JP3897975B2 - 磁薬処理によるスケール化防止方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、冷却システム、ボイラー、熱交換機等の装置内に用いられている循環水及び給水の中に含まれているスケール化物質が、その装置の通水路面に付着固化してできるスケールの発生を防止し、また付着したスケールを溶解除去するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水には、有機物、生菌、微粒子、シリカ、溶存気体など水中に溶解ないし分散している物質が含有されている。
その物質が各種装置内の通水路内面に付着固化(スケール化)すると、そのスケールによって水路が狭められたり、弁の機能を低下させたりし、円滑な通水や水量制御など障害となることがあるためそのようなスケールは速やかに除去しなければならない。
【0003】
これまでに、冷却システム、ボイラー、熱交換機等の装置内に水を循環させて用いる装置の循環水及び給水に関して、その装置の通水路面に付着するスケールの発生を防止する方法が提案されている。
【0004】
そのスケール防止の方法としては、大きく分けて薬剤による処理法と磁気による処理方法の二系統がある。
【0005】
その内薬剤による処理法については、薬品の化学反応によってスケール物質を溶解するもので、そのスケール物質のうち炭酸カルシウム(CaCO3)に対しては塩酸等の強酸を加えて溶解し、またシリカ分についてはカルボン酸系の高分子分散剤を用いて分散化(再結晶化を防止)することが行われている。
【0006】
この方法では、強酸を使用するため装置部品を腐食させる虞や、その水の環境に対する有害性が指摘されている。このため最終的に水の中性化をして排出しなければならない。酸性化した水を再度中和するためには、新たな薬品(中和剤)を使用し、またタンク、コントローラ、ラインミキサーなどの中和するための設備も新たに設けなければならない。
【0007】
また、化学洗浄では、フッ化水素やフッ化アンモニウムなど有毒な薬品を用いて溶解させることが行われているが、その薬品では鉄や銅製などの金属配管を腐食させてしまい、配管を痛めないでシリカを完全に除去することは難しいのが現状である。
【0008】
そして、それらの強酸や高分子分散剤などの薬品を使用する時には、水中濃度を一定に制御し続けなければならないので、そのための管理も必要となる。
また、その結果、廃棄される濃縮水はそれらの薬品の投入によりBOD、COD値を上昇させ、そのような排水の処理にはさらに水質浄化技術や浄化設備を要するなど多大なコストがかかることになる。
【0009】
また、磁気による処理方法については、特開平6−39395号公報に示されているように、装置内の流通水に対して磁束密度1.2T乃至1.5T程度の強磁界中を強制的に通過させる方法で行われている。この方法ではスケール物質のうち、主として炭酸カルシウムに有効であり、その炭酸カルシウムとの混合スケールについてはその炭酸カルシウムが除去される結果として一緒に除去される付随的なものであった。
したがって、磁気による効果が期待できないシリカスケールが主となる水系においては、一旦できてしまったスケールを溶解除去させることは現状においては非常に困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、冷却システム、ボイラー、熱交換機等の水を循環させて用いる装置の循環水及び給水の処理方法に関し、その装置の水路内に付着するスケールの発生を防止し、また付着したスケールを溶解除去するための、最小限度の薬剤使用量で且つ磁気による処理方法では困難なスケールを溶解除去する効果的な方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、装置内に使用する水を、磁束密度0.5T乃至3Tの強磁界中に0.5m/秒以上の流速で一回又は複数回通過させるとともにその水にハロゲン系、有機窒素系、有機臭素系、有機窒素硫黄系、過酸化水素、過酢酸及びグルタルアルデヒドのうち少なくとも一つから成るスライム除去剤を0.5〜5ppmの濃度になるように添加する。
そして、水に含有しているスケール化物質を分散溶解させてスケール化を防止することを特徴とする磁薬処理によるスケール化防止方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を以下詳しく説明する。
【0013】
通常、地下水や水道水には炭酸カルシウムやシリカなどのスケール物質が含まれている。
本発明は、装置内に使用するそのような水を、磁束密度0.5T乃至3Tの強磁界中に0.5m/秒以上の流速で一回又は複数回通過させるとともにその水にスライム除去剤を添加する。そして、磁界と薬品の相乗効果により水に含有しているスケール化物質を高効率に分散溶解させてスケール化を防止させる。
【0014】
これに用いるスライム除去剤としては、ハロゲン系、有機窒素系、有機臭素系、有機窒素硫黄系、過酸化水素、過酢酸、グルタルアルデヒドなどを使用し、そのうちの一つでもまた複数の薬品の組み合わせによるものでも効果が得られる。
【0015】
そして、それらのスライム除去剤の使用量は、水中濃度を0.5〜5ppmとし、この濃度において、磁界を掛けることとに相乗効果が確実に得られると同時に薬剤多量使用による弊害を避けられる。
【0016】
なお、大きな磁束密度を得るには、電磁石によって、僅かな隙間の通水路を挟んで両側に磁束密度0.5T乃至3Tの強力な電磁石が対向している構造にすれば確実に0.5T乃至3Tの磁束密度の強磁界中に水を通過させることができる。
また、現在では強力な永久磁石が提供されており、そのような磁石対向型の構造にすれば0.5〜0.7Tの範囲の磁束密度を得ることができる。
【0017】
【実験例1】
スケール物質溶解の相乗効果を確認するために磁界を掛けることと薬品を用いることについての実験を行った。
【0018】
この実験では、水道水に含有しているスケール化物質を常温で約10倍に濃縮し、その水を電磁石によって磁束密度が1T(テスラ)の強磁界中を0.5m/秒の流速で通過させスライム除去剤と添加する方法で50時間の継続処理をした。
前記スライム除去剤として、ヒドラジンは0.5ppm、次亜塩素酸は0.3ppmを添加して行なった。
その実験結果は、次の図1に示すようであった。
【0019】
この図1には、50時間後、ヒドラジン及び次亜塩素酸塩の薬品処理のみの場合にはスケール残存率が90〜95%と殆ど溶解されなかった。また磁束密度が1Tの強磁界処理のみの場合にはスケール残存率が約80%とこれもあまり溶解されなかった。
しかし、ヒドラジンと電磁石よる磁界とを併用した場合においてはスケール残量率が60%であり、次亜塩素酸塩と電磁石よる磁界とを併用した場合においてはスケール残量率が50%といずれも大きな効果を得ることができた。
即ち、これにより磁界処理と薬品処理とを併用することによって、相乗効果が生まれスケール物質の溶解率を大幅に高めることが確認された。
【0020】
【実験例2】
次に、スライムがある場合において、磁束密度を変えていって、磁界中に通過させた時のスケール付着率について実験を行った。
そして、図2に示すような実験結果が得られた。
この図2に示めす結果からわかるように、スライムがない場合には磁束密度0.5〜1Tにかけてそのスケール付着率が7%から10%まで大幅に低下して行き磁束密度1.3Tからまた上昇に転じる。しかし、スライムがある場合にはスケール付着率が80%止まりとなって、シリカスケール溶解効果があまり期待できないことがわかる。
【0021】
【実験例3】
そこで次に、スライムがある場合とない場合とにおいて、磁束密度が異なる磁界中に水を通過させた時にさらに次亜塩素酸を加えた場合のシリカスケール溶解率の変化について見る実験を行った。
その実験結果は、図3に示すようであった。
【0022】
その図3の数値からは、スライムがあると単に磁束密度が異なる磁界中に通過させだけではスケール溶解率が低く、スライムがないと磁束密度0.5〜1.0T付近で20〜70%に急に高まっている。そしてさらに次亜塩素酸を添加するとシリカスケール溶解率が磁束密度0.5〜1Tにかけて約10%、磁束密度1.0T以上では約2〜5%程度高いことがわかる。
この実験では次亜塩素酸を使用したが、別の試験では別の塩素剤(塩素酸など)を使用したところ同様な相乗効果が確認されている。
【0023】
【実験例4】
次に、スライム除去剤の添加量の影響を確認するための実験を行ったところ、図4に示すような実験結果が得られた。
この実験では、薬品濃度1〜2ppmからシリカスケール付着率が低く推移しているのが確認できる。そして4〜5ppmからはそれ以上濃度を上げてもシリカスケール付着率があまり変わらないことがわかる。
【0024】
【実験例5】
次に、薬品の種類によるスケール残存率の試験をした。
【0025】
以上(2)〜(7)の薬品は、薬品不使用(1)の場合に比べるといずれもスケール残存率が14〜33%低下して、相当のケール溶解効果があることが確認された。
【0026】
【作用】
シリカスケールはケイ酸カルシウム、ケイ酸鉄、シリカなどの形でスケール化している。
それらの物質を含む水が強力な磁石間を通過すると、その強力な磁場でケイ酸イオンに含まれる酸素は常磁性なので磁場に反応しやすく、スケールを溶解させ作用が生じると考えられる。
そのスケール溶解についてのメカニズムについては、
先ず、図5に示すように、強磁場でラジカル発生が起こり、そのラジカルとケイ酸の反応によりケイ酸が重合し、そして次に、図6に示すように、分子間で引き合う力のバランスが崩れてカルシウム分子が引き抜かれことになる。即ちこの仕組みでスケールが溶解されることになると考えられる。
【0027】
そのような強磁場下の反応はスライムが無い場合には有効に行われるが、スライムがあると、上記実験例2に示されるように、スケールの溶解が阻害されることとなる。
そこで、スライム除去剤を加えることにより、まずスライムが除去され、スライムが減少した中で磁界処理による効果が発現される。そしてスケールの分散化が起こり効果的にスケールの発生を防止することができるようになる。
即ち、薬品処理のみによるシリカスケールの溶解困難性と磁界処理のみによるスライム存在下での溶解困難性の相互克服により初めて大きな相乗効果を発現するものである。
【0028】
【発明の効果】
本発明は以上のようであり、上記実験結果にも示されるように、磁気及び薬品の同時処理によってスケールの溶解効果が相乗的に発揮され、これまでの磁気や薬品による対独処理に比べてスケール溶解率が大幅に改善できるようになった。
特に高分子分散剤などは最小限の添加量で大幅に効果を高めることができ、この使用済みの水を排出しても環境負荷は微量に抑えられる。
【0029】
そして、各種装置のスケール化が効果的に防止されるようになることによって、それら装置のメンテナンス期間を延長することが可能となり、その設備費用及びランニングコストを大幅に削減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁界と薬品処理によるスケール物質溶解の相乗効果の実験結果を示すグラフ図。
【図2】スケール付着率に対するスライムの影響の実験結果を示すグラフ図。
【図3】磁束密度によるシリカスケールの溶解量の実験結果を示すグラフ図。
【図4】薬品濃度とスケール付着率の実験結果を示すグラフ図。
【図5】スケール物質を溶解する相乗効果の仕組みを示す模式図。
【図6】スケール物質を溶解する相乗効果の仕組みを示す模式図。
Claims (1)
- 装置内に使用する水を、磁束密度0.5T乃至3Tの強磁界中に0.5m/秒以上の流速で一回又は複数回通過させるとともにその水にハロゲン系、有機窒素系、有機臭素系、有機窒素硫黄系、過酸化水素、過酢酸及びグルタルアルデヒドのうち少なくとも一つから成るスライム除去剤を0.5〜5ppmの濃度になるように添加し、水に含有しているスケール化物質を分散溶解させてスケール化を防止することを特徴とする磁薬処理によるスケール化防止方法。
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