JP3898421B2 - 電気洗濯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯槽内に入れた衣類を洗濯する電気洗濯機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、洗濯機の大容量化に伴って、洗濯物(汚れた衣類)を洗濯機の槽内に一時ためておき、まとめ洗いする人が増えてきている。汚れた衣類が槽内に一時保管される期間は、休日に洗濯する人で数日間、毎日洗濯する人で半日程度である。
この保管期間が長かったり、また気温が高かったりすると、汗や汚れを養分として微生物が増殖し、衣類から臭気を発生する。
【0003】
また、以前より洗濯機を長期間使用していると、槽に付着した洗剤成分や汚れなどを養分として黴などの微生物が増殖してコロニーを形成し、洗濯中に剥離して衣類繊維に絡み付くことが知られている。
特に、衣類繊維に微生物が絡み付いた場合は、洗濯終了後であっても、槽内に放置したままにすると、衣類から臭気を発生し、さらには、これを乾燥機にかけた後も臭気が残るという課題があった。
【0004】
かかる課題に対し、例えば特開平11−244581号公報では、微生物が槽内で増殖するのを防ぐことを目的に、洗濯開始時もしくは終了時に槽内を抗菌効果のある薬液で洗浄する技術が提案されている。図6はそこで開示されている電気洗濯機の洗濯槽の縦断面図である。図において1は脱水槽を兼ねた洗濯槽、2は抗菌効果のある薬液、3は回転翼、4は薬液移送管、5は薬液注ぎ口である。
【0005】
動作について説明する。図は衣類を洗濯槽に入れる前の薬液による洗浄処理を示したものである。洗濯槽1には薬液2が入っており、回転翼3を駆動すると、薬液2が薬液移送管4を通り洗濯槽1の上部に送られる。送られた薬液2は薬液注ぎ口5を通過し、洗濯槽1の内部に戻る構成となっている。薬液2を効果的に降り注ぐため、薬液注ぎ口5は洗濯槽1上部の円周の周りに設けてある。また脱水運転時の遠心力を利用して薬液2を洗濯槽1に効果的に接触させる。このようにすれば薬液2は洗濯槽1にまんべんなく行き渡るようになり、付着している微生物をほぼ完全に取り除くことが出来る。
【0006】
微生物が取り除かれた洗濯槽1は薬液2を洗い落とした後、衛生性が高められた洗濯槽1として衣類を洗濯するために利用される。ここで洗濯終了後は、衣類に付着していた微生物が洗濯水に混入して洗濯槽1に付着するようになるため、上記と同じ処理を繰り返して洗濯槽1の衛生性を再び確保する必要がある。このような薬液2として抗菌効果が持続する点から有機系薬剤が望ましく、さらには臭い、安全性、抗菌効果を考慮すると、逆性石鹸の主成分である第4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウムなどが望ましい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来の洗濯機では、洗濯槽に一時保管していた洗濯前の衣類に微生物が増殖して臭気を発生する課題や、洗濯槽で増殖した微生物が剥離して衣類繊維に絡み付くといった課題が生じていた。
【0008】
また、槽内で微生物が増殖するのを防ぐために案出された特開平11−244581号公報に開示された技術では、定期的に多量の薬液を補給しなければならない、薬液の取扱いに注意を要する、また衣類(洗濯物)に薬液が付かないように槽に付着した薬液を十分に洗い流さなければならないなど、煩雑な作業が必要とされていた。
【0009】
本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、簡単な処理によって洗濯前・後の衣類、及び洗濯槽における微生物の増殖を防ぎ、衣類の衛生性を向上させるとともに、臭気の低減を図ることを目的としたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電気洗濯機は、洗濯槽もしくは洗濯用ドラムを備えた電気洗濯機において、該洗濯槽もしくは該洗濯用ドラム内へ霧状もしくはシャワー状の水を噴射するように配設された散水手段と、前記洗濯槽もしくは前記洗濯用ドラム内へコロナ放電によって発生したオゾン、ラジカル種を導入するように配されたコロナ放電部とを備え、前記コロナ放電部から発生させたオゾン、ラジカル種を洗い流すように前記散水手段への水の供給をON/OFFさせる散水用バルブを有するものである。
【0011】
また、給水前の洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内に保管された衣類に対し、コロナ放電部から発生したオゾン、ラジカル種を洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内に所定量注入するとともに、洗濯槽に配された攪拌手段もしくは洗濯用ドラムによって衣類を所定時間攪拌し、その後、散水用バルブをONして散水手段によって洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内へ霧状もしくはシャワー状の水を所定時間噴射するように構成したものである。
【0012】
さらにまた、洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内に衣類が保管されていない状況のもとで、コロナ放電部から発生したオゾン、ラジカル種を洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内に所定量注入して所定時間保持し、その後、散水用バルブをONして散水手段により洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内へ霧状もしくはシャワー状の水を所定時間噴射するように構成したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気洗濯機の縦断面図である。従来例と同一もしくは同一相当部分には同じ符号を付して表し、説明を省略する。
図において6は上面に開口を有す外箱、7は図示されていない弾性吊持機構によって外箱6に吊下支持された受水槽である。また、受水槽7内には洗濯槽1が回転自在に配設され、洗濯槽1内の中心底部には回転翼3が設けてある。8は洗濯槽1内に投入された衣類、9は受水槽7の下部に配設され、回転翼3や洗濯槽1を回転駆動する駆動機構であり、モータや減速機構などから構成されている。10は副次的にオゾンや化学的に活性の高いラジカル種を発生させるコロナ放電部である。コロナ放電部10の一端にはファン11が配設され、他端にはダクト12が配設されている。またダクト12のもう一端は、洗濯槽1の蓋13に設けられた開口部に繋がっている。
14、15、16はそれぞれ洗濯槽1内へ霧状もしくはシャワー状の水を噴射する散水手段、この散水手段に対して水の供給をON/OFFする散水用バルブ、洗濯槽1に対して水の供給をON/OFFする給水用バルブである。
【0014】
ここで図2をもとにコロナ放電部10の構成と働きについて説明する。
図において17は電源部、18は針状突起が形成されている金属からなる放電電極、19は接地された対向電極であり、放電電極18と対向電極19は対を成し、コロナ放電部10を形成している。
【0015】
動作について説明する。電源部17により放電電極18に負の高電圧を印加すると、接地されている対向電極19との間にコロナ放電が起こり、放電電極18の針状突起から放電電子が放出される。この放電電子は放電電極18と対向電極19の間を流れる空気中の酸素分子や水分子と衝突して、これら分子の分子結合を切断する。これによって化学的に活性の高い酸素ラジカルや水酸基ラジカルなどが生成する(以下、これらラジカルをラジカル種と総称する)。同時に分子結合を切断された時に出来た酸素原子は、近傍にある酸素分子と結合して新たにオゾンを形成する。
【0016】
このようにして副次的に生成したラジカル種やオゾンは、強い酸化力を有しており、臭気を有する有機分子は、水や二酸化炭素などの簡単な分子に酸化分解される。また微生物は、細胞膜などが破壊されて不活性化される。
【0017】
次に、本発明の実施の形態1に係る洗濯機の動作の流れを示すフローチャートを図3に示す。図に基づいて動作の流れを説明する。洗濯機の運転をスタートさせると(ステップS001)、図示されていない水位センサによって洗濯槽1内に水があるかどうかを検知する(ステップS002)。
水がない場合には、負荷量検知とオゾン・ラジカル処理が行なわれる(ステップS003)。この処理が終わると、給水工程に移って(ステップS004)、通常の洗濯機と同様に洗濯工程(ステップS007)、すすぎ工程(ステップS008)、脱水工程(ステップS009)を逐次行い、一連の動作が終了する(ステップS010)。
【0018】
ここでステップS003の動作について、図4のタイミングチャートをもとに詳しく説明する。図において(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれコロナ放電部、回転翼、散水用バルブ、給水用バルブに対するON/OFF動作を同一の時間軸(タイミング)で表したものである。
【0019】
オゾン・ラジカル処理では、まずコロナ放電部10が通電され、発生したラジカル種やオゾンは、ファン11からの送風に乗ってダクト12を介し、洗濯槽1内に注入される。注入後、少し間を置いて回転翼3が駆動される。回転翼3は右回転と左回転を交互に複数回繰り返した後、停止する。これにより衣類8は攪拌され、注入されたラジカル種とオゾンは槽内にある衣類8とまんべんなく接触するようになる。
【0020】
この時、槽の蓋13と図示されていない排水口は閉じられており、槽は閉塞しているので、人体に有害なラジカル種やオゾンは槽内から漏れることはなく、安全である。また、槽の容積が小さいため、槽内のラジカル種やオゾンは直ちに高濃度となり、衣類に付着している臭気分子や微生物は、短時間のうちに酸化分解されたり、不活性化されたりする。
【0021】
次にコロナ放電部10への通電が切られ、散水用バルブ15がONされ、散水手段14から霧状もしくはシャワー状の水(水粒)が洗濯槽1内に噴射される。水粒がまんべんなく槽内に行き渡るように散水手段14は槽内の上部、蓋13の近傍に配設されている。これにより雰囲気中のオゾンやラジカル種は水粒に溶け込んで洗い流される。このようにして水粒が噴射されてオゾンやラジカル種が洗い流された後、散水用バルブ15はOFFされる。この後、給水用バルブ16がONされ、通常の洗濯工程へと移行する。
【0022】
なお、ステップS003では、オゾン・ラジカル処理と併行して回転翼3の駆動OFF時の減速度合いを回転センサによって検知することにより負荷量(洗濯槽1内に投入された衣類8の量)を検知している。
【0023】
この負荷量検知はオゾン・ラジカル処理の前に行っても良い。このようにすれば衣類の量に適合したオゾン・ラジカル種の量がわかり、槽への適正な量の注入が可能となる。
【0024】
また、ここでは全自動洗濯機を例に取り上げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。2槽式、ドラム式などの洗濯機であっても同様である。
特にドラム式洗濯機の場合には、ドラムそのものが回転翼の替わりに衣類を攪拌する手段として働く。
【0025】
以上の構成により給水前の衣類に関し、付着した臭気分子や微生物を酸化分解したり、不活性化したりすることができる。またこの時、洗濯槽が衛生的(クリーン)であれば、洗濯終了後も衣類に対する臭気の低減効果と衛生性は維持される。
【0026】
次に洗濯槽の衛生性を高める、即ち洗濯槽をクリーンにする工程(以下、クリーンコースと呼称)について説明する。
図5はクリーンコースにおける動作の流れを示すフローチャートである。
図に基づいて動作の流れを説明する。洗濯槽に衣類が保管されていない状況のもとで、ユーザが操作パネル(図示せず)によりクリーンコースを選択すると、オゾン・ラジカル処理(ステップS005)がスタートする。即ちコロナ放電部10が通電され、発生したラジカル種やオゾンは洗濯槽1内に導かれる。この時、蓋13と図示されていない排水口は閉じられており、槽は閉塞しているので、ラジカル種やオゾンは漏れることはなく、安全である。また槽は小さいので、ラジカル種やオゾンは隅々まで行き渡り、短時間のうちに高濃度となる。したがってこの状態を暫く保持すれば、洗濯槽1、回転翼3、受水槽7などに付着した微生物を全て不活性化することができる。
【0027】
所定時間経過後、オゾン消し処理(ステップS006)として、散水手段14から水粒を洗濯槽1内に噴射し、同時に排水口が開放される。前述のように散水手段14は槽の上部、蓋13の近傍に配されており、水粒は槽の隅々に行き渡り、人体に有害なラジカル種やオゾンは水粒に溶け込む。これら水粒はやがて凝集して大きな水滴となり、流れをつくって排水口から排出される。
最後に洗濯槽1を短時間、脱水回転させて洗濯槽1や受水槽7についた水滴を排出する。
【0028】
以上の動作により洗濯槽1、回転翼3、受水槽7における微生物の増殖を防ぐことができ、衛生性が保たれる。これにより微生物のコロニーが剥離して衣類8に絡み付くという不具合は解消される。
【0029】
【発明の効果】
本発明の電気洗濯機は以上のように構成されているので以下の効果を奏する。
【0030】
衣類に付着した微生物や臭気分子を不活性化したり、酸化分解したりすることが可能となり、洗濯終了後の衣類に対する衛生性が向上し、臭気が低減される。
【0031】
また槽内に付着した微生物を不活性化することが可能となり、槽内の衛生性が向上するとともに、洗濯終了後の衣類に対しても衛生性が向上し、臭気が低減される。
【0032】
またコロナ放電部により空気中の水分子や酸素分子からラジカル種やオゾンをつくり、これを用いて洗濯兼脱水槽における微生物の増殖を防ぐようにしたので、特殊な薬液が不要になり経済的になるとともに、薬液を定期的に供給する作業が不要となり利便性が向上する。
【0033】
またラジカル種やオゾンを含む空気によって槽内のクリーン化を図るようにしたので、薬液を槽内の隅々に行き渡らせるための脱水運転などが不要となり、クリーン化が簡単に実現できるようになる。
【0034】
さらにまた、特殊な薬液を不要にし、使用後のラジカル種やオゾンを霧状もしくはシャワー状の水で洗い流すように構成したので、給水前の洗濯槽に保管された衣類の衛生性を向上させる工程と、洗濯槽の衛生性を保つ工程を、洗濯工程の前後にそのまま連続的に繋げることが可能となり、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に係る洗濯機の縦断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態1に係るコロナ放電部の概略構成図である。
【図3】 本発明の実施の形態1に係る洗濯機の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】 本発明の実施の形態1に係るオゾン・ラジカル処理および給水工程のタイミングチャートである。
【図5】 本発明の実施の形態1に係る洗濯機のクリーンコース動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】 従来の洗濯機における洗濯槽の縦断面図である。
【符号の説明】
1 洗濯槽、2 薬液、3 回転翼、4 薬液移送管、
5 薬液注ぎ口、6 外箱、7 受水槽、8 衣類、9 駆動機構、
10 コロナ放電部、11 ファン、12 ダクト、13 蓋、
14 散水手段、15 散水用バルブ、16 給水用バルブ、
17 電源部、18 放電電極、19 対向電極
Claims (3)
- 洗濯槽もしくは洗濯用ドラムを備えた電気洗濯機において、該洗濯槽もしくは該洗濯用ドラム内へ霧状もしくはシャワー状の水を噴射するように配設された散水手段と、前記洗濯槽もしくは前記洗濯用ドラム内へコロナ放電によって発生したオゾン、ラジカル種を導入するように配されたコロナ放電部とを備え、前記コロナ放電部から発生させたオゾン、ラジカル種を洗い流すように前記散水手段への水の供給をON/OFFさせる散水用バルブを有することを特徴とする電気洗濯機。
- 給水前の前記洗濯槽もしくは前記洗濯用ドラム内に保管された衣類に対し、前記コロナ放電部から発生したオゾン、ラジカル種を前記洗濯槽もしくは前記洗濯用ドラム内に所定量注入するとともに、前記洗濯槽に配された攪拌手段もしくは前記洗濯用ドラムによって前記衣類を所定時間攪拌し、その後、前記散水用バルブをONして前記散水手段によって前記洗濯槽もしくは前記洗濯用ドラム内へ霧状もしくはシャワー状の水を所定時間噴射するように構成したことを特徴とする請求項1記載の電気洗濯機。
- 前記洗濯槽もしくは前記洗濯用ドラム内に衣類が保管されていない状況のもとで、前記コロナ放電部から発生したオゾン、ラジカル種を前記洗濯槽もしくは前記洗濯用ドラム内に所定量注入して所定時間保持し、その後、前記散水用バルブをONして前記散水手段により前記洗濯槽もしくは前記洗濯用ドラム内へ霧状もしくはシャワー状の水を所定時間噴射するように構成したことを特徴とする請求項1記載の電気洗濯機。
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