JP3893261B2 - 車両用内燃機関の降坂状態判定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であることをその車両に搭載された内燃機関の運転状態に基づいて判定するようにした車両用内燃機関の降坂状態判定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関を搭載した車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態を判定することのできる装置として、特開昭62−238126号公報、特開昭63−289360号公報、特開昭64−30959号公報、特開平6−101558号公報及び特開平8−132926号公報に開示されたものがある。
これらの公報のうち、特開昭63−289360号公報及び特開昭64−30959号公報に開示された装置では、走行路面の傾斜を測定するための傾斜センサが使用され、その他の公報の装置では、アクセルペダル等の開度を検出するためのアクセルセンサやスロットルバルブの開度を検出するためのスロットルセンサが使用されている。そして、特開平8−132926号公報の装置では、降坂状態の判定結果に基づいて、車両の自動変速機のシフトパターンを制御したり、内燃機関(エンジン)における点火時期や燃料供給量を制御することが開示されている。
【0003】
一方、内燃機関の制御において、大気圧も重要な運転パラメータの一つである。例えば、プレッシャレギュレータの背圧が大気圧である燃料系の制御では、内燃機関の吸気圧が同じでも、高地になるほど大気圧が低下することから、空燃比を同じに保つためには、平地での標準大気圧の場合に比べてより多くの燃料が必要になる。そのため、常に大気圧を監視して、内燃機関に供給される燃料量を大気圧の変化に応じて適宜に補正する必要がある。このことは点火装置を使用した点火制御においても同様である。
【0004】
そのために、従来の内燃機関の制御では、専用の大気圧センサを設けて大気圧を検出するようにしたものがある。或いは、部品点数の削減を図るために大気圧センサを使わず、吸気圧センサ、スロットルセンサ及び回転速度センサによる各種検出値から大気圧を推定する方法が、例えば、特公平7−35749号公報の「内燃機関制御用の大気圧予測方法」において開示されている。又、上記特開平6−101558号公報に開示された装置では、スロットルセンサを含む各種センサの検出結果に基づいて大気圧を推定すると共に、連続降坂によって急激に変化する大気圧を、実際の大気圧から大きく外れることなく推定するための装置が開示されている。この装置では、一旦推定された大気圧をなまし処理すると共に、連続降坂状態が判定されたときに、そのなまし処理の度合いを一律に定められた値へ小さくすることにより、降坂後の大気圧を推定するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来の各公報に開示された降坂状態判定装置では、傾斜センサやアクセルセンサ、スロットルセンサが必要であり、その分だけ内燃機関の制御に必要な部品点数が増えることになった。ここで、例えば、二輪車やゴルフカート等で使用される簡易な内燃機関では、部品点数の削減を図るために傾斜センサ、アクセルセンサ及びスロットルセンサ等の余分な検出手段を省略することが要望されている。
【0006】
一方、上記特開平6−101558号公報に開示された装置では、連続降坂状態が推定されたときに、なまし処理の度合いを一律に定められた設定値へ変更するだけなので、降坂の高低差の違いによっては、推定される大気圧が実際の大気圧から大きくずれるおそれがあった。このため、降坂後に推定される大気圧がばらつき、全体として大気圧の推定精度が低下する傾向があった。
【0007】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、スロットルセンサ等の専用の検出手段を設けることなく車両の降坂状態を推定することを可能にした車両用内燃機関の降坂状態推定方法を提供することにある。この発明の第2の目的は、車両降坂直後に内燃機関の制御に必要な大気圧を、車両降坂前に求められた大気圧を適正に補正することにより精度良く推定することを可能にした車両用内燃機関の大気圧補正方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続したときに車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定することを趣旨とする。
【0009】
内燃機関のスロットルバルブが全閉となる減速運転時に車両が下り坂を走行するときには、吸気通路の吸気圧がアイドル運転時の吸気圧より所定値小さくなることが分かっている。又、車両が降坂状態となるときには、低地(平地)におけるよりも減速運転状態が長く続くことが分かっている。
上記発明の構成によれば、内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の検出値より所定値小さい状態となるときは下り坂の減速運転時であることが分かる。そして、その状態が平地での減速運転状態と区別できる所定時間を継続したときに車両が降坂状態であると判定することができる。従って、吸気通路の吸気圧を検出するだけで降坂状態が判定されるようになる。
【0010】
上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続したときに車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定し、その判定時における吸気圧の検出値の、予め標準大気圧の下で減速運転時に検出された吸気圧の検出値に対する比率を大気圧ずれ率として算出し、その算出された大気圧ずれ率に基づいて降坂前の大気圧を補正することにより今回の大気圧とすることを趣旨とする。
【0011】
車両の降坂時には、車両周囲の大気圧が徐々に変化し、その大気圧は降坂前よりも降坂後で高くなる。従って、降坂時に吸気通路で検出される吸気圧も大気圧の変化に応じて変わることになる。このため、車両の降坂時に検出される吸気圧を、予め標準大気圧の下で減速運転時に検出された吸気圧の検出値と比較することにより、それら吸気圧の較差の違いによって降坂時における大気圧を推定することが可能になる。
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明と同様の方法で車両の降坂状態が判定されたとき、その判定時における吸気圧の検出値の、予め標準大気圧の下で減速運転時に検出された吸気圧の検出値に対する比率を大気圧ずれ率として算出する。そして、算出された大気圧ずれ率に基づいて降坂前に求められた大気圧を補正して今回の大気圧とすることにより、降坂前後の標高差に応じて補正された大気圧が求められることになる。
【0012】
上記第1の目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の降坂状態判定装置であって、スロットルバルブより下流の吸気通路における吸気圧を検出するための吸気圧検出手段と、内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を前記吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続した特定状態を判断するための吸気圧状態判断手段と、特定状態が判断されたときに車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定するための降坂状態判定手段とを備えたことを趣旨とする。
【0013】
従って、上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明と同様、内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を前記吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の検出値より所定値小さい状態となるときは下り坂の減速運転時であることが分かる。そして、その状態が平地での減速運転状態と区別できる所定時間継続したときに車両が降坂状態であると降坂状態検出手段により判定することができる。従って、吸気通路の吸気圧を検出するだけで降坂状態が判定されるようになる。
【0014】
上記第2の目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の大気圧補正装置であって、スロットルバルブより下流の吸気通路における吸気圧を検出するための吸気圧検出手段と、内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を前記吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続した特定状態を判断するための吸気圧状態判断手段と、特定状態が判断されたときに車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定するための降坂状態判定手段と、予め標準大気圧の下で減速運転時に検出された吸気圧の検出値を対比値として記憶するための対比値記憶手段と、降坂状態の判定時における吸気圧の検出値の、記憶された対比値に対する比率を大気圧ずれ率として算出するための大気圧ずれ率算出手段と、算出された大気圧ずれ率に基づいて降坂前の大気圧を補正することにより今回の大気圧とするための大気圧補正手段とを備えたことを趣旨とする。
【0015】
従って、上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明と同様に、降坂状態判定手段により車両の降坂状態が判定されたときに、その判定時に吸気圧検出手段により検出される吸気圧の検出値の、予め標準大気圧の下で減速運転時に検出されて対比値記憶手段に記憶された吸気圧の検出値である対比値に対する比率が大気圧ずれ率算出手段により大気圧ずれ率として算出される。そして、算出された大気圧ずれ率に基づいて降坂前に求められた大気圧が大気圧補正手段により補正されることにより、降坂前後の標高差に応じて補正された大気圧が求められることになる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の運転に関わる制御量を制御するために所要の操作量に基づいて制御対象を操作するようにした制御装置において、内燃機関の回転速度を検出するための回転速度検出手段と、スロットルバルブより下流の吸気通路における吸気圧を検出するための吸気圧検出手段と、内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を前記吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続した特定状態を判断するための吸気圧状態判断手段と、特定状態が判断されたときに車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定するための降坂状態判定手段と、予め標準大気圧の下で減速運転時に検出された吸気圧の検出値を対比値として記憶するための対比値記憶手段と、降坂状態の判定時における吸気圧の検出値の、記憶された対比値に対する比率を大気圧ずれ率として算出するための大気圧ずれ率算出手段と、算出された大気圧ずれ率に基づいて降坂前の大気圧を補正することにより今回の大気圧とするための大気圧補正手段と、吸気圧の検出値と回転速度の検出値とに基づいて所要の制御量を得るための操作量を算出する操作量算出手段と、算出される操作量を、求められた今回の大気圧の値に基づいて補正するための操作量補正手段と、補正された操作量に基づいて制御対象を操作することにより制御量を制御するための制御手段とを備えたことを趣旨とする。
【0017】
上記発明の構成によれば、請求項4に記載の発明と同様に補正されて求められた今回の大気圧に基づいて制御対象に係る操作量が補正されることから、内燃機関の運転に関わる制御対象のための制御量が、大気圧の変化に応じて適正に制御されるようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1に、この実施の形態のエンジンシステムの概略構成を示す。このエンジンシステムは、車両(例えば「二輪自動車」)に搭載されたものであり、燃料を貯留するための燃料タンク1を備える。燃料タンク1に内蔵された燃料ポンプ2は、同タンク1に貯留された燃料を吐出する。内燃機関であるレシプロタイプの単気筒エンジン3には、燃料噴射弁(インジェクタ)4が設けられる。燃料ポンプ2から吐出された燃料は、燃料通路5を通じてインジェクタ4に供給される。供給された燃料は、インジェクタ4が作動することにより、吸気通路6へ噴射される。吸気通路6には、エアクリーナ7を通じて外部から空気が取り込まれる。吸気通路6に取り込まれた空気と、インジェクタ4から噴射された燃料は、可燃混合気を形成して燃焼室8に吸入される。
【0020】
吸気通路6には、所定のアクセル装置(図示略)により操作されるスロットルバルブ9が設けられる。スロットルバルブ9が開閉されることにより、吸気通路6から燃焼室8に吸入される空気量(吸気量)が調節される。吸気通路6には、スロットルバルブ9を迂回してバイパス通路10が設けられる。バイパス通路10には、アイドル・スピード・コントロール・バルブ(ISCバルブ)11が設けられる。ISCバルブ11は、アイドル運転時、即ち、スロットルバルブ9の全閉時に、エンジン3のアイドル回転速度を調節するために作動させるものである。
【0021】
燃焼室8に設けられた点火プラグ12は、イグニッションコイル13から出力される点火信号を受けて火花放電する。両部品12,13は、燃焼室8に供給される可燃混合気に点火するための点火装置を構成する。燃焼室8に吸入された可燃混合気は、点火プラグ12のスパーク動作により爆発・燃焼する。燃焼後の排気ガスは、燃焼室8から排気通路14を通じて外部へ排出される。排気通路14には、排気ガスを浄化するための三元触媒15が設けられる。燃焼室8における可燃混合気の燃焼に伴い、ピストン16が運動してクランクシャフト17が回転することにより、車両を走行させる駆動力がエンジン3で得られる。
【0022】
車両には、エンジン3を始動させるためのイグニションスイッチ18が設けられる。車両には、エンジン3の各種制御を司る電子制御装置(ECU)20が設けられる。車両用電源としてのバッテリ19は、イグニションスイッチ18を介してECU20に接続される。イグニションスイッチ18がオンされることにより、バッテリ19からECU20に電力が供給される。
【0023】
エンジン3に設けられる各種センサ21,22,23,24は、エンジン3の運転状態に関する各種運転パラメータを検出するためのものであり、それぞれECU20に接続される。即ち、吸気通路6に設けられた吸気圧検出手段である吸気圧センサ21は、スロットルバルブ9より下流の吸気通路6における吸気圧pmを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン3に設けられた水温センサ22は、エンジン3の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン3に設けられた回転速度検出手段である回転速度センサ23は、クランクシャフト17の回転速度(エンジン回転速度)NEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。排気通路14に設けられた酸素センサ24は、排気通路14へ排出された排気ガス中の酸素濃度(出力電圧)Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。この酸素センサ24は、エンジン3の燃焼室8に供給される可燃混合気の空燃比A/Fを得るために使用される。
【0024】
この実施の形態で、ECU20は、前述した各種センサ21〜24から出力される各種信号を入力する。ECU20は、これらの入力信号に基づき、吸気圧検出制御、大気圧推定制御、降坂状態判定制御、降坂時大気補正制御、燃料噴射制御及び点火時期制御等を実行し、さらに燃料ポンプ2、インジェクタ4、ISCバルブ11及びイグニションコイル13等をそれぞれ制御する。
【0025】
ここで、吸気圧検出制御とは、吸気圧センサ21で検出される吸気圧pmに基づいて吸気脈動の影響を排除した吸気圧の検出値を得るための制御である。大気圧推定制御とは、エンジン3の運転条件に応じて検出される吸気圧に基づいてそのときの大気圧を推定することである。降坂状態判定制御とは、吸気圧の検出値に基づいて車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態を判定することである。降坂時大気圧補正制御とは、車両が降坂状態であると判定されたときに、吸気圧の検出値に基づいて降坂前に求められた大気圧を補正することにより降坂後の大気圧を推定することである。燃料噴射制御とは、エンジン3の運転状態に応じてインジェクタ4による燃料噴射量及びその噴射タイミングを制御することである。点火時期制御とは、エンジン3の運転状態に応じてイグニションコイル13を制御することにより、点火プラグ12による点火時期を制御することである。
【0026】
周知のように、ECU20は中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、バックアップRAM、外部入力回路及び外部出力回路等を備える。ECU20は、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMと、外部入力回路及び外部出力回路等とをデータバスにより接続してなる論理演算回路を構成する。ROMは、エンジン3の各種制御に関する所定の制御プログラムを予め記憶したものである。RAMは、CPUの演算結果を一時記憶するものである。バックアップRAMは、予め記憶したデータを保存するものである。CPUは、入力回路を介して入力される各種センサ21〜24の検出信号に基づき、所定の制御プログラムに従って前述した各種制御等を実行する。この実施の形態で、ECU20は、本発明の吸気圧状態判定手段、降坂状態判定手段、大気圧ずれ率算出手段、大気圧補正手段、操作量算出手段、操作量補正手段及び制御手段を構成する。又、ECU20のバックアップRAMは、本発明の対比値記憶手段を構成する。
【0027】
次に、ECU20が実行する各種制御のうち、吸気圧検出制御のための処理内容について説明する。図2に吸気圧検出制御のプログラムをフローチャートに示す。ECU20は、図2に示すルーチンを所定期間毎に周期的に実行する。この実施の形態では、「1ms」の周期でこのルーチンを実行する。
【0028】
先ず、ステップ100で、ECU20は、吸気圧センサ21で検出される吸気圧pmについて今回のAD値pmadを読み込む。
【0029】
次に、ステップ101で、ECU20は、今回のAD値pmadが前回のAD値pmadoより大きいか否かを判断する。この判断結果が肯定の場合、吸気圧pmが上昇しているものとして、ステップ102で、ECU20は、今回の圧力上昇フラグXPMUPを「1」に設定する。
【0030】
次に、ステップ103で、ECU20は、前回の圧力上昇フラグXPMUPOが「0」であるか否かを判断する。この判断結果が否定である場合、前回に引き続いて吸気圧pmが上昇中であることから、ECU20は処理をステップ107へ移行する。上記判断結果が肯定である場合、吸気圧pmが下降から上昇に転じたものとして、処理をステップ104へ移行する。
【0031】
ステップ104では、ECU20は、前回のAD値pmadoがAD値pmadの上限値pmhi以下であるか否かを判断する。この判断結果が否定である場合、吸気脈動に伴い吸気圧pmが下降しているものとして、ECU20は処理をステップ107へ移行する。上記判断結果が肯定である場合、ステップ105で、ECU20は、前回のAD値pmadoをAD値pmadの下限値pmloとして設定する。
【0032】
そして、ステップ106で、ECU20は、下限値pmloを最終的に求めるべき吸気圧PMとして設定する。
【0033】
一方、ステップ101の判断結果が否定である場合、吸気圧pmが下降しているものとして、ステップ111で、ECU20は、今回の圧力上昇フラグXPMUPを「0」に設定する。
【0034】
次に、ステップ112で、ECU20は、前回の圧力上昇フラグXPMUPOが「0」であるか否かを判断する。この判断結果が肯定である場合、前回に引き続いて吸気圧pmが下降中であるものとして、ECU20は処理をステップ107へ移行する。上記判断結果が否定である場合、吸気圧pmが上昇から下降に転じたものとして、ステップ113で、ECU20は、前回のAD値pmadoをAD値pmadの上限値pmhiとして設定する。
【0035】
そして、ステップ103,104,106,112,113から移行してステップ107で、ECU20は、今回のAD値pmadを前回のAD値pmadoとする。
【0036】
次に、ステップ108で、ECU20は、今回の圧力上昇フラグXPMUPが「1」であるか否かを判断する。この判断結果が肯定である場合、ステップ109で、ECU20は、前回の圧力上昇フラグXPMUPOを「1」に設定し、その後の処理を一旦終了する。上記判断結果が否定である場合、ステップ110で、ECU20は、前回の圧力上昇フラグXPMUPOを「0」に設定し、その後の処理を一旦終了する。
【0037】
即ち、上記ルーチンでは、エンジン3の運転時に吸気圧pmの脈動の下限値pmloを検出し、その下限値pmloを吸気圧pmの検出値としての最終的な吸気圧PMとするようにしている。そのために、図3に示すように、脈動を伴う吸気圧pmにつき、連続的にサンプリングされる前回のAD値pmadoと今回のAD値pmadとを比較して、吸気圧pmの下降又は上昇を判断すると共に、上昇から下降への転換又は下降から上昇への転換を判断する。そして、上昇から下降への転換時における前回のAD値pmadoを上限値pmhiとして設定し、下降から上昇への転換時における前回のAD値pmadoを下限値pmloとして設定し、その下限値pmloを最終的な吸気圧PMの値として設定するようにしている。
【0038】
この実施の形態のエンジンシステムにおいて、エンジン3の運転時には吸気通路6で吸気の脈動が発生し、吸気圧センサ21で検出される吸気圧pmも脈動を伴って変化する。このため、脈動を伴った吸気圧pmを、エンジン3の各種制御を実行するための運転パラメータの一つとしてそのまま使用したのでは、各種制御が不安定となる。
【0039】
ここで、脈動を伴う吸気圧pmの検出値において、その下限値pmloが実際に燃焼室8に吸入される吸気量を最も良く反映した吸気圧となることが判っている。そこで、このエンジンシステムが実行する吸気圧検出方法では、吸気圧脈動、即ち、脈動を伴う吸気圧pmについてその下限値pmloを検出し、その下限値pmloを最終的な吸気圧PMの検出値としてる。このため、脈動を伴う吸気圧pmにも拘わらず、最終的な吸気圧PMとして吸気量に相関した適正な値と挙動が得られるようになる。これによって、安定性と応答性に優れ、実際の吸気量との相関性の高い吸気圧PMを検出することができる。
【0040】
この実施の形態のエンジンシステムでは、上記のように検出される上限値pmhi、下限値pmlo及び吸気圧PMを使用して負荷検出制御が行われ、その負荷検出結果に基づいて大気圧推定制御が行われるようになっている。この大気圧推定制御は、例えば、車両の登坂時に行われるものである。ECU20は、この大気圧推定制御により、専用の大気圧センサを使用することなく大気圧PAの値を推定するようになっている。ここでは、その負荷検出制御及び大気圧推定制御の内容に関する詳しい説明は省略する。
【0041】
そして、この実施の形態のエンジンシステムでは、上記のように求められた吸気圧PMの値と大気圧PAの推定値を使用して燃料噴射制御が行われる。そこで、この燃料噴射制御の処理内容について以下に説明する。図4には燃料噴射制御のプログラムをフローチャートに示す。ECU20は、このルーチンを所定期間毎に周期的に実行する。
【0042】
先ず、ステップ200で、ECU20は回転速度センサ23の検出値に基づきエンジン回転速度NEの値を読み込む。
【0043】
ステップ210で、ECU20は、最終的な吸気圧PMの値を読み込む。即ち、脈動を伴う吸気圧pmの下限値pmloを吸気圧PMの値として読み込む。このステップ210の読み込み処理は、前述した図2のルーチンを割り込み処理することにより行われる。
【0044】
ステップ220で、ECU20は、読み込まれたエンジン回転速度NEの値と吸気圧PMの値とに基づいて基本燃料噴射量TAUBSEを算出する。ECU20は、この基本燃料噴射量TAUBSEの算出を、予め定められた関数データ(噴射量マップ)を参照することにより行う。この関数データでは、エンジン3の燃焼室8に吸入される吸気量が、吸気圧PMの値とエンジン回転速度NEの値から決定され、その吸気量に応じた基本燃料噴射量TAUBSEが決定されるようになっている。
【0045】
ステップ230で、ECU20は、水温センサ22の検出値に基づき冷却水温THWの値を読み込む。そして、ステップ240で、ECU20は、読み込まれた冷却水温THWの値に基づき、エンジン3の暖機状態に応じて基本燃料噴射量TAUBSEを補正するための暖機補正係数KTHWを算出する。
【0046】
ステップ250で、ECU20は、上記のように推定された大気圧PAの値を読み込む。そして、ステップ260で、ECU20は、読み込まれた大気圧PAの値に基づき、大気圧PAの高低の違いに応じて基本燃料噴射量TAUBSEを補正するための大気圧補正係数KPAの値を算出する。ECU20は、この大気圧補正係数KPAの算出を、予め定められた関数データ(データマップ)を参照することにより行う。
【0047】
ステップ270で、ECU20は、燃焼室8に供給される空気と燃料との可燃混合気の空燃比A/Fを補正するための空燃比補正係数FAFの値を読み込む。この空燃比補正係数FAFは、酸素センサ24の検出値から読み込まれる酸素濃度Oxの値に基づいて別途のルーチンで算出されるものである。
【0048】
ステップ280で、ECU20は、上記のように算出された基本燃料噴射量TAUBSEを、暖機補正係数KTHW、空燃比補正係数FAF及び大気圧補正係数KPA等に基づいて補正することにより最終燃料噴射量TAUの値を算出する。
【0049】
その後、ステップ290で、ECU20は、算出された最終燃料噴射量TAUの値に基づいてインジェクタ4を制御することにより、インジェクタ4から噴射される燃料量を制御するのである。
【0050】
上記のように大気圧PAの推定値等に応じて補正された最終燃料噴射量TAUに基づいて燃料噴射制御が行われる。この実施の形態では、インジェクタ4、ECU20、吸気圧センサ21及び回転速度センサ23により、エンジン3の制御装置としての燃料噴射制御装置が構成される。
【0051】
この実施の形態のエンジンシステムでは、上記のように求められた吸気圧PMの値と大気圧PAの推定値を使用して点火時期制御が行われる。そこで、この点火時期制御の処理内容について説明する。図5には点火時期制御のプログラムをフローチャートに示す。ECU20は、このルーチンを所定期間毎に周期的に実行する。
【0052】
先ず、ステップ300で、ECU20は回転速度センサ23の検出値に基づきエンジン回転速度NEの値を読み込む。
【0053】
ステップ310で、ECU20は、最終的な吸気圧PMの値を読み込む。即ち、脈動を伴う吸気圧pmの下限値pmloを吸気圧PMの値として読み込む。このステップ310の読み込み処理は、前述した図2のルーチンを割り込み処理することにより行われる。
【0054】
ステップ320で、ECU20は、読み込まれたエンジン回転速度NEの値と吸気圧PMの値とに基づいて基本点火時期ITBSEを算出する。ECU20は、この基本点火時期ITBSEの算出を、予め定められた関数データ(点火時期マップ)を参照することにより行う。この関数データでは、エンジン3の燃焼室8に吸入される吸気量が、吸気圧PMの値とエンジン回転速度NEの値から決定され、その吸気量に応じた基本点火時期ITBSEが決定されるようになっている。
【0055】
ステップ330で、ECU20は、水温センサ22の検出値に基づき冷却水温THWの値を読み込む。そして、ステップ340で、ECU20は、読み込まれた冷却水温THWの値に基づき、エンジン3の暖機状態に応じて基本点火時期ITBSEを補正するための暖機補正係数K1を算出する。
【0056】
ステップ350で、ECU20は、上記のように推定された大気圧PAの値を読み込む。そして、ステップ360で、ECU20は、読み込まれた大気圧PAの値に基づき、大気圧PAの違いに応じて基本点火時期ITBSEを補正するための大気圧補正係数KPAの値を算出する。ECU20は、この大気圧補正係数KPAの算出を、所定の関数データ(データマップ)を参照することにより行う。
【0057】
ステップ370で、ECU20は、上記のように算出された基本点火時期ITBSEを、暖機補正係数K1及び大気圧補正係数KPA等に基づき補正することにより、最終点火時期ITの値を算出する。
【0058】
その後、ステップ380で、ECU20は、算出された最終点火時期ITの値に基づいてイグニションコイル13を制御することにより、点火プラグ12による点火時期を制御する。
【0059】
上記のように大気圧PAの推定値等に応じて補正された最終点火時期ITに基づいて点火時期制御が行われる。この実施の形態では、点火装置としての点火プラグ12及びイグニションコイル13、並びに、ECU20、吸気圧センサ21及び回転速度センサ23により、エンジン3の制御装置としての点火時期制御装置が構成される。
【0060】
この実施の形態のエンジンシステムによれば、エンジン3の運転時にエンジン回転速度NEが回転速度センサ23により検出される。同じく、運転時に吸気圧pmが吸気圧センサ21により検出され、その検出値から吸気圧脈動の下限値pmloがECU20により算出される。又、吸気圧pmの検出値として取り込まれる下限値pmloを吸気圧PMとして、その吸気圧PMとエンジン回転速度NEの検出値に基づいて、基本燃料噴射量TAUBSE及び基本点火時期TIBSEの値がそれぞれECU20により算出される。そして、それら基本燃料噴射量TAUBSE及び基本点火時期TIBSEの値が、大気圧PAの推定値から求められる大気圧補正係数KPA等に基づき補正されることにより、制御量である最終燃料噴射量TAU及び最終点火時期ITがそれぞれECU20により算出される。そして、それら最終燃料噴射量TAU及び最終点火時期ITに基づいてインジェクタ4及びイグニションコイル13等がECU20によりそれぞれ制御されることにより、燃料噴射制御及び点火時期制御が実行される。
【0061】
従って、操作量としての最終燃料噴射量TAUが大気圧PAに基づいて補正されることから、標高等による大気圧PAの変化に応じてインジェクタ4からの実際の噴射量が適正に制御されるようになる。この結果、標高等による大気圧PAの変化に拘わらず、燃料を過不足なくエンジン3に供給することができ、空燃比制御の精度を確保することができる。
【0062】
同様に操作量としての最終点火時期TIが大気圧PAに基づいて補正されることから、標高等による大気圧PAの変化に応じて点火プラグ12及びイグニションコイル13による実際の点火時期が適正に制御されるようになる。この結果、標高等による大気圧PAの変化に拘わらず、過度な遅角や進角を起こすことなく点火時期を適正に調整することができ、エンジン3の出力トルクの低下を防止することができる。
【0063】
又、この実施の形態では、脈動を伴う吸気圧pmの下限値pmloが最終的な吸気圧PMの検出値として取り込まれることから、吸気圧pmが脈動を伴うにも拘わらず、操作量としての最終燃料噴射量TAU及び最終点火時期ITが不安定な値となることがなく、制御対象であるインジェクタ4及びイグニションコイル13等が吸気圧pmの挙動に応じて適正に制御されるようになる。この結果、安定性と応答性に優れた燃料噴射制御及び点火時期制御を実行することができる。併せて、実際の吸気量との相関性の高い正確な燃料噴射制御及び点火時期制御を実行することができる。
【0064】
ここで、車両が山道を登って高地へ移動した場合、高地での大気圧PAの値は低地(平地)での標準大気圧PAの値よりも低くなる。従って、車両が一旦高地へ登ると、高地での大気圧PAが上記の大気圧推定制御によりECU20により推定されることになる。そして、燃料噴射制御及び点火時期制御においては、上記のように基本燃料噴射量TAUBSE及び基本点火時期TIBSEの値が、大気圧PAの推定値から求められる大気圧補正係数KPA,KIPAによりそれぞれ補正され、燃料噴射制御及び点火時期制御が実行される。
【0065】
ところが、車両が高地より下り坂を減速運転で走行し始める降坂状態になると、車両の周囲の大気圧PAは高地でのそれよりも徐々に高くなることから、エンジン3の制御に大気圧PAの違いを反映させるためには、大気圧PAを随時適正に補正する必要がある。又、車両が降坂状態にあるときに大気圧PAを補正するためには、車両が降坂状態にあることを適正に判定する必要がある。
【0066】
そこで、この実施の形態のエンジンシステムでは、先ず、車両が降坂状態にあることを次のように判定するようにしている。図6には、降坂状態判定制御の処理内容をフローチャートに示す。ECU20は、このルーチンを所定期間毎に周期的に実行する。
【0067】
先ずステップ400で、ECU20は、吸気圧PMの値を読み込む。即ち、脈動を伴う吸気圧pmの下限値pmloを吸気圧PMの値として読み込む。このステップ400の読み込み処理は、前述した図2のルーチンを割り込み処理することにより行われる。
【0068】
次に、ステップ410で、ECU20は、読み込まれた吸気圧PMの値が所定のしきい値KDFより低いか否かを判断する。このしきい値KDFは、エンジン3が減速運転状態にあるか、即ち、エンジン3の運転時にスロットルバルブ9が全閉状態にあるか否かを判断するための値であり、図7に示すように、エンジン3のアイドル運転時におけるアイドル値よりも低いものである。
【0069】
ステップ410の判断結果が否定の場合、ECU20は、ステップ420で、減速判定後の経過時間を計数する減速カウンタCDFを「0」にリセットする。次いで、ステップ430で、ECU20は、降坂状態であることを判定したことを示す降坂判定フラグXDSLを「0」に設定し、その後の処理を一旦終了する。
【0070】
一方、ステップ410の判断結果が肯定である場合、ステップ440で、ECU20は、減速カウンタCDFをインクリメントする。
【0071】
そして、ステップ450で、減速カウンタCDFの値が所定のしきい値KTDF以上であるか否かを判断する。このしき値KTDFは、エンジン3の減速運転が平地での減速運転ではなく降坂時の減速運転であることを区別するための時間であり、例えば、「20〜30秒」を当てはめることができる。
【0072】
ステップ450の判断結果が否定である場合、ECU20は、降坂状態ではないものとして、ステップ430で降坂判定フラグXDSLを「0」に設定し、その後の処理を一旦終了する。一方、ステップ450の判断結果が肯定である場合、ECU20は、降坂状態であるものとして、ステップ460で、降坂判定フラグXDSLを「1」に設定し、その後の処理を一旦終了する。
【0073】
つまり、上記制御によれば、車両に搭載されて吸気通路6にスロットルバルブ9を設けたエンジン3の運転時に吸気圧PMを検出し、その検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値であるアイドル値より所定値小さい状態、即ち、しきい値KDFより小さい状態が所定時間(しきい値KTDF以上)継続したときに車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定するようにしている。この実施の形態では、吸気圧センサ21及びECU20により、車両用のエンジン3の降坂状態推定装置が構成される。
【0074】
従って、上記降坂状態判定制御によれば、図7に実線で示すように、時刻t0で降坂運転が始まると、吸気圧PMがアイドル値よりも低い減速判定のためのしきい値KDFを下回る時刻t1で減速判定が行われる。その後、減速カウンタCDFの値が、降坂判定のためのしきい値KTDFを越える時刻t2で、車両が降坂状態であることが判定される。これにより、図7に破線で示すレーシングの場合と区別して、降坂状態であることを明確に区別することができる。
【0075】
この実施の形態のエンジンシステムでは、上記降坂状態の判定に基づいて、降坂時における大気圧PAを次のように補正するようにしている。図8には、大気圧補正制御の処理内容をフローチャートに示す。ECU20は、このルーチンを所定期間毎に周期的に実行する。
【0076】
先ず、ステップ500で、ECU20は、降坂判定フラグXDSLが「1」であるか否かを判断する。この判断が肯定である場合、車両が降坂状態であることから、ECU20は、大気圧補正を行うために処理をステップ510へ移行する。
【0077】
ステップ510で、ECU20は、吸気圧PMの値を読み込む。即ち、脈動を伴う吸気圧pmの下限値pmloを吸気圧PMの値として読み込む。このステップ310の読み込み処理は、前述した図2のルーチンを割り込み処理することにより行われる。
【0078】
次に、ステップ520で、ECU20は、前回推定された大気圧PA0の値を読み込む。そして、ステップ530で、ECU20は、今回読み込まれた吸気圧PMの値を、標準吸気圧値PMBSEで割り算することにより大気圧ずれ率Bpaの値を算出する。ここで、標準吸気圧値PMBSEは、予め標準大気圧の下でエンジン3の減速運転時に検出され、ECU20のバックアップRAMに記憶されたものである。
【0079】
そして、ステップ540で、ECU20は、前回推定された大気圧PA0の値を、今回求められた大気圧ずれ率Bpaで割り算することにより、補正後の大気圧PA1の値を算出し、その後の処理を一旦終了する。
【0080】
つまり、上記制御によれば、上記降坂状態判定制御のように降坂状態を判定したとき、その判定時における吸気圧PAの検出値の、予め標準大気圧の下で減速運転時に検出された吸気圧の検出値、即ち、標準吸気圧値PMBSEに対する比率を大気圧ずれ率Bpaとして算出し、その算出された大気圧ずれ率Bpaに基づいて降坂前の大気圧PA0を補正することにより今回の大気圧PA1とするようにしているのである。この実施の形態では、吸気圧センサ21及びECU20により、車両用のエンジン3の大気圧補正装置が構成される。
【0081】
従って、上記大気圧補正制御によれば、図9(a)(b)に示すように、高地の位置P0から車両の降坂が開始した場合、降坂状態が判定されるまでにある程度は車両が降下することから、車両は位置P1で降坂状態であることが判定され、その直後、位置P2において、前回の大気圧PA0の値を基に今回の大気圧PA1の値が推定されることになる。そして、今回の大気圧PA1を推定するのに、位置P2で検出される吸気圧PMの値の標準吸気圧PMBSEの値に対する大気圧ずれ率Bpaを求め、降坂前に推定された前回の大気圧PA0を大気圧ずれ率Bpaにより割り算して補正することにより、今回の大気圧PA1を求めるのである。これにより、図9(a)に破線で仮想的に示す大気圧の変化に応じて今回の大気圧PA1を求めることができる。
【0082】
以上説明したように本実施の形態のエンジンシステムにおいて、スロットルバルブ9が全閉となる減速運転時に車両が下り坂を走行する降坂状態になるときには、吸気通路6で吸気圧センサ21により検出される吸気圧PMがアイドル運転時の吸気圧の値であるアイドル値より所定値小さくなることが分かっている。又、車両が降坂状態となるときには、エンジンブレーキが使われることから、低地(平地)におけるよりもエンジン3の減速状態が長く続くことが分かっている。
【0083】
このエンジンシステムによれば、エンジン3の運転時に検出される吸気圧PMの検出値がアイドル運転時の検出値であるアイドル値より所定値小さいしきい値KDF以下の状態となるときは下り坂の減速運転時であることが分かっている。そして、その状態が平地での減速運転時と区別できる所定時間であるしき値KTDFを継続したときに車両が降坂状態であると判定することができる。従って、吸気通路6の吸気圧PMを吸気圧センサ21を使用して検出するだけで降坂状態が判定されるようになる。このため、本実施の形態では、従来例とは異なり、スロットルセンサ等の専用の検出手段を設けることなく車両の降坂状態を推定することができ、スロットルセンサ等を設けない分だけ、エンジン制御に必要な部品点数を減らすことができるようになる。
【0084】
更に、この実施の形態の本実施の形態のエンジンシステムにおいて、車両の降坂時には、車両周囲の大気圧PAが徐々に変化し、その大気圧PAの値は降坂前よりも降坂後で高くなる。このため、車両の降坂状態において吸気圧センサ21により検出される吸気圧PMを、平地での標準大気圧の下で減速運転時に検出された標準吸気圧PMBSEの検出値と比較することにより、降坂時における大気圧PAを推定することが可能になる。
【0085】
このエンジンシステムによれば、上記のように車両の降坂状態が判定されたときに、その判定時における吸気圧PMの検出値の、標準吸気圧PMBSEの検出値に対する比率が大気圧ずれ率Bpaとして算出される。そして、その大気圧ずれ率Bpaの値に基づいて降坂前に推定された大気圧PA0の値を補正して今回の大気圧PA1の値が求められる。従って、降坂前後の標高差に応じて補正された大気圧PAが求められることになる。この結果、車両降坂後のエンジン制御に必要な大気圧PAを、車両降坂前に推定された大気圧PA0の値を適正に補正することにより精度良く推定することができる。これにより、従来例とは異なり、スロットルセンサ等の専用の検出手段を何ら設けることなく、車両降坂前の大気圧PA0を補正して降坂後の大気圧PA1を得ることができる。このため、車両降坂時にエンジン制御に必要な大気圧PAを、専用の大気圧センサ等を何ら使用することなく、簡易なソフト処理によるだけで適正に推定することができるようになる。その上、スロットルセンサ等の検出手段を設けない分だけエンジン制御に必要な部品点数を減らすことができる。
【0086】
この実施の形態では、車両の降坂前に推定された大気圧PA0が補正されることにより降坂後に適正な大気圧PAが求められる。このため、降坂後においても、最終燃料噴射量TAUや最終点火時期ITの値を適正に補正することができ、燃料噴射制御や点火時期制御を大気圧PAの変化に合わせて行うことができ、それらの制御精度を確保することができる。
【0087】
尚、この発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0088】
(1)前記実施の形態では、本発明の降坂状態判定方法、降坂状態判定装置、大気圧補正方法、大気補正装置及び内燃機関の制御装置等を単気筒のエンジン3を含むエンジンシステムに具体化したが、2気筒や3気筒、或いはそれ以上の気筒数のエンジンを含むエンジンシステムに具体化することもできる。
【0089】
(2)前記実施の形態では、本発明を燃料噴射制御及び点火時期制御に具体化したが、それらの制御に限られるものではなく、大気圧を運転パラメータの一つとして使用する排気還流制御等のその他の制御に使用してもよい。
【0090】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明の構成によれば、スロットルセンサ等の専用の検出手段を設けることなく車両の降坂状態を推定することができ、スロットルセンサ等がない分だけエンジン制御に必要な部品点数を減らすことができる。
【0091】
請求項2に記載の発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、車両降坂後に内燃機関制御に必要な大気圧を、車両降坂前に求められた大気圧を適正に補正することにより精度良く推定することができ、専用の大気圧センサ等を使用することなく、簡易なソフト処理により適正に推定することができる。
【0092】
請求項3に記載の発明の構成によれば、スロットルセンサ等の専用の検出手段を設けることなく車両の降坂状態を推定することができ、スロットルセンサ等がない分だけエンジン制御に必要な部品点数を減らすことができる。
【0093】
請求項4に記載の発明の構成によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、車両降坂後に内燃機関制御に必要な大気圧を、車両降坂前に求められた大気圧を適正に補正することにより精度良く推定することができ、専用の大気圧センサ等を使用することなく、簡易なソフト処理により適正に推定することができる。
【0094】
請求項5に記載の発明の構成によれば、車両の降坂により大気圧が変化することに拘わらず、内燃機関の運転に関わる制御対象を過不足のない操作量に基づいて操作することにより所定の制御量を適正に制御することができ、内燃機関の制御精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 エンジンシステムを示す概略構成図である。
【図2】 吸気圧検出制御のプログラムを示すフローチャートである。
【図3】 脈動を伴う吸気圧とそのAD値等を示す説明図である。
【図4】 燃料噴射制御のプログラムを示すフローチャートである。
【図5】 点火時期制御のプログラムを示すフローチャートである。
【図6】 降坂状態判定制御のプログラムを示すフローチャートである。
【図7】 降坂時の吸気圧変化等を示すタイムチャートである。
【図8】 大気圧補正制御のプログラムを示すフローチャートである。
【図9】 降坂時の大気圧補正を説明する説明図である。
【符号の説明】
3 エンジン
4 インジェクタ(制御対象)
6 吸気通路
12 点火プラグ(制御対象)
13 イグニションコイル(制御対象)
20 ECU(吸気圧状態判断手段、降坂状態判定手段、対比値記憶手段、大気圧ずれ率 算出手段、大気圧補正手段、操作量算出手段、操作量補正手段及び制御手段)
21 吸気圧センサ(吸気圧検出手段)
23 回転速度センサ(回転速度検出手段)
Claims (5)
- 車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続したときに前記車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定することを特徴とする車両用内燃機関の降坂状態判定方法。
- 車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続したときに前記車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定し、その判定時における吸気圧の検出値の、予め標準大気圧の下で減速運転時に検出された吸気圧の検出値に対する比率を大気圧ずれ率として算出し、その算出された大気圧ずれ率に基づいて降坂前の大気圧を補正することにより今回の大気圧とすることを特徴とする車両用内燃機関の大気圧補正方法。
- 車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の降坂状態判定装置であって、
前記スロットルバルブより下流の吸気通路における吸気圧を検出するための吸気圧検出手段と、
前記内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を前記吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続した特定状態を判断するための吸気圧状態判断手段と、
前記特定状態が判断されたときに前記車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定するための降坂状態判定手段と
を備えたことを特徴とする車両内燃機関の降坂状態判定装置。 - 車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の大気圧補正装置であって、
前記スロットルバルブより下流の吸気通路における吸気圧を検出するための吸気圧検出手段と、
前記内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を前記吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続した特定状態を判断するための吸気圧状態判断手段と、
前記特定状態が判断されたときに前記車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定するための降坂状態判定手段と、
予め標準大気圧の下で減速運転時に検出された吸気圧の検出値を対比値として記憶するための対比値記憶手段と、
前記降坂状態の判定時における吸気圧の検出値の、前記記憶された対比値に対する比率を大気圧ずれ率として算出するための大気圧ずれ率算出手段と、
前記算出された大気圧ずれ率に基づいて降坂前の大気圧を補正することにより今回の大気圧とするための大気圧補正手段と
を備えたことを特徴とする車両用内燃機関の大気圧補正装置。 - 車両に搭載されて吸気通路にスロットルバルブを設けた内燃機関の運転に関わる制御量を制御するために所要の操作量に基づいて制御対象を操作するようにした制御装置において、
前記内燃機関の回転速度を検出するための回転速度検出手段と、
前記スロットルバルブより下流の吸気通路における吸気圧を検出するための吸気圧検出手段と、
前記内燃機関の運転時に脈動を伴う吸気圧の下限値を前記吸気圧検出手段により検出し、その下限値を最終的な吸気圧の検出値とするものとし、その吸気圧の検出値がアイドル運転時の吸気圧の検出値より所定値小さい状態が所定時間継続した特定状態を判断するための吸気圧状態判断手段と、
前記特定状態が判断されたときに前記車両が下り坂を減速運転で走行する降坂状態であると判定するための降坂状態判定手段と、
予め標準大気圧の下で減速運転時に検出された吸気圧の検出値を対比値として記憶するための対比値記憶手段と、
前記降坂状態の判定時における吸気圧の検出値の、前記記憶された対比値に対する比率を大気圧ずれ率として算出するための大気圧ずれ率算出手段と、
前記算出された大気圧ずれ率に基づいて降坂前の大気圧を補正することにより今回の大気圧とするための大気圧補正手段と、
前記吸気圧の検出値と前記回転速度の検出値とに基づいて所要の制御量を得るための操作量を算出する操作量算出手段と、
前記算出される操作量を、前記求められた今回の大気圧の値に基づいて補正するための操作量補正手段と、
前記補正された操作量に基づいて前記制御対象を操作することにより前記制御量を制御するための制御手段と
を備えたことを特徴とする車両用内燃機関の制御装置。
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