JP3884889B2 - 乾式トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真,静電荷像を顕像化するための画像形成方法及びトナージェットに使用される乾式トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報及び特公昭43−24748号公報等に記載されているごとく多数の方法が知られているが、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで、該潜像をトナーで現像を行って、可視像とし、必要に応じて紙などの転写材料にトナーを転写させた後、熱・圧力等により転写材上にトナー画像を定着して複写物を得るものであり、そして転写せず感光体上に残ったトナーは種々の方法でクリーニングされ、上述の工程が繰り返される。
【0003】
近年このような複写装置は、より小型化,より軽量化そしてより高速化,より高信頼性が厳しく追及されてきている。また、単なる一般に言うオリジナル原稿を複写するための事務処理用複写機ということだけでなく、コンピューターの出力としてのデジタルプリンターあるいはグラフィックデザイン等の高細密画像のコピー用に使われはじめた。そのため、画質としてより高精細,高画質が求められており、その結果トナーに要求される性能もより高度になってきた。
【0004】
ところで、トナーは現像される静電潜像の極性に応じて、正又は負の電荷を有する必要がある。トナーに電荷を保有せしめるためには、トナーの成分である樹脂の摩擦帯電性を利用することも出来るが、この方法ではトナーの帯電が安定しないので、濃度の立ち上がりが遅く、カブリ易い。そこで、所望の摩擦帯電性をトナーに付与するために帯電制御剤を添加することが行われている。
【0005】
今日、当該技術分野で知られている帯電制御剤としては、負摩擦帯電性帯電制御剤として、モノアゾ染料の金属錯塩,ヒドロキシカルボン酸,ジカルボン酸,芳香族ジオール等の金属錯塩,酸成分を含む樹脂等が知られている。また、正摩擦帯電性帯電制御剤として、ニグロシン染料,アジン染料,トリフェニルメタン系染顔料,4級アンモニウム塩,4級アンモニウム塩を側鎖に有するポリマー等が知られている。
【0006】
しかしながら、帯電制御剤によっては、以下のような欠点を有する。画像濃度とカブリのバランスがとりにくい、高湿環境で十分な画像濃度を得にくい、樹脂への分散性が悪い、保存安定性,定着性,耐オフセット性に悪影響を与える等である。
【0007】
従来、芳香族カルボン酸類の金属錯体,金属塩は特開昭53−127726号公報,特開昭57−111541号公報,特開昭57−124357号公報,特開昭57−104940号公報,特開昭61−69073号公報,特開昭61−73693号公報,特開昭61−267058号公報,特開昭62−105156号公報,特開昭62−145255号公報,特開昭62−163061号公報,特開昭63−208865号公報,特開平3−276166号公報,特開平4−84141号公報,特開平8−160668号公報を始めとしていくつかの提案がなされている。しかしながら、これらの公報に提案されているものは、摩擦帯電付与という観点からはいずれも優れたものであるが、簡易な現像器構成で環境変動,経時,使用状況に関わらず、安定した現像性の得られるものは少ない。
【0008】
さらに、特開平10−312089号公報では、ベンジル酸のホウ素錯塩とサリチル酸誘導体の金属塩を併用したトナーが開示されている。本発明者らの検討によれば、ベンジル酸のホウ素錯塩とサリチル酸誘導体の金属塩を併用することによりトナーの摩擦帯電量と帯電速度の改善が図られるものの、異なった帯電系列を呈する荷電制御剤が混在するため、トナーの摩擦帯電分布として未だ改善する余地を有していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解消した乾式トナーを提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、低湿下で使用しても、高湿下で使用しても高い画像品質が安定して得られ、経時あるいは放置においても画像欠陥を生じない乾式トナーを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂,着色剤,離型剤,有機金属化合物を有するトナーにおいて、
該トナーが、THF可溶分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3,000〜30,000の領域に少なくとも一つピークを有し、さらに分子量100,000〜5,000,000の領域に少なくとも一つピークを有しており、
該有機金属化合物が、下記式(1)で示されるような未置換又は置換を有するベンジル酸(benzilic acid)のアルミニウム化合物を有することを特徴とする乾式トナーに関する。
【0012】
【化2】
(式中、R1とR2は同一であっても異なっていても良く、各々、直鎖又は分岐したアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基及び水酸基からなるグループから選ばれる置換基を示し、m及びnは0〜5の整数を示す。)
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記式(1)で示されるような未置換又は置換基を有するベンジル酸(benzilic acid)のアルミニウム化合物を有し、GPCにより測定される分子量分布において、分子量3,000〜30,000の領域に少なくとも一つピークを有し、さらに分子量100,000〜5,000,000の領域に少なくとも一つピークを有しているトナーが、定着性に悪影響を与えることなく、立ち上がりの良さを保持しつつ、低湿環境下においても帯電過剰とならず、高湿環境下においても高い帯電量を得られることを見出した。
【0014】
本発明で用いるベンジル酸のアルミニウム化合物は、分子量が5,000〜20,000の領域に少なくとも一つピークを有し、さらに分子量100,000〜3,000,000の領域に少なくとも一つピークを有している結着樹脂と組み合わせて用いることで、その化合物としての性能を極めて効率よく発揮出来る。これは、上記のような結着樹脂が適度な弾性を持っていることから、トナー製造時の溶融混練時に混練シェアをかけることができ、ベンジル酸のアルミニウム化合物等の原材料の分散を向上させることが出来るためである。この結果、従来からの課題であった定着性に悪影響を及ぼすことなく、帯電の安定なトナーを得ることが出来る。
【0015】
さらに、本発明のベンジル酸のアルミニウム化合物は、カルボキシル基,水酸基などの酸素と配位し易いことなどから、アルミニウム原子にカルボキシル基,水酸基などが配位する機会が多くなる。従って、結着樹脂として、官能基にカルボキシル基,酸無水物基を有するスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂などを用いると、ベンジル酸のアルミニウム化合物の結着樹脂中へのなじみがよく、分散性に優れ、トナー粒子中からの脱落を防ぎ、帯電均一化と帯電の耐久安定性が得られる。
【0016】
さらに、酸価を持つ結着樹脂と共に用いると、水分子の持つ極性を利用し、帯電が強調される効果の寄与を大きいものとすることが出来る。
【0017】
以下に、本発明に係るベンジル酸のアルミニウム化合物に用いられる未置換又は置換基を有するベンジル酸の具体例を挙げるが、本発明はこれらのベンジル酸に限定されるわけではない。
【0018】
【化3】
【0019】
本発明のトナーに好ましく用いられるベンジル酸のアルミニウム化合物は、例えば、上記の如き未置換又は置換基を有するベンジル酸と硫酸アルミニウムAl2(SO4)3を所望のモル比で混合し、アルカリ雰囲気下で加熱反応させ、得られた沈殿物を濾別採取し、さらに水洗、乾燥することによって得ることが出来る。但し、本発明に係るベンジル酸のアルミニウム化合物の製法はこれに限定されるものではない。
【0020】
本発明のトナーに好ましく用いられるベンジル酸のアルミニウム化合物の代表的な構造式(I−1)と(I−2)を以下に挙げるが、本発明はこれらのベンジル酸のアルミニウム化合物に限定されるわけではない。
【0021】
【化4】
(式中、X+は1価のカチオンであり、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム及びアルキルアンモニウムから選ばれる。)
【0022】
【化5】
【0023】
次に、本発明のトナーに好ましく用いられるベンジル酸のアルミニウム化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらのベンジル酸のアルミニウム化合物に限定されるわけではない。
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
本発明に係るベンジル酸のアルミニウム化合物をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子の内部に含有させる方法とトナー粒子の表面、及び/又は外部に含有させる方法がある。前者の場合の好ましい添加量としては結着樹脂100質量部に対してベンジル酸のアルミニウム化合物0.1〜10質量部、また、後者の場合好ましい添加量としては結着樹脂100質量部に対してベンジル酸のアルミニウム化合物0.01〜5質量部であって、特にメカノケミカル的にトナー粒子表面に固着させるのが好ましい。
【0027】
また、本発明の化合物は、従来の技術で述べたような、公知の電荷制御剤と組み合せて使用することも出来る。例えば、他の有機金属錯体、金属塩、キレート化合物で、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体などが挙げられる。その他には、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類などのカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の錯体などもあげられる。また、ビスフェノール類、カリックスアレーンなどのフェノール誘導体も用いられる。
【0028】
一方、トナーを正荷電性に制御するものとして下記物質がある。
【0029】
ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類;これらを単独で或いは2種類以上組合せて用いることができる。
【0030】
本発明で用いられるベンジル酸のアルミニウム化合物を含有したトナーは、高湿あるいは低湿環境下においても帯電特性の変動が少なく、安定した現像特性を保持できると同時に、トナーのGPCによる分子量分布で分子量3,000〜30,000の領域に少なくとも一つピークが存在し、分子量100,000〜5,000,000の領域に少なくとも一つピークを有する場合、分散性が非常によい上、トナーからの該ベンジル酸のアルミニウム化合物の欠落が少ない為、定着性を悪化させることなく耐久安定性に優れる。
【0031】
本発明のトナーは、THF可溶分のGPCによる分子量分布で分子量3,000〜30,000の領域に少なくとも一つピークが存在し、分子量100,000〜5,000,000の領域に少なくとも一つピークを有していることを特徴とし、好ましくは分子量5,000〜20,000の領域に少なくとも一つのピークが存在し、分子量100,000〜1,000,000の領域に少なくとも一つのピークが存在しているものが良い。また、THF可溶分は分子量100,000以下の成分が50〜90%となるようなトナーも好ましい。
【0032】
分子量分布において、この様なピークを有するトナーは定着性、耐オフセット及び保存性がバランスよく保たれる。
【0033】
また、本発明の結着樹脂は、分子量が5,000〜20,000の領域に少なくとも一つピークを有し、さらに分子量100,000〜3,000,000の領域に少なくとも一つピークを有していることが望ましい。
【0034】
分子量分布において、この様なピークを有しない場合、樹脂として適度な弾性を持てなくなるため、トナー製造時の溶融混練時に混練シェアをかけることができず、ベンジル酸のアルミニウム化合物等の原材料の分散性が悪化し、定着性及び耐久安定性ともに悪化する。
【0035】
本発明において、トナー及び結着樹脂のTHF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPCによる分子量分布は次の条件で測定される。
【0036】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。
【0037】
カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合せや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを挙げることができる。
【0038】
また、試料は以下のようにして作製する。
【0039】
試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)など使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0040】
本発明で用いられる結着樹脂の酸価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、さらに好ましくは1〜50mgKOH/gが良く、特には2〜40mgKOH/gであることが好ましい。
【0041】
結着樹脂の酸価が1mgKOH/g未満の場合は、ベンジル酸のアルミニウム化合物との相互作用による現像安定性や耐久安定効果を十分に発揮しきれない。一方、100mgKOH/gを超える場合は結着樹脂の吸湿性が強くなり、画像濃度が低下し、カブリが増加する傾向がある。
【0042】
本発明において、結着樹脂の酸価は以下の方法により求める。
【0043】
<酸価の測定>
基本操作はJIS K−0070に準ずる。
【0044】
1)結着樹脂の粉砕品0.5〜2.0(g)を精秤し、結着樹脂の重さW(g)とする。
2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
3)0.1規定のKOHのメタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる。)
4)この時のKOH溶液の使用量S(ml)とし、同時にブランクを測定しこの時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
【0045】
酸価(mgKOH/g)=((S−B)×f×5.61)/W
【0046】
本発明における樹脂の構成成分としては、一般的にトナー用樹脂として用いられるもので、カルボキシル基又は酸無水物基を有するものならばビニル系重合体、ポリエステル樹脂等種々のものを用いることが出来る。
【0047】
本発明の特徴とする結着樹脂を得る為には、ビニル系重合体のモノマーとして以下のものを用いることができる。
【0048】
例えば、マレイン酸、シトラコン酸、ジメチルマレイン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、及びこれらの無水物;フマル酸、メタコン酸、ジメチルフマル酸;などの不飽和二塩基酸、無水物モノマー。更に上記不飽和二塩基酸のモノエステル。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸及びこれらの無水物;上記α,β−不飽和酸間の無水物及び、低級脂肪酸との無水物;などのα,β−不飽和酸、これらの無水物モノマー。アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸及びこれらの無水物、モノエステル。これらの中でも、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、マレイン酸無水物が本発明の結着樹脂を得るモノマーとして特に好ましく用いられる。
【0049】
更にビニル重合体のコモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。
【0050】
例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等の不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、沸化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα−メチル脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体;前述のα,β−不飽和酸のエステル、二塩基酸のジエステル類;のビニル系モノマが単独もしくは2つ以上で用いられる。
【0051】
これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0052】
スチレン系共重合体が好ましい理由としては、スチレン系共重合体のポリマー鎖のところどころに存在するカルボキシル基が効果的にベンジル酸のアルミニウム化合物と相互作用し、離型剤,磁性体等の原料との分散性を向上させるためである。
【0053】
また架橋性モノマーとしては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。
【0054】
本発明に用いられる結着樹脂は、必要に応じて以下に例示する様な架橋性モノマーで架橋された重合体であってもよい。
【0055】
芳香族ジビニル化合物、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキジフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキジフェニル)プロパンジアクリレート及び、以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;更には、ポリエステル型ジアクリレート化合物類、例えば、商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
【0056】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜5質量部程度(更に好ましくは0.03〜3質量部程度)用いることが好ましい。
【0057】
本発明の樹脂を製造する時の開始剤、溶剤の種類及び反応条件の選択は本発明の目的とする樹脂を得る為に重要な要素である。開始剤としては、例えはベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾ及びジアゾ化合物などが利用できる。
【0058】
本発明に係る結着樹脂を合成する方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが利用できる。
【0059】
本発明のベンジル酸のアルミニウム化合物は、摩擦帯電能力に優れ、高い帯電量が得られるので、高い帯電量を必要とする磁性トナーにとって好適な荷電制御剤となる。さらに、ベンジル酸のアルミニウム化合物自体の良好な分散性に加え、結着樹脂に酸価を有するものを用いると磁性体の分散性向上に働くので、耐久性、帯電均一性が得られるようになる。
【0060】
本発明に用いられる磁性体としては、マグネタイト,マグヘマイト,フェライト等の酸化鉄;鉄,コバルト,ニッケルのような金属あるいはこれらの金属とアルミニウム,コバルト,銅,鉛,マグネシウム,マンガン,セレン,チタン,タングステン,バナジウムのような金属の合金及びその混合物が用いられ、その磁性体表面あるいは内部に非鉄元素を含有するものが好ましい。
【0061】
本発明に用いられる磁性体は、異種元素を含有するマグネタイト,マグヘマイト,フェライト等の磁性酸化鉄及びその混合物が好ましく用いられる。
【0062】
中でもリチウム,ベリリウム,ボロン,マグネシウム,アルミニウム,シリコン,リン,ゲルマニウム,チタン,ジルコニウム,錫,鉛,亜鉛,カルシウム,バリウム,スカンジウム,バナジウム,クロム,マンガン,コバルト,銅,ニッケル,ガリウム,カドミウム,インジウム,銀,パラジウム,金,水銀,白金,タングステン,モリブデン,ニオブ,オスミウム,ストロンチウム,イットリウム,テクネチウム,ルテニウム,ロジウム,ビスマスから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する磁性酸化鉄であることが好ましい。特にリチウム,ベリリウム,ボロン,マグネシウム,アルミニウム,シリコン,リン,ゲルマニウム,ジルコニウム,錫,第4周期の遷移金属元素が好ましい元素である。これらの元素は酸化鉄結晶格子の中に取り込まれても良いし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれても良いし、表面に酸化物あるいは水酸化物として存在しても良い。また、酸化物として含有されているのが好ましい形態である。
【0063】
これらの元素を有する磁性体は結着樹脂に対し馴染みが良く、非常に分散性が良い。更にこの分散性の良さが、本発明で用いられるベンジル酸のアルミニウム化合物の分散を向上することができ、本発明のベンジル酸のアルミニウム化合物の効果を十分に発揮することができる。
【0064】
また、これらの磁性体は粒度分布が揃い、その結着樹脂への分散性とあいまって、トナーの帯電性を安定化することが出来る。また近年はトナー粒径の小径化が進んでおり、重量平均粒径10μm以下のような場合でも、帯電均一性が促進され、トナーの凝集性も軽減され、画像濃度の向上やカブリの改善等現像性が向上する。特に重量平均粒径6.0μm以下のトナーにおいてはその効果は顕著であり、きわめて高精細な画像が得られる。重量平均粒径は2.5μm以上である方が十分な画像濃度が得られて好ましい。一方でトナーの小粒径化が進むとベンジル酸のアルミニウム化合物の遊離の生じやすくなるが、本発明のトナーは帯電均一性に優れているので多少のベンジル酸のアルミニウム化合物が存在してもスリーブ汚染の影響を受けにくくなる。
【0065】
これらの異種元素の含有率は磁性酸化鉄の鉄元素を基準として0.05〜10質量%であることが好ましい。更に好ましくは0.1〜7質量%であり、特に好ましくは0.2〜5質量%、更には0.3〜4質量%である。0.05質量%より少ないと、これら元素の含有効果が得られなく、良好な分散性や帯電均一性が得られなくなる。また、10質量%より多くなると、電荷の放出が多くなり帯電不足を生じ、画像濃度が低くなったり、カブリが増加することがある。
【0066】
また、これら異種元素の含有分布において、磁性体の表面に近い方に多く存在しているものが好ましい。例えば、酸化鉄の鉄元素溶解率が20質量%までに存在する異種元素の含有量Bと該磁性酸化鉄の異種元素の全含有量Aとの比(B/A)×100が40%以上であることが好ましい。さらには40〜80%が好ましく、60〜80%が特に好ましい。表面存在量を多くすることにより分散効果や電気的拡散効果を、より向上させることが出来る。また、トナー中に含有される量としては樹脂成分100質量部に対して、20〜200質量部、特に好ましくは樹脂成分100質量部に対して40〜150質量部が良い。
【0067】
さらに、本発明で使用される磁性酸化鉄の球形度(Ψ)が0.8以上であることが好ましい。球形度(Ψ)が0.8より小さい場合には磁性酸化鉄の個々の粒子が、面と面で接触する形となり、粒径0.1〜1.0μm付近の小さな磁性酸化鉄粒子では機械的せん断力をもってしても容易に磁性酸化鉄同士を引き離すことが出来ず、そのためトナー中への磁性酸化鉄の分散が十分に行えない場合がある。
【0068】
また、場合により、本発明のトナーに用いる磁性酸化鉄は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、チタネート、アミノシラン等で処理しても良い。
【0069】
本発明の磁性酸化鉄中の元素量は、蛍光X線分析装置 SYSTEM3080(理学電機工業(株)社製)を使用し、JIS K0119蛍光X線分析通則に従って、蛍光X線分析を行うことにより測定した。元素分布については、塩酸溶解しながらの元素量をプラズマ発光分光(ICP)により測定定量し、各元素の全溶時の濃度に対する各溶解時の各元素濃度からその溶解率を求めた。
【0070】
磁性酸化鉄の球形度(Ψ)は、電子顕微鏡(日立製作所H−700H)でコロジオン膜銅メッシュに処理した磁性酸化鉄の試料を用いて、加電圧100kVにて、10,000倍で撮影し、焼きつけ倍率3倍として、最終倍率30,000倍とする。これによって、形状の観察を行い、各粒子の最大長(μm)及び最小長(μm)を計測しランダムに100個を選び出し次式に従って計算し次いで計算値を平均したものである。
【0071】
球形度=磁性酸化鉄の最小長(μm)/磁性酸化鉄の最大長(μm)
【0072】
トナーに使用し得るその他の着色剤としては、任意の適当な顔料または染料が挙げられる。
【0073】
例えば顔料としてカーボンブラック,アニリンブラック,アセチレンブラック,ナフトールイエロー,ハンザイエロー,ローダミンレーキ,アリザリンレーキ,ベンガラ,フタロシアニンブルー,インダンスレンブルー等が挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに充分な量が用いられる。樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部の顔料を使用することが好ましい。同様の目的で、さらに染料が用いられる。例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料があり、樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の染料を使用することが好ましい。
【0074】
本発明に用いられる離型剤としてのワックスには次のようなものがある。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;または、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部脱酸化したものが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸の如き飽和直鎖;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0075】
好ましく用いられるワックスとしては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン;高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン;低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン;放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン;高分子ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス;ジンドール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス;炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス;炭化水素系ワックスと官能基を有するワックスとの混合物;これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーをグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0076】
また、これらのワックスをプレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0077】
本発明に使用するワックスは、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために融点が65〜160℃であることが好ましく、更には65〜130℃であることが好ましく、特には70℃〜120℃であることが好ましい。65℃未満では耐ブロッキング性が低下し、160℃を超えると耐オフセット効果が発現し難くなる。
【0078】
本発明のトナーにおいては、これらのワックス総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部で用いられ、好ましくは0.5〜10質量部で用いるのが効果的である。また、悪影響を与えない限り他のワックス類と併用しても構わない。
【0079】
本発明においてワックスの融点は、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0080】
本発明において、ワックス又はトナーの示差走査熱量計によるDSC測定では、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7が利用できる。
【0081】
測定方法は、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温させ前履歴を取った後、温度測定10℃/min、温度0〜200℃の範囲で降温させた後、昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
【0082】
本発明のトナーには、添加し得る着色材料として、従来公知のカーボンブラック、銅フタロシアニンの如き顔料または染料などが使用できる。
【0083】
また、本発明のトナーには、無機微粉体または疎水性無機微粉体が混合されることが好ましい。例えば、シリカ微粉末を添加して用いることが好ましい。
【0084】
本発明に用いられるシリカ微粉体は、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両方が使用可能であるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
【0085】
さらに本発明に用いるシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシランカップリング剤で処理した後、あるいはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0086】
疎水化処理に使用されるシランカップリング剤としては、例えばヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0087】
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ3×10-5〜1×10-3m2/sのものが用いられ、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が好ましい。
【0088】
シリコーンオイル処理の方法は例えばシランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合しても良いし、べースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、べースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
【0089】
本発明中の磁性トナーには、必要に応じてシリカ微粉体以外の外部添加剤を添加してもよい。
【0090】
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
【0091】
例えばテフロン,ステアリン酸亜鉛,ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい。或いは酸化セリウム,炭化ケイ素,チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。或いは例えば酸化チタン,酸化アルミニウム等の流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。ケーキング防止剤、或いは例えばカーボンブラック,酸化亜鉛,酸化アンチモン,酸化スズ等の導電性付与剤、また逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0092】
磁性トナーと混合される無機微粉体または疎水性無機微粉体は、磁性トナー100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは0.1〜3質量部)使用するのが良い。
【0093】
本発明に係るトナーを作製するには、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロール,ニーダー,エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後、機械的な粉砕・分級によってトナーを得る方法が好ましく、他にはあるいは結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合トナー製造法、あるいはコア材,シェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいてコア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法、結着樹脂中溶液中に構成材料を分散した後、噴霧乾燥によりトナーを得る方法等が応用出来る。さらに必要に応じ所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合し、本発明に係るトナーを製造することが出来る。
【0094】
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製)が挙げられる。分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所杜);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0095】
【実施例】
以上本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下実施例にもとづいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、これによって本発明の実施の態様がなんら限定されるものではない。実施例中の部数は質量部である。
【0096】
実施例に用いられる樹脂を表1に、ワックスを表2に、磁性体を表3に記す。スチレン系樹脂は、懸濁重合によりあるいは、溶液重合又は懸濁重合した樹脂と溶液重合した樹脂をブレンドすることにより合成した。磁性体は、マグネタイト生成時に内部に存在する元素の塩を添加しpHを調整しながらマグネタイト粒子を生成させ、磁性体1〜5を得た。磁性体1,3は珪酸塩を、磁性体2は燐酸塩を、磁性体4はマグネシウム塩を添加してマグネタイト粒子を生成した。特に塩を添加せずにマグネタイト粒子を生成させ、その後ジルコニウム塩を添加してpH調整しマグネタイト粒子表面にジルコニアを析出させて磁性体5を得た。
【0097】
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に設定した二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。
【0098】
得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機で粉砕し、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径6.5μmのトナー粒子を得た。トナー粒子100部に対し、ヘキサメチルシシラザン15wt%とジメチルシリコーン15wt%で疎水化処理したメタノールウェッタビリティ80%,BET比表面積120m2/gの疎水性シリカ微粉体を1.2部とチタン酸ストロンチウム1.0部とを外添混合してトナーNo.1を調製した。
【0099】
トナー内添処方及び物性値を表4に記す。
【0100】
このトナーNo.1を、フィルムを介して記録材を該加熱体に密着させる加圧部材とからなる定着装置を使用している市販のLBPプリンター(LBP−430,キヤノン社製)を3倍のプリントスピードに改造したものを用いて、定着性,耐オフセット性の評価を、また、市販のLBPプリンター(LBP−930,キヤノン社製)を2.5倍のプリントスピードに改造したものを用いて15℃,10%RHの環境と30℃,80%RHの環境で1万5千枚のプリント試験を行った。その結果、両環境で画像濃度が高く、カブリのない高精細な画像が得られた。その評価結果を表5、6及び7に示す。
【0101】
定着性は、50g/cm2の荷重をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)で評価した。
○:10%未満
△:10%以上、20%未満
×:20%以上
【0102】
耐オフセット性は、画像面積率約5%のサンプル画像をプリントアウトし、3000枚後の画像上の汚れの程度により評価した。
○:オフセットは未発生
△:わずかにオフセットが発生した
×:ひどくオフセットが発生した
【0103】
画像濃度は、マクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、反射濃度測定を行い、5mm角の画像を測定した。カブリは、反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて行い、画像形成後の白地部反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drをカブリ量としてカブリの評価を行った。数値の少ない方がカブリ抑制が良い。画質の評価としては、孤立ドット100個画像形成し、100個のうち何ドット表すことができたかによって評価する。ドット再現数が多い方が高画質といえるものである。
【0104】
これらの評価を、初期、15000枚時、機外に一日放置した後に行った。
【0105】
実施例2〜5
表4に記載の処方で実施例1と同様にトナーNo.2〜5を作製し、同様の試験をした結果を表5、6及び7に示す。
【0106】
比較例1〜3
表4に記載の処方で、実施例1と同様にトナーNo.6、7及び8を作製し、同様の試験をした結果を表5、6及び7に示す。尚、有機金属化合物としてトナーNo.8ではベンジル酸(2mol)とB原子(1mol)からなる化合物を使用した。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
【発明の効果】
本発明によれば、上記ベンジル酸のアルミニウム化合物を有し、GPCにより測定される分子量分布において、分子量3,000〜30,000の領域に少なくとも一つピークを有し、さらに分子量100,000〜5,000,000の領域に少なくとも一つピークを有しているトナーによって、定着性を悪化させることなく、経時あるいは放置においても画像欠陥を生じず、低湿下で使用しても、高湿下で使用しても高い画像品質が安定して得ることができる。
Claims (10)
- 少なくとも結着樹脂,着色剤,離型剤,有機金属化合物を有するトナーにおいて、
該トナーが、THF可溶分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3,000〜30,000の領域に少なくとも一つピークを有し、さらに分子量100,000〜5,000,000の領域に少なくとも一つピークを有しており、
該有機金属化合物が、下記式(1)で示されるような未置換又は置換基を有するベンジル酸(benzilic acid)のアルミニウム化合物を有することを特徴とする乾式トナー。
- 該ベンジル酸のアルミニウム化合物が結着樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部内添されていることを特徴とする請求項1に記載の乾式トナー。
- 該結着樹脂がカルボキシル基を有し、そのカルボキシル基が、マレイン酸ハーフエステルから生成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾式トナー。
- 該結着樹脂がスチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該着色剤が磁性酸化鉄であり、結着樹脂100質量部に対し20〜200質量部含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該磁性酸化鉄が鉄元素基準で異種元素を0.05〜10質量%で含有している磁性酸化鉄微粒子であることを特徴とする請求項5に記載の乾式トナー。
- 該磁性酸化鉄の鉄元素溶解率が20質量%までに存在する異種元素の含有量Bと該磁性酸化鉄の異種元素の全含有量Aとの比(B/A)×100が40%以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の乾式トナー。
- 該磁性酸化鉄が球形度(Ψ)が0.8以上を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該離型剤が結着樹脂100質量部に対し0.2〜20質量部含有してることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の乾式トナー。
- 該離型剤の融点が65〜160℃であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の乾式トナー。
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