JP3901358B2 - 燃料噴射ノズル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射ノズルに関し、特に内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンという)用燃料噴射弁の燃料噴射ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ノズルボディにバルブニードルを往復移動可能に収容し、バルブニードルの当接部がノズルボディに形成した弁座部に着座ならびに弁座部から離座することにより、噴孔から噴射する燃料を断続するエンジン用燃料噴射弁の燃料噴射ノズルが知られている。
【0003】
このような燃料噴射ノズルにおいては、燃料消費量の低減、排気エミッションの向上、エンジンの安定した運転性等の観点から、噴孔から噴射される「燃料の微粒化」が重要な要素であり、特に筒内直接噴射式エンジン用燃料噴射弁の燃料噴射ノズルの場合、「燃料の微粒化」は最も重要な要素の一つである。筒内直接噴射式エンジン用燃料噴射弁の燃料噴射ノズルとして、ノズルボディ内部に旋回流(スワール)を形成することにより、燃料微粒化の促進をし、噴霧特性の制御をするようにしたスワール式燃料噴射ノズルが知られている。
【0004】
上記のスワール式燃料噴射弁として、例えば▲1▼実開平5−24956号公報に開示されるように、燃料をスワールにするための部材をノズルボディ内部に設けた燃料噴射ノズル、▲2▼特開平3−175148号公報に開示されるように、バルブニードルに燃料スワール機構を設けた燃料噴射ノズルが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、▲1▼実開平5−24956号公報に開示される燃料噴射ノズルにおいては、燃料をスワールにするための部材としてスワール孔を有するスワーラと、スワールを形成するスワール形成室の容積を可変する圧電素子とをノズルボディの内部に設けているので、圧電素子に通電するための手段を配設しなければならず、部品点数および組付工数が増大し、製造コストが上昇するという問題があった。
【0006】
また、▲2▼特開平3−175148号公報に開示される燃料噴射ノズルにおいては、弁座部がエンジン筒内にさらされているため、弁座部にカーボン等が付着し当接部と弁座部との油密を確保するのが困難であるという問題があった。さらに、ニードルバルブの傘部の角度で燃料の噴霧角が決定されるため、噴霧角の可変機構を有することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、燃料の噴霧角が可変である燃料噴射ノズルを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、部品点数を増加することなく簡単な構成で、燃料微粒化の促進をし、噴霧特性の制御を行うことが可能な燃料噴射ノズルを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の燃料噴射ノズルによると、燃料のスワールを形成するスワール形成室の容積を燃料噴射圧力に応じて変化させる容積可変手段を備えているので、エンジンの負荷状態に応じてスワール強さを変えることができる。このため、所望の噴霧角および噴霧の到達距離を得ることができる。したがって、部品点数を増加することなく簡単な構成で、燃料微粒化の促進をし、噴霧特性の制御を行うことができる。そして、燃料消費量を低減し、排気エミッションを向上させ、エンジンの安定した運転性を得ることができる。
【0009】
また、容積可変手段は、スワール形成室に繋がる燃料入口通路を有するスワール形成部材を有しており、ノズルボディ内に供給される燃料圧力に応じてスワール形成部材が移動することにより、スワール形成室の容積を変化させる。このため、エンジンの負荷状態に応じてスワール強さを変えることができ、所望の噴霧角および噴霧の到達距離を得ることができる。したがって、部品点数を増加することなく簡単な構成で、燃料微粒化の促進をし、噴霧特性の制御を行うことができる。そして、燃料消費量を低減し、排気エミッションを向上させ、エンジンの安定した運転性を得ることができる。
【0010】
本発明の請求項2記載の燃料噴射ノズルによると、容積可変手段は、ノズルボディ内に供給される燃料圧力によりスワール形成部材を反噴孔側に付勢する付勢手段を有しており、この付勢手段の付勢力に抗してスワール形成部材が噴孔側に移動することにより、スワール形成室の容積を変化させる。このため、例えば燃料噴射圧力が増加するに伴ってスワール形成室の容積を小さくすることにより、高速高負荷時に比較的大きい噴霧角および比較的小さい到達距離とすることができる。したがって、エンジンの負荷状態に応じてスワール強さを確実に変えることができ、所望の噴霧角および噴霧の到達距離を確実に得ることができる。さらに、付勢手段の付勢力を変えることにより、燃料噴射圧力に対して噴霧角および噴霧の到達距離を設定可能であるため、様々な型のエンジン用の燃料噴射弁に簡便に対応することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す複数の実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
本発明をディーゼルエンジン用燃料噴射弁に適用した第1実施例を図1〜図4に示す。
【0014】
図2に示す燃料噴射弁1は、図示しないディーゼルエンジンの燃焼室内へ段階的に燃料を噴射する燃料噴射弁であって、ノズルホルダ18、リテーニングナット17、ディスタンスピース16、燃料噴射ノズル10からなる外郭形成部材を備えている。燃料噴射弁1は、ノズルホルダ18、ディスタンスピース16および燃料噴射ノズル10がリテーニングナット17により固定されている。
【0015】
ノズルホルダ18は、燃料インレット30を有しており、軸方向に貫通する第1スプリング収容室40および第2スプリング収容室50が形成されている。燃料インレット30は、図示しない高圧ポンプから図示しない燃料配管が接続されており、高圧ポンプから燃料噴射ノズル10内に高圧燃料が供給されている。燃料インレット30の内部には燃料通路31が形成されている。
【0016】
第1スプリング収容室40内には、第1スプリング41、スペーサ42およびプレッシャピン28のフランジ部29が収容されている。第1スプリング41は、一方の端部がフランジ部29に当接し、他方の端部がスペーサ42に当接している。第1スプリング41は、後述するバルブニードル20を図2に示す下方向に付勢している。
【0017】
第2スプリング収容室50内には、第2スプリング51、スペーサ52、スプリングキャップ53およびスプリング座54が収容されている。第2スプリング51は、一方の端部がスプリング座54に当接し、他方の端部がスペーサ52に当接している。スペーサ52はスプリングキャップ53に当接し、スプリングキャップ53はスプリング収容室50の内壁に形成された段差部50aに当接しているので、第2スプリング51はスプリング座54をディスタンスピース16に押付ける方向に付勢している。
【0018】
ディスタンスピース16は、縮径部16aを有しており、ディスタンスピース16内には第1スペーサ46が設けられている。この第1スペーサ46と縮径部16aとの距離でバルブニードル20の最大リフト量が規制される。また、第1スペーサ46とスプリング座54との距離で初期リフト量が規制される。
【0019】
燃料噴射弁1の噴孔側に燃料噴射ノズル10が設けられており、燃料噴射ノズル10は、ノズルボディ11と、このノズルボディ11の内部に軸方向に往復摺動可能に収容されるバルブニードル20と、ノズルボディ11の内部に固定される第2スペーサ43と、スワール形成部材としてのスワーラ60と、付勢手段としての第3スプリング71とから構成される。
【0020】
ノズルボディ11は、有底の中空円筒形状であって、内部に第2スペーサ収容孔15、第3スプリング収容室70、スワーラ収容孔14、弁座部13、噴孔12、燃料溜り33、燃料供給孔32が形成されている。
【0021】
第2スペーサ収容孔15は、ノズルボディ11の内部に軸方向に延びており、一方の端部がノズルボディ11の開口端19に接続しており、他方の端部側が燃料溜り33に接続している。第2スペーサ収容孔15内には、第2スペーサ43が収容されている。第2スペーサ43はフランジ部45と円筒部44とから構成される。フランジ部45はノズルボディ11とディスタンスピース16とで挟持されているので、第2スペーサ43は移動不可能である。円筒部44は、図1に示す弁閉状態において、噴孔12側の端部が後述するスワーラ60のフランジ部61に当接している。
【0022】
第3スプリング収容室70は、ノズルボディ11の内部に軸方向に延びており、一方の端部が燃料溜り33に接続しており、他方の端部側がスワーラ収容孔14に接続している。第3スプリング収容室70には、ノズルボディ11に形成される図示しない燃料排出通路が連通しており、第3スプリング収容室70内に侵入した燃料がノズルボディ11の外部に排出可能な構成となっている。第3スプリング収容室70内には、第3スプリング71およびスワーラ60のフランジ部61が収容されている。第3スプリング71は、一方の端部がスワーラ60のフランジ部61に当接し、他方の端部が第3スプリング収容室70の内底面に当接している。第3スプリング71はスワーラ60を反噴孔側に付勢している。
【0023】
スワーラ収容孔14は、ノズルボディ11の内部に軸方向に延びており、一方の端部が弁座部13に接続しており、他方の端部側が第3スプリング収容室70に接続している。スワーラ収容孔14内には、後述するスワーラ60の円筒部62および円環部63が収容されている。図1に示すように、スワーラ収容孔14の弁座部13側の端部に段差部14aが形成されている。
【0024】
弁座部13は、円錐台面を有し、大径側の一端が段差部14aに連続し、小径側の他端側が噴孔12に接続している。この弁座部13に後述するバルブニードル20の当接部21が当接可能である。噴孔12は、ノズルボディ11の先端部にノズルボディ11の内外を連通する通路として形成されている。噴孔12は弁座部13に入口部が開口している。
【0025】
燃料溜り33は、第2スペーサ収容孔15と第3スプリング収容室70とを接続する内壁に環状に形成されている。燃料溜り33には、外部から燃料を供給する燃料供給孔32が接続されている。燃料供給孔32は、ノズルボディ11に軸方向に傾斜して形成されている。
【0026】
図2に示すように、バルブニードル20は、中実円柱形状であって、首部27、大径部26、第1円錐台部25、小径部24、第2円錐台部23および円錐部22からなる。
バルブニードル20の反噴孔側端部に首部27が形成されており、首部27の外径は第1スペーサ46の内径よりも僅かに小さい。
【0027】
大径部26は、外径が同一径で、クリアンスを介して第2スペーサ43に遊嵌合し、軸方向に往復移動することが可能である。大径部26は、一端が首部27に接続し、他端が第1円錐台部25に接続している。第1円錐台部25は、大径側の一端が大径部26に接続し、小径側の他端が小径部24に接続している。
【0028】
図1に示すように、小径部24は、外径が同一径で、クリアランスを介して後述するスワーラ60の円環部63に遊嵌合し、軸方向に往復移動することが可能である。小径部24は、一端が第1円錐台部25に接続し、他端が第2円錐台部23に接続している。第2円錐台部23は、大径側の一端が小径部24に接続しており、小径側の他端が当接部21を介して円錐部22に接続している。第2円錐台部23と円錐部22との接続部分は円形状であり、この円形状の部分が弁閉時に弁座部13と当接する当接部21である。弁閉時、当接部21が弁座部13に着座することにより噴孔12からの燃料噴射が遮断される。
【0029】
スワーラ60は中空円筒形状であって、フランジ部61と、円筒部62と、円環部63とから構成される。フランジ部61は、スワーラ60の反噴孔側端部に形成されており、第3スプリング71の一方の端部が当接している。フランジ部61は、図1に示す弁閉状態において、第2スペーサ43の円筒部44に当接している。フランジ部61は、クリアンスを介して第3スプリング収容室70に遊嵌合し、軸方向に往復移動することが可能である。
【0030】
円筒部62は、外径が同一径で、クリアランスを介してスワーラ収容孔14に遊嵌合し、軸方向に往復移動することが可能である。円筒部62は、一方の端部がフランジ部61に接続し、他方の端部が円環部63に接続している。円筒部62の内壁とバルブニードル20の小径部24の外壁とで燃料通路34が形成されている。燃料通路34は、一方の端部が燃料溜り33に接続しており、他方の端部側が後述するスワール孔65に接続している。
【0031】
円環部63は円筒部62と同一外径であって、スワール孔65が4箇所形成されている。4箇所のスワール孔65は、円環部63の外底面63aから内底面63bまでを貫通するように、軸方向斜めにほぼ同一内径でストレート状に形成されている。4箇所のスワール孔65は、それぞれの中心軸が略90°間隔となっている。スワール孔65は、一方の端部が燃料通路34に接続しており、他方の端部側が後述するスワール室90に接続している。
【0032】
ノズルボディ11のスワーラ収容孔14を形成する内壁面と、バルブニードル20の小径部24および第2円錐台部23を形成する外壁面と、スワーラ60の円環部63の外底面63aとでスワール形成室としてのスワール室90が形成される。スワール室90はスワール孔65、燃料通路34および燃料溜り33を経由して燃料供給孔32に連通している。ここで、スワール孔65はスワール室90に繋がる燃料入口通路を構成している。図1において、スワーラ収容孔14の段差部14aを形成する内壁面と、スワーラ60の円環部63の外底面63aとの距離をhとすると、この距離hはスワール室90の高さを示している。図1に示す弁閉状態において、スペーサ43およびスワーラ60のノズル軸方向高さをノズルボディ11の段差部14aまでのノズルボディ軸方向深さから引いた差が距離hとなる。ノズルボディ11内に供給される燃料圧力により第3スプリング71の付勢力に抗してスワーラ60が噴孔12側に移動することにより、開弁時のスワール室90の高さが弁閉時のスワール室90の高さよりも小さくなる構成である。すなわち、開弁時のスワール室90の容積は弁閉時のスワール室90の容積よりも小さくなる。ここで、第2スペーサ43と、第3スプリング71と、スワーラ60とは、容積可変手段を構成している。
【0033】
次に、上記構成の燃料噴射弁1の作動を説明する。
(1) 高圧ポンプから所定量の燃料が所定の時期に圧送され、高圧燃料が燃料配管を経由して燃料インレット30に供給される。この高圧燃料は、燃料通路31、燃料供給孔32、燃料溜り33を経由して燃料通路34、スワール孔65およびスワール室90内に蓄えられる。燃料通路34、スワール孔65およびスワール室90内の燃料圧力が増大し、この圧力が第1スプリング41の付勢力に打勝つ圧力に達すると、バルブニードル20は図2の上方にリフトし、弁座部13から当接部21が離間して開弁する。そして、スワール室90でスワールが形成され、このスワールとなった燃料が弁座部13と当接部21との開口部を通って噴孔12から噴射される。図3に示すように、低速低負荷時においては、燃料溜り33の燃料圧力、すなわちノズルボディ11内に供給される燃料圧力が比較的小さいので、スワーラ60の噴孔12側への移動量は比較的小さい。したがって図3において、スワーラ収容孔14の段差部14aを形成する内壁面と、スワーラ60の円環部63の外底面63aとの距離hLは比較的大きい。このため、スワール室90の高さおよび容積は比較的大きい。したがって、燃料噴霧QLの噴霧角θLは比較的小さく、燃料噴霧QLの到達距離は比較的大きい。
【0034】
(2) 燃料通路34、スワール孔65およびスワール室90内の燃料圧力がさらに増大すると、バルブニードル20のリフト量が増大し、第1スペーサ46がスプリング座54に当接する。この状態がバルブニードル20の初期リフト状態である。この初期リフト状態においては、燃料噴射圧力が比較的小さいので、スワール室90の高さおよび容積は比較的大きい。そして、燃料通路34、スワール孔65およびスワール室90内の燃料圧力が第1スプリング41の付勢力と第2スプリング51の付勢力との合力に打勝つ圧力に達すると、第1スペーサ46がディスタンスピース16の縮径部16aに当接し、バルブニードル20はフルリフト状態に達する。このフルリフト状態においては、燃料溜り33の燃料圧力、すなわちノズルボディ11内に供給される燃料圧力が比較的大きいので、第3スプリング71の付勢力に抗してスワーラ60が噴孔12側に移動する。そして、その移動量は比較的大きく、図4に示すように、スワーラ収容孔14の段差部14aを形成する内壁面と、スワーラ60の円環部63の外底面63aとの距離hHは図3に示す距離hLよりも小さくなる。このため、スワール室90の高さおよび容積は燃料噴射圧力の増加に伴って小さくなるので、スワール室90内のスワールが強まる。したがって、高速高負荷時においては、燃料噴射圧力が比較的大きいにもかかわらず、燃料噴霧QLの噴霧角θLは比較的大きく、燃料噴霧QLの到達距離は比較的小さい。
【0035】
(3) 高圧ポンプの燃料圧送が終わりに近づくと、燃料通路34、スワール孔65およびスワール室90内の燃料圧力が低下し、第1スプリング41および第2スプリング51の付勢力によりバルブニードル20が図2の下方に移動し、当接部21が弁座部13に着座して燃料噴射を終了する。
【0036】
第1実施例においては、ノズルボディ11内の燃料噴射圧力に応じてスワール室90の容積を変えることができるので、エンジンの負荷状態に応じてスワール強さを変えることにより、所望の噴霧角および噴霧の到達距離を得ることができる。したがって、部品点数を増加することなく簡単な構成で、燃料微粒化の促進をし、噴霧特性の制御を行うことができる。そして、燃料消費量を低減し、排気エミッションを向上させ、エンジンの安定した運転性を得ることができる。
【0037】
さらに第1実施例においては、ノズルボディ11内に供給される燃料圧力により第3スプリング71の付勢力に抗してスワーラ60が噴孔12側に移動する。このため、高速高負荷時に燃料噴射圧力の増加に伴ってスワール室90の高さおよび容積を小さくすることにより、高速高負荷時に大きい噴霧角および小さい到達距離とすることができる。したがって、エンジンの負荷状態に応じてスワール強さを確実に変えることができるので、所望の噴霧角および噴霧の到達距離を確実に得ることができる。さらに、スワーラ60の受圧面積、第3スプリング71のばね定数ならびにセット荷重を変えることにより、燃料噴射圧力に対して噴霧角および噴霧の到達距離を設定可能であるため、様々な型のエンジン用の燃料噴射弁に簡便に対応することができる。
第1実施例では、スワール孔65の数を4個に設定したが、本発明では、スワール孔の数は1個以上であればよい。
【0038】
(参考例)
本発明の参考例について、図5〜図8を用いて説明する。第1実施例と同一構成部分に同一符号を付す。
【0039】
図6に示すように、燃料噴射弁2の噴孔側に燃料噴射ノズル100が設けられており、燃料噴射ノズル100は、ノズルボディ111と、このノズルボディ111の内部に軸方向に往復摺動可能に収容されるバルブニードル120と、ノズルボディ111の内部に圧入により固定されるカラー160とから構成される。
【0040】
ノズルボディ111は、有底の中空円筒形状であって、内部に案内孔114、弁座部113、噴孔112、燃料通路孔134、燃料溜り133、燃料供給孔132が形成されている。
【0041】
案内孔114は、ノズルボディ111の内部に軸方向に延びており、一方の端部がノズルボディ111の開口端115に接続しており、他方の端部側が燃料溜り133に接続している。案内孔114の内壁は、ノズルボディ111の開口端115から燃料溜り133の近傍まで概略同一内径に形成されている。
【0042】
図5に示すように、弁座部113は、ノズルボディ111の噴孔側に設けられた内底面に形成され、大径側の一端が燃料通路孔134に連続し、小径側の他端が噴孔112に接続している。この弁座部113に後述するバルブニードル120の当接部121aが当接可能である。噴孔112は、ノズルボディ111の先端部にノズルボディ111の内外を連通する通路として形成されている。噴孔112は弁座部113に入口部が開口している。
【0043】
図6に示すように、燃料通路孔134は、ノズルボディ111の内部に軸方向に延びており、一方の端部が弁座部113に接続しており、他方の端部側が燃料溜り133に接続している。燃料通路孔134の内壁134aと弁座部113との間には谷部113aが形成されている。燃料溜り133は、案内孔114と燃料通路孔134とを接続する内壁に環状に形成されている。燃料溜り133には、外部から燃料を供給する燃料供給孔132が接続されている。
【0044】
図5に示すように、バルブニードル120は、中実円柱形状であって、首部27、摺動部126、第1円錐台部125、小径部124、第2円錐台部123、大径部122および先端部121からなる。
バルブニードル20の反噴孔側端部に首部27が形成されており、首部27の外径は第1スペーサ46の内径よりも僅かに小さい。
【0045】
摺動部126は、外径が同一径で、クリアンスを介して案内孔114に遊嵌合し、軸方向に往復移動することが可能である。摺動部126は、一端が首部27に接続し、他端が第1円錐台部125に接続している。第1円錐台部125は、大径側の一端が摺動部126に接続し、小径側の他端が小径部124に接続している。
【0046】
小径部124は、一端が第1円錐台部125に接続し、他端が第2円錐台部123に接続している。第2円錐台部123は、小径側の一端が小径部124に接続しており、大径側の他端が大径部122に接続している。
【0047】
大径部122は、外径が同一径で、クリアンスを介してカラー160に遊嵌合し、軸方向に往復移動することが可能である。大径部122は、一端が第2円錐台部123に接続し、他端が先端部121に接続している。大径部122と先端部121との接続部分は円形状であり、この円形状の部分が弁閉時に弁座部113と当接する当接部121aである。弁閉時、当接部121aが弁座部113に着座することにより噴孔112からの燃料噴射が遮断される。
【0048】
大径部122の外壁には、燃料入口通路としてのスワール溝122aが形成されている。スワール溝122aは、大径部122の一方の端部から他方の端部まで、バルブニードル120の軸に対して傾斜するように4箇所形成されている。ここで、大径部122はスワール形成部を構成している。
【0049】
カラー160は中空円筒形状であって、ノズルボディ111の谷部113aと、バルブニードル120の当接部121aとの干渉がカラー160により避けることができる。したがって、弁開時の燃料の流れを円滑にすることができる。弁開時、カラー160の内壁面と、ノズルボディ111の弁座部113を形成する内底面と、バルブニードル120の先端部121を形成する外壁面とで、図示しないスワール形成室としてのスワール室が形成される。このスワール室90の高さは、図5に弁閉状態においてゼロであり、ノズルボディ111内に供給される燃料圧力により第1および/または第2スプリング41、51の付勢力に抗してバルブニードル120が反噴孔側に移動することにより、開弁時のスワール室の高さが変化する。すなわち、バルブニードル120のリフト量に応じてスワール室の容積が変化する構成である。ここで、バルブニードル120と、第1スプリング41と、第2スプリング51とは、容積可変手段を構成している。
【0050】
次に、上記構成の燃料噴射弁2の作動を説明する。
(1) 高圧ポンプから所定量の燃料が所定の時期に圧送され、高圧燃料が燃料配管を経由して燃料インレット30に供給される。この高圧燃料は、燃料通路31、燃料供給孔132、燃料溜り133を経由して燃料通路134およびスワール溝122aに蓄えられる。燃料通路134およびスワール溝122aの燃料圧力が増大し、この圧力が第1スプリング41の付勢力に打勝つ圧力に達すると、バルブニードル120は図6の上方にリフトし、弁座部113から当接部121aが離間して開弁する。そして図7に示すように、カラー160の内壁面と、ノズルボディ111の弁座部113を形成する内底面と、バルブニードル120の先端部121を形成する外壁面とで、スワール室190が形成され、このスワール室190でスワールが形成される。このスワールとなった燃料は弁座部113とバルブニードル120の先端部121との開口部を通って噴孔112から噴射される。図7に示すように、低速低負荷時においては、燃料溜り133の燃料圧力、すなわちノズルボディ111内に供給される燃料圧力が比較的小さいので、バルブニードル120のリフト量が比較的小さい。このため、ノズルボディ111の弁座部113を形成する内底面と、バルブニードル120の先端部121を形成する外壁面との距離をh1とすると、距離h1は比較的小さい。したがって、低速低負荷時においては、スワール室190の高さおよび容積は比較的小さいので、燃料噴霧Q1の噴霧角θ1は比較的大きく、燃料噴霧Q1の到達距離は比較的小さい。
【0051】
(2) 燃料通路134およびスワール溝122aの燃料圧力がさらに増大すると、バルブニードル120のリフト量が増大し、第1スペーサ46がスプリング座54に当接する。この状態がバルブニードル120の初期リフト状態である。この初期リフト状態においては、燃料噴射圧力が比較的小さいので、スワール室190の高さおよび容積は比較的小さい。そして、燃料通路134およびスワール溝122aの燃料圧力が第1スプリング41の付勢力と第2スプリング51の付勢力との合力に打勝つ圧力に達すると、第1スペーサ46がディスタンスピース16の縮径部16aに当接し、バルブニードル120はフルリフト状態に達する。このフルリフト状態においては、燃料溜り133の燃料圧力、すなわちノズルボディ111内に供給される燃料圧力が比較的大きい。このとき、図8に示すように、ノズルボディ111の弁座部113を形成する内底面と、バルブニードル120の先端部121を形成する外壁面との距離をh2とすると、距離h2は比較的大きい。したがって、高速高負荷時においては、スワール室190の高さおよび容積は比較的大きいので、燃料噴霧Q2の噴霧角θ2は比較的小さく、燃料噴霧Q2の到達距離は比較的大きい。
【0052】
(3) 高圧ポンプの燃料圧送が終わりに近づくと、燃料通路134およびスワール溝122aの燃料圧力が低下し、第1スプリング41および第2スプリング51の付勢力によりバルブニードル120が図6の下方に移動し、当接部121aが弁座部113に着座して燃料噴射を終了する。
【0053】
参考例においては、ノズルボディ111内の燃料噴射圧力に応じてスワール室190の容積を変えることができるので、エンジンの負荷状態に応じてスワール強さを変えることにより、所望の噴霧角および噴霧の到達距離を得ることができる。したがって、部品点数を増加することなく簡単な構成で、燃料微粒化の促進をし、噴霧特性の制御を行うことができる。そして、燃料消費量を低減し、排気エミッションを向上させ、エンジンの安定した運転性を得ることができる。
【0054】
さらに参考例においては、ノズルボディ111内に供給される燃料圧力により第1および/または第2スプリング41、51の付勢力に抗してバルブニードル120が反噴孔側に移動する。このため、高速高負荷時に燃料噴射圧力の増加に伴ってスワール室190の高さおよび容積を大きくすることにより、高速高負荷時に小さい噴霧角および大きい到達距離とすることができる。したがって、エンジンの負荷状態に応じてスワール強さを確実に変えることができるので、所望の噴霧角および噴霧の到達距離を確実に得ることができる。さらに、バルブニードル120の先端部121の受圧面積、第1および/または第2スプリング41、51のばね定数ならびにセット荷重を変えることにより、燃料噴射圧力に対して噴霧角および噴霧の到達距離を設定可能であるため、様々な型のエンジン用の燃料噴射弁に簡便に対応することができる。
【0055】
参考例では、燃料噴射ノズル100はノズルボディ111内にカラー160を備える構成としたが、ノズルボディ内にカラーを備えない燃料噴射ノズルに本発明を適用することは可能である。
また参考例では、スワール溝122aの数を4個に設定したが、本発明では、スワール溝の数は1個以上であればよい。
【0056】
以上説明した本発明の複数の実施例では、ディーゼルエンジン用の燃料噴射弁に本発明の燃料噴射ノズルを適用したが、ガソリンエンジン用の燃料噴射弁に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例による燃料噴射ノズルを示すものであって、図2の主要部拡大図である。
【図2】 本発明の第1実施例による燃料噴射ノズルを適用した燃料噴射弁を示す縦断面図である。
【図3】 本発明の第1実施例による燃料噴射ノズルの低速低負荷時における作動を説明するための縦断面図である。
【図4】 本発明の第1実施例による燃料噴射ノズルの高速高負荷時における作動を説明するための縦断面図である。
【図5】 本発明の参考例による燃料噴射ノズルを示すものであって、図6の主要部拡大図である。
【図6】 本発明の参考例による燃料噴射ノズルを適用した燃料噴射弁を示す縦断面図である。
【図7】 本発明の参考例による燃料噴射ノズルの低速低負荷時における作動を説明するための縦断面図である。
【図8】 本発明の参考例による燃料噴射ノズルの高速高負荷時における作動を説明するための縦断面図である。
【符号の説明】
1、2 燃料噴射弁
10、100 燃料噴射ノズル
11、111 ノズルボディ
12、112 噴孔
13、113 弁座部
20、120 バルブニードル
21、121a 当接部
41 第1スプリング
43 第2スペーサ(容積可変手段)
51 第2スプリング
60 スワーラ(旋回流形成部材、容積可変手段)
65 スワール孔(燃料入口通路)
71 第3スプリング(付勢手段、容積可変手段)
90 スワール形成室(旋回流形成室)
92a、93a 開口部
121 先端部
122 大径部(旋回流形成部)
122a スワール溝(燃料入口通路)
160 カラー
190 スワール形成室(旋回流形成室)
Claims (2)
- 噴孔の上流に弁座部を設けたノズルボディと、
前記ノズルボディに往復摺動可能に支持され、前記弁座部に着座可能な当接部を有し、前記当接部が前記弁座部から離座ならびに前記弁座部に着座することにより燃料の遮断および流通を行うバルブニードルと、
前記ノズルボディ内に形成され、燃料の旋回流を形成する旋回流形成室と、
燃料噴射圧力に応じて前記旋回流形成室の容積を変化させる容積可変手段とを備え、
前記容積可変手段は、前記バルブニードルの外周に設けられ、前記旋回流形成室に繋がる燃料入口通路を形成する内壁を有する旋回流形成部材を有し、
前記ノズルボディ内に供給される燃料圧力に応じて前記旋回流形成部材が移動することにより、前記旋回流形成室の容積を変化させることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 前記容積可変手段は、前記ノズルボディ内に設けられ、前記旋回流形成部材を反噴孔側に付勢する付勢手段を有し、
前記ノズルボディ内に供給される燃料圧力により前記付勢手段の付勢力に抗して前記旋回流形成部材が前記噴孔側に移動することにより、前記旋回流形成室の容積を変化させることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射ノズル。
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