JP3884169B2 - ヘッドアクチュエータ、およびこれを備えた磁気ディスク装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドを移動して、目標位置に位置決めするためのヘッドアクチュエータ、およびこれを備えた磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク装置として、例えば、小型のハードディスクドライブ(以下、HDDと略称する)は、従来からラップトップ型やノートブック型パーソナルコンピュータの内蔵型記憶装置として使用されている。
【0003】
一般に、HDDは、アルミ合金等からなるケースの内部に、磁気ディスク、磁気ディスクを支持および回転駆動するスピンドルモータ、磁気ヘッドを磁気ディスクに対して移動自在に支持した回転揺動型のヘッドアクチュエータ、ヘッドアクチュエータを駆動するボイスコイルモータ(以下、VCMと略称する)、および回路基板等を内蔵している。そして、磁気ディスクは、スピンドルモータにより高速回転運動をする。また、回路基板は、磁気ヘッドからのリード信号を増幅する磁気ヘッドアンプ等の各種回路部品を実装している。
【0004】
ヘッドアクチュエータは、磁気ヘッドを支持しているサスペンションと、サスペンションを支持した支持アームと、支持アームを回動自在に支持している回動支持部と、を備えている。また、VCMは、回転支持部に設けられ支持アームと一体的に回動可能な駆動コイルと、ケース側に設けられた永久磁石および対向ヨークと、を備えている。そして、VCMは、永久磁石と対向ヨークとの間に生じる磁界と、駆動用コイルに通電することにより発生する電磁力との相互作用により、アクチュエータを回動させる。
【0005】
近年、上述したヘッドアクチュエータにおいて、駆動コイルの周囲を合成樹脂でモールドすることにより、駆動コイルと一体の保持枠を構成したものが提供されている。この場合、保持枠は、駆動コイルと同一の厚さに形成されている。このような構成によれば、駆動コイルの機械的強度が向上するとともに、製造効率の向上を図ることが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成のHDDにおいて、保持枠の厚さは駆動コイルの厚さと同一に形成されていることから、上記駆動コイルとこれを包囲した樹脂製の保持枠との接合面はほぼ平坦となる。そのため、これら駆動コイルと保持枠との接続強度をあまり大きくすることができず、接続信頼性の点で問題となる。
【0007】
また、駆動コイルの外周に、駆動コイルと同一厚さの保持枠が位置しているため、駆動コイル部分の慣性が大きくなり、ヘッドアクチュエータの応答性を向上する上で好ましくない。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、駆動コイルと保持枠との結合強度が向上したヘッドアクチュエータ、およびこれを備えた磁気ディスク装置を提供することにある。
【0009】
また、この発明の目的は、駆動コイル部分の慣性を低減し、応答性に優れたヘッドアクチュエータ、およびこれを備えた磁気ディスク装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明に係るヘッドアクチュエータは、磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を備え、
上記駆動部は、駆動コイルと、駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する樹脂により上記駆動コイルの外周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
また、この発明のヘッドアクチュエータによれば、上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さよりも小さな厚さを有していることを特徴としている。
更に、この発明のヘッドアクチュエータによれば、上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さよりも、上記駆動コイルを構成する線材の直径の2倍以上小さい厚さを有していることを特徴としている。
【0012】
この発明に係る磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、磁気ディスクを支持および回転駆動する駆動手段と、磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドと、上記磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を有するヘッドアクチュエータと、を備え、
上記ヘッドアクチュエータの駆動部は、駆動コイルと、樹脂により上記駆動コイルの外周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備え
上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さよりも小さな厚さを有しているとともに、上記駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する樹脂により形成されていることを特徴としている。
【0013】
上記のように構成されたヘッドアクチュエータおよび磁気ディスク装置によれば、駆動コイルは、樹脂からなる保持枠によって一体的に連結および保持されているため、駆動部の機械的強度を向上させ、同時に、組立性の向上を図ることができるとともに、駆動部の薄型、軽量化を図ることが可能となる。
【0014】
また、保持枠は、駆動コイルよりも薄く形成されているとともに、駆動コイルの線材の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する樹脂によって形成されている。そのため、保持枠は、成形後、温度が低下すると、駆動コイルよりも大きく収縮し、駆動コイルをその中心に向かって締め付け、駆動コイルの一部を凹ませた状態で駆動コイルに食い込むこととなる。その結果、駆動コイルと保持枠との結合強度が向上し、駆動部全体の機械的強度および接続の信頼性を向上させることができる。
【0015】
更に、保持枠は、駆動コイルよりも厚さが薄く形成されているため、駆動コイルと同厚のものに比較してアクチュエータの慣性を低減し、高速駆動時の応答性を向上することができる。
【0016】
また、この発明に係る他のヘッドアクチュエータは、磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を備え、
上記駆動部は、駆動コイルと、駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも小さな熱膨張係数を有する樹脂により上記駆動コイルの内周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備えていることを特徴としている。
【0017】
また、この発明のヘッドアクチュエータによれば、上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さよりも小さな厚さを有していることを特徴としている。
更に、この発明のヘッドアクチュエータによれば、上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さよりも、上記駆動コイルを構成する線材の直径の2倍以上小さい厚さを有していることを特徴としている。
【0018】
この発明に係る他の磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、磁気ディスクを支持および回転駆動する駆動手段と、磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドと、上記磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を有するヘッドアクチュエータと、を備え、
上記駆動部は、駆動コイルと、樹脂により上記駆動コイルの内周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備え、
上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さ以下の厚さを有しているとともに、上記駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも小さな熱膨張係数を有する樹脂により形成されていることを特徴としている。
【0019】
上記のように構成されたヘッドアクチュエータおよび磁気ディスク装置によれば、駆動コイルは、樹脂からなる保持枠によって一体的に連結および保持されているため、駆動部の機械的強度を向上させ、同時に、組立性の向上を図ることができるとともに、駆動部の薄型、軽量化を図ることが可能となる。
【0020】
また、保持枠は、駆動コイルよりも薄く形成されているとともに、駆動コイルの線材の熱膨張係数よりも小さな熱膨張係数を有する樹脂によって形成されている。そのため、成形後、温度が低下すると、駆動コイルは保持枠よりも大きく収縮し、駆動コイルは保持枠を締め付け保持枠と強固に結合する。従って、駆動コイルと保持枠との結合強度が向上し、駆動部全体の機械的強度および接続の信頼性を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係るHDDについて詳細に説明する。
図1に示すように、HDDは、例えばアルミ合金等によって形成され上面の開口した矩形箱状のケース12と、複数のねじ11によりケースにねじ止めされてケースの上端開口を閉塞するトップカバー14と、を有している。
【0022】
ケース12内には、磁気記録媒体としての磁気ディスク16、この磁気ディスクを支持および回転駆動するスピンドルモータ18、磁気ディスクに対して情報の書き込み、読み出しを行なう複数の磁気ヘッド40、これらの磁気ヘッドを磁気ディスク16に対して移動自在に支持した回転型のヘッドアクチュエータ22、ヘッドアクチュエータの駆動源として機能するボイスコイルモータ(以下、VCMと略称する)24、およびヘッドIC等を有する基板ユニット21が収納されている。
【0023】
また、ケース12の底壁外面には、基板ユニット21を介してスピンドルモータ18、VCM24、および磁気ヘッドの動作を制御する図示しないプリント回路基板がねじ止めされている。
【0024】
磁気ディスク16は、直径65mm(2.5インチ)に形成され、上面および下面に磁気記録層を有している。磁気ディスク16は、スピンドルモータ18の図示しないハブに同軸的に嵌合されているとともにクランプばね17により保持されている。そして、磁気ディスク16は、スピンドルモータ18によって所定の速度で回転駆動される。
【0025】
図2ないし図4に示すように、ヘッドアクチュエータ22は、ケース12の底壁上に固定された軸受組立体26を備えている。支持部として機能する軸受組立体26は、ケース12の底壁に対して垂直に立設された枢軸27と、枢軸に一対の軸受を介して回転自在に支持された円筒形状のハブ28と、を有している。ハブ28の上端には環状のフランジ30が形成され、下端部外周にはねじ部31が形成されている。
【0026】
また、ヘッドアクチュエータ22は、ハブ28に取り付けられた2本のアーム32a、32bおよびスペーサリング34と、各アームに支持された2つの磁気ヘッド組立体36と、を備えている。
【0027】
アーム32aおよび32bは、例えば、SUS304等のステンレス系の材料により、板厚250μm程度の平板状に形成され所定の剛性を有しているとともに、その一端、つまり、基端には円形の透孔33が形成されている。同様に、スペーサリング34もステンレス等によって形成されている。
【0028】
各磁気ヘッド組立体36は、弾性変形可能な細長い板状のサスペンション38と、サスペンションの先端に固定された磁気ヘッド40と、を備えている。サスペンション38は、板ばねにより構成され、その基端がスポット溶接あるいは接着によりアーム32a、32bの先端に固定され、アームから延出している。
【0029】
各磁気ヘッド40は、ほぼ矩形状のスライダとこのスライダに形成された記録再生用のMR(磁気抵抗)ヘッドとを有し、サスペンション38の先端部に設けられた図示しないジンバル部に固定されている。
【0030】
磁気ヘッド組立体36が取り付けられたアーム32aおよび32bは、透孔33にハブ28を挿通することにより、フランジ30上に積層された状態でハブの外周に嵌合されている。また、スペーサリング34は、アーム32a、32b間に挟まれた状態でハブ28の外周に嵌合されている。
【0031】
ハブ28の外周に嵌合された2本のアーム32a、32b、およびスペーサリング34は、ハブ28のねじ部31に螺合されたナット42とフランジ30との間に挟持され、ハブの外周面上に固定保持されている。それにより、2本のアーム32a、32bは、所定の間隔を置いて互いに平行に位置しているとともにハブ28から同一の方向へ延出している。
【0032】
アーム32a、32bに取り付けられた磁気ヘッド組立体36の磁気ヘッド40は互いに向かい合って位置し、アームおよびハブ28と一体的に回動可能となっている。また、保持部として機能するスペーサリング34には、後述するメインFPCの延出端部をねじ止めするためのねじ孔34aが形成されているとともに、アクチュエータ駆動部70が一体的に設けられ、アーム32a、32bから離間する方向へ延出している。
【0033】
図2ないし図5に示すように、アクチュエータ駆動部70は、VCM16の一部を構成するボイスコイル44と、このボイスコイルを保持した保持枠74と、を備えている。駆動コイルとして機能するボイスコイル44は、線材(図7参照)をほぼ台形状に巻回して構成され、軸受組立体26とほぼ同芯の円弧状に形成された内周部44aおよび外周部44bと、軸受組立体に対してほぼ放射状に延びた一対の作用辺部44c、44dと、を有している。また、ボイスコイル44は、所定厚さT1を有した偏平に形成されている。線材としては、例えば、直径0.15mm、熱膨張係数17×10-6の銅線が用いられている。
【0034】
そして、ボイスコイル44の外周部44b、および両作用辺部44c、44dの外側面、並びに内周部44aの大部分は、合成樹脂からなる保持枠74によって被覆されている。
【0035】
また、保持枠74の一端部には、保持枠とスペーサリング34とを連結するための断面L字状の取付部80が形成されている。これに対し、スペーサリング34の一端部には、図8に示すように、保持枠74の取付部80が固定された所定幅の凹所77が形成され、凹所の底面上には、取付部80とスペーサリングとの結合強度を高めるため、複数の島状突起78が形成されている。なお、ボイスコイル44の内周部44aの大部分は取付部80内に埋め込まれている。
【0036】
保持枠74の内、ボイスコイル44の外周部44b、両作用片部44c、44dの外側面を被覆した部分は、ボイスコイルの厚さT1よりも薄い厚さT2に形成されている。線材の径を0.15mmとした場合、保持枠74の厚さT2は、線材2巻分以上、すなわち、線材の直径の2倍以上、ボイスコイル44の厚さT1よりも小さく形成されている。
【0037】
そして、保持枠74は、ボイスコイル44に対し、ボイスコイルの厚さ方向中央部に設けられ、ボイスコイルの上面部分および下面部分は、保持枠74の上面および下面から突出している。
【0038】
また、保持枠74は、ボイスコイル44の熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有する合成樹脂によって形成され、例えば、ポリプラスチックス(株)製の液晶ポリマのベクトラA130を用いている。この合成樹脂の熱膨張係数は、流動方向が22×10-6、直角方向が14×10-6ものと、流動方向が2×10-6、直角方向が45×10-6ものとの2種類があり、いずれも銅線の熱膨張係数よりも大きくなっている。成形後の熱膨張係数は、概略、流動方向および直角方向の平均である18×10-6〜27.5×10-6となる。
【0039】
そのため、後述するように、保持枠74は、ボイスコイル44と一体的に成形された後、高温状態から室温状態まで温度低下すると、ボイスコイル44よりも大きく収縮し、図7に示すように、ボイスコイル44の厚さ方向中央部をボイスコイルの中心軸方向に向かって周囲から締め上げる。その結果、保持枠74は、ボイスコイルの厚さ方向中央部を凹ませ、ボイスコイル内に食い込んだ状態でボイスコイルと結合している。
【0040】
また、保持枠74において、スペーサリング34に隣接した一端側面には、コネクタ82が取り付けられている。このコネクタ82は、ボイスコイル44に接続された端子を有し、合成樹脂により保持枠74および取付部80と一体的に成形されている。
【0041】
更に、保持枠74において、取付部80から離間した一端側面には、側方に突出したストッパ83が一体に形成されている。ストッパ83には、衝撃力を低減するための透孔84が形成さればね性を有しているとともに、強磁性材料からなるマグネットロック用のロックピン86が立設されている。
【0042】
上記構成のアクチュエータ駆動部70は、ボイスコイル44、スペーサリング34、コネクタ82、およびロックピン86を所定の位置関係に配置した状態で合成樹脂を充填することにより、保持枠74と一体的に成形される。図9に示すように、成形直後の高温状態において、ボイスコイル44および保持枠74部分は、成形型と同一の寸法となっている。しかしながら、前述したように、温度が室温まで低下すると、熱膨張係数の大きな保持枠74がボイスコイル44よりも大きく収縮し、ボイスコイル44の厚さ方向中央部を周囲から締め上げる。従って、図7に示すように、保持枠74は、ボイスコイルの厚さ方向中央部を凹ませ、ボイスコイル内に食い込んだ状態でボイスコイルと結合する。
【0043】
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、特に、上述したような、成形温度が低く、成形精度が高く、かつ、曲げ剛性の高い液晶ポリマー等が最適である。
【0044】
図1からよくわかるように、上記構成のアクチュエータ22をケース12に組み込んだ状態において、磁気ディスク16はアーム32a、32b間に位置している。そして、アーム32a、32bから延びるサスペンション38に取り付けられた磁気ヘッド40は、磁気ディスク16の上面および下面にそれぞれ接触し、磁気ディスク16を両面側から挟持している。各磁気ヘッド40は、サスペンション38のばね力により所定のヘッド荷重が印加され、磁気ディスク表面側に付勢されている。
【0045】
また、アクチュエータ駆動部70のボイスコイル44は、ケース12上に固定された一対のヨーク48間に位置し、これらのヨークおよび一方のヨークに固定された図示しない磁石とともにVCM24を構成している。そして、ボイスコイル44に通電することにより、ヘッドアクチュエータ22が回動し、磁気ヘッド40は磁気ディスク16の所望のトラック上に移動および位置決めされる。
【0046】
図1に示すように、基板ユニット21は、ケース12の底壁上に固定された矩形状の基板本体51を有し、この基板本体上には、磁気ヘッド40からのリード信号を増幅する磁気ヘッドアンプ等の各種回路部品、コネクタ等が実装されている。また、基板ユニット21は、基板本体51から延出した帯状のメインフレキシブルプリント回路基板(以下メインFPCと称する)54を一体に有している。
【0047】
メインFPC54は、磁気ヘッド40と磁気ヘッドアンプとを接続するための信号線や、ヘッドアクチュエータ22のボイスコイル44を駆動するためのケーブル等の配線パターンから構成されている。また、メインFPC54の延出端部54aは、ヘッドアクチュエータ22のスペーサリング34にねじ止め固定されているとともに、この延出端部には、図示しない多数の接続パッドが設けられている。
【0048】
一方、各磁気ヘッド40は、それぞれ中継フレキシブルプリント回路基板(以下中継FPCと称する)60を介してメインFPC54の対応する接続パッドに電気的に接続されている。図3および図4に示すように、中継FPC60は、各アーム32a、32bおよびサスペンション38の表面に貼り付け固定され、サスペンションの先端からアームの基端に亘って延びている。
【0049】
中継FPC60は、全体として細長い帯状に形成され、サスペンション38の先端に位置した先端部60aと、アーム32a、32bの基端から導出した接続端部60bと、を有している。先端部60aには、磁気ヘッド40の電極に電気的に接続された図示しない4つの第1電極パッドが設けられている。また、接続端部60bには4つ第2電極パッド62が設けられ、これらの第2電極パッドは、メインFPC54の延出端部に設けられた接続パッドに半田付けされている。これにより、磁気ヘッド40は、中継FPC60を介してメインFPC54に電気的に接続されている。
【0050】
上記構成のHDDによれば、作動時、スピンドルモータ18によって磁気ディスク16が高速で回転駆動されるとともに、図示しないサーボシステムからVCM24のボイスコイル44に駆動電流が供給される。すると、ボイスコイル44から発生する磁界とヨーク48に設けられた永久磁石からの磁界との相互作用により、ボイスコイルの作用辺部44c、44dに電磁力が発生し、ヘッドアクチュエータ22が軸受組立体26を中心として回転する。各磁気ヘッド40は、磁気ディスク16上を浮上した状態で、磁気ディスク半径方向に移動し、目標位置に位置決めされる。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態に係るHDDによれば、ボイスコイル44は、樹脂からなる保持枠74によって一体的に連結および保持されているため、駆動部の機械的強度を向上させ、同時に、組立性の向上を図ることができるとともに、アクチュエータ駆動部70の薄型、軽量化を図ることが可能となる。
【0052】
また、保持枠74は、ボイスコイル44よりも薄く形成されているとともに、ボイスコイルの線材の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する樹脂によって形成されている。そのため、保持枠74は、成形後、温度が低下すると、ボイスコイル44よりも大きく収縮し、ボイスコイルをその中心に向かって締め付け、ボイスコイルに食い込んだ状態で連結される。その結果、ボイスコイル44と保持枠74との結合強度が向上し、駆動部全体の機械的強度および接続の信頼性を向上させることができる。
【0053】
更に、保持枠74は、ボイスコイル44よりも厚さが薄く形成されているため、ボイスコイルと同厚のものに比較してアクチュエータ22の慣性を低減し、高速駆動時の応答性を向上することができる。
【0054】
次に、この発明の他の実施の形態に係るヘッドアクチュエータについて説明する。図10および図11に示すように、本実施の形態によれば、アクチュエータ駆動部70の保持枠74は、ボイスコイル44の内周側に一体的に成形されている。
【0055】
詳細には、保持枠74はボイスコイル44の厚さと同一かあるいは薄く形成され、ボイスコイルの外周部44b内面、および両作用辺部44c、44d内面に接触しているとともに、ボイスコイルの内周部を被覆した支持部80を一体に備えている。
【0056】
また、保持枠74は、ボイスコイル74の熱膨張係数よりも小さな熱膨張係数を有する合成樹脂によって形成され、例えば、ポリプラスチックス(株)製の液晶ポリマのベクトラA230を用いている。この合成樹脂の熱膨張係数は、流動方向が2×10-6、直角方向が8×10-6となっている。また、この合成樹脂の成形後の熱膨張係数は、概略、流動方向および直角方向の平均である5×10-6程度であり、ボイスコイル44を構成する銅線(17×10-6)の熱膨張係数よりも小さくなっている。
【0057】
そのため、成形直後の高温状態において、ボイスコイル44および保持枠74部分は、成形型と同一の寸法となっていが、温度が室温まで低下すると、熱膨張係数の大きなボイスコイル44が保持枠74よりも大きく収縮し、ボイスコイル44は保持枠44をその周囲から中心に向かって締め上げる。これにより、図11に示すように、ボイスコイル44は保持枠74に食い込んだ状態で保持枠と結合する。
【0058】
従って、本実施の形態によれば、前述した実施の形態と同様に、ボイスコイル44と保持枠74との結合強度が向上し、駆動部全体の機械的強度および接続の信頼性を向上させることができる。
【0059】
また、保持枠74は、ボイスコイル44の内側に位置しているとともに、その中央には大きな透孔74aが形成されているため、保持枠をボイスコイルの外側に設けた場合に比較してアクチュエータ22の慣性が一層低減し、高速駆動時の応答性に優れたアクチュエータを得ることができる。
【0060】
なお、図10および図11に示す実施の形態において、他の構成は前述した実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0061】
この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、例えば、磁気ディスクの枚数、これに対応する磁気ヘッドの数、アームの数等は、必要に応じて増加可能である。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、駆動コイルと保持枠との結合強度が向上し、駆動部全体の機械的強度および接続の信頼性が向上したヘッドアクチュエータおよび磁気ディスク装置を提供することができる。また、この発明によれば、高速駆動時の応答性に優れたヘッドアクチュエータおよび磁気ディスク装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るHDDを示す分解斜視図。
【図2】上記HDDに設けられたヘッドアクチュエータの平面図。
【図3】上記ヘッドアクチュエータの斜視図。
【図4】上記ヘッドアクチュエータの分解斜視図。
【図5】上記ヘッドアクチュエータのアクチュエータ駆動部を示す平面図および側面図。
【図6】上記アクチュエータ駆動部の正面図。
【図7】図5の線A−Aに沿った断面図。
【図8】上記ヘッドアクチュエータ機構のスペーサリングを示す平面図。
【図9】上記アクチュエータ駆動部の保持枠成形直後の状態を示す図7に対応の断面図。
【図10】この発明の他の実施の形態に係るヘッドアクチュエータのアクチュエータ駆動部を示す平面図および側面図。
【図11】図10の線B−Bに沿った断面図。
【符号の説明】
12…ケース
16…磁気ディスク
21…基板ユニット
22…ヘッドアクチュエータ機構
24…ボイスコイルモータ
26…軸受組立体
38…サスペンション
40…磁気ヘッド
44…ボイスコイル
70…アクチュエータ駆動部
74…保持枠
82…コネクタ
Claims (7)
- 磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を備え、
上記駆動部は、駆動コイルと、駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する樹脂により上記駆動コイルの外周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備えていることを特徴とするヘッドアクチュエータ。 - 磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を備え、
上記駆動部は、駆動コイルと、樹脂により上記駆動コイルの外周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備え
上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さよりも小さな厚さを有しているとともに、上記駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する樹脂により形成されていることを特徴とするヘッドアクチュエータ。 - 磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を備え、
上記駆動部は、駆動コイルと、駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも小さな熱膨張係数を有する樹脂により上記駆動コイルの内周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備えていることを特徴とするヘッドアクチュエータ。 - 磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を備え、
上記駆動部は、駆動コイルと、樹脂により上記駆動コイルの内周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備え、
上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さ以下の厚さを有しているとともに、上記駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも小さな熱膨張係数を有する樹脂により形成されていることを特徴とするヘッドアクチュエータ。 - 上記駆動部は、上記駆動コイルに接続された給電端子を有し、樹脂により上記保持枠と一体的に成形されたコネクタを備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のヘッドアクチュエータ。
- 磁気ディスクと、
磁気ディスクを支持および回転駆動する駆動手段と、
磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドと、
上記磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を有するヘッドアクチュエータと、を備え、
上記ヘッドアクチュエータの駆動部は、駆動コイルと、樹脂により上記駆動コイルの外周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備え、
上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さよりも小さな厚さを有しているとともに、上記駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する樹脂により形成されていることを特徴とする磁気ディスク装置。 - 磁気ディスクと、
磁気ディスクを支持および回転駆動する駆動手段と、
磁気ディスクに対して情報の記録、読み出しを行う磁気ヘッドと、
上記磁気ヘッドを支持したサスペンションと、上記サスペンションを支持したアームと、上記アームを回動自在に支持した支持部と、上記アームを回動させるための駆動力を発生する駆動部と、を有するヘッドアクチュエータと、を備え、
上記駆動部は、駆動コイルと、樹脂により上記駆動コイルの内周側に一体的に成形され、上記駆動コイルを保持した保持枠と、を備え、
上記保持枠は、上記駆動コイルの厚さ以下の厚さを有しているとともに、上記駆動コイルを構成する線材の熱膨張係数よりも小さな熱膨張係数を有する樹脂により形成されていることを特徴とする磁気ディスク装置。
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