JP3894686B2 - 造粒装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体と液体とが混在した混在物、又は、固体が溶解した溶液の少なくとも一方からなる液状材料を装置本体の造粒室の内部に噴霧供給するスプレーノズルを、前記造粒室の内部に備えると共に、造粒途中の粉体による流動層を前記造粒室の内部に形成するために、流動用エアーを供給するエアー吹出部を前記造粒室の下方に備えた造粒装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、各種の造粒装置によって様々な種類の粒子が製造される。その中には、例えば、錠剤の薬品を製造するための材料として、主に主薬を含む粒子を製造する場合がある。
当該粒子は、型に充填する際に流動性が良いこと、あるいは、外力を受けた際に崩壊するまでの時間が短いこと等の特性を有していることが必要である。つまり、これらの特性を有する粒子は、型の中に充填し易く、錠剤として成形し易いものとなる。
錠剤を製造する際には、主薬のみで打錠できると様々な利点がある。例えば、するのが最も理想的である。薬効を有する主薬のみからなる錠剤を得ることができれば、当該薬品の服用量を少なくすることができるばかりでなく、主薬以外の成分を用いないのであるから、通常行われている主薬以外の成分に係る混合割合の調整手間も不要となるからである。
【0003】
例えば、従来における前記主薬粒子の製造は、流動層形式の造粒装置を用いて行うことが多い。即ち、造粒装置の内部に投入した主薬の微粒子に流動空気を供給し、流動床としたものに液状材料を噴霧して前記微粒子を順次成長させるのである。
ただし、一般に、主に主薬からなる粒子を製造しようとすると、主薬原料の粒径が小さくなる場合が多く、造粒に際して凝集性が強いものとなりがちである。錠剤を打錠するには、流動性・圧縮性などの観点から、通常、100μm程度の粒径を有する粒子を用いるのが好ましいが、上記のごとく凝集性が強い。主薬原料の粒径は、通常、数μm〜数十μm程度であり、流動性が悪いため、そのままの状態では、型に充填することは困難であった。
【0004】
そこで、従来においては、転造式の造粒装置を用いて前記主薬粒子を造粒することが考えられる。当該転造式の造粒装置は、例えば、造粒室の内部に設けた転動板に粒子材料を載置しておき、前記転動板を回転させて粒子材料を転動させつつ、当該粒子材料に液状材料を噴霧して粒子を成長させるものである。
本装置を用いれば、粒子が転動しているために粒子どうしの凝集を抑制することができ、比較的粒度分布の狭い粒子を製造することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記転造式の造粒装置によって製造した粒子は、造粒過程において転動板上を転がるため、その際に粒子の表面が締め固められ、重質で硬いものとなり易い。この結果、打錠する際に崩壊し難いものとなり、例えば、粒子どうしを十分に締め固めることができずに脆い錠剤が形成されたり、粒子はある程度崩壊しているものの打錠圧が高すぎて高密度のものとなり、服用時に融け難い錠剤が形成される場合がある。
以上のごとく、製品粒子の特性まで考慮した場合に、目的の物性を有する粒子を効率的に得ることができる造粒装置は従来なかった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、任意の粒径を有する顆粒を効率的に製造することのできる造粒装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
〔構成1〕本発明の造粒装置は、請求項1に示すごとく、スプレーノズルを、液状材料を上向きに噴霧供給するように構成すると共に、造粒過程にある粒子の流動層に対して高圧気体を吹き付けるジェットノズルを複数備え、隣接するジェットノズルを一組として、当該一組のジェットノズルから噴射されたジェットを流動層の内部で交差させると共に、一の組におけるジェットの交差点と、他の組におけるジェットの交差点とが異なる位置となるように構成した点に特徴を有する。
〔作用効果〕本構成のごとく、液状材料を上向きに噴霧供給するようにスプレーノズルを構成しておけば、噴霧した液状材料が、流動用エアーと共に造粒室の上方に吹き上げられ、造粒室内での浮遊時間を長く確保することができる。この結果、噴霧された粒子どうしの間隔が広く確保され、液状材料の乾燥が確実に行われるから、粒子どうしの凝集が生じ難く、粒度分布の狭い一次粒子を得ることができる。
ただし、造粒過程における粒子の凝集を完全に阻止することは難しく、粒子はある程度凝集して粗大化するものがある。しかし、本構成のごとく、ジェットノズルを備えておけば、凝集して粗大化した粉体をジェットによって適度な大きさに解砕できるから、粒度分布が極めて狭い製品粒子を得ることができる。しかも、前記ジェットの強さを調節することで、製品粒子の大きさを任意に設定することも可能となる。
さらに、流動層の内部において粒子の解砕を複数の場所で行うから、前記ジェットによる解砕力の及ぶ範囲を広げることができる。それほど凝集力の強くない粒子を製造する際には、衝撃力を高めるよりも衝撃力の及ぶ範囲を広げる方が有効な場合がある。本構成の造粒装置であれば、造粒過程の凝集力がそれほど強くない粒子を用いた顆粒の製造を効率的に行うことができる。
【0008】
〔構成2〕本発明の造粒装置は、請求項2に示すごとく、スプレーノズルが、液状材料を上向きに噴霧供給するように構成してあると共に、流動層に対して高圧気体を吹き付けるジェットノズルを複数備え、各ジェットノズルの向きを造粒室の中心から所定の角度だけ偏向させて設け、旋回式の流動層を形成するように構成した点に特徴を有する。
〔作用効果〕本構成のごとく、液状材料を上向きに噴霧供給するようにスプレーノズルを構成しておけば、噴霧した液状材料が、流動用エアーと共に造粒室の上方に吹き上げられ、造粒室内での浮遊時間を長く確保することができる。この結果、噴霧された粒子どうしの間隔が広く確保され、液状材料の乾燥が確実に行われるから、粒子どうしの凝集が生じ難く、粒度分布の狭い一次粒子を得ることができる。
ただし、造粒過程における粒子の凝集を完全に阻止することは難しく、粒子はある程度凝集して粗大化するものがある。しかし、本構成のごとく、ジェットノズルを備えておけば、凝集して粗大化した粉体をジェットによって適度な大きさに解砕できるから、粒度分布が極めて狭い製品粒子を得ることができる。しかも、前記ジェットの強さを調節することで、製品粒子の大きさを任意に設定することも可能となる。
さらに、各ジェットノズルの向きを造粒室の中心から所定の角度だけ偏向させ、旋回式の流動層を形成するように構成してあるため、前記ジェットの衝撃力を小さくすることができ、当該衝撃力を流動層の略全体に分散させることができる。そのため、例えば、非常に壊れやすい顆粒を所定の粒径まで造粒する場合等に有効である。
【0009】
〔構成3〕本発明の造粒装置は、請求項3に示すごとく、エアー吹出部が、円錐面を有するコーン部材の周囲を取り巻くように設けられると共に、当該コーン部材に対して下方に移動して当該コーン部材との間に形成される隙間を、造粒した粒子の排出口として利用可能に構成した点に特徴を有する。
〔作用効果〕本構成によれば、コーン部材の周囲を取り巻くように設けたエアー吹出部が当該コーン部材に対して下方に移動して形成される隙間を、造粒が終了した粒子の排出口として利用することができる。これにより、製品粒子を連続的に造粒することができる。
【0010】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【0011】
【発明の実施の形態】
(概要)
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の造粒装置を図1および図2に示す。
本発明の造粒装置は、粒子を製造するための液状材料1を装置本体2の造粒室3の内部に噴霧供給して微粒子を形成し、当該微粒子に液状材料1を順次噴霧して粒子を成長させるものである。当該装置により、核となる粒子を予め造粒室3の内部に投入することなく目的の粒径の粒子を製造することができる。前記液状材料1は、造粒室3の下方に設けたスプレーノズル4から噴霧する。当該スプレーノズル4は、上向きに配置してあり、造粒室3の上方に向けて液状材料1を噴霧供給する。
【0012】
前記造粒室3の最下部には、造粒室3の内部に流動用エアーAを供給するエアー吹出部5を設けてある。造粒が進んで粒径がある程度大きくなった粒子は造粒室3の底部に集まるようになるが、これらの粒子に対して流動用エアーAを吹き付け、流動層Rを形成するのである。前記スプレーノズル4からは、この流動層Rを形成する粒子にも噴霧され、粒子を更に成長させて製品粒子とするのである。
【0013】
さらに、本発明の造粒装置では、前記流動層Rに対して高圧気体であるパルスジェットJを吹き付けるジェットノズル6を備えている。当該パルスジェットJにより、粒子どうしの凝集を抑制して任意の粒径を有する製品粒子を得るのである。
以下、本発明に係る造粒装置の詳細について説明する。
【0014】
(装置本体)
図1に示すごとく、本発明の造粒装置は略円筒形状の装置本体2を有する。当該装置本体2の略中央部分には、粒子を形成するための造粒室3を有している。当該装置本体2は、鉛直方向Xにおける所定の箇所で開閉自在となるよう分割構成してある。これにより、前記スプレーノズル4あるいはエアー吹出部5のメンテナンスを容易にする等の便宜を図っている。
装置本体2の上方には、造粒室3の内部のエアーを排出するためのエアー排出口7および排気装置8を設けてある。
一方、装置本体2の下方には、造粒室3の内部にエアーを供給するためのエアー供給口9および送風装置10、エアーヒータ11を設けてある。
【0015】
(エアー吹出部)
エアー吹出部5は、造粒室3の内部に流動用エアーAを供給するためのものである。前記エアー吹出部5からは、所定の温度・湿度に温度設定した流動用エアーAを上向きに供給する。当該エアー吹出部5は、前記流動用エアーAを造粒室3の内部に通過させる機能と、造粒途中の粒子を受け止めて流動層Rを形成する機能とを有する。
尚、流動用エアーAの吹出しは概ね上方に向けて行うが、当該方向は鉛直方向Xに沿って上方に吹き出させるものでもよいし、造粒室3の内部に流動用エアーAの旋回流が形成されるように斜め上方に吹き出すこととしてもよい。旋回流を形成した場合には、粒子をより積極的に上方に巻き上げるので、粒子の乾燥固化を一層促進することができる。
【0016】
前記流動用エアーAの圧力は、個々の粒子が造粒室3の内部で浮遊流動する程度のものが望ましい。特に、造粒初期においては、粒子どうしが凝集することのないように常に装置本体2の内部で粒子が浮遊流動する状態となるように流動用エアーAの吹出流量を調節する。
【0017】
また、流動用エアーAの温度・湿度は、粒子の乾燥程度に応じて適宜調節する。例えば、粒子の乾燥が遅い場合には、粒子どうしの凝集が生じ易くなって、得られる粒子の粒度分布が広がってしまうため、これを防止するためには、流動用エアーAの温度を高めに調節する。当該温度・湿度は、前記エアー供給口9に設けた入口温度計12および入口湿度計13によって計測する。
【0018】
当該エアー吹出部5は、例えば、ステンレス鋼製の複数の細線を焼結して形成した網状部材や、ステンレス鋼製等のパンチングプレート、さらには、多孔質のセラミックスやフィルタ材などを取り付けて多数の開口部を設けたものを用いる。特に、ステンレス鋼製のものは、耐熱性・耐食性・強度において優れているため、造粒装置の耐久性が高まり、造粒に際しての運転条件を広範囲に選択することが可能となる。
【0019】
当該エアー吹出部5は、図2に示すごとく、円錐面を有するコーン部材14の周囲を取り巻くように設けてあり、当該コーン部材14に対して下方に移動させることができる。当該下方への移動によって、前記コーン部材14とエアー吹出部5との間に隙間15が形成される。この隙間15は、造粒が終了した粒子の排出口15aとして利用する。本構成によれば、製品粒子を連続的に造粒することができる。
【0020】
(スプレーノズル)
図1および図2に示すごとく、前記コーン部材14の周囲には、前記スプレーノズル4を分散配置してある。当該スプレーノズル4からは、前記液状材料1が上向きに噴霧される。前記液状材料1は、固体と液体とが混在した混在物、又は、固体が溶解した溶液のうち少なくとも何れか一方を含んで構成する。
本構成であれば、液状材料1の噴霧方向と流動用エアーAの供給方向とが一致するから、粉体の噴霧が流動用エアーAによって阻害されず、液状材料1を円滑に噴霧することができる。
【0021】
前記液状材料1としては、例えば、エテンザミド・プロベネシド等の医薬品のスラリー、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酸化チタンスラリー、セラミックス粉末のスラリー、ココア水溶液、コーヒー水溶液など各種食品類の水溶液等を用いることができる。
【0022】
噴霧する液状材料1は液材供給ポンプ16によって液材容器17から吸い上げられ、前記スプレーノズル4に供給する。この際、前記スプレーノズル4には、空気圧縮器18から噴霧用の空気を供給する。前記液状材料1および噴霧用の空気は、例えば二重管を介して前記スプレーノズル4に供給し、前記スプレーノズル4で混合して微細液滴(ミスト)として造粒室3の内部に噴霧する。
噴霧された液状材料1は流動用エアーAによって上方に搬送されるから、造粒室3の内部で長時間のあいだ浮遊することとなる。よって、粉体は浮遊中に略完全に固化させることができ、粉体どうしの凝集が生じ難くなる。この結果、突然大きな粒径の粒子が形成されることがなく、粒子は連続して成長することとなるから、粒度のバラつきが少ない製品粒子を得ることができる。
【0023】
(ジェットノズル)
前記装置本体2の壁部2aには造粒室3の内部に高圧の気体を噴射するジェットノズル6を備えている。本実施形態の場合、前記ジェットノズル6からは、前記パルスジェットJを噴射する。当該パルスジェットJは、乾燥圧縮空気を間欠的に噴射するものである。
図2(イ)(ロ)には、前記壁部2aの周方向Yに沿って四つのジェットノズル6を分散配置した例を示す。四つのジェットノズル6は、装置本体2の側面視において、何れも壁部2aから水平方向内向きに設置してあり、装置本体2の平面視において、装置本体2の中心部でパルスジェットJが交わるように設置してある。
【0024】
本構成であれば、パルスジェットJの噴射を直に受けた粒子が瞬時に解砕される他、直接に解砕されなかった粒子であっても、四箇所から噴射されるパルスジェットJによって装置本体2の内方側に移動させられた粒子どうしが中心部近傍で激しく衝突して解砕される。よって、粒子の成長を一定の範囲で抑制して、所望の粒径を有する粒子を得ることができる。
【0025】
尚、本発明の造粒装置を用いて得られる粒子は主に顆粒となる。つまり、噴霧された液状材料1は造粒室3の内部で浮遊流動し、当該粒子に更に液状材料1が噴霧されて、構造が密である一次粒子が形成される。この一次粒子のうち、ある程度成長した粒子は互いに衝突して凝集し、粒径を増大させる。
凝集して重量が増した粒子は、造粒室3の下方において流動層Rを形制するようになるが、当該凝集粒子には上記のごとくパルスジェットJが作用するから、当該粒子は解砕され、一定以上の粒径に成長することが阻止される。即ち、本発明の装置による場合には、一定粒径の一次粒子が複数凝集した顆粒が形成されるのである。
得られる顆粒の粒径は、製造する粒子によっても異なるが、パルスジェットJを噴射する際のパルス間隔、あるいは、パルスジェットJの噴射圧力等によって調節することができる。例えば、パルスジェットJの噴射間隔が短くなるほど、そして、パルスジェットJの噴射圧力が高くなるほど、得られる顆粒の粒径は小さくなる。
【0026】
(エアー排出口およびフィルタ)
前記造粒室3を通過した流動用エアーAは、図1に示すごとく、前記造粒室3の上部に設けたエアー排出口7から排気装置8を用いて排出する。その際に、排気する流動用エアーAの温度・湿度は、前記エアー排出口7に設けた出口温度計19および出口湿度計20によって計測する。
当該エアー排出口7における温度・湿度の計測結果は、前記エアー供給口9における温度・湿度の計測結果と共に、造粒室3の内部の温度・湿度の状態を把握し、調節するのに有効である。つまり、前記計測結果に基づいて流動用エアーAの風量あるいは温度を適宜調節することで、前記造粒室3の内部の温度・湿度が最適な状態となるように調節することができるのである。
【0027】
前記スプレーノズル4と前記エアー排出口7との間には、造粒室3の内部の流動用エアーAを排出する際に粒子が排出されるのを阻止するフィルタ21を設けてある。
前記造粒室3の内部では、常時、上向きに流動用エアーAが流れており、造粒室3の内部を流動する粒子は前記エアー排出口7の側に流動し易い。しかし、本構成のごとくフィルタ21を設けることで、流動粒子の一部が前記エアー排出口7から排出されるのを阻止し、造粒に際して液状材料1の歩留まりを向上させるのである。
【0028】
前記フィルタ21で捕集された粒子は、フィルタ21に付着した状態で略完全に乾燥が終了する。フィルタ21に付着する粒子は、粒子が有する水分等が略蒸発して軽くなったものであるから、これら粒子どうしの凝集は殆ど生じない。
【0029】
フィルタ21で乾燥を終了した粒子は、フィルタ21に設けた払落し手段Hによりフィルタ21から再び造粒室3の内部に落下させる。そのため本装置においては、図1に示すごとく、前記払落し手段Hとして逆洗装置22を備えたバグフィルタ21aを用いて構成してある。
前記逆洗装置22は、装置本体2の外部に設けたコンプレッサ(図示省略)と接続した圧力空気源22aと、夫々のフィルタ本体21bに近接して取りつけられたブローチューブ22bとで構成する。当該逆洗装置22により、前記フィルタ本体21bに対して前記エアー排出口7の側から前記造粒室3の側に瞬間的に圧力を加え、バグフィルタ21aに付着した粒子を払い落とすのである。
図示は省略するが、前記圧力空気源22aには、逆洗空気の圧力あるいは逆洗の時間間隔等を設定するためのタイマー等を設けてある。
【0030】
払い落とされた前記粒子は再び造粒室3の内部を浮遊流動する。そしてスプレーノズル4の近傍に浮遊流動した粒子に再びスプレーノズル4から液状材料1が噴霧される。液状材料1で覆われた粒子は、さらに造粒室3内を浮遊流動しつつ乾燥し、成長しながら前記フィルタ21に吸着される。このような過程を順次繰り返して所定の粒径を有する製品粒子が形成される。
このようにフィルタ21および払落し手段Hを用いることで、限られた空間内で所定の粒径を有する粉体を造粒することができ、コンパクトな構成を有する造粒装置を得ることができる。
【0031】
(造粒過程)
図3(イ)(ロ)(ハ)には、本発明に係る造粒装置を用いて顆粒を製造する過程の一例を示す。
図3(イ)は、核となる粒子を形成する造粒の初期過程を示す。図3(ロ)は、核となる粒子を形成しつつ、造粒過程にある粒子に液状材料1を付着させ、更に、粒子どうしが凝集しようとするのをパルスジェットJの噴射によって解砕しつつ造粒する中期過程を示す。図3(ハ)は、パルスジェットJによる解砕を行いつつ粒子に液状材料1を噴霧することで、一次粒子および顆粒の粒径を調節する造粒の終期過程を示す。
【0032】
先ずエアー吹出部5から流動用エアーAを所定の流量で吹き出させておき、この空気の流れの中に、スプレーノズル4から液状材料1を噴霧する。当該流動用エアーAは、前記エアーヒータ11によって予め所定の温度に設定しておく。
このとき、前記エアー吹出部5から供給する流動用エアーAの強さは、図3(イ)に示すごとく、噴霧した粒子ができるだけ造粒室3の内部で浮遊流動するように設定する。粒子を積極的に造粒室3の内部で浮遊させた場合にも、造粒室3の上部にはバグフィルタ21aを設けてあるから、造粒過程の微粒子が装置本体2の外部に排出されてしまうことがない。
【0033】
尚、本発明の場合には、バグフィルタ21aの払い落とし時に微細な粒子は分散落下されるので、粒子どうしの間隔を大きく確保することができる。従って、従来の造粒装置のように液状材料1を下向きに噴霧する場合に比べて、噴霧する液状材料1の濃度を高く設定することができる。濃度を高めることができるという利点は、造粒初期においても、粒子の成長がある程度進んだ段階においても得ることができる。特に、粒子の成長が進んだ段階では、粒子の質量も増大するから、液体の表面張力あるいは分子間引力が作用しても粒子の凝集が抑制されるようになるため、液状材料1の濃度を更に高めることができる。この結果、それだけ多くの液状材料1を噴霧することになるから、粒子の成長を積極的に早めることとなる。
【0034】
前記造粒初期において、前記粒子は乾燥固化しつつ造粒室3の内部を浮遊流動するが、造粒室3の内部の空気はエアー排出口7からの排気によって上方に流れているため、前記粒子も次第に造粒室3の上方に流される。当該粒子は、前記フィルタ本体21bに捕集される。当該捕集された粒子はフィルタ本体21bに付着した状態で略完全に乾燥が終了する。フィルタ本体21bに付着する粒子は、粒子が有する水分等が略蒸発して軽くなったものであるから、これら粒子どうしの凝集は殆ど生じない。
【0035】
図3(ロ)には、造粒過程の中期過程を示す。バグフィルタ21aで乾燥を終了した粒子は、バグフィルタ21aに設けた逆洗装置22により再び造粒室3の内部に払い落とされる。払い落とされた前記粒子は再び造粒室3の内部を浮遊流動し、スプレーノズル4の近傍に浮遊流動してきた際に、再びスプレーノズル4から液状材料1が噴霧される。液状材料1で覆われた粒子は、さらに造粒室3の内部を浮遊流動しつつ乾燥し、前記フィルタ本体21bに吸着される。このような過程を順次繰り返して所定の粒径を有する製品粒子が形成される。
【0036】
この中期過程では、ある程度の造粒が進行して粒径が大きくなった粒子は造粒室3の下方領域で流動層Rを形成するようになる。ここでは粒子どうしの衝突が生じ易く、当該粒子は互いに凝集して粒径を成長させようとする。
しかし、中期過程においては、前記ジェットノズル6からパルスジェットJを噴射して、前記凝集を抑制し、粒径の粗大化を阻止する。
尚、成長がそれほど進んでいない微細粒子であって、造粒室3の中間領域および上方領域で浮遊流動しているものは、より成長の進んだ粒子の表面へ付着したり、微細粒子どうしが凝集して成長するから、時間の経過に伴って略全ての粒子の粒径が揃うこととなる。
【0037】
図3(ハ)は、造粒過程の終期過程を示す。顆粒の成長が更に進むと、殆ど全ての顆粒が造粒室3の下方において流動層Rを形成することとなる。ここでは、顆粒が成長し過ぎるのを阻止するためにパルスジェットJを噴射しつつ、夫々の顆粒に液状材料1を噴霧して最終的に粒径の調整を行う。
そして、目的の粒径に成長した顆粒は、前記エアー吹出部5を下降させて前記造粒室3から取り出す。
【0038】
(造粒の実施例)
本実施例では、医薬品の主薬原料として用いられるエテンザミドを用いて造粒した場合の例を示す。用いたエテンザミドの平均粒径は約7μmであった。
本実施例では、造粒時において粒子どうしの過度な凝集を防止しつつも粒子どうしに適度な付着性を持たせて、多孔質であって任意の粒径を有する顆粒を得るために多少のバインダを使用した。
具体的には、主薬原料である上記エテンザミド、および、前記バインダとしてのヒドロキシプロピルセルロース、さらに水を、夫々30:1.5:68.5の割合で混合して液状材料1を形成した。
【0039】
本実施形態においては、前記エアー吹出部5を350mmφの外径を有するステンレス鋼製の網状部材で構成し、流動用エアーAを7Nm3/minの風量で供給した。造粒室3に 投入する流動用エアーAの温度は、前記エアー供給口9において80℃とし、前記エアー排出口7において55℃となるように設定した。前記ジェットノズル6から噴射するパルスジェットJの圧力は、0,2,4,6kgf/cm2 の四つの条件を設定した。
尚、打錠時に前記顆粒の充填性を高めるために、得られた顆粒の表面はステアリン酸マグネシウムを用いてコーティングした。
【0040】
表1には、本発明の造粒装置によって製造した顆粒、および、当該顆粒を打錠して得た錠剤の物性を示す。打錠は400kgfの荷重で行い、直径8mm、重量200mgの錠剤を形成した。
【0041】
【表1】
Figure 0003894686
【0042】
造粒によって得られた顆粒の断面状態は、パルスジェットJを用いない場合に比べてパルスジェットJを用いた方が空隙の多いものとなった。
図4(イ)はパルスジェットJを用いて製造した顆粒の断面状態を示す。この場合には、1次粒子23が多数集合して顆粒を形成するが、当該1次粒子23の間には比較的大きな空隙24が形成される。これは、これは造粒途中の粒子に対して定期的にパルスジェットJによる衝撃を付加することで、1次粒子23の成長がある一定の大きさに制限されるためと考えられる。
一方、図4(ロ)には、パルスジェットJを用いない場合に得られた顆粒の断面状態を示す。この場合には、全体的に緻密な構造を示している。つまり、流動層Rによって攪拌される粒子どうしが相互に衝突し、表面がある程度締め固められながら粒子の成長が行われるためと考えられる。
【0043】
また、上記顆粒のかさ密度を測定したところ、表1に示したごとくパルスジェットJを用いた方が小さな値を示した。さらに、当該かさ密度は、パルスジェットJの圧力が増大するほど小さな値となった。このことは、図4からも明らかなごとく、パルスジェットJの圧力を高めるほど1次粒子23の成長程度が抑制され、空隙24の多い顆粒が製造されるためと考えられる。
【0044】
錠剤の硬度については、パルスジェットJの圧力を高めるほど硬度は大きくなる傾向にある。これは、前述のごとく、パルスジェットJの圧力が高いほど空隙24の多い顆粒が形成されるが、このような顆粒は、より緻密な顆粒に比べて崩壊し易いと考えられる。よって、打錠時に型の内部で速やかに崩壊し、締め固め程度が向上して硬度が上昇したと考えられる。
【0045】
本発明の造粒装置を用いると、製造する顆粒の粒径を任意に調節することが可能である。表1から明らかなごとくパルスジェットJの圧力を0〜6kgf/cm2の範囲で変化させ ることで、107〜77μmまでの粒径の顆粒を得ることができる。よって、打錠に際する型への充填性等に応じて最適な粒径の顆粒を得ることができるようパルスジェットJの圧力を決定すればよい。
【0046】
顆粒の粒度分布については、パルスジェットJを用いるか否かに拘わらず、その標準偏差σgは1.8〜1.9の範囲に収まっていた。即ち、本発明の造粒装置では、スプレーノズル4を上向きに設けているため、造粒過程において粒子の凝集が生じ難い。このため、粒子を均一に成長させることができ、粒度分布を狭くすることができると考えられる。
また、パルスジェットJの圧力を高めるほど顆粒の平均粒径は小さくなった。これは、圧力の高いパルスジェットJほど、成長過程にある顆粒に大きな衝撃力を与えることができるうえ、前記圧力が高いほど造粒室3の内部においてパルスジェットJが及ぶ範囲が広がるため、特定の顆粒がパルスジェットJからの衝撃を受ける機会が増大し、顆粒の成長が抑制されるためと考えられる。
【0047】
(効果)
以上のごとく、本発明の造粒装置では、液状材料を上向きに噴霧供給するようにスプレーノズルを構成してあるから、噴霧した液状材料が流動用エアーと共に造粒室の上方に吹き上げられ、造粒室内で長時間のあいだ粒子を浮遊させることができる。この結果、噴霧された粒子どうしの間隔が広く確保され、液状材料の乾燥が確実に行われるから、粒子どうしの凝集が生じ難く、粒度分布の狭い一次粒子を得ることができる。
そして、ジェットノズルを備えておけば、凝集して粗大化しようとする顆粒をパルスジェットによって適度な大きさに解砕するから、粒度分布が極めて狭い製品顆粒を得ることができる。しかも、前記パルスジェットの強さを調節することで、製品顆粒の大きさを任意に設定することも可能となる。
【0048】
〔別実施の形態〕
〈1〉 ジェットノズル6の形式は、前述の実施形態に限られず、以下の構成としてもよい。
即ち、図5に示すごとく、パルスジェットJの噴射方向を前記造粒室3の中心に向けると共に、やや下方に向けて構成することができる。
本構成であれば、前記流動用エアーAによって上向きの速度を与えられた粒子に対向する方向にパルスジェットJを噴射することとなるから、粒子に対してより強い衝撃を与えることができる。その結果、凝集力の強い粉体であっても当該凝集を効果的に抑制しつつ造粒することが可能となる。
【0049】
〈2〉 前記ジェットノズル6は、例えば図6に示すごとく造粒室3の周囲に亘って四箇所に設けておき、隣接する二個のジェットノズル6を一組として、当該一組のジェットノズル6から噴射されたジェットを流動層Rの内部で交差させると共に、一方の組におけるパルスジェットJの交差点と、他方の組におけるパルスジェットJの交差点とが異なる位置となるように構成することができる。
本構成であれば、流動層Rの内部において粒子の解砕を複数の場所で行うから、パルスジェットJによる解砕力の及ぶ範囲を広げることができる。本構成の場合には、図5で示した場合に比べて粒子に与える衝撃力は低下する。しかし、それほど凝集力の強くない粒子を製造する場合には、衝撃力を高めるよりも衝撃力の及ぶ範囲を広げる方が有効な場合がある。本構成の造粒装置であれば、例えば、造粒過程の凝集力がそれほど強くない粒子を用いた顆粒の製造を効率的なものにすることができる。
【0050】
〈3〉 前記ジェットノズル6は、さらに図7に示すごとく構成することもできる。即ち、造粒室3の周囲に複数のジェットノズル6を設けると共に、夫々のジェットノズル6の向きを造粒室3の中心から所定の角度だけ偏向させて設け、旋回式の流動層Rを形成するように構成する。
本構成であれば、図5および図6に示した例に比べてさらにパルスジェットJの衝撃力を小さくすることができ、しかも、当該衝撃力を流動層Rの略全体に分散させることができるため、例えば、非常に壊れやすい顆粒を所定の粒径まで造粒する場合等に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の造粒装置を示す縦断面図
【図2】本発明の造粒装置の要部を示す説明図
【図3】本発明の造粒装置を用いた造粒過程を示す説明図
【図4】本発明の造粒装置を用いて製造した粒子の構造を示す説明図
【図5】別実施形態に係るジェットノズルの取付け状態を示す説明図
【図6】別実施形態に係るジェットノズルの取付け状態を示す説明図
【図7】別実施形態に係るジェットノズルの取付け状態を示す説明図
【符号の説明】
1 液状材料
2 装置本体
3 造粒室
4 スプレーノズル
5 エアー吹出部
6 ジェットノズル
7 エアー排出口
21 フィルタ
A 流動用エアー
R 流動層

Claims (3)

  1. 固体と液体とが混在した混在物、又は、固体が溶解した溶液の少なくとも一方からなる液状材料を装置本体の造粒室の内部に噴霧供給するスプレーノズルを、前記造粒室の内部に備えると共に、造粒途中の粉体による流動層を前記造粒室の内部に形成するために、流動用エアーを供給するエアー吹出部を前記造粒室の下方に備えた造粒装置であって、
    前記スプレーノズルが、前記液状材料を上向きに噴霧供給するように構成してあると共に、前記流動層に対して高圧気体を吹き付けるジェットノズルを複数備え、隣接する前記ジェットノズルを一組として、当該一組のジェットノズルから噴射されたジェットを前記流動層の内部で交差させると共に、一の組におけるジェットの交差点と、他の組におけるジェットの交差点とが異なる位置となるように構成してある造粒装置。
  2. 固体と液体とが混在した混在物、又は、固体が溶解した溶液の少なくとも一方からなる液状材料を装置本体の造粒室の内部に噴霧供給するスプレーノズルを、前記造粒室の内部に備えると共に、造粒途中の粉体による流動層を前記造粒室の内部に形成するために、流動用エアーを供給するエアー吹出部を前記造粒室の下方に備えた造粒装置であって、
    前記スプレーノズルが、前記液状材料を上向きに噴霧供給するように構成してあると共に、前記流動層に対して高圧気体を吹き付けるジェットノズルを複数備え、各ジェットノズルの向きを前記造粒室の中心から所定の角度だけ偏向させて、旋回式の流動層を形成するように構成してある造粒装置。
  3. 前記エアー吹出部が、円錐面を有するコーン部材の周囲を取り巻くように設けられると共に、当該コーン部材に対して下方に移動して当該コーン部材との間に形成される隙間を、造粒した粒子の排出口として利用可能に構成してある請求項1又は2に記載の造粒装置。
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