JP3898585B2 - 光導波路付き部材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン交換法を用いて光導波路を形成する工程を有する光導波路付き部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、光ディスクの高密度化、レーザプリンタの高精度化による短波長レーザ光源の要望が高まっている。これらを実現するものとして青色半導体レーザや第二次高調波(SHG)素子が注目されている。SHG素子は擬似位相整合により高出力のレーザ光を発生する素子である。基本波となるレーザ光を透過させるとその半分の波長の二次高調波を発生する光学非線形性を有するKTiOPO4(KTP)、LiNbO3(LN)やLiTaO3(LT)などといった誘電体からなる結晶基板や、石英などの光導波路用ガラスからなる基板などを光学部材として、該部材に周期的分極反転構造とイオン交換三次元導波路とを形成することによりSHG素子が製造される。
【0003】
イオン交換三次元導波路は、上記LN結晶やLT結晶のZ−cut板等の表面に、通常、帯状に形成される。その場合、該光導波路部分の屈折率を周囲よりも高くするために、その部分には外部から特定の元素が導入される。そして、該元素導入のための代表的な方法の1つとしてイオン交換法が挙げられる。例えば、光学部材がLiNbO3結晶基板の場合では、プロトン源として安息香酸やピロリン酸を用いて、以下の反応式で示されるイオン交換法によってプロトンH+が導入される。
LiNbO3 + xH+ → HxLi1-xNbO3 + xLi+
【0004】
当該イオン交換法によるプロトンの導入の工程は次のとおりである。
先ず、図4(a)に示すように、光学部材(基板)1の上面のうち光導波路とすべきパターン部分11だけを露出させて、上面のそれ以外の部分は全てマスク層2(ハッチングを施した部分)で覆う。
次に、図4(b)に示すように、液状交換源(LiNbO3に対しては、安息香酸、ピロリン酸など)20を加熱して、反応温度T1(160℃〜260℃)にまで至らしめた後に、室温T3にて保持した上記マスクされた光学部材1を、加熱した液状交換源20に浸漬して、その温度(T1)のまま所定時間保持する。イオン交換は、この反応温度T1で浸漬保持される間に主として進行し、マスク層2から露出しているパターン部分11と液状交換源20との間で、リチウムイオンとプロトンH+との交換(プロトン交換)が行われ、その部分が光導波路となる。
【0005】
上記プロトン交換が完了した後、光学部材1を液状交換源20から引き上げて室温T3にて放置することで冷却してから、マスク層2を除去し、屈折率分布の最適化のために、光学部材1に対してアニール処理(200℃〜400℃、1〜2時間)を行ない、最後に光導波路端面が露出している光学部材1の両端面を光学研磨して入出射端面とし、光導波路基板を得る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来のイオン交換の工程においては、光学部剤1を液状交換源20に浸漬する際、あるいは光学部材1を液状交換源20から引き上げる際に光学部材1が割れ易いという問題がある。本発明は、イオン交換中やその後の引き上げの際に光学部材1が割れ難くなるような光導波路付き部材の製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、光学部材としての基板の割れ易さは、主に、以下の2つの要因によるものであることを見出した。第1の要因は意図しない部位でのイオン交換である。従来技術では、光学部材のうち光導波路を形成する面と反対側の面(裏面)にはマスク層を設けずにイオン交換に供されるので、光学部材の裏面もイオン交換がなされる。その結果、当該部位の結晶構造の変化、結晶格子間へのプロトンの侵入等により該部材に過大な応力が生じて破壊に至ると考えられる。
【0008】
第2の要因はイオン交換の際の光学部材の急激な温度変化である。図2は工程の進行(時間)と光学部材の温度との関係を示すグラフである。液状交換源への浸漬の際には室温T3から反応温度T1にまで急激に温度が上昇し、液状交換源から引き上げる際には温度T1から室温T3にまで急激に温度が下降する。このような急激な温度変化により該部材に大きな熱膨張(収縮)が生じ、その際の過大な応力により破壊に至ると考えられる。
【0009】
本発明者らは以下の特徴を有する本発明を完成した。
(1)イオン交換可能な温度T1に加熱された液状交換源に、光導波路を形成すべき光学部材を浸漬して、イオン交換することによって該光学部材に光導波路を形成する工程を有する光導波路付き部材の製造方法において、
前記液状交換源に前記光学部材を浸漬する前に、前記光学部材の光導波路を形成すべき面の反対側の面をマスク層で覆う工程、
上記液状交換源に上記光学部材を浸漬する直前に、T 1 +10℃≧T 2 ≧T 1 −50℃の条件を満たす温度T 2 の雰囲気に、前記光学部材を3分間以上保持する工程、ならびに、
上記液状交換源に上記光学部材を浸漬してイオン交換する工程に次いで、前記光学部材を前記液状交換源から取り出して、直ちに、T 1 +10℃≧T 2’ ≧T 1 −50℃の条件を満たす、温度T 2’ の雰囲気に3分間以上保持してから室温にて冷却する工程、
をさらに有することを特徴とする光導波路付き部材の製造方法。
(2)上記マスク層が金属膜および/または金属酸化物膜からなる層である上記(1)に記載の製造方法。
(3)上記光学部材の光導波路を形成すべき面の反対側の面をマスク層で覆う工程が、光導波路を形成すべき面において光導波路とすべき部分以外をマスク層で覆うパターニング工程の後に施される、上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)上記パターニング工程が、光学部材の光導波路を形成すべき面の全面にマスクを形成した後に導波路を形成する部分に形成されたマスク層のみをエッチングで除去することによって行われる上記(3)記載の製造方法。
(5)上記光学部材が、強誘電体結晶からなる基板であるか、または光学ガラスからなる基板である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)上記イオン交換が、上記液状交換源のプロトンと上記光学部材の陽イオンとの交換である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、光学部材の裏面におけるイオン交換を防ぐ手段(以下、第1の手段ともいう)および/またはイオン交換の際の光学部材の急激な温度変化を防ぐ手段(以下、第2の手段ともいう)を講じることを特徴とする。その具体的な手段を以下に説明する。
【0011】
第1の手段、すなわち、光学部材のうち光導波路を形成する面と反対側の面(裏面)においてイオン交換がなされることを防ぐための具体的な手段は、液状交換源に光学部材を浸漬する前に、該部材の裏面をマスク層で覆うことである。
【0012】
当該手段は、裏面をマスク層で覆われた光学部材を液状交換源に浸漬することで、当該裏面においてイオン交換が起こり難くなることを図るものである。したがって、光学部材の裏面をマスク層で覆うタイミングは光学部材を液状交換源に浸漬する前であれば特に制限はない。
【0013】
マスク層としては金属膜、金属酸化物膜(例;誘電体膜)、有機薄膜からなる層などが挙げられるが液状交換源に対して耐性を有していれば特に限定されず、例えば液状交換源として安息香酸を用いる場合にはマスク層としてはSiO2膜からなる層が好ましく、液状交換源としてピロリン酸を用いる場合にはマスク層としてはTa膜からなる層が好ましい。マスク層の厚みは、光学部材へのプロトンの侵入を防止し、かつ、所望のパターニングの精度を実現できる程度、具体例としてはSiO2膜からなる層の場合は0.2〜0.3μmが好ましく、Ta膜からなる層の場合は0.03μm以上が好ましい(より好ましくは0.03μm程度)。マスク層を形成する方法は後述する光学部材の光導波路を形成する面(表面)に形成するマスクパターンの形成方法と同一でもよいし、他の公知技術を参照してもよい。なお、後述の実施例においてマスク層の形成方法の一例を記載する。
【0014】
第2の手段、すなわち、イオン交換の際の光学部材の急激な温度変化を防ぐための具体的な手段は、液状交換源に光学部材を浸漬する直前に、あるいは、浸漬する直前と該液状交換源から取り出した直後との両方に、該部材をT1に近似する温度T2(T2')で保持する工程を設けることである。
【0015】
当該手段を講じることで光学部材の温度変化が緩やかになり、その結果として該部材に生じる応力が小さくなって該部材が割れ難くなる。したがって、この手段を講じる場合は、後述のT1に近似する温度T2に至らしめた光学部材を冷ますことなく液状交換源に浸漬することが必要であり、液状交換源への浸漬前に加え、可能であれば、さらに該液状交換源から取り出した直後の(冷却前の)光学部材を温度T2'で保持することが好ましい。
【0016】
図3は、第2の手段を講じる場合における、工程の進行(時間)と光学部材の温度との関係を示すグラフである。当該手段を講じる場合は、液状交換源に浸漬する直前に光学部材をT1に近似する温度T2にて保持することは必須であり、一方、液状交換源から取り出した直後に光学部材をT1に近似する温度T2'にて保持すること(図3A)は好ましいことではあるが必須ではない。特に、液状交換源の種類(例えば、温度T2'において液体であるピロリン酸等)によっては、液状交換源から取り出した直後に光学部材に付着した該液状交換源と意図しないイオン交換が生じるのを防ぐために、温度T2'で保持せずに直ちに急冷せざるを得ない場合(図3B)もある。
【0017】
温度T1の液状交換源に浸漬する際の温度変化を小さくするためには、上記「T1に近似する温度T2」は、T1−50℃以上であり、好ましくはT1−20℃以上であり、かつ、T2はT1+10℃以下であり、好ましくはT1+5℃以下である。同様の理由によりT2'の温度範囲もT2と同様であるが、T2とT2'が同じ温度である必要はない。また、室温T3からT2へ昇温する際は、その温度変化は急激でないことが好ましい。
【0018】
この手段を講じる場合には、光学部材を十分に昇温させるため、温度T2において3分間以上保持することが必要であり、10分間以上保持することが好ましい。一方、製造コストの低減等の観点から、温度T2における保持時間は15分間以下であることが好ましい。液状交換源から取り出した直後に光学部材を温度T2'にて保持する場合も、その保持時間は同様の理由によりT2の場合と同様であるが、両者が同じ保持時間である必要はない。
【0019】
以上、第1の手段、第2の手段を各々単独で講じても本発明の効果を奏し得るが、両手段を併用することが本発明を一層実効有らしめることができる点で好ましい。このような手段を講じることを特徴とする本発明の製造方法を以下、さらに説明する。
【0020】
本発明で用いる光学部材の材料は、イオン交換によって光導波路が形成可能な材料であればよく、強誘電体結晶、光学ガラスなどが挙げられる。
強誘電体結晶としては、例えば、LiNbO3、LiTaO3、XATiOXBO4(XA=K、Rb、Tl、Cs、XB=P、As)などの代表的なものや、これらにMgなどの種々の元素をドープしたものが挙げられる。
光学ガラスとしては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラスなどが挙げられる。
【0021】
光学部材の形態は、最終製品となる素子・デバイスと同様の形状であっても、該素子・デバイスへ分断する前の大面積の基板・ウエハ・母材として、ロッド状、板状などを呈してもよい。例えば、円板状のLiNbO3結晶ウエハに光導波路を形成し、個々の素子へ分断するような場合、もとのウエハの大きさとしては、厚さ0.1mm〜1.0mm程度、ウエハ直径は2インチ〜5インチ程度のものが例示される。
【0022】
光学部材の好ましい態様として、LiNbO3結晶などの強誘電体結晶基板に、擬似位相整合法を適用した波長変換動作が可能な様に周期的分極反転構造を形成したもの(分極反転結晶基板)が挙げられる。該分極反転結晶基板に対して、本発明の製造方法を適用し、その周期的分極反転構造を横切るように光導波路を形成することで、光導波路付き部材は光導波路型波長変換素子となる。
【0023】
本発明の製造方法によって製造すべき光導波路付き部材は、前記光学部材に光導波路を形成したものであって、それ自体が素子や結合部品などの最終製品であってもよく、また、さらなる加工・処理が施される中間部材であってもよい。
【0024】
光学部材に対するイオン交換は、該部材の全面に対して行ってもよいが、直線帯状や特定のパターンにて光導波路を描くような場合には、図4に示すように、光学部材1の表面のうち光導波路とすべき部分11だけを露出させ、それ以外の部分をマスク層2で覆う。上述した本発明の第1の手段を講じる場合には、光学部材1の裏面、すなわち光導波路を形成しない面をもマスク層で覆う。このマスク層の付与された光学部材1を液状交換源20に浸漬し、露出部分だけをイオン交換し光導波路とする。
【0025】
マスク層の材料は金属膜、金属酸化物膜(例;誘電体膜)、有機薄膜などが挙げられ、マスクパターンの形成方法はフォトリソグラフィー技術などが挙げられる。これらマスク層の形成に関しては、公知技術を参照してもよい。
【0026】
液状交換源は、イオン交換すべき光学部材の材料に応じて選択すればよく、従来技術を参照してもよい。例えば、従来技術の説明で述べたとおり、LiNbO3、LiTaO3に対しては、プロトン交換可能な液状交換源として、安息香酸、ピロリン酸などの溶液が挙げられる。また光学ガラスに対しては、AgNO3、KNO3、TlNO3などの溶融塩が挙げられる。
【0027】
イオン交換温度T1は、光学部材と液状交換源との組み合わせによっても異なるが、目標とすべき温度は該して200℃〜300℃程度である。この温度の範囲は、あくまで目標値として選択できる範囲であって、この範囲の中からある目標温度を選択したならば、意図せぬ変動量はゼロに近いことが好ましい。
【0028】
例えば、LiNbO3基板を、ピロリン酸に浸漬する場合には、目標とすべき温度T1は200℃〜300℃、好ましくは210℃〜250℃であり、できる限り変動させないように温度制御することが好ましい。温度制御の手法に起因する変動量や定常偏差は、±5℃程度以内とすべきであって、これらは、温度制御の手法や製品に求められる品質に応じて適宜決定すればよい。
【0029】
上述した本発明の第2の手段を講じる場合は、光学部材を液状交換源に浸漬する前に、液状交換源を温度T1にまで昇温しておき、光学部材を温度T2において3分間以上保持しておくことは上述したとおりである。
【0030】
液状交換源に光学部材を浸漬する時間には限定はないが、実例としては10秒〜10時間程度が挙げられる。より具体的な例としては、ピロリン酸にLiNbO3を浸漬する場合のようにイオン交換速度が速く、しかも深さ数μm程度の比較的浅い光導波路を形成するような場合には、浸漬保持時間は20分以下、特に5分〜15分程度となる。
【0031】
イオン交換を終了させるには、浸漬解除(光学部材を液状交換源から引き上げる)すればよい。液状交換源の性質上、浸漬解除後急冷した方がよい場合(上述)以外は、光学部材を液状交換源から引き上げた直後に上述の温度T2'にて3分間以上保持することが好ましい。その後、例えば、室温T3にて放置すること等により光学部材を冷却する。必要に応じて冷却中に光学部材を回転させて乾燥させたり、洗浄して液状交換源を除去してもよい。
【0032】
イオン交換後の光学部材に対するアニール処理や端面への光学研磨など、光導波路形成のために必要な処理は適宜加えてよく、従来技術を参照してもよい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を示すことにより本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例の記載により何ら限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
加工対象とした光学部材は、MgO添加LiNbO3結晶基板に周期的分極反転構造(分極反転周期7μm)を形成してなる分極反転結晶基板であって、板厚0.3mm、10mm×10mmの、板状物である。図1は、実施例、比較例における導波路付き部材の製造プロセスを示すものである。以下、図1を参照して説明する。
【0035】
この光学部材1(図1(A))の表面(導波路を形成する面)の全面にSiO2からなる厚み0.2μmのマスク層2をスパッタリング法によって形成した(図1(B))。このマスク層2の全面に厚み1μmのレジスト層3をスピンコートによって形成した(図1(C))。このレジスト層3をフォトマスクを用いて露光および現像することにより、導波路を形成する部分のみレジスト層3を除去するパターニングを行った(図1(D))。パターニングされた部分に露出するマスク層2をフッ酸水溶液でエッチングで除去して光学部分のパターン部分11を露出させた(図1(E))。その後、レジスト層3を剥離液を用いて除去した(図1(F))。
次に、光学部材1の裏面の全面にSiO2からなる厚み0.2μmのマスク層4をスパッタリングによって形成した(図1(G))。
【0036】
図4に模式的に表される液状交換源20(安息香酸)を温度T1(180℃)に加熱した。これとは別に温度T2(170℃)に加熱した加熱装置(図示せず)に、図1(G)までの加工がなされた光学部材1を投入して3分間保持した。その後、該光学部材1を取り出し、直ちに上述の液状交換源20に浸漬して60分間保持した。この間に、上述の加熱装置を温度T2'(170℃)に調節した。上記の時間の経過後、液状交換源20から光学部材1を取り出し、直ちに、前記加熱装置に投入して5分間保持した。その後、この光学部材1を室温T3にて放置したところ、約0.2時間後に冷却が完了した。これによりプロトン交換の工程が完了し、光導波路12を形成した(図1(H))。
【0037】
その後、光学部材1の表裏両面のマスク層(符号2および4)をフッ酸水溶液でエッチングを行うことにより除去し(図1(I))、さらに、350℃、4時間の条件でアニール処理を施して、導波路付き部材を得た。
【0038】
[実施例2]
上記液状交換源20から取り出した光学部材1を温度T2'にて保持する工程を省いて直ちに室温T3にて放置したことの他は、実施例1と同様の操作により導波路付き部材を得た。
【0039】
[実施例3]
上記液状交換源20に浸漬する前に光学部材1を温度T2にて保持する工程を省いたことの他は、実施例2と同様の操作により導波路付き部材を得た。
【0040】
[実施例4]
上述した、光学部材1の表面のレジスト層3を除去した(図1(F))後、裏面にマスク層4を設ける工程を省いて直ちに温度T2の加熱装置に投入したことの他は、実施例1と同様の操作により導波路付き部材を得た。
【0041】
[実施例5]
上記液状交換源20から取り出した光学部材1を温度T2'にて保持する工程を省いて直ちに室温T3にて放置したことの他は、実施例4と同様の操作により導波路付き部材を得た。
【0042】
[比較例1]
上記液状交換源20に浸漬する前に光学部材1を温度T2にて保持する工程を省いたことの他は、実施例5と同様の操作により導波路付き部材を得た。当該方法は、従来技術の製造方法に相当する。
【0043】
[評価]
各実施例、比較例においては、各々18個の導波路つき部材を製造した。そのうち、製造工程中に部材が割れなかったものの割合は、下記表1のとおりである。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、光学部材の裏面におけるイオン交換を防ぐ手段および/または、イオン交換の際の光学部材の急激な温度変化を防ぐ手段が講じられる。前者による結果、光学部材の裏面の化学構造に変化が生じ難くなり、結晶構造等は元の安定なままであると考えられる。一方、後者による結果、光学部材の急激な熱膨張(収縮)が抑制され、過大な応力が生じ難くなると考えられる。これら2つの手段のうちの1つを講じるだけであっても、導波路付き部材の製造工程において光学部材が割れることを低減し得る。両手段を併用すればその効果はさらに高まり、導波路付き部材の歩留まりが向上して、結果としてその製造コストの低減にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光導波路付き部材の製造プロセスを模式的に示す図である。
【図2】工程の進行(時間)と光学部材の温度との関係を示すグラフ図である。
【図3】工程の進行(時間)と光学部材の温度との関係を示すグラフ図である。
【図4】光導波路付き部材の製造方法における工程の重要部分を概略的に示す図である。
【符号の説明】
1 光学部材
2 マスク層
3 レジスト層
4 マスク層
11 パターン部分
12 光導波路
20 液状交換源
Claims (6)
- イオン交換可能な温度T1に加熱された液状交換源に、光導波路を形成すべき光学部材を浸漬して、イオン交換することによって該光学部材に光導波路を形成する工程を有する光導波路付き部材の製造方法において、
前記液状交換源に前記光学部材を浸漬する前に、前記光学部材の光導波路を形成すべき面の反対側の面をマスク層で覆う工程、
上記液状交換源に上記光学部材を浸漬する直前に、T 1 +10℃≧T 2 ≧T 1 −50℃の条件を満たす温度T 2 の雰囲気に、前記光学部材を3分間以上保持する工程、ならびに、
上記液状交換源に上記光学部材を浸漬してイオン交換する工程に次いで、前記光学部材を前記液状交換源から取り出して、直ちに、T 1 +10℃≧T 2’ ≧T 1 −50℃の条件を満たす、温度T 2’ の雰囲気に3分間以上保持してから室温にて冷却する工程、
をさらに有することを特徴とする光導波路付き部材の製造方法。 - 上記マスク層が金属膜および/または金属酸化物膜からなる層である請求項1に記載の製造方法。
- 上記光学部材の光導波路を形成すべき面の反対側の面をマスク層で覆う工程が、光導波路を形成すべき面において光導波路とすべき部分以外をマスク層で覆うパターニング工程の後に施される、請求項1または2に記載の製造方法。
- 上記パターニング工程が、光学部材の光導波路を形成すべき面の全面にマスクを形成した後に導波路を形成する部分に形成されたマスク層のみをエッチングで除去することによって行われる請求項3記載の製造方法。
- 上記光学部材が、強誘電体結晶からなる基板であるか、または光学ガラスからなる基板である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 上記イオン交換が、上記液状交換源のプロトンと上記光学部材の陽イオンとの交換である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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