JP3898793B2 - 結露垂れ防止コンパクト容器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、揮発性化粧料を保持するコンパクト容器に関するものであって、特に容器本体の化粧料から揮発し、蓋体の天面に結露した水分、油分等の溶剤が化粧料の表面に無造作に落下してしまうことを防止することができるコンパクト容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、水分を始め溶剤を多く含有する化粧料が、使用感の良好さから人気を博しており、様々な化粧品に広く使われるようになっている。コンパクト容器に保持される化粧料も例外ではなく、揮発性溶剤を多く含有する化粧料が気密性を高めたコンパクト容器に保持され、商品化されるに至っている。
【0003】
このような従来のコンパクト容器は、蓋体の天面の周縁部に環状ガスケットを配設し、蓋体を閉じた際、この環状ガスケットが化粧料を保持した容器本体に圧接することにより、コンパクト容器内部の気密性を保持する構造となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したように気密性が保たれた容器であっても、かかるコンパクト容器が置かれる場所の温度が上昇する等の理由により、容器内部で化粧料の溶剤が揮発する場合がある。このように揮発した溶剤は蓋体天面に接触するとその表面で結露し、水滴状に付着することとなる。そして、この水滴が成長し、大きくなると、蓋体の天面から容器本体の化粧料の表面に無造作に落下し(結露垂れ)、化粧料の表面に結露垂れの跡が形成されてしまうこととなり、大きく美観を損ねるという問題があった。
【0005】
特に、この溶剤の蓋体天面での結露は、生産された化粧品が商品として輸送され、店頭に並んでいる際にも生じるものであり、商品として美観が損なわれることは望ましいことではなく、商品の販売者からもかかる結露垂れの問題を解決するコンパクト容器の登場が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、蓋体天面に化粧料から揮発した溶剤が結露した場合であっても、結露した溶剤が化粧料の表面に無造作に落下することがなく、もって化粧料表面の美観を保つことができるコンパクト容器を提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、揮発性溶剤を含有する化粧料を保持する容器本体と蓋体とを有し、前記蓋体の天面の周縁部には容器本体を気密に密閉する環状ガスケットが取付けられ、前記蓋体の天面における前記環状ガスケットの内側には凹面が形成され、前記凹面の最も大きく凹んだ部分である天頂部から該凹面の周縁部にかけて、化粧料から蒸発し前記蓋体の凹面に結露した溶剤を周縁部へ向けて導く傾斜面が形成され、前記蓋体の凹面の天頂部側から周縁部側にかけて複数の溝が形成されたことを特徴とする結露垂れ防止コンパクト容器を構成して上記課題を解決している。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係るコンパクト容器の参考例及び実施例を図を用いて説明する。図1は蓋体を開いた状態の、参考例に係るコンパクト容器の平面図、図2は蓋体を閉じた状態の、参考例に係るコンパクト容器の側断面図、図3は参考例に係るコンパクト容器の作用を示す説明図である。
【0009】
図1並びに図2に示すように、コンパクト容器Aは、化粧料Kを保持する容器本体1と該容器本体1を気密に保つ蓋体2からなり、それぞれポリプロピレン等の合成樹脂により形成されている。また、これら容器本体1と蓋体2の一端にはヒンジ部1a、2aが設けられ、この部分に両側から回動軸3、3を通すことによって両者を枢着している。また、これら容器本体1と蓋体2の他端には、係合突起1bと係合爪2bが形成されており、両者は蓋体2を回動させて容器本体1に重ねた場合に係合し、コンパクト容器Aの閉状態を維持することができる。
【0010】
容器本体1は、中央に平面円形の皿部1cが形成され、この皿部1cに、例えばファンデーション等の化粧料Kが充填されて保持されている。この化粧料Kは溶剤を多く含み、揮発性を有するものである。
【0011】
蓋体2は、その天面2cに環状ガスケット4を固定している。この環状ガスケット4は弾性に富むゴム材等により形成されたものであって、容器本体1の皿部1cの開口部より大きな径を有する円形の環状体である。この環状ガスケット4は、蓋体2を閉じた際、皿部1cの外周部の容器本体1に、すなわち、容器本体1の皿部1cを包囲するように圧着するように構成されている。
【0012】
蓋体2の天面2cには、環状ガスケット4の内側に凹面5が形成されている。この凹面5は平面円状を有し、その中央部の、最も高くなった天頂部5aと、最も低くなった周縁部5bとの間になだらかに湾曲した傾斜面5cが形成されている。なお、凹面5の平面形状は、容器本体1の皿部1cの平面形状と略同一であって、蓋体2を閉じた場合には凹面5の周縁部5bと皿部1cの周縁部1dとが平面上、略重なるように形状及び位置が調整されている。
【0013】
次に図3を用いて、本実施例の水滴落下防止作用を説明する。まず、同図(a)に示すように、コンパクト容器Aが気温の高い場所に置かれると、容器内の化粧料Kから水、油分等の溶剤が揮発し、この揮発した溶剤は環状ガスケット4により気密に保たれたコンパクト容器A内に充満する。そして、気温が低くなるなどしてコンパクト容器Aが冷却されると、揮発した溶剤が温度が低くなった蓋体2の天面2cに接触してその凹面5上に結露し、多数の水滴Wが生じる。
【0014】
そして、同図(b) に示すように、結露が連続的に発生すると水滴Wが成長するが、凹面5には天頂部5aから周縁部5bにかけて傾斜面5cが形成されているため、成長した水滴Wは、自重により落下する前にこの傾斜面5cに沿って流れる。そして、この水滴Wは、凹面5で最も低い部分、すなわち周縁部5bに達したところで、化粧料Kの周縁部に自然落下する。
【0015】
このように、蒸発した溶剤が結露した水滴Wは、凹面5のはたらきにより、凹面5の周縁部5bに導かれるため、水滴Wが化粧料Kの表面中央に落下することを防止することができ、美観に影響を与えることを防止することができる。
【0016】
なお、化粧料Kは溶剤が蒸発した分、収縮して容器本体1の皿部1cの縁部との間に隙間Sが生じるが、特に本実施例では凹面5の周縁部5bと皿部1cの周縁部1dとの位置を一致させているために、落下した水滴Wをこの隙間Sに吸収させることができ、化粧料Kに溶剤を円滑に再吸収させることができる。
【0017】
次に、本願発明の第1実施例を図4及び図5を用いて説明する。本実施例のコンパクト容器Bは、凹面の表面に水滴を導く放射状に切った溝を特徴とする。図4は蓋体を開いた状態の、第1実施例に係るコンパクト容器の平面図、図5は蓋体を閉じた状態の、第1実施例に係るコンパクト容器の側断面図である。なお、参考例と同一の構成は、同一の符号を付してその説明を援用する(以下、他の実施例も同様)。
【0018】
図4並びに図5に示すとおり、コンパクト容器Bは、その蓋体2の天面2cに凹面15が形成されている。この凹面15の平面形状は、参考例の凹面と同様に、容器本体1の皿部1cの平面形状と略同一の円形であって、蓋体2を閉じた際に両者のそれぞれの周縁部1d、15bが平面上重なる構造となっている。
【0019】
凹面15は環状ガスケット4の内側に形成され、その中央部に最も高くなった天頂部15aを有し、最も低くなる周縁部15bとの間になだらかに湾曲した傾斜面15cを形成している。この凹面15は、さらに、その天頂部15aが円形に凹んでおり、また、周縁部15bも環状に凹んでいる(図5参照)。そして、両者間の傾斜面15cには、これら凹んだ部分を連結するように、放射状に複数の溝15dが形成されている(図4参照)。
【0020】
このように形成された第1実施例のコンパクト容器Bによっては、凹面15上に結露した水滴は溝15dに落ち込み、水滴はこの溝15dを伝わって周縁部15bに流れ込む。そして、この周縁部15bから水滴が落下するため、化粧料Kの表面、中央部に水滴が落下することを防止することができる。
【0021】
特に、溝15d部分は、凹面15の他の平面部分に比べて表面積が大きくなり、揮発した溶剤は溝15d部分で結露しやすくなり、また、水滴が生じた場合でも、溝15d部分では水滴と接触する面積がより大きいために、落下しにくくなる。このため、溝15dを放射状に形成することにより、より確実に且つ円滑に凹面15上の水滴を周縁部15bへ排除することができる。
【0022】
なお、本実施例のコンパクト容器Bでは、溝15dを放射状に設けたが、溝は傾斜面15cに沿って高低差を設けて形成すれば水滴の伝導機能を有するものであって、その他、多様な溝の形成態様を選択できることは勿論である。
【0023】
本発明の第2実施例を図6及び図7を用いて説明する。本実施例のコンパクト容器Cは、凹面の表面に、放射状に切った溝に加え、同心円状の溝を形成したことを特徴とする。図6は蓋体を開いた状態の、第2実施例に係るコンパクト容器の平面図、図7は蓋体を閉じた状態の、第2実施例に係るコンパクト容器の側断面図である。
【0024】
図6並びに図7に示すとおり、コンパクト容器Cは、その蓋体2の天面2cに凹面25が形成されている。この凹面25の平面形状は、参考例の凹面と同様に、容器本体1の皿部1cの平面形状と略同一の円形であって、蓋体2を閉じた際に両者のそれぞれの周縁部1d、25bが平面上重なる構造となっている。
【0025】
凹面25は環状ガスケット4の内側に形成され、その中央部に最も高くなった天頂部25aを有し、最も低くなる周縁部25bとの間になだらかに湾曲した傾斜面25cを形成している。この凹面25は、さらに、その天頂部25aが円形に凹んでおり、また、周縁部25bも環状に凹んでいる(図7参照)。そして、両者間の傾斜面25cには、これら凹んだ部分を連結する複数の放射状溝25dが形成され、また、天頂部25aを中心として複数の同心円状溝25eが形成されている(図6参照)。
【0026】
以上のように形成された第2実施例のコンパクト容器Cにおいては、凹面25上に結露した水滴は放射状溝25dに沿って流れ、周縁部25bへ排除される。加えて、本実施例では、同心円状溝25eが結露した水滴をより効率的に両溝25d、25e内に集めるとともに、表面積をより大きくして両溝25d、25e内に結露しやすくしており、同時に水滴が落下しにくくしているために、さらに確実に且つ円滑に凹面25上の水滴を周縁部25bへ除去することができる。
【0027】
なお、以上説明を行った、いずれの実施例も、凹面の平面形状を円形としたが、その他、楕円形や四角形等、多様な形状が選択できることは勿論である。また、いずれの実施例においても凹部の最も高くなった天頂部を中央に設定したが、天頂部の形成位置は偏心させてもよい。さらに凹面の傾斜面は、いずれの実施例においてもなだらかな湾曲形状となるものを示したが、傾斜を直線的なものとし、凹面を傘形状や円錐台形状としてもよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明のコンパクト容器は、蓋体の天面に凹面が形成されているために、化粧料から揮発して蓋体の天面上に結露した溶剤は凹面の傾斜面に沿ってその周縁部に流れるため、結露した溶剤が化粧料の表面に無造作に落下することがなく、もって化粧料表面の美観を保つことができる効果を有する。
【0029】
さらに、上記コンパクト容器において蓋体の凹面の天頂部側から周縁部側にかけて複数の溝を形成すれば、より確実且つ円滑に結露した溶剤を周縁部に導くことができる。特に、溝部分は平面部に比べて表面積が大きくなるために、この部分に結露が発生しやすくなり、また結露した場合でも水滴との接触面積が大きくなるために水滴が容易に落下せず、結露垂れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 蓋体を開いた状態の、参考例に係るコンパクト容器の平面図である。
【図2】 蓋体を閉じた状態の、参考例に係るコンパクト容器の側断面図である。
【図3】 参考例に係るコンパクト容器の作用を示す説明図である。
【図4】 蓋体を開いた状態の、第1実施例に係るコンパクト容器の平面図である。
【図5】 蓋体を閉じた状態の、第1実施例に係るコンパクト容器の側断面図である。
【図6】 蓋体を開いた状態の、第2実施例に係るコンパクト容器の平面図である。
【図7】 蓋体を閉じた状態の、第2実施例に係るコンパクト容器の側断面図である。
【符号の説明】
A、B、C …コンパクト容器
K …化粧料
P …空気層
S …隙間
W …水滴
1 …容器本体
2 …蓋体
2c、2d …天面
4、14 …環状ガスケット
5、15、25 …凹面
5a、15a、25a …天頂部
5b、15b、25b …周縁部
5c、15c、25c …傾斜面
15d …溝
25d …放射状溝
25e …同心円状溝
Claims (1)
- 揮発性溶剤を含有する化粧料を保持する容器本体と蓋体とを有し、
前記蓋体の天面の周縁部には容器本体を気密に密閉する環状ガスケットが取付けられ、
前記蓋体の天面における前記環状ガスケットの内側には凹面が形成され、
前記凹面の最も大きく凹んだ部分である天頂部から該凹面の周縁部にかけて、化粧料から蒸発し前記蓋体の凹面に結露した溶剤を周縁部へ向けて導く傾斜面が形成され、
前記蓋体の凹面の天頂部側から周縁部側にかけて複数の溝が形成されたことを特徴とする結露垂れ防止コンパクト容器。
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