JP3889658B2 - 反射鏡製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、親水性と防眩性の2つの性能を有する反射鏡を製造するための反射鏡製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両には、左右両後方側を確認するための所謂ドアミラー(アウタービューミラーと称する場合もある)と称される反射鏡が設けられている。また、近年、このような反射鏡では、二酸化珪素の層と二酸化チタンの層からなる光触媒性親水膜をガラス基板の表面に形成した反射鏡が用いられている。
【0003】
すなわち、この種の反射鏡は、車両の室外に設けられているため雨天時には雨に晒される。このとき、反射鏡の表面に雨滴等の水滴が付着すると反射像が歪むため、反射鏡の表面に二酸化珪素(SiO2)等により構成される親水層を形成して、反射鏡の表面の親水性を向上させ、表面に付着した水を薄膜化させることで水滴付着による反射像の歪みを抑制したり、また、早期に蒸発させている。
【0004】
また、この種の反射鏡は通常時であっても他の車両の排気ガスの成分(主に有機物)等が反射鏡の表面に付着して汚れることがある。反射鏡の表面が汚れていると、上記の親水層による親水性が低下する。そこで、二酸化珪素によって形成される親水層とガラス面との間に二酸化チタン(TiO2)等により構成される光触媒層を設け、親水層に付着した有機物を反射鏡の表面近傍で二酸化チタン(TiO2)等の光触媒機能により分解して浄化し、親水層の表面の親水性を維持することが考えられている。
【0005】
以上のような光触媒性親水膜は、スパッタリングや蒸着によってガラス基板上に形成することが考えられていた。しかしながら、スパッタリングや蒸着は成膜速度が遅いことから生産性が悪く、このような方法に代わり、所謂「スピンコーティング」を採用することが考えられている。
【0006】
スピンコーティングによる成膜は、先ず、珪素及びチタン若しくはこれらの酸化物を添加したコーティング液をガラス基板の表面上に垂らす。ガラス基板上に垂らされたコーティング液がガラス基板上で広がった後に、ガラス基板を回転させ、その遠心力でガラス基板上のコーティング液を薄い膜状にし、その後、コーティング液を乾燥させた後に、加熱炉中にガラス基板をセットし、焼成することで上記の光触媒性親水膜が成膜される。
【0007】
このスピンコーティングによる成膜は、スパッタリングや蒸着に比べて成膜速度が極めて早く、生産性を向上でき、コストも安価にできるというメリットがある。
【0008】
一方で、夜間等においては車両はヘッドライトを点灯させて走行し、後方の車両のヘッドライトから発せられた光が反射膜で反射されることにより、後方に走行する車両が存在することを確認できる。
【0009】
しかしながら、夜間等においては、周囲に明るさに対してヘッドライトの光は充分に明るく、反射鏡での反射光が眩しい。このため、近年の車両のドアミラー等には、薄膜状の一対の電極膜に挟みこまれたエレクトロクロミック被膜を裏面側に設けた反射鏡が用いられることがある。
【0010】
エレクトロクロミック被膜は、タングステンの酸化物等により構成されており、一対の電極膜の一方から電圧が印加されることで、例えば、青色に着色され、電圧印加が解除若しくは一対の電極膜の他方から電圧が印加されることで着色が解除され、これにより、全体若しくは赤系の光の透過率を減少させる構成となっている。このエレクトロクロミック被膜に対して電圧の印加及び印加解除を制御する印加手段を、運転席近傍に設けたスイッチや車両後方側からの所定の明るさ以上の光を検出するセンサと連動させ、適宜に光の透過率を変化させることで、防眩性を向上させることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したように、光触媒性親水膜はガラス基板の表面に設けられ、エレクトロクロミック被膜はガラス基板の裏面に設けられることから、光触媒性親水膜とエレクトロクロミック被膜の双方をそれぞれガラス基板に設けることで、親水性、光触媒性、及び防眩性を全て併せ持った反射鏡を得ることができる。
【0012】
このように、2種類の被膜をガラス基板に形成する方法としては、大別して、親水性被膜を形成した後に一対の電極膜及びエレクトロクロミック被膜を形成する方法と、これとは反対に一対の電極膜及びエレクトロクロミック被膜を形成した後に親水性被膜を形成する方法と、がある。
【0013】
先に一対の電極膜及びエレクトロクロミック被膜を形成する方法では、光触媒性親水膜の成膜過程における加熱炉中での加熱温度が一般的にエレクトロクロミック被膜の耐熱温度よりも高いことから、加熱によってエレクトロクロミック被膜が壊されたり、壊されないまでもその性能が低下することがある。このため、先にエレクトロクロミック被膜を形成する方法では、良好な防眩性を有する反射鏡を製造することが困難で実現性が乏しい。
【0014】
これに対し、先に光触媒性親水膜を形成した後に一対の電極膜とエレクトロクロミック被膜を形成する方法では、ガラス基板の裏面に形成した一方の電極膜がその形成過程でガラス基板の外周縁近傍でガラス基板の表面側に回り込み、光触媒性親水膜に重なることがある。
【0015】
このため、一方の電極膜を成膜した後に、ガラス基板の外周縁とその近傍部分を切除して、電極膜と光触媒性親水膜とが重なった部分を取り除くことになる。
【0016】
ここで、上記の切除と、切除後の所謂面取りの段階で、光触媒性親水膜の外周端から微小なクラックが形成される可能性が高く、光触媒性親水膜の品質が低下したり、コスト高になることが考えられる。
【0017】
本発明は、上記事実を考慮して、安価なコストで基板の両面に親水性被膜とエレクトロクロミック被膜を確実に形成できる反射鏡製造方法を得ることが目的である。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、光に対する所定の透過率を有する基板と、光に対する所定の反射率を有し、前記基板の厚さ方向一方又は他方の面の側に形成された反射膜と、前記基板の厚さ方向一方の面で前記基板上に略膜状に形成されると共に付着した水に対する親水性を有する親水性被膜と、前記基板の厚さ方向他方の面で前記基板上に略膜状に形成されると共に電圧の印加及び当該印加の解除により光に対する透過率が変化するエレクトロクロミック被膜と、各々が膜状に形成されると共に、前記基板の厚さ方向に沿って一方が前記エレクトロクロミック被膜の前記基板側に設けられて他方が前記エレクトロクロミック被膜の前記基板とは反対側に設けられ、何れか一方に電圧が印加されることで前記エレクトロクロミック被膜に電圧を印加する一対の電極膜と、を含めて構成される反射鏡を製造するための反射鏡製造方法であって、前記一方の電極膜を前記基板の前記他方の面の側に形成する第1電極膜形成工程と、前記一方の電極膜が形成された前記基板の前記一方の面にコーティング液を付着させて前記コーティング液を前記基板上で薄い膜状に広げる塗膜工程と、前記基板を加熱して前記基板上の前記コーティング液から前記親水性被膜を形成する焼成工程と、前記一方の電極膜及び前記親水性被膜が形成された前記基板とは反対側の前記一方の電極膜の面に前記エレクトロクロミック被膜を成膜するEC被膜成膜工程と、前記エレクトロクロミック被膜の前記基板とは反対側に前記他方の電極膜を形成する第2電極膜形成工程と、を含めて構成される成膜工程を有することを特徴としている。
【0019】
上記構成の反射鏡製造方法では、先ず、第1電極膜形成工程で、基板の厚さ方向他方の面の側に一方の電極膜が形成される。次いで、塗膜工程で基板の厚さ方向一方の面にコーティング液が付着させられると共に、このコーティング液が基板上で薄い膜状に広げられる。
【0020】
このように、一方の電極膜が形成されると共にコーティング液が付着した基板は、焼成工程で焼成炉等の加熱手段にセットされ、これにより、基板が加熱させられる。この加熱によってコーティング液が親水性被膜になる。
【0021】
次に、親水性被膜が形成された基板は、EC被膜成膜工程で基板の厚さ方向他方の面の側に形成された一方の電極膜の基板とは反対側にエレクトロクロミック被膜を成膜される。さらに、この状態から、第2電極膜形成工程でエレクトロクロミック被膜の基板とは反対側に他方の電極膜が形成される。
【0022】
以上のような成膜工程を有する製造工程により製造された反射鏡は、基板の厚さ方向一方の面に親水性被膜が形成されるため、例えば、その表面(厚さ方向一方の面)に雨滴等の水滴が付着した場合には、反射鏡の表面上で水滴が粒状に残留しないで薄い膜状に広がる。これにより、反射鏡の反射膜で反射した光が水滴等によって不用意に屈折させられることが防止若しくは軽減される。したがって、このような反射鏡を、車両の後方確認用のドアミラーやフェンダーミラー等に用いれば、雨天時等における後方の視認性を向上できる。
【0023】
一方で、以上の反射鏡は基板の厚さ方向他方の面にエレクトロクロミック被膜が形成されている。このエレクトロクロミック被膜は、一対の電極膜の何れか一方から電圧が印加され、又は電圧印加が解除されると光の透過率が変化する。このため、強い光が反射鏡へ入射した場合に、エレクトロクロミック被膜の光の透過率を下げることで、反射光の明るさが軽減される。したがって、このような反射鏡を、車両の後方確認用のドアミラーやフェンダーミラー等に用いれば、夜間等に後方の車両のヘッドライト等からの光を反射鏡が反射した際の反射光の明るさを軽減でき、防眩性を向上できる。
【0024】
このように、本製造方法で製造された反射鏡は、親水性と防眩性の異なる2つの性能を併せ持つ。
【0025】
ここで、本反射鏡製造方法では、エレクトロクロミック被膜を成膜するEC被膜成膜工程よりも前に親水性被膜を成膜している。したがって、親水性被膜を成膜する際の焼成工程での加熱温度よりもエレクトロクロミック被膜の耐熱温度が低い場合であっても、熱によりエレクトロクロミック被膜を壊したり、エレクトロクロミック被膜の性能を低下させてしまうことがない。
【0026】
また、本反射鏡製造方法では、親水性被膜の形成よりも前に第1電極膜形成工程で一方の電極膜を基板に形成している。このため、仮に、一方の電極膜をスパッタリング等で行なうことで、第1電極膜形成工程後に基板の外周縁とその近傍を切除することになっても、まだ、親水性被膜を形成する前であるため、切除の段階や切除後の面取りの段階で親水性被膜にクラックが生ずることがない。これにより、親水性被膜の品質を向上させることができる。
【0027】
なお、本発明において親水性被膜は表面に付着した水に対する親水性を有する被膜あればよい。したがって、親水性被膜が親水性のみならず他の機能を有していてもよい。このような他の機能の一例としては、光触媒性によって反射鏡の表面(厚さ方向一方の面)上に付着した有機物(例えば、油分)を分解する光触媒機能がある。このような光触媒機能は、コーティング液にチタン若しくはチタンの酸化物を含有させ、最終的に形成された親水性被膜中に二酸化チタンを含有させることで実現できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
<反射鏡10の構成の概略>
図1には本発明の一実施の形態に係る反射鏡製造方法で製造した反射鏡10の斜視図が示されており、図2には図1の2−2に線に沿った概略的な拡大断面図が示されている。
【0029】
図1及び図2に示されるように、反射鏡10は基板としてのガラス基板12を備えている。ガラス基板12の裏面(図1の矢印REとは反対方向側の面)には、特許請求の範囲で言う他方の電極膜及び反射膜としての導電性反射膜14が設けられている。
【0030】
導電性反射膜14は、例えば、アルミニウムやアルミニウムを主成分とする導電性合金により薄膜状に形成されている。導電性反射膜14のガラス基板12に形成された導電性反射膜14の少なくともガラス基板12側の面は充分な光沢を有し、且つ、光の反射率が高い。したがって、ガラス基板12の表面側から入射した光がガラス基板12内を透過してガラス基板12の裏面側へ達すると、導電性反射膜14によって反射されて、再びガラス基板12内を透過してガラス基板12の表面側へ向かう。
【0031】
この導電性反射膜14とガラス基板12との間には、特許請求の範囲で言う一方の電極膜としての透明電極16が設けられている。透明電極16は、ITO(インジウム−錫合金の酸化物)により薄膜状に形成されており、基本的に透明でガラス基板12側及び導電性反射膜14の何れか一方の側から入射した光を何れか他方の側へ透過できる。
【0032】
この透明電極16と導電性反射膜14との間には、第2被膜としてのエレクトロクロミック被膜18が設けられている。エレクトロクロミック被膜18は、タングステンの酸化物(一例として、WO3)により薄膜状に形成されており、その厚さ方向一方の面は透明電極16に接し、他方の面が導電性反射膜14に接している。
【0033】
エレクトロクロミック被膜18は、基本的に略透明であるが、透明電極16及び導電性反射膜14の何れか一方を介して所定の電圧が印加されることで、例えば、青系の色に着色される。また、この着色状態で透明電極16及び導電性反射膜14の何れか他方を介して所定の電圧が印加されると着色が解除されて再び略透明に戻る構成となっている。
【0034】
本反射鏡10を車両のドアミラーやフェンダーミラー等のアウタミラーに適用する場合には、上記の透明電極16と導電性反射膜14の双方は、例えば、通電ドライバ等の制御回路を介して車両室内に設けられたスイッチ等の操作手段並びに電源へ接続されており、操作手段を操作することで透明電極16及び導電性反射膜14の任意の側からエレクトロクロミック被膜18に対して電圧を印加できる構成となる。
【0035】
一方、ガラス基板12の表面(図1及び図2の矢印RE方向)には親水性被膜としての光触媒性親水膜20が形成されている。光触媒性親水膜20は、主に二酸化珪素(SiO2)により薄膜状に形成されている。このため、ガラス基板12の表面側から入射した光の透過率は上記のガラス基板12の透過率と略同等で、光を充分に透過できるようになっている。また、光触媒性親水膜20は、その表面(すなわち、ガラス基板12とは反対側の表面)における濡れ性が高く、水滴が付着した際の水滴との接触角は10°以下となる。
【0036】
また、図2に示されるように、光触媒性親水膜20の内部には粒状の光触媒粒子22が埋設されている。光触媒粒子22は主に二酸化チタン(TiO2)によって形成されており、光触媒性親水膜20の内部で略均一に分布している。
【0037】
光触媒粒子22は、主に二酸化チタン(TiO2)によって形成されていることで、所謂「光触媒性(光触媒機能)」を有しており、光が当たると光触媒機能で光触媒性親水膜20の表面上に付着した有機化合物を分解する。
【0038】
<反射鏡10の製造方法>
次に、本発明の一実施の形態に係る反射鏡製造方法(成膜方法)のうち、光触媒性親水膜20、透明電極16、エレクトロクロミック被膜18、及び導電性反射膜14の形成方法の説明を通して、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0039】
本反射鏡10の製造工程のうち、上記の各薄膜の成膜工程では、先ず、第1電極膜形成工程としての透明電極成膜工程でガラス基板12の裏面に透明電極18が形成される。
【0040】
この透明電極成膜工程では、図3に示されるように、ガラス基板12がスパッタリング装置30を構成する真空槽32内の基板ホルダ34にセットされる。真空槽32内には錫の酸化物にインジウムの酸化物が所定量含有されて焼結されたITOターゲット36がガラス基板12の裏面と対向するように配置されており、スパッタリング装置30を作動させることで、インジウム−錫合金の酸化物により構成される透明電極18がガラス基板12の裏面に形成される。
【0041】
ここで、このようなスパッタリングによる薄膜の形成では、僅かではあるがスパッタ粒子がガラス基板12の表面側に回り込むことがあり、これにより、ガラス基板12の表面側の外縁近傍にも透明電極18が形成される。
【0042】
次いで、切除工程では、図4に示されるように、ガラス基板12の外縁部を切除すると共に、特に図示はしないが切除後のガラス基板12の外縁部の面取りを行なう。これにより、ガラス基板12が成形される。
【0043】
切除工程で成形されたガラス基板12は、塗膜工程で表面にコーティングが施される。この塗膜工程では、先ず、図5に示されるように、ガラス基板12は、表面が略上方を向いた状態で図示しない回転装置にセットされ、ガラス基板12の厚さ方向(図4の矢印RE方向)を軸方向とする所定の軸周りにガラス基板12が所定の速度で回転させられる。
【0044】
次いで、図6に示されるように、ガラス基板12の表面の回転中心上に、後述する焼成工程を経ることで光触媒性親水膜20を形成するコーティング液38が垂らされる。
【0045】
ここで、コーティング液38は、回転しているガラス基板12の表面上に垂らされることで、図7に示されるように、ガラス基板12の表面に付着したコーティング液38は、遠心力でガラス基板12の外縁側へ広げられる。これにより、ガラス基板12の表面全体に膜状にコーティングが施される。
【0046】
また、上記のように、コーティング液38は、回転しているガラス基板12の表面上に垂らされて広げられることで、ガラス基板12の外縁部に達して垂れようとするコーティング液38は、ガラス基板12の裏面側に回り込むことなく、遠心力で外方へ飛ばされるか、そのまま落下する。このため、コーティング液38がガラス基板12の裏面側に付着することがない。
【0047】
このようにして、コーティング液38が表面上に薄く塗り広げられたガラス基板12は、例えば、放置乾燥された後に、焼成工程で加熱炉中にセットされて、所定の温度(例えば、大気中で摂氏300度)で加熱される。この加熱により、ガラス基板12の表面上に塗り広げられたコーティング液38が、上記の光触媒性親水膜20となる。
【0048】
次いで、EC膜成膜工程では、図8に示されるように、真空蒸着装置42を構成する真空槽44の内部にガラス基板12がセットされる。真空槽44内には、タングステンの酸化物(例えば、WO3)により形成された蒸着源46がガラス基板12の裏面と対向した状態で配置されている。
【0049】
真空蒸着装置42を作動させて真空槽44内の内圧を下げつつ、電子ビームによって蒸着源46を加熱すると抵抗熱で蒸着源46が蒸発し、ガラス基板12の裏面、詳細には、透明電極16のガラス基板12とは反対側の面にタングステンの酸化物が薄膜状に蒸着される。これにより、上記のエレクトロクロミック被膜18が形成される。
【0050】
次いで、導電反射膜成膜工程では、EC膜成膜工程と同様に真空蒸着(但し、蒸着源はタングステンの酸化物ではなく、アルミニウム等)によってエレクトロクロミック被膜18のガラス基板12とは反対側の面に導電性反射膜14が形成される。
【0051】
このようにして、本実施の形態では、ガラス基板12の両面にそれぞれ異なる被膜が形成される。
【0052】
ここで、本実施の形態では、コーティング液38がガラス基板12の外縁からガラス基板12の裏面に回り込むことがないため、光触媒性親水膜20の形成後にガラス基板12の外縁を切除したり、また、予めガラス基板12の裏面に保護フィルム等を貼着させなくても、光触媒性親水膜20にクラック等を生じさせることがない。
【0053】
しかも、EC被膜成膜工程よりも前に光触媒性親水膜20を成膜しているため、光触媒性親水膜20を成膜する際の焼成工程での加熱温度よりもエレクトロクロミック被膜18の耐熱温度が低い場合であっても、熱によりエレクトロクロミック被膜18を壊したり、エレクトロクロミック被膜18の性能を低下させてしまうことがない。
【0054】
このように、本製造方法では、親水性と防眩性の異なる2つの性能を併せ持ち、しかも、高品質の反射鏡を安価なコストで確実に製造できる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、安価なコストでエレクトロクロミック被膜を熱で壊したり性能を低下させることなく、且つ、親水性被膜にクラック等を生じさせることなく、高い品質の反射鏡を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る反射鏡の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る反射鏡の構造の概略を示す拡大断面図である。
【図3】透明電極形成工程を示すスパッタリング装置の模式図である。
【図4】切除工程で基板の外縁近傍を切除した状態を示す斜視図である。
【図5】塗膜工程で基板を回転させている状態を示す斜視図である。
【図6】塗膜工程で回転中の基板にコーティング液を垂らしている状態を示す斜視図である。
【図7】塗膜工程で基板上のコーティング液が薄膜状に広がる状態を示す斜視図である。
【図8】EC膜成膜工程を示す蒸着装置の模式図である。
【符号の説明】
10 反射鏡
12 ガラス基板(基板)
14 導電性反射膜(反射膜、電極膜)
16 透明電極(電極膜)
18 エレクトロクロミック被膜
20 光触媒性親水膜(親水性被膜)
38 コーティング液
【発明の属する技術分野】
本発明は、親水性と防眩性の2つの性能を有する反射鏡を製造するための反射鏡製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両には、左右両後方側を確認するための所謂ドアミラー(アウタービューミラーと称する場合もある)と称される反射鏡が設けられている。また、近年、このような反射鏡では、二酸化珪素の層と二酸化チタンの層からなる光触媒性親水膜をガラス基板の表面に形成した反射鏡が用いられている。
【0003】
すなわち、この種の反射鏡は、車両の室外に設けられているため雨天時には雨に晒される。このとき、反射鏡の表面に雨滴等の水滴が付着すると反射像が歪むため、反射鏡の表面に二酸化珪素(SiO2)等により構成される親水層を形成して、反射鏡の表面の親水性を向上させ、表面に付着した水を薄膜化させることで水滴付着による反射像の歪みを抑制したり、また、早期に蒸発させている。
【0004】
また、この種の反射鏡は通常時であっても他の車両の排気ガスの成分(主に有機物)等が反射鏡の表面に付着して汚れることがある。反射鏡の表面が汚れていると、上記の親水層による親水性が低下する。そこで、二酸化珪素によって形成される親水層とガラス面との間に二酸化チタン(TiO2)等により構成される光触媒層を設け、親水層に付着した有機物を反射鏡の表面近傍で二酸化チタン(TiO2)等の光触媒機能により分解して浄化し、親水層の表面の親水性を維持することが考えられている。
【0005】
以上のような光触媒性親水膜は、スパッタリングや蒸着によってガラス基板上に形成することが考えられていた。しかしながら、スパッタリングや蒸着は成膜速度が遅いことから生産性が悪く、このような方法に代わり、所謂「スピンコーティング」を採用することが考えられている。
【0006】
スピンコーティングによる成膜は、先ず、珪素及びチタン若しくはこれらの酸化物を添加したコーティング液をガラス基板の表面上に垂らす。ガラス基板上に垂らされたコーティング液がガラス基板上で広がった後に、ガラス基板を回転させ、その遠心力でガラス基板上のコーティング液を薄い膜状にし、その後、コーティング液を乾燥させた後に、加熱炉中にガラス基板をセットし、焼成することで上記の光触媒性親水膜が成膜される。
【0007】
このスピンコーティングによる成膜は、スパッタリングや蒸着に比べて成膜速度が極めて早く、生産性を向上でき、コストも安価にできるというメリットがある。
【0008】
一方で、夜間等においては車両はヘッドライトを点灯させて走行し、後方の車両のヘッドライトから発せられた光が反射膜で反射されることにより、後方に走行する車両が存在することを確認できる。
【0009】
しかしながら、夜間等においては、周囲に明るさに対してヘッドライトの光は充分に明るく、反射鏡での反射光が眩しい。このため、近年の車両のドアミラー等には、薄膜状の一対の電極膜に挟みこまれたエレクトロクロミック被膜を裏面側に設けた反射鏡が用いられることがある。
【0010】
エレクトロクロミック被膜は、タングステンの酸化物等により構成されており、一対の電極膜の一方から電圧が印加されることで、例えば、青色に着色され、電圧印加が解除若しくは一対の電極膜の他方から電圧が印加されることで着色が解除され、これにより、全体若しくは赤系の光の透過率を減少させる構成となっている。このエレクトロクロミック被膜に対して電圧の印加及び印加解除を制御する印加手段を、運転席近傍に設けたスイッチや車両後方側からの所定の明るさ以上の光を検出するセンサと連動させ、適宜に光の透過率を変化させることで、防眩性を向上させることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したように、光触媒性親水膜はガラス基板の表面に設けられ、エレクトロクロミック被膜はガラス基板の裏面に設けられることから、光触媒性親水膜とエレクトロクロミック被膜の双方をそれぞれガラス基板に設けることで、親水性、光触媒性、及び防眩性を全て併せ持った反射鏡を得ることができる。
【0012】
このように、2種類の被膜をガラス基板に形成する方法としては、大別して、親水性被膜を形成した後に一対の電極膜及びエレクトロクロミック被膜を形成する方法と、これとは反対に一対の電極膜及びエレクトロクロミック被膜を形成した後に親水性被膜を形成する方法と、がある。
【0013】
先に一対の電極膜及びエレクトロクロミック被膜を形成する方法では、光触媒性親水膜の成膜過程における加熱炉中での加熱温度が一般的にエレクトロクロミック被膜の耐熱温度よりも高いことから、加熱によってエレクトロクロミック被膜が壊されたり、壊されないまでもその性能が低下することがある。このため、先にエレクトロクロミック被膜を形成する方法では、良好な防眩性を有する反射鏡を製造することが困難で実現性が乏しい。
【0014】
これに対し、先に光触媒性親水膜を形成した後に一対の電極膜とエレクトロクロミック被膜を形成する方法では、ガラス基板の裏面に形成した一方の電極膜がその形成過程でガラス基板の外周縁近傍でガラス基板の表面側に回り込み、光触媒性親水膜に重なることがある。
【0015】
このため、一方の電極膜を成膜した後に、ガラス基板の外周縁とその近傍部分を切除して、電極膜と光触媒性親水膜とが重なった部分を取り除くことになる。
【0016】
ここで、上記の切除と、切除後の所謂面取りの段階で、光触媒性親水膜の外周端から微小なクラックが形成される可能性が高く、光触媒性親水膜の品質が低下したり、コスト高になることが考えられる。
【0017】
本発明は、上記事実を考慮して、安価なコストで基板の両面に親水性被膜とエレクトロクロミック被膜を確実に形成できる反射鏡製造方法を得ることが目的である。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、光に対する所定の透過率を有する基板と、光に対する所定の反射率を有し、前記基板の厚さ方向一方又は他方の面の側に形成された反射膜と、前記基板の厚さ方向一方の面で前記基板上に略膜状に形成されると共に付着した水に対する親水性を有する親水性被膜と、前記基板の厚さ方向他方の面で前記基板上に略膜状に形成されると共に電圧の印加及び当該印加の解除により光に対する透過率が変化するエレクトロクロミック被膜と、各々が膜状に形成されると共に、前記基板の厚さ方向に沿って一方が前記エレクトロクロミック被膜の前記基板側に設けられて他方が前記エレクトロクロミック被膜の前記基板とは反対側に設けられ、何れか一方に電圧が印加されることで前記エレクトロクロミック被膜に電圧を印加する一対の電極膜と、を含めて構成される反射鏡を製造するための反射鏡製造方法であって、前記一方の電極膜を前記基板の前記他方の面の側に形成する第1電極膜形成工程と、前記一方の電極膜が形成された前記基板の前記一方の面にコーティング液を付着させて前記コーティング液を前記基板上で薄い膜状に広げる塗膜工程と、前記基板を加熱して前記基板上の前記コーティング液から前記親水性被膜を形成する焼成工程と、前記一方の電極膜及び前記親水性被膜が形成された前記基板とは反対側の前記一方の電極膜の面に前記エレクトロクロミック被膜を成膜するEC被膜成膜工程と、前記エレクトロクロミック被膜の前記基板とは反対側に前記他方の電極膜を形成する第2電極膜形成工程と、を含めて構成される成膜工程を有することを特徴としている。
【0019】
上記構成の反射鏡製造方法では、先ず、第1電極膜形成工程で、基板の厚さ方向他方の面の側に一方の電極膜が形成される。次いで、塗膜工程で基板の厚さ方向一方の面にコーティング液が付着させられると共に、このコーティング液が基板上で薄い膜状に広げられる。
【0020】
このように、一方の電極膜が形成されると共にコーティング液が付着した基板は、焼成工程で焼成炉等の加熱手段にセットされ、これにより、基板が加熱させられる。この加熱によってコーティング液が親水性被膜になる。
【0021】
次に、親水性被膜が形成された基板は、EC被膜成膜工程で基板の厚さ方向他方の面の側に形成された一方の電極膜の基板とは反対側にエレクトロクロミック被膜を成膜される。さらに、この状態から、第2電極膜形成工程でエレクトロクロミック被膜の基板とは反対側に他方の電極膜が形成される。
【0022】
以上のような成膜工程を有する製造工程により製造された反射鏡は、基板の厚さ方向一方の面に親水性被膜が形成されるため、例えば、その表面(厚さ方向一方の面)に雨滴等の水滴が付着した場合には、反射鏡の表面上で水滴が粒状に残留しないで薄い膜状に広がる。これにより、反射鏡の反射膜で反射した光が水滴等によって不用意に屈折させられることが防止若しくは軽減される。したがって、このような反射鏡を、車両の後方確認用のドアミラーやフェンダーミラー等に用いれば、雨天時等における後方の視認性を向上できる。
【0023】
一方で、以上の反射鏡は基板の厚さ方向他方の面にエレクトロクロミック被膜が形成されている。このエレクトロクロミック被膜は、一対の電極膜の何れか一方から電圧が印加され、又は電圧印加が解除されると光の透過率が変化する。このため、強い光が反射鏡へ入射した場合に、エレクトロクロミック被膜の光の透過率を下げることで、反射光の明るさが軽減される。したがって、このような反射鏡を、車両の後方確認用のドアミラーやフェンダーミラー等に用いれば、夜間等に後方の車両のヘッドライト等からの光を反射鏡が反射した際の反射光の明るさを軽減でき、防眩性を向上できる。
【0024】
このように、本製造方法で製造された反射鏡は、親水性と防眩性の異なる2つの性能を併せ持つ。
【0025】
ここで、本反射鏡製造方法では、エレクトロクロミック被膜を成膜するEC被膜成膜工程よりも前に親水性被膜を成膜している。したがって、親水性被膜を成膜する際の焼成工程での加熱温度よりもエレクトロクロミック被膜の耐熱温度が低い場合であっても、熱によりエレクトロクロミック被膜を壊したり、エレクトロクロミック被膜の性能を低下させてしまうことがない。
【0026】
また、本反射鏡製造方法では、親水性被膜の形成よりも前に第1電極膜形成工程で一方の電極膜を基板に形成している。このため、仮に、一方の電極膜をスパッタリング等で行なうことで、第1電極膜形成工程後に基板の外周縁とその近傍を切除することになっても、まだ、親水性被膜を形成する前であるため、切除の段階や切除後の面取りの段階で親水性被膜にクラックが生ずることがない。これにより、親水性被膜の品質を向上させることができる。
【0027】
なお、本発明において親水性被膜は表面に付着した水に対する親水性を有する被膜あればよい。したがって、親水性被膜が親水性のみならず他の機能を有していてもよい。このような他の機能の一例としては、光触媒性によって反射鏡の表面(厚さ方向一方の面)上に付着した有機物(例えば、油分)を分解する光触媒機能がある。このような光触媒機能は、コーティング液にチタン若しくはチタンの酸化物を含有させ、最終的に形成された親水性被膜中に二酸化チタンを含有させることで実現できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
<反射鏡10の構成の概略>
図1には本発明の一実施の形態に係る反射鏡製造方法で製造した反射鏡10の斜視図が示されており、図2には図1の2−2に線に沿った概略的な拡大断面図が示されている。
【0029】
図1及び図2に示されるように、反射鏡10は基板としてのガラス基板12を備えている。ガラス基板12の裏面(図1の矢印REとは反対方向側の面)には、特許請求の範囲で言う他方の電極膜及び反射膜としての導電性反射膜14が設けられている。
【0030】
導電性反射膜14は、例えば、アルミニウムやアルミニウムを主成分とする導電性合金により薄膜状に形成されている。導電性反射膜14のガラス基板12に形成された導電性反射膜14の少なくともガラス基板12側の面は充分な光沢を有し、且つ、光の反射率が高い。したがって、ガラス基板12の表面側から入射した光がガラス基板12内を透過してガラス基板12の裏面側へ達すると、導電性反射膜14によって反射されて、再びガラス基板12内を透過してガラス基板12の表面側へ向かう。
【0031】
この導電性反射膜14とガラス基板12との間には、特許請求の範囲で言う一方の電極膜としての透明電極16が設けられている。透明電極16は、ITO(インジウム−錫合金の酸化物)により薄膜状に形成されており、基本的に透明でガラス基板12側及び導電性反射膜14の何れか一方の側から入射した光を何れか他方の側へ透過できる。
【0032】
この透明電極16と導電性反射膜14との間には、第2被膜としてのエレクトロクロミック被膜18が設けられている。エレクトロクロミック被膜18は、タングステンの酸化物(一例として、WO3)により薄膜状に形成されており、その厚さ方向一方の面は透明電極16に接し、他方の面が導電性反射膜14に接している。
【0033】
エレクトロクロミック被膜18は、基本的に略透明であるが、透明電極16及び導電性反射膜14の何れか一方を介して所定の電圧が印加されることで、例えば、青系の色に着色される。また、この着色状態で透明電極16及び導電性反射膜14の何れか他方を介して所定の電圧が印加されると着色が解除されて再び略透明に戻る構成となっている。
【0034】
本反射鏡10を車両のドアミラーやフェンダーミラー等のアウタミラーに適用する場合には、上記の透明電極16と導電性反射膜14の双方は、例えば、通電ドライバ等の制御回路を介して車両室内に設けられたスイッチ等の操作手段並びに電源へ接続されており、操作手段を操作することで透明電極16及び導電性反射膜14の任意の側からエレクトロクロミック被膜18に対して電圧を印加できる構成となる。
【0035】
一方、ガラス基板12の表面(図1及び図2の矢印RE方向)には親水性被膜としての光触媒性親水膜20が形成されている。光触媒性親水膜20は、主に二酸化珪素(SiO2)により薄膜状に形成されている。このため、ガラス基板12の表面側から入射した光の透過率は上記のガラス基板12の透過率と略同等で、光を充分に透過できるようになっている。また、光触媒性親水膜20は、その表面(すなわち、ガラス基板12とは反対側の表面)における濡れ性が高く、水滴が付着した際の水滴との接触角は10°以下となる。
【0036】
また、図2に示されるように、光触媒性親水膜20の内部には粒状の光触媒粒子22が埋設されている。光触媒粒子22は主に二酸化チタン(TiO2)によって形成されており、光触媒性親水膜20の内部で略均一に分布している。
【0037】
光触媒粒子22は、主に二酸化チタン(TiO2)によって形成されていることで、所謂「光触媒性(光触媒機能)」を有しており、光が当たると光触媒機能で光触媒性親水膜20の表面上に付着した有機化合物を分解する。
【0038】
<反射鏡10の製造方法>
次に、本発明の一実施の形態に係る反射鏡製造方法(成膜方法)のうち、光触媒性親水膜20、透明電極16、エレクトロクロミック被膜18、及び導電性反射膜14の形成方法の説明を通して、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0039】
本反射鏡10の製造工程のうち、上記の各薄膜の成膜工程では、先ず、第1電極膜形成工程としての透明電極成膜工程でガラス基板12の裏面に透明電極18が形成される。
【0040】
この透明電極成膜工程では、図3に示されるように、ガラス基板12がスパッタリング装置30を構成する真空槽32内の基板ホルダ34にセットされる。真空槽32内には錫の酸化物にインジウムの酸化物が所定量含有されて焼結されたITOターゲット36がガラス基板12の裏面と対向するように配置されており、スパッタリング装置30を作動させることで、インジウム−錫合金の酸化物により構成される透明電極18がガラス基板12の裏面に形成される。
【0041】
ここで、このようなスパッタリングによる薄膜の形成では、僅かではあるがスパッタ粒子がガラス基板12の表面側に回り込むことがあり、これにより、ガラス基板12の表面側の外縁近傍にも透明電極18が形成される。
【0042】
次いで、切除工程では、図4に示されるように、ガラス基板12の外縁部を切除すると共に、特に図示はしないが切除後のガラス基板12の外縁部の面取りを行なう。これにより、ガラス基板12が成形される。
【0043】
切除工程で成形されたガラス基板12は、塗膜工程で表面にコーティングが施される。この塗膜工程では、先ず、図5に示されるように、ガラス基板12は、表面が略上方を向いた状態で図示しない回転装置にセットされ、ガラス基板12の厚さ方向(図4の矢印RE方向)を軸方向とする所定の軸周りにガラス基板12が所定の速度で回転させられる。
【0044】
次いで、図6に示されるように、ガラス基板12の表面の回転中心上に、後述する焼成工程を経ることで光触媒性親水膜20を形成するコーティング液38が垂らされる。
【0045】
ここで、コーティング液38は、回転しているガラス基板12の表面上に垂らされることで、図7に示されるように、ガラス基板12の表面に付着したコーティング液38は、遠心力でガラス基板12の外縁側へ広げられる。これにより、ガラス基板12の表面全体に膜状にコーティングが施される。
【0046】
また、上記のように、コーティング液38は、回転しているガラス基板12の表面上に垂らされて広げられることで、ガラス基板12の外縁部に達して垂れようとするコーティング液38は、ガラス基板12の裏面側に回り込むことなく、遠心力で外方へ飛ばされるか、そのまま落下する。このため、コーティング液38がガラス基板12の裏面側に付着することがない。
【0047】
このようにして、コーティング液38が表面上に薄く塗り広げられたガラス基板12は、例えば、放置乾燥された後に、焼成工程で加熱炉中にセットされて、所定の温度(例えば、大気中で摂氏300度)で加熱される。この加熱により、ガラス基板12の表面上に塗り広げられたコーティング液38が、上記の光触媒性親水膜20となる。
【0048】
次いで、EC膜成膜工程では、図8に示されるように、真空蒸着装置42を構成する真空槽44の内部にガラス基板12がセットされる。真空槽44内には、タングステンの酸化物(例えば、WO3)により形成された蒸着源46がガラス基板12の裏面と対向した状態で配置されている。
【0049】
真空蒸着装置42を作動させて真空槽44内の内圧を下げつつ、電子ビームによって蒸着源46を加熱すると抵抗熱で蒸着源46が蒸発し、ガラス基板12の裏面、詳細には、透明電極16のガラス基板12とは反対側の面にタングステンの酸化物が薄膜状に蒸着される。これにより、上記のエレクトロクロミック被膜18が形成される。
【0050】
次いで、導電反射膜成膜工程では、EC膜成膜工程と同様に真空蒸着(但し、蒸着源はタングステンの酸化物ではなく、アルミニウム等)によってエレクトロクロミック被膜18のガラス基板12とは反対側の面に導電性反射膜14が形成される。
【0051】
このようにして、本実施の形態では、ガラス基板12の両面にそれぞれ異なる被膜が形成される。
【0052】
ここで、本実施の形態では、コーティング液38がガラス基板12の外縁からガラス基板12の裏面に回り込むことがないため、光触媒性親水膜20の形成後にガラス基板12の外縁を切除したり、また、予めガラス基板12の裏面に保護フィルム等を貼着させなくても、光触媒性親水膜20にクラック等を生じさせることがない。
【0053】
しかも、EC被膜成膜工程よりも前に光触媒性親水膜20を成膜しているため、光触媒性親水膜20を成膜する際の焼成工程での加熱温度よりもエレクトロクロミック被膜18の耐熱温度が低い場合であっても、熱によりエレクトロクロミック被膜18を壊したり、エレクトロクロミック被膜18の性能を低下させてしまうことがない。
【0054】
このように、本製造方法では、親水性と防眩性の異なる2つの性能を併せ持ち、しかも、高品質の反射鏡を安価なコストで確実に製造できる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、安価なコストでエレクトロクロミック被膜を熱で壊したり性能を低下させることなく、且つ、親水性被膜にクラック等を生じさせることなく、高い品質の反射鏡を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る反射鏡の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る反射鏡の構造の概略を示す拡大断面図である。
【図3】透明電極形成工程を示すスパッタリング装置の模式図である。
【図4】切除工程で基板の外縁近傍を切除した状態を示す斜視図である。
【図5】塗膜工程で基板を回転させている状態を示す斜視図である。
【図6】塗膜工程で回転中の基板にコーティング液を垂らしている状態を示す斜視図である。
【図7】塗膜工程で基板上のコーティング液が薄膜状に広がる状態を示す斜視図である。
【図8】EC膜成膜工程を示す蒸着装置の模式図である。
【符号の説明】
10 反射鏡
12 ガラス基板(基板)
14 導電性反射膜(反射膜、電極膜)
16 透明電極(電極膜)
18 エレクトロクロミック被膜
20 光触媒性親水膜(親水性被膜)
38 コーティング液
Claims (1)
- 光に対する所定の透過率を有する基板と、
光に対する所定の反射率を有し、前記基板の厚さ方向一方又は他方の面の側に形成された反射膜と、
前記基板の厚さ方向一方の面で前記基板上に略膜状に形成されると共に付着した水に対する親水性を有する親水性被膜と、
前記基板の厚さ方向他方の面で前記基板上に略膜状に形成されると共に電圧の印加及び当該印加の解除により光に対する透過率が変化するエレクトロクロミック被膜と、
各々が膜状に形成されると共に、前記基板の厚さ方向に沿って一方が前記エレクトロクロミック被膜の前記基板側に設けられて他方が前記エレクトロクロミック被膜の前記基板とは反対側に設けられ、何れか一方に電圧が印加されることで前記エレクトロクロミック被膜に電圧を印加する一対の電極膜と、
を含めて構成される反射鏡を製造するための反射鏡製造方法であって、
前記一方の電極膜を前記基板の前記他方の面の側に形成する第1電極膜形成工程と、
前記一方の電極膜が形成された前記基板の前記一方の面にコーティング液を付着させて前記コーティング液を前記基板上で薄い膜状に広げる塗膜工程と、
前記基板を加熱して前記基板上の前記コーティング液から前記親水性被膜を形成する焼成工程と、
前記一方の電極膜及び前記親水性被膜が形成された前記基板とは反対側の前記一方の電極膜の面に前記エレクトロクロミック被膜を成膜するEC被膜成膜工程と、
前記エレクトロクロミック被膜の前記基板とは反対側に前記他方の電極膜を形成する第2電極膜形成工程と、
を含めて構成される成膜工程を有することを特徴とする反射鏡製造方法。
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