、手書き文字のストロークの入力態様の履歴により第2時間の設定を変更できるようにすることで、各ユーザが自分の手書き文字入力に対する習熟度を意識することなく、適切な時間設定を行うことができるようになる。
【0022】
上記手書き文字認識装置において、
前記手書き入力手段により手書き文字を入力する文字入力領域は、複数あってもよい。この場合において上記手書き文字認識装置は、
前記手書き入力手段により新たに入力された手書き文字のストロークが異なる文字入力領域に入力されたかどうかを判定する領域判定手段をさらに備えるものとすることができ、
前記確定手段は、前記領域判定手段が異なる領域に入力されたと判定したときに、前記文字認識手段により最後に認識された文字を最終認識結果として確定することができる。
【0023】
この場合、ユーザは、異なる文字を入力しようとする場合には別の文字入力領域にストロークを入力すればよいので、ユーザが入力しようとした文字が認識されているのに関わらず新たなストロークまで認識対象とされてしまって、文字の誤認識が生じることを避けることができる。また、異なる文字を入力しようとする場合には、別の文字入力領域に入力することで第1時間の経過を待たずにそれまでの文字が確定されるので、手書き文字入力を高速に行えるようになる。
【0024】
上記手書き文字認識装置は、
前記文字認識手段により認識された文字に対して所定の操作を行うべきことを指示する文字操作指示手段をさらに備えるものとすることができる。この場合において、
前記確定手段は、前記文字操作指示手段により前記所定の操作が指示されたときに、前記文字認識手段により最後に認識された文字を最終認識結果として確定することができる。
【0025】
この場合には、第1時間の経過を計時していなくてもユーザが所定の操作を行うべきことを指示することで、文字認識手段により認識されていた文字が確定されるので、手書き文字入力を高速に行えるようになる。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる手書き文字認識方法は、
文字を1ストロークずつ手書きで入力するステップと、
手書き文字の1ストロークが入力される度に、該1ストロークの入力から予め設定された第1時間を経過するまでの時間を計時するステップと、
前記第1時間の経過を計時するまでに入力された手書き文字のストロークを保存手段に順次保存するステップと、
前記保存手段に新たなストロークが追加して保存される度に、当該時点で前記保存手段に保存された手書き文字のストロークを、辞書に登録された文字のパターンと照合することにより文字認識するステップと、
新たに文字認識を行う度に、該認識した結果の文字を選択候補として順次追加して表示するステップと、
前記表示された選択候補の文字のうちから所望の文字をユーザに選択させるステップと、
前記第1時間の経過を計時する前に前記選択候補の文字のうちから文字が選択されたときに、該選択された文字を最終認識結果として確定するとともに、前記選択候補の文字のうちから文字が選択されないまま前記第1時間の経過を計時したときに、最後に認識された文字を最終認識結果として確定するステップと、
前記選択候補の文字のうちから最後に認識された文字以外の文字が選択されたときに、該選択された文字が認識された後に入力されたストロークを残して前記保存手段に保存されているストロークを消去するステップと
を含むことを特徴とする。
【0027】
上記手書き文字認識方法は、
前記手書き文字の最初の1ストローク目が入力されてから予め設定された第2時間が経過するまでの時間を計時するステップをさらに含むものとすることができ、この場合において
前記第1時間は、前記第2時間を経過してから計時されると共に、前記第2時間を経過した以降に前記手書き文字の1ストロークが入力される度に計時されるものとすることができ、
前記第2時間の経過を計時した以降に、前記保存手段に保存された手書き文字のストロークを文字認識するものとすることができる。
【0028】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点にかかるプログラムは、
文字を1ストロークずつ手書きで入力する手書き入力手段、
前記手書き入力手段により手書き文字の1ストロークが入力される度に、該1ストロークの入力から予め設定された第1時間を経過するまでの時間を計時する第1の計時手段、
前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時するまでに、前記手書き入力手段から入力された手書き文字のストロークを順次保存する文字ストローク保存手段、
前記文字ストローク保存手段に新たなストロークが追加して保存される度に、当該時点で前記文字ストローク保存手段に保存された手書き文字のストロークを、辞書に登録された文字のパターンと照合することにより文字認識する文字認識手段、
前記文字認識手段が新たに文字認識を行う度に、該認識した結果の文字を選択候補として順次追加して表示する文字表示手段、
前記文字表示手段により表示された選択候補の文字のうちから所望の文字をユーザに選択させる文字選択手段、
前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時する前に前記文字選択手段により文字が選択されたときに、該選択された文字を最終認識結果として確定するとともに、前記文字選択手段により文字が選択されないまま前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時したときに、前記文字認識手段により最後に認識された文字を最終認識結果として確定する確定手段、及び、
前記文字表示手段により表示された選択候補の文字のうちから前記文字認識手段により最後に認識された文字以外の文字が選択されたときに、該選択された文字が認識された後に前記手書き入力手段から入力されたストロークを残して前記文字ストローク保存手段に保存されているストロークを消去するストローク消去手段
としてコンピュータ装置を機能させることを特徴とする。
【0029】
上記プログラムは、
前記手書き入力手段により前記手書き文字の最初の1ストローク目が入力されてから予め設定された第2時間が経過するまでの時間を計時する第2の計時手段としてさらに前記コンピュータ装置を機能させることができ、この場合、
前記第1の計時手段は、前記第2の計時手段が前記第2時間の経過を計時してから前記第1時間を経過するまでの時間と、前記第2時間を経過した以降に前記手書き入力手段により手書き文字の1ストロークが入力されてから前記第1時間を経過するまでの時間とを計時し、
前記文字認識手段は、前記第2の計時手段が前記第2時間の経過を計時した以降に、前記文字ストローク保存手段に保存された手書き文字のストロークを文字認識するものとすることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
図1は、この実施の形態に適用される情報端末装置の外観を示す図である。図1の情報端末装置1は、PDAを例とするもので、タッチパネル14を備えており、ここに情報が表示されると共に、ペン2による押圧操作で情報の入力を行う。タッチパネル14には、2つの文字入力領域14−1、14−2と、確定、変換などを指示するイベント入力領域14−3が設けられている。情報端末装置1は、汎用のものでも、特定業務に専用のものであってもよい。
【0032】
図2は、図1の情報端末装置1のブロック図である。図示するように、情報端末装置1は、CPU11(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、表示装置14a及びタブレット14bとから構成されるタッチパネル14と、外部I/F(InterFace)15とを備えており、これらは互いにバス10を介して接続されている。
【0033】
CPU11は、内部タイマを備え、ROM12に記憶された後述するフローチャートに示すプログラムなどを実行し、手書き文字認識を含む各種の処理を実行する。また、情報端末装置1の各部を制御する。ROM12は、後述する文字認識辞書などの固定的なデータやCPU11のプログラムを記憶する不揮発性のメモリである。RAM13は、CPU11がプログラムを実行する際のワークエリアなどとして使用される。
【0034】
タッチパネル14は、液晶表示装置や有機EL表示装置などの平面型の表示装置14aの上に透明のタブレット(ディジタイザ)14bが重ね合わされて構成される。表示装置14aは、CPU11による処理結果として、認識された文字などを表示する。表示画面の例については、後述する。タブレット14bは、ペン2で押圧された位置の軌跡(座標)をCPU11に入力するポインティングデバイスである。外部I/F15は、外部機器との間でデータをやりとりするためのデバイスである。
【0035】
なお、タブレット14bは、ペン2で押圧された場合以外であっても座標入力を行うものとなるが、ここでは必ずペン2で押圧されるものとする。また、ペン2による情報入力操作として、「タップ」とは、ペン2でタブレット14bを叩くことをいう。「ストローク」とは、ペン2をタブレット14bに押圧した状態で動かすことをいう。タブレット14bがペン2でタップされた場合、タップされた位置の座標が入力されることとなる。ストロークの場合には、その軌跡の座標が入力されることとなる。
【0036】
図3は、情報端末装置1の手書き文字認識機能を示す機能ブロック図である。図示するように、この情報端末装置1の手書き文字認識機能は、タッチパネル14を構成する表示装置14a及びタブレット14bの他に、文字認識辞書21と、軌跡バッファ22−1、22−2と、認識時間選択テーブル23tを含む認識時間設定部23と、文字認識部24と、認識バッファ25とから実現されている。
【0037】
文字認識辞書21は、文字認識の対象となる文字(この実施の形態では、ひらがなのみとする)のパターンを登録した辞書であり、ROM12に格納されている。軌跡バッファ22−1、22−2は、それぞれタブレットの文字入力領域14−1、14−2にストローク入力された軌跡を一時保存するバッファであり、RAM13に所定の領域が設けられている。ストロークの軌跡は、認識された文字が確定したときに消去される。
【0038】
認識時間設定部23は、ユーザの選択により文字認識部24が文字認識を行う時間を設定する。文字認識には、第1段階と第2段階とがあり、第1段階としてストローク入力が最初にあってからx時間を経過したときに軌跡バッファ22−1または22−2に保存されたストロークの軌跡について文字認識が開始され、第2段階に移る。第2段階に移り、y時間を経過するまでに新たなストローク入力がないと、認識結果が確定する。
【0039】
認識時間選択テーブル23tは、図4に示すように、x時間及びy時間の値を5段階で設定したテーブルであり、プロパティ画面などによりユーザが設定した段階に対応してx時間及びy時間が設定される。図4のx1〜x5、y1〜y5は、数百〜数千ミリ秒程度の時間であり、文字入力領域14−1、14−2の大きさや、CPU11の処理能力などに従って、設定1から設定5に行くに従って時間が長くなるように、それぞれ所定の時間が予め定められている。なお、ここではy時間が1ストロークの入力から計測される予め設定された第1時間ということであり、x時間が最初の1ストローク目が入力されてから計測される予め設定された第2時間ということになる。
【0040】
文字認識部24は、軌跡バッファ22−1または22−2に保存されたストロークの軌跡を、文字認識辞書21に登録された文字のパターンとパターンマッチングし、最もパターンがマッチする文字を選択して、その文字コードを認識バッファに保存する。この文字認識部24の機能を中心とした手書き文字認識のための機能は、CPU11がROM12に格納された手書き文字認識用のプログラムを実行することによって実現される。
【0041】
文字認識部24は、イベント入力領域14−3からの入力を監視しており、この入力があったときは、軌跡バッファ22−1または22−2に保存されたストロークの文字認識結果を確定させる。文字認識部24は、また、認識時間設定部23に設定された時間を監視しており、最初のストローク入力からx時間が経過すると文字認識を開始し、さらにy時間が経過したときに(さらにストローク入力があったときは、そこからy時間)、軌跡バッファ22−1または22−2に保存されたストロークの文字認識結果を確定させる。
【0042】
認識バッファ25は、文字認識部24により認識された(但し、確定していない)文字の文字コードを一時保存するバッファであり、RAM13に所定の領域が設けられている。認識バッファ25に一時保存された文字コードに対応した文字が、表示装置14aの所定のフィールドに表示される。認識結果が確定した文字の文字コードは、認識バッファ25とは別の記憶領域(図示せず)に保存される。
【0043】
なお、イベント入力領域14−3は、認識結果の文字をそのまま確定するか、さらに変換するかをユーザの選択により入力するための領域である。イベント入力領域14−3からの入力により、認識された文字をさらに漢字に変換することが指示されたときには、IMEの機能により漢字に変換される。もっとも、この点については本発明と関係がないので、詳細な説明を省略する。
【0044】
以下、この実施の形態に適用される情報端末装置1における手書き文字認識のための処理について説明する。この情報端末装置1において、手書き文字認識を行う前に、ユーザの選択により手書き文字認識を行うための時間(x時間及びy時間)の設定を行うことができる。もっとも、このような時間設定の処理を行わなくても、x時間及びy時間としてデフォルトの設定により手書き文字認識の処理が行われることとなる。
【0045】
x時間及びy時間の設定を変更する場合、ユーザは、ペンでタブレット14bの所定の領域をタップするなどして、プロパティ画面を開く。このプロパティ画面では、例えば1〜5の数字が表示され、そのうちの現在の設定が反転表示される。ユーザは、x時間及びy時間の設定を変更しようとする場合、タブレット14b上の変更しようとする数字上の位置をペンでタップする。すると、x時間及びy時間の設定が変更されると共に、変更後の設定値を示す数字が判定表示される。設定の変更を終了した後、所定の操作を行ってプロパティ画面を閉じてから、手書き文字認識を行わせることができる。
【0046】
図5は、情報端末装置1における手書き文字認識のための処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、情報端末装置1において手書き文字認識機能がONになっていて、文字入力領域14−1または14−2に何らかのストローク入力が検出されると起動する。この処理を行う前提として、認識時間設定部23のx時間及びy時間の設定は終了しているものとする。
【0047】
処理が開始すると、内部タイマにより0から計時を開始する(ステップS101)。次に、文字入力領域14−1または14−2のいずれかにストローク入力があったかどうかを判定する(ステップS102)。ストローク入力がなければ、ステップS104の処理に進む。文字入力領域14−1または14−2にストローク入力があった場合には、対応する軌跡バッファ22−1または22−2に当該ストロークの軌跡を保存する(ステップS103)。そして、ステップS104の処理に進む。
【0048】
ステップS104では、イベント入力領域14−3から文字の確定や漢字への変換などを指示する入力があったかどうかを判定する。イベント入力領域14−3からの入力がなければ、内部タイマが認識時間設定部23への設定に対応したx時間を計時したかどうかを判定する(ステップS105)。x時間を経過していなければ、ステップS102の処理に戻る。
【0049】
ステップS104においてイベント入力領域14−3からの入力があったと判定された場合には、文字認識部24は、軌跡バッファ22−1または22−2に保存されたストロークの軌跡を、文字認識辞書21に登録された文字のパターンとマッチングし、最もマッチする文字のコードを生成する(ステップS106)。文字認識部24は、生成した文字コードを認識バッファ25に保存し(ステップS107)、当該文字コードに対応した文字を表示装置14aに表示させる(ステップS108)。そして、ステップS121の処理に進む。
【0050】
また、ステップS105において、x時間を経過したと判定された場合には、内部タイマによる計時を新たに0から開始させる(ステップS109)。その後、文字認識部24は、軌跡バッファ22−1または22−2に保存されたストロークの軌跡を、文字認識辞書21に登録された文字のパターンとマッチングし、最もマッチする文字のコードを生成する(ステップS110)。文字認識部24は、生成した文字コードを認識バッファ25に保存し(ステップS111)、当該文字コードに対応した文字を表示装置14aに表示させる(ステップS112)。
【0051】
ステップS112で表示装置14aに文字が表示された後、さらにイベント入力領域14−3から文字の確定や漢字への変換などを指示する入力があったかどうかを判定する(ステップS113)。イベント入力領域14−3からの入力があれば、ステップS121の処理に進む。イベント入力領域14−3からの入力がなければ、内部タイマが認識時間設定部23への設定に対応したy時間を計時したかどうかを判定する(ステップS114)。y時間を計時していたら、ステップS121の処理に進む。
【0052】
y時間を計時していなければ、さらに文字入力領域14−1または14−2に、さらにストローク入力があったかどうかを判定する(ステップS115)。ストローク入力がなければ、ステップS113の処理に戻る。ストローク入力があった場合には、当該ストローク入力のあった文字入力領域が、これまでにストローク入力があったのと別の領域であるかどうかを判定する(ステップS116)。
【0053】
これまでにストローク入力があったのと同じ領域であれば、内部タイマによる計時を新たに0から開始させる(ステップS117)。なお、ストローク入力が継続している間は、何度も計時が0からやり直されるので、後述するようにステップS110に戻ってからy時間になったかどうかが判断される実質的な起点は、手書き文字中の1つのストロークについてストローク入力が終了したタイミングとなる。
【0054】
次に、ステップS112で表示装置14aに表示された文字を表示消去し(ステップS118)、認識バッファ25をクリアする(ステップS119)。さらに、新たなストローク入力を軌跡バッファ22−1または22−2に追加して保存する(ステップS120)。そして、ステップS120の処理に戻る。このとき、新たなストロークを含むストロークの軌跡が文字認識されることとなる。
【0055】
ステップS121では、ステップS106またはS110で文字認識され、ステップS107またはS111で認識バッファ25に文字コードが保存された文字を確定させる。文字が確定されると、認識バッファ25に保存されていた文字が別の領域に移されて保存されるとともに、認識バッファ25及びストローク入力がされた軌跡バッファ22−1または22−2がクリアされる。そして、このフローチャートの処理を終了する。
【0056】
なお、ステップS104またはS113でイベント入力領域14−3からの入力があった後にこのフローチャートの処理が終了した場合には、イベント入力領域14−3からの入力に基づく処理が行われるものとなる。例えば、イベント入力領域14−3から文字の確定が指示された場合は、認識された文字がさらに漢字に変換されることなく、そのまま確定される。漢字への変換が指示された場合には、IME機能が起動して、漢字への変換が行われることとなる。
【0057】
また、ステップS116においては、ステップS110で文字認識され、ステップS111で認識バッファ25に文字コードが保存された文字を確定させる。文字が確定されると、認識バッファ25に保存されていた文字が別の領域に移されて保存されるとともに、認識バッファ25及びストローク入力がされた軌跡バッファ22−1または22−2がクリアされる。そして、別の文字入力領域へのストローク入力に基づく処理が続けて開始されることとなる。
【0058】
以下、この実施の形態に適用される情報端末装置1において、ユーザが手書き入力した文字が認識され、確定されるまでの過程を具体例に基づいて説明する。図6、図7は、この実施の形態において、手書き文字が確定されるまでの過程を具体的に説明する図である。第1の例では「ほ」という一文字を、第2の例では「しま」という二文字を手書き入力する場合について説明する。
【0059】
図6に示す第1の例では、タイミングt0において文字入力領域14−1に「ほ」の文字の1ストローク目が手書き入力され、その軌跡が軌跡バッファ22−1に保存されたものとする。ここからx時間を経過したタイミングt1において軌跡バッファ22−1に保存されたストロークが文字認識され、中途の文字認識結果として「し」と表示装置14aに表示される。
【0060】
次に、タイミングt1からy時間を経過する前のタイミングt2において、文字入力領域14−1に「ほ」の文字の2ストローク目が手書き入力され、その軌跡が軌跡バッファ22−1に追加して保存されたものとする。ここで軌跡バッファ22−1に保存されているストロークが文字認識され、中途の文字認識結果として「じ」と表示装置14aに表示される。タイミングt2からy時間を経過する前のタイミングt3において文字入力領域14−1に「ほ」の文字の3ストローク目が手書き入力され、その軌跡が軌跡バッファ22−1に追加して保存されると、中途の文字認識結果として「に」と表示装置14aに表示される。
【0061】
さらに、タイミングt3からy時間を経過する前のタイミングt4において文字入力領域14−1に「ほ」の文字の4ストローク目が手書き入力され、その軌跡が軌跡バッファ22−1に追加して保存されると、中途の文字認識結果として「ほ」と表示装置14aに表示される。その後ストロークが入力されることなく、タイミングt4からy時間を経過したタイミングt5となると、タイミングt4において認識した文字「ほ」が確定される。
【0062】
図7に示す第2の例では、タイミングt0において文字入力領域14−1に「し」の文字のストロークが入力され、その軌跡が軌跡バッファ22−1に保存されたものとする。ここからx時間を経過したタイミングt1において軌跡バッファ22−1に保存されたストロークが文字認識され、中途の文字認識結果として「し」と表示装置14aに表示される。
【0063】
次に、タイミングt1からy時間を経過する前のタイミングt2において、別の文字入力領域14−2に「ま」の文字の1ストローク目が手書き入力されたとする。このとき、文字入力領域14−1からストローク入力され、その軌跡が軌跡バッファ22−1に保存されていた文字「し」が確定する。また、「ま」の文字の1ストローク目が軌跡バッファ22−2に保存される。
【0064】
タイミングt2からx時間を経過する前のタイミングt3において文字入力領域14−2「ま」の文字の2ストローク目が手書き入力され、その軌跡が軌跡バッファ22−2に追加して保存されたものとする。タイミングt2からx時間を経過したタイミングt3.5となると、軌跡バッファ22−2に保存されているストロークが文字認識され、文字認識の結果が確定した「し」に続けて、中途の文字認識結果として「こ」と表示装置14aに表示される。
【0065】
さらに、タイミングt3.5からy時間を経過する前のタイミングt4において文字入力領域14−2に「ま」の文字の3ストローク目が手書き入力され、その軌跡が軌跡バッファ22−2に追加して保存されると、文字認識の結果が確定した「し」に続けて、中途の文字認識結果として「ま」と表示装置14aに表示される。その後ストロークが入力されることなく、タイミングt4からy時間を経過したタイミングt5となると、タイミングt4において認識した文字「ま」も確定し、「しま」の二文字が文字認識結果として確定される。
【0066】
なお、図6、図7において確定するのは文字認識結果のみであり、表示装置14aに表示された「ほ」の文字や「しま」の文字がそのまま確定されるものではない。図6、図7のアンダーラインは、文字認識結果としては確定したが、文字そのものは確定していないことを示している。この状態でイベント入力領域14−3の「確定」をタップすると、そのまま「ほ」の文字や「しま」の文字がひらがなで確定する。イベント入力領域14−3の「変換」をタップすると、「ほ」や「しま」という読み仮名を有する漢字が変換候補として表示され、さらにイベント入力領域14−3の「確定」をタップすると、変換された漢字で確定する。
【0067】
以上説明したように、この実施の形態の情報端末装置1が有する文字認識機能では、文字入力領域14−1または14−2に手書き文字の1ストローク目が入力されてからx時間を経過した後は、次にy時間の計時が行われるが、y時間の経過を計時する前に新たなストローク入力があると、その時点でy時間の計時が0から新たに始められる。つまり、いずれの時点で計時開始したかに関わらず、y時間の経過を計時したときに、文字入力領域14−1または14−2から手書き入力された文字の認識結果が確定する。このため、1ストローク目の入力から文字認識の結果が最終的に確定するまでの時間は、ストローク数が少ない文字では短く、ストローク数が多い文字では長くなる。
【0068】
これにより、y時間として比較的短い時間を設定しておくことで、ストローク数の少ない文字では最終的な文字認識結果を素早く得ることができる。一方、y時間として比較的短い時間を設定しても、ストローク数の多い文字について全てのストロークを入力し終わる前にy時間の経過が計時され、文字認識の結果が確定しまうことがない。これにより、文字のストローク数に応じて手書き入力に要する時間を考慮して、高速に且つ正確に文字認識結果を得ることができるようになる。
【0069】
また、文字入力領域14−1または14−2に1ストローク目が入力されたときには、いきなりy時間の計時が開始されるのではなく、まずx時間の計時が行われる。文字入力領域14−1または14−2から入力され、軌跡バッファ22−1または22−2に保存されたストロークの文字認識を文字認識部24が開始するのは、最初のストローク入力からx時間を経過したときである。x時間の経過の際には、ある程度のストロークが軌跡バッファ22−1または22−2に保存されていることが考えられるので、文字認識部24が文字認識不能となってしまうことを少なくすることができる。
【0070】
さらに、x時間及びy時間の設定は、認識時間設定部23によりユーザが選択を行って変更することができる。これにより、ユーザ毎の手書き文字入力に対する習熟度に従って、素早く正確に文字認識結果を確定させることができるようになる。
【0071】
ところで、タブレット14b上には文字入力領域14−1、14−2だけでなく、イベント入力領域14−3が形成されているが、イベント入力領域14−3からの指示入力があると、その時点で文字認識部24による文字認識の結果が確定される。x時間の経過前にイベント入力領域14−3からの指示入力があると、文字認識部24により軌跡バッファ22−1または22−2に保存されたストロークが文字認識され、そのまま確定される。これにより、ユーザは自らの操作によって、x時間及びy時間の経過を待つことなく、素早く文字認識の結果を確定させることができる。
【0072】
さらに、タブレット14b上には2つの文字入力領域14−1、14−2が形成されており、別の文字入力領域14−2、14−1に新たなストロークが入力されると、それまでにストロークが入力されていた文字入力領域14−1、14−2に入力されたストロークに基づく文字認識結果が確定される。これにより、ユーザが異なる文字を入力しようとする場合には、新たな文字を入力する文字入力領域14−1、14−2を変えれば前の文字が確定されるので、y時間の経過を待たずに手書き文字入力を高速に行えるようになる。
【0073】
また、ユーザが異なる文字であることを意識して、前の文字とは別の文字入力領域14−1、14−2に入力したストロークは、前の文字のストロークとして認識対象とされることがない。このため、前の文字について中途経過として正しい文字認識結果が得られているのに、ユーザが続けて別の文字のストロークを入力したことによって、誤認識が生じてしまうことを避けることができる。
【0074】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形態様について説明する。
【0075】
上記の実施の形態では、表示装置14aの上に重ねられたタブレット14bに手書き文字を入力する場合を説明したが、表示装置とは全く別個に設けられたタブレットにペンで手書き文字を入力するものであってもよい。或いは、タブレット以外の入力デバイスであっても、手書き文字を入力できるもの(例えば、マウスのドラッグにより手書き文字を入力できるもの)であれば、本発明を適用することができる。
【0076】
上記の実施の形態では、ひらがなのみが手書き文字認識の対象となる文字として適用されていたが、アルファベット、カタカナ、数字、漢字なども手書き文字認識の対象となる文字として適用してもよい。漢字のように種類によって画数に大きな違いがあり、手書きに要する時間に差が生じやすい文字では、新たなストロークがある度に内部タイマによる計時が開始されるので、認識速度を速くしても精度の高い文字認識が行えるようになる。
【0077】
上記の実施の形態では、ユーザが手書き文字を1ストロークずつ入力していく度に文字認識が行われ、文字認識結果が順次変化して表示装置14aに表示されることとなっていた(但し、x時間を経過した後)。新たなストローク入力により新たに文字認識が行われると、それまでの文字認識結果は表示されなくなっていた。これに対して、中途の文字認識結果が得られる度に、候補として順次追加して表示していくものとしてもよい。ユーザは、表示された候補から自分が入力しようとした文字を選択することができる。ユーザの選択がなくy時間を経過した場合は、最終の候補を文字認識結果として確定すればよい。
【0078】
この場合、ユーザが文字入力領域14−1、14−2を変えずに別の文字のストロークをy時間以内で入力してしまった場合でも、候補から所望の文字を選ぶことによって、的確な文字認識結果を得ることができる。なお、最終の候補以外の候補がユーザによって選択された場合には、当該選択された候補を文字認識した以降に入力されたストロークは、次の文字のストロークとして扱って軌跡バッファ22−1または22−2に残しておくことも、候補の選択による文字の確定と同時に軌跡バッファ22−1または22−2から消去してしまうこともできる。
【0079】
上記の実施の形態では、文字認識領域14−1または14−2から文字のストロークが入力される度に、何らかの文字認識結果を得られることを前提として説明した。しかしながら、入力されたストロークの軌跡によっては、文字認識が不能となる場合もある。x時間及びy時間が経過した時点で入力されたストロークに基づく文字認識が不能であった場合には、そのことが分かる表示を表示装置14aに行って、軌跡バッファ22−1または22−2をクリアするものとしてもよい。或いは、複数ストロークが入力された場合において、途中から文字認識が不能となった場合には、最後に認識できた結果で確定させるものとしてもよい。
【0080】
上記の実施の形態では、手書き入力した文字の認識を行うための時間として、x時間とy時間とを計時していた。これに対して、図5のフローチャートは、最初のストローク入力により開始し、x時間を計時し始めるものであったが、y時間の計測もストロークの入力がされる度に新たに計測し始められる。そこで、手書き入力した文字の認識を行うための時間としては、y時間のみを計測するものとしてもよい。
【0081】
この場合において、図5のフローチャートの処理を開始したときに、内部タイマによる計時を開始すると共に、フローの開始のトリガとなったストロークを軌跡バッファ22−1または22−4に保存する。そして、ステップS110の処理に進むものとすればよい。また、ステップS104のように、手書き入力された文字の認識を行う前に、イベント入力部14−3からの入力があったかどうかを判定しなくてもよい。
【0082】
認識時間設定部23による時間の設定は、y時間のみができるものとしてもよい(x時間を計時する場合でも同じ)。x時間及びy時間の両方を計時する場合には、認識時間設定部23によりx時間のみを設定できるようにしてもよい。x時間および/またはy時間は、認識時間選択テーブル23tに登録されたものから選択して設定するだけでなく、任意の数値を入力して自由に設定できるものとしてもよい。
【0083】
さらに、x時間及びy時間は、ユーザが手書き文字を入力する態様に従って、適切な値に自動的に設定できるようにしてもよい。例えば、x時間については、1つの文字について最初のストローク入力があってから最終的に認識された文字が確定されるまでの時間を計測し、この時間の履歴をデータベースに保存しておく。そして、保存した最初のストローク入力から最終確定までの時間の履歴に基づいて、x時間の設定を変更することができる。
【0084】
また、y時間については、1つの文字についてストローク入力とストローク入力の間の時間を計測し、この時間の履歴をデータベースに保存しておく。そして、保存したストローク入力の間の履歴に基づいて、y時間の設定を変更することができる。このようにx時間及びy時間の設定をユーザの文字入力の態様に従って変更できるようにすることで、各ユーザが自分の手書き文字入力に対する習熟度を意識することなく、最も適切な時間に認識時間を設定することができる。
【0085】
或いは、ストローク入力の時間間隔や最初のストローク入力から確定までの時間の履歴に従ってx時間及びy時間の設定を変更するのではなく、1ストローク当たりの入力に要する時間の履歴をデータベースに保存しておき、この時間の履歴に従ってx時間及びy時間の設定を変更するものとしてもよい。ここで、ストロークの軌跡の長さに従って、1ストローク当たりの入力に要した時間を調整して、履歴としてデータベースに保存するものとしてもよい。また、この方法により設定を変更するのは、x時間とy時間の一方だけであってもよい。
【0086】
上記の実施の形態では、文字認識は、手書き文字の全てのストロークが入力し終わる前にも行われるが、x時間を経過した後は常に文字認識が行われる状態となっていた。この場合、x時間を経過した後には各ストロークの入力が完了していない状態で文字認識が行われる場合が多くなり、途中経過における文字認識が不能となる場合が多くなると考えられる。そこで、次のような手法をとることによって、このような不都合をかなりの程度で回避することが可能となる。
【0087】
図8は、手書き文字認識のための処理の変形例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで適用される処理におけるx時間及びy時間は、上記の実施の形態とは異なる時間に設定されるものであってもよい。ここでは、(x+y)時間が1ストロークの入力から計測される予め設定された第1時間ということになる。最初の1ストローク目が入力されてから計測される第2時間という概念はない。
【0088】
処理が開始すると、文字入力領域14−1または14−2のいずれかにストローク入力があったかどうかを判定する(ステップS201)。ストローク入力がなければ、ステップS204の処理に進む。ストローク入力があった場合には、内部タイマにより0から計時を開始してから(ステップS202)、対応する軌跡バッファ22−1または22−2に当該ストロークの軌跡を(後述するように、ステップS218から戻る場合は追加して)保存する(ステップS203)。そして、ステップS204の処理に進む。
【0089】
ステップS204では、イベント入力領域14−3から文字の確定や漢字への変換などを指示する入力があったかどうかを判定する。イベント入力領域14−3からの入力があった場合の処理は、上記の実施の形態と同じである。イベント入力領域14−3からの入力がなければ、内部タイマが認識時間設定部23への設定に対応したx時間を計時したかどうかを判定する(ステップS205)。x時間を経過していなければ、ステップS201の処理に戻る。
【0090】
x時間を経過したと判定された場合には、内部タイマによる計時を新たに0から開始させる(ステップS209)。その後、文字認識部24は、軌跡バッファ22−1または22−2に保存されたストロークの軌跡を文字認識し、対応する文字コードを生成する(ステップS210)。文字認識部24は、生成した文字コードを認識バッファ25に保存する(ステップS211)。次に、後述するステップS219でストローク入力が続いていることを示すフラグがTrueにセットされたかどうかを判定する(ステップS212)。
【0091】
フラグがTrueにセットされていなければ、ステップS214の処理に進む。フラグがTrueにセットされていれば、表示装置14aに表示されている文字を表示消去してから(ステップS213)、ステップS214の処理に進む。ステップS214では、ステップS211で認識バッファ25に保存された文字コードに対応した文字を表示装置14aに表示させる(ステップS215)。
【0092】
次に、イベント入力領域14−3から文字の確定や漢字への変換などを指示する入力があったかどうかを判定する(ステップS215)。イベント入力領域14−3からの入力があれば、ステップS220(ステップS121と同じ)の処理に進む。イベント入力領域14−3からの入力がなければ、内部タイマが認識時間設定部23への設定に対応したy時間を計時したかどうかを判定する(ステップS216)。y時間を計時していたら、ステップS220の処理に進む。
【0093】
y時間を計時していなければ、さらに文字入力領域14−1または14−2に、さらにストローク入力があったかどうかを判定する(ステップS217)。ストローク入力がなければ、ステップS215の処理に戻る。ストローク入力があった場合には、当該ストローク入力のあった文字入力領域が、これまでにストローク入力があったのと別の領域であるかどうかを判定する(ステップS218)。別の領域であれば、ステップS221の処理(ステップS122と同じ)を実行し、別の文字入力領域へのストローク入力に基づく処理が続けて開始されることとなる。
【0094】
同じ領域であれば、フラグをTrueにセットしてから(ステップS219)、ステップS201の処理に戻り、新たに追加されたストローク入力に基づいて同様の処理を繰り返して行うものとなる。なお、図8の手法において、x時間及びy時間は、いずれもストローク入力とストローク入力の間の時間の履歴か、1ストローク当たりの入力に要する時間の履歴に従って、設定を変更するものとすることができる。
【0095】
上記の実施の形態では、タブレット14aに2つの文字入力領域14−1、14−2が設けられていたが、3つ以上の文字入力領域を有するものであっても、上記と同じように手書き文字認識を実行することができる。また、文字入力領域が1つしかないもの(タブレットPCのように特に領域を定めていない場合を含む)であっても、ステップS115で新たなストローク入力があったと判定された場合にそのままステップS117の処理に進むものとすれば、上記と同様に2種類の時間判定を行うものとした手書き文字認識を適用することができる。この場合、文字認識のみの確定を何らかの入力によって指示できるようにしてもよい。
【0096】
上記の実施の形態では、手書き入力したひらがなを漢字に変換する場合、まず、ひらがなを完全に確定してからIMEによる漢字変換を行うものとしていた。上記の実施の形態によれば、手書き入力したひらがなの認識精度は高くなるが、100%誤認識をなくせるという訳でもない。そこで、誤認識しやすい文字同士を予め登録しておき、誤認識を想定してIMEの変換候補として挙げる漢字を選択するものとしてもよい。これにより、手書き入力されたひらがなの認識精度が完全でないことを補うことができる。
【0097】
上記の実施の形態では、手書き文字認識を行うためのプログラム及びデータは、ROM12に予め記憶されているものとして説明した。しかしながら、このプログラム及びデータをCD−ROMやDVD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して、ハードウェアとは独立して配布するものとしてもよい。情報端末装置1に着脱可能なメモリカードに格納して提供してもよい。また、これらの処理プログラムをインターネット上のWebサーバ装置が有する固定ディスク装置に格納しておき、インターネットを通じて配信するものとしてもよい。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、手書き入力された文字の認識速度を高めても、高い精度で文字認識を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に適用される情報端末装置の外観を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に適用される情報端末装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる手書き文字認識機能の機能ブロック図である。
【図4】図3の認識時間設定部に置かれる認識時間選択テーブルを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における手書き文字認識のための処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態において、手書き文字が確定されるまでの過程の第1の例を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態において、手書き文字が確定されるまでの過程の第2の例を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態における手書き文字認識のための処理の変形例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 情報端末装置
2 ペン
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14a 表示装置
14b タブレット
14 タッチパネル
14−1、14−2 文字入力領域
14−3 イベント入力領域
15 外部I/F
21 文字認識辞書
22−1、22−2 軌跡バッファ
23 認識時間設定部
23t 認識時間選択テーブル
24 文字認識部
25 認識バッファ
Claims (10)
- 文字を1ストロークずつ手書きで入力する手書き入力手段と、
前記手書き入力手段により手書き文字の1ストロークが入力される度に、該1ストロークの入力から予め設定された第1時間を経過するまでの時間を計時する第1の計時手段と、
前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時するまでに、前記手書き入力手段から入力された手書き文字のストロークを順次保存する文字ストローク保存手段と、
前記文字ストローク保存手段に新たなストロークが追加して保存される度に、当該時点で前記文字ストローク保存手段に保存された手書き文字のストロークを、辞書に登録された文字のパターンと照合することにより文字認識する文字認識手段と、
前記文字認識手段が新たに文字認識を行う度に、該認識した結果の文字を選択候補として順次追加して表示する文字表示手段と、
前記文字表示手段により表示された選択候補の文字のうちから所望の文字をユーザに選択させる文字選択手段と、
前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時する前に前記文字選択手段により文字が選択されたときに、該選択された文字を最終認識結果として確定するとともに、前記文字選択手段により文字が選択されないまま前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時したときに、前記文字認識手段により最後に認識された文字を最終認識結果として確定する確定手段と、
前記文字表示手段により表示された選択候補の文字のうちから前記文字認識手段により最後に認識された文字以外の文字が選択されたときに、該選択された文字が認識された後に前記手書き入力手段から入力されたストロークを残して前記文字ストローク保存手段に保存されているストロークを消去するストローク消去手段と
を備えることを特徴とする手書き文字認識装置。 - ユーザの選択により前記第1時間を設定する第1時間設定手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の手書き文字認識装置。 - 前記手書き入力手段により前記手書き文字の最初の1ストローク目が入力されてから予め設定された第2時間が経過するまでの時間を計時する第2の計時手段をさらに備え、
前記第1の計時手段は、前記第2の計時手段が前記第2時間の経過を計時してから前記第1時間を経過するまでの時間と、前記第2時間を経過した以降に前記手書き入力手段により手書き文字の1ストロークが入力されてから前記第1時間を経過するまでの時間とを計時し、
前記文字認識手段は、前記第2の計時手段が前記第2時間の経過を計時した以降に、前記文字ストローク保存手段に保存された手書き文字のストロークを文字認識する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の手書き文字認識装置。 - ユーザの選択により前記第2時間を設定する第2時間設定手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の手書き文字認識装置。 - 前記手書き入力手段により手書き文字を入力する文字入力領域は、複数あり、
前記手書き入力手段により新たに入力された手書き文字のストロークが異なる文字入力領域に入力されたかどうかを判定する領域判定手段をさらに備え、
前記確定手段は、前記領域判定手段が異なる領域に入力されたと判定したときに、前記文字認識手段により最後に認識された文字を最終認識結果として確定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の手書き文字認識装置。 - 前記文字認識手段により認識された文字に対して所定の操作を行うべきことを指示する文字操作指示手段をさらに備え、
前記確定手段は、前記文字操作指示手段により前記所定の操作が指示されたときに、前記文字認識手段により最後に認識された文字を最終認識結果として確定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の手書き文字認識装置。 - 文字を1ストロークずつ手書きで入力するステップと、
手書き文字の1ストロークが入力される度に、該1ストロークの入力から予め設定された第1時間を経過するまでの時間を計時するステップと、
前記第1時間の経過を計時するまでに入力された手書き文字のストロークを保存手段に順次保存するステップと、
前記保存手段に新たなストロークが追加して保存される度に、当該時点で前記保存手段に保存された手書き文字のストロークを、辞書に登録された文字のパターンと照合することにより文字認識するステップと、
新たに文字認識を行う度に、該認識した結果の文字を選択候補として順次追加して表示するステップと、
前記表示された選択候補の文字のうちから所望の文字をユーザに選択させるステップと、
前記第1時間の経過を計時する前に前記選択候補の文字のうちから文字が選択されたときに、該選択された文字を最終認識結果として確定するとともに、前記選択候補の文字のうちから文字が選択されないまま前記第1時間の経過を計時したときに、最後に認識された文字を最終認識結果として確定するステップと、
前記選択候補の文字のうちから最後に認識された文字以外の文字が選択されたときに、該選択された文字が認識された後に入力されたストロークを残して前記保存手段に保存されているストロークを消去するステップと
を含むことを特徴とする手書き文字認識方法。 - 前記手書き文字の最初の1ストローク目が入力されてから予め設定された第2時間が経過するまでの時間を計時するステップをさらに含み、
前記第1時間は、前記第2時間を経過してから計時されると共に、前記第2時間を経過した以降に前記手書き文字の1ストロークが入力される度に計時され、
前記第2時間の経過を計時した以降に、前記保存手段に保存された手書き文字のストロークを文字認識する
ことを特徴とする請求項7に記載の手書き文字認識方法。 - 文字を1ストロークずつ手書きで入力する手書き入力手段、
前記手書き入力手段により手書き文字の1ストロークが入力される度に、該1ストロークの入力から予め設定された第1時間を経過するまでの時間を計時する第1の計時手段、
前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時するまでに、前記手書き入力手段から入力された手書き文字のストロークを順次保存する文字ストローク保存手段、
前記文字ストローク保存手段に新たなストロークが追加して保存される度に、当該時点で前記文字ストローク保存手段に保存された手書き文字のストロークを、辞書に登録された文字のパターンと照合することにより文字認識する文字認識手段、
前記文字認識手段が新たに文字認識を行う度に、該認識した結果の文字を選択候補として順次追加して表示する文字表示手段、
前記文字表示手段により表示された選択候補の文字のうちから所望の文字をユーザに選択させる文字選択手段、
前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時する前に前記文字選択手段により文字が選択されたときに、該選択された文字を最終認識結果として確定するとともに、前記文字選択手段により文字が選択されないまま前記第1の計時手段が前記第1時間の経過を計時したときに、前記文字認識手段により最後に認識された文字を最終認識結果として確定する確定手段、及び、
前記文字表示手段により表示された選択候補の文字のうちから前記文字認識手段により最後に認識された文字以外の文字が選択されたときに、該選択された文字が認識された後に前記手書き入力手段から入力されたストロークを残して前記文字ストローク保存手段に保存されているストロークを消去するストローク消去手段
としてコンピュータ装置を機能させるためのプログラム。 - 前記手書き入力手段により前記手書き文字の最初の1ストローク目が入力されてから予め設定された第2時間が経過するまでの時間を計時する第2の計時手段としてさらに前記コンピュータ装置を機能させ、
前記第1の計時手段は、前記第2の計時手段が前記第2時間の経過を計時してから前記第1時間を経過するまでの時間と、前記第2時間を経過した以降に前記手書き入力手段により手書き文字の1ストロークが入力されてから前記第1時間を経過するまでの時間とを計時し、
前記文字認識手段は、前記第2の計時手段が前記第2時間の経過を計時した以降に、前記文字ストローク保存手段に保存された手書き文字のストロークを文字認識する
ことを特徴とする請求項9に記載のプログラム。
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