JP3884053B1 - 耐放射線性樹脂組成物及び耐放射線性電線・ケーブル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】100質量部のポリオレフィン系樹脂に対して、0.1〜5質量部のサリチレート系紫外線吸収剤、0.1〜5質量部のヒンダードアミン系光安定剤及び50質量部以上の金属水和物が添加されてなる耐放射線性樹脂組成物。これを絶縁体又はシース材料に用いた耐放射線性電線・ケーブル。
【選択図】図1
Description
また、本発明は、この耐放射線性樹脂組成物を絶縁体又はシース材料に用いた耐放射線性電線・ケーブルを提供する。
本発明において、ポリオレフィン系樹脂とは、エチレンの単独重合体、エチレンと酢酸ビニル若しくはエチルアクリレートとの共重合体、又は、エチレン以外のα−オレフィンとビニルモノマーとの共重合体を意味する。
ポリオレフィン系樹脂の添加剤として用いられるサリチレート系紫外線吸収剤は、本来は紫外線を吸収して耐光性を付与するものであるが、本発明において用いるサリチレート系紫外線吸収剤は、ヒンダードアミン系光安定剤との相乗作用で、ポリオレフィン系樹脂に対して耐放射線性を付与するものである。
本発明で用いられるサリチレート系紫外線吸収剤としては、下記一般式(1)
で表されるものが好ましく用いられる。
R1、R2、R3及びR4は、好ましくは、水素原子又は炭素数1〜6までの直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数3〜5までの直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基である。
本発明において用いるヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、サリチレート系紫外線吸収剤との相乗作用で、ポリオレフィン系樹脂に対して耐放射線性を付与するものである。
ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としては、大別して、低分子量タイプのHALSと高分子量タイプのHALSが市販されているが、本発明の耐放射線性樹脂組成物にはいずれを使用してもかまわない。
本発明で用いられる金属水和物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらはそのまま使用しても良いが、ポリオレフィン系樹脂との相溶性を高めるために、アミノシランカップリング処理、又は高級脂肪酸処理等の表面処理が施されたものが好ましい。
本発明の耐放射線性樹脂組成物には、酸化防止剤を添加剤として含むことができる。フェノール系酸化防止剤、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むことが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−1−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−ベンジル)−sym−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、等が挙げられる。
本発明の耐放射線性樹脂組成物には、上記の他にも、公知の樹脂組成物に通常用いられる各種の補助資材を添加剤として含むことができる。このような補助資材としては、安定剤、充填剤、着色剤、カーボンブラック、架橋剤、滑剤、加工性改良剤、帯電防止剤等がある。
本発明の耐放射線性樹脂組成物は、絶縁体又はシース材料として用いて、通常の方法に従って導線を被覆することにより、電線又はケーブルとすることができる。
(2)(1)で得られた各ポリオレフィン系樹脂組成物から、圧縮成型機で160℃、150kgf/cm2(10分間加圧)の条件にて厚さ2mmのプレスシートを作製した。
(3)(1)で得られたポリオレフィン系樹脂組成物(実施例1〜6、及び比較例1〜8)を造粒物とした。その後、9mmφの導線11に架橋ポリエチレンを被覆して12mmφの絶縁体12とし、これに上記の造粒物を更に被覆してシース13として、15mmφのケーブル1を作製した(図1)。
(放射線照射)
上記(2)で作製した各プレスシート及び上記(3)で作製した各ケーブルについて、コバルト60を線源とするγ線を、室温、線量率5kGy/hで、1MGy及び2MGyまで放射線照射した。
上記放射線照射前後における各プレスシートについて、次の方法で機械特性評価を行った。それぞれのプレスシートよりJIS3号ダンベルを打ち抜き、200mm/minの引張速度で引張試験を実施した。自己径で巻いた際に亀裂が入らないための目安として、引張伸び50%以上を合格(○)とし、引張伸び50%未満を不合格(×)とした。
上記(3)で作製した上記放射線照射前後の各ケーブルについて、JIS C3521に準拠して、垂直トレイ燃焼試験を実施した。それぞれ、長さ2400mmの試料ケーブル7本を準備し、7本全てのケーブルの燃焼が途中で自然停止したものを合格(○)、いずれか1本以上の試料ケーブルの最上部まで燃え上がったものを不合格(×)とした。
上記(2)で作製した各プレスシートを、50℃の恒温槽中に14日間保管し、表面に白い粉体の染み出しが確認できないものを合格(○)とし、染み出しが確認できたものを不合格(×)とした。
実施例1〜3は、ベース樹脂としての100質量部のポリオレフィン系樹脂(28%の酢酸ビニル成分を含むEVA樹脂(三井デュポンポリケミカル社製EV270))に対して、1〜5質量部のサリチレート系紫外線吸収剤(2’,4’−ジ−tert−ブチルフェニル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、シプロ化成社製SEESORB712)、1〜5質量部のヒンダードアミン系光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、高分子量タイプのHALS、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製Chimassorb944FDL)、100質量部の金属水和物(表面処理された水酸化マグネシウム、協和化学工業社製キスマ5A)、及び0.5質量部のヒンダードフェノール系酸化防止剤(ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラエステル型高分子量ヒンダードフェノール、旭電化工業社製AO−60)を添加した耐放射線性樹脂組成物、及びこれをシース材料に用いた耐放射線性ケーブルである。実施例1〜3は、いずれも、優れた耐放射線性(機械特性、難燃性)及び低ブルーム性を示した。特に、実施例1〜3は、2MGy程度の非常に過酷な放射線照射を行った後でも、優れた機械特性及び難燃性を示した。
実施例4〜6は、実施例1〜3のうち、1〜5質量部のヒンダードアミン系光安定剤を、ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル) アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル) イミノ]](低分子量タイプのHALS、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製Tinuvin770DF)に替えたものである。実施例4〜6は、いずれも、優れた耐放射線性(機械特性、難燃性)及び低ブルーム性を示した。特に、実施例4〜6は、2MGy程度の非常に過酷な放射線照射を行った後でも、優れた機械特性及び難燃性を示した。
比較例1は、サリチレート系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の両者を欠くものであり、比較例2及び3は、サリチレート系紫外線吸収剤(2’,4’−ジ−tert−ブチルフェニル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、シプロ化成社製SEESORB712)を用い、ヒンダードアミン系光安定剤を欠くものである。なお、比較例2については、酸化防止剤(大内新興化学工業社製ノクラック300、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール))を用いた。また、比較例4及び5は、紫外線吸収剤を欠くものである。比較例1、3〜5は、いずれも、実施例に比べて耐放射線性(機械特性、難燃性)で劣っていた。また、比較例2は、1MGy程度の放射線照射を行った後では機械特性を維持したが、難燃性に難があった。
比較例6は、金属水和物の添加量が不足しているものであり、実施例に比べて耐放射線性(難燃性)で劣っていた。比較例7、8は、サリチレート系紫外線吸収剤又はヒンダードアミン系光安定剤の添加量が過剰なものであり、耐放射線性では同等であったものの、いずれも、実施例に比べてブルーム性に難があった。
Claims (3)
- 100質量部のエチレン・酢酸ビニル共重合体に対して、1〜5質量部のサリチレート系紫外線吸収剤、1〜5質量部のヒンダードアミン系光安定剤、50〜200質量部の金属水和物、及び0.1〜0.5質量部のフェノール系酸化防止剤が添加されてなることを特徴とする耐放射線性樹脂組成物。
- 請求項1〜2のいずれかに記載の耐放射線性樹脂組成物を絶縁体又はシース材料に用いた耐放射線性電線・ケーブル。
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