JP3888961B2 - Pet再生樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PET再生樹脂組成物及びその成形品に関する。更に詳しくは、本発明は、組成物を成形した際に、実用上考えうる温度での耐熱性及び耐衝撃性を有し、更に外観(ヒケ、表面光沢度等)が改良されたPET再生樹脂組成物及びその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は、軽くて強度が大きく、耐水性、耐薬品性、電気絶縁性が優れ、その上、成形加工が容易であるために、多量に生産されている。特に、通常PETと簡略して呼ばれているポリエチレンテレフタレートは、軽くて、強く丈夫であり、更に透明性に優れるため飲料ボトルとして大量に製造されている。最近では容器包装リサイクル法が施行され、プラスチックに関してはリサイクル社会へ移行する施策が進められている。更に、今後も世界的な潮流からPETボトルのリサイクルが望まれている。
【0003】
このPETボトル等より再生されたPET再生樹脂は、成形加工性に劣るという問題がある。具体的には、PET再生樹脂のみでは、成形品が不透明の結晶層と透明の非晶質層の2層になるという課題があった。更に、この成形品は、耐熱性、耐衝撃性等の性質も劣っているという課題があった。
また、PET再生樹脂は、回収された飲料ボトル、繊維、フィルム等を粉砕するため、通常は不定形かもしくはフレーク状であり、かさ高く輸送効率が悪い。従って、輸送効率を考慮すればPET再生樹脂はペレット状が望まれているが、成形加工性に劣ることから均一なペレットを製造することは困難であった。
このためPET再生樹脂の使用用途が制限され、PET再生樹脂の活用が進んでいない。
上記課題の内、ペレット化については、例えば、特開2000−319493号公報(特許文献1)では、この課題を解決しうる技術が報告されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−319493号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
PET再生樹脂の課題の内、耐熱性が劣るため成形品の冷却時にヒケが生じることがあった。このヒケは、成形品の外観に悪影響を与えると共に、寸法精度を悪化させることとなる。
一方、耐衝撃性を改善するために、本出願の発明者は、ガラス繊維のような強化充填材を混合する方法を見い出している。しかし、強化充填材を添加すると、成形品の製造装置に損傷を与えるという問題があり、その使用をできるだけ抑えることが望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、強化充填材を使用しなくても、少なくとも従来と同程度に耐熱性と耐衝撃性を有し、かつヒケのない成形品を提供できるPET再生樹脂組成物を見い出し、更に、意外にもその組成物が実質的に均一な表面光沢度の成形品を提供できることを見い出し、本発明に至った。
かくして本発明によれば、PET再生樹脂、PET再生樹脂以外のポリエステル樹脂、結晶核剤及び熱可塑性エラストマーとしてのエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体からなり、PET再生樹脂とそれ以外の成分の割合(重量部)が98〜2:2〜98であり、ポリエステル樹脂とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の割合(重量部)が90〜10:10〜90であり、結晶核剤の割合(重量部)がポリエステル樹脂とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の合計量を100重量部として0.1〜10重量部であり、表面光沢度が改良された成形品を与えうることを特徴とするPET再生樹脂組成物が提供される。
更に本発明によれば、上記PET再生樹脂組成物を成形してなるPET再生樹脂成形品が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
(1)構成成分
以下で使用される用語PETは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の略称であり、通常、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(例えばジメチルエステル、モノメチルエステル等の低級アルキルエステル)とエチレングリコール又はそのエステル形成性誘導体とを原料にして、触媒の存在下、加熱反応せしめ、次いで得られるテレフタル酸のグリコールエステルを触媒の存在下、所定の重合度まで重合反応させて得られる樹脂である。
【0008】
・PET再生樹脂
本発明におけるPET再生樹脂は、上記PETを成形して得られる飲料ボトル、すなわちPETボトルが、再度利用するために回収され、処理されたものが好ましい。この処理品は、通常、PET再生材やリサイクルPETと称されるものである。PETボトルは、近年大量に回収され、最も再生が望まれるものである。このPET再生樹脂は、繊維、フィルム又はコンテナー等の大型成形品等の製品として成形されたもの、実際に製品として使用されなくても、製品を製造する上で発生するフィルムの端材、射出成形品のゲート及びランナー部材等のPET樹脂を回収及び処理したものでも構わない。PET再生樹脂の形状は、特に限定されないが、成形時の溶融性を高めるためにできるだけ細かいことが好ましい。
【0009】
・ポリエステル樹脂
本発明に用いられるポリエステル樹脂としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸又はテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環式ジオール及びテトラメチレングリコール等のエーテル系ジオール等との縮合反応により得られるポリエステル樹脂及び、ポリエステル樹脂とラクトン類とを共重合したラクトン変性ポリエステル樹脂、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートの共重合樹脂等が用いられる。
これらの脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用してもよい。また、ジオール類においても2種以上を混合して使用することができる。なかでも好ましいポリエステル樹脂は芳香族ポリエステル樹脂であり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートである。
【0010】
本発明に用いられるポリエステル樹脂の分子量は、数平均分子量で1,000〜500,000、好ましくは5,000〜200,000、さらに好ましくは10,000〜100,000である。数平均分子量が1,000未満ではPET再生樹脂の成形加工性を改良する効果が不十分であり、また500,000より大きいとPET再生樹脂への溶融混練が困難となるので好ましくない。ここで示す数平均分子量とは液体クロマトグラフを用いて測定した数平均分子量である。
【0011】
脂肪族及び芳香族ポリエステル樹脂は公知の方法で製造することができる。例えばジカルボン酸の低級アルコールエステルと過剰量のグリコールを触媒の存在下でエステル交換反応せしめ得られる反応生成物を重縮合する方法が挙げられる。あるいはジカルボン酸と過剰量のグリコールを触媒の存在下でエステル化反応せしめ得られる反応生成物を重縮合する方法が挙げられる。反応温度は好ましくは180〜290℃で、より好ましくは200〜280℃である。重縮合触媒としてはチタン化合物、アンチモン化合物、スズ化合物、カルシウム化合物、マンガン化合物等を挙げることができる。これらの触媒の使用量は、出発原料に対して、好ましくは0.1〜1,000ppm、より好ましくは0.5〜500ppmである。
【0012】
・結晶核剤
本発明に用いられる結晶核剤は、PETに対する核剤作用を有するものを意味する。例えば、タルクのような無機微粒子、有機カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、及びカルボキシル基を有する有機重合体のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの結晶核剤は、単独又は2種以上併用してもよい。より具体的には、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、p−ブチル安息香酸ナトリウム、p−ブチル安息香酸カリウム、p−ブチル安息香酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸カルシウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸カルシウム、エチレン−メタクリル酸の共重合体のナトリウム塩、エチレン−メタクリル酸の共重合体のカリウム塩、エチレン−メタクリル酸の共重合体のカルシウム塩、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸リチウム等の有機カルボン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0013】
更に、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸塩とからなるイオン性共重合体の一価又は二価の金属塩、中性粘土類のタルク、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム等のアルカリ土類金属の酸化物、硫酸塩又はケイ酸塩等が挙げられる。
更にまた、有機カルボン酸と一分子中に一個又は二個の水酸基をもつアルコール、あるいはアルコール誘導体との反応により得られるエステル化合物も使用できる。具体的には、長鎖の脂肪族カルボン酸と長鎖の脂肪族アルコールの反応物、例えばステアリン酸ノニル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル等の高沸点のエステル、炭素数7以上の芳香族又は脂肪族カルボン酸とポリアルキレングリコールとの反応物、例えばポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロック共重合体のジベンゾエート等が挙げられ、更に、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルモノグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルモノグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルモノグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアリルモノグリシジルエーテル等が挙げられる。
これら以外にも、長鎖のアルキル基をもつアルコールのグリシジルエーテル又はポリオキシアルキレン鎖を含むモノグリシジルエーテル等のエポキシ化合物が挙げられる。これらの内、有機カルボン酸のアルカリ金属塩、カルボキシル基を有する有機重合体のアルカリ金属塩が好ましい。
【0014】
・熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーとしては、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が使用される。
【0015】
(2)各成分の配合量
本発明のPET再生樹脂組成物を構成する各成分の割合は、
(a)PET再生樹脂とそれ以外の成分の割合(重量部)が98〜2:2〜98(b)ポリエステル樹脂と熱可塑性エラストマーの割合(重量部)が90〜10:10〜90
(c)結晶核剤の割合(重量部)がポリエステル樹脂と熱可塑性エラストマーの合計量を100重量部として0.1〜10重量部である。
【0016】
(a)において、PET再生樹脂が98重量部より多いと、PET再生樹脂成形品の耐熱性等の改良効果が少なく、2重量部未満になると再生品を使用する効果がなくなるため好ましくない。PET再生樹脂を95〜10重量部配合することは、耐熱性を改良する点で特に効果的である。特に好ましくは、PET再生樹脂95〜20重量部に対して、それ以外の成分を5〜80重量部配合することである。
【0017】
(b)において、熱可塑性エラストマーが10重量部未満では、PET再生樹脂成形品の衝撃改良の効果が低いので好ましくなく、90重量部より多いと、PET再生樹脂と熱可塑性エラストマーの相溶性が悪くなり、剥離が生じやすいので好ましくない。より好ましい配合割合は、ポリエステル樹脂80〜20重量部に対して、熱可塑性エラストマーを20〜80重量部である。
【0018】
(c)において、結晶核剤が0.1重量部未満では、結晶化が促進されないので好ましくなく、10重量部より多くなると得られる成形品の物性低下が生じるので好ましくない。より好ましい配合割合は、ポリエステル樹脂と熱可塑性エラストマーの合計量100重量部に対して、0.3〜3重量部であり、特に好ましい配合割合は、0.5〜2重量部である。なお、原料のPET再生樹脂に結晶核剤が含まれている場合は、その量を考慮して新たに添加される結晶核剤の量を調整することが好ましい。
【0019】
本発明のPET再生樹脂組成物は、成形品に所望される品質を損ねない程度に他の熱可塑性樹脂、樹脂添加剤、無機化合物等の他の成分を更に含んでいてもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリペンテン−1及びこれらの共重合体等を含むポリオレフィン樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイドやポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック等の樹脂等を挙げることができる。
【0020】
また、樹脂添加剤としては、安定剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、静電気防止剤、増量剤等が挙げられる。
さらに、無機化合物としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、黒鉛等を挙げることができる。
これら他の熱可塑性樹脂、樹脂添加剤及び無機化合物は、そのうちから選ばれる1種又は2以上を混合することができる。これら他の成分は、上記PET再生樹脂、ポリエステル樹脂、結晶核剤及び熱可塑性エラストマーの合計量100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、1〜30重量部配合することがより好ましい。なお、樹脂添加剤及び無機化合物は、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマーや他の熱可塑性樹脂に添加しておくこともできる。
【0021】
(3)PET再生樹脂組成物の製造方法及び成形方法
本発明の組成物は、通常、公知の方法で製造される。例えば、PET再生樹脂、ポリエステル樹脂、結晶核剤、熱可塑性エラストマー、及び必要に応じて他の熱可塑性樹脂、樹脂添加剤及び無機化合物を、エクストルーダー、ニーダー、ロールあるいはバンバリーミキサー中で溶融混練する方法、あるいは、前記各成分を均一に機械的に混合したあと、直接成形機で溶融混練と同時に成形する方法等が挙げられる。
上記のようにして得られたPET再生樹脂組成物は、成形品とされるが、これらの成形品は、耐熱性、耐衝撃性及び外観、更には電気絶縁性にも優れている。なお、成形法は、射出成形、押出成形、吹込成形、圧縮成形、熱成形等を使用することができる。
【0022】
(4)PET再生樹脂組成物の用途
本発明のPET再生樹脂組成物は、従来の熱可塑性樹脂で製造される各種成形品の成形にいずれも使用することができる。例えば、家電関係製品、具体的には、冷蔵庫カバー、洗濯機コンデンサーカバー、TVバックカバー、TVスピーカーボックス、TV偏向ヨーク、コンセント及びソケット、クリスマスライトソケット、CRTモニターボディー、エアコン吹き出し口羽根、風向板及び本体カバー、加湿器カバー、電子レンジドア、ウォッシュレット(商品名)便座及び温水タンク、扇風機モーターカバー及びコントロールパネル、コネクター、PPCトナー容器、換気扇カバー、デッキ材、コンクリート型枠、フラットヤーン用モノフィラメント及びラミネートフィルム、競技場椅子及び背カバー、観葉植物用植木鉢、OAフロアー、自動車関連材料、具体的には、電線コルゲートチューブ、フロアマット、ドアトリム、トランクルームシート及びライニング、バッテリーケース、ラジエター冷却ファン、エンジンルーム落下物防止板、インストルメントパネル、内装用トリム、グローブボックス、コンソールボックス、ファンシュラウド、エアークリーナーハウジング、シートフレーム、コネクター、灰皿、その他、PPバンド、各種コネクター、パレット、コンテナー、トレイ等に有用である。
本発明の組成物を用いて得られる成形品は、ヒケの発生が抑制され、更に表面光沢も高くかつ均一であるので、外観及び寸法精度の良好な成形品を得ることができる。特に、以下に示す測定方法で、86以上の表面光沢度の実質的に均一な表面光沢を有する成形品を得ることができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜4(実施例1〜3は参考例)
PET再生樹脂組成物形成用の原料として以下のものを使用した。
・PET再生樹脂:よのPETボトルリサイクル社製のA級品(フレーク状)
・ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート):三菱レイヨン社製MA−521H
・ABS:ダイセルポリマー社製セビアン680
・エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA):三井・デュポンポリケミカル社製A−710
・エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA):アトフィナ・ジャパン社製Lotader AX8840
・結晶核剤(ステアリン酸ナトリウム):旭電化工業社製エフコ・ケムNA
【0024】
上記原料を表1に示す割合で秤量した後、混合し、得られた混合物をスクリュー径30mmの二軸押出機に導入し、加工温度260℃で溶融混錬し、押出し、ペレタイズした。
得られたペレットを、以下の条件で、荷重たわみ温度、衝撃強さ、剥離、ヒケ及び表面光沢度(グロス)を測定した。
【0025】
(荷重たわみ温度)
得られたペレットを、型締力100トンの射出成形機を用いて、加工温度260℃、金型温度60℃で、所定の形状の試験品を成形した。得られた試験品をISO75に準拠して荷重たわみ温度(荷重1.8MPa及び0.45MPa)を測定した。
(衝撃強さ)
荷重たわみ温度の測定と同様の方法で成形した所定の試験片を用いて、ISO179に準拠してシャルピー衝撃強さを測定した。
(剥離)
荷重たわみ温度の測定と同様の方法で成形した試験片を用い、その表面にテープを貼り、はがした後の剥離の状態「あり」、「なし」を評価した。
【0026】
(ヒケ)
得られたペレットを、型締力850トンの射出成形機を用いて、加工温度260℃、金型温度35℃で、長さ456mm×幅316mm×高さ223mmの成形品を成形した。目視により成形品の外観を観察し、ヒケの「ある」、「なし」を評価した。
(表面光沢度)
荷重たわみ温度の測定と同様の方法で形成した試験品を用いて、JIS K7015−1981に準じて、グロスメーターを用いて表面光沢度(グロス)を測定した。
得られた結果を表1に示す。
【0027】
比較例1〜6
表1に示す割合で、
・比較例1ではPET再生樹脂のみを使用し、
・比較例2ではPET再生樹脂、ポリエステル樹脂及び結晶核剤を使用し、
・比較例3ではPET再生樹脂、ポリエステル樹脂、ABS及びEEAを使用し、
・比較例4ではPET再生樹脂、ABS、EEA及び結晶核剤を使用し、
・比較例5ではPET再生樹脂、ポリエステル樹脂、EEA、結晶核剤及びガラス繊維を使用し、
・比較例6ではPET再生樹脂及びラクトン重合体を使用すること以外は、上記実施例と同様にして試験片を成形し、荷重たわみ温度、衝撃強さ、剥離、ヒケ及び表面光沢度を測定した。結果を表1に示す。
なお、比較例5で使用したガラス繊維は、日本電気硝子社製T−123であり、比較例6で使用したラクトン重合体は、ダイセル化学工業社製PLACCEL
H4(ポリ−ε−カプロラクトン、数平均分子量40,000)である。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から以下のことがわかる;
・実施例1〜4と比較例1から、PET再生樹脂のみでは耐熱性が劣り、かつヒケが発生し、
・実施例1〜4と比較例2から、熱可塑性エラストマーがないと耐衝撃性が劣り、
・実施例1〜4と比較例3から、結晶核剤がないと耐熱性が劣り、かつヒケと剥離が両方発生し、
・実施例1〜4と比較例4から、ポリエステル樹脂がないと耐熱性が劣り、かつ剥離が発生し、
・実施例1〜4と比較例5から、ガラス繊維を含むと表面光沢度が下がり、
・実施例1〜4と比較例6から、PET再生樹脂とラクトン重合体のみでは耐熱性が劣り、かつヒケが発生する。
つまり、本発明の組み合わせでは、実用に十分な耐熱性、耐衝撃性及び外観を有するPET再生樹脂組成物及びその成形品を得ることができることがわかった。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、PET再生樹脂の造粒や成形が可能であり、組成物を成形した際に、実用上考えうる温度での耐熱性及び耐衝撃性を有し、更に外観(ヒケ、表面光沢度等)が改良されたPET再生樹脂組成物及びその成形品を得ることができる。
Claims (6)
- PET再生樹脂、PET再生樹脂以外のポリエステル樹脂、結晶核剤及び熱可塑性エラストマーとしてのエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体からなり、PET再生樹脂とそれ以外の成分の割合(重量部)が98〜2:2〜98であり、ポリエステル樹脂とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の割合(重量部)が90〜10:10〜90であり、結晶核剤の割合(重量部)がポリエステル樹脂とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の合計量を100重量部として0.1〜10重量部であり、表面光沢度が改良された成形品を与えうることを特徴とするPET再生樹脂組成物。
- 前記PET再生樹脂とそれ以外の成分の割合(重量部)が98〜80:2〜20である請求項1に記載の組成物。
- 前記ポリエステル樹脂が、芳香族ポリエステル樹脂である請求項1又は2に記載の組成物。
- 前記PET再生樹脂がPETボトル再生樹脂であり、前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、強化充填材を含まないことからなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
- 表面光沢度が、86以上である請求項1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1つに記載のPET再生樹脂組成物を成形してなるPET再生樹脂成形品。
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