JP3902459B2 - 加熱用導電線条を有した車両用窓ガラス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)に対応可能な加熱用導電線条を有した車両用の窓ガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
寒冷時には、車両の室内外の温度差により窓ガラスに結露が発生したり、雨天時や湿度の高い時の窓ガラスの内側表面に付着した水滴による曇りによって、運転者の視界を損なわれることが多かった。
【0003】
また、積雪時や氷結時には、窓ガラス面が凍結したり、積雪によっても運転者の視界が著しく遮ったりして、運転に大きな支障があった。
【0004】
そこで、車両の後部窓ガラスには、複数の略平行線からなる加熱用導電線条と、それらの両端にバスバーを配設し、このバスバーにバッテリー等の直流電源を接続して通電し、窓ガラスの表面に付着した水滴による曇り等を加熱させて蒸発させるようにした所謂デフォッガーが良く知られ、運転者の視界の確保に努めている。
【0005】
一方、前部窓ガラスにおいては、ワイパーの凍結防止用のデアイサーと呼ばれる融氷用のヒータ線が設けられ、ワイパーブレードと窓ガラスとの接触部が凍結によって動作不能とならないように加熱可能なっている。
【0006】
前記車両の後部窓ガラスのデフォッガーの周辺余白部には、AM/FMラジオ放送波の受信用のアンテナや、TV放送波の受信用のアンテナが設けられ、前部窓ガラスにおいても設置上の制約はあるものの、各種のアンテナを設けることがある。
【0007】
これらのヒーター線条とアンテナ用導電線条は、いずれも導電線条であり、同一の抵抗率の導電性ペーストによってガラス板の表面に同時にスクリーン印刷し、加熱して焼付処理したものである。
【0008】
ところで、自動車の電気系統システムは、乗用車に於いては通常14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)のものが一般的に広く採用されているが、搭載するエレクトロニクス機器の増加に伴い、14V系の電気系統システムでは消費電力がまかないきれない状況になりつつある。
【0009】
これを解消すると共に、さらに燃費の向上、高電圧駆動の新しい機能の実現による付加価値の付与を目的として、14V系の電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)に代えて42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)の採用が検討されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、バッテリー電源電圧を12Vから3倍の36Vに変更したものを、車両用後部窓に設けた前記デフォッガーに接続すると、デフォッガーの発熱量Pは、発熱量をP、電圧をE、シート抵抗をRとすれば、P=E2/Rとなり、電圧(E)の二乗に比例するので、電圧が3倍になれば発熱量は9倍になってしまうことになる。
【0011】
このため、電圧を3倍に上げても、デフォッガーの発熱量を従来と同程度にしようとすると、デフォッガーのシート抵抗を9倍に上げればよいことになる。
【0012】
しかしながら、デフォッガーのシート抵抗を9倍にすることによって、デフォッガーの発熱量を規制することはできるが、導電性ペーストの抵抗率(比抵抗)が9倍となり、同一ガラス面上に同時に印刷して形成されるアンテナ用導電線条の抵抗率も9倍になるため、この導電性ペーストによって形成したアンテナでの受信利得は約1.5dB程度低下する見込みという問題点があった。
【0013】
この問題点を解決するために、デフォッガーの線条を形成するのと同一の導電ペーストを用いてアンテナ用導電線条を形成する場合においては、アンテナ用導電線条のシート抵抗だけを従来の電源電圧が12V時のシート抵抗並に下げればよいということになるが、シート抵抗を下げようとすると、アンテナ用導電線条の線幅を9倍広げたり、アンテナ用導電線条の肉厚を9倍に上げたり、長さを短くしたりする必要があるが、通常0.7〜0.8mmの線幅を6.5mm程度の線幅としたり、短くしたりするのは、アンテナとしての機能低下や、外観上、また実用上において実現困難である。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点の解決を図る、すなわち、従来の14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)より42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)への車両の電源電圧の移行において、デフォッガーとその余白部にアンテナ用導電線条を有する車両用窓ガラスにおいて、デフォッガーの発熱量を従来と同等としても、アンテナの性能を低下させないことを目的とする。
【0015】
すなわち、本発明は、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)における加熱用導電線条とその余白部に設けたアンテナ用導電線条を有する車両用の窓ガラスにおいて、前記アンテナ用導電線条の導電ペーストの抵抗率を14V系電気系統システムで使用する導電ペーストとし、
加熱用導電線条の導電ペーストの抵抗率を、前記加熱用導電線条のバッテリー電源電圧値と、14V系電気系統システムのバッテリー電圧値12Vとの比を二乗した値を、前記アンテナ用導電線条用の導電ペーストの抵抗率に乗じた値として、
加熱用導電線条の発熱量を14V系電気系統システムのレベル迄抑えたことを特徴とする加熱用導電線条を有した車両用窓ガラスである。
【0016】
あるいは、本発明は、加熱用導電線条の導電ペーストの抵抗率を45〜90×10-6Ωcmとし、前記アンテナ用導電線条の導電ペーストの抵抗率を5〜10×10 -6 Ωcmとしたことを特徴とする上述の加熱用導電線条を有した車両用窓ガラスである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、図1に示すように、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)において、車両の窓ガラス1の表面にデフォッガーやデアイサー等の加熱用導電線条2とアンテナ用導電線条3の両線条を設けたもので、加熱用導電線条2とアンテナ用導電線条3のそれぞれを異なる抵抗率の導電性ペーストにて印刷して形成したものである。
【0020】
加熱用導電線条2を形成する導電材料の抵抗率は、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)に移行した場合でも、従来の14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)の時の発熱量となるように調節する。
【0021】
このため、前記42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)の加熱用導電線条2を形成する導電ペーストの抵抗率は、前記加熱用導電線条2に接続する電源電圧値36Vと、14V系電気系統システムのバッテリー電圧値12Vとの比を二乗した値を、前記アンテナ用導電線条3の導電ペーストの抵抗率に乗じた値とした。
【0022】
具体的には、前記アンテナ用導電線条3の導電ペーストの抵抗率を、14V系電気系統システムとして従来から使用している5〜10×10-6Ωcmとし、加熱用導電線条2を形成する導電ペーストの抵抗率は、アンテナ用導電線条3の導電ペーストの抵抗率の9倍の45〜90×10-6Ωcmとした。
【0023】
前記アンテナ用導電線条3の導電ペーストの抵抗率を、5〜10×10-6Ωcmとしたのは、通常、14V系電気系統システムにおいて、加熱用導電線条2とアンテナ用導電線条3を同一の導電ペーストで行い、両線条で使用できる共通な範囲としているためである。
【0024】
本発明のように、アンテナ用導電線条3の導電ペーストを単独で使用する場合においては、3〜10×10-6Ωcmとしてもよい。これは銀の抵抗値が1.6×10-6Ωcmであり、銀の粉末を焼結した導電ペーストでは空隙等を含むため抵抗値が3×10-6Ωcm程度となるためである。
【0025】
前記電源電圧4は、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)として説明したが、本発明はこの電源電圧の値に限定するものではなく、他の電圧値であっても良い。
【0026】
以下に、作用について説明する。
【0027】
バッテリー電源電圧をE、加熱用導電線条のシート抵抗値をRとすれば、発熱量Pは、 P=E2/Rの式で表される。
【0028】
14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)より42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)への移行によって、バッテリーの電源電圧Eが3倍に増加すれば、加熱用導電線条2を形成する材質、線条のパターンが同一であれば発熱量P’は、3の二乗倍、すなわち9倍となるため、加熱用導電線条2の材質を変更して、シート抵抗R’を前記シート抵抗Rの9倍にすれば、発熱量P’は、14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)時の発熱量Pと同一とすることができる。
【0029】
P’=(3E)2/R’=(3E)2/(9R)=P しかしながら、アンテナ用導電線条3を、加熱用導電線条2と同一の導電性ペーストを使用して同時にパターン形成した場合に於いては、アンテナ用導電線条3の抵抗率が従来のものに比べて9倍高いことによって、AM/FMラジオ放送波の受信性能が約1.5dB程度低下するので、加熱用導電線条2と同一の高抵抗の導電性ペーストを用いることは困難であるため、アンテナ用導電線条3を形成する導電性ペーストについては、電源電圧によって抵抗率を変えざるを得ない加熱用導電線条2の導電性ペーストとは異なる従来の抵抗率5〜10×10-6Ωcmの導電性ペーストによって形成した。
【0030】
以上好適な実施例について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【0031】
尚、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)というのは、発電機の出力電圧を42Vとしたときに、バッテリーの電源電圧が36Vであり、14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)というのは、発電機の出力電圧を14Vとしたときに、バッテリーの電源電圧が12Vとなるものである。
【0032】
また、加熱用導電線条2とは、車両の後部窓ガラスのデフォッガーに限らず、前部窓ガラスに設けたデアイサーと呼ばれるワイパー凍結防止用の加熱用導電線条や、融氷、融雪用の加熱用導電線条も含まれる。
【0033】
実施例1 図1に示すように、車両用後部窓ガラスに設けたデフォッガの加熱用導電線条2用の導電ペーストとして、銀粉40%、耐熱無機材料10%、低融点ガラスフリット35%、溶剤15%を混練してペースト状とした導電ペーストを用いて、ガラス板1面の加熱用導電線条部分にスクリーン印刷によってパターン形成した。この加熱用導電線条2の導電ペーストの抵抗率は70×10-6Ωcmであった。
【0034】
次いで、アンテナ用導電線条3の導電性ペーストとして、銀粉80%、低融点ガラスフリット5%、溶剤15%を混練してペースト状とした導電ペーストを用いて、前記ガラス板1面のアンテナ用導電線条部分にスクリーン印刷によってパターン形成した。このアンテナ用導電線条3の導電ペーストの抵抗率は5×10-6Ωcmであった。
【0035】
このように、前記加熱用導電線条2とアンテナ用導電線条3を別々の抵抗率の導電ペーストによって同一ガラス板1面にスクリーン印刷したものを、加熱炉内で加熱焼成した。
【0036】
このように抵抗率70×10-6Ωcmの導電性ペーストで形成された加熱用導電線条2に、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)4による通電によって、発熱させるデフォッガーは、従来の抵抗率5×10-6Ωcmの導電性ペーストで形成した加熱用導電線条に14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)を接続した時に発生する発熱量とほぼ同等であった。
【0037】
また、アンテナ用導電線条3については、従来の抵抗率と同じ抵抗率5×10-6Ωcmで形成したので、AM/FMラジオ放送波帯において受信性能の低下はなかった。
【0038】
実施例2 車両用後部窓ガラス1に設けたデフォッガの加熱用導電線条2用の導電ペーストとして、銀粉70%、酸化マンガン10%、低融点ガラスフリット5%、溶剤15%を混練してペースト状とした導電ペーストを用いて、ガラス板1面の加熱用導電線条部分にスクリーン印刷によってパターン形成した。この加熱用導電線条2の導電ペーストの抵抗率は75×10-6Ωcmであった。
【0039】
次いで、アンテナ用導電線条3の導電性ペーストとしては実施例1と同じ組成の抵抗率が5×10-6Ωcm導電ペーストを用いて、前記ガラス板1面のアンテナ用導電線条部分にスクリーン印刷によってパターン形成した。
【0040】
これら前記加熱用導電線条2とアンテナ用導電線条3を別々の抵抗率の導電ペーストによって同一ガラス板1面にスクリーン印刷したものを、加熱炉内で加熱焼成した。
【0041】
このように抵抗率75×10-6Ωcmの導電性ペーストで形成された加熱用導電線条2に、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)による通電によって、発熱させるデフォッガーは、従来の導電性ペーストで形成した加熱用導電線条2に14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)4を接続した時に発生する発熱量とほぼ同等であった。
【0042】
また、アンテナ用導電線条3については、実施例1と同様であり、AM/FMラジオ放送波帯において受信性能の低下はなかった。
【0043】
実施例3 車両用後部窓ガラス1に設けたデフォッガの加熱用導電線条2用の導電ペーストとして、銀粉65%、パラジウム15%、低融点ガラスフリット5%、溶剤15%を混練してペースト状とした導電ペーストを用いて、ガラス板1面の加熱用導電線条部分にスクリーン印刷によってパターン形成した。この加熱用導電線条2の導電ペーストの抵抗率は80×10-6Ωcmであった。
【0044】
次いで、アンテナ用導電線条3の導電性ペーストとしては実施例1と同じ組成の抵抗率が5×10-6Ωcm導電ペーストを用いて、前記ガラス板1面のアンテナ用導電線条部分にスクリーン印刷によってパターン形成した。
【0045】
これら前記加熱用導電線条2とアンテナ用導電線条3を別々の抵抗率の導電ペーストによって同一ガラス板1面にスクリーン印刷したものを、加熱炉内で加熱焼成した。
【0046】
このように抵抗率80×10-6Ωcmの導電性ペーストで形成された加熱用導電線条2に、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)による通電によって、発熱させるデフォッガーは、従来の導電性ペーストで形成した加熱用導電線条2に14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)4を接続した時に発生する発熱量とほぼ同等であった。
【0047】
また、アンテナ用導電線条3については、実施例1と同様であり、AM/FMラジオ放送波帯において受信性能の低下はなかった。
【0048】
実施例4 車両用後部窓ガラス1に設けたデフォッガの加熱用導電線条2用の導電ペーストとして、銀粉60%、白金20%、低融点ガラスフリット5%、溶剤15%を混練してペースト状とした導電ペーストを用いて、ガラス板1面の加熱用導電線条部分にスクリーン印刷によってパターン形成した。この加熱用導電線条2の導電ペーストの抵抗率は80×10-6Ωcmであった。
【0049】
次いで、アンテナ用導電線条3の導電性ペーストとしては実施例1と同じ組成の抵抗率が5×10-6Ωcmの導電ペーストを用いて、前記ガラス板1面のアンテナ用導電線条部分にスクリーン印刷によってパターン形成した。
【0050】
これら前記加熱用導電線条2とアンテナ用導電線条3を別々の抵抗率の導電ペーストによって同一ガラス板1面にスクリーン印刷したものを、加熱炉内で加熱焼成した。
【0051】
このように抵抗率80×10-6Ωcmの導電性ペーストで形成された加熱用導電線条2に、42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)4による通電によって、発熱させるデフォッガーは、従来の導電性ペーストで形成した加熱用導電線条に14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)を接続した時に発生する発熱量とほぼ同等であった。
【0052】
また、アンテナ用導電線条3については、実施例1と同様であり、AM/FMラジオ放送波帯において受信性能の低下はなかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、バッテリー電源を14V系電気系統システム(バッテリー電源電圧12V)から3倍の42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)にアップした時に、同一パターンであっても加熱用導電線条での発熱量が9倍(3の二乗倍)となるため、加熱用導電線条の導電性ペーストのみ抵抗率を現状の9倍とすることによって発熱量を14V系電気系統システムのレベル迄抑え、アンテナ用導電線条の抵抗率は14V系電気系統システム時における加熱用導電線条やアンテナ用導電線条に使用される範囲の抵抗率と同一の抵抗率としたことにより受信性能を低下させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の各実施例を説明する加熱用導電線条とアンテナ用導電線条を有する車両の窓ガラスの正面図。
【符号の説明】
1 窓ガラス
2 加熱用導電線条
3 アンテナ用導電線条
4 電源電圧
Claims (2)
- 42V系電気系統システム(バッテリー電源電圧36V)における加熱用導電線条とその余白部に設けたアンテナ用導電線条を有する車両用の窓ガラスにおいて、前記アンテナ用導電線条の導電ペーストの抵抗率を14V系電気系統システムで使用する導電ペーストとし、
加熱用導電線条の導電ペーストの抵抗率を、前記加熱用導電線条のバッテリー電源電圧値と、14V系電気系統システムのバッテリー電圧値12Vとの比を二乗した値を、前記アンテナ用導電線条用の導電ペーストの抵抗率に乗じた値として、
加熱用導電線条の発熱量を14V系電気系統システムのレベル迄抑えたことを特徴とする加熱用導電線条を有した車両用窓ガラス。 - 前記加熱用導電線条の導電ペーストの抵抗率を45〜90×10-6Ωcmとし、前記アンテナ用導電線条の導電ペーストの抵抗率を5〜10×10 -6 Ωcmとしたことを特徴とする請求項1記載の加熱用導電線条を有した車両用窓ガラス。
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