JP3884501B2 - 人工血管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工血管に関し、さらに詳細には、血行再建を目的として生体の血管とつなぎ合わせて移植するためのものであって、特に優れた生体適合性、安全性等を有する人工血管に関する。
【0002】
【従来の技術】
1950年頃から、血行再建を目的として人工血管が臨床で用いられるようになっている。この人工血管としては、ポリエステル繊維を編織したチューブやフッ素樹脂を延伸フィブリル化したチューブが用いられている。これらの人工血管の管壁組織は空隙性に富み、移植後にその内表面に血管内皮細胞が移着、成長し、生体化して本来の血管の代用となる。従って、このような空隙性は必要であると考えられている。しかしながら、これらの空隙性に富む人工血管を移植した場合、血球や血漿の漏出現象を引き起こす。そこでこれを防ぐために、人工血管は予め患者の血液で処理されている。この処理はプレクロッティングと呼ばれ、患者の凝固血により空隙を塞ぎ、さらにこの凝固血は血管内部壁に成長する血管内皮細胞の栄養源となって生体化に寄与することになる。しかしながら、プレクロッティングは血液が凝固する性質を用いているため、小口径の人工血管ではプレクロッティングの操作を行った時点で血管が閉塞するため、大口径の人工血管しか実用できないという問題点を有している。
【0003】
プレクロッティング不要の人工血管としては、ゼラチンをコートする方法(特開昭61−135651号公報)や架橋ゼラチンを含浸する方法(特開昭62−258666号公報)、さらにポリシロキサンでコートする方法(特開平7−51354号公報)が報告されている。ゼラチンは生体適合性を有するが、剥離・脱落や菌による汚染の危険性を持つ。ポリシロキサンは、剥離・脱落の危険性は少ないが生体適合性に劣る。このように生体適合性と安全性の両方に優れた人工血管については、報告されていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた生体適合性、安全性を有する人工血管を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、2− ( メタクリロイルオキシ ) エチル−2 ' − ( トリメチルアンモニオ ) エチルホスフェート及び2−エチルヘキシルメタクリレートの共重合体 (PME) と、セグメント化ポリウレタンとを、塩化メチレン/エタノール混合溶媒に溶解させた溶液を、ポリエステル製人工血管に浸透させ、乾燥させた、内径0.5〜10mm、長さ1〜30cmの PME コート人工血管が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の人工血管に用いるPME は、2− ( メタクリロイルオキシ ) エチル−2 ' − ( トリメチルアンモニオ ) エチルホスフェート及び2−エチルヘキシルメタクリレートの共重合体である。
PME 中の2−エチルヘキシルメタクリレート単位は、40〜90モル%の範囲となるようにするのが好ましい。
【0012】
本発明に用いるPME中の2− ( メタクリロイルオキシ ) エチル−2 ' − ( トリメチルアンモニオ ) エチルホスフェートの含有量は、少なくとも1モル%以上が好ましく、10モル%以上が更に好ましい。1モル%未満の場合、生体適合性を十分発揮させることができなくなるので好ましくない。
【0013】
PMEの調製は、2− ( メタクリロイルオキシ ) エチル−2 ' − ( トリメチルアンモニオ ) エチルホスフェート及び2−エチルヘキシルメタクリレートからなる単量体組成物を、重合開始剤を用いる溶液重合、懸濁重合、乳化重合および塊状重合の通常用いられる重合方法等によって行うことができる。PMEの分子量は、数平均分子量で3000〜700000の範囲が好ましく、高分子としての特性および溶剤へ溶解性を考慮すると5000〜400000の範囲が更に好ましい。
【0014】
本発明に用いるPMEと混合するセグメント化ポリウレタンの分子量は、数平均分子量で5000〜400000の範囲が好ましいがこれに限定されるものではない。
【0015】
セグメント化ポリウレタンを採用することにより、優れた生体適合性と、実用的な物性とを良好に兼ね備えた材料とすることができる。セグメント化ポリウレタンとは、過剰のジイソシアネート類またはポリイソシアネート類と、ポリエーテル又はポリエステルのジオール類との重付加反応の後に、鎖延長剤としてジオール又はジアミン類を重付加させて得られるポリマー群をいう。ここでイソシアネート類としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が、ジオール類としては、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール等が、鎖延長剤としては、エチレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン、水、プロピレンジアミン、ブタンジオール等が挙げられ、例えば、商品名「Biomer」(Ethicon社製)、商品名「TMシリーズ」(東洋紡社製)、商品名「Pellethane」(Upjohn Chem.社製)、商品名「Angioflex」(Abiomed社製)、商品名「Tecoflex」(Thermo Elec.社製)、商品名「Cardiothane」(Kontron社製)等の市販品を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0016】
PMEの配合割合は、PME とセグメント化ポリウレタンとの合計量に対して0.5〜95重量%の範囲が好ましく、特に1〜30重量%の範囲が好ましい。0.5重量%未満では、PMEに由来する生体適合性が発現し難い傾向にあり、95重量%を超えるとセグメント化ポリウレタンに由来する力学的強度等が発現し難い傾向があるので好ましくない。
【0017】
PME とセグメント化ポリウレタンとを混合するには、適切な溶剤を用いて溶解し混合する方法が適用できる。溶剤は、各重合体との相溶性を有することはもちろんであるが、コーティングや製膜し易いように蒸発により容易に除去できる塩化メチレン/エタノール混合溶媒を用いる。
【0018】
本発明の人工血管の調製は、前記 PME とセグメント化ポリウレタンとの溶液をチューブ形状等のポリエステル製人工血管の少なくとも内壁面にコートすることによって調製することができる。前記ポリエステル製人工血管としては、壁面が無孔、編組または多孔質のチューブ形状のものを挙げることができるが、これらに限定されない。前記コートは、例えば前記溶液に、ポリエステル製人工血管を浸漬させ、乾燥させる方法等により行なうことができる。
【0019】
本発明の人工血管の形態は、内径0.5〜10mm、長さ1〜30cmのものである。血管の厚みは、0.1〜3mmに調整するのが望ましい。0.1mm未満の場合には強度が不足する恐れがあり、3mmを超えると手術操作性及び屈曲性が劣る恐れがあるので好ましくない。また、前記PME とセグメント化ポリウレタンとのコーティング膜厚は、0.1μm〜100μmの範囲に調整するのが好ましい。この範囲外では均一にコーティングするのが困難となる恐れがあるので好ましくない。
【0020】
【発明の効果】
本発明の人工血管は、PME とセグメント化ポリウレタンとの混合物を用いるので、PMEに起因する優れた生体適合性と、セグメント化ポリウレタンが備える実用的な機械的強度等の物性とを兼ね備えている。特にPME とセグメント化ポリウレタンとの相溶性が高いことによってポリエステル製人工血管への密着性を良好にすることができる。またセグメント化ポリウレタンを採用するので、特に耐久性を必要とする場合や、可撓性等が要求され、かつ力学的変形を受け易い場合でも基材との密着性不足による剥がれの問題を解決できる。したがって、生体適合性、安全性に優れた人工血管を提供することができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
実施例1
エタノール中に、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(以下MPCと略記)と、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)との単量体組成物(30/70;モル%)を1モル/リットルの濃度となるように溶解し、また重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリルを5ミリモル/リットルの濃度となるように溶解し、60℃で2時間重合した。反応終了後、反応混合液をエーテルに滴下し、沈澱した共重合体を濾別し、残留単量体を除去した後減圧乾燥し、MPC−EHMA共重合体(以下PMEと略記)を得た。得られたPMEの収率は71.8重量%であり、共重合体中のMPCユニット含量は25.3モル%であった。またIRスペクトル測定結果を以下に示す。
IR(cm-1):2800〜3000,1730,1400,1200
【0023】
次いで、塩化メチレン/エタノール(70/30;重量%)の混合溶媒中に、セグメント化ポリウレタン(以下SPUと略記)としての「TECOFLEX60」(商品名、アメリカ・THERMEDICS INC.製)及びPMEを溶解させ、PME濃度を7.5重量%に調整した。得られた溶液を、直径2mm、長さ2cmのポリエステル製人工血管(平織り、1本18μm、1束300μm)に浸透させた後、乾燥させPMEコート人工血管を作製した。
【0024】
得られたPMEコート人工血管を、ハロセン麻酔下に、New Zealand White家兎(体重3〜4kg)19羽の片側頚動脈に介在して移植した。具体的には、マイクロサージャリー手技により、9−0ナイロンを用い、結節吻合とし、PMEコート人工血管を19本移植した。なお、ヘパリンを術中に800単位静注したが、それ以降の抗凝固剤は使用しなかった。移植した人工血管の開存の確認は、置換部位を開創し、超音波ドップラー血流計にて調べた。その結果を表1に示す。
また移植後5日後及び2か月後のPMEコート人工血管内部を顕微鏡で観察したところ、いずれも血液凝固の付着は全く見られなかった。一方、PMEコート人工血管の外観は移植前と同じであり、血栓の付着は全く認められなかった。
【0025】
【表1】
【0026】
比較例1
塩化メチレン/エタノールの混合溶媒中に、実施例1と同一のSPUを溶解させて5重量%に調整した。得られた溶液を、直径2mm、長さ2cmのポリエステル製人工血管(平織り、1本18μm、1束300μm)に浸透させた後、乾燥させSPUコート人工血管を作製した。
【0027】
得られたSPUコート人工血管を、ハロセン麻酔下に、New Zealand White家兎(体重3〜4kg)8羽の片側頚動脈に介在して移植した。具体的には、マイクロサージャリー手技により、9−0ナイロンを用い、結節吻合とし、SPUコート人工血管を8本移植した。なお、ヘパリンを術中に800単位静注したが、それ以降の抗凝固剤は使用しなかった。移植した人工血管の開存の確認は、置換部位を開創し、超音波ドップラー血流計にて調べた。その結果を表2に示す。
また移植90分後のSPUコート人工血管内部を顕微鏡で観察したところ、血管内壁に凝固した血液がべっとり付着しており、抗血栓性が全く無いことが確認された。
【0028】
【表2】
Claims (1)
- 2− ( メタクリロイルオキシ ) エチル−2 ' − ( トリメチルアンモニオ ) エチルホスフェート及び2−エチルヘキシルメタクリレートの共重合体 (PME) と、セグメント化ポリウレタンとを、塩化メチレン/エタノール混合溶媒に溶解させた溶液を、ポリエステル製人工血管に浸透させ、乾燥させた、内径0.5〜10mm、長さ1〜30cmの PME コート人工血管。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP5590096A JP3884501B2 (ja) | 1996-03-13 | 1996-03-13 | 人工血管 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP5590096A JP3884501B2 (ja) | 1996-03-13 | 1996-03-13 | 人工血管 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH09239021A JPH09239021A (ja) | 1997-09-16 |
JP3884501B2 true JP3884501B2 (ja) | 2007-02-21 |
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ID=13011998
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP5590096A Expired - Lifetime JP3884501B2 (ja) | 1996-03-13 | 1996-03-13 | 人工血管 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP3884501B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
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US8768487B2 (en) | 2010-02-11 | 2014-07-01 | Circulite, Inc. | Devices, methods and systems for establishing supplemental blood flow in the circulatory system |
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1996
- 1996-03-13 JP JP5590096A patent/JP3884501B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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