JP3888250B2 - 圧縮自着火エンジンを搭載したハイブリッド車両 - Google Patents

圧縮自着火エンジンを搭載したハイブリッド車両 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、動力源として内燃機関と電動機とを備えるハイブリッド車両において、該内燃機関を適切に始動する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関は、比較的小型でありながら大きな動力を発生させることができるという優れた特性を有しており、種々の方式の内燃機関が使用されている。これら内燃機関はいずれも、燃焼室内で燃料と空気との混合気を燃焼させ、このときに発生する圧力を、機械的仕事に変換して出力することを動作原理としている。
【0003】
また、燃焼室内で混合気を圧縮自着火させる方式の内燃機関は、排気ガスとともに大気に排出される大気汚染物質の排出量や、燃料消費量が少ないという優れた特性も備えている。
【0004】
もっとも、こうした圧縮自着火方式の内燃機関も、全ての運転条件で混合気を圧縮自着火させながら運転することは困難であり、負荷の高い運転条件や負荷の極めて低い運転条件では、通常の内燃機関のように、燃焼室内で火花を飛ばして混合気に点火しながら運転している。これは、混合気を圧縮自着火させる関係上、内燃機関の負荷が高くなるとノックが発生し易くなり、また、負荷が極めて低くなると混合気を圧縮自着火させることが困難になるためである。尚、以下では、混合気に火花を飛ばして点火しながら運転することを「火花点火運転」と呼び、混合気を圧縮自着火しながら運転することを「圧縮自着火運転」とも呼ぶこととする。このことから、圧縮自着火方式の内燃機関においては、低負荷域から中負荷域の範囲では圧縮自着火運転を行い、高負荷域あるいは極低負荷域では火花点火運転に切り換えて運転する技術が種々提案されている(例えば、特開2001−3800号、特開2001−254660号など)。
【0005】
内燃機関の始動時は極低負荷条件に相当しているので、これらの技術においては、火花点火運転しながら内燃機関を始動することになる。火花点火運転する場合は、圧縮自着火運転する場合に比べて大気汚染物質の排出量や燃料消費量が多くなるが、内燃機関の始動は頻繁に行われることはないので、このことによる影響は極めて限定的であり、実際上はほとんど問題となることはない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、圧縮自着火方式の内燃機関をハイブリッド車両の搭載した場合は、内燃機関の始動時に火花点火運転されることによる弊害が相対的に大きくなる。これは、ハイブリッド車両では、車両の走行状態に合わせて車両の走行中もエンジンの始動と停止とが繰り返されるので、始動の頻度が高いためである。このことから、圧縮自着火方式の内燃機関をハイブリッド車両の搭載する場合には、内燃機関をできるだけ適切に始動させる技術の開発が要請されることになる。
【0007】
この発明は、従来技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、圧縮自着火方式の内燃機関を搭載したハイブリッド車両において、該内燃機関をできるだけ適切に始動する技術の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明のハイブリッド車両は次の構成を採用した。すなわち、
動力源として内燃機関と電動機とを搭載したハイブリッド車両であって、
前記ハイブリッド車両の運転条件を検出し、前記内燃機関および前記電動機がそれぞれに分担する動力を、該検出した運転条件に基づき決定することによって該ハイブリッド車両の運転状態を制御する車両制御手段と、
前記内燃機関が分担すべき動力に応じて該内燃機関を制御する内燃機関制御手段と、
前記電動機が分担すべき動力に応じて該前記電動機を制御する電動機制御手段と
を備え、
前記内燃機関制御手段は、
前記内燃機関の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記検出した回転速度と前記内燃機関が分担すべき動力とに基づいて、該内燃機関の運転条件を決定する運転条件決定手段と、
燃焼室内で火花を飛ばして混合気を燃焼させることにより前記内燃機関を火花点火運転するべき運転条件と、該燃焼室内で混合気を圧縮自着火させることにより該内燃機関を圧縮自着火運転するべき運転条件とを記憶しておく運転条件記憶手段と
を備えるとともに、
前記決定した運転条件に応じて、前記火花点火運転あるいは前記圧縮自着火運転のいずれかの運転方法を用いて前記内燃機関を制御する手段であり、
前記車両制御手段は、前記決定した動力の分担に基づいて、前記内燃機関の始動の要否を判断する始動要否判断手段を備え、
前記電動機制御手段は、前記内燃機関の始動を要すると判断された場合に、前記内燃機関の運転条件が前記圧縮自着火運転すべき運転条件となるように、前記電動機を駆動して該内燃機関の回転速度を上昇させる機関回転速度上昇手段を備えていることを要旨とする。
【0009】
かかるハイブリッド車両は、車両の運転条件に応じて、内燃機関および電動機がそれぞれ分担する動力を決定し、かかる決定に基づいて該内燃機関と該電動機とを制御する。ここで、内燃機関は、燃焼室内で火花を飛ばして混合気を燃焼させながら運転する火花点火運転と、該燃焼室内で混合気を圧縮自着火させながら運転する圧縮自着火運転とのいずれかの方法によって運転される内燃機関であり、次のようにして制御される。先ず、内燃機関の回転速度を検出し、検出した回転速度と分担すべき動力とに基づいて、該内燃機関の運転条件を決定する。該内燃機関には、前記圧縮自着火運転を行うべき運転条件と、前記火花点火運転を行うべき運転条件とが予め記憶されており、決定された運転条件に応じて、いずれか適切な運転方法を用いて制御される。ハイブリッド車両の運転条件に応じて内燃機関と電動機とが分担する動力を決定した結果、該内燃機関の始動を要すると判断された場合には、前記電動機を駆動することによって、該内燃機関を前記圧縮自着火運転すべき運転条件となるように該内燃機関の回転速度を上昇させる。こうすれば、内燃機関を圧縮自着火運転しながら始動させることができるので、内燃機関を頻繁に始動する必要があるハイブリッド車両においても、内燃機関を適切に始動することが可能となる。
【0010】
こうしたハイブリッド車両においては、内燃機関の運転状態を検出し、該内燃機関の始動に際しては、検出した運転状態が前記圧縮自着火運転に適するか否かを判断することとしてもよい。そして、圧縮自着火運転に適しない運転状態と判断された場合には、該内燃機関の回転速度を、前記火花点火運転すべき運転条件の範囲に抑制した状態で、該内燃機関を始動させる。ここで、内燃機関の運転状態としては、例えば、冷却水の温度や、潤滑油の温度、吸入空気の温度などを用いることができる。このようにして内燃機関を始動させれば、該内燃機関の運転状態が圧縮自着火運転に適していない場合には、火花点火運転をしながら始動させることが可能となるので好ましい。
【0011】
こうした内燃機関に、吸気弁および排気弁の開閉時期を制御する開閉時期可変機構が設けられている場合には、前記火花点火運転しながら始動させる場合と、前記圧縮自着火運転しながら始動させる場合とで、該開閉時期の設定を切り換えることとしても良い。あるいは、内燃機関に、吸入空気量を制御する吸気量可変機構が設けられている場合には、前記火花点火運転しながら始動させる場合と、前記圧縮自着火運転しながら始動させる場合とで、該吸入空気量の設定を切り換えることとしても良い。内燃機関を火花点火運転する場合と圧縮自着火運転する場合とでは、吸気弁および排気弁の開閉時期、あるいは吸入空気量の最適な設定値は異なっているから、これらのいずれかを切り換えてやれば、より適切に内燃機関を始動することが可能となるので好適である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、次のような順序に従って、本発明の実施例を説明する。
A.装置構成:
A−1.ハイブリッド車両の構成:
A−2.ハイブリッド車両の動作の概要:
A−3.エンジンの概要:
B.エンジンの始動制御:
【0013】
A.装置構成:
A−1.ハイブリッド車両の構成:
図1は、本実施例のハイブリッド車両100の概略構成を示す説明図である。図示するように、このハイブリッド車両100は、エンジン110と、モータ・ジェネレータ(MG1)120と、モータ・ジェネレータ(MG2)130とを有し、エンジン110と2つのモータ・ジェネレータMG1,MG2とはプラネタリギア140で互いに結合されている。詳細には後述するが、エンジン110およびMG2は、主に車両を駆動するための駆動力を出力し、MG1は主にエンジン110によって駆動されて主として発電機として機能する。プラネタリギア140は、MG2からの出力を、チェーンベルト174と車軸170とを介して駆動輪172に伝達する役割や、エンジン110からの出力を、MG1と駆動輪172とに振り分ける動力分割機構としての役割、更には、MG2やエンジン110の回転速度を減速あるいは増速して駆動輪172に伝達する変速機としての役割を有している。プラネタリギア140の機能については後述する。
【0014】
エンジン110は、4つの燃焼室を備えており、各燃焼室内で空気と燃料との混合気を燃焼させることによって動力を発生させる。各燃焼室には吸気通路190が接続されており、吸気通路190の上流にはエアクリーナ196が設けられている。空気は、エアクリーナ196で異物が取り除かれた後、吸気通路190を介して燃焼室内に供給される。吸気通路190には、燃焼室内に流入する空気量を調整するためのスロットルバルブ186が設けられており、スロットルバルブ186は電動アクチュエータ188によって駆動されている。また、各燃焼室には燃料を噴射するための燃料噴射弁192も設けられている。燃焼室内で混合気が燃焼したときに発生する排気ガスは、排気通路180から排出される。排気通路180には浄化触媒200が設けられており、排気ガス中に含まれる有害物質を浄化触媒200で浄化することが可能である。
【0015】
本実施例のエンジン110は、燃焼室内で火花を飛ばすことによって混合気を燃焼させる場合と、燃焼室内で混合気を圧縮自着火させる場合とがあり、運転条件に応じて、これら燃焼方式を切り換えながら運転される。エンジン110の構造および制御の概要については後述する。
【0016】
エンジン110には、エンジン制御用の電子制御ユニット(以下、エンジンECU)112が搭載されている。エンジンECU112は、CPUや、RAM、ROM、A/D変換器、D/A変換器、タイマなどがバスを介して相互にデータをやり取り可能に接続された周知のマイクロコンピュータである。クランクシャフト114の先端にはクランク角度センサ118が設けられており、エンジンECU112は、クランク角度センサ118の出力に基づいて、クランクシャフト114の回転位置(クランク角度)に関する情報を取得する。そして、エンジンECU112は、後述するハイブリッドECU160の制御の下で、電動アクチュエータ188や燃料噴射弁192などをクランクシャフト114の回転に同期させながら適切なタイミングで駆動することによって、エンジン110の動作状態を制御する。また、エンジンECU112は、エンジン110に搭載された水温センサ182の出力に基づいてエンジン水温を検出することも可能となっている。
【0017】
プラネタリギア140は、中心部に設けられたサンギア142と、サンギア142の外側に同心円状に設けられたリングギア148と、サンギア142とリングギア148との間に配置されてサンギア142の外周を自転しながら公転する複数のプラネタリピニオンギア144と、エンジンのクランクシャフト114の端部に結合されて各プラネタリピニオンギア144の回転軸を軸支するプラネタリキャリア146とから構成されている。サンギア142は、サンギア軸141を介してMG1のロータ123に結合され、リングギア148は、リングギア軸147を介してMG2のロータ133に結合されている。プラネタリキャリア146は、エンジンのクランクシャフト114に結合されている。
【0018】
このような構成のプラネタリギア140は、サンギア軸141、リングギア軸147、クランクシャフト114の3軸が動力の入出力軸とされ、3軸の中のいずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、残余の1軸に入出力される動力が決定される。リングギア148にはチェーンベルト174が接続されており、動力はチェーンベルト174および車軸170を介して駆動輪172に伝達されて、ハイブリッド車両100を駆動する。
【0019】
MG1は、交流同期電動機であり、外周面に複数の永久磁石122を有するロータ123と、回転磁界を形成する三相コイル124が巻回されたステータ125などから構成されている。ステータ125はケース138に固定されており、ロータ123は、前述したように、プラネタリギア140のサンギア軸141に結合されている。また、サンギア軸141には、ロータ123の回転角度を検出するレゾルバ126が設けられている。MG1は、インバータ152を介してモータECU156に接続されている。モータECU156はインバータ152を制御することによって、バッテリ150から三相コイル124に適切な周波数で適切な電流値の交流電流を供給し、これによってMG1の動作を制御している。
【0020】
MG2も、MG1と同様の交流同期電動機であり、外周面に複数の永久磁石132を有するロータ133と、回転磁界を形成する三相コイル134が巻回されたステータ135などから構成されている。MG2のロータ133はプラネタリギア140のリングギア軸147に結合され、ステータ135はケース138に固定されている。また、リングギア軸147にはロータ133の回転角度を検出するレゾルバ136が設けられている。MG2は、インバータ154を介してモータECU156に接続され、モータECU156は、インバータ154を制御することによってMG2の動作を制御している。
【0021】
ハイブリッド車両100には、エンジンECU112およびモータECU156に加えて、車両全体の制御を司るハイブリッドECU160が搭載されている。これらECUは、前述したエンジンECU112と同様の構成を有するマイクロコンピュータである。ハイブリッドECU160は、アクセルポジションセンサ162や、ブレーキスイッチ164、あるいはバッテリ150などの種々の情報を検出して車両全体としての運転条件を決定し、これに基づいてエンジンECU112およびモータECU156が、それぞれエンジン110およびMG1,MG2の動作を制御している。
【0022】
B−2.ハイブリッド車両の動作の概要:
以上のような構成を有するハイブリッド車両100の動作原理、特にプラネタリギア140の機能について説明する。プラネタリギア140は、サンギア軸141,リングギア軸147,クランクシャフト114の3軸の中のいずれか2軸へ入出力される動力(すなわち、回転速度およびトルク)が決定されると、残余の1軸に入出力される動力(回転速度およびトルク)が決定される構造となっている。これら3軸間に入出力される回転速度およびトルクの関係は、共線図を用いて容易に求めることができる。
【0023】
図2は、プラネタリギア140の3軸に接続された各ギアの回転速度および回転方向の関係を示す共線図である。ここで、縦軸は各ギア(サンギア142,リングギア148,プラネタリキャリア146)の回転速度、すなわち、エンジン110,MG2,MG1の回転速度を表している。一方、横軸は各ギアのギア比を表している。リングギア148の歯数に対するサンギア142の歯数をρとすると、プラネタリキャリア146に対応する縦軸は、サンギア142とリングギア148との間を1:ρに内分する座標位置にくる。
【0024】
今、プラネタリキャリア146すなわちエンジン110の回転速度をNe とし、リングギア148すなわちMG2の回転速度をNr とする。図2に示した共線図上で、プラネタリキャリアを表す座標軸Cに回転速度Ne をプロットし、リングギアを表す座標軸Rに回転速度Nr をプロットして、両プロット点を直線で結ぶ。このような直線を考えると、サンギア142すなわちMG1の回転速度Ns は、得られた直線とサンギアを表す座標軸Sとの交点の座標として求めることができる。このような直線は動作共線と呼ばれる。このように、プラネタリキャリア146,リングギア148,サンギア142の中のいずれか2つの回転速度が決定されれば、共線図上に2つの座標点をプロットして両プロット点を結ぶ動作共線を考えることにより、他の1つの回転速度を求めることができる。
【0025】
次に、プラネタリギア140の3軸間に入出力されるトルクの関係について説明する。共線図上でトルクの関係を求めるには、動作共線をあたかも剛体のように扱って、トルクを剛体に作用する力のように扱う。例えば、エンジン110がトルクTe を発生し、駆動輪172からトルクTr を出力する場合を考える。駆動輪172から出力するトルクは、動作共線上では座標軸R上にかかる反力トルクTr として表れる。
【0026】
今、座標軸Cの位置で動作共線に下からトルクTe を作用させる。そして、図3に示すように、このトルクTe が、座標軸S上と座標軸R上とに分配されて作用していると考える。ここで、座標軸S上にかかるトルクをトルクTesとすると、トルクTesは、
Tes=Te・ρ/(1+ρ)
となり、また座標軸R上にかかるトルクをトルクTerとすると、トルクTerは、
Ter=Te/(1+ρ)
として表される。
【0027】
今、駆動輪172からトルクTr を出力しようとする場合、エンジン110からはトルクTerが分配されるから、不足分のトルクTr −TerをMG2から出力してやればよい。これを、動作共線上でトルクの釣り合いを考えることにより、次のように求めることもできる。先ず、駆動輪172からトルクTr を出力する場合、動作共線上では、座標軸Rの位置に反力トルクTr がかかる。そこで、座標軸R上で、エンジン110から分配されたトルクTerと、反力トルクTr と、MG2の出力トルクとを釣り合わせるために、MG2が出力すべきトルクTm2は、Tm2=Tr −Terと求めることができる。
【0028】
また、座標軸S上での釣り合いを考えれば、MG1が出力すべきトルクTm1を求めることができる。すなわち、座標軸Sには、エンジン110から分配されるトルクTesしかかかっていないから、MG1からは、これと同じ値のトルクを逆方向に出力してやればよい。
【0029】
ここで、図2の共線図の座標軸Sに示されているように、MG1の回転方向とトルクTm1の向きとは逆方向となっている。これは、MG1が発電機として動作していることを表している。また、座標軸Rに示されているように、MG2の回転方向とトルクTm2の向きとは同じ向きとなっている。これは、MG2が電動機として動作していることを表している。すなわち、MG1で発電しつつ、MG2で電力を消費している状態となっている。
【0030】
また、エンジン110を停止させた状態でハイブリッド車両100を走行させる時の共線図は、図3のようになる。先ず回転速度について考えると、リングギア148は、車両の走行速度に応じた回転速度Nr で回転する。また、エンジン110は止まっているから、座標軸Cでの回転速度は0、すなわち動作共線は座標軸C上では、回転速度0の位置を通過する。こうして座標軸R上での座標と座標軸C上での座標とが決まれば動作共線が決定され、サンギアの回転速度Ns は、動作共線が座標軸S上を通過する座標として求めることができる。次に、MG1,MG2の出力すべきトルクについて考える。エンジン110はトルクを出力していないから、エンジンから座標軸Rおよび座標軸Sに分配されるトルクはない。従って、座標軸R上には、駆動輪172からの反力トルクTr のみが加わることになるから、MG2の出力トルクTm2は、Tr と同じ大きさで逆向きのトルク(すなわち、Tm2=−Tr )として求めることができる。また、座標軸S上にはトルクは加わらないから、MG1の出力トルクTm1は0となる。
【0031】
このように、駆動輪172から出力されてハイブリッド車両100の車軸170に伝えられるトルク、あるいは車軸170の回転速度は、エンジン110、MG1、MG2の回転速度および出力トルクの組合せによって決定される。一般に、エンジンには、もっともエネルギ効率が良くなる運転条件が存在するから、エンジン110ができるだけ効率の良い運転条件で運転されるように、MG1およびMG2の回転速度、出力トルクを制御してやることができる。こうすれば、エンジンのエネルギ効率を大きく向上させることができ、延いてはハイブリッド車両全体としてのエネルギ効率を大きく向上させることが可能となる。
【0032】
また、エンジンは一般に、回転速度があまりに小さくなったり、あるいは発生トルクが小さくなって、動力の出力値があまりに小さな値となるとエネルギ効率が低下する傾向にある。従って、車軸に出力すべき動力値があまりに小さな値の場合には、エンジン110の運転を停止し、バッテリ150に蓄えた電力でMG2を駆動して、いわゆる電気自動車として走行すればよい。
【0033】
車両が減速する場合には、車軸170がチェーンベルト174を介してリングギア148を回転させるので、この回転を利用してMG2で発電し、電力をバッテリ150に蓄える。このようないわゆる回生動作を行えば、減速時の車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収することができる。車両の発進時や低速走行時などには、こうして蓄えた電力を利用することで、車両全体としての燃料消費効率を向上させることができる。
【0034】
このように、車両の運転状態に応じてエンジン110やMG1、MG2を適切に動作させる制御は、ハイブリッドECU160が行う。以下、ハイブリッドECU160が行っている運転制御について簡単に説明する。
【0035】
図4は、運転制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。運転制御ルーチンを開始すると、ハイブリッドECU160は、先ず初めに車軸170から出力すべき駆動エネルギPdを決定する処理を行う(ステップS100)。駆動力Pdは、アクセルポジションセンサ162と車軸の回転速度とに基づいて決定することができる。すなわち、アクセルペダルは、車両の運転者が出力トルクが足らないと感じたときに踏み込まれるものであるから、アクセルペダルの踏み込み量(アクセルポジションセンサ162の出力)は運転者の欲しているトルクに対応している。トルクに回転速度を乗算すれば単位時間あたりの駆動エネルギが得られる。従って、車軸170から出力すべき駆動エネルギPdは、アクセルポジションセンサ162の出力と車軸の回転速度とが決まると、適切な値を決めてやることができる。本実施例では、アクセルポジションセンサ162と車軸の回転速度とに対する適切な駆動エネルギPdの値を実験的に予め求めておき、マップの形式でハイブリッドECU160に予め記憶されている。
【0036】
次に、充放電電力Pbおよび補機駆動エネルギPhを算出する(ステップS102)。充放電電力Pbとは、バッテリ150の充放電に要する単位時間あたりのエネルギであり、バッテリ150を充電する必要がある場合には正の値、放電する必要がある場合には負の値を採る。補機駆動エネルギPhとは、エアコンなどの補機を駆動するために必要となる単位時間あたりのエネルギである。補機駆動エネルギPhは、駆動している補機を検出し、これらの駆動に要するエネルギを加算することで算出する。こうして、駆動エネルギPd,充放電電力Pb,補機駆動エネルギPhを算出したら、これらを加算して要求動力Peを算出する(ステップS104)。ここで要求動力Peとは、エンジン110、MG1、MG2をひとまとまりのハイブリッド機関と見たときに、ハイブリッド機関が出力すべき動力である。
【0037】
次に、ハイブリッドECU160は、こうして算出された要求動力Peに基づいてエンジン110の運転条件を設定する(ステップS106)。エンジンの運転条件は、エンジンの目標回転速度Neと目標トルクTeとの組み合わせによって設定される。ハイブリッドECU160に内蔵されたRAMには、要求動力Pe に対して、エンジンの燃料消費効率ができるだけ高くなるような運転条件が予め記憶されており、このRAMを参照することによって、エンジンの回転速度、発生トルクを設定する。
【0038】
エンジン110の運転条件を設定すると、ハイブリッドECU160は、続いてMG1およびMG2のそれぞれについて、発生トルクおよび回転速度の指令値を設定する(ステップS108)。ステップS100で駆動エネルギPd を算出する際に、車軸の回転速度は既に検出されているので、この値に基づいてリングギア軸147の回転速度Nrを算出することができる。また、駆動エネルギPd と回転速度Nrから、リングギア軸147にかかるトルクTr も求めることができる。従って、ステップS106においてエンジン110の回転速度Neと発生トルクTeとが定まれば、図2に示した動作共線に基づいて、MG1,MG2の回転速度および出力トルクを決定することができる。ステップS108では、このようにして、MG1およびMG2についての回転速度および出力トルクの指令値を算出する。
【0039】
以上のようにしてエンジン110の運転条件と、MG1,MG2とについての発生トルクおよび回転速度の指令値を決定したら、決定した運転条件に従ってエンジン110およびMG1,MG2を制御する(ステップS110)。モータ・ジェネレータの制御としては、同期モータを制御するための周知の方法を適用することができる。本実施例では、いわゆる比例積分制御による制御を行う。つまり、各モータの現在のトルクを検出し、目標トルクとの偏差および目標回転数に基づいて、各相に印加する電圧指令値を設定する。印加される電圧値は上記偏差の比例項、積分項、累積項によって設定される。それぞれの項にかかる比例係数は実験などにより適切な値が設定される。こうして設定された電圧は、インバータ152,154に入力され、いわゆるPWM制御によりMG1、MG2に印加される。
【0040】
ハイブリッドECU160は、以上に説明した運転制御ルーチンを定期的に実行することによって、運転者の操作に応じてハイブリッド車両を適切に運転することが可能となっている。
【0041】
A−3.エンジンの概要:
次に、本実施例のハイブリッド車両100に搭載されているエンジン110の概要について説明する。図5は、エンジン110の燃焼室の断面を取って、エンジンの構造を概念的に示した説明図である。図示するように、エンジン110は、シリンダブロック240の上部にシリンダヘッド230が組み付けられて構成されている。シリンダブロック240の内部には、円筒形のシリンダ242が設けられており、このシリンダ242の内部にはピストン244が摺動可能に設けられている。シリンダ242とピストン244とシリンダヘッド230の下面とで囲まれた空間が燃焼室となる。
【0042】
ピストン244は、コネクティングロッド246を介してクランクシャフト114に接続されており、ピストン244はクランクシャフト114の回転にともなってシリンダ242内を上下に摺動する。
【0043】
シリンダヘッド230には、燃焼室に吸入空気を取り入れるための吸気ポート233と、燃焼室内で発生した燃焼ガスを排出するための排気ポート235などが設けられている。図1に示した吸気通路190は吸気ポート233に接続され、排気通路180は排気ポート235に接続される。また、シリンダヘッド230には、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁192と、燃焼室内の混合気に点火するための点火プラグ236と、吸気バルブ232と、排気バルブ234とが設けられている。吸気バルブ232および排気バルブ234は、それぞれにカム機構によって駆動され、ピストン244の動きに同期して吸気ポート233および排気ポート235を開閉する。また、それぞれのカム機構には、図示しない周知の可変機構が組み込まれており、吸気バルブ232および排気バルブ234の開閉時期を変更可能となっている。
【0044】
ここで、エンジン110の動作について説明する。エンジン110は、燃焼室内に空気を吸い込んで混合気を形成する吸気行程と、燃焼室内で混合気を圧縮する圧縮行程と、圧縮した混合気を燃焼させて燃焼室内に発生した圧力を機械的仕事に変換する膨張行程と、燃焼によって生じた排気ガスを排出する排気行程と、の4つの行程を繰り返しながら動力を出力する4サイクルエンジンである。もちろん、4サイクルエンジンに限らず、2サイクルなどの他の方式のエンジンを用いることも可能である。図6は、エンジン110が燃焼室内で混合気を燃焼させることによって動力を出力する様子を概念的に示した説明図である。図6(a)はエンジン110の吸気行程を表している。
【0045】
図6(a)に示すように、吸気行程では、吸気バルブ232を開いた状態でピストン244を降下させることによって、燃焼室内に空気を吸入する。図6(a)中に実線で示した矢印は、吸気バルブ232から空気が燃焼室内に流入する様子を概念的に表している。また、燃料は吸気行程中に燃料噴射弁192から燃焼室内に直接噴射する。こうして吸気行程中に燃料を噴射してやれば、噴射した燃料の噴霧は、吸気バルブ232から流入してくる空気と混合しながら燃焼室内に流入し、更に、燃焼室内で攪拌されて、ピストン244が下死点に達する頃には、燃料と空気とがほぼ均一に混ざり合った混合気が形成される。
【0046】
ピストン244が一番下まで下がりきったら、吸気バルブ232を閉じた後、ピストン244を上昇させて混合気を圧縮する。図6(b)は、こうしてピストン244を上昇させることによって混合気を圧縮している様子を概念的に表している。エンジン110は、常用される所定の運転条件では、混合気を圧縮自着火させることによって燃焼させる。すなわち、ピストン244で圧縮するに伴って燃焼室内の混合気温度は次第に上昇していき、ピストンが上死点に達した付近でついには発火点を超えて自着火させることが可能である。図6(c)は、こうしてピストンの上死点付近で、燃焼室内の混合気が自着火している様子を概念的に表している。ピストン244を上昇させるに連れて、混合気の温度はほぼ同時に上昇するから、燃焼室内の混合気はほぼ同時に自着火することになる。このようにして混合気を圧縮自着火燃焼させながら運転すると、排気ガスと共に排出される大気汚染物質の排出量や燃料消費量を大きく減少させることが可能なことが知られている。
【0047】
また、混合気を圧縮自着火させない領域では、ピストン244が圧縮上死点に達する直前の所定のタイミングで、点火プラグ236から火花を飛ばすことによって燃焼室内の混合気に点火してやる。
【0048】
図7は、エンジン110を圧縮自着火運転する場合に、ピストンの動きに同期させて吸気バルブ232および排気バルブ234を開閉するタイミング、および燃料噴射弁192から燃料を噴射するタイミングを示した説明図である。図中でTDCはピストンが上死点にあるタイミングを示し、BDCはピストンが下死点にあるタイミングを示している。圧縮自着火運転する場合は、上死点を過ぎてしばらくしたタイミングで吸気バルブ232を開き、下死点を過ぎた直後のタイミングで閉じてやる。燃料は、吸気バルブ232を開いて程なくしたタイミングで噴射してやる。また、排気バルブ234は、ピストンが下死点に達する直前のタイミングで開き、上死点に達するよりかなり前のタイミングで閉じてやる。この様に排気バルブ234を早めに閉じてやり、また吸気バルブ232を遅めに開いてやれば、内部EGRが増加するので、燃焼室内の混合気を容易に圧縮自着火させることができる。
【0049】
図8は、エンジンを火花点火運転する場合に、ピストンの動きに同期させて吸気バルブ232および排気バルブ234を開閉するタイミング、燃料を噴射するタイミング、点火プラグ236から火花を飛ばすタイミングを示した説明図である。火花点火運転する場合、吸気バルブ232は上死点の少し前のタイミングで開き、下死点を過ぎて程なくしたタイミングで閉じてやる。また、排気バルブ234は、下死点に達する前の所定のタイミングで開き、上死点を過ぎた直後のタイミングで閉じてやる。燃料は、吸気バルブ232が開いた後の所定のタイミングで燃焼室内に噴射する。また、上死点直前の所定のタイミングで、点火プラグ236から火花を飛ばすことによって混合気に点火する。
【0050】
図7と図8とを比較すれば明らかなように、エンジン110を圧縮自着火運転する場合と、火花点火運転する場合とでは、吸気バルブ232を閉じるタイミングが違っているので、実質的な圧縮比が異なってくる。すなわち、ピストンが下死点を過ぎてしばらくしてから吸気バルブ232を閉じた場合は、一旦吸い込んだ空気が吸気バルブ232から逆流するので、実質的な圧縮比は、機械的な圧縮比よりも低くなる。これに対して、吸気バルブ232を下死点付近で閉じた場合は、実質的な圧縮比は機械的な圧縮比とほぼ等しくなる。従って、圧縮自着火運転する場合(図7に対応)は、火花点火運転する場合(図8に対応)よりも、実質的な圧縮比が高くなっている。このため、燃焼室内の混合気を確実に圧縮自着火させることが可能となっている。逆に、火花点火運転する場合には、実質的な圧縮比が低くなっているので、ピストン244による圧縮中に混合気が自着火してしまうことを回避することが可能となっている。
【0051】
図9は、エンジン110を圧縮自着火運転する条件と、火花点火運転する条件との関係を示した説明図である。エンジン110の運転条件を、エンジン回転速度とスロットルバルブ186の開度(スロットル開度)とによって表現した場合、図中にハッチングを付した領域では混合気を圧縮自着火させて運転し、それ以外の運転条件では火花を飛ばして点火しながら運転する。すなわち、エンジン回転速度が極めて低い場合や、スロットル開度が小さい場合あるいは大きい場合は火花点火運転し、それ以外の運転条件では圧縮自着火運転する。図1に示したエンジンECU112のRAMには、図9に示すようなマップが予め記憶されており、エンジンECU112はかかるマップの設定に基づいて、エンジンの運転状態を制御している。
【0052】
B.エンジンの始動制御:
通常の車両では、エンジン110は車両の走行開始時に1回だけ始動され、走行終了後に1回だけ停止されることが普通であるのに対し、ハイブリッド車両100では、車両の運転状態に合わせて車両の走行中にも始動と停止とが頻繁に行われる。従って、ハイブリッド車両100では、大気汚染物質の排出量や燃料消費量をできるだけ増加させることなくエンジンを始動させる必要がある。
【0053】
エンジンの始動はスロットルバルブを閉じた状態で行われるから、通常、エンジンは火花点火運転されながら始動される。しかし、ハイブリッド車両100では、大気汚染物質の排出量および燃料消費量をできるだけ増加させることなく始動する必要があるから、エンジン110を圧縮自着火運転しながら始動することが好ましい。
【0054】
とは言え、吸気バルブ232、排気バルブ234、燃料噴射弁192、あるいは点火プラグ236の駆動タイミングの設定を、図7、図8に示すように変更しただけでは、エンジンを圧縮自着火させて始動させることはできない。これは、次の理由による。エンジンの始動時は、エンジンの回転速度がたいへん遅く、燃焼室内に空気が流入するための時間が十分にあるために、燃焼室内には多量の空気が流入している。すなわち、エンジン始動時は、スロットルバルブが閉じられているにもかかわらず、燃焼室内に多量の空気が流入するために、高負荷運転条件時と同様にノックが発生してしまうので、圧縮自着火させながら始動させることが困難となっているのである。
【0055】
そこで、本実施例では、ノックを発生させることなくエンジン110を圧縮自着火運転しながら始動させるために、次のような始動制御を行う。
【0056】
図10は、エンジン110を始動させる制御の流れを示したフローチャートである。かかる処理は、ハイブリッドECU160によって、エンジン110の始動を要すると判断された場合に起動され、ハイブリッドECU160、エンジンECU112、モータECU156がそれぞれ協働することによって実行される。以下、図10のフローチャートに従って説明する。
【0057】
エンジン始動ルーチンを開始すると、先ず初めに、MG1の回転速度を正回転方向に増速させる処理を開始する(ステップS200)。すなわち、図3の共線図を用いて前述したように、エンジン110の停止中は、サンギア軸141に接続されたMG1は負の方向に回転しているので、これを図2の共線図に示す状態に近づけていくのである。具体的には、負の方向に回転しているMG1の回転速度を次第に小さくして行き、速度が0になったら、今度は、少しずつ正の方向に増速していく。こうすれば、止まっていたプラネタリキャリア146が少しずつ正方向に回転し始め、これに伴ってエンジン110の回転速度が次第に増加していく。
【0058】
次いで、エンジン110の水温が設定水温より高いか否かを判断する(ステップS202)。エンジン水温は、水温センサ182を用いて検出することができる。エンジン水温が設定水温よりも高い場合は(ステップS202:yes)、エンジン110を圧縮自着火運転させながら始動するための制御を開始する。そうでない場合は(ステップS202:no)、火花点火運転させながら始動するための制御を開始する。先ず、圧縮自着火運転させながら始動させる場合について説明する。
【0059】
ステップS202においてエンジン水温が設定水温よりも高いと判断された場合は、エンジン110の回転速度Ne が第1の閾値回転速度Nth1 に達したか否かを判断する(ステップS204)。エンジン110の回転速度は、クランク角度センサ118の出力に基づいて算出することができる。そして、エンジンの回転速度が第1の閾値回転速度Nth1 に達していない場合は(ステップS204:no)、エンジンの回転速度が上昇するまで待機する。図9に示すように、第1の閾値回転速度Nth1 は、エンジン110を圧縮自着火運転可能な回転速度に設定されている。そして、第1の閾値回転速度Nth1 に達したことを確認したら(ステップS204:yes)、スロットルバルブ186の開度と、吸気バルブ232および排気バルブ234の開閉タイミングを、圧縮自着火運転しながらエンジン110を始動させるための設定に変更し(ステップS206)、図7に示した所定のタイミングで燃料を噴射してエンジンを始動させる(ステップS208)。
【0060】
一方、ステップS202においてエンジン水温が設定水温に達していないと判断された場合(ステップS202:no)は、エンジン110の回転速度Ne が第2の閾値回転速度Nth2 に達したか否かを判断する(ステップS210)。図9に示すように、第2の閾値回転速度Nth2 は第1の閾値回転速度Nth1 よりも小さな値に設定されている。第2の閾値回転速度Nth2 は、通常のエンジンを始動させるときのクランキング回転速度と同程度の回転速度に設定することができる。そして、エンジンの回転速度が第2の閾値回転速度Nth2 に達していない場合は(ステップS210:no)、エンジンの回転速度が上昇するまで待機する。第2の閾値回転速度Nth2 に達したことを確認したら(ステップS210:yes)、スロットルバルブ186の開度と、吸気バルブ232および排気バルブ234の開閉タイミングを、火花点火運転しながらエンジン110を始動させるための設定に変更し(ステップS212)、図8に示した所定のタイミングで燃料を噴射した後、点火プラグ236から火花を飛ばして混合気に点火することによりエンジンを始動させる(ステップS214)。
【0061】
以上のようにしてエンジン110を始動すると、エンジン110の回転速度が上昇し始め、またエンジン110からトルクが出力されるので、この影響が車軸170側に伝わらないように、MG1の回転速度および出力トルクを修正する(ステップS216)。こうして、エンジン110の始動を完了したら、図10に示したエンジン始動ルーチンを終了する。
【0062】
エンジンの回転速度が第2の閾値回転速度Nth2 で回転しているときには、燃焼室内に空気が流入するための十分な時間があるので、燃焼室内の状態は、ちょうど図9中に破線の丸印で示したように、高負荷条件時に近い状態となっている。このため、圧縮自着火させながらエンジン110を始動させようとすると、ノックが発生してしまうが、エンジン110の回転速度を第1の閾値回転速度Nth1 まで上昇させておけば、図9中に矢印で示したように、燃焼室内の状態を圧縮自着火運転に適した状態とすることができるので、圧縮自着火させながら始動させても、ノックを起こさせることなくエンジンを始動させることが可能となる。
【0063】
図11は、図10に示したエンジン始動ルーチンに従って、エンジン110を圧縮自着火させながら始動している様子を概念的に示した説明図である。前述したように、エンジン110の停止中は、MG1は負の方向に回転している。また、エンジン110のスロットル開度および燃料噴射量は、いずれも0となっている。
【0064】
図10の始動制御を開始すると、MG1の回転速度が正方向に少しずつ増加し、これに伴ってエンジン110の回転速度Ne が次第に増加していく。そして、回転速度Ne が第1の閾値回転速度Nth1 に達したら、スロットル開度を予め設定されている開度まで速やかに増加させ、所定量の燃料を噴射する。こうすることによって、エンジン110の燃焼室内では混合気が圧縮自着火する。尚、エンジンの始動をより容易にするために、燃料噴射開始直後は、噴射する燃料量を増加させてやることとしても良い。こうして混合気を燃焼させると、エンジンの回転速度Ne が増加していき、やがて安定した速度で回転し始めて始動が完了する。こうしたエンジン回転速度の変動や出力トルクの変動が車軸に影響しないように、MG1は回転速度と出力トルクを修正する。こうすれば、エンジン110をノックさせることなく圧縮自着火させながら始動することができる。従って、火花点火運転しながら始動する場合に比べて、ハイブリッド車両から排出される大気汚染物質や燃料消費量を大きく減少させることが可能となる。
【0065】
以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。例えば、上述した実施例では、ハイブリッド車両は、プラネタリギアを用いたいわゆる機械分配式のハイブリッド車両であるものとしたが、電気分配式のハイブリッド車両など、周知の方式の種々のハイブリッド車両に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例のハイブリッド車両の構成を示す説明図である。
【図2】エンジンが出力する動力と2つのモータ・ジェネレータで発生する動力との関係を示す共線図である。
【図3】エンジン始動時におけるエンジンと2つのモータ・ジェネレータとの関係を示す共線図である。
【図4】ハイブリッド車両の運転制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【図5】エンジンの構造を概念的に示す説明図である。
【図6】燃焼室内で混合気を圧縮自着火させながらエンジンを運転する様子を概念的に示した説明図である。
【図7】エンジンを圧縮自着火運転しているときのバルブタイミングおよび燃料噴射タイミングを例示した説明図である。
【図8】エンジンを火花点火運転しているときのバルブタイミング、燃料噴射タイミング、および点火タイミングを例示した説明図である。
【図9】エンジンを火花点火運転する運転条件と、圧縮自着火運転する運転条件とが設定されている様子を概念的に示した説明図である。
【図10】エンジンを始動させる処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】エンジンを始動させる様子を概念的に示した説明図である。
【符号の説明】
100…ハイブリッド車両
110…エンジン
112…エンジンECU
114…クランクシャフト
118…クランク角度センサ
120…モータ・ジェネレータMG1
122…永久磁石
123…ロータ
124…三相コイル
125…ステータ
126…レゾルバ
130…モータ・ジェネレータMG2
132…永久磁石
133…ロータ
134…三相コイル
135…ステータ
136…レゾルバ
138…ケース
140…プラネタリギア
141…サンギア軸
142…サンギア
144…プラネタリピニオンギア
146…プラネタリキャリア
147…リングギア軸
148…リングギア
150…バッテリ
152…インバータ
154…インバータ
156…モータECU
160…ハイブリッドECU
162…アクセルポジションセンサ
164…ブレーキスイッチ
170…車軸
172…駆動輪
174…チェーンベルト
180…排気通路
182…水温センサ
186…スロットルバルブ
188…電動アクチュエータ
190…吸気通路
192…燃料噴射弁
196…エアクリーナ
200…浄化触媒
230…シリンダヘッド
232…吸気バルブ
233…吸気ポート
234…排気バルブ
235…排気ポート
236…点火プラグ
240…シリンダブロック
242…シリンダ
244…ピストン
246…コネクティングロッド

Claims (4)

  1. 動力源として内燃機関と電動機とを搭載したハイブリッド車両であって、
    前記ハイブリッド車両の運転条件を検出し、前記内燃機関および前記電動機がそれぞれに分担する動力を、前記検出した運転条件に基づき決定することによって前記ハイブリッド車両の運転状態を制御する車両制御手段と
    前記決定した動力の分担に基づいて、前記内燃機関の始動の要否を判断する始動要否判断手段と、
    前記内燃機関を火花点火運転または圧縮自着火運転のいずれの運転方法によって始動させるか判定する判定手段と、
    前記内燃機関を火花点火運転によって始動させるための第1の機関回転速度と、前記内燃機関を圧縮自着火運転によって始動させるための機関回転速度であって前記第1の機関回転速度よりも高い第2の機関回転速度とを記憶する記憶手段と、
    前記内燃機関を圧縮自着火運転によって始動させると判定された場合には、前記電動機によって、前記内燃機関の機関回転速度を前記第2の機関回転速度まで上昇させる機関回転速度上昇手段とを備えるハイブリッド車両。
  2. 請求項1記載のハイブリッド車両であって
    記機関回転速度上昇手段は、前記内燃機関を火花点火運転によって始動させると判定された場合には、前記電動機によって、前記内燃機関の機関回転速度を前記第1の機関回転速度まで上昇させるハイブリッド車両。
  3. 請求項1または請求項2記載のハイブリッド車両であって、
    前記内燃機関は、前記内燃機関の吸気弁および排気弁の開閉時期を制御する開閉時期可変機構を備えており、
    前記ハイブリッド車両はさらに、前記内燃機関の運転方法が前記火花点火運転あるいは前記圧縮自着火運転のいずれかに応じて、前記開閉時期可変機構の設定を切り換える開閉時期切換手段を備えているハイブリッド車両。
  4. 請求項1または請求項2記載のハイブリッド車両であって、
    前記内燃機関は、前記内燃機関の吸入空気量を制御する吸気量可変機構を備えており、
    前記ハイブリッド車両はさらに、前記内燃機関の運転方法が前記火花点火運転あるいは前記圧縮自着火運転のいずれかに応じて、前記吸気量可変機構の設定を切り換える吸気量切換手段を備えているハイブリッド車両。
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