JP3887774B2 - 変位ベクトル計測装置および歪テンソル計測装置 - Google Patents

変位ベクトル計測装置および歪テンソル計測装置 Download PDF

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  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Ultrasonic Waves (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、物体、物質、材料、生体などの対象物内部の力学的な特性を非破壊で計測する技術に係り、例えば超音波などの力源により対象物に力を作用させたときの対象物内部の歪テンソル及び弾性率等の力学的特性を求めるのに好適な変位及び変位分布を計測する技術に関する。
【0002】
具体的な応用分野としては、生体内部を観察する超音波診断装置への適用が典型的であるが、本発明はこれに限られるものではなく、非破壊で対象物の静力学的または動力学的な特性を計測して、その評価、検査、診断等に適用することができる。
【0003】
【従来の技術】
例えば、医療分野においては、従来から肝臓ガンなどの病変組織を非侵襲で外部から観察することが要望されている。また、放射線治療や強力超音波照射、レーザ照射、電磁RF波照射、電磁マイクロ波照射等の治療による効果、あるいは抗癌剤等の薬剤投与による治療効果などを、非侵襲で観察することが要望されている。このような要望に応えて、治療部位等の生体組織の関心部位に作用する力によって、その関心部位の力学的な特性がどのように変化するかを計測し、その計測結果に基づいて、例えば弾性係数等の生体組織の性状を求め、関心部位を含む組織性状の違い等に基づいて診断および治療の効果等を観察する技術が提案されている。
【0004】
一般に、医療分野で用いられている超音波診断装置は、超音波探触子(以下、単に探触子という。)等の超音波トランスジューサーから超音波を生体内に放射し、生体内から反射される超音波エコー信号(以下、単にエコー信号という。)を超音波探触子により受信し、受信したエコー信号に基づいて生体内の組織等の分布を計測して、観察可能な画像等に変換するものである。ここで、超音波が放射された生体の各部位は、音圧の強さに応じて圧縮あるいは引張により変位するから、その変位を計測することにより、あるいは計測した変位データに基づいて歪テンソルや弾性定数分布を求めることにより、肝臓ガンなどのような病変組織と正常な生体組織の違いを外部から非侵襲で観察することができる。
【0005】
このことから、従来、超音波を時間間隔をおいて複数回放射し、前回放射時のエコー信号と今回放射時のエコー信号の変化に基づいて、超音波放射によって変形した生体内の各部の変位を計測することが提案されている。そして、計測された各部の変位に基づいて歪テンソルなどの生体内部の力学的性質を求め、これに基づいて組織性状の異同の分布を非侵襲で診断することが提案されている(特開平7−55775号公報、特表2001−518342)。具体的には、対象物内に3次元、2次元、又は1次元の関心領域を設定し、その関心領域内に生じた3次元変位ベクトルの3成分、2成分、または1成分の分布を計測する。そして、計測された変位データ、及び変位データに基づいて評価される歪データから、関心領域内の弾性定数分布等を演算により求めることが行なわれている。
【0006】
なお、探触子は、変位ないし歪センサーとして機能するものであるが、変位・歪センサとしては超音波探触子に限らず、周知のものを適用できる。また、上記説明では、超音波探触子を加圧源または加振源として用いたが、加圧・加振源として別の力源を適用すること、または生体内の心臓の動きや心拍を力源とすることも含まれる。また、組織性状の違いには弾性定数のほか、治療により上昇した治療部位の温度等が含まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の変位計測においては、超音波ビーム方向のみの信号成分を用いて変位成分を求めていることから、超音波ビーム方向と直交する方向の変位の計測精度が低い。特に、3次元の変位ベクトルを計測し、これを微分処理して歪テンソルを安定的に求めるためには、空間分解能を低くする必要がある。
【0008】
一方、2次元処理を行うことにより計測精度を向上させるべく、いわゆる2次元相互相関法や最小二乗法に基づいて、2次元クロススペクトラムの位相の勾配を求め、この位相の勾配から変位ベクトルを求める方法が提案されている。これによれば、例えば、対象物内に探触子の力源(加圧器又は加振器)の他に、他の力源や、制御不可能な力源が存在する場合でも、ある程度の計測精度で変位ベクトルを計測することが可能である。
【0009】
しかし、対象物内の3次元空間において生じる変位ベクトルは、厳密には3次元変位ベクトルであるのに対して、従来の技術は、2次元処理に基づいて2方向変位成分の分布を計測するもの、あるいは1次元処理に基づいて1方向変位成分の分布を計測するものにとどまることから、3次元変位ベクトルの計測精度には自ずと限界がある。
【0010】
特に、超音波ビーム方向と直交する方向の変位成分の計測は、超音波信号の周波数帯域が狭いこと、及び送搬周波数を有さないことから、超音波ビーム方向の変位成分の計測に比べて、空間分解能および計測精度が低くなる。つまり、3次元の変位ベクトル及び歪テンソル成分の計測精度は、超音波ビームの走査方向の変位成分の計測精度に大きく依存して低いという問題がある。
【0011】
また、大きな変位をクロススペクトラムの位相の勾配から計測する場合、クロススペクトラムの位相をアンラッピングしたり、あるいは相互相関法を用いて超音波エコー信号(検波処理する前のエコー信号をいう。以下、特にことわらない限り同様とする。)のサンプリング間隔の整数倍の値として、その変位を予め評価しておく必要がある。したがって、計測処理が煩雑であるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、時間間隔をおいて取得される超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配から変位成分を求めるにあたり、計測対象物の3次元、2次元又は1次元の関心領域内に生じた変位ベクトル分布の計測精度を向上することを第1の課題とする。
【0013】
また、本発明は、超音波ビーム走査方向と直交する方向の変位計測の精度を向上させることを第2の課題とする。
【0014】
また、本発明は、クロススペクトラムの位相のアンラッピングや、相互相関法を用いることなく、演算処理をシンプル化して、演算プログラム量の軽減及び演算処理時間を短縮化することを第3の課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次に述べる手段により、上記課題を解決するものである。
【0016】
まず、本発明は、基本的には、変位成分を変形前後に取得される超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配から評価するものである。したがって、3次元処理をも可能とする本発明によれば、3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布そのものの高精度な計測を可能とするだけでなく、結果的に、2次元処理および1次元処理を行うものに比べて対応する変位成分分布のより高精度な計測を可能とする。
【0017】
また、本発明は、最小二乗法に基づいてクロススペクトラムの位相の勾配から変位を計測する際に、正則化処理を施して安定化することにより、さらに高精度な変位計測を実現する。したがって、従来技術の信号処理の単なる多次元化による3次元関心空間内の3次元変位ベクトル成分分布計測、および、従来技術による、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布計測および1次元関心領域内の1方向変位成分分布計測に比べて計測精度を向上できる。
【0018】
また、本発明は、データを間引くことにより、クロススペクトラムの位相のアンラッピングや、相互相関法を用いることなく、演算処理をシンプル化して、演算プログラム量の軽減及び演算処理時間を短縮化を可能としたのである。
【0019】
上述のように、変位ベクトルを精度よく計測することができることから、結果的に、単に3次元歪テンソルの計測を可能とするだけでなく、3次元歪テンソル、2次元歪テンソル、歪1成分(ビーム方向)の高精度な計測を可能とする。
【0020】
すなわち、本発明の変位ベクトル計側方法は、計測対象物の関心空間に時間間隔をおいて超音波を放射し、前記計測対象物から発生する超音波エコー信号を取得して、2時相で取得された超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配に基づいて局所変位を計測するにあたり、前記2時相で取得された超音波エコー信号に基づき相互相関法によりクロススペクトラムの位相の勾配を求めることを特徴とする。
【0021】
また、クロススペクトラムの位相の勾配に基づいて局所変位を計測するにあたり、正則化法を用いて関心領域域内の変位分布に関する空間的な連続性や微分可能性に関する所定の先見的情報を付加した上で、クロススペクトラムのパワーを用いて正規化されたクロススペクトラムの二乗を重み関数として最小二乗法を適用して関心領域内の変位分布を求めることができる。なお、上述の相互相関法を組合わせることが好ましい。
【0022】
これらの場合において、クロススペクトラムは、3次元、2次元または1次元の関心領域内からの3次元、2次元または1次元の超音波エコー信号の各局所3次元、2次元または1次元のクロススペクトラムとし、変位分布は、3次元関心領域内の3次元変位ベクトル成分分布、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布、1次元関心領域内の1方向変位成分分布、3次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布または1方向変位成分分布、または2次元関心領域内の1方向変位成分分布とすることができる。
【0023】
また、クロススペクトラムの位相の勾配に最小二乗法を施して局所変位を求めるにあたり、正則化法を適用することが好ましい。
【0024】
また、クロススペクトラムの位相の勾配を評価するにあたり、取得された超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことによりデータ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いることができる。この場合、正則化の処罰項および正則化パラメータは前記関心領域の次元および変位成分の方向数の組合わせに応じて異なるものとすることができる。
【0025】
さらに、放射する超音波の放射ビーム強度を走査方向に正弦的に変化させながら超音波エコーを取得することができる。また、これと組合わせて、または単独で、放射する超音波の放射ビームをビームステアリングすることができる。
【0026】
また、クロススペクトラムの位相の勾配を評価するにあたり、超音波エコー信号として、超音波エコー信号の基本波成分と超音波エコー信号の高調波成分の少なくとも一方を用いることができる。
【0027】
本発明の変位ビーム測定装置は、測定対象物に超音波を放射するとともに前記測定対象物内で発生する超音波エコー信号を検出する変位・歪検出センサーと、該変位・歪検出センサーと前記測定対象物の相対的な位置および向きを調整する位置調整手段と、前記変位・歪センサーの駆動信号を出力するとともに変位・歪センサーにより検出される前記超音波エコー信号を受信する駆動受信手段と、該駆動受信手段から出力される前記駆動信号を制御するとともに該駆動受信手段により受信される前記超音波エコー信号の処理をするデータ処理手段と、前記超音波エコー信号を記録するデータ記録手段とを備え、前記データ処理手段は、前記計測対象物の関心領域から2時相で取得された前記超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配に基づいて、前記関心領域内の局所変位を計測するにあたり、前記2時相で取得された超音波エコー信号に基づきクロススペクトラムの位相の勾配を求めるものとする。
【0028】
この場合において、上記のデータ処理手段に代えて、前記計測対象物の関心領域から2時相で取得された前記超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配に基づいて、前記関心領域内の局所変位を計測するにあたり、クロススペクトラムのパワーに前記関心領域域内の変位分布に関する大きさおよび空間的な連続性や微分可能性に関する所定の先見的情報を付加して前記関心領域内の変位分布を求めるものにすることができる。また、自己相関法と正則法の両方を備えることができる。
【0029】
また、上記のいずれかの変位ベクトル計測装置を備え、前記データ処理手段は、求めた前記3次元関心領域内の3次元変位ベクトル成分、前記2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分、前記1次元関心領域内の1方向変位成分、前記3次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分または1方向変位成分、または前記2次元関心領域内の1方向変位成分に、帯域制限を施した微分フィルタまたは周波数空間にて帯域制限のある微分フィルタの周波数応答をかけることにより歪テンソル成分を求める歪テンソル計測装置を構成することができる。
【0030】
一方、従来の低次元変位ベクトル分布(歪テンソル分布)計測においては、変位ベクトル(分布)や歪テンソル(分布)の計測を最終目的とした場合には、種々の力源の位置を考慮して変位・歪検出センサーの位置や向きを決定する必要がある。また、従来、ずり弾性率分布の計測を最終目的とした場合には力源およびずり弾性率の与えられる参照領域の相対的な配置を考慮した上で、それらの力源の位置を考慮して変位・歪検出センサーの位置・向きを決定する必要がある。つまり、従来は、変位・歪検出センサー、力源、および参照ずり弾性率の与えられる参照領域(参照物)に関する計測系の構成に関して制約が課せられる。これに対し、本発明によれば、計測系の構成に高い自由度をもたらし、ずり弾性率分布の高精度な計測を実現できる。
【0031】
つまり、本発明は、
▲1▼変位・歪検出センサー5として、機械走査の可能な2次元超音波素子、電子走査型2次元超音波素子アレイ、電子走査型1次元超音波素子アレイ、機械走査が可能な1次元超音波素子アレイを用いることができる。
【0032】
▲2▼開口面合成を行うことに加えて、ビームステアリングを行って計測する。 ビームステアリングを行った場合には、計測された変位ベクトル成分分布の空間的な補間処理が行われる。これらの計測変位分布データに空間微分フィルタを施すことにより、歪テンソル成分分布が評価される。
【0033】
ビームステアリングを行う場合は、ビーム方向の変位計測の精度が直交する走査方向の変位成分の計測精度に較べ各段に高いため、これを有効に利用しようというものである。すなわち、図4に示すように、測定対象物の変形前後の各々において、3次元変位ベクトルを計測する場合は直交する3方向に、2次元変位ベクトルを計測する場合は直交する2方向に、超音波ビームを放射して超音波エコーデータフレームを取得する。そして、各同一方向に放射して得られた2枚の超音波エコーデータフレームから高精度に計測されたビーム方向の変位成分分布から、3次元、または2次元の変位ベクトル分布の計測を実現することもできる。
【0034】
但し、最終的な計測結果として変位ベクトル分布を得るためには、異なる離散座標系(以下、旧座標系)において評価された各変位ベクトル成分分布を、変位ベクトル分布を表現するための一つの離散座標系(以下、新座標系)にて表現する必要がある。そのために、いわゆる、変位成分分布のデータ補間を行う必要があり、具体的には、それらの旧座標系において評価された各変位ベクトル成分分布に対して、信号処理を施して新座標系において所望する位置における変位成分データを得る。この信号処理として、フーリエ変換を行い、そのフーリエ空間において複素エクスポネンシャルを乗ずることによる位相シフトを行うことで、空間領域における空間的なシフティングを実現する。
【0035】
▲3▼計測された変位ベクトル成分分布データの空間的な補間処理、およびビーム強度を走査方向に正弦的に変化させる。
【0036】
この走査方向の振幅を正弦的に変調する際の周波数は高いほど良いが、この変調は超音波ビーム幅で決まる帯域幅を走査方向の周波数軸方向に周波数シフトすることになるため、この周波数は、これにより決まる走査方向の最高周波数がサンプリング定理に基づいて折り返し現象を生じない様に超音波ビーム間隔で決まるサンプリング周波数の1/2以下に設定される必要がある。
【0037】
▲1▼〜▲3▼により、3次元関心領域、2次元関心領域、または、1次元関心領域内において得られた超音波エコー信号の基本波成分、または、送搬周波数が高くなることにより超音波ビーム方向の変位成分の計測精度が向上する高調波成分、且つ、基本波で構成される超音波ビームに較べて超音波走査方向に広帯域(細いビームを実現できる)であることにより超音波走査方向の計測精度を向上させることの可能である高調波成分、または、高調波成分のみではそのSN比が低くなることがあるために超音波エコー信号の全成分を有効に利用する。
【0038】
前述の送信ビームの強度を走査方向に正弦的に変化させる処理を行うことに関しては、3次元変位ベクトル分布(方法1−1〜1−5)および2次元変位ベクトル分布(方法2−1〜2−5、方法4−1〜4−5)を計測する際に、ビーム方向と直交する方向の走査方向の変位成分分布の計測精度を向上させることにある。
【0039】
超音波エコー信号の基本波(n =1)、超音波エコー信号の第n次高調波(n=2〜N)の抽出に関しては、通常のフィルタリングによるものとする。つまり、超音波エコー信号そのものを、抽出した基本波のみを、抽出した第n次高調波(n=2〜N)のみを、用いて所定の手段(後述の方法1−1〜方法1−5、方法2−1〜方法2−5、方法3−1〜方法3−5、方法4−1〜4−5、方法5−1〜5−5、方法6−1〜6−5)により、変位ベクトル計測の実現を可能とする。
【0040】
また、超音波エコー信号の基本波、超音波エコー信号の第n次高調波(n=2〜N)を抽出したものの各々に、所定の手段(後述の方法1−1〜方法1−5、方法2−1〜方法2−5、方法3−1〜方法3−5、方法4−1〜4−5、方法5−1〜5−5、方法6−1〜6−5のいずれか)が施されることにより、その結果として得られる変位の計測データに関して、用いた基本波、第n次高調波(n=2〜N)のクロススペクトラムのパワー比を重み値として計測結果の変位データを平均化して得られる変位データを最終的な計測結果とすることもある。
【0041】
▲4▼加えて、最小二乗法を用いてクロススペクトラムの位相の勾配から変位を計測する際に、変位分布に関する連続性や微分可能性に関する先見的情報を正則化法を適用する所定のデータ処理手段(信号処理)を実施する。
【0042】
これにより、単に3次元関心領域内の3次元変位ベクトル成分分布、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布、1次元関心領域内の1方向変位成分分布を評価する場合に比べ、さらに高精度且つ高分解能なこれらの変位ベクトル分布の計測を実現する。
【0043】
▲5▼また、クロススペクトラムの位相の勾配から大変位を評価する場合には、位相のラッピングを行う、または、相互相関法を使用する必要があったために、計測手順が煩雑なものであったのに対し、データを間引く手順を導入することでこれらの処理を不要として計測手順を格段にシンプルなものとする。これにより、ソフトとして実装する量の軽減および計算時間の短縮化を可能とする。結果的に、2次元歪テンソル分布、歪1成分(ビーム方向)分布だけでなく3次元歪テンソル分布の高精度な計測が可能となり、更に、変位・歪検出センサー、力源、および、参照ずり弾性率の与えられる参照領域に関する計測系の構成に関して高い自由度をもって、関心領域内のずり弾性率空間分布の高精度な計測を実現する。
【0044】
具体的には、2時相(変形前後)に取得された計測対象物の3次元関心空間・2次元または1次元関心領域内からの3次元・2次元または1次元超音波エコー信号の各局所3次元・2次元または1次元クロススペクトラムの位相の勾配から各局所変位(ベクトル)を計測する際に、正則化法を用いて関心空間・領域内の変位(ベクトル)分布に関する空間的な連続性や微分可能性に関する所定の先見的情報を付加した上で、各クロススペクトラムのパワーを用いて正規化された各クロススペクトラムの二乗を重み関数として関心空間・領域内の変位(ベクトル)分布に関して最小二乗法を適用することにより、3次元関心空間内の3次元変位ベクトル成分分布、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布、1次元関心領域内の1方向変位成分分布、3次元関心空間内の2次元変位ベクトル成分分布または1方向変位成分分布、または、2次元関心領域内の1方向変位成分分布を、安定的に高精度且つ高分解能に計測する。
【0045】
また、本発明の変位ベクトル・歪テンソル計測装置は、計測対象物の3次元関心空間・2次元または1次元関心領域内に生じた変位ベクトルまたは歪テンソル分布、もしくはその双方を、3次元関心空間・2次元または1次元領域内にわたって測定した超音波エコーデータ(以下、3次元、2次元、1次元超音波エコー信号と称す。)から計測する装置であって、変位・歪検出センサー(超音波トランスデューサ)および測定対象物の相対的な位置決め・上下左右並進、回転、扇状の回転を機械的に行うための機械走査機構と、変位・歪センサー(超音波トランスデューサ)駆動(送信器・超音波パルサー)・出力調整(受信器・増幅器)手段と、 開口面合成処理[フォーカシング処理(送信固定フォーカシング・受信ダイナミックフォーカシング、または、マルチ送信固定フォーカシング・受信ダイナミックフォーカシング)およびアポダイゼーション(超音波ビームの改善、すなわち、ビーム形状をシャープにするべく各素子から放射される超音波信号に重み付けを行う処理)]を基本とした所定のデータ処理手段と、センサーの出力を記録するための記録手段と、これより変位ベクトル分布を計測し、さらに、これより歪テンソル分布を計測するためのデータ処理(信号処理)手段と、計測された変位ベクトル・歪テンソル成分分布をも記録しておくための記録手段を有することを特徴とする。
【0046】
この場合において、前記データ処理手段は、超音波データの取得(収集)および信号処理を施すことにより計測された前記3次元関心空間内の3次元変位ベクトル、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル、1次元関心領域内の1方向変位成分、3次元関心空間内の2次元変位ベクトルまたは1方向変位成分、2次元空間内の1方向変位成分に帯域制限を施した微分フィルタ(3次元、2次元、または、1次元空間フィルタ)または周波数空間にて帯域制限のある微分フィルタの周波数応答(3次元、2次元、または、1次元周波数応答)をかけることにより歪テンソル成分を求めることを特徴とする。
【0047】
また、少なくとも1つ以上の変位ベクトル場(歪テンソル場)を前記計測対象物の前記3次元関心空間・2次元または1次元関心領域に発生せしめることができるように力源として加圧器または加振器を使用することを特徴とする。この場合において、対象が生体の動き(心拍、脈拍、呼吸など)を力源として、これに同期して前記計測対象物の前記3次元関心空間・2次元または1次元関心領域内に生じる変位ベクトル場(歪テンソル場)を計測することができる。
【0048】
また、超音波トランスデューサのタイプは、次の態様をとることができる。すなわち、変位または歪の検出センサーとして、機械走査の可能な超音波素子、電子走査型2次元超音波素子アレイ(時に機械走査が可能)、または、電子走査型1次元超音波素子アレイ(時に機械走査が可能)を使用して開口面合成を行ってエコー信号を取得することができる。このような変位または歪の検出センサーを用いてエコー信号を取得する際に、検出センサーを対象物に接触させて測定を行うと、この検出センサーの接触部そのものが力源となって、これが加圧・加振器を兼ねることになる。
【0049】
さらに、強力超音波(HIFU)治療を行う場合において、患部を水浸させる場合は、上述の変位または歪の検出センサーおよび対象物を、適切な液体中に浸して測定を行うことにより非接触に計測を行うことができる。
【0050】
また、安定的にずり弾性率分布を計測するために、変位または歪の検出センサーである超音波トランスデューサそのものを力源としてこれを用いて対象を圧迫する場合は、検出センサーと対象物の間にずり弾性率計測のための参照物を挟んだ状態にて計測を行うことが好ましい。この場合、治具を用いて、参照物がトランスデューサ側に装着することもできる。
【0051】
基本的には、前述した態様の変位または歪の検出センサーを用いて開口面合成を行って取得される3次元関心空間、2次元関心領域、または、1次元関心領域内の超音波エコー信号から所定のデータ処理手段(信号処理)により前記3次元関心空間の3次元変位ベクトル成分分布、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布、1次元関心領域内の1次元変位成分分布、3次元関心空間の2次元変位ベクトル成分分布または1次元変位成分分布、または、2次元関心空間の1次元変位成分分布、および、これら変位計測データから歪テンソル成分分布を評価することができる。
【0052】
この場合に、開口面合成を行うとともに、且つ、ビームステアリングを行いながら取得される上述の各次元の領域の超音波エコー信号から所定のデータ処理手段(信号処理)により、上記と同様の各変位ベクトル成分分布、および、これらの変位計測データから歪テンソル成分分布を評価することができる。
【0053】
さらに、この場合において、取得する超音波エコー信号の基本波成分、または、超音波エコー信号の高調波成分、または、これらの全エコー信号成分から所定のデータ処理手段(信号処理)により、上述の各変位ベクトル成分分布、および、これらの変位計測データから歪テンソル成分分布を評価することができる。
【0054】
さらに、この場合において、データ処理手段は、超音波エコー信号として、超音波エコー信号の基本波成分、または、超音波エコー信号の高調波成分、または、これらの全エコー信号成分を用いることができる。
【0055】
また、上述の場合において、超音波トランスジューサーから放射ビーム強度を走査方向に正弦的に変化させながら超音波エコー信号を取得することができる。この場合、走査方向の振幅を正弦的に変調する際の周波数は高いほど良いが、この変調は超音波ビーム幅で決まる帯域幅を走査方向の周波数軸方向に周波数シフトすることになるため、この周波数は、これにより決まる走査方向の最高周波数がサンプリング定理に基づいて折り返し現象を生じない様に超音波ビーム間隔で決まるサンプリング周波数の1/2以下に設定する。
【0056】
さらに、上述を組合わせて、超音波トランスジューサーの開口面合成を行い、且つ、ビームステアリング、および、放射ビーム強度を走査方向に正弦的に変化させながら超音波エコー信号を取得することができる。この場合において、取得する超音波エコー信号の基本波成分、または、超音波エコー信号の高調波成分、または、これらの全エコー信号成分を用いて、各変位ベクトル成分分布を計測することができる。
【0057】
超音波ビームのステアリングを行う場合、所定のデータ処理手段(後述の方法1−1〜方法1−5、方法2−1〜方法2−5、方法3−1〜方法3−5、方法4−1〜4−5、方法5−1〜5−5、方法6−1〜6−5)を用いてビーム方向の変位成分を直交する走査方向の変位成分に較べて高精度に計測できることに基づき、測定対象物の変形前後の各々において、3次元変位ベクトルを計測する場合は直交する3方向に、2次元変位ベクトルを計測する場合は直交する2方向に、超音波ビームを放射して、超音波エコーデータフレームを得、各同一方向に放射して得られた2枚の超音波エコーデータフレームから高精度に計測されたビーム方向の変位成分分布に対してデータ補間(変位成分のフーリエ変換を行い、フーリエ空間において複素エクスポネンシャルを乗ずることによる空間的なシフティングによる補間)を施すことにより、3次元、または、2次元の変位ベクトル分布の高精度計測を実現し、これらの変位計測データから歪テンソル成分分布を評価する。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。図1に、本発明の一実施形態である変位測定方法を適用してなる変位測定装置のブロック構成図を示す。本装置は、計測対象物6の3次元(2次元または1次元)の関心領域7内の変位ベクトル分布及び歪テンソル分布を計測するものである。計測対象物6の表面に接して、または適当な媒質を介して変位・歪検出センサー(超音波トランスデューサ)5が設けられる。
【0059】
変位・歪検出センサー5は、超音波素子または素子群からなる1次元または2次元アレイ型のものが用いられる。変位・歪検出センサー5は、位置調整手段4によって測定対象物6との距離を機械的に調整可能になっている。また、変位・歪検出センサー5と測定対象物6との相対距離を機械的に調整する位置調整手段4'が設けられている。変位・歪検出センサー5を駆動する超音波送信器及び超音波パルサー、および変位・歪検出センサー5から出力されるエコー信号を受信する受信器および増幅器を備えた駆動・出力調整手段5'が備えられている。また、対象物6を積極的に変形させる場合に使用する加圧・加振器などの力源8、およびその位置を機械的に決める位置調整手段4"が備えられている。駆動・出力調整手段5'から出力されるエコー信号は計測制御手段3を介してデータ記録手段2に記録される。データ処理手段1は、データ記録手段2に記録されたエコー信号に基づいて、変位ベクトル成分分布および歪テンソル成分分布を演算により求めるようになっている。この演算結果は、データ記録手段2に格納されるようになっている。なお、計測制御手段22は、データ処理手段1、位置調整手段4、位置調整手段4"および駆動・出力調整手段5'をコントロールするようになっている。なお、測定対象物6が固定されている場合は、位置制御手段4'は不要である。変位・歪検出センサー5が電子走査型の場合は、位置調整手段4は必ずしも必要ない。つまり、関心領域7の大きさによっては、機械走査を行うことなく測定できる場合がある。また、変位・歪検出センサー5は、対象物6に直接接触させて計測する他、強力超音波(HIFU)治療を行う際に治療効果のモニタリングを行う場合は、対象物6を液体槽9中に浸漬し、変位・歪検出センサー5を液体槽9に浸して非接触的に計測を行うこともできる。
【0060】
位置調整手段4は、例えば図3に示すように、変位・歪検出センサー5と対象物6の相対的な位置決めを機械的に行うもので、上下左右並進、回転、扇状の回転を機械的に行う機械走査機構を使用する。また、駆動・出力調整手段5'の出力は、時間的に連続的に、あるいは所定の間隔をおいてデータ記録手段2に記録される。データ処理手段1は、駆動・出力調整手段5'を制御して、3次元の関心領域7(または、2次元関心領域あるいは1次元関心領域)内のエコー信号の基本波(n =1)、第n次高調波(n=2〜N)、または全成分を取得して、後述するデータ処理を施して所望の変位・歪データを求め、データ記録手段2に格納する。
【0061】
駆動・出力調整手段5'は、データ処理手段1の指令に従って、変位・歪検出センサ5との間で送受する超音波信号について、送信固定フォーカシング処理またはマルチ送信固定フォーカシング処理および受信ダイナミックフォーカシング処理のフォーカシング処理を行なう開口合成処理を行なう。また、超音波信号について、アポダイゼーションを行なって、例えば超音波ビームのビーム形状をシャープにするべく各素子から放射される超音波信号に重み付けを行う処理を行いながら、ビームステアリング、または図5に示すように、送信ビームの強度を走査方向に正弦的に変化させる処理を行ない、3次元(または2次元あるいは1次元)関心領域7内のエコー信号を取得する。
【0062】
ここで、走査方向の振幅を正弦的に変調する際の周波数は高いほど良い。しかし、この変調は超音波ビーム幅で決まる帯域幅を走査方向の周波数軸方向に周波数シフトすることになるため、その周波数はこれにより決まる走査方向の最高周波数がサンプリング定理に基づいて折り返し現象を生じないようにする。つまり、超音波ビーム間隔で決まるサンプリング周波数の1/2以下に設定する必要がある。
【0063】
次に、データ処理手段1において行なう信号処理について説明する。なお、データ処理手段1は、以下に説明する演算処理を常時または必要に応じて実行する。
(1)3次元関心領域内の3次元変位ベクトル成分分布の演算処理(後述の方法1−1〜1−5)
(2)2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布の演算処理(後述の方法2−1〜2−5)
(3)1次元関心領域内の1次元(1方向)変位成分分布の演算処理(後述の方法3−1〜3−5)
(4)3次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布の演算処理(後述の方法4−1〜4−5)
(5)3次元関心空間内の1次元(1方向)変位成分分布の演算処理(後述の方法5−1〜5−5)
(6)2次元関心空間内の1次元(1方向)変位成分分布の演算処理(後述の方法6−1〜6−5)
また、ビームステアリングを行った場合は、データ処理手段1において変位ベクトル成分分布の空間的な補間処理を行う。
【0064】
上記演算処理によって求めた変位成分分布に基づいて、データ処理手段1は計測された変位ベクトル場に対して3次元(2次元または1次元)の微分フィルタ処理を行ない、各時刻における歪テンソル成分分布および歪テンソル成分勾配分布を求める。これらの演算結果は、データ記録手段2に記録される。また、これらの演算結果をCRT(カラー・グレイ)等の表示装置にリアルタイムまたは準リアルタイムで表示する。
【0065】
また、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布を静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)の画像等により表すことができる。さらに、各分布の任意の位置における値、およびその値の経時的変化(グラフ)を表示装置に表示する。例えば、生体の断層像を撮像する超音波画像診断装置を併用して、生体組織各部の体積弾性率および密度の空間的変化そのものをリアルタイムで測定して画像化することができる。また、上述の変位ベクトル分布等の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)を重畳表示することも可能である。また、変位ベクトル分布に関してはベクトル線図にて表示することも可能である。
【0066】
以下、本発明の特徴である変位計測および演算処理方法について詳細に説明する。
(I)方法1:3次元変位ベクトル分布の計測
3次元(デカルト座標系(x,y,z))空間内の3次元関心領域7内の3次元変位ベクトル分布を計測するものとする。まず、関心領域7内から一定時間間隔をおいて、つまり変形前後の2つの3次元超音波エコー信号を取得する。そして、以下に示す方法1−1、方法1−2、方法1−3、方法1−4、方法1−5により処理する。すなわち、変形前後の3次元エコー信号の各位置(x,y,z)に、図7に示すように局所空間を設け、その変形前の局所信号の位相特性が一致する(マッチする)局所空間を、図8に示すように、関心領域7内において反復的に探索する。この探索は、逐次、相関性の高くなった局所信号に係る残差ベクトルを用いて前回求めた変位ベクトルの推定結果を修正する。そして、残差ベクトルが所定の条件を満足した場合に、局所空間の大きさを小さくすることにより高分解能化を図る(図9)。これにより、最終的に高精度な3次元変位ベクトルの計測を実現するものである。ここで、x, y, z軸方向のエコー信号のサンプリング間隔は、Δx、Δy、Δzである。
[方法1−1]
方法1に係る処理手順を図10に示す。本処理手順は、以下の処理1〜5により、3次元関心領域内の任意の点(x,y,z)の3次元変位ベクトルd(x,y,z)[= (dx(x,y,z), dy(x,y,z), dz(x,y,z))]を、変形前後における3次元エコー信号空間r(x、y、z )およびr(x、y、z )内の(x,y,z)を中心とする局所3次元エコー信号r(l,m,n)および変形後の局所3次元エコー信号r(l,m,n) [0≦l≦L−1, 0≦m≦M−1, 0 ≦n≦N−1]から評価する。その際、L、M、Nは、ΔxL、ΔyM、ΔzNが、各々、対応する方向の変位成分の大きさ|dx(x,y,z)|、|dy(x,y,z)|、|dz(x,y,z)|の4倍以上に充分に長くなる様に設定される必要がある。
(処理1:点(x,y,z)における位相マッチング)
i回目(i≧1)の3次元変位ベクトルd(x,y,z)[= (dx(x,y,z), dy(x,y,z), dz(x,y,z))]の推定結果d(x,y,z)[= (dx(x,y,z), dy(x,y,z), dz(x,y,z)) ]を得るための位相マッチングを行う。
【0067】
前回のi-1回目の3次元変位ベクトルd(x,y,z)の推定結果di-1(x,y,z) [= (d i-1 (x,y,z), d i-1 (x,y,z), d i-1 (x,y,z))] を修正するべく、(x,y,z)を中心とする局所空間[0≦l≦L−1, 0≦m≦M−1, 0≦n≦N−1]を中央に持つ各方向の長さが2倍で、体積にて8倍の探索空間を変形後のエコー信号空間r(x、y、z )に設定する。但し、d 0(x,y,z)は、数1である。
【0068】
【数1】
Figure 0003887774
この探索空間内エコー信号r ’(l,m,n ) [0≦l≦2L−1, 0≦m≦2M−1, 0≦n≦2N−1]、またはi-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’ i-1 (l,m,n)を3次元フーリエ変換したものに、i-1回目における推定結果d i-1(x,y,z)、または推定結果d i-1(x,y,z)に修正すべき残差変位ベクトルu i-1 (x,y,z) [= (u i-1 x(x,y,z), u i-1 y(x,y,z), u i-1 z(x,y,z))T]の推定結果
【0069】
【数2】
Figure 0003887774
を乗じ、変形後の局所エコー信号の位相を変形前の局所エコー信号と合わせることを試みる。
【0070】
これを逆フーリエ変換することにより、i回目において3次元変位ベクトルd(x,y,z)[= (dx(x,y,z), dy(x,y,z), dz(x,y,z))T]の評価を行うために用いる変形後の局所3次元超音波エコー信号ri (l,m,n)を、(x,y,z)を中心とする探索空間内エコー信号r’i (l,m,n)内の中央にて得る。
【0071】
尚、位相マッチングは、変形前の局所エコー信号の位相を、変形後の局所エコー信号の位相に合わせることでも同様に実現できる。但し、変形前のエコー信号空間r 1(x,y,z)の(x,y,z) を中心とする局所空間[0≦l≦L−1, 0≦m≦M−1, 0≦n≦N−1] を中央にもつ探索空間内のエコー信号r ’1(l,m,n) [0≦l≦2L−1, 0≦m≦2M−1, 0≦n≦2N−1] 、またはi-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r ’ i-1 1(l,m,n)の3次元フーリエ変換したものには、
【0072】
【数3】
Figure 0003887774
が掛けられる。
(処理2: 点(x,y,z)の3次元残差変位ベクトルの推定)
変形前の局所3次元超音波エコー信号r 1(l,m,n)および位相マッチングを施した変形後の局所3次元超音波エコー信号ri (l,m,n)の3次元フーリエ変換R1(l,m,n)およびRi (l,m,n)を評価し、これらより、(3)式の局所3次元エコークロススペクトラムを求める。
【0073】
【数4】
Figure 0003887774
また、変形前の局所3次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、ri 1(l,m,n)およびr2(l,m,n)のクロススペクトラム;
【0074】
【数5】
Figure 0003887774
但し、0≦l≦L−1, 0≦m≦M−1, 0≦n≦N−1と表されることに基づき、その位相は(5)式で表される。
【0075】
【数6】
Figure 0003887774
但し、Re[・]およびIm[・]は、各々、・の実数成分、虚数成分の勾配に関してクロススペクトラムの2乗;
【0076】
【数7】
Figure 0003887774
を最小化することにより、点(x,y,z)の3次元変位ベクトルd(x,y,z)のi−1回目の評価結果di−1(x,y,z)に修正すべき3次元残差変位ベクトルu i-1 (x,y,z) [= (u i-1 x(x,y,z), u i-1 y(x,y,z), u i-1 z(x,y,z))T]の推定値(数8)を得る。
【0077】
【数8】
Figure 0003887774
具体的には、次の(7)式の連立方程式を解くことになる。
【0078】
【数9】
Figure 0003887774
ここで、3次元変位ベクトルd(x,y,z)が大きい場合には、3次元残差変位ベクトルu i (x,y,z)は、クロススペクトラム((3)式)の位相を周波数空間(l,m,n)においてアンラッピングした上で評価する必要がある。
【0079】
また、3次元変位ベクトルd(x,y,z)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、クロススペクトラム((3)式)に3次元逆フーリエ変換を施すことにより得られる相互相関関数のピーク位置を検出するいわゆる相互相関法を使用することにより、クロススペクトラム((3)式)の位相を周波数空間(l,m,n)においてアンラッピングすることなく、3次元残差変位ベクトルu i (x,y,z)を評価できる。詳細には、相互相関法により3次元変位ベクトルのx, y, z軸方向の変位成分を超音波エコー信号のサンプリング間隔(データ間隔)Δx、Δy、Δzの整数倍の大きさで評価する。例えば、閾値correTratioに対して、
【0080】
【数10】
Figure 0003887774
または、閾値correTratioに対して、
【0081】
【数11】
Figure 0003887774
が満足された後、これを初期値として、3次元残差変位ベクトルu i (x,y,z)をクロススペクトラム((3)式)の位相の勾配から評価すればよい。
【0082】
相互相関法を施した後においては、|u i (x,y,z)|≦Δx/2、|u i (x,y,z)|≦Δy/2、|u i (x,y,z)|≦Δz/2が満足されることが経験的に確認されている。しかし、クロススペクトラム((3)式)の位相をアンラッピングせずに3次元残差変位ベクトルu i (x,y,z)の推定を可能とするための必要十分条件は、(9)、(9’)式の条件を満たせば十分である。
【0083】
【数12】
Figure 0003887774
したがって、相互相関法を施した後にクロスススペクトラムの位相の勾配から評価する際には、常に(9)式または(9’)式の条件が満足される様に、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことにより、データ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いて評価する。そして、反復回数iの増加に共って3次元残差変位ベクトル成分u i x(x,y,z), u i y(x,y,z), u i z(x,y,z)の大きさが小さくなるに連れて、超音波エコー信号の各方向のデータ密度を元に戻して行き、最終的に取得された元のデータ密度の超音波エコー信号を用いて評価する。したがって、クロススペクトラムの位相の勾配から評価を行う初期段階においては、例えば、元のサンプリング間隔の3/2倍や2倍のデータ間隔の超音波エコー信号を用いて評価すればよい。また、超音波エコー信号の各方向のデータ密度は3/2倍や2倍に戻して行けばよい。
また、3次元変位ベクトルd(x,y,z)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引いた超音波エコー信号を用いることにより、クロススペクトラム((3)式)の位相を周波数空間(l,m,n)においてアンラッピングすることなく、3次元残差変位ベクトルu i (x,y,z)を評価できる。詳細には、(9)式または(9’)式の条件が満足される様に、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことによりデータ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いて評価する。そして、反復回数iの増加に伴って3次元残差変位ベクトル成分u i x(x,y,z), u i y(x,y,z), u i z(x,y,z)の大きさが小さくなるに連れて、超音波エコー信号の各方向のデータ密度を元の高さに戻して行き(例えば、2倍ずつ。)、最終的に取得された元のデータ密度の超音波エコー信号を用いて評価する。
超音波エコー信号のデータの間隔を小さくするための条件としては、例えば、ある閾値stepTratioに対して、(10)、(10’)式を基準とする。
【0084】
【数13】
Figure 0003887774
尚、(10)式または(10’)式の条件式は、各方向の成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとにデータ間隔が小さくされることもある。以下の方法1−2、方法1−3、方法1−4、方法1−5においても同様である。
(処理3: 点(x,y,z)の3次元変位ベクトル推定結果の更新)
これより、3次元変位ベクトルd (x,y,z)のi回目の推定結果は、次の(11)式のように評価される。
【0085】
【数14】
Figure 0003887774
(処理4: 3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所空間の大きさを縮小する条件)
3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うために、各点における3次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所空間の大きさを小さくする。そのための基準は以下の通りであり、これらの基準を満足するまで処理1、処理2、および処理3を繰り返し、満足された際には、局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(12)式または(12’)式の条件を基準とする。
【0086】
【数15】
Figure 0003887774
尚、(12)式または(12’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理5: 点(x,y,z)における3次元変位ベクトルの反復推定の終了条件)
各点における3次元変位ベクトルの反復的推定を終えるための基準は以下の通りであり、これらの基準を満足するまで処理1、処理2、および処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioに対して、(13)式または(13’)式の条件を基準とする。
【0087】
【数16】
Figure 0003887774
(処理6)
上述の処理1、処理2、処理3、処理4、処理5を3次元関心領域内の全ての点において施すことにより、関心領域内の3次元変位ベクトル成分分布を得ることができる。
【0088】
尚、3次元変位ベクトルの反復推定の際のその初期値((1)式)は、特に、測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトルとする。
[方法1−1の限界]
上述した方法1−1により3次元関心空間内の各点(x,y,z)に関して反復的に3次元変位ベクトルd(x,y,z)の推定結果を更新した場合、局所3次元エコー信号のSN比の如何によっては、特に初期段階の残差ベクトルの推定時において突発的に大きなエラーを生じて、位相マッチングが発散してしまうことがある。例えば、処理2の(7)式を解く際、または、処理1の相互相関関数のピーク位置を検出する際におきることがある。
【0089】
各点において、位相マッチングが発散する可能性は、例えば、ある閾値belowTratioに対して、(14)または(14’)式の条件により確認できる。
【0090】
【数17】
Figure 0003887774
これを防ぐべく、ときに(14)式または(14’)式の条件式を用いて、以下に説明する方法1−2、方法1−3、方法1−4、方法1−5を適用し、残差ベクトルの推定時において生じる突発的な推定エラーの大きさを低減することにより、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐことができる。これにより、超音波エコー信号のSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現することができる。
[方法1−2]
本方法1−2のフローチャートを図11に示す。本方法は、前述の方法1−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。これにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現できる。
【0091】
具体的には、方法1−1とは反復推定の流れが異なり、i回目(i≦1)の推定において、以下の処理を行なう。
(処理1:3次元残差変位ベクトル分布推定)
3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび全ての点(x,y,z)における3次元残差変位ベクトルの推定を行なう。つまり、3次元関心空間内の全ての点において、方法1−1の処理1および処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、i回目における3次元残差ベクトル分布の推定結果(数8)を得る。
(処理2:3次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)
次に、i回目における3次元残差ベクトル分布の推定結果を用いてi−1回目の3次元変位ベクトル分布の推定結果を(15)式のように更新する。
【0092】
【数18】
Figure 0003887774
次に、この推定結果に3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こして、(16)式の3次元変位ベクトル分布の推定値を得る。
【0093】
【数19】
Figure 0003887774
これにより、方法1−1の処理2中の(7)式における残差ベクトルの推定時の空間的に突発的に生じる推定エラーの大きさを低減する。したがって、本法1−2の処理1の位相マッチングは、(16)式により空間的に平滑化された各点(x,y,z)の3次元変位ベクトル分布の推定値を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r2(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索空間内信号r ’(l,m,n) [0≦l≦2L−1, 0≦m≦2M−1, 0≦n≦2N−1]に対して行われる。
(処理3:3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所空間の大きさを縮小する条件))
この処理の特徴は、3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点において3次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所空間の大きさを小さくし、または3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所空間の大きさを小さくすることにある。
3次元関心空間内の各点における3次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所空間の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。これらの基準を満足するまで、各位置にて使用される局所空間の大きさを変えることなく、本法1−2の処理1および本法1−2の処理2を繰り返す。そして、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(17)式または(17’)式の条件を基準とすることができる。
【0094】
【数20】
Figure 0003887774
尚、(17)式または(17’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
【0095】
3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所空間の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。これらの基準を満足するまでその局所空間の大きさを変えることなく、本法1−2の処理1および本法1−2の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(18)式または(18’)式の条件を基準とすることができる。
【0096】
【数21】
Figure 0003887774
尚、(18)式または(18’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4:3次元変位ベクトル分布の反復推定の終了条件)
3次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りである。これらの基準を満足するまで本法1−2の処理1、本法1−2の処理2、および本方法1−2の処理3を繰り返す。
【0097】
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(19)式または(19’)式の条件を基準とすることができる。最終的な推定結果は、(15)式または、(16)式より得られる。
【0098】
【数22】
Figure 0003887774
尚、3次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((1)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用してもよい。
[方法1−3]
本方法1−3のフローチャートを図12に示す。本方法は、前述の方法1−1を用いた場合の残差ベクトルの推定において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。前述の(14)式または(14’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法1−1および方法1−2を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現するものである。
【0099】
具体的には、まず、方法1−2の反復推定(方法1−2の処理1、処理2、処理3、および処理4)の流れに従うものとする。そして、i回目(i≧1)の推定において、以下の処理を施す。
【0100】
すなわち、方法1−2の処理1により、3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび全ての点(x,y,z)における3次元残差変位ベクトルを推定した後の処理である。すなわち、関心空間内の全ての点において方法1−1の処理1および処理2を1回ずつ行って3次元変位ベクトル分布のi-1回目における推定結果に対する3次元残差ベクトル分布u(x,y,z)の推定結果(数8)を得た後の処理である。
【0101】
この間において、(14)式または(14’)式の条件式が満足されなければ、方法1−1に従うこととする。また、(14)式または(14’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間が確認された場合は、方法1−2の処理2中において、(14)式または(14’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間を中心とする充分に広い空間内において、または、関心空間全体において、(15)式より得られる3次元変位ベクトル分布d(x,y,z)の推定結果d(x,y,z)に、次の(20)式のように、3次元低域通過型フィルタ、または3次元メディアンフィルタを施こす。
【0102】
【数23】
Figure 0003887774
これにより、残差ベクトルの推定時に、方法1−1の処理2中の(7)式において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
【0103】
その結果に基づいて、方法1−1の処理5または方法1−2の処理4により反復推定を終了する。したがって、最終的な推定結果は、(11)式または(15)式により得られる値、または(20)式より得られる推定値である。
【0104】
尚、3次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((1)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
[方法1−4]
本方法1−4のフローチャートを図13に示す。本方法は、前述の方法1−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時の処理2中の(7)式において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。これにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現できる。
【0105】
具体的には、方法1−1とは反復推定の流れが異なり、i回目(i≧1)の推定において、以下に述べる処理を施す。
(処理1:3次元残差変位ベクトル分布推定)
ここで、3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび3次元残差変位ベクトル分布を推定する。3次元関心空間内の全ての点において方法1−1の処理1を1回行う。
【0106】
次に、3次元変位ベクトル分布d(x,y,z)のi-1回目の推定結果di‐1(x,y,z)の3次元残差ベクトル分布u i (x,y,z)[(u i x(x,y,z), u i y(x,y,z), u i z(x,y,z))T]の推定結果:
【0107】
【数24】
Figure 0003887774
を評価するべく、全ての点(x,y,z)に関して、変形前の局所3次元超音波エコー信号r(l,m,n)および位相マッチングを施した変形後の局所3次元超音波エコー信号r (l,m,n)の3次元フーリエ変換R(l,m,n)およびR (l,m,n)を評価する。これより求まる各局所3次元エコークロススペクトラム((3)式)の位相の勾配に関して、または変形前の局所3次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r (l,m,n)およびr(l,m,n)のクロススペクトラムの位相の勾配に関して、
【0108】
【数25】
Figure 0003887774
【0109】
【数26】
Figure 0003887774
【0110】
【数27】
Figure 0003887774
【0111】
【数28】
Figure 0003887774
をベクトルuiに関して最小化することとなる。
【0112】
しかし、未知3次元残差変位ベクトル分布の自乗ノルム||ui||2、そのベクトル成分の3次元勾配分布の自乗ノルム||Gui||2、および、そのベクトル成分の3次元ラプラシアン分布の自乗ノルム||GTGui||2、および、そのベクトル成分の3次元ラプラシアンの3次元勾配分布の自乗ノルム||GGTGui||2は正定値であるため、error(ui)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位ベクトル分布ui(x,y,z)に関する連立方程式:
(FTF + α1iI +α2iGTG + α3iGTGGTG + α4iGTGGTGGTG)ui = FTa
(22)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるui(x,y,z)の推定エラーを低減し、安定的に3次元変位ベクトル分布d(x,y,z)のi-1回目の推定結果di−1(x,y,z)を更新するための3次元残差ベクトル分布ui(x,y,z)の推定結果を得る。
ここで、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、以下に示す四つの指標を代表に使用することがある。正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)に設定された局所空間内の3次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所空間においては値は大きく、SN比が高い局所空間においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)で評価されるクロススペクトラムの逆3次元フーリエ変換により評価される3次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所空間においては値は大きく、ピーク値の高い局所空間においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の各変位成分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための指標として、各反復時において各位置(x,y,z)にて評価された3次元相互相関関数のピークの鋭さ(関数の各方向の2回微分値)を使用して、緩やかな(2回微分値の小さい)スキャン方向の変位成分にかかる値は大きく、鋭い(2回微分値の大きい)ビーム方向の変位成分にかかる値は小さく設定されることがある。例えば、その微分値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための指標として、各反復時において各位置(x,y,z)にて評価された3次元相互相関関数のメインローブの幅(関数の各方向の半値幅)を使用して、狭いビーム方向の変位成分にかかる値は大きく、広いスキャン方向の変位成分にかかる値は小さく設定されることがある。例えば、その半値幅に反比例する様に設定されることがある。
【0113】
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、上記四つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの績に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位ベクトル(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2:3次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)
i回目における3次元残差ベクトル分布ui(x,y,z)の推定結果を用いて、(23)式のように、i-1回目の3次元変位ベクトル分布の推定結果を更新する。
【0114】
【数29】
Figure 0003887774
ときに、この推定結果に、(24)式の3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こして、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることができる。
【0115】
【数30】
Figure 0003887774
したがって、本法1−4の処理1中の位相マッチングは、(22)式より得られた各点(x,y,z)の3次元残差ベクトルデータui(x,y,z)、(23)式より得られた各点(x,y,z)の3次元ベクトルデータdi(x,y,z)、または、(24)式より空間的に平滑化された各点(x,y,z)の3次元ベクトルデータの推定値を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索空間内信号r’(l,m,n)に対して行われる。
(処理3:3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所空間の大きさを縮小する条件))
3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点において3次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所空間の大きさを小さくする。または、3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所空間の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点における3次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所空間の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所空間の大きさを変えることなく、本法1−4の処理1および本法1−4の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(25)式または(25’)式の条件を基準とする。
【0116】
【数31】
Figure 0003887774
尚、(25)式または(25’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
【0117】
3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所空間の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所空間の大きさを変えることなく、本法1−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(26)式または(26’)式の条件を基準とする。
【0118】
【数32】
Figure 0003887774
尚、(26)式または(26’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4:3次元変位ベクトル分布の反復推定の終了条件)
3次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法1−4の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
【0119】
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(27)式または(27’)式の条件を基準とする。
【0120】
【数33】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(23)式により得られる3次元変位ベクトル、または、(24)式より得られるその推定値である。
【0121】
尚、3次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((1)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。
[方法1−5]
本法1−5のフローチャートを図14に示す。本方法は、前述の方法1−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時の処理2中の(7)式において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。前述の(14)式または(14’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法1−1および方法1−4を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現するものである。
【0122】
具体的には、まず、方法1−4の反復推定の処理1、処理2、処理3、および、処理4の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、以下の処理を行なう。
方法1−4の処理1において、3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび3次元残差変位ベクトル分布の推定の後、すなわち、関心空間内の全ての点において方法1−1の処理1((1)式)を行なう。さらに、正則化法を用いて、安定的に、3次元変位ベクトル分布のi-1回目における推定結果に対する3次元残差ベクトル分布の推定結果を得、その結果、関心空間内において(14)式または(14’)式の条件式が満足されなければ、方法1−1に従う。(14)式または(14’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間が確認された場合は、次のようにする。
【0123】
すなわち、方法1−4の処理2において、(14)式または(14’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間を中心とする充分に広い空間内において、または、関心空間全体において、(23)式より得られる3次元変位ベクトル分布d(x,y,z)の推定結果d(x,y,z)に、(28)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、残差ベクトルの推定誤差の低減を図る。
【0124】
【数34】
Figure 0003887774
これにより、方法1−1の処理5または1−4の処理4により反復推定を終了する。したがって、最終的な推定結果は、(11)式または(23)式により得られる値、または、(28)式より得られる推定値である。
【0125】
尚、3次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((1)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。
(II)方法2:2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布計測法
3次元(デカルト座標系(x,y,z))空間内の3次元関心空間(x,y,z)内の3次元変位ベクトルを計測する場合と同様に、あるz座標における2次元関心領域(x,y)内の2次元変位ベクトル分布を計測するべく、この関心領域内からの変形前後における2次元超音波エコー信号r(x,y)およびr(x,y)を取得した場合を考える。以下に示す方法2−1、方法2−2、方法2−3、方法2−4、方法2−5は、これらの変形前後の2次元超音波エコー信号r(x,y)およびr(x,y)の各位置(x,y)に、図15に示すように局所領域を設ける。そして、変形前の局所信号の位相特性が一致する(マッチする)局所領域をr(x,y)内にて反復的に探索する(図16)。そして、逐次、相関性の高くなった局所信号を用いて評価される残差ベクトルを用いて前回の変位ベクトルの推定結果を修正していき、且つ、評価された残差ベクトルがある条件を満足した場合に局所領域の大きさを小さくすることにより高分解能化を図る(図16)。これにより、最終的に高精度な2次元変位ベクトルの計測を実現する。ここで、x, y軸方向の超音波エコー信号のサンプリング間隔は、Δx、Δyである。
[方法2−1]
方法2−1のフローチャートを図10に示す。本方法は、以下の処理1〜5により、あるz座標における2次元関心領域内の任意の点(x,y)の2次元変位ベクトルd(x,y)[= (dx(x,y), dy(x,y))T]を、変形前後における2次元超音波エコー信号領域r(x,y)およびr(x,y)内の(x,y)を中心とする局所2次元超音波エコー信号r(l,m)および変形後の局所2次元超音波エコー信号r(l,m) [0≦l≦L−1, 0≦ m ≦M−1]から評価する。その際、L、Mは、ΔxL、ΔyMが、各々、対応する方向の変位成分の大きさ|dx(x,y,z)|、|dy(x,y,z)|の4倍以上に充分に長くなる様に設定される必要がある。
(処理1: 点(x,y,)における位相マッチング)
i回目(i≧1)の2次元変位ベクトルd(x,y)[= (dx(x,y), dy(x,y))T]の推定結果di(x,y)[= (dix(x,y), diy(x,y))T]を得るための位相マッチングを行う。
前回のi-1回目の2次元変位ベクトルd(x,y)の推定結果di-1(x,y) [= (di-1 x(x,y), di-1 y(x,y))T]を修正するべく、(x,y)を中心とする局所領域[0≦l≦L−1, 0≦ m ≦M−1]を中央に持つ各方向の長さが2倍(面積が4倍)である探索領域を変形後のエコー信号空間r(x,y)に設定する。但し、d(x,y)は、(29)式のとおりである。
【0126】
【数35】
Figure 0003887774
この探索領域内エコー信号r(l,m) [0≦l≦2L−1, 0≦ m ≦2M−1]、またはi-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’i− 1 (l,m)を2次元フーリエ変換したものに、i-1回目における推定結果di-1(x,y),または推定結果di-1(x,y)に修正すべき残差変位ベクトルui −1(x,y)[= (ui-1 x(x,y), ui −1 y(x,y))T]の推定結果
【0127】
【数36】
Figure 0003887774
を乗じ、変形後の局所エコー信号の位相を変形前の局所エコー信号と合わせることを試みる。
【0128】
これを逆フーリエ変換することにより、i回目において2次元変位ベクトルd(x,y)[= (dx(x,y), dy(x,y))T]の評価を行うために用いる変形後の局所2次元超音波エコー信号r (l,m)を(x,y)を中心とする探索領域内エコー信号r’ (l,m)内の中央にて得る。
【0129】
尚、位相マッチングは、変形前の局所エコー信号の位相を変形後の局所エコー信号の位相と合わせることでも同様に実現できる。但し、変形前のエコー信号空間r(x,y)内の(x,y)を中心とする局所領域[0≦l≦L−1, 0≦ m ≦M−1]を中央にもつ探索領域内のエコー信号r’(l,m) [0≦l≦2L−1, 0≦ m ≦2M−1] 、またはi-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’i−1 (l,m)の2次元フーリエ変換したものには、
【0130】
【数37】
Figure 0003887774
掛けられる。
(処理2: 点(x,y)の2次元残差変位ベクトルの推定)
変形前の局所2次元超音波エコー信号r(l,m)および位相マッチングを施した変形後の局所2次元超音波エコー信号r’(l,m)の2次元フーリエ変換R(l,m)およびR’(l,m)を評価し、これらより、(31)式の局所2次元エコークロススペクトラムを求める。
【0131】
【数38】
Figure 0003887774
また、変形前の局所3次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r (l,m)およびr(l,m)のクロススペクトラム:
【0132】
【数39】
Figure 0003887774
但し、0≦l≦L−1, 0≦ m ≦M−1と表されることに基づき、その位相:
【0133】
【数40】
Figure 0003887774
但し、Re[・]およびIm[・]は、各々、・の実数成分、虚数成分、の勾配に関して、クロススペクトラムの二乗:
【0134】
【数41】
Figure 0003887774
を最小化することにより、点(x,y)の2次元変位ベクトルd(x,y)のi-1回目の評価結果di-1(x,y)に修正すべき2次元残差変位ベクトルui(x,y)[= (ui x(x,y), ui y(x,y))T]の推定値(数42)を得る。
【0135】
【数42】
Figure 0003887774
具体的には、以下の連立方程式を解くこととなる。
【0136】
【数43】
Figure 0003887774
ここで、2次元変位ベクトルd(x,y)が大きい場合には、2次元残差変位ベクトルui(x,y)は、クロススペクトラム((31)式)の位相を周波数空間(l,m)においてアンラッピングした上で評価する必要がある。
また、2次元変位ベクトルd(x,y)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、クロススペクトラム((31)式)に2次元逆フーリエ変換を施すことにより得られる相互相関関数のピーク位置を検出するいわゆる相互相関法を使用することにより、クロススペクトラム((31)式)の位相を周波数空間(l,m)においてアンラッピングすることなく2次元残差変位ベクトルui(x,y)を評価でき、詳細には、相互相関法により2次元変位ベクトルのx, y軸方向の変位成分を超音波エコー信号のサンプリング間隔(データ間隔)Δx、Δyの整数倍の大きさで評価し、例えば、閾値correTratioに対して、(36)式または(36’)式の条件を満足することを基準とする。
【0137】
【数44】
Figure 0003887774
(36)式または(36’)式の条件が満足された後、これを初期値として2次元残差変位ベクトルui(x,y)をクロススペクトラム((31)式)の位相の勾配から評価すればよい。相互相関法を施した後においては、|u (x,y)|≦Δx/2、|u (x,y)|≦Δx/2が満足されることが経験的に確認されている。これはクロススペクトラム((31)式)の位相をアンラッピングせずに2次元残差変位ベクトルui(x,y)の推定を可能とするための必要十分条件である(37)式を満足する。
【0138】
【数45】
Figure 0003887774
また、2次元変位ベクトルd(x,y)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引いた超音波エコー信号を用いることにより、クロススペクトラム((31)式)の位相を周波数空間(l,m)においてアンラッピングすることなく2次元残差変位ベクトルui(x,y)を評価できる。詳細には、(37)式、または(37)式を十分に満足する(37’)式の条件が満足される様に、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことによりデータ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いて評価する。
【0139】
【数46】
Figure 0003887774
そして、反復回数iの増加に共って2次元残差変位ベクトル成分ui x(x,y)、ui y(x,y)の大きさが小さくなるに連れて、超音波エコー信号の各方向のデータ密度を元の高さに戻して行き(例えば、2倍ずつ。)、最終的に取得された元のデータ密度の超音波エコー信号を用いて評価する。
超音波エコー信号のデータの間隔を小さくするための条件としては、例えば、ある閾値stepTratioに対して、(38)式または(38’)式の条件を基準とすることができる。
【0140】
【数47】
Figure 0003887774
尚、(38)式または(38’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとにデータ間隔が小さくされることもある。以下の方法2−2、方法2−3、方法2−4、方法2−5においても同様である。
(処理3: 点(x,y)の2次元変位ベクトル推定結果の更新)
これより、2次元変位ベクトルd(x,y)のi回目の推定結果は、(39)式で評価される。
【0141】
【数48】
Figure 0003887774
(処理4: 2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うために各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを小さくする。そのための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで処理1、処理2および処理3を繰り返し、満足された際には、局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(40)式または(40’)式の条件を基準とすることができる。
【0142】
【数49】
Figure 0003887774
尚、(40)式または(40’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理5: 点(x,y)における2次元変位ベクトルの反復推定の終了条件)
各点における2次元変位ベクトルの反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで処理1、処理2および処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioに対して、(41)または(41’)式を基準とすることができる。
【0143】
【数50】
Figure 0003887774
(処理6)
処理1、処理2、処理3、処理4、処理5を2次元関心領域内の全ての点において施すことにより、関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布を得る。
【0144】
尚、2次元変位ベクトルの反復推定の際のその初期値((29)式)は、特に、測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトルとする。
[方法2−1の限界]
方法2−1により2次元関心領域内の各点(x,y)に関して反復的に2次元変位ベクトルd(x,y)の推定結果を更新した場合、局所2次元エコー信号のSN比の如何によっては、特に初期段階の残差ベクトルの推定時において突発的に大きなエラーを生じることがある。これにより、例えば、処理2の(35)式を解く際、または、相互相関関数のピーク位置を検出する際に、処理1の位相マッチングが発散してしまうことがある。
【0145】
各点において、位相マッチングが発散する可能性は、例えば、ある閾値belowTratioに対して、(42)または(42’)式により確認できる。
【0146】
【数51】
Figure 0003887774
これを防ぐべく、ときに(42)式または(42’)式の条件式を用いて、以下の方法2−2、方法2−3、方法2−4、方法2−5が使用されることがある。すなわち、以下の方法2−2、方法2−3、方法2−4、方法2−5は、前述の方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時において、つまり方法2−1の処理2中の(35)式を解く、または相互相関関数のピーク位置を検出する時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減することにより、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ。これにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度な2次元変位ベクトル計測を実現する。
[方法2−2]
本方法2−2のフローチャートを図11に示す。本方法は、方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定において方法2−1の処理2中の(35)式の実行時に生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減する。これにより、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防いで、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトル計測を実現する。
【0147】
具体的には、方法2−1とは反復推定の流れが異なり、i回目(i≧1)の推定において、以下の処理を行なう。
(処理1:2次元残差変位ベクトル分布推定)
ここでは、2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび全ての点(x,y)における2次元残差変位ベクトルの推定を行なう。2次元関心領域内の全ての点において方法2−1の処理1((29)式)および方法2−1の処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、i回目における2次元残差ベクトル分布u(x,y)の推定結果(数40)を得る。
(処理2:2次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)
i回目における2次元残差ベクトル分布u(x,y)の推定結果(数40)を用いてi-1回目の2次元変位ベクトル分布の推定結果を(43)式により更新する。
【0148】
【数52】
Figure 0003887774
次に、この推定結果に、(44)または(44’)式の2次元低域通過型フィルタ、または2次元メディアンフィルタを施こす。
【0149】
【数53】
Figure 0003887774
これにより、残差ベクトルの推定時における方法2−1の処理2中の(35)式の実行時において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。したがって、本法2−2の処理1の位相マッチングは、この空間的に平滑化された各点(x,y)の2次元ベクトル分布の推定結果を用いて、変形後の2次元エコー信号空間r(x,y)内の各位置(x,y)に関する探索領域内信号r (l,m) [0≦l≦2L−1, 0≦ m ≦2M−1] に対して行われる。
(処理3: 2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うため、2次元関心領域内の各点において2次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。または、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
2次元関心領域内の各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。以下の基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法2−2の処理1および本法2−2の処理2を繰り返す。それらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(45)式または(45’)式の条件を基準とする。
【0150】
【数54】
Figure 0003887774
尚、(45)式または(45’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
【0151】
2次元関心領域内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。以下の基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法2−2の処理1および本法2−2の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(46)式または(46’)式の条件を基準とする。
【0152】
【数55】
Figure 0003887774
尚、(46)式または(46’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4: 2次元変位ベクトル分布の反復推定の終了条件)
2次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りである。以下の基準を満足するまで本法2−2の処理1、本法2−2の処理2、および本方法2−2の処理3を繰り返す。
【0153】
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(47)または(47’)式を基準とすることができる。
【0154】
【数56】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(43)式により得られる2次元変位ベクトル分布の推定値、または(44)式より得られる平滑された2次元変位ベクトル分布の推定値である。
【0155】
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
[方法2−3]
本法2−3のフローチャートを図12に示す。本方法は、前述の方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時における方法2−1の処理2中の(35)式の実行時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減して、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。つまり、前述の(42)式または(42’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1および方法2−2を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトル計測を実現する。
【0156】
具体的には、まず、方法2−2の反復推定(方法2−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次のように処理する。
【0157】
まず、方法2−2の処理1(2次元残差変位ベクトル分布推定 (2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび全ての点(x,y)における2次元残差変位ベクトルの推定))の後、すなわち、関心領域内の全ての点において方法2−1の処理1((29)式)および方法2−1の処理2を1回ずつ行う。そして、2次元変位ベクトル分布d(x,y)のi-1回目における推定結果に対する2次元残差ベクトル分布u(x,y)の推定結果を得た後、この間において、(42)式または(42’)式の条件式が満足されなければ方法2−1に従う。一方、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域が確認された場合は、次の方法による。
【0158】
すなわち、方法2−2の処理2(2次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)中において、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域を中心とする充分に広い領域内において、または関心領域全体において、(43)式より得られる2次元変位ベクトル分布d(x,y)の推定結果に、(48)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こす。これにより、残差ベクトルの推定時(方法2−1の処理2中の(35)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
【0159】
【数57】
Figure 0003887774
その結果、方法2−1の処理5または2−2の処理4により反復推定を終了するものとする。したがって、最終的な推定結果は、(39)式または(43)式により得られるdi(x,y)、または、(48)式より得られる平滑された推定値である。
【0160】
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
[方法2−4]
本方法2−4のフローチャートを図13に示す。本方法は、前述の方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定(方法2−1の処理2中の(35)式)時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。これにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトル計測を実現する。
【0161】
具体的には、方法2−1とは反復推定の流れを異とし、i回目(i≧1)の推定において、次のように処理をする。
(処理1: 2次元残差変位ベクトル分布推定)
2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトル分布を推定する。2次元関心領域内の全ての点において方法2−1の処理1((29)式)を1回行う。
【0162】
次に、2次元変位ベクトル分布d(x,y)のi-1回目の推定結果d -1(x,y)の2次元残差ベクトル分布u(x,y)[ui x(x,y), ui y(x,y))T]の推定結果;
【0163】
【数58】
Figure 0003887774
を評価すべく、全ての点(x,y)に関して、変形前の局所2次元超音波エコー信号r(l,m)および位相マッチングを施した変形後の局所2次元超音波エコー信号ri 2(l,m)の2次元フーリエ変換R(l,m)およびRi 2(l,m)を評価する。そして、これより求まる各局所2次元エコークロススペクトラム((31)式)の位相の勾配、あるいは変形前の局所2次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、ri (l,m)およびr2(l,m)のクロススペクトラムの位相の勾配に関して、
【0164】
【数59】
Figure 0003887774
および正則化法を施し、すなわち、2次元残差ベクトル分布u(x,y)からなるベクトルuiに関する汎関数:
【0165】
【数60】
Figure 0003887774
【0166】
【数61】
Figure 0003887774
【0167】
【数62】
Figure 0003887774
をベクトルuiに関して最小化することとなる。しかし、未知2次元残差変位ベクトル分布の自乗ノルム||ui||2、そのベクトル成分の2次元勾配分布の自乗ノルム||Gui||2、そのベクトル成分の2次元ラプラシアン分布の自乗ノルム||GTGui||2、および、そのベクトル成分の2次元ラプラシアンの2次元勾配分布の自乗ノルム||GGTGui||2は正定値であるため、error(ui)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位ベクトル分布ui(x,y)に関する連立方程式
(FTF + α1iI +α2iGTG + α3iGTGGTG + α4iGTGGTGGTG)ui = FTa
(50)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるu(x,y)の推定エラーを低減し、安定的に2次元変位ベクトル分布d(x,y)のi-1回目の推定結果di−1(x,y)を更新するための2次元残差ベクトル分布d (x,y)の推定結果を得る。
ここで、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、以下に示す四つの指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)に設定された局所領域内の2次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)で評価されるクロススペクトラムの逆2次元フーリエ変換により評価される2次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の各変位成分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための指標として、各反復時において各位置(x,y)にて評価された2次元相互相関関数のピークの鋭さ(関数の各方向の2回微分値)を使用して、緩やかな(2回微分値の小さい)スキャン方向の変位成分にかかる値は大きく、鋭い(2回微分値の大きい)ビーム方向の変位成分にかかる値は小さく設定されることがある。例えば、その微分値に反比例する様に設定されることがある。さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための指標として、各反復時において各位置(x,y)にて評価された2次元相互相関関数のメインローブの幅(関数の各方向の半値幅)を使用して、狭いビーム方向の変位成分にかかる値は大きく、広いスキャン方向の変位成分にかかる値は小さく設定されることがある。例えば、その半値幅に反比例する様に設定されることがある。
【0168】
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、上記四つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの績に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位ベクトル(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2: 2次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)
i回目における2次元残差ベクトル分布ui(x,y)の推定結果を用いて、(51)式のように、i-1回目の2次元変位ベクトル分布の推定結果を更新する。
【0169】
【数63】
Figure 0003887774
ときに、この推定結果に(52)式の2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることがある。
【0170】
【数64】
Figure 0003887774
従って、本法2−4の処理1中の位相マッチングは、(50)式より得られた各点(x,y)の2次元残差ベクトルデータui(x,y)、(51)式より得られた各点(x,y)の2次元ベクトルデータdi(x,y)、または、(52)式より空間的に平滑化された各点(x,y)の2次元ベクトルデータを用いて、変形後の2次元エコー信号空間r(x,y)内の各位置(x,y)に関する探索領域内信号r’(l,m) [0≦l≦2L−1、0≦m≦2M−1]に対して行われる。
(処理3: 2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うため、2次元関心領域内の各点において2次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
2次元関心領域内の各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法2−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(53)式または(53’)式の条件を基準とできる。
【0171】
【数65】
Figure 0003887774
尚、(53)式または(53’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
【0172】
2次元関心領域内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法2−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(54)式または(54’)式の条件を基準とできる。
【0173】
【数66】
Figure 0003887774
尚、(54)式または(54’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4: 2次元変位ベクトル分布の反復推定の終了条件)
2次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法2−4の処理1、処理2、および、本法2−4の処理3を繰り返す。
【0174】
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(55)または(55’)式を基準とできる。
【0175】
【数67】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(51)式により得られるdi(x,y)、または、(52)式より得られるdi(x,y)の推定値である。
【0176】
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。
[方法2−5]
本法2−5のフローチャートを図14に示す。本法は、前述の方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時における方法2−1の処理2中の(35)式の実行時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減する。これにより、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。そのために、前述の(42)式または(42’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1および方法2−4を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトル計測を実現する。
【0177】
具体的には、まず、方法2−4の反復推定(方法2−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
方法2−4の処理1において、2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトル分布の推定の後、すなわち、関心領域内の全ての点において方法2−1の処理1((29)式)を行い、さらに、正則化法を用いて、安定的に、2次元変位ベクトル分布d(x,y)のi-1回目における推定結果(数68) に対する2次元残差ベクトル分布u(x,y)の推定結果(数69)を得る。
【0178】
【数68】
Figure 0003887774
【0179】
【数69】
Figure 0003887774
その結果、関心領域内において(42)式または(42’)式の条件式が満足されなければ、方法2−1に従う。(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域が確認された場合は、次の処理による。
方法2−4の処理2により、2次元変位ベクトル分布の推定結果の更新中において、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(51)式より得られる2次元変位ベクトル分布d(x,y)の推定結果d(x,y)に,(56)式の2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることができる。
【0180】
【数70】
Figure 0003887774
その結果、方法2−1の処理5または2−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(39)式または(51)式により得られるdi(x,y)、または、(56)式より得られる平滑化された推定値である。
【0181】
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。
(III)方法3: 1次元関心領域内の1次元(1方向)変位成分分布計測法
3次元(デカルト座標系(x,y,z))空間内の3次元関心空間(x,y,z)内の3次元変位ベクトルを計測する場合と同様に、あるx軸上の1次元関心領域内のx軸方向の変位成分の分布を計測するべく、この関心領域内からの変形前後における1次元超音波エコー信号r(x)およびr(x)を取得した場合を考える。以下に示す方法3−1、方法3−2、方法3−3、方法3−4、方法3−5は、これらの変形前後の1次元超音波エコー信号r(x)およびr(x)の各位置xに、図18および図19に示すように、局所領域を設けて、その変形前の局所信号の位相特性が一致する(マッチする)局所領域をr(x)内にて反復的に探索する。そして、逐次、相関性の高くなった局所信号を用いて評価される1方向残差変位成分を用いて前回の1方向変位成分の推定結果を修正していき、且つ、評価された残差変位成分がある条件を満足した場合に局所領域の大きさを小さくすることにより高分解能化を図り(図20)、最終的に高精度な1次元変位成分分布の計測を実現するものである。ここで、x軸方向の超音波エコー信号のサンプリング間隔は、Δxである。
[方法3−1]
本方法3−1のフローチャートを図10に示す。以下の処理1〜5により、あるx軸上の1次元関心領域内の任意の点xのx方向変位成分dx(x)を、変形前後における1次元超音波エコー信号領域r(x)およびr(x)内の点xを中心とする局所1次元超音波エコー信号r(l)および変形後の局所1次元超音波エコー信号r(l)[0≦l≦L−1]から評価する。その際、Lは、ΔxLが、対応する方向の変位成分の大きさ|dx(x,y,z)|の4倍以上に充分に長くなる様に設定される必要がある。
(処理1: 点xにおける位相マッチング)
i回目(i≧1)のx方向変位成分dx(x)の推定結果dix(x)を得るための位相マッチングを行う。
前回のi-1回目のx方向変位成分dx(x)の推定結果di-1 x(x)
【0182】
【数71】
Figure 0003887774
を修正するべく、点xを中心とする局所領域[0≦l≦L−1]を中央に持つ各方向の長さが2倍)である探索領域を変形後のエコー信号空間r(x)に設定し、この探索領域内エコー信号r’(x)[0≦l≦2L−1] または、i-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’i−1 (l)を1次元フーリエ変換したものに、i-1回目における推定結果dxi-1(x)(または、推定結果dxi-1(x)に修正すべき残差変位成分ui-1 x(x)の推定結果
【0183】
【数72】
Figure 0003887774
を乗じ、変形後の局所エコー信号の位相を変形前の局所エコー信号と合わせることを試みる。これを逆フーリエ変換することにより、i回目においてx方向変位成分dx(x)の評価を行うために用いる変形後の局所1次元超音波エコー信号r (l)を点xを中心とする探索領域内エコー信号r’ (l)内の中央にて得る。
【0184】
尚、位相マッチングは、変形前の局所エコー信号の位相を変形後の局所エコー信号の位相と合わせることでも同様に実現できる。但し、変形前のエコー信号空間r(x)内の点xを中心とする局所領域[0≦l≦L−1]を中央にもつ探索領域内のエコー信号r’(l)[0≦l≦2L−1](または、i-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’i−1 (l)の1次元フーリエ変換したものには、
【0185】
【数73】
Figure 0003887774
がかけられる。
(処理2: 点xの1方向残差変位成分の推定)
変形前の局所1次元超音波エコー信号r(l)および位相マッチングを施した変形後の局所1次元超音波エコー信号r (l)の1次元フーリエ変換R(l)およびR (l)を評価し、これらより、局所1次元エコークロススペクトラム:
【0186】
【数74】
Figure 0003887774
を評価し、変形前の局所1次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r (l)およびr(l)のクロススペクトラム:
【0187】
【数75】
Figure 0003887774
と表されることに基づき、その位相:
【0188】
【数76】
Figure 0003887774
の勾配に関して、クロススペクトラムの二乗
【0189】
【数77】
Figure 0003887774
を最小化することにより、点xのx方向変位成分dx(x)のi-1回目の評価結果dxi-1(x)に修正すべきx方向残差変位成分ui x(x)の推定値を得る。
具体的には、以下の連立方程式を解くこととなる。
【0190】
【数78】
Figure 0003887774
ここで、x方向変位成分dx(x)が大きい場合には、x方向残差変位成分ux i(x)は、クロススペクトラム((59)式)の位相を周波数空間(l)においてアンラッピングした上で評価する必要がある。
また、x方向変位成分dx(x)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、クロススペクトラム((55)式)に1次元逆フーリエ変換を施すことにより得られる相互相関関数のピーク位置を検出するいわゆる相互相関法を使用することにより、クロススペクトラム((59)式)の位相を周波数空間(l)においてアンラッピングすることなくx方向残差変位成分ui x(x,y)を評価でき、詳細には、相互相関法により1方向(x方向)変位成分を超音波エコー信号のサンプリング間隔(データ間隔)Δxの整数倍の大きさで評価する。
例えば、閾値correTratioに対して、(64)または(64’)が満足された後、これを初期値としてx方向残差変位成分ux i(x)をクロススペクトラム((59)式)の位相の勾配から評価すればよい。
【0191】
【数79】
Figure 0003887774
相互相関法を施した後においては、|u (x)≦Δx/2が満足されることが経験的に確認されているが、これはクロススペクトラム((59)式)の位相をアンラッピングせずにx方向残差変位成分ui x(x)の推定を可能とするための必要十分条件
【0192】
【数80】
Figure 0003887774
を満足する。
また、x方向変位成分dx(x)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引いた超音波エコー信号を用いることにより、クロススペクトラム((59)式)の位相を周波数空間(l)においてアンラッピングすることなくx方向残差変位成分ui x(x)を評価でき、詳細には、(65)式、または、(65)式を十分に満足する条件
【0193】
【数81】
Figure 0003887774
が満足される様に、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことによりデータ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いて評価することとし、反復回数iの増加に共ってx方向残差変位成分ui x(x)の大きさが小さくなるに連れて、超音波エコー信号の各方向のデータ密度を元の高さに戻して行き(例えば、2倍ずつ。)、最終的に取得された元のデータ密度の超音波エコー信号を用いて評価する。
超音波エコー信号のデータの間隔を小さくするための条件としては、例えば、ある閾値stepTratioに対して、(66)式または(66’)式の条件を基準とする。
【0194】
【数82】
Figure 0003887774
尚、(66)式または(66’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとにデータ間隔が小さくされることもある。以下の方法3−2、方法3−3、方法3−4、方法3−5においても同様である。
(処理3: 点xの1方向変位成分推定結果の更新)
これより、x方向変位成分dx(x)のi回目の推定結果は、
【0195】
【数83】
Figure 0003887774
と評価される。
(処理4: 1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うために各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを小さくするが、そのための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで処理1、処理2、および処理3を繰り返し、満足された際には、局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(68)または(68’)式を基準とできる。
【0196】
【数84】
Figure 0003887774
(処理5: 点xにおける1方向変位成分の反復推定の終了条件)
各点におけるx方向変位成分の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで処理1、処理2、および処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioに対して、(69)または(69’)式を基準とできる。
【0197】
【数85】
Figure 0003887774
(処理6)
この処理1、処理2、処理3、処理4、処理5を1次元関心領域内の全ての点において施すことにより、関心領域内のx方向変位成分分布を得ることができる。
【0198】
尚、x方向変位成分の反復推定の際のその初期値((57)式)は、特に、測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零とする。
[方法3−1の限界]
方法3−1により1次元関心領域内の各点xに関して反復的にx方向変位成分dx(x)の推定結果を更新した場合、局所1次元エコー信号のSN比の如何によっては、特に初期段階の残差変位成分の推定時において突発的に大きなエラーを生じることがある。つまり、処理2の式(63)を解く際、または、相互相関関数のピーク位置を検出する際に、処理1における位相マッチングが発散してしまうことがある。
【0199】
各点において、位相マッチングが発散する可能性は、
例えば、ある閾値belowTratioに対して、(70)または(70’)式により確認できる。
【0200】
【数86】
Figure 0003887774
これを防ぐべく、時に(70)式または(70’)式の条件式を用いて、以下の方法3−2、方法3−3、方法3−4、方法3−5が使用されることがある。すなわち、以下の方法3−2、方法3−3、方法3−4、方法3−5は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定時に、方法3−1の処理2中の(63)式を解く際、または相互相関関数のピーク位置を検出するときにおいて生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減することにより、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度な1方向変位成分の計測を実現するものである。
[方法3−2]
本方法3−2のフローチャートを図11に示す。本方法は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定(方法3−1の処理2中の(63)式)時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の計測を実現するものである。
【0201】
具体的には、方法3−1とは反復推定の流れを異とし、i回目(i≧1)の推定において、以下の処理を行なう。
(処理1:1方向残差変位成分分布推定)
この処理では、1次元関心領域内の全ての点xにおける位相マッチングおよび全ての点xにおける1方向残差変位成分の推定を行なう。
1次元関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1((57)式)および方法3−1の処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、
【0202】
【数87】
Figure 0003887774
(処理2:1方向変位成分分布の推定結果の更新)
i回目におけるx方向変位成分分布u (x)の推定結果を用いて、(71)式のように、i-1回目のx方向変位成分分布の推定結果を更新する。
【0203】
【数88】
Figure 0003887774
次に、この推定結果に、(72)式の1次元低域通過型フィルタ、または、1次元メディアンフィルタを施こす。
【0204】
【数89】
Figure 0003887774
これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。したがって、本法3−2の処理1の位相マッチングは、
【0205】
【数90】
Figure 0003887774
(処理3: 1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うため、1次元関心領域内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、1次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
1次元関心領域内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法3−2の処理1および本法3−2の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(73)または(73’)式を基準とできる。
【0206】
【数91】
Figure 0003887774
1次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法3−2の処理1および本法3−2の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(74)または(74’)式を基準とできる。
【0207】
【数92】
Figure 0003887774
(処理4: 1方向変位成分分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法3−2の処理1、本法3−2の処理2、および本方法3−2の処理3を繰り返す。
【0208】
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(75)または(75’)式を基準とできる。
【0209】
【数93】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(71)式により得られるdxi(x)、または、(72)式より得られる推定値である。
【0210】
尚、x方向変位成分分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
[方法3−3]
本法3−3のフローチャートを図12に示す。本方法は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定において方法3−1の処理2中の(63)式の実行時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、前述の(70)式または(70’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法3−1および方法3−2を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の計測を実現するものである。
【0211】
具体的には、まず、方法3−2の反復推定(方法3−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
【0212】
方法3−2の処理1の1方向残差変位成分分布推定 (1次元関心領域内の全ての点xにおける位相マッチングおよび全ての点xにおける1方向残差変位成分の推定)の後、すなわち、関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1((57)式)および方法3−1の処理2を1回ずつ行い、x方向変位成分分布d(x)のi-1回目における推定結果
【0213】
【数94】
Figure 0003887774
次いで、この間において、(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1に従うこととし、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域が確認された場合は、方法3−2の処理2(1方向変位成分分布の推定結果の更新中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(71)式より得られるx方向変位成分分布dx(x)の推定結果dx(x)に、(76)式の1次元低域通過型フィルタ、または、1次元メディアンフィルタを施こす。
【0214】
【数95】
Figure 0003887774
これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減するものとする。
【0215】
その結果、方法3−1の処理5または2−2の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(71)式により得られるdi(x)、または、(76)式より得られる推定値である。
【0216】
尚、x方向変位成分分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
[方法3−4]
本方法3−4のフローチャートを図13に示す。本方法は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定(方法3−1の処理2中の(59)式)の実行時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の計測を実現するものである。
【0217】
具体的には、方法3−1とは反復推定の流れを異とし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
(処理1:1方向残差変位成分分布推定)
本処理では、1次元関心領域内の全ての点xにおける位相マッチングおよび1方向残差変位成分分布を推定する。すなわち、1次元関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1((57)式)を1回行う。
次に、x方向変位成分分布d(x)のi-1回目の推定結果di−1 (x)のx方向残差変位成分分布u (x)の推定結果を評価するべく、全ての点xに関して、変形前の局所1次元超音波エコー信号r(l)および位相マッチングを施した変形後の局所1次元超音波エコー信号r (l)の1次元フーリエ変換R(l)およびR (l)を評価し、これより求まる各局所1次元エコークロススペクトラム((59)式)(変形前の局所1次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r 1(l)およびr2(l)のクロススペクトラム)の位相の勾配に関して、
【0218】
【数96】
Figure 0003887774
および、正則化法を施し、すなわち、x方向残差変位成分分布ui (x)からなるベクトルuiに関する汎関数:
【0219】
【数97】
Figure 0003887774
【0220】
【数98】
Figure 0003887774
をベクトルuiに関して最小化することとなるが、未知x方向残差変位成分分布の自乗ノルム||ui||2、その変位成分の1次元勾配分布の自乗ノルム||Gui||2、その変位成分分布の1次元ラプラシアン分布の自乗ノルム||GTGui||2、および、その変位成分分布の1次元ラプラシアンの1次元勾配分布の自乗ノルム||GGTGui||2は正定値であるため、error(ui)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位成分分布ux i(x)に関する連立方程式
(FTF + α1iI +α2iGTG + α3iGTGGTG + α4iGTGGTGGTG)ui = FTa
(78)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるu(x)の推定エラーを低減し、安定的にx方向変位成分分布d(x)のi-1回目の推定結果d - (x)を更新するためのx方向残差変位成分分布u(x)の推定結果を得る。
ここで、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、以下に示す二つの指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x)に設定された局所領域内の2次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x)で評価されるクロススペクトラムの逆1次元フーリエ変換により評価される1次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
【0221】
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、上記二つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの績に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位ベクトル(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2: 1方向変位成分分布の推定結果の更新)
i回目におけるx方向残差変位成分分布u(x)の推定結果を用いて、(79)式により、i-1回目のx方向変位成分分布の推定結果を更新する。
【0222】
【数99】
Figure 0003887774
時に、この推定結果に、(80)式の1次元低域通過型フィルタ、または、1次元メディアンフィルタを施こす。これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることがある。
【0223】
【数100】
Figure 0003887774
したがって、本法3−4の処理1中の位相マッチングは、(78)式より得られた各点xの残差変位成分データui x(x)、(79)式より得られた各点xのx方向変位データd (x),または、(80)式より空間的に平滑化された各点xのx方向変位データ
【0224】
【数101】
Figure 0003887774
(処理3: 1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件)
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うため、1次元関心領域内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、1次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
1次元関心領域内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法3−4の処理1および本法3−4の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(81)または(81’)式を基準とできる。
【0225】
【数102】
Figure 0003887774
1次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法3−4の処理1および本法3−4の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(82)または(82’)式を基準とできる。
【0226】
【数103】
Figure 0003887774
(処理4: 1方向変位成分分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法3−4の処理1、本法3−4の処理2および、本法3−4の処理3を繰り返す。
【0227】
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(83)または(83’)式を基準とできる。
【0228】
【数104】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(79)式により得られるdxi(x)、または、(80)式より得られる推定値である。
【0229】
尚、x方向変位成分分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。
[方法3−5]
本法3−5のフローチャートを図14に示す。本法は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定(方法3−1の処理2中の(63)式)時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、前述の(70)式または(70’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法3−1および方法3−4を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分計測を実現するものである。
【0230】
具体的には、まず、方法3−4の反復推定(方法3−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次のように処理する。
方法3−4の処理1において1次元残差変位成分分布推定(1次元関心領域内の全ての点xにおける位相マッチングおよび1次元残差変位成分分布の推定)の後、すなわち、関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1((57)式)を行い、さらに、正則化法を用いて、安定的に、x方向変位成分分布dx(x)のi-1回目における推定結果
【0231】
【数105】
Figure 0003887774
を得、その結果、関心領域内において(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1に従う。そして、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域が確認された場合は、次の処理を行なう。
【0232】
すなわち、方法3−4の処理2(1方向変位成分分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(79)式より得られるx方向変位成分分布dx(x)の推定結果d x (x)に、(84)式に示す1次元低域通過型フィルタ、または、1次元メディアンフィルタを施こす。これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることができる。
【0233】
【数106】
Figure 0003887774
その結果、方法3−1の処理5または3−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(79)式により得られるdxi(x)、または、(84)式より得られる推定値である。
【0234】
尚、x方向変位成分分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。
(IV)方法4:3次元関心空間内の2次元変位ベクトル計測法
[方法4−1]
2次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布計測法(方法2−1、又は、2−2、又は、2−3、又は、2−4、又は、2−5)を用いて、3次元関心空間内の各(x,y)平面においてその計測を行うことにより、3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を計測することができる(図21)。
(処理1)
3次元関心空間内の各(x,y)平面において、方法2−1、又は、2−2、又は、2−3、又は、2−4、又は、2−5を使用する。
さらに、方法4−2として、方法2−2(図11)に基づく方法を、さらに、方法4−3として、方法2−3に基づいて、方法4−2の処理中に前述の(42)式または(42’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法2−1を用いた方法4−1を有効利用する方法を説明する。
[方法4−2]
方法4−2のフローチャートを図22に示す。例として、x軸およびy軸方向の変位成分からなる2次元変位ベクトルの3次元空間分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、処理1を行なう。
(処理1:2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布推定 )
3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトルを推定する。3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)において方法2−1の処理1((29)式)および方法2−1の処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、i回目における2次元残差ベクトル分布u(x,y,z)[=(u (x,y,z),u (x,y,z))]の推定結果(数107)を得る。
【0235】
【数107】
Figure 0003887774
(処理2:2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果の更新)
i回目における2次元残差ベクトルの3次元空間分布u(x,y,z)の推定結果
【0236】
【数108】
Figure 0003887774
次に、この推定結果に、(86)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差ベクトルの推定時(方法2−1の処理2中の(35)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
【0237】
【数109】
Figure 0003887774
従って、本法4−2の処理1の位相マッチングは、この空間的に平滑化された各点(x,y,z)の2次元ベクトルの3次元空間分布データ(数110)を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索領域内信号r’(x,y,z)[0≦l≦2L−1、0≦m≦2M−1]対して行われる。
【0238】
【数110】
Figure 0003887774
(処理3:2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点において2次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法4−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(87)式または(87’)式の条件を基準とできる。
【0239】
【数111】
Figure 0003887774
尚、(87)式または(87’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
【0240】
3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法4−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(88)式または(88’)式の条件を基準とできる。
【0241】
【数112】
Figure 0003887774
尚、(88)式または(88’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4: 2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の終了条件)
2次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法4−2の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
【0242】
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(89)または(89’)式を基準とできる。
【0243】
【数113】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(85)式により得られるdi(x,y,z)、または、(86)式より得られる推定値である。
【0244】
尚、2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
[方法4−3]
方法4−3のフローチャートを図23に示す。例として、x軸およびy軸方向の変位成分からなる2次元変位ベクトルの3次元空間分布を計測する場合を考える。
【0245】
本法4−3は、前述の方法4−2の処理1にて前述の(42)式または(42’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1を用いた方法4−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測を実現するものである。
【0246】
具体的には、まず、方法4−2の反復推定(方法4−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、方法4−2の処理1(2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布推定 (3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトルの推定))の後、すなわち、3次元関心空間内の全ての点において方法2−1の処理1((29)式)および方法2−1の処理2を1回ずつ行う。2次元変位ベクトルの3次元空間分布d(x,y,z)のi−1回目における推定結果に対する2次元残差ベクトルの3次元空間分布u(x,y,z)の推定結果を得た後、この間において、(42)式または(42’)式の条件式が満足されなければ、方法2−1を用いた4−1に従う。(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または領域が確認された場合は、次の処理による。
【0247】
方法4−2の処理2(2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果の更新)中において、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心空間全体において、(85)式より得られる2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果d(x,y,z)に、(90)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差ベクトルの推定時(方法2−1の処理2中の(35)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減するものとする。
【0248】
【数114】
Figure 0003887774
その結果、方法2−1を用いた方法4−1の処理1または4−2の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(39)式または(85)式により得られるdi(x,y,z)、または、(90)式より得られる平滑された推定値である。
【0249】
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
さらに、方法4−4として、正則化法を用いた方法2−4(図13)に基づく方法を、さらに、方法4−5として、方法2−5に基づいて、方法4−4の処理中に前述の(42)式または(42’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法2−1を用いた方法4−1を有効利用する方法を説明する。
[方法4−4]
方法4−4のフローチャートを図24に示す。例として、x軸およびy軸方向の変位成分からなる2次元変位ベクトルの3次元空間分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、処理1を行なう。
(処理1:2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布推定)
3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトルを推定する。3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)において方法2−1の処理1((29)式)を1回行う。
次に、2次元変位ベクトルの3次元空間分布d(x,y,z)のi-1回目の推定結果di−1(x,y,z)の2次元残差ベクトル分布ui(x,y,z) [= (ui x(x,y,z), ui y(x,y,z))T]の推定結果(数115)
【0250】
【数115】
Figure 0003887774
を評価するべく、全ての点(x,y,z)に関して、変形前の局所2次元超音波エコー信号r(l,m)および位相マッチングを施した変形後の局所2次元超音波エコー信号ri 2(l,m)の2次元フーリエ変換R(l,m)およびRi 2(l,m)を評価し、これより求まる各局所2次元エコークロススペクトラム((31)式):変形前の局所2次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、ri (l,m)およびr2(l,m)のクロススペクトラム)の位相の勾配に関して、
【0251】
【数116】
Figure 0003887774
および、正則化法を施し、すなわち、2次元残差ベクトルの3次元空間分布ui(x,y,z)からなるベクトルuiに関する汎関数:
【0252】
【数117】
Figure 0003887774
【0253】
【数118】
Figure 0003887774
【0254】
【数119】
Figure 0003887774
をベクトルuiに関して最小化することとなるが、未知2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布の自乗ノルム||ui||2、そのベクトル成分の3次元勾配成分の3次元空間分布の自乗ノルム||Gui||2、および、そのベクトル成分の3次元ラプラシアンの3次元空間分布の自乗ノルム||GTGui||2、および、そのベクトル成分の3次元ラプラシアンの3次元勾配成分の3次元空間分布の自乗ノルム||GGTGui||2は正定値であるため、error(ui)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位ベクトルの3次元空間分布ui(x,y,z)に関する連立方程式
(FTF + α1iI +α2iGTG + α3iGTGGTG + α4iGTGGTGGTG)ui = FTa
(92−1)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるui(x,y,z) の推定エラーを低減し、安定的に2次元変位ベクトルの3次元空間分布d(x,y,z)のi-1回目の推定結果di-1(x,y,z)を更新するための2次元残差ベクトルの3次元空間分布ui(x,y,z)の推定結果を得る。
ここで、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、以下に示す四つの指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)に設定された局所領域内の2次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)で評価されるクロススペクトラムの逆2次元フーリエ変換により評価される2次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の各変位成分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための指標として、各反復時において各位置(x,y)にて評価された2次元相互相関関数のピークの鋭さ(関数の各方向の2回微分値)を使用して、緩やかな(2回微分値の小さい)スキャン方向の変位成分にかかる値は大きく、鋭い(2回微分値の大きい)ビーム方向の変位成分にかかる値は小さく設定されることがある。例えば、その微分値に反比例する様に設定されることがある。さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための指標として、各反復時において各位置(x,y,z)にて評価された2次元相互相関関数のメインローブの幅(関数の各方向の半値幅)を使用して、狭いビーム方向の変位成分にかかる値は大きく、広いスキャン方向の変位成分にかかる値は小さく設定されることがある。例えば、その半値幅に反比例する様に設定されることがある。尚、z方向の微分にかかる値は、他の方向の微分に較べて十分に大きい値に設定される。
【0255】
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、上記四つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの績に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位ベクトル(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2: 2次元変位ベクトル分布の3次元空間分布の推定結果の更新)
i回目における2次元残差ベクトルの3次元空間分布ui(x,y,z)の推定結果を用いて,(92−2)式により、i-1回目の2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果を更新する。
【0256】
【数120】
Figure 0003887774
時に、この推定結果に、(93)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることがある。
【0257】
【数121】
Figure 0003887774
したがって、本法4−4の処理1中の位相マッチングは、(91)式より得られた各点(x,y,z)の2次元残差ベクトルの3次元空間分布データui(x,y,z)、(92−2)式より得られた各点(x,y,z)の2次元ベクトルの3次元空間分布データdi(x,y,z)、または、(93)式より空間的に平滑化された各点(x,y,z)の2次元ベクトルの3次元空間分布データ(数122)を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索領域内信号r’(l,m)[0≦l≦2L−1、0≦m≦2M−1]に対して行われる。
【0258】
【数122】
Figure 0003887774
(処理3: 2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点において2次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法4−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(94)式または(94’)式の条件を基準とできる。
【0259】
【数123】
Figure 0003887774
尚、(94)式または(94’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
【0260】
3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法4−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(95)式または(95’)式の条件を基準とできる。
【0261】
【数124】
Figure 0003887774
尚、(95)式または(95’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4: 2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の終了条件)
2次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法4−4の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
【0262】
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(96)または(96’)式を基準とできる。
【0263】
【数125】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(92−2)式により得られるdi(x,y,z)、または、(93)式より得られる平滑された推定値である。
【0264】
尚、2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。
[方法4−5]
方法4−5のフローチャートを図25に示す。例として、x軸およびy軸方向の変位成分からなる2次元変位ベクトルの3次元空間分布を計測する場合を考える。
【0265】
本法4−5は、前述の方法4−4の処理1にて前述の(42)式または(42’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1を用いた方法4−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測を実現するものである。
【0266】
具体的には、まず、方法4−4の反復推定(方法4−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
方法4−4の処理1(2次元残差変位ベクトル分布の3次元空間分布推定(3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布の推定))の後にて、すなわち、3次元関心空間内の全ての点において方法2−1の処理1((29)式)を行い、さらに、正則化法を用いて、安定的に、2次元変位ベクトル分布の3次元空間分布d(x,y,z)のi-1回目における推定結果
【0267】
【数126】
Figure 0003887774
その結果、関心空間内において(42)式または(42’)式の条件式が満足されなければ、方法2−1を用いた方法4−1に従う。(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間が確認された場合は、次の処理による。
すなわち、方法4−4の処理2(2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果の更新)中において、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間を中心とする充分に広い空間内において、または、関心空間全体において、(92−2)式より得られる2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果d(x,y,z)に、(97)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることができる。
【0268】
【数127】
Figure 0003887774
その結果、方法2−1を用いた方法4−1の処理1または4−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(39)式または(92−2)式により得られるd(x,y,z)、または、(97)式より得られる平滑された推定値である。
【0269】
尚、2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。
(V)方法5:3次元関心空間内の1方向変位成分計測法
[方法5−1]
方法5−1は、1次元関心領域内の1方向変位成分分布計測法(方法3−1、又は、3−2、又は、3−3、又は、3−4、又は、3−5)を用いて、3次元関心空間内のx軸に平行な直線上においてその方向の変位成分分布の計測を行うことにより、3次元関心空間内の1方向変位成分分布を計測することができる(図21)。
(処理1)
3次元関心空間内のx軸に平行な直線上において、方法3−1、又は、3−2、又は、3−3、又は、3−4、又は、3−5を使用する。
さらに、方法5−2として、方法3−2(図11)に基づく方法を、さらに、方法5−3として、方法3−3に基づいて、方法5−2の処理中に前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法3−1を用いた方法5−1を有効利用する方法を説明する。
[方法5−2]
方法5−2のフローチャートを図22に示す。例として、x軸方向の変位成分の3次元空間分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、次のように処理をする。
(処理1: 1方向残差変位成分の3次元空間分布推定 )
3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分を推定する。3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)において方法3−1の処理1((57)式)および方法3−1の処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、i回目におけるx方向残差変位成分の3次元空間分布u (x,y,z)の推定結果を得る。
(処理2:1方向変位成分の3次元空間分布の推定結果の更新)
i回目におけるx方向変位成分の3次元空間分布u (x,y,z)の推定結果を用いて(98)式により、i-1回目のx方向変位成分の3次元空間分布の推定結果を更新する。
【0270】
【数128】
Figure 0003887774
次に、この推定結果に、(99)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
【0271】
【数129】
Figure 0003887774
従って、本法5−2の処理1の位相マッチングは、この空間的に平滑化された各点(x,y,z)のx方向変位成分データ(数130)を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索領域内信号r’(l) [0≦l≦2L−1]に対して行われる。
【0272】
【数130】
Figure 0003887774
(処理3:1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、3次元関心空間内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法5−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(100)または(100’)式を基準とできる。
【0273】
【数131】
Figure 0003887774
3次元関心空間内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法5−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(101)または(101’)式を基準とできる。
【0274】
【数132】
Figure 0003887774
(処理4: 1方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分の3次元空間分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法3−2の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
【0275】
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(102)または(102’)式を基準とできる。
【0276】
【数133】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(98)式により得られるdxi(x,y,z)、または、(99)式より得られる平滑化された推定値である。
【0277】
尚、x方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
[方法5−3]
方法5−3のフローチャートを図23に示す。例として、x軸方向の変位成分の3次元空間分布を計測する場合を考える。
【0278】
本法5−3は、前述の方法5−2の処理1にて前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とする。また、方法2−1を用いた方法5−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の3次元空間分布計測を実現するものである。
【0279】
具体的には、まず、方法5−2の反復推定(方法5−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理をする。
【0280】
すなわち、方法5−2の処理1(1方向残差変位成分の3次元空間分布推定 (3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分の推定)) の後、すなわち、関心空間内の全ての点において方法3−1の処理1((57)式)および方法3−1の処理2を1回ずつ行う。そして、x方向変位成分の3次元空間分布d(x,y,z)のi-1回目における推定結果
【0281】
【数134】
Figure 0003887774
この間において、(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1を用いた方法5−1に従う。(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域が確認された場合は、次の方法による。
方法5−2の処理2(1方向変位成分の3次元空間分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心空間全体において、(98)式より得られるx方向変位成分の3次元空間分布の推定結果d (x,y,z)に、(102)式にしめす3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定時[方法3−1の処理2中の(63)式]において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減するものとする。
【0282】
【数135】
Figure 0003887774
その結果、方法5−1の処理1または5−2の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(98)式により得られるd (x,y,z)、または、(102)式より得られる平滑化された推定値である。
【0283】
尚、x方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
さらに、方法5−4として、正則化法を用いた方法3−4(図13)に基づく方法を、さらに、方法5−5として、方法3−5に基づいて、方法5−4の処理中に前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法3−1を用いた方法5−1を有効利用する方法を説明する。
[方法5−4]
方法5−4のフローチャートを図24に示す。例として、x軸方向の変位成分の3次元空間分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
(処理1:1方向残差変位成分の3次元空間分布推定)
[3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分を推定する。3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)において、x方向変位成分の3次元空間分布dx(x,y,z)のi-1回目の推定結果を用いて、方法3−1の処理1((57)式)1回行う。
次に、x方向変位成分の3次元空間分布dx(x,y,z)のi-1回目の推定結果dxi −1(x,y,z)のx方向残差変位成分の3次元空間分布ui x(x,y,z)の推定結果(数136)
【0284】
【数136】
Figure 0003887774
を評価するべく、全ての点(x,y,z)に関して、変形前の局所1次元超音波エコー信号r(l)および位相マッチングを施した変形後の局所1次元超音波エコー信号r (l)の1次元フーリエ変換R(l)およびR (l)を評価する。これより求まる各局所1次元エコークロススペクトラム((59)式:変形前の局所1次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r (l)およびr(l)のクロススペクトラム)の位相の勾配に関して、
【0285】
【数137】
Figure 0003887774
および、正則化法を施し、すなわち、x方向残差変位成分の3次元空間分布ui x(x,y,z)からなるベクトルuiに関する汎関数:
【0286】
【数138】
Figure 0003887774
【0287】
【数139】
Figure 0003887774
をベクトルuiに関して最小化することとなるが、未知x方向残差変位成分の3次元空間分布の自乗ノルム||ui||2、その変位成分の3次元勾配成分の3次元空間分布の自乗ノルム||Gui||2、その変位成分の3次元ラプラシアンの3次元空間分布の自乗ノルム||GTGui||2および、その変位成分の3次元ラプラシアンの3次元勾配成分の3次元空間分布の自乗ノルム||GGTGui||2は正定値であるため、error(ui)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位成分の3次元空間分布ux i(x,y,z)に関する連立方程式
(FTF+α1iI+α2iGTG+α3iGTGGTG+α4iGTGGTGGTG)ui=FTa
(104)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるu (x,y,z)の推定エラーを低減し、安定的にx方向変位成分の3次元空間分布d(x,y,z)のi-1回目の推定結果di−1 (x,y,z)を更新するためのx方向変位成分の3次元空間分布u (x,y,z)の推定結果を得る。
【0288】
ここで、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、以下に示す二つの指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)に設定された局所領域内の1次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)で評価されるクロススペクトラムの逆1次元フーリエ変換により評価される1次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、各反復時において、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)。その場合、y、z方向の微分にかかる正則化パラメータの値は、x方向の値に較べて大きい値に設定されることがある。
【0289】
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、上記二つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの績に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位ベクトル(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2: 1方向変位成分の3次元空間分布の推定結果の更新)
【0290】
【数140】
Figure 0003887774
時に、この推定結果に、(106)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることがある。
【0291】
【数141】
Figure 0003887774
したがって、処理1中の位相マッチングは、(104)式より得られた各点(x,y,z)の残差変位成分の3次元空間分布データui x(x,y,z)、(105)式より得られた各点(x,y,z)のx方向変位成分の3次元空間分布データdi x (x,y,z)、または、(106)式より空間的に平滑化された各点(x,y,z)のx方向変位成分の3次元空間分布データ
【0292】
【数142】
Figure 0003887774
を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索領域内信号r (l)[0≦l≦2L−1]に対して行われる。
(処理3: 1方向変位成分の3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分の3次元空間x分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、3次元関心空間内のx方向変位成分を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法5−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(107)または(107’)式を基準とできる。
【0293】
【数143】
Figure 0003887774
3次元関心空間内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法5−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(108)または(108’)式を基準とできる。
【0294】
【数144】
Figure 0003887774
(処理4: 1方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分の3次元空間分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法5−4の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
【0295】
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(109)または(109’)式を基準とできる。
【0296】
【数145】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(105)式により得られるdxi(x,y,z)、または、(106)式より得られる平滑化された推定値である。
【0297】
尚、x方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。
[方法5−5]
方法5−5のフローチャートを図25に示す。例として、x軸方向の変位成分の3次元空間分布を計測する場合を考える。
【0298】
本法5−5は、前述の方法5−4の処理1にて前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法3−1を用いた方法5−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度のx方向変位成分の3次元空間分布計測を実現するものである。
【0299】
具体的には、まず、方法5−4の反復推定(方法5−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
【0300】
すなわち、方法5−4の処理1(1方向変位成分分布の3次元空間分布推定(3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび1方向変位成分の3次元空間分布の推定))の後にて、すなわち、3次元関心空間内の全ての点において方法3−1の処理1((57)式)を行う。さらに、正則化法を用いて、安定的に、x方向変位成分の3次元空間分布d(x,y,z)のi-1回目における
【0301】
【数146】
Figure 0003887774
その結果、関心空間内において(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1を用いた方法5−1に従う。(70)式または(70’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間が確認された場合は、次の処理による。
【0302】
すなわち、方法5−4の処理2(1方向変位成分の3次元空間分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間を中心とする充分に広い空間内において、または、関心空間全体において、(105)式より得られるx方向変位成分の3次元空間分布の推定結果d (x,y,z)に(110)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることができる。
【0303】
【数147】
Figure 0003887774
その結果、方法5−1の処理1または5−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(105)式により得られるdx i(x,y,z)、または、(110)式より得られる平滑化された推定値である。
【0304】
尚、x方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。
(VI)方法6:2次元関心領域内の1方向変位成分計測法
[方法6−1]
方法6−1のフローチャートを図21に示す。1次元関心領域内の1方向変位成分分布計測法(方法3−1、又は、3−2、又は、3−3、又は、3−4、又は、3−5)を用いて、2次元関心領域内のx軸に平行な直線上においてその方向の変位成分分布の計測を行うことにより、2次元関心領域内の1方向変位成分分布を計測することができる。
(処理1)
2次元関心領域内のx軸に平行な直線上において、方法3−1、又は、3−2、又は、3−3、又は、3−4、又は、3−5を使用する。
さらに、方法6−2として、方法3−2(図11)に基づく方法を、さらに、方法6−3として、方法3−3に基づいて、方法6−2の処理中に前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法3−1を用いた方法6−1を有効利用する方法を説明する。
[方法6−2]
方法6−2のフローチャートを図22に示す。例として、x軸方向の変位成分の2次元分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
(処理1: 1方向残差変位成分の2次元分布推定
2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分を推定する。2次元関心領域内の全ての点(x,y)において方法3−1の処理1((57)式)および方法3−1の処理2を1回ずつ施する。すなわち、
【0305】
【数148】
Figure 0003887774
(処理2:1方向変位成分の2次元分布の推定結果の更新)
【0306】
【数149】
Figure 0003887774
次に、この推定結果に、(112)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
【0307】
【数150】
Figure 0003887774
したがって、本法6−2の処理1の位相マッチングは、この空間的に平滑化された各点(x,y)のx方向変位成分データ(数151)を用いて、変形後の2次元エコー信号空間r(x,y,z)内の各位置(x,y)に関する探索領域内信号r’(l) [0≦l≦2L−1]に対して行われる。
【0308】
【数151】
Figure 0003887774
(処理3:1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うため、2次元関心領域内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、2次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
2次元関心領域内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法6−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、 (113) または(113’)式を基準とできる。
【0309】
【数152】
Figure 0003887774
2次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法6−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、 (114)または(114’)式を基準とできる。
【0310】
【数153】
Figure 0003887774
(処理4: 1方向変位成分の2次元分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分の2次元分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法6−2の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
【0311】
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、 (115)または(115’)式を基準とできる。
【0312】
【数154】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(111)式により得られるdxi(x,y)、または、(112)式より得られる平滑化された推定値である。
【0313】
尚、x方向変位成分の2次元分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
[方法6−3]
方法6−3のフローチャートを図23に示す。例として、x軸方向の変位成分の2次元分布を計測する場合を考える。
【0314】
本法6−3は、前述の方法6−2の処理1にて前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1を用いた方法6−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の2次元分布計測を実現するものである。
【0315】
具体的には、まず、方法6−2の反復推定(方法6−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
【0316】
すなわち、方法6−2の処理1(1方向残差変位成分の2次元分布推定 (2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分の推定)) の後、すなわち、関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1((57)式)および方法3−1の処理2を1回ずつ行う。そして、
【0317】
【数155】
Figure 0003887774
この間において、(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1を用いた方法5−1に従う。(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域が確認された場合は、次の処理による。
【0318】
すなわち、方法5−2の処理2(1方向変位成分の2次元分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(111)式より得られるx方向変位成分の2次元分布の推定結果d (x,y)に、(116)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減するものとする。
【0319】
【数156】
Figure 0003887774
その結果、方法6−1の処理1または6−2の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(111)式により得られるdi(x,y,z)、または、(116)式より得られる平滑化された推定値である。
【0320】
尚、x方向変位成分の2次元分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする、または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用していく。
さらに、方法6−4として、正則化法を用いた方法3−4(図13)に基づく方法を、さらに、方法6−5として、方法3−5に基づいて、方法6−4の処理中に前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法3−1を用いた方法6−1を有効利用する方法を説明する。
[方法6−4]
方法6−4のフローチャートを図24に示す。例として、x軸方向の変位成分の2次元分布を計測する場合を考える。i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
(処理1: 1方向残差変位成分の2次元分布推定 )
2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分を推定する。2次元関心領域内の全ての点(x,y)において、x方向変位成分の2次元分布dx(x,y)のi-1回目の推定結果を用いて、方法3−1の処理1((57)式)を1回行う。
次に、x方向変位成分の2次元分布dx(x,y)のi-1回目の推定結果dxi −1(x,y)のx方向残差変位成分の2次元分布ui x(x,y)の推定結果(数157)を評価する。
【0321】
【数157】
Figure 0003887774
推定結果(数157)を評価するために、全ての点(x,y)に関して、変形前の局所1次元超音波エコー信号r(l)および位相マッチングを施した変形後の局所1次元超音波エコー信号ri (l)の1次元フーリエ変換R(l)およびRi (l)を評価し、これより求まる各局所1次元エコークロススペクトラム((59)式):変形前の局所1次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、ri (l)およびr(l)のクロススペクトラム)の位相の勾配に関して、
【0322】
【数158】
Figure 0003887774
および、正則化法を施し、すなわち、x方向残差変位成分の2次元分布ui x(x,y)からなるベクトルuiに関する汎関数:
【0323】
【数159】
Figure 0003887774
【0324】
【数160】
Figure 0003887774
【0325】
【数161】
Figure 0003887774
をベクトルuiに関して最小化することとなるが、未知x方向残差変位成分の2次元分布の自乗ノルム||ui||2、その変位成分の2次元勾配成分の2次元分布の自乗ノルム||Gui||2、その変位成分の2次元ラプラシアンの2次元分布の自乗ノルム||GTGui||2、および、その変位成分の2次元ラプラシアンの2次元勾配成分の2次元分布の自乗ノルム||GGTGui||2は正定値であるため、error(ui)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位成分の2次元分布ux i(x,y)に関する連立方程式
(FTF+α1iI+α2iGTG+α3iGTGGTG+α4iGTGGTGGTG)ui=FTa
(118)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるux i(x,y)の推定エラーを低減し、安定的にx方向変位成分の2元分布d(x,y)のi-1回目の推定結果di−1 (x,y)を更新するためのx方向変位成分の2元空間分布u (x,y)の推定結果(数162)を得る。
【0326】
【数162】
Figure 0003887774
ここで、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、以下に示す二つの指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)に設定された局所領域内の1次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)で評価されるクロススペクトラムの逆1次元フーリエ変換により評価される1次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、各反復時において、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その場合、y方向の微分にかかる正則化パラメータの値は、x方向の値に較べて大きい値に設定されることがある。
【0327】
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、上記二つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの績に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位ベクトル(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2: 1方向変位成分の2次元分布の推定結果の更新)
【0328】
【数163】
Figure 0003887774
時に、この推定結果に、 (120)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることがある。
【0329】
【数164】
Figure 0003887774
したがって、処理1中の位相マッチングは、(118)式より得られた各点(x,y)の残差変位成分の2次元分布データui x(x,y)(数165)、(119)式より得られた各点(x,y)のx方向変位成分の2次元分布データ(数165)、または、(120)式より空間的に平滑化された各点(x,y)のx方向変位成分の2次元分布データ(数164)を用いて、変形後の2次元エコー信号空間r(x,y)内の各位置(x,y)に関する探索領域内信号r (l)[0≦l≦2L−1]に対して行われる。
【0330】
【数165】
Figure 0003887774
(処理3:1方向変位成分の2次元分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分の2次元分布計測の高空間分解能化を行うため、2次元関心領域内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、2次元関心領域内のx方向変位成分を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
2次元関心領域内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法6−3の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、 (121)または(121’)式をを基準とできる。
【0331】
【数166】
Figure 0003887774
2次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法6−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(122)または(122’)式を基準とできる。
【0332】
【数167】
Figure 0003887774
(処理4: 1方向変位成分の2次元分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分の2次元分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法6−4の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
【0333】
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(123)または(123’)式を基準とできる。
【0334】
【数168】
Figure 0003887774
最終的な推定結果は、(119)式により得られるdxi(x,y)、または、(120)式より得られる平滑化された推定値である。
【0335】
尚、x方向変位成分の2次元分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。
[方法6−5]
方法6−5のフローチャートを図25に示す。例として、x軸方向の変位成分の2次元分布を計測する場合を考える。
【0336】
本法6−5は、前述の方法6−4の処理1にて前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法3−1を用いた方法6−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の2次元分布計測を実現するものである。
【0337】
具体的には、まず、方法6−4の反復推定(方法6−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
【0338】
すなわち、方法6−4の処理1(1方向変位成分分布の2次元分布推定(2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび1方向変位成分の2次元分布の推定))の後にて、すなわち、2次元関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1((57)式)を行い、さらに、正則化法を用いて、安定的に、
【0339】
【数169】
Figure 0003887774
その結果、関心領域内において(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1を用いた方法6−1に従う。(70)式または(70’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域が確認された場合は、次の処理による。
すなわち、方法6−4の処理2(1方向変位成分の2次元分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(119)式より得られるx方向変位成分の2次元分布の推定結果d (x,y)に、(124)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることができる。
【0340】
【数170】
Figure 0003887774
その結果、方法3−1を用いた方法6−1の処理1または方法6−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(119)式により得られるdx i(x,y)、または、(124)式より得られる平滑化された推定値である。
【0341】
尚、x方向変位成分の2次元分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。
(VII)微分フィルタ
前記信号処理により計測された前記3次元関心空間内の3次元変位ベクトル、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル、1次元関心領域内の1方向変位成分、3次元関心空間内の2次元変位ベクトルまたは1方向変位成分、2次元空間内の1方向変位成分に帯域制限を施した微分フィルタ(3次元、2次元、または、1次元空間フィルタ)または周波数空間にて帯域制限のある微分フィルタの周波数応答(3次元、2次元、または、1次元周波数応答)をかけることにより歪テンソル成分は求められる。
【0342】
上述したように、本発明の各実施形態によれば、時間間隔をおいて取得される超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配から変位成分を求めるにあたり、3次元関心領域内の変位ベクトルの計測精度、特に3次元変位ベクトル分布の計測精度を向上することができる。また、超音波ビーム走査方向と直交する方向の変位計測の精度を向上させることができる。さらに、クロススペクトラムの位相のラッピングや、相互相関法を用いることなく、演算処理をシンプル化して、演算プログラム量の軽減及び演算処理時間を短縮化することができる。
【0343】
また、上記の実施形態により計測された変位ベクトル分布データにより求めた歪テンソル分布データに基づいて、ずり弾性定数分布を演算により求めることができる。なお、ずり弾性率を求める場合は、ずり弾性率が既知の物体を参照物として利用するものとし、関心領域内に参照領域を設定する。この参照領域は、ずり弾性率の絶対値が既知の領域、またはずり弾性率を推定済の領域を設定する。安定的にずり弾性率分布を計測するためには、参照領域は、支配的に変形している方向と直交する方向に広く存在することが必要である。したがって、超音波トランスデューサそのものを力源として対象物を圧迫する場合は、トランスデューサと対象物との間に参照物を挟んで圧迫を加える。この場合、参照物は、治具を用いてトランスデューサ側に装着することができる。
【0344】
ところで、変位ベクトル分布、歪テンソル分布、ずり弾性率分布を計測する狙いは、定量的に静力学または動力学に関る物体、物質および材料の非破壊による特性評価および検査、生物の非侵襲的診断および検査を行うことにある。例えば、ヒト生体軟組織を対象とした場合には、積極的に体外より圧迫ないし低周波振動を印加すると、病変の進行や組織性状の変化に伴う組織の静的弾性特性が変化することに着目したのである。また、体外より圧迫することに代えて、心拍や脈拍などによる組織変形を計測しても同様であり、組織のずり弾性率の値およびその分布形態から組織性状鑑別を行うことができる。
【0345】
また、2次元アレイ型開口、1次元アレイ型開口、または凹面開口アプリケータ使用の、経皮、経口、経膣、経腸による、または、開体手術における放射線治療(強力超音波照射、レーザ照射、電磁RF波照射、電磁マイクロ波照射、など)による生体組織の治療効果(温度変化を含む)のモニタリングに使用することもある。この場合、治療前、治療間、治療後において、治療の制御を行うべく計測されるずり弾性率分布を計測してCRTに画像表示するだけでなく、本発明の各実施形態により計測される変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)を画像等、各分布の任意の位置における値、および、各分布の任意の位置における値の経時的変化(グラフ)をCRTに表示する。また、超音波画像診断装置との併用により、体積弾性率および密度の空間的変化そのもののリアルタイム測定および画像化も可能として、体積弾性率および密度の空間的変化そのものの画像に、計測結果として、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)を重畳表示することもできる。
【0346】
また、穿刺型放射線治療「強力超音波照射、レーザ照射、電磁RF波照射(不感電極も針電極)、電磁マイクロ波照射(不感電極も針電極)、などによる生体組織の治療効果(温度変化を含む)のモニタリングに使用する場合も、治療前、治療間、治療後において治療の制御を行うべく計測されるずり弾性率分布を計測して画像表示するだけでなく、本発明により計測される変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)を画像等、各分布の任意の位置における値、および、各分布の任意の位置における値の経時的変化(グラフ)をCRT表示する、また、超音波画像診断装置との併用により、体積弾性率および密度の空間的変化そのもののリアルタイム測定および画像化も可能として、体積弾性率および密度の空間的変化そのものの画像に、計測結果として、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)を重畳表示することもある。変位ベクトル分布に関してはベクトル線図にて表示することもある。また、抗癌剤投与により生体組織の治療効果(温度変化を含む)のモニタリングに使用し、治療の制御を行うべく治療前・治療間、治療後に計測されるずり弾性率分布を計測して画像表示するだけでなく、本発明により計測される変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)を画像等、各分布の任意の位置における値、および、各分布の任意の位置における値の経時的変化(グラフ)をCRT表示する、また、超音波画像診断装置との併用により、体積弾性率および密度の空間的変化そのもののリアルタイム測定および画像化も可能として、体積弾性率および密度の空間的変化そのものの画像に、計測結果として、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)を重畳表示することもある。変位ベクトル分布に関してはベクトル線図にて表示することもある。これらの治療効果のモニタリングにおいては、特に、力源が存在しない、あるいは、積極的に使用しない場合には、変位ベクトルおよび歪テンソルを計測することにより治療そのものによる組織の変性、組織の膨張・収縮(縮退)、組織の温度変化などの検出にも応用できる。
【0347】
また、生物や物体・物質・材料(生成時および成長時を含む)を対象に、非破壊検査として、変位ベクトル分布、歪テンソル分布、および、ずり弾性率分布の計測およびモニタリングを行うこともある。
【0348】
【発明の効果】
本発明によれば、任意の力源により、未知対象物の3次元関心空間内、または、2次元または1次元関心領域内に生じた変位ベクトル分布および歪テンソル分布を高精度に計測することができる。その結果、計測された変位ベクトルデータを用いて、対象物が自然に変形する場合にはその場を乱すことなく、容易に関心空間・領域のずり弾性率分布を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用してなる変位ベクトル計測装置の基本要素のブロック図である。
【図2】本発明に適用可能な変位・歪の検出センサーの例を説明する図である。
【図3】変位・歪検出センサーの機械走査機構の動作を説明する図である。
【図4】ビームステアリングおよび計測された2つの変位ベクトル成分分布の空間的な補間処理を説明する図である。
【図5】送信ビームの強度を走査方向に正弦的に変化させることを説明する概念図である。
【図6】超音波エコー信号の基本波(n =1)および第n次高調波(n=2〜N)の概念を説明する図である。
【図7】変形前の超音波エコー信号空間内と変形後の超音波エコー信号空間内の3次元関心空間内の点(x,y,z)を中心とする3次元局所空間を説明する図である。
【図8】3次元局所超音波エコー信号の位相マッチング探索例として、変形前の局所空間の対応する局所信号を変形後のエコー信号空間に設けた探索空間内にて探索する場合を説明する図である。
【図9】3次元変位ベクトル分布計測の高分解能化(局所空間の縮小化)を説明する図である。
【図10】3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布計測の方法1−1のフローチャートである。
【図11】3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布計測の方法1−2のフローチャートである。
【図12】3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布計測の方法1−3のフローチャートである。
【図13】3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布計測の方法1−4のフローチャートである。
【図14】3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布計測の方法1−5のフローチャートである。
【図15】変形前の超音波エコー信号空間内と変形後の超音波エコー信号空間内の2次元関心空間内の点(x,y)を中心とする2次元局所領域を説明する図である。
【図16】2次元局所超音波エコー信号の位相マッチング探索の一例として、変形前の局所領域の対応する局所信号を変形後のエコー信号空間に設けた探索領域内にて探索する場合を説明する図である。
【図17】2次元変位ベクトル分布計測の高分解能化(局所領域の縮小化)を説明する図である。
【図18】変形前の超音波エコー信号空間内と変形後の超音波エコー信号空間内の1次元関心領域内の点xを中心とする1次元局所領域を説明する図である。
【図19】1次元局所超音波エコー信号の位相マッチング探索の一例として、変形前の局所領域の対応する局所信号を変形後のエコー信号空間に設けた探索領域内にて探索する場合を説明する図である。
【図20】1次元変位ベクトル分布計測の高分解能化(局所領域の縮小化)を説明する図である。
【図21】3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布計測の方法4−1、3次元関心空間内の1方向変位成分分布計測の方法5−1、および2次元関心領域内の1方向変位成分分布計測の方法6−1のフローチャートである。
【図22】3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布計測の方法4−2、3次元関心空間内の1方向変位成分分布計測の方法5−2、および2次元関心領域内の1方向変位成分分布計測の方法6−2のフローチャートである。
【図23】3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布計測の方法4−3、3次元関心空間内の1方向変位成分分布計測の方法5−3、および2次元関心領域内の1方向変位成分分布計測の方法6−3のフローチャートである。
【図24】3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布計測の方法4−4、3次元関心空間内の1方向変位成分分布計測の方法5−4、および2次元関心領域内の1方向変位成分分布計測の方法6−4のフローチャートである。
【図25】3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布計測の方法4−5、3次元関心空間内の1方向変位成分分布計測の方法5−5、および2次元関心領域内の1方向変位成分分布計測の方法6−5のフローチャートである。
【符号の説明】
1 データ処理手段
2 データ記録手段
3 計測制御手段
4、4’、4” 位置調整手段
5 変位・歪検出センサー
5’、5’’、5’’’ 駆動・出力調整手段
6 測定対象物
7 関心領域
7’ 参照物
8、8’、8’’ 力源
9 液体槽
10 応力計
11 変(歪)位計

Claims (12)

  1. 計測対象物の関心領域に時間間隔をおいて超音波を放射し、前記計測対象物から発生する超音波エコー信号を取得して、2時相で取得された超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配に基づいて局所変位を計測する変位ベクトル計測装置において、正則化法を用いて関心領域内の変位分布に関する空間的な連続性や微分可能性に関する所定の先見的情報を付加した上で、クロススペクトラムのパワーを用いて正規化されたクロススペクトラムの二乗を重み関数として最小二乗法を適用して関心領域内の変位分布を求めることを特徴とする変位ベクトル計測装置
  2. 計測対象物の関心領域に時間間隔をおいて超音波を放射し、前記計測対象物から発生する超音波エコー信号を取得して、2時相で取得された超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配に基づいて局所変位を計測する変位ベクトル計測装置において、前記2時相で取得された超音波エコー信号に基づき相互相関法によりクロススペクトラムの位相の勾配を求めるとともに、正則化法を用いて関心領域内の変位分布に関する空間的な連続性や微分可能性に関する所定の先見的情報を付加した上で、クロススペクトラムのパワーを用いて正規化されたクロススペクトラムの二乗を重み関数として最小二乗法を適用して関心領域内の変位分布を求めることを特徴とする変位ベクトル計測装置
  3. 前記クロススペクトラムは、3次元、2次元または1次元の関心領域内からの3次元、2次元または1次元の超音波エコー信号の各局所3次元、2次元または1次元のクロススペクトラムであり、
    前記変位分布は、3次元関心領域内の3次元変位ベクトル成分分布、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布、1次元関心領域内の1方向変位成分分布、3次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布または1方向変位成分分布、または2次元関心領域内の1方向変位成分分布であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変位ベクトル計測装置
  4. 前記クロススペクトラムの位相の勾配に最小二乗法を施して局所変位を求めるにあたり、正則化法を適用することを特徴とする請求項2に記載の変位ベクトル計測装置
  5. 前記クロススペクトラムの位相の勾配を評価するにあたり、取得された超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことによりデータ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の変位ベクトル計測装置
  6. 前記正則化の処罰項および正則化パラメータは前記関心領域の次元および変位成分の方向数の組合わせに応じて異なることを特徴とする請求項に記載の変位ベクトル計測装置
  7. 前記放射する超音波の放射ビーム強度が走査方向に正弦的に変化させながら前記超音波エコーを取得することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の変位ベクトル計測装置
  8. 前記放射する超音波の放射ビームをビームステアリングするとともに、放射ビーム強度を走査方向に正弦的に変化させながら前記超音波エコーを取得することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の変位ベクトル計測装置
  9. 前記クロススペクトラムの位相の勾配を評価するにあたり、前記超音波エコー信号として、超音波エコー信号の基本波成分と超音波エコー信号の高調波成分の少なくとも一方を用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の変位ベクトル計測装置
  10. 測定対象物に超音波を放射するとともに前記測定対象物内で発生する超音波エコー信号を検出する変位・歪検出センサーと、該変位・歪検出センサーと前記測定対象物の相対的な位置および向きを調整する位置調整手段と、前記変位・歪センサーの駆動信号を出力するとともに変位・歪センサーにより検出される前記超音波エコー信号を受信する駆動受信手段と、該駆動受信手段から出力される前記駆動信号を制御するとともに該駆動受信手段により受信される前記超音波エコー信号の処理をするデータ処理手段と、前記超音波エコー信号を記録するデータ記録手段とを備え、
    前記データ処理手段は、前記計測対象物の関心領域から2時相で取得された前記超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配に基づいて、前記関心領域内の局所変位を計測するにあたり、正則化法を用いて前記関心領域内の変位分布に関する空間的な連続性や微分可能性に関する所定の先見的情報を付加した上で、クロススペクトラムのパワーを用いて正規化されたクロススペクトラムの二乗を重み関数として最小二乗法を適用して前記関心領域内の変位分布を求めるものである変位ベクトル計測装置。
  11. 前記クロススペクトラムは、3次元、2次元または1次元の関心領域内からの3次元、2次元または1次元の超音波エコー信号の各局所3次元、2次元または1次元のクロススペクトラムであり、
    前記変位分布は、3次元関心領域内の3次元変位ベクトル成分分布、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布、1次元関心領域内の1方向変位成分分布、3次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布または1方向変位成分分布、または2次元関心領域内の1方向変位成分分布であることを特徴とする請求項10に記載の変位ベクトル計測装置。
  12. 請求項10又は11に記載の変位ベクトル計測装置を備え、
    前記データ処理手段は、求めた前記3次元関心領域内の3次元変位ベクトル成分、前記2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分、前記1次元関心領域内の1方向変位成分、前記3次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分または1方向変位成分、または前記2次元関心領域内の1方向変位成分に、帯域制限を施した微分フィルタまたは周波数空間にて帯域制限のある微分フィルタの周波数応答をかけることにより歪テンソル成分を求めることを特徴とする歪テンソル計測装置。
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