JP3885631B2 - 非球面レンズ成形型の製造方法およびその方法により製造された非球面レンズアレイ成形型並びに非球面レンズアレイ - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、非球面レンズ成形型の製造方法およびその方法により製造された非球面レンズアレイ成形型並びに非球面レンズアレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信分野においては、通信容量の増大に伴い、光信号処理の高速化、高度化が求められている。光信号を並列的に処理するため、光学要素をアレイ化し、その間の光結合をより高い効率で行うことが要求されている。レンズアレイはこのような光結合に重要な役割を果たす光学要素である。例えば、光源あるいは光ファイバ端面等から出射する発散光を平行光に変換し、光機能素子による信号処理を行ったのち、光検出器あるいは光ファイバ端面等に収束、結合させるために、一対のコリメータレンズが用いられる。
【0003】
このコリメータのレンズ間に挿入する光機能素子によっては、レンズ間距離を大きくすることが要求される。その場合、レンズ径を大きくする必要があるが、均質材料からなる球面レンズでは、光軸から離れた光線に対して必然的に収差が発生するため、レンズ間距離をある程度以上長くすることができない。このような問題を解決するために、非球面レンズが用いられる。レンズの面形状を適切に設計することにより、レンズ周辺部の収差を補正することができる。このような非球面レンズは一般的には精密な機械加工によって形成した金型を用いてプレス成形によって量産される。したがって非球面レンズの生産には金型の作製技術が極めて重要となる。
【0004】
一方、球面レンズ成形型の作製方法として、開口部を有するマスクを設けたガラス基板を、マスク開口部から略等方的に湿式エッチングして、球面状または円筒面状をなす凹部を作製する方法が知られている。
【0005】
上記の球面レンズ成形型を製造する一例として、図8に基づき説明する。成形型となる石英ガラス基板1の表面に開口を有するマスク3を形成する(図8(a))。マスク開口部から略等方的に湿式エッチングを行うことで、半球面状または半円筒面状をなす凹部が石英ガラス基板1に形成される(図8(b))。凹部が形成された成形型となる石英ガラス基板1のマスク3を除去する(図8(c))。再度湿式エッチングを行うことで、凹部は略球面状または略円筒面状に形成される(図8(d))。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のエッチング方法にて作製したレンズ成形型の凹部は、図9のようにA1,A2,A3の各部で曲率がほぼ一定の略球面状または略円筒状になる。すなわち、図2のように凹部の最深部B1からB2,B3へと端部に向かって連続的に曲率が変化する非球面レンズの成形型は作製できなかった。
【0007】
一方、レンズアレイ用の金型を機械加工によって作製する場合、切削工具の摩耗が生じるため、多数のレンズ素子から構成されるレンズアレイの場合、各レンズ素子に対応する金型の寸法にばらつきが生じてしまうという問題点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、各レンズ素子が均一に形成できる非球面レンズ成形型の製造方法およびその方法により製造された非球面レンズアレイ成形型並びに非球面レンズアレイを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、基板表面に基板とはエッチング速度の異なる均質な層を1層形成し、開口形状を有するマスクを形成後、マスクを介して所定時間エッチングし、マスクを除去し少なくとも層を除去するまで再度エッチングし凹部を形成することで非球面レンズ成形型を製造した。
【0010】
また、このように層を除去するまで再度エッチングするようにしたので、得られた非球面レンズ成形型は基板の材料で構成されており、層の材料と成型時に充填する材料との化学反応やぬれ性を考慮する必要がなくなる。さらに、非球面レンズ成型時において基板と層との吸着度の差異を考慮する必要もなくなる。
【0011】
層を構成する材料は、基板よりもエッチング速度が速いものを選定した。
層の厚みの採りうる範囲の上限は1000μm、下限は1μm、望ましい範囲の上限は500μm、下限は10μm、さらに望ましい範囲の上限は300μm、下限は20μmである。
非球面レンズ成形型の凹部の形状は、凹部の最深部の深さが幅の1/2未満になるようにした。また、凹部の端部に向かうほど曲率半径が大きくなるようにした。
【0012】
このように構成してあるので、このレンズ成形型から得られたレンズは、レンズ半径に比べてレンズ厚みが小さく、レンズ頂点部に比べてレンズ周辺部の曲率半径が大きい。即ち、球面収差の小さなレンズを作製することができる。
【0013】
前記凹部を形成した後、凹部に流動性物質を充填し固化させて非球面レンズを形成する。
また、前記凹部を形成した後、凹部に流動性物質を充填し固化させて、固化した物質を前記凹部から取り外すことで非球面レンズを形成する。
【0014】
複数個の凹部を設けた非球面レンズアレイ成形型にこの成形型よりも高屈折率の透明な樹脂を充填し固化させることで非球面レンズアレイが得られる。
複数個の凹部を設けた非球面レンズアレイ成形型に空気よりも高屈折率の透明な樹脂を充填し固化させて取り外すことで非球面レンズアレイが得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明にかかる非球面レンズ成形型の製造方法を工程順に説明した図である。先ず、図1(a)に示すように、石英ガラス基板1の表面に石英ガラス基板1とはエッチング速度の異なる均質な層2を形成した。
【0016】
ここで、この層2の形成方法の一例について説明する。化学的気相成長(CVD)法によりSiO2薄膜が形成できるが、この膜にフッ素(F)を添加することによりフッ酸水溶液によるエッチング速度を変化させることができる。Fは成長中にCF4ガスを混入することにより添加でき、その流量を変化させることにより添加量を変えることができる。図3はCF4の流量によるフッ酸水溶液によるエッチング速度の変化を示している。CF4の流量を0〜60sccmの範囲で変えることによりエッチング速度を約3倍変化できることがわかる。また本発明は、エッチング速度の比を基板とエッチング速度の異なる均質な層のエッチング速度比として用いることを特徴としており、層形成のための成膜を1回だけで行うことができる。
【0017】
図4はフッ酸水溶液濃度ごとのCF4の流量によるCVD膜と石英ガラス基板とのエッチング速度比の変化を示している。CVD膜と石英ガラス基板とのエッチング速度比は、エッチングに用いるフッ酸(HF)水溶液の濃度を変化させることによってもエッチング速度比を変化させることができることがわかる。
【0018】
この結果をもとに、CVD法によりSiO2膜を形成する際、CF4の流量を一定としてFの添加量が一定の膜を形成するとともにフッ酸水溶液の濃度を選択することで、基板とのエッチング速度の比を選択したSiO2層を形成することができる。
【0019】
CVD法で成膜する層2は例えば厚みが30μmのとき5wt%フッ酸水溶液でエッチングしたときの石英ガラス基板1と層2とのエッチング速度の比が2.5、厚みが100μmのとき20wt%フッ酸水溶液でエッチングしたときの石英ガラス基板1と層2とのエッチング速度の比が2.0、厚みが200μmのとき49wt%フッ酸水溶液でエッチングしたときの石英ガラス基板1と層2とのエッチング速度の比が1.7となるように成膜した。
【0020】
図4に示したように、エッチング速度の比は本実施の形態に限定されず1.1〜11.0で可変であり、1〜1000μmの中で膜厚を設定することができる。
【0021】
なお、本実施の形態では層2の形成をCVD法で行ったが、イオンプレーティング法又は真空蒸着法を用いても良い。
【0022】
次に、図1(a)に示すように、Cr膜を堆積した後、フォトリソグラフィ法により直径5μmの円形の開口を持つCr製のマスク3を形成する。本実施の形態ではマスクの材料としてCrを用いたが、Ti、ITO、Alを基とする材料を用いてもよい。
【0023】
次いでフッ酸水溶液を用いて湿式エッチングを施す。図1(b)に示すように、層2と石英ガラス基板1との界面までは等方的にエッチングが進行する。その後、層2と石英ガラス基板1との界面までエッチングが進行すると、石英ガラス基板1は層2よりもエッチング速度が遅いので図1(c)に示すような連続的に異方性となるエッチングが進行する。湿式エッチング後にマスクを除去すると図1(d)に示すような非球面の部分を持つ溝が得られる。
【0024】
次いで、非球面の部分を持つ溝が形成された石英ガラス基板1の表面にマスクを形成しないで再度フッ酸水溶液で少なくとも層2が完全に除去されるまで湿式エッチングを施す。このように2段階でエッチングすることにより、1段目エッチング終了時より曲率半径が大きな凹部1Aを形成することができた(図1(e))。この凹部1Aの形状は、最深部の深さが幅の1/2未満である。また、曲率が一定になる層2を除去してあるので、図2に示すようにB1,B2,B3の曲率が凹部の端部に向かうほど連続的に大きくなるような非球面形状を有する凹部が形成された。
【0025】
また、図5(a)に示すように、複数の円形の開口を有するマスク4(Cr製)を形成して、前述の方法で2段階のエッチングを行うことで図5(b)に示すような複数の凹部5Aを備えた非球面レンズアレイ成形型5が得られる。
【0026】
以上の如く得られた図6(a)に示すような複数の凹部5Aを備えた非球面レンズアレイ成形型5に、図6(b)に示すように紫外線硬化型の透明なエポキシ系樹脂7を非球面レンズアレイ成形型5に滴下し、レンズ用基板6を被せて非球面レンズアレイ成形型5に充填し、紫外線照射により硬化させることで、図6(c)に示すような平板状の非球面レンズアレイ8が形成できる。非球面レンズアレイ成形型5およびレンズ用基板6よりも高屈折率のエポキシ系樹脂を選定することで、エポキシ系樹脂7と非球面レンズアレイ成形型5との間でレンズ効果が得られる。エポキシ系樹脂7の屈折率は、1.65以上になるものを用いることが望ましい。
【0027】
前記と同様にして得られた図7(a)に示すような複数の凹部5Aを備えた非球面レンズアレイ成形型5に離型剤9を塗布し、図7(b)に示すように紫外線硬化型の透明なエポキシ系樹脂10を非球面レンズアレイ成形型5に滴下し、レンズ用基板6を被せて図7(c)に示すように充填し、エポキシ系樹脂10を紫外線照射により硬化させる。エポキシ系樹脂10には非球面レンズアレイ成形型5の複数の凹部5Aが転写されているので、エポキシ系樹脂10を非球面レンズアレイ成形型5から離型させることで、図7(d)に示すようなエポキシ系樹脂10とレンズ用基板6とからなる非球面レンズアレイ11が形成できる。
【0028】
エポキシ系樹脂10は、空気より高屈折率で、レンズ用基板6と同等の屈折率になるものを用いることが望ましい。
【0029】
本実施の形態ではエポキシ系の樹脂を用いたがアクリル系の樹脂を用いてもよい。また、紫外線硬化型の樹脂に代えて熱硬化型あるいは光硬化型の透明材料を用いてもよい。
【0030】
また、本実施の形態では、円形の開口を有するマスクを用いたが、円形の開口に代えて長方形の開口を有するマスクを用いて断面が非球面の凹部を形成してもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、基板表面に基板とはエッチング速度の異なる均質な層を形成し、マスクを介して湿式エッチングしているので、非球面形状の凹部を有する成形型および非球面レンズアレイが形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の非球面レンズ成形型の製造方法を説明する断面図。
【図2】本実施形態の非球面レンズ成形型の断面図。
【図3】フッ素添加SiO2膜のフッ酸水溶液によるエッチング特性を示す図。
【図4】フッ酸水溶液の濃度ごとのフッ素添加SiO2膜と石英ガラスとのエッチング速度比を示す図。
【図5】本実施形態の非球面レンズアレイ成形型の製造方法を説明する断面図。
【図6】本実施形態の非球面レンズアレイの製造方法を説明する断面図。
【図7】本実施形態の非球面レンズアレイの製造方法を説明する断面図。
【図8】従来のレンズ成形型の製造方法を説明する断面図。
【図9】従来のレンズ成形型の断面図。
【符号の説明】
1 石英ガラス基板
2 均質な層
3、4 マスク
5 非球面レンズアレイ成形型
6 レンズ用基板
7、10 樹脂
8、11 非球面レンズアレイ
9 離型剤
Claims (11)
- 基板表面に基板とはエッチング速度の異なる均質な層を形成する工程と、前記層の上に開口形状を有するマスクを形成する工程と、前記層を前記マスクを介してエッチングし、このエッチングが前記層と前記基板との界面まで進行した後は前記層と前記基板とを併せてエッチングする工程と、前記マスクを除去する工程と、少なくとも前記層が除去されるまで再度前記層と前記基板とをエッチングし、前記基板に凹部を形成する工程と、からなることを特徴とする非球面レンズ成形型の製造方法。
- 前記層を構成する材料は、前記基板よりもエッチング速度の速いものを選定することを特徴とする請求項1に記載の非球面レンズ成形型の製造方法。
- 前記基板と前記層とのエッチング速度の比が1.1〜11.0であることを特徴とする請求項1に記載の非球面レンズ成形型の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の非球面レンズ成形型の製造方法にて製造された非球面レンズ成形型。
- 前記凹部の形状は、凹部の最深部の深さが幅の1/2未満であることを特徴とする請求項4に記載の非球面レンズ成形型。
- 前記凹部の形状は、凹部の端部に向かうほど曲率半径が大きくなっていることを特徴とする請求項4に記載の非球面レンズ成形型。
- 請求項4〜6のいずれかに記載の非球面レンズ成形型の凹部に、流動性物質を充填し固化させることを特徴とする非球面レンズの製造方法。
- 請求項4〜6のいずれかに記載の非球面レンズ成形型の凹部に、流動性物質を充填し固化させる工程と、固化した物質を前記凹部から取り外す工程と、からなることを特徴とする非球面レンズの製造方法。
- 請求項4〜6のいずれかに記載の非球面レンズ成形型に、前記凹部が複数個設けられていることを特徴とする非球面レンズアレイ成形型。
- 請求項7に記載の非球面レンズの製造方法にて製造された非球面レンズを複数個備え、前記固化させる流動性物質が前記成形型よりも高屈折率の透明な樹脂であることを特徴とする非球面レンズアレイ。
- 請求項8に記載の非球面レンズの製造方法にて製造された非球面レンズを複数個備え、前記固化させる流動性物質が空気よりも高屈折率の透明な樹脂であることを特徴とする非球面レンズアレイ。
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