JP3895783B2 - 水性マニキュア剤の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はマニキュア剤の製造方法に関し、さらに詳しくは、実質的に水性のマニキュア剤として提供され、硬化後の樹脂被膜が水若しくは水と有機溶剤との均一混合物により除去可能な水性マニキュア剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
爪の美観を高めるために使用されるマニキュア剤は、一般には、有機溶剤にニトロセルロース系のラッカーを溶解させ、さらに種々の色調の顔料または色素を加えて製造されている。このようなマニキュア剤は、爪に塗布後、溶剤を揮発させることにより使用され、短時間で光沢に優れた塗膜(樹脂被膜)を与える。一方、爪上に形成された樹脂被膜はトルエン等の有機溶剤を用いて拭き取ることができるものである。
【0003】
しかしながら、この型のマニキュア剤は本質的に有機溶剤を含むものであり、使用に際して揮発する有機溶剤を使用者が吸引するという問題があった。また、一旦形成された塗膜は水により容易に除去されず、多量の有機溶剤により拭き取る必要があり、使用者の健康上好ましくなかった。さらに、有機溶剤によって爪や皮膚の生理機能が低下する場合もあった。このため、塗布に際して有機溶剤を使用せず、塗布乾燥後の塗膜が水若しくは水性溶剤により除去可能な水性マニキュア剤の開発が望まれていた。このようなマニキュア剤として、例えば、特開昭54-28836号公報に記載されたアクリル系の樹脂エマルジョンを含むマニキュア剤や特開昭60-166605 号公報に記載された水性ポリウレタン樹脂エマルジョンを含むマニキュア剤等が提案されている。
【0004】
一方、マニキュア剤の製造にあたり、樹脂エマルジョンに顔料を配合する工程は、最終製品であるマニキュア剤により形成される塗膜の色調や光沢、あるいは耐水性等の性能に大きな影響を与えることが知られている。特に、水性マニキュア剤の製造においては、このような傾向が顕著である。例えば、特公昭55-43445号公報や特公昭61-1043 号公報には、顔料を界面活性剤とともに水性樹脂エマルジョンに添加し、ディスパーで分散させる方法が開示されているが、このような方法では、顔料の分散が不十分で良好な発色は光沢が得られないという問題があった。また、顔料の平均粒径を0.5 μm 以下とした水性顔料分散液を着色剤として用いる方法が提案されている (特開平4-103516号公報)。しかしながら、この方法は顔料の微粒子化のために煩雑な工程が必要であった。
【0005】
エマルジョン塗料のような水性塗料の分野においては、あらかじめ顔料を界面活性剤等の分散剤とともに水中に添加し、サンドミル等の湿式粉砕機による処理をおこなって水性顔料分散液を調製し、これを水性樹脂エマルジョンに添加する方法が知られている。しかしながら、この方法では分散剤として界面活性剤等を多量に用いる必要があるので、その分散剤が塗膜の耐水性を低下させるという問題が生じるという問題があった。この理由から、マニキュア剤の属する技術分野においては、水性塗料の分野において汎用される上記水性顔料分散液をマニキュア剤に配合することは困難であると考えられていた(特開平4-103516号公報第2頁右上欄)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水性樹脂エマルジョンに顔料を配合して水性マニキュア剤を製造する方法であって、優れた色調や光沢を有する塗膜を与える水性マニキュア剤を製造する方法を提供することにある。
さらに本発明は、水性樹脂エマルジョンに顔料を配合して水性マニキュア剤を製造する方法であって、耐水性に優れた塗膜を与える水性マニキュア剤の製造方法を提供することを目的としている。
本発明のさらに別の目的は、簡便な操作で上記の特徴を有する水性マニキュア剤を製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、分散剤として特定の界面活性剤及び/又は特定のエチレン性不飽和分子の付加重合体を用いて顔料を分散させ、さらに得られた水性顔料分散液を水性樹脂エマルジョンに添加することにより、色調および光沢に優れ、耐水性が改善された塗膜を与える水性マニキュア剤を製造できることを見出した。上記知見は、分散剤として界面活性剤等を含む水性顔料分散剤を用いるとマニキュア剤は塗膜の耐水性が低下するという当業界の常識(特開平4-103516号公報第2頁右上欄)に反するものであり、予期せざる知見であった。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0008】
すなわち本発明は、HLB が12〜20の範囲の界面活性剤及び/又はα,β−モノエチレン性不飽和酸を含むエチレン性不飽和分子の付加重合体を分散剤として含む水性顔料分散液を水性樹脂エマルジョンに配合することを特徴とする水性マニキュア剤の製造方法を提供するものである。本発明の好ましい態様によれば、上記界面活性剤が多価アルコールエステルEO付加物類、高級アルコール EO 付加物、及びイオン界面活性剤からなる群から選ばれる上記方法;上記付加重合体の分子量が 1,000〜30,000の範囲である上記方法;分散剤として上記界面活性剤及び上記付加重合体を用いる上記方法;および顔料の乾燥重量に対して上記分散剤を〜 重量%の割合で用いる上記方法が提供される。さらに、本発明により上記方法により製造された水性マニキュア剤が提供される。
【0009】
本発明のマニキュア剤の製造方法に用いられる水性顔料分散液は、分散剤としてHLB が12〜20の範囲の界面活性剤及び/又はα,β−モノエチレン性不飽和酸を含むエチレン性不飽和分子の付加重合体を含み、顔料が水性溶媒に分散されていることを特徴としている。水性溶媒としては、水を単独で用いるか、あるいは水と水性有機溶媒の混合物を用いることができる。水性有機溶媒としては、水と任意の割合または一定の割合で均一混合物を与える有機溶媒を用いることができる。そのような水性有機溶媒として、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の揮発性アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、またはブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のグリコール系溶媒を挙げることができる。
【0010】
顔料としては、例えば、特開平4-103516号公報に記載された顔料を好適に使用することができる。より具体的には、赤色 201号、赤色 202号、赤色 204号、赤色 205号、赤色 220号、赤色 226号、赤色 228号、赤色 405号、橙色 203号、橙色 204号、黄色 205号、黄色 401号、青色 404号等の有機顔料、赤色3号、赤色 104号、赤色 106号、赤色 227号、赤色 230号、赤色 401号、橙色 205号、黄色4号、黄色5号、黄色 202号、黄色 203号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウウ、またはアルミニミウムレーキ等のレーキ顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、チタン酸鉄、γ−酸化鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、カーボンブラック、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青等の無機顔料を用いることができる。
【0011】
HLB が12〜20の範囲の界面活性剤としては、HLB 値が上記の特定の範囲にある界面活性剤はいかなるものを使用してもよいが、例えば、ソルビタンラウリン酸モノエステルEO 4モル付加物やソルビタンオレイン酸モノエステルEO 20 モル付加物等の多価アルコールエステルEO付加物類、ポリエチレングリコール(400)ラウリン酸モノエステル等のポリエチレングリコールモノエステル類、ポリエチレングリコール(1000)ラウリン酸ジエステル等のポリエチレングリコールジエステル、ラウリルアルコールEO 10 モル付加物やオレイルアルコールEO 20 モル付加物等の高級アルコール EO 付加物、ノニルフェノール EO 10モル付加物等のアルキルフェノールEO付加物、またはオレイン酸ナトリウムやオレイン酸カリウム等のイオン界面活性剤等を使用することができる。
【0012】
上記の界面活性剤は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の界面活性剤を組み合わせて用いる場合には、単独のHLB 値が上記の範囲外にある界面活性剤を用いてもよく、2種以上の界面活性剤の混合物のHLB 値が上記の範囲となる場合には本発明の範囲に包含される。HLB 値が上記の範囲を下回ると、顔料の分散性に劣り水性顔料分散液に直ぐに沈殿が生じることがある。このような沈殿は攪拌による再分散が困難となるので好ましくない。また、HLB 値が上記の範囲を上回ると、得られたマニキュア剤により形成される塗膜の耐水性が劣るので好ましくない。
【0013】
また、分散剤として用いられるα,β−モノエチレン性不飽和酸を含むエチレン性不飽和分子の付加重合体としては、例えば、メタクリル酸のような親水性α,β−不飽和カルボン酸を代表例とするα,β−モノエチレン性不飽和酸の1種または2種以上による付加重合物を用いることができる。また、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等のエチレン性不飽和単量体分子と上記のα,β−モノエチレン性不飽和酸との共重合物等を用いてもよい。このような場合、例えば、α,β−モノエチレン性不飽和酸を単量体として 12 〜 50 重量%、好ましくは 18 〜25重量%の割合で用い、残部をエチレン性不飽和単量体として共重合を行なうことが好ましい。
【0014】
α,β−モノエチレン性不飽和酸としては、メタクリル酸のほか、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、クロトン酸またはイタコン酸等の不飽和酸や、イタコン酸、マレイン酸、またはフマル酸等のハーフエステル類、例えば、モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルマレエート等を用いることができる。エチレン性不飽和分子としては、親水性エチレン不飽和分子および疎水性エチレン不飽和分子のいずれを用いてもよい。親水性エチレン不飽和分子としては、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のアクリル酸およびメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類;アクリルアミド、メクリルアミド、n-メチルアクリルアミド、n-メチロールメタクリルアミド等のアミド類、β−アミノエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル等のアミン類などを挙げることができる。
【0015】
疎水性エチレン不飽和分子としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、等のアクリル酸およびメタクリル酸のエステル類やスチレン等を用いることができる。このような付加重合体の製造方法は当業者に周知の方法によればよい。本発明の方法には、例えば酸価が100 〜1,000 程度、分子量が1,000 〜 30,000 程度のものを好適に用いることができる。2種以上の付加重合体を組み合わせて用いる場合には、重合体混合物の平均酸価および平均分子量が上記の範囲内であればよい。また、本発明の好ましい態様として、上記の付加重合体と上記の界面活性剤とを組み合わせて用いる場合を挙げることができる。
【0016】
本発明の方法では、上記の顔料を上記の分散剤の存在下で水性溶媒に分散させた水性顔料分散液を製造し、該水性顔料分散液を水性樹脂エマルジョンに添加混合してマニキュア剤を製造することを特徴としている。水性顔料分散液中の顔料の濃度は 0.2〜70重量%、好ましくは 10 〜 40 重量%程度とすればよく、このような水性顔料分散液を水性樹脂エマルジョンに対して約 0.1重量%程度となるように添加してマニキュア剤を製造することができる。水性顔料分散液を製造するには、顔料を上記の分散剤とともに水性溶媒中に添加し、サンドミル、ホモミキサー等の公知の装置を用いて顔料を分散させればよい。上記の分散剤は顔料(乾燥重量)に対して0.5 〜50重量%、好ましくは 5〜20重量%となるように用いればよい。このようにして製造される水性顔料分散液には、平均粒径が約 5μm 以下、好ましくは 3μm 以下の顔料が均一に分散されており、貯蔵安定性にも優れるものである。
【0017】
本発明のマニキュア剤の製造方法に使用される水性樹脂エマルジョンは特に限定されず、マニキュア剤として好ましい特性を有するものならばいかなるものを使用してもよい。このような水性樹脂エマルジョンの1例として、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸、メタアクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びスチレンからなる群から選ばれる1種以上のモノマーと、反応性界面活性剤とを重合して得られる水性樹脂エマルジョンを挙げることができる。これらのエマルジョンに含まれる樹脂の分子量は、例えば、約5万以上、好ましくは約10万以上であり、例えば20万ないし100 万の範囲、好ましくは50万ないし80万の範囲である。このようなエマルジョンは、一般に固形分30ないし50重量%を含むエマルジョンとして製造することができる。
【0018】
上記の樹脂の製造に用いることができるα、β−エチレン性不飽和カルボン酸として、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、及びマレイン酸を挙げることができる。メタアクリル酸エステルとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルメタクリレートを挙げることができる。
【0019】
また、アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ターシャリーブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、エチレングリコールアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、7-アミノ−3,7-ジメチルオクチルアクリレート、2-シアノエチルアクリレート、およびβ−エトキシエチルアクリレートを用いることができる。
【0020】
また、アクリル酸エステルとして、アリールアクリレート、アルコキシカルボニルアクリレート、ベンジルアクリレート、3-アクリルオキシ−2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、スルホアクリレート、ペンタクロロフェニルアクリレート、2-クロロエチルアクリレート、3-クロロ−2-ヒドロキシプロピルアクリレート、フルオロアルキルアクリレート、ベンゾイルオキシアルキルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、 1・4-ブタンジオールジアクリレート、 1・6-ヘキサンジオールジアクリレート、及びスルホプロピルアクリレートを用いることもできる。もっとも、使用されるモノマーは上記のモノマーに限定されることはなく、当業者に周知のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸モノマー、メタアクリル酸エステルモノマー、アクリル酸エステルモノマーならば、いずれも使用することができる。これらのモノマーの1種あるいは2種以上を使用してもよい。
【0021】
反応性界面活性剤としては、上記のモノマーの少なくとも1種と重合することができ、かつそれ自体が界面活性能を有するか、または重合により得られた樹脂に界面活性能を付与する性質を有するものならば、いかなるものを使用してもよい。例えば、アルキルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、酸性リン酸メタクリル酸エステル、アルキルアリールフェノキシポリエチレングリコール、ナトリウム−ω−クリロイルオキシアルキル(トリアルキル)アンモニウム−パラトルエンスルホネート、ナトリウム−ポリスチレンフェニルエーテルスルフェート、ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物、ナトリウム−スルホコハク酸アルキルアルケニルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホネート、アルキルフェノキシエトキシエチルスルホネート、ナトリウム−ジアルキルスルホサクシネート、アルキルジフェニルエーテルジスルホネート等を挙げることができる。反応性界面活性剤は、一般に上記のモノマーの総重量に対して1ないし30重量%の割合で使用される。
【0022】
これらのモノマー及び反応性界面活性剤の重合により得られる樹脂は自己乳化性であり、特に乳化剤を使用しなくても安定な水性樹脂エマルジョンを与えることを特徴としている。もっとも、油滴の微粒子化や乳化物の機械的安定性を向上させる等の目的で、樹脂分総重量に対し2重量%以下、好ましくは1重量%以下の乳化剤を使用して乳化重合を行ってもよい。乳化剤としては、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等を用いることができる。
【0023】
上記の樹脂のうち、カルボン酸やスルホン酸等の酸基を有し、中和価が10ないし100 の範囲の樹脂を好適に使用することができる。樹脂の中和価が100 を越えると、硬化後の樹脂被膜の耐水性が悪くなることがあり、一方、中和価が10を下回ると、粗粒子が多くなったり製品安定性が損なわれたりすることがある。一般に上記のモノマーと反応性界面活性剤を乳化重合させて得られる水性樹脂エマルジョンのpHは7ないし10の範囲であるが、乳化重合により製造された乳化物中で酸基の全部または一部が解離した状態で存在していてもよい。なお、本明細書において中和価とは、酸基としてカルボン酸を有する樹脂及びカルボン酸以外の酸基を有する樹脂について、樹脂1g中に含まれる遊離酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。上記の樹脂の2種以上を混合して使用してもよく、その場合には、樹脂混合物の中和価が上記の範囲内であればよい。
【0024】
上記水性樹脂エマルジョンの製造方法の一例としては、例えば、反応容器にα−オレフィンスルホン酸ナトリウム等の乳化剤を水に溶解したものを加えて加熱した後、上記反応性界面活性剤、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン等のモノマー、ラウリルメルカプタン等の分子量調節剤、及びα−オレフィンスルホン酸ナトリウム等の乳化剤と水とを混合乳化したものを、例えば過硫酸アンモニア等の触媒と共に徐々に加えて反応させる方法を挙げることができる。もっとも、上記の樹脂の製造方法は当業者に周知のいかなる方法を用いてもよく、上記の方法に限定されることはない。
【0025】
本発明のマニキュア剤の製造方法に好適に用いられる他の水性樹脂エマルジョンとして、分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)0.1〜50重量部とエチレン性不飽和モノマー(b)50 〜99.9重量部とを含むモノマー混合液100 重量部を、コロイダルシリカ(c)0.5〜100 重量部(固形分換算)の共存下に水分散媒中で重合して得られる水性樹脂エマルジョンを挙げることができる。
【0026】
上記の樹脂の製造に用いられる分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(a) としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(a) 以外にモノマー混合液に含まれるモノマーとしては、上記モノマー(a) と共重合可能なモノマーであればいかなるものを用いてもよいが、好適には、エチレン性不飽和モノマー(b) を用いることができる。エチレン性不飽和モノマー(b) としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル;スチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニデリン類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルアミド、クロロプレン等を用いることができる。
【0028】
上記のエチレン性不飽和モノマー(b) は単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。この他、アルケニルベンゼンと共重合可能なモノマーである(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸類等を使用することもできる。なお、上記に例示された化合物名において、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドは、それぞれ、メタクリレート、アクリレート;メタクリル酸、アクリル酸;メタクリロニトリル、アクリロニトリル;メタクリルアミド、アクリルアミドを意味する。
【0029】
コロイダルシリカ(c) としては、例えば、粒子径が4 〜100nm 程度であって負に帯電した無定形シリカ粒子を水中に分散させてコロイド状としたもの等を用いることができる。酸性側及び塩基性側のいずれのコロイダルシリカであっても用いることができ、重合時の諸条件によって適宜選択して用いればよい。代表的なコロイダルシリカとして、スノーテックスXS、同上−XL、同上−20、同上−30、同上−40、同上−50、同上−C 、同上−N 、同上−S 、同上−20L (いずれも、商品名、日産化学工業社製)等の塩基性側コロイダルシリカ、あるいは、スノーテックス−O 、同上−OL(いずれも、商品名、日産化学工業社製)等の酸性側コロイダルシリカを挙げることができる。また、同等のコロイダルシリカが、触媒化成工業社製、デュポン社製、ナルコケミカル社製等から供給されている。
【0030】
上記の水性樹脂エマルジョンの製造にあたり、分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(a) の量は、モノマー混合液100 重量部当たり、0.1 〜50重量部とすることが適当である。また、モノマー(a) 以外のモノマー、例えば、エチレン性不飽和モノマー(b) は、モノマー混合液100 重量部当たり、50〜99.9重量部とすればよい。特定の理論に拘泥するわけではないが、上記の重合反応において、分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(a) の役割は、その中の水酸基(OH)がコロイダルシリカの表面(SiOH)と水素結合することによってエチレン性不飽和モノマー(b) とコロイダルシリカ(c) とを複合化させることにあると考えられる。モノマー(a) の量が0.1 重量部未満では、コロイダルシリカとの結合が不十分となり複合化が期待できない場合があり、一方、モノマー(a) の量が50重量部を超えると、塗膜にした時に耐水性が低下してしまう等の弊害が生じることがある。モノマー(a) の効果をより高め、かつ耐水性にも優れるという観点から、モノマー(a) の量は、モノマー混合液100 重量部当たり、1 〜20重量部の範囲とすることが好ましい。
【0031】
コロイダルシリカ(c) の量は、分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(a) を含有するモノマー混合液100 重量部に対して、固形分換算で0.5 〜100 重量部である。コロイダルシリカ(c) の量が0.5 重量部未満では、シリカの効果である耐久性、耐溶剤性、透湿性、耐ブロッキング性等が発揮されず実用的でなくなる場合がある。また、100 重量部を超えると、コロイダルシリカの影響によって塗膜の透明性が損なわれる一方で、硬度は高くなるが塗膜が脆くなり、機械的強度が低下して剥離しやすくなってしまう等の弊害が生じることがある。シリカの効果がより発揮され、かつ良好な造膜性という観点からは、コロイダルシリカ(c) の量は、上記混合液100 重量部に対して固形分換算で2 〜50重量部の範囲とすることか好ましい。
【0032】
上記の水性樹脂エマルジョンは、例えば、反応容器内にコロイダルシリカ及び純水を所定量入れ、次いで界面活性剤を全固形分100 重量部に対して0.1 〜10重量部、好ましくは0.5 〜3 重量部入れた後、所定量の分子内に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(a) を含有するモノマー混合液を一括又は連続で滴下することにより製造できる。この場合、予めモノマー混合液を、水及び界面活性剤と混合して乳化物としてもよい。
【0033】
界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー等の非イオン性界面活性剤;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性界面活性剤等を挙げることができる。界面活性剤の量が0.1 重量部未満では、生成物の重合安定性が低下してしまう傾向があり、また、10重量部を超えると、塗膜の耐水性等が低下する場合がある。
【0034】
重合温度は、使用するモノマーや重合開始剤の種類等によって異なるが、通常は30〜90℃の範囲とすることが適当である。重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤;クメンハイドロパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;これらの過硫酸塩又は過酸化物と、鉄イオン等の金属イオン、ナトリウムスルホキシレート、ピロ亜硫酸ナトリウム、L-アスコルビン酸等の還元剤との組合せによるレドックス開始剤が挙げられる。これらの開始剤は全固形分100 重量部に対して例えば0.1 〜4 重量部使用される。
【0035】
さらに別の水性樹脂エマルジョンとして、水性樹脂エマルジョンの重合体分散粒子が下記の二相:(A) 直鎖、分枝又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族ビニル化合物、及び分子中に重合性不飽和基を2個以上有するモノマーから選ばれた少なくとも一種類のモノマーによる重合体からなるA-相;および(B) 直鎖、分枝又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族ビニル化合物、及び分子中に重合性不飽和基を2個以上有するモノマーから選ばれた少なくとも一種類のモノマーと、好ましくはB-相に用いる全モノマー100 重量部に対して0.5から90重量部の割合で用いられるカルボキシル基、アミド基及び/又は水酸基を有するモノマーとの共重合体からなるB-相を含み、A-相とB-相との重量比率が5/95〜95/5であり、A-相とB-相のガラス転移温度がそれぞれ−20〜+70℃及び−60〜+70℃であり、両相のガラス転移温度差は0〜60℃であり、かつ、A-相のガラス転移温度がB-相のガラス転移温度以上である水性樹脂エマルジョンを用いることができる。
【0036】
また、直鎖、分枝又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族ビニル化合物、及び分子中に重合性不飽和基を2個以上有するモノマーから選ばれた少なくとも一種類のモノマーを乳化重合してA-相を得、ついで、A-相の重合体の存在下、直鎖、分枝又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族ビニル化合物、及び分子中に重合性不飽和基を2個以上有するモノマーから選ばれた少なくとも一種類のモノマーと、好ましくはB-相に用いる全モノマー100 重量部に対して0.5から90重量部の割合で用いられるカルボキシル基、アミド基及び/又は水酸基を有するモノマーとを重合してB-相の共重合体を得ることにより製造され、エマルジョンの分散粒子がA-相とB-相とを含み、A-相とB-相との重量比率が5/95〜95/5であり、A-相とB-相のガラス転移温度がそれぞれ−20〜+70℃及び−60〜+70℃であり、両相のガラス転移温度差は0〜60℃であり、かつA-相のガラス転移温度がB-相のガラス転移温度以上である水性樹脂エマルジョンを用いることもできる。
【0037】
上記の水性樹脂エマルジョンにおいて、 A-相は、直鎖、分枝又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族ビニル化合物、及び分子中に重合性不飽和基を2個以上有するモノマーから選ばれた少なくとも一種類のモノマーを重合することにより製造される重合体を含むものである。A-相において、直鎖、分枝又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、 p-tert-ブチルスチレン、p-メチルスチレンのようなスチレン及びその誘導体を用いることができる。
【0038】
また、分子中に重合性不飽和基2個以上有するモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等を挙げることができる。
B-相は、直鎖、分枝又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族ビニル化合物、及び分子中に重合性不飽和基を2個以上有するモノマーから選ばれた少なくとも一種類のモノマーと、カルボキシル基、アミド基及び/又は水酸基を有するモノマーとを共重合することにより製造される共重合体を含む。すなわち、B-相に含まれる共重合体は、A-相の製造に用いられるモノマーに加えて、カルボキシル基、アミド基及び/又は水酸基のような官能基を有するモノマーとを共重合することにより製造されるものである。
【0039】
カルボキシル基を含有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸類を挙げることができる。アミド基を含有するモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド等を用いることができる。また、水酸基を含有するモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。
【0040】
上記の水性樹脂エマルジョンの製造にあたっては、A-相及びB-相に含まれる重合体はいずれも乳化重合により製造されるので、溶液重合とは異なり、一般にはB-相の重合体に高い水溶性を付与する必要はない。B-相に含まれる重合体は、例えば、重量平均分子量が20万以上、好ましくは25万以上であることが塗膜の乾燥性、耐水性、耐久性等の観点から好ましい。B-相に含まれる重合体の重量平均分子量の上限には特に制限はないが、成膜性の観点からは、例えば、200 万以下、より一般的には100 万以下のものを用いることが好適である。なお、B-相に含まれる重合体の分子量は、B-相に含まれる重合体のみを同一条件で製造し、得られた重合体を乾燥してテトラヒドロフランに溶解した後、ゲルパーミエイション法〔例えば、SYSTEM-11 (Shodex 製)、カラム:KF804 ×3本〕により、ポリスチレンを標準物質として測定することにより決定することができる。
【0041】
特定の理論に拘泥するわけではないが、B-相に含まれる重合体の製造に用いるモノマーのカルボキシル基、アミド基及び/又は水酸基は、A-相及びB-相を含むエマルジョン粒子の安定性を高める作用を有するものである。B-相に含まれる重合体の製造に用いるカルボキシル基、アミド基及び/又は水酸基を有するモノマーは、B-相に用いる全モノマー 100重量部に対して0.5から90重量部、好ましくは1から50重量部、さらに好ましくは2から20重量部の割合で用いればよい。
カルボキシル基、アミド基及び/又は水酸基を有するモノマーの割合が、B-相に用いる全モノマー 100重量部に対して0.5重量部を下回ると、重合安定性が悪くなり、重合中にゲル化したり、あるいは他の添加剤の配合性が悪化するという問題が生じることがある。一方、カルボキシル基、アミド基及び/又は水酸基を有するモノマーの割合が、B-相に用いる全モノマー 100重量部に対して90重量部を越えると、塗膜の耐水性が著しく悪化することがある。
【0042】
A-相とB-相の重量比率は、例えば、5/95〜95/5の範囲とすればよい。この重量比率が5/95未満になると、得られる被膜を水に浸漬した場合に柔軟性が失われ被膜が非常に脆くなる場合がある。また、この重量比率が95/5を超えると、A-相の重合体の存在下にB-相の重合体を乳化重合する際に、カルボキシル基、アミド基及び/又は水酸基を有するモノマーが粒子間で凝集剤として作用するので、重合が困難になることがある。優れた乾燥性、成膜性及び密着性の観点からは、A-相とB-相との重量比率(A/B) は、好ましくは10/90〜70/30、より好ましくは20/80〜50/50の範囲である。
【0043】
また、A-相のTgは−20〜+70℃の範囲であり、B-相のTgは−60〜+70℃の範囲である。A-相のTgが−20℃未満では、水性樹脂エマルジョンにより形成される被膜が水浸漬により白化を起こす場合があり、爪を保護する作用が失われるので好ましくない。一方、A-相のTgが+70℃を越えると、A-相の重合にあたって官能基を含有しないモノマーのみを用いるため、重合途中のエマルジョンの安定性が悪くゲル化してしまう傾向がある。これを防ぐために界面活性剤等を多量に用いると、かえって被膜の耐水性が悪くなるという問題が生じる。一方、B-相のTgが−60℃未満では、得られる被膜の耐水性が悪くなり場合があり、他方、+70℃を越えると、得られる被膜が硬くなる傾向がある。被膜の硬化防止のために架橋剤等を使用することもできるが、架橋剤を使用すると成膜性が悪くなり、耐水性の悪化の原因となるので多量に配合する場合には注意を要する。
【0044】
また、上記の水性樹脂エマルジョンにおいては、A-相とB-相のTg差が0〜60℃の範囲であり、かつ、A-相のTgはB-相のTgと同じであるか、あるいはB-相のTgよりも高いことが好ましい。A-相のTgの方がB-相のTgより低い場合、またはTg差が60℃を越える場合には、被膜の耐水性が悪くなる場合がある。A-相のTgが+20〜+70℃の範囲であることが、高い硬度で耐久性に優れた被膜を得るという観点から好ましい。さらに、B-相のTgは−10〜+50℃の範囲であることが、成膜性に優れた組成物を得ることができ、かつ得られた被膜の密着性が優れるという観点から好ましい。なお、Tgとは、共重合体を構成するモノマーそれぞれのホモポリマーのTgと共重合の重量比率からFox の式を用いて算出することができる。
【0045】
上記の水性樹脂エマルジョンは、乳化重合方法により製造される。乳化重合方法は特に限定されず、公知の乳化重合方法ならばいかなる方法を用いてもよい。例えば、まずA-相を構成する重合体を乳化重合し、次いでA-相の存在下でB-相を構成する重合体を乳化重合することにより製造することができる。A-相及びB-相を構成する重合体の製造原料となるモノマーを反応系に添加するには、いずれの重合においても、モノマーを一括、連続、または分割して反応系に滴下すればよい。この場合、予めモノマーを水及び界面活性剤と混合し、乳化物として滴下してもよい。また、B-相の重合を行う際には、必要に応じて重合開始剤を添加することもできる。重合温度は、使用するモノマーや重合開始剤の種類により異なるが、一般的には、30〜90℃の範囲である。さらに、乳化重合を行う際には、分子量を調節するためにメルカプタン等の連鎖移動剤を添加することもできる。得られる被膜の緻密さ等の観点から、エマルジョン組成物の粒子径は、0.01〜0.3 μm 程度とすることが最適である。
【0046】
本発明のマニキュア剤の製造方法に好適に使用されるさらに別の水性樹脂エマルジョンとして、水性ポリウレタンエマルジョンを用いることができる。ポリウレタンとしては、中和価が10ないし80の範囲であり、三級アミンの非存在下で重合製造されたものを好適に用いることができる。この様なポリウレタンは、例えばポリウレタンの繰り返し単位あたり2ないし20個の酸基を有するものである。該ポリウレタンは、一般に固形分5ないし60重量%の水性樹脂エマルジョンとして製造される。
【0047】
上記のようなポリウレタンのうち特に好ましいポリウレタンは、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、またはリン酸エステル等の酸基を有するポリウレタン及びそれらの金属塩である。水性樹脂エマルジョン中で酸基の全部または一部が解離した状態で存在していてもよい。また、これらのポリウレタンの分子量は、約10,000ないし約1000,000、好ましくは約50,000ないし約100,000 の範囲である。ポリウレタンを2種以上を混合して使用する場合には、重合製造された2種以上のポリウレタンの混合物の中和価が上記の範囲内であればよい。
【0048】
これらのうち、カルボン酸基を有するポリウレタンが特に好適に使用される。例えば、ポリウレタンの中和価が10ないし80の範囲、好ましくは20ないし50の範囲のポリウレタンが使用できる。カルボン酸基を有するポリウレタンの場合、中和価が80を越えると、硬化後の樹脂被膜の耐水性が悪くなる場合がある。一方、中和価が20を下回ると、ポリウレタンを水性エマルジョンとして調製することが困難になることがある。
【0049】
これらのポリウレタンの製造方法の一例を挙げれば、例えばアセトン等の有機溶剤中で、例えばジオール化合物としてポリプロピレングリコール、ジイソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネート、ポリヒドロキシカルボン酸としてジメチロールプロピオン酸を用いてプレポリマーを製造し、このプレポリマーに水酸化ナトリウム等の塩基化合物を加えて乳化させた後、ヘキサメチレンジアミン等の鎖延長剤を添加して高分子化し、減圧しながら有機溶剤を留去すればよい。
【0050】
ジオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイド付加物等の低分子量グリコール、ポリオールであるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル類、エチレングリコールとアジピン酸の縮合物であるポリエステル、ヘキサンジオールとアジピン酸の縮合物であるポリエステル、エチレングリコールとフタル酸の縮合物であるポリエステル、及びポリカプロラクトン等を挙げることができる。鎖延長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のポリオール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピぺラジン、イソホロンジアミン等のジアミン;及び水を挙げることができる。
【0051】
ジイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフラレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0052】
ポリヒドロキシカルボン酸としては、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、及び2,2-ジメチロール吉草酸を挙げることができる。また、ポリウレタンの製造において使用される塩基化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。これらのグリコール類、鎖延長剤、ジイソシアネート、ポリヒドロキシカルボン酸は、いずれも任意の割合の混合物で使用してもよい。これらの成分はすべて例示の目的で列挙されたものであり、これらに限定されることはなく、さらに当業者に周知のグリコール類、鎖延長剤、ジイソシアネート、ポリヒドロキシカルボン酸を任意に使用することができる。
【0053】
本発明の水性マニキュア剤に好適に使用される水性樹脂エマルジョンの数例について詳細に説明したが、水性樹脂エマルジョンは上記のものに限定されることはなく、水性樹脂エマルジョンとして当業者が入手可能なものは、全て本発明の範囲に包含される。これらの水性樹脂エマルジョンの1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。当業者は、上記の説明を参照しつつ、必要な場合にはそれらに変更ないし改変を加えることにより、本発明の目的および効果を損なうことなく適宜の水性樹脂エマルジョンを選択することができる。また、上記の水性樹脂エマルジョンに対して、非水性の樹脂を少量添加して用いてもよい。
【0054】
上記の水性顔料分散液と水性樹脂エマルジョンの混合は、必要量の水性顔料分散液を水性樹脂エマルジョンに対して添加した後、手攪拌やミキサー攪拌等を行えばよい。上記の水性顔料分散液は水性樹脂エマルジョンに対して優れた相溶性があるので、簡単な混合操作により直ちに均一なマニキュア剤を製造することができる。本発明の方法により製造される水性マニキュア剤は、一般的にはpHが3ないし11の範囲の水性組成物として製造される。pHの調節にはアンモニア、トリエタノールアミン等のアミン類や水酸化ナトリウム等のpH調節剤を使用すればよい。さらに有機染料等の染料;ベントナイト、モンモリロナイト等の分散助剤(沈降防止剤);ビタミンE等の薬剤;紫外線吸収剤;殺菌剤;防腐剤;香料;例えばフタル酸系やリン酸系の可塑剤;例えばグリコール系の被膜形成剤;例えばシリコン系の被膜形成剤;又は例えばアクリル系樹脂、スメクタイト系粘土鉱物、キサンダンガム等の増粘剤等を含んでもよい。これらの添加剤は、通常のマニキュア剤に使用される割合で添加することができ、例えば0.1ないし10重量%の範囲で使用される。
【0055】
本発明の方法により製造されるマニキュア剤は、実質的に水性組成物として提供されるが、水性樹脂エマルジョンの製造に使用された有機溶剤が、皮膚刺激等を惹起しないかぎりにおいて微量含有されていてもよい。この様な有機溶剤としては、アセトン、N-メチル−2-ピロリドン等を例示することができる。また、上記マニキュア剤の樹脂被膜の乾燥を促進する目的や殺菌の目的で、微量の揮発性水性有機溶剤を添加することもできる。このような揮発性水性有機溶剤として、エタノールやイソプロパノールを例示することができる。これらの有機溶剤は、マニキュア剤の総重量に対して10重量%以下で使用される。
【0056】
本発明の方法により製造されるマニキュア剤は、使用に際して従来公知の非水性マニキュア剤と同様に爪にハケ塗りすればよく、塗布後のマニキュア剤は短時間で乾燥硬化して強靱な樹脂被膜を与える。爪に0.04ミリ程度の厚さで本発明のマニキュア剤を塗布した場合、樹脂被膜の硬化時間は、一般に室温で約10ないし30分である。完全硬化にはさらに10時間程度を要するが、その場合のヌープ硬度は約3程度である。硬化後の被膜は、従来用いられていた有機溶剤を使用することなく、水若しくは水及び有機溶剤の均一混合物により除去可能である。
【0057】
塗膜の除去に用いられる水及び有機溶剤の均一混合物に含まれる有機溶媒としては、例えば、アセトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジフェニルエーテル、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0058】
また、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジフェニルエーテル、プロパノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル−3-メトキシブタノール、及び3-メチル−3-メトキシブチルアセテート、またはこれらの混合物等を用いてもよい。
【0059】
これらの有機溶剤には、水と任意の割合で均一混合物を形成するもの、および一定の割合の場合に限り水と均一混合物を形成するものが含まれる。これらのうち、例えば5ないし80重量%のエタノール−水を使用することが好ましい。例えば、水若しくは有機溶剤と水の均一混合物を含浸させた布、ガーゼ、脱脂綿、テッシュペーパー等を用いて数回拭うことにより塗膜を容易に除去することができる。もっとも、本発明の方法により製造されたマニキュア剤により形成される塗膜(樹脂被膜)は、上記の有機溶剤を単独で用いたり、通常使用されるトルエン等の有機溶剤を用いても除去可能である。
【0060】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されることはない。
(1) 下記の表1に示される配合量で本発明の方法に従う水性顔料分散液を製造した。処理装置としてホモミキサーを用い、室温で30分の処理を行い平均粒径 0.2μm の分散液を製造した。
【0061】
【表1】
Figure 0003895783
【0062】
(注1) ソルビタン ラウリン酸モノエステル EO 4 モル付加物 (HLB 13.3)
(注2) オレイルアルコール EO 20モル付加物 (HLB 15.3)
(注3) オレイン酸カリウム (HLB 20.0)
(注4) ソルビタンオレイン酸モノエステル (HLB 4.3)
(注5) ノニルフェノール EO 5.5 モル付加物 (HLB 10.5)
(注6) 重合体A: 攪拌器、還流冷却器月の4ツ口フラスコ中でアクリル酸の溶液重合を行い、重合完了後、熱を加えて溶剤を揮発させ、水酸化カリウム水溶液中に加えて中和させた。この重合水溶液は固形分40重量%、pH 7.2であり、重合物の平均分子量は 4,800であった。
(注7) 重合体B: (注6)中のアクリル酸のかわりに、アクリル酸とマレイン酸の溶液重合を行った以外は (注6)と同様の操作を行った。重合水溶液は固形分30重量%、pH 7.5であり、重合物の平均分子量は 8,200であった。
【0063】
(2) 上記の水性分散液1〜7を用いて、下記表2の配合に従ってマニキュア剤1〜7を製造した。各マニキュア剤に用いた水性樹脂エマルジョンの製造方法は以下のとおりであり、水性樹脂エマルジョンに対して所定量の上記水性分散液を添加して室温で手攪拌することによりマニキュア剤を製造した。
(A) 水性アクリル樹脂エマルジョンAの製造
以下のモノマー組成:メタアクリル酸 3 %、エチルアクリレート40 %、メチルメタクリレート 37%、スチレン 20%を用いて、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いる常法の乳化重合法を行った。中和剤としてアンモニア水を添加してpHを 7.5に調整し、酸価20、有効成分40% のスチレン−アクリル樹脂エマルジョンを製造した。
【0064】
(B) コアシェル型水性エマルジョンBの製造(アクリル樹脂・コア+アクリル樹脂外層)
特開平3-133916号公報(110頁)に記載された方法に準じて、コアシェル型水性樹脂エマルジョンを製造した。攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入管のついた反応器にメチルエチルケトン 50 部を仕込み、窒素ガスを流して溶存酸素を除去した。一方、滴下ロートにメチルエチルケトン 35 部、メチルメタクリレート 56 部、n−ブチルアクリレート 40 部、アクリル酸4部およびアゾビスイソブチロニトリル 0.2部を仕込んだ。
【0065】
攪拌下の反応器内を80℃まで昇温し、滴下ロートより上記モノマーおよびラジカル開始剤のメチルエチルケトン溶液を .5 時間かけて滴下した。モノマーの滴下を終了して2時間経過した後、アゾビスイソブチロニトリル 0.2部をメチルエチルケトン10部に溶解した溶液を加えた。3時間同じ温度で熟成させた後、再びアゾビスイソプチロニトリル 0.1部をメチルエチルケトン5部に溶解したものを加え、さらに5時間反応を続けて共重合体を得た。反応終了後の共重合体溶液を室温まで冷却し、トリエチルアミン 5.6部を加えて中和し、さらに300 rpm で攪拌しつつイオン交換水 400部を加え、減圧下 40 ℃でメチルエチルケトンを留去した。さらに 50 ℃で水を留去することにより反応液を濃縮し、固形分 25 % の水性ビニル樹脂を得た。
【0066】
攪拌後、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入管のついた反応器に上記水性ビニル樹脂 200部と水 100部を仕込み、窒素ガスを導入して溶存酸素を除去した。一方、滴下ロートにイソブチルメタクリレート 50 部、メタノール 75 部を仕込み、攪拌下に滴下ロートにより上記モノマーのメタノール溶液を1時間かけて上記反応器内に滴下した。反応器内を 70 ℃まで昇温した後、過硫酸カリウム 0.2部を水10部に溶解した溶液を加えた。6時間同じ温度で熟成して重合反応を終了した。反応器内を 50 ℃まで冷却した後、減圧下 50 ℃でメタノールおよび水を留去することにより濃縮した。中和剤としてアンモニア水を添加してpHを7.3 に調整し、固形分 35 % のコアシェル型水性エマルジョンを得た。
【0067】
(C) コアシェル型水性エマルジョンCの製造(コロイダルシリカ・コア+アクリル樹脂外層)
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計の付いた反応容器に、純水 85.8 部、エマールO(株式会社花王製) 0.5 部、スノーテックスO(日産化学工業株式会社製)5.0 部(固形分換算)を仕込み、窒素雰囲気中で攪拌し、温度を72℃として過硫酸アンモン 0.5部を添加した。次にスチレン 22.2 部、メチルメタクリレート 33.0 部、ノルマルブチルアクリレート 39.8 部、メタクリン酸 2.0部、メタクリン酸ヒドロキシエチルエステル 2.0部、アクリルアミド 1.0部を3時間にわたって連続的に反応容器中に滴下した。滴下終了後3時間熟成を行った。その後、常温まで冷却し、中和剤としてアンモニウム水を添加してpHを 8.0に調整し、固形分 50 % のコアシェル型水性エマルジョンを得た。
【0068】
(D) ポリウレタンDの製造方法
還流冷却器、温度計、及び攪拌装置を取りつけた反応器に、ポリプロピレングリコール(分子量 1,000) 186.60 g、イソポロンジイソシアネート 87.20 g、ジメチロールプロピオン酸 14.30 g、及びアセトン 190.00 g を充填し、80〜100 ℃に保ちながらウレタン化反応を行って、プレポリマーを調整した。このプレポリマーを、水酸化ナトリウム 0.62 g を含有する水溶液 699.38 g にホモミキサーで混合しながら注入して乳化し、直ちにヘキサメチレンジアミン 5 gを加えて高分子化反応を行った。反応終了までに 698.25 g の水を加え、さらに減圧しながらアセトンを回収して固型分 30 % の水性ポリウレタン樹脂エマルジョンを得た。
【0069】
【表2】
Figure 0003895783
【0070】
(3) 上記のマニキュア剤1〜9の性能評価を行った結果を以下の表3に示す。なお、各性能評価の方法は、それぞれ以下のとおりである。
(A) 外観
100 mlの広口共栓瓶に例1〜9のマニキュア剤を 50 mlずつ入れ、温度45±2℃に保った恒温槽に入れた。48時間後、試料を恒温槽から取り出して室温に24時間置き、外観の状態を観察した。
(評価)
顔料が均一に分散されている −(○)
顔料が一部沈殿している −(△)
顔料が完全に沈殿している −(×)
【0071】
(B) 振とうによる分散性
100 mlの広口共栓瓶に例1〜9のマニキュア剤を 50 mlづつ入れ、温度45±2℃に保った恒温槽に入れた。120 時間後、試料を恒温槽から取り出して室温に24時間置いた後、株式会社サイニクス社製ロータリーシェーカーにて30秒間振とうさせ、この時の外観状態を観察して評価した。
(評価)
顔料が均一に分散されている −(○)
顔料が一部沈殿している −(△)
顔料が完全に沈殿している −(×)
【0072】
(C) 仕上り
爪に例1〜9のマニキュア剤をネール刷けにて均一に一定量を塗布した。温度20℃、相対湿度60% の条件下で60分間放置し乾燥させた後、塗膜の顔料の分散性を肉眼にて観察し評価した。
(評価)
顔料が均一に分散されムラ無く仕上がっている。 −(○)
顔料の一部が均一に分散されず僅かにムラが残る −(△)
顔料の分散が悪くムラが残る −(×)
【0073】
【表3】
Figure 0003895783
【0074】
【発明の効果】
本発明の方法に従い、特定の分散剤を含む水性顔料分散液を用いて製造されたマニキュア剤は、光沢と色調に優れた塗膜を与えるので有用である。本発明の方法により製造されるマニキュア剤は、界面活性剤を配合した水性顔料分散液を用いて製造されているにもかかわらず、塗膜の耐水性に優れるという驚くべき特徴を有している。

Claims (5)

  1. α,β−モノエチレン性不飽和酸を含むエチレン性不飽和分子の付加重合体を分散剤として含む水性顔料分散液を、水性樹脂エマルジョンに配合することを特徴とする水性マニキュア剤の製造方法であって、
    前記付加重合体は、酸価が100〜1,000及び分子量が1,000〜30,000の範囲であり、かつ顔料の乾燥重量に対して前記付加重合体を0.5〜50重量%の割合で用いることを特徴とする前記水性マニキュア剤の製造方法。
  2. 分散剤として上記付加重合体に加えてHLBが12〜20の範囲の界面活性剤を用いる請求項1に記載の方法。
  3. 上記界面活性剤が多価アルコールエステルEO付加物類、高級アルコールEO付加物、及びイオン界面活性剤からなる群から選ばれる請求項に記載の方法。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法により製造された水性マニキュア剤。
  5. 耐水性が改善された請求項に記載の水性マニキュア剤。
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