JP3883213B2 - 神経細胞用(−)鎖rnaウィルスベクター - Google Patents

神経細胞用(−)鎖rnaウィルスベクター Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、ウイルスベクター、詳しくは(−)鎖RNAウイルスベクターを用いることを特徴とする、神経細胞に対する遺伝子治療等に用いられる遺伝子導入法に関する。
背景技術
ヒトや動物に対する遺伝子治療において、高い効率で標的器官や標的細胞へ遺伝子が導入できる系を開発することは極めて重要な課題である。遺伝子を導入するために用いられる方法には、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、陽イオンリポソーム法、エレクトロポレーション法などがあり、特にインビボ遺伝子導入法にはウイルスによる導入法、リポソームによる導入法、および直接導入法が含まれる。中でも、ウイルスの遺伝子を組換えることにより得られる「ウイルスベクター」を用いて行われる遺伝子導入は、導入が容易で効率が高いために、遺伝子治療を含む細胞への遺伝子導入に極めて有用である。
現在よく用いられるウイルスベクターには、レトロウイルスベクター、ヘルペスシンプレックスウイルス(HSV)ベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)などがある。とりわけ、MRI、PETなどを利用した脳機能解析が進むに伴って、非分裂細胞である神経細胞へ効率よく感染し、導入遺伝子を高発現させることができるベクターが求められるようになり、アデノウイルスベクター、ヘルペスシンプレックスウイルス(HSV)ベクター、AAV、HIVなどが注目されるようになった。
HSVは末梢神経系の神経節(ganglion)に遺伝子を導入することができることが報告されているが、発現量の点で問題が残されている(Gene Therapy,1995,2:209-217)。HIVも神経細胞へ感染することが確認されている(Nature Biotechnology,1997,15:871-875)が、ウイルスゲノムが挿入される染色体上の位置が予測できないため、挿入により正常遺伝子が損傷を受けたり、癌遺伝子を活性化したり、目的遺伝子が過剰発現したり発現が抑制されたりする可能性を否定できない。
AAVはパーキンソン病(Exp.Neurol.,1997,144:147-156)およびムコ多糖欠損症VII型(ASGT meeting,1998,演題番号692)において、脳治療に使用されているが、パーキンソン病では、導入遺伝子が黒質にうまく運ばれないことが、またムコ多糖欠損症VII型においては脳内での発現が十分でないことが報告されている。
アデノウイルスは、現在最も頻繁に使用されており、海馬錐体細胞層に遺伝子導入が可能であると報告されている(Nature Medicine,1997,3:997-1004)。しかし、アデノウイルスには細胞毒性があり、抗原性が高いという欠点がある。
一方、センダイウイルス等の(−)鎖RNAウイルスは染色体に挿入されることがないため、癌遺伝子等を活性化することはない。さらにRNAウイルスであるため、感染後からタンパク質発現までの時間が短く、またアデノウイルスと比較しても、はるかに高い導入遺伝子産物の発現量が得られるなどの利点を有している。
発明の開示
本発明は、神経細胞の遺伝子治療等に有用な、(−)鎖RNAウイルスベクターを用いた核酸の導入方法を提供することを課題とする。
本発明者らはまず、(−)鎖RNAウイルスの代表格であり、安全性や利便性の点からベクターとして遺伝子治療において有用であるセンダイウイルスを用いて種々の外来遺伝子を有する組換え体を製造し、これらの組換え体を利用して神経細胞や脳組織への外来遺伝子の導入を行った。その結果、これらの組換え体を利用することにより、効率よく外来遺伝子を神経細胞および脳組織に導入し得ることを見出した。さらに、本発明のウイルスベクターを用いると、極めて高いレベルで導入した外来遺伝子の発現が得られることを見出した。
また、脳内へ導入された本発明のウイルスベクターは増殖を繰り返すことはなく、外来遺伝子を一定期間発現した後、発現が減少した。さらに、本発明のウイルスベクターを用いて、β-グルクロニダーゼ欠損マウスの脳内へ遺伝子治療を実施したところ、該マウスの症状が改善された。このため、本発明者らは、調製したウイルスベクターが、導入した外来遺伝子の発現量を調節することが必要な神経性疾患の遺伝子治療において、効果的に機能し得ることを見出した。
また、FGF遺伝子を持つ本発明のウイルスベクターをスナネズミまたはマウス脳室内へ投与したところ、ベクターが上衣細胞に感染し、摂食の減少と体重の減少が観察された。上衣細胞は脳と脳室を区切る細胞層であり、第3脳室では脳脊髄液と視床下部神経核とが密接な相互作用を行っている。本発明のベクターは上衣細胞に効率的に感染できるため、本発明のベクターを用いて分泌蛋白質を脳室で発現させ、視床下部神経核(摂食中枢、満腹中枢など)へ作用させることが可能となる。また、スナネズミを用いた虚血モデルで、増殖因子発現ウイルスベクターを海馬実質細胞に導入することにより、細胞の傷害が有意に軽減されることが判明し、本発明のベクターが脳虚血による細胞脱落死防御のために有用であることが示された。これらのことから、本発明のベクターは、さまざまな治療における脳への遺伝子導入用ベクターとして有用であることが示された。
即ち、本発明は、
(1)(−)鎖RNAウイルスベクターまたは該ベクターを含む細胞を神経細胞へ接触させる工程を含む、神経細胞へ核酸を導入するための方法、
(2) 神経細胞が中枢神経系の細胞である、(1)に記載の方法、
(3) 中枢神経系の細胞が脳室上衣細胞である、(2)に記載の方法、
(4) 中枢神経系の細胞が海馬領域の細胞である、(2)に記載の方法、
(5) (−)鎖RNAウイルスベクターに含まれる核酸が外来遺伝子を含む、(1)から(4)のいずれかに記載の方法、
(6) 外来遺伝子を一過的に発現させる、(5)に記載の方法、
(7) 外来遺伝子が分泌タンパク質をコードする、(5)に記載の方法、
(8) タンパク質が、視床下部神経核に作用するタンパク質である、(7)に記載の方法、
(9) タンパク質が、脳虚血保護作用を有するタンパク質である、(7)に記載の方法、
(10) 外来遺伝子が、FGF-1、FGF-5、NGF、CNTF、BDNF、GDNF、p35、CrmA、ILP、bcl-2、ORP 150からなる群より選択される遺伝子である、(5)に記載の方法、
(11) FGF-1またはFGF-5を外来遺伝子として含む(−)鎖RNAウイルスベクターの投与により、動物の摂食行動を制御する方法、
(12) FGF-1またはFGF-5を外来遺伝子として含む(−)鎖RNAウイルスベクターの投与により、動物の血糖値を制御する方法、
(13) (−)鎖RNAウイルスがパラミクソウイルス科に属するウイルスである、(1)から(12)のいずれかに記載の方法、
(14) パラミクソウイルス科に属するウイルスがセンダイウイルスである、(13)に記載の方法、
(15) (1)から(14)のいずれかに記載の方法により、神経細胞へ核酸を導入するために用いられる、(−)鎖RNAウイルスベクター、に関する。
本発明において、「(−)鎖RNAウイルスベクター」とは、(−)鎖RNAウイルスに由来し、感染力を有する複合体を含む。ここで「感染力」とは、本明細書においては、複合体が細胞への接着能および膜融合能を保持していることにより、細胞内に複合体内部の核酸等を導入することのできる能力のことを言う。
本発明において、(−)鎖RNAウイルスベクターは、例えば(−)鎖RNAウイルスを材料に用いて製造することができる。材料となるウイルスとしては、例えばパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のセンダイウイルス(Sendai virus)、ニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus)、おたふくかぜウイルス(Mumps virus)、麻疹ウイルス(Measles virus)、RSウイルス(Respiratory syncytial virus)、牛疫ウイルス(rinderpest virus)、ジステンパーウイルス(distemper virus)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のインフルエンザウイルス(Influenza virus)、ラブドウイルス科(rhabdoviridae)の水疱性口内炎ウイルス(Vesicular S)、狂犬病ウイルス(Rabies virus)等が挙げられる。
例えば、センダイウイルスを用いる場合、ウイルスが自律的に複製するためには、NP、P/CおよびL遺伝子から作られるタンパク質群が必要だと考えられているが、該タンパク質群をコードする遺伝子自体は、本発明のウイルスベクターに必ずしも含まれている必要なはい。例えば、本発明のベクターを、該タンパク質群をコードする遺伝子を有する宿主細胞を用いて製造し、該宿主細胞から該タンパク質群が供給されてもよい。また、これらのタンパク質群のアミノ酸配列は、ウイルス由来の配列そのままでなくとも、核酸の導入における活性が天然型のそれと同等かそれ以上ならば、変異を導入したり、あるいは他のウイルスの相同遺伝子で代用してもよい。
また、例えばセンダイウイルスを用いる場合、伝播力を有するためには、M、FおよびHN遺伝子から作られるタンパク質群が必要だと考えられているが、該タンパク質群をコードする遺伝子自体は、本発明のウイルスベクターに必ずしも含まれている必要はない。例えば、本発明のベクターを、該タンパク質群をコードする遺伝子を有する宿主細胞を用いて製造し、該宿主細胞から該タンパク質群が供給されてもよい。また、これらのタンパク質群のアミノ酸配列は、ウイルス由来の配列そのままでなくとも、核酸の導入における活性が天然型のそれと同等かそれ以上ならば、変異を導入したり、あるいは他のウイルスの相同遺伝子で代用してもよい。
外来遺伝子を神経細胞へ導入するには、外来遺伝子をウイルスゲノムに挿入した組換えウイルスゲノムを含む複合体を作製して用いることができる。組換えウイルスゲノムを含む複合体は、前記のいずれかのウイルスまたは組換え体ウイルスのcDNAを改変したものを試験管内または細胞内で転写させ、ウイルスを再構成させることによって得ることができる。このようなウイルス再構成は、既に開発されている(国際公開97/16539号参照)。
また、完全なセンダイウイルスゲノムではなくても、DI分子(J.Virol. 68,8413-8417,1994)などの不完全ウイルスや、合成したオリゴヌクレオチド等も複合体を構成する成分として用いることが可能である。
センダイウイルスを材料に用いる場合、伝播力に関わるM、F、HN遺伝子の全ての遺伝子が含まれた複合体を使用することができる。しかし通常は、M、F、HN遺伝子の全てが含まれた複合体を脳内へ導入しても、脳内には、センダイウイルスが伝播力を有するために必要なFタンパク質を開裂させるプロテアーゼが存在しないため、ウイルス粒子形成後も伝播力を持たないと考えられる。ここで、「伝播力」とは、「感染や人工的な手法で核酸が細胞内に導入された後、細胞内に存在する該核酸が複製後、感染粒子またはそれに準ずる複合体を形成し、別の細胞に伝播することのできる能力」を意味する。しかし、より安全には、再構成された複合体に含まれるウイルスゲノムから、伝播力に関わる遺伝子を欠失または機能的に不活化させておくことが好ましい。センダイウイルスの場合、伝播力に関わる遺伝子とは、M、F、および/またはHN遺伝子である。このような複合体の再構成法は既に開発されている(国際公開97/16538号参照)。例えばセンダイウイルスにおいて、再構成された複合体に含まれるウイルスゲノムから、Fおよび/またはHN遺伝子を欠失させたゲノムを有するベクターを作ることができる。このようなベクターも、本発明の神経細胞へ核酸を導入するためのベクターに含まれる。
複合体には、例えば、エンベロープ表面に特定の細胞に接着しうるような接着因子、リガンド、受容体等が含まれていても構わない。組換え体(−)鎖RNAウイルスは、たとえば免疫原性に関与する遺伝子を不活性化したり、RNAの転写効率や複製効率を高めるために、一部の遺伝子を改変したものでもよい。
複合体に含まれるRNAは、適当な部位に外来性遺伝子を挿入することができる。所望のタンパク質を発現させるためには、所望のタンパク質をコードする外来性遺伝子を挿入する。センダイウイルスRNAにおいては、R1配列とR2配列との間に、6の倍数の塩基数を有する配列を挿入することが望ましい(Journal of Virology,Vol.67,No.8,1993,p.4822-4830)。挿入した外来性遺伝子の発現量は、遺伝子挿人の位置、また遺伝子の前後のRNA塩基配列により調節しうる。例えば、センダイウイルスRNAにおいては、挿入位置がNP遺伝子に近いほど、挿入された遺伝子の発現量が多いことが知られている。
複合体に含まれるRNAにコードされた外来遺伝子は、この複合体を細胞に感染させることにより発現させることができる。実施例に示すように、センダイウイルスの再構成系を用いて作製した本発明の一態様としての複合体は、種々の神経細胞株に効率よく外来遺伝子を導入できることがわかった。また実施例5に示すように、外来遺伝子としてβ−グルクロニダーゼ遺伝子を有する本発明の一態様としての複合体は、レトロウイルスベクターを用いた場合よりも有意に高い発現量を示すことがわかった。このような特性を利用して、神経細胞への遺伝子導入に利用することが可能である。また本発明の一態様としての複合体は、実施例6に示すように、脳室内への投与後、1週間前後で発現が弱まるため、一定期間だけの発現が必要な遺伝子治療などに対し有用である。
製造された複合体は、神経細胞へ接触させることによって、またはウイルスベクター産生細胞を直接神経細胞へ接触させることによって、複合体に含まれる核酸などの化合物を神経細胞へ導入することができる。脳内に投与する場合、例えば、麻酔開頭後、頭蓋骨に穴を開け、ガラス針等を用いて投与することができる。複合体には、外来遺伝子を含めることが可能である。外来遺伝子としては、神経細胞特異的遺伝子、アポトーシス抑制遺伝子、その他各種疾患治療用遺伝子など、あらゆる種類の遺伝子が挙げられる。また、特定の遺伝子の機能を阻害するようなアンチセンスDNAやリボザイムのような形態をとることも可能である。
例えば、虚血における脳細胞の細胞死は、虚血直後に起こるのではなく、虚血後数日のうちに起こることがわかっている(Neurosci. Lett.,1998,240:69-72)。従って、このような時の脳細胞の細胞死を防ぐために、bcl-2などの細胞死を抑制する遺伝子を有する本発明の複合体を利用することができる。実際、本発明のベクター投与により、虚血による栄養分の供給停止により脆弱神経細胞の遅発性細胞脱落を防止できるかを調べたところ、FGF-1発現ベクターの投与により細胞の脱落を有意に防ぐことができることが見出された(実施例10)。また、実施例6および8に示すように、本発明の複合体は、脳室内投与によって、上衣細胞および脳室に沿った細胞へ外来遺伝子を導入できる。外来遺伝子に分泌性タンパク質を産生する遺伝子を用いれば、髄液を伝って該タンパク質を、海馬付近を含む脳内に拡散させることも可能である。また、実施例7に示すように、海馬の錐体細胞へ投与し、該細胞で外来遺伝子を発現させることも可能である。また、実施例6および7に示すように、本発明の一態様としての複合体は、脳内への投与後、13日後も神経細胞において発現が認められ、複合体の導入により、細胞死が引き起こされることはなかった。このことは、本発明の複合体が、中枢神経の遺伝子治療に有用であることを示している。例えば、実施例9において、FGF発現ベクターを脳室内へ投与することにより、摂食量を制御し、体重を減少させることができることが示された。FGF-2による体重減少(Denton, D.A. et al.(1995)Physiol. Behav. 57(4):747-752)、および体重減少に伴う血糖値の低下(Stephens, T.W. et al.(1995)Nature 377(6549):530-532)が既に報告されており、本発明で見出された体重減少に伴う血糖値の低下が考えられる。
このように、本発明のベクターを用いることにより、上衣細胞を標的にした、ベクターの新しい投与形態が提供された。標的となる細胞としては上衣細胞の他、脳室に沿った細胞、海馬領域の細胞、特に海馬錐体細胞、ニューラルステムセル、哺乳動物の胚由来の神経堤細胞などが挙げられるが、これらに制限されない。導入する遺伝子としては、これに制限されないが、繊維芽細胞増殖因子、神経成長因子、アポトーシス阻害因子、ヒートショック蛋白質、過酸化水素分解酵素の遺伝子などが挙げられる。具体的には、FGF-1(J.Biol. Chem. 271(47), 30263-30271, 1996), FGF-5(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87(20), 8022-8026,1990), NGF(Nature, 302(2), 538-540, 1983), CNTF(Nature, 357(6), 502-504, 1992), BDNF(EMBO J., 9(8), 2459-2464,1990), (Genomics, 10(3), 558-568, 1991), GDNF(J. Neurosci. Res. 41(2), 279-290, 1995), p35(J.Virol. 61(7), 2264-2272, 1987), CrmA(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83,7698-7702, 1986),ILP(EMBO J. 15(11), 2685-2694, 1996), bcl-2(Oncogene., 4(11):1331-6,1989), ORP 150(Biochem. Biophys. Res. Commun. 230(1), 94-99, 1997)などが例示できる。また、本発明のベクターは、DNAチップやDNAアレイを利用した遺伝子の探索に有用であるほか、モデルマウスの簡便な作成と治療薬開発をも可能とするものである。
本発明の複合体の導入が可能な動物としては、ヒト、スナネズミ、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、サルなど全ての哺乳動物が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
図1は、GFPGFPおよびβ-グルクロニダーゼ遺伝子などの外来遺伝子を含む付加型センダイウイルス(SeV)の構築法を示す図である。NotI部位を付加したプライマー1および、転写開始配終結シグナル(R2)、介在配列(IG)、転写開始配列(R1)配列、およびNotI部位を含むプライマー2を用いて、外来遺伝子のORFをPCRにて増幅し、pUC18/T7HVJRz.DNA(+18)のNotI部位に挿入する。
図2は、GFP遺伝子を有するセンダイウイルス(「GFP-SeV」)を感染させたマウス脳でのGFPの発現を示すマウス脳正額断面図である。
図3は、β-グルクロニダーゼ遺伝子を有するセンダイウイルスを感染させたβ-グルクロニダーゼ欠損マウスの、感染3日後の側脳室でのβ-グルクロニダーゼの発現を示す脳断面図である。
図4は、A:β-グルクロニダーゼ遺伝子を有するセンダイウイルスを感染させたβ-グルクロニダーゼ欠損マウスの、感染12日後の側脳室でのβ-グルクロニダーゼの発現(枠で囲った部分)を示す脳断面の切片である。B:Aの隣接切片のLorbacher法による染色像である。
図5は、FGF-1、FGF-5およびGFP発現センダイウイルスをスナネズミ脳室内へ投与したときの、体重の変化を示すグラフである。
図6は、FGF-1、FGF-5およびGFP発現センダイウイルスベクターをマウス脳室内へ投与後の体重変化を示す図である。
図7は、FGF-1、FGF-5およびGFP発現センダイウイルスベクターをマウス脳室内へ投与後の摂餌量変化を示す図である。
図8は、スナネズミの虚血5日後の海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性細胞脱落を示す図である。
図9は、FGF-1発現センダイウイルスベクター投与による海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性細胞脱落防御を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] 付加型センダイウイルス(SeV)ベクターの作製
SeV転写ユニットpUC18/T7HVJRz.DNA(+18)(Genes Cells,1996,1:569-579)の制限酵素NotI開裂部位に、導入遺伝子に転写開始(R1)と終結(R2)シグナルと介在(IG)配列を付加したNotI断片をPCRにより増幅させ(図1)、pUC18/T7HVJRz.DNA(+18)の制限酵素NotI開裂部位に導入した(図1)。既知の方法(Genes Cells,1996,1:569-579)に従い、LLCMK2細胞および発育鶏卵を用いて上述の各遺伝子を含むウイルスの再構築を行った。その結果、目的の遺伝子を含むウイルスを回収することが出来た。
[実施例2] 「GFP-SeV」の確立された神経細胞株への感染性の確認
確立された細胞株として、ラット副腎髄質褐色細胞種(PC12)、ヒトのニューロブラストーマ細胞(IMR-32)およびヒトのグリオブラストーマ細胞(A172)を用いた。PC12細胞の培養は終濃度5%になるようにウマ血清および仔ウシ血清をそれぞれ添加したDMEM培地により行った。神経突起を伸長させるために神経成長因子(NGF7S)を終濃度が50ng/mlになるように添加した。ヒトのニューロブラストーマ細胞(IMR-32)の培養には10%仔ウシ血清を含むMEM培地に、終濃度が1mMおよび0.1mMになるようにMEMピルビン酸ナトリウム溶液およびMEM非必須アミノ酸溶液を添加した培地を使用した。ヒトのグリオブラストーマ細胞(A172)の培養には10%仔ウシ血清を含むMEM培地(高グルコース)を用いた。
PC12への感染実験は、直径6cmプレートに105個の細胞をNGFを含む培地に植え3日間培養し神経突起の伸長した細胞を用いて行った。培地を除去後、細胞をPBSで1回洗浄した。1%ウシ血清アルブミンを含む500μlのPBSに106plaque forming unit(p.f.u.)となるように(GFP遺伝子を導入したSeV、以下GFP-SeVと称する)「GFP-SeV」を希釈し細胞に加え、細胞が乾燥しないように20分間ウイルスを感染させた。感染後、プレートに培地を5ml加え、細胞を2日間培養した。培養後、蛍光実体顕微鏡下でGFPの蛍光を観察した。その結果、「GFP-SeV」がPC12細胞に感染し細胞内でGFPの蛍光を発することを確認した。コントロールのGFP遺伝子を保持しないSeV感染細胞および非感染細胞では蛍光を認めることが出来なかった。
IMR-32細胞を直径10cmプレートに3×105個の細胞を所定の培地に植え、1晩培養した。培養後の細胞数を6×105個と見積もり、多重感染度(m.o.i.)が10になるように「GFP-SeV」を1%ウシ血清アルブミンを含む1000μlのPBSに希釈した。ウイルスを20分間感染させ、所定培地で12および36時間培養を行った。蛍光実体顕微鏡下でGFPの蛍光を観察した。12時間後では、「GFP-SeV」感染細胞の細胞体において蛍光が認められた。36時間後には細胞体の他に突起部位においてもGFPの蛍光が認められた。コントロールのGFP遺伝子を保持しないSeV感染細胞および非感染細胞では蛍光を認めることが出来なかった。
A172細胞においてもIMR-32細胞と同様な方法で感染させた。「GFP-SeV」感染細胞の細胞体において蛍光が認められた。コントロールのGFP遺伝子を保持しないSeV感染細胞および非感染細胞では蛍光を認めることが出来なかった。
「GFP-SeV」は今回用いたいずれの確立された神経細胞株にも感染し、細胞内でGFP遺伝子よりGFPを発現させることに成功した。これによりSeVの初代脳細胞およびインビボ投与での脳細胞への感染の可能性が示唆された。
[実施例3] ラットの初代脳細胞の培養
妊娠18日SDラットをジエチルエーテルにより深麻酔し、腋下動脈放血により安楽死させた。下腹部を95%エタノールで消毒後、開腹し子宮ごと胎児を摘出した。以後の操作は無菌的に氷上で行い、温度指定のない溶液はすべて氷温のものを使用した。丸ピンセットとハサミを用いて子宮から胎児を摘出し、20mlの作業液(DMEM 50%,PBS 50%)入りプレートに移した。胎児を滅菌ガーゼ上に置き、INOX#4ピンセット2本を用いて皮膚頭蓋を正中に沿って切り開き、INOX#7ピンセットを脳組織下面に沿って差入れ、延髄を断ち切りながら脳組織全体をすくい上げて脳を取り出し作業液に入れた。実体顕微鏡下で、メス2本を用いて作業液中の脳を3枚におろし脳幹を分離し海馬、線条件を含む大脳半球2個を丸ピンセットで別の作業液に移した。実体顕微鏡下で、INOX#5ピンセット2本を用いて脳組織表面の髄膜を残さず除去し、洗浄のため丸ピンセットで別の作業液に移した。大脳半球6個を丸ピンセットで保存液(DMEM(5%ウマ血清および5%仔ウシ血清を含む)90%、DMSO 10%)に入れ、メスで1mm以下に細切した。切断した組織片を1.5ml程度の保存液と共に冷却しておいた凍結用チューブにいれ、フリージングコンテナーに格納し、3時間かけ緩速凍結を行い液体窒素に保存した。大脳半球6個分の組織片を液体窒素より取り出した32℃で解凍した。組織片を氷冷した8mlの作業液で2回洗浄した。30秒間静置し上清を除去した。濾過滅菌し氷温冷却したパパイン溶液(パパイン1.5U、システイン0.2mg、ウシ血清アルブミン0.2mg、グルコース5mg、DNase 0.1mg/ml)を5ml加え、32℃15分間加温した。5分毎に転倒撹拌した。上清をとり20%仔ウシ血清入り溶液を5ml加えた。沈殿画分に32℃に加温したパパイン溶液を5ml加え更に15分間加温した。5分毎に転倒撹拌した。上清が十分に濁り、組織片が半透明になったことを確認してからピペッティングを行い組織片をばらばらにした。32℃に加温しておいた、1回目の上清画分を試料液に加え、あらかじめ32℃に温めておいた遠心機で遠心(1200rpm、5分間)した。上清を除きDMEM(5%ウマ血清および5%仔ウシ血清を含む)を5ml加え撹拌し細胞をほぐし、前述の条件下で遠心を行った。上清を除き2mlのDMEM(5%ウマ血清および5%仔ウシ血清を含む)を加え撹拌した。細胞数計測を行った結果、細胞数は5×106cells/mlであった。ポリエチレンイミンコーティングされたプレート上に得られた初代脳細胞を捲き培養を行った。
[実施例4] SeVの初代脳細胞への感染性の「GFP-SeV」による確認
実施例3により得られた初代脳細胞を直径10cmプレート上で3日間培養した。上清を除去し、「GFP-SeV」を1%ウシ血清アルブミンを含む1000μlのPBSに希釈した試料溶液を加え、ウイルスを20分間感染させた。感染後、プレートにDMEM(5%ウマ血清および5%仔ウシ血清を含む)培地を10ml加え、細胞を2日間培養した。培養後、蛍光実体顕微鏡下でGFPの蛍光を観察した。ほとんどの細胞が蛍光を呈した。すなわち、初代脳細胞にもSeVが感染することが確認された。
[実施例5] β-グルクロニダーゼ遺伝子欠損ヒト線維芽細胞へりβ-グルクロニダーゼ遺伝子を有するセンダイウイルス(以下「β-glu-SeV」と略する)の感染とβ-グルクロニダーゼの発現
本発明の実施には、β-グルクロニダーゼ遺伝子欠損ヒト線維芽細胞(以下β-glu欠損線維芽細胞と称する)および正常ヒト線維芽細胞を使用した。
ムコ多糖欠損症VII型はムコ多糖症の1つであり、リソソーム酵素の1つであるβ-グルクロニダーゼ欠損により引き起こされる。臨床的には多様な症候を呈する。胎児水腫を伴う重症型から軽症型まであるが、乳児期から発症する重症例が多い。特有な顔貌、肝脾腫、精神運動発達遅滞、骨変形などである。
β-グルクロニダーゼがリソソームに運搬されるためには、小胞体およびゴルジ体で糖鎖付加さらにマンノースの6位がリン酸される必要が示唆されている。リソソームに運搬されるとC-末端がプロテオリシスを受ける。
本発明の実施に際して1)「β-glu-SeV」がヒト線維芽細胞に感染するかどうか、2)発現量はどのくらいであるか、3)リソソームに運搬される分子種が存在するかどうかを検定した。
1)β-glu欠損線維芽細胞を6ウエルプレートに細胞数が105cells/wellとなるよう調製した。「β-glu-SeV」をm.o.i.が5になるように1%ウシ血清アルブミンを含む100μlのPBS溶液に希釈し、前日より培養したβ-glu欠損線維芽細胞に1時間ウイルスを感染させた。血清を含まないMEM培地中で24時間培養した。培養した細胞をホルマリン、アセトン(1:7)混合液で固定した。基質にナフトールAS-BIグルクロニドを用い、基質の分解をpH5.0の酢酸緩衝液中、37℃で行い、赤色呈色により基質分解を観察した。その結果、「β-glu-SeV」を感染させたβ-glu欠損線維芽細胞の細胞質が赤く染色された。これは「β-glu-SeV」がβ-glu欠損線維芽細胞に感染し、導入遺伝子を発現したことを示すものである。
2)β-glu欠損線維芽細胞を6ウエルプレート上で細胞数が105cells/wellとなるよう調製した。「β-glu-SeV」をm.o.i.が0.1および1.0になるように1%ウシ血清アルブミンを含む100μlのPBS溶液に希釈し、前日より培養したβ-glu欠損線維芽細胞に1時間ウイルスを感染させた。血清を含まないMEM培地中で、24時間および48時間培養した。所定の時間培養後、細胞を回収し超音波処理により細胞内画分を調製した。4-メチルウンベリフェニル-β-D-グルクロニドを基質とし、分光蛍光光度計で蛍光強度を測定することにより4-メチルウンベリフェロン(MU)の量を測定した。その結果を表1に示す。表中、発現量は、1mgの細胞内画分タンパク質が1時間に生成する4-メチルウンベリフェロン(MU)の量で表した。
Figure 0003883213
表1に示すように「β-glu-SeV」感染細胞の発現量は、15,900〜32,300(nmol MU/mg全タンパク質/時)であり、正常線維芽細胞では276、レトロウイルスでβ-グルクロニダーゼを発現させた場合(β-glu-retro)は911であった。SeVが感染細胞中で、導入タンパク質を強く発現させることが判った。
3)上記2)で得られた画分を「β-glu-SeV」感染β-グルクロニダーゼ欠損線維芽細胞内画分とした。培養上清画分として培養上清中に含まれるタンパク質を冷却アセトンで沈殿させ回収した。得られた試料を抗ヒトβ-グルクロニダーゼ抗体を用いたウエスタンブロッティングに供した。その結果、「β-glu-SeV」感染β-グルクロニダーゼ欠損線維芽細胞内画分には、抗ヒトβ-グルクロニダーゼ抗体に反応する、高および低分子の2つのタンパク質が認められた。低分子量のバンドは、正常線維芽細胞で抗ヒトβ-グルクロニダーゼ抗体に反応するタンパク質と同じ分子量のものであり、リソソームに運搬されたβ-グルクロニダーゼのC-末端がプロテオリシスを受けた分子種であると考えられる。高分子タンパク質は正常線維芽細胞では認められず、「β-glu-SeV」感染β-glu欠損線維芽細胞内および「β-glu-SeV」感染β-glu欠損線維芽細胞上清画分に認められた。上清画分は高分子量のタンパク質のみであった。高分子のタンパク質種は「β-glu-SeV」感染によるβ-グルクロニダーゼ発現が高すぎるために、リソソームへの輸送が追いつかずミクロソーム又は細胞外に分泌されたものと考えられる。あるいは、分子量からみて、糖鎖は付加されているがマンノースの6位がリン酸化されず、リソソームへ輸送されない分子種である可能性も考えられる。
「β-glu-SeV」感染β-グルクロニダーゼ欠損線維芽細胞内画分に、リソソームへ輸送されると推測されるヒトβ-グルクロニダーゼを発現させることが出来た。
[実施例6] GFP-SeVの脳室投与による上衣細胞でのGFPの発現
8-10週齢マウスを10倍希釈メンブタール200μlで麻酔した。開頭後ブレグマから1.0mm正中より右横1.5mmの位置に歯科用ドリルで直径1mmの穴を頭蓋骨に開けた。硬膜を除去後、27Gの注射針を用いて深さ1.3mmの位置にGFP-SeVを投与した。投与「GFP-SeV」容量は20〜30μlとし、その試料溶液に含まれるウイルス数は1〜1.5×107p.f.u.であった。コントロールとしてGFP遺伝子を含まないSeV、PBSを投与した。投与後、3、5、7、10日後に剖検し、脳全体を取り出し脳を正額断に切断した。実体蛍光顕微鏡下でGFPの蛍光を観察した。「GFP-SeV」投与3日後の剖検切開脳において顕著なGFPの蛍光が認められた。その正額断組織の脳室に沿った部位において、鮮明なGFPの蛍光が認められた(図2)。後の実施例8でも述べるが、GFPの蛍光を呈するSeV感染細胞は上衣細胞であると考えられた。感染5、7日後の側脳室にそった細胞も、蛍光を呈した。しかし、7日後の細胞では蛍光の程度はかなり小さくなっていた。10日後には蛍光を呈する脳細胞を認めることが出来なかった。コントロールとしてGFP遺伝子を含まないSeV、PBSを投与したマウス脳においては蛍光を認めることが出来なかった。
[実施例7] 定位脳手術脳実質への「GFP-SeV」の投与
本発明の主な目的である神経細胞、特に海馬の錐体細胞へのSeVの感染を調べるためには正確に海馬付近にSeVを投与することが求められる。定位脳手術により脳実質にSeVを導入し、SeVの脳実質細胞への感染を調べた。実験動物として1)マウス、2)ラットを用いた。
1)マウスの正中より左右2mm、ブレグマより前方3mmの頭蓋骨の位置に歯科用ドリルで直径1mmの穴を開け、深さ右3.5mm左2.5mmの実質部分位にガラス針を用いて「GFP-SeV」を1.5μl投与した。閉頭3日後に開頭し、GFPの発現を調べた。実質部分でGFPの発現が認められた。エタノール固定後、凍結切片を作製した。エタノール固定後の凍結切片では発色団の流出によりGFPの蛍光はかなり減衰されたが、蛍光を呈する部位が認められた。内包付近の白質中で、エタノールでミエリンタンパク質が溶出した軸索においてGFPの蛍光が認められた。さらに線条体付近と推側される部位の軸索においてもGFPの蛍光が認められた。
この結果、「GFP-SeV」はマウス脳の神経細胞に感染することが示された。
2)ラットには正確なステレオ図があり、正確に海馬CA1領域の錐体細胞付近に「GFP-SeV」を投与出来る。体重170g前後のラットを、麻酔開頭後、正中より左右2mm、インターナル(シグマ)より前方4.5mmの頭蓋骨の位置に歯科用ドリルで直径1mmの穴を開け、深さ右3.5mm左2.5mmの実質部分位にガラス針を用いて「GFP-SeV」を1.5μl投与した。閉頭3日後に開頭し、GFPの発現を調べた。その結果、深さ2.5mm投与で海馬CA1錐体細胞領域でGFPの発現が認められた。海馬付近を蛍光顕微鏡により拡大して観察すると、海馬CA1錐体細胞の細胞体および樹状突起で顕著な蛍光を呈した。投与13日後の錐体細胞でも発現が観察された。投与13日後でも、GFPの発現が錐体細胞の細胞体および樹状突起で認められた。これはSeV感染13日後でも神経細胞死を引起さないことを示すものであり、脳虚血後の細胞脱落死を防御するための遺伝子治療用ベクターとして活用できることを強く示唆するものである。
[実施例8] β-グルクロニダーゼ欠損マウスの「β-glu-SeV」による遺伝子治療の試み
実施例6で示したようにSeVは脳室投与で上衣細胞に感染することが示唆されたので、「β-glu-SeV」をβ-グルクロニダーゼ欠損マウス(J.Clin.Invest.,1989,83:1258-1266)の脳室に投与し、感染細胞より脳背髄液にβ-グルクロニダーゼを分泌させ標的細胞に取込ませることによる、症状改善を図る実験を試みた。
ヘテロマウスの交配により得られたマウスの尾のβ-グルクロニダーゼ活性測定と染色体上のβ-グルクロニダーゼ遺伝子欠損部位のPCR増幅断片の制限酵素NlaIV切断の有無により、得られた個体からホモマウスを選択し今回の実験に供した。投与方法は実施例6に準じて行った。投与3日および12日後に脳を取り出し、凍結切片を作製した。組織でのβ-グルクロニダーゼ活性は実施例5の1)の方法の変法を用いて調べた。図3で示すように脳室に沿ってβ-グルクロニダーゼ発現部位が強く赤色に染め出された。顕微鏡により拡大して観察すると側脳室の上衣細胞で強くβ-グルクロニダーゼが発現し、しかも細胞外に分泌されていることが確認された。投与12日後切片上(図4)で、側脳室の上衣細胞で発現し分泌されたβ-グルクロニダーゼが、髄液の移動により脳室内に広がり、海馬付近まで到達していることが判った。投与により外見上β-グルクロニダーゼホモマウスの運動能力が少しではあるが向上した。
[実施例9] FGF-1または5を保持するセンダイウイルスベクター投与による摂食抑制実験(スナネズミおよびマウスにおける摂食抑制実験)
スナネズミ(体重60-80g)をメンブタールにて麻酔後、脳定位装置に固定、脱髪し、脳正中に沿い開皮した。頭蓋骨のブレグマより1.0mm、正中より右1.5mmの部位を歯科用ドリルを用いて、頭蓋骨下の血管を切らないように開穴した。開穴後ピンセットで硬膜等を除去した。30Gのシリンジ針を用いて、深さ1.0mmの右側脳室にマウスFGF-1-SeV(5×106pfu)、ヒトFGF-5-SeV(1×107pfu)およびGFP-SeV(5×106pfu)を投与した(n=2)。なお、ウイルスの作製は実施例1に順じて行った。体重測定を行い、体重変化を調べた結果、投与翌日より体重減少が認められた(図5)。FGF-1投与群では投与翌日から体重減少を呈し、6日後まで毎日5%前後の減少が続き6日後の減少率は29.5%となった。投与7日後に最大減少率29.8%を示した。その後体重は増加に転じ、投与20日後には3.5%の減少率にまで回復した。次にFGF-5投与群では体重減少は翌日から認められ、投与5日後に最大減少率21.7%を示し、その後増加に転じ20日後には8.0%の減少率となった。FGF-9投与群でも同様に体重減少は翌日から認められ、投与5日後に最大減少率22.9%を示し、その後増加に転じ20日後には6.4%の減少率となった。コントロールとして投与したGFP-SeV群では、投与の際の影響によるとみられる体重減少が最大5.8%認められるが、FGF投与群に対する減少率は小さくFGFの作用と考えられる体重減少作用が明確に認められた。
スナネズミの系でFGF-1-SeVおよびFGF-5-SeV投与による体重減少が認められたので、さらに詳細な実験をB-6マウス(体重およそ20-22g)を用いて行った。投与部位は右側脳室とし、ブレグマより1.0mm、正中より右横1.5mmの位置に歯科用ドリルで直径1.0mmの穴を開けた。硬膜を除去後、27Gの注射針を用いて深さ1.3mmの位置に試料を投与した。投与試料のFGF-1-SeVはウイルス溶液1μl(1×106pfu)に9μlのPBSを加え、FGF-5-SeVはウイルス溶液2μl(2×106pfu)に8μlのPBSを加え、コントロールのGFP-SeVは1μl(1×106pfu)に9μlのPBSを加えて調整した。投与後2週間の体重変化と摂餌量を測定した。
コントロールとして投与したGFP-SeVでは体重減少は認められず、投与2週間後には投与開始時の体重に比べて7.5%の増加が認められた(図6)。摂餌量においても顕著な変化が認められなかった(図7)。FGF-1-SeV投与の系では投与6日後に平均30.5%の体重減少が認められた(図6)。その後体重は増加に転じ、2週間後には13.5%の体重減少となった。FGF-1投与による摂餌量変化は劇的で投与2日後から6日後にかけて、特に3日後から6日後におけてはほとんど摂餌が見られなかった(図7)。FGF-5-SeV投与の系では体重減少は認められたが、FGF-1-SeV投与に比べるとその減少率は小さく最大17.9%の減少であった(図6)。これらの体重減少の度合いはスナネズミの系で示した実験結果と同様の傾向を示すものである。FGF-5-SeV投与における体重減少の度合いはFGF-1-SeV投与に比べて少ないが、摂餌量の減少ははっきりと認められた(図7)。
実施例の結果にあるように、SeVによる脳室内でのFGFの発現による体重減少効果は最大30%の体重減少を示した。FGFを精製タンパク質の形で脳室内投与することによる体重減少はたかだか7-8%であることを考えると、体重減少率が非常に大きいことが判明した。これらの効果の差は、投与方法の差によるFGFの脳室内での存在量の違いであることが考えられるほか、SeVの上衣細胞への感染による神経細胞への直接作用による可能性も考えられる。しかし、摂食調節に関しては脳では視床下部の神経核による調節が報告されているのみであることを考えると、SeVが上衣細胞に効率良く感染し機能を有するタンパク質を脳室の脳脊髄液中へ分泌し、その分泌タンパク質が視床下部神経核へ効率的に作用しているものと推察できる。視床下部神経組織の一部は血液脳関門のtight junctionを欠失する神経構築があり、末梢循環や脳脊髄液中の液性因子を受容するニューロンが存在することが明らかにされていることからも、この推察が正しいであろうと考えられる。
視床下部諸核のうち、摂食及び満腹中枢と考えられている、視床下部腹内側核(ventromedial hypothalamus;VMH)、視床下部側野(lateral hypothalamic area;LHA)の中に、化学感受性ニューロンが存在し血液や脳脊髄液中に含まれる代謝産物やホルモンに応答しニューロン活動が変化する。これらVHHやLHAニューロンはグルコースに応答するばかりでなく、サイトカインや成長因子なども食欲の調整因子として作用することが明らかにされている。また室傍核(paraventricular nucleus;PVN)も破壊実験から摂食を抑制することが明らかにされており、ここには摂食抑制作用と交感神経活動促進作用を示すcorticotropin releasing hormone(CRH)産生ニューロンが存在する。また弓状核(arcuate nucleus;ARC)は摂食促進物質のNPYの産生部位であり、ターゲットはPVNであることが示唆されている。本明細書の摂食行動抑制の結果からFGFはこれら神経核に作用したことが予想される。摂食行動に関し旺盛に研究されている脂肪滴を有する成熟脂肪細胞において発現しているレプチン、さらにNPYなどとの関連に注目しなければならない。
[実施例10] スナネズミを用いた虚血性細胞脱落防御実験
脳虚血に曝された領域は細胞障害を受け、それが進行すると細胞死に至る。この程度は虚血の程度と時間に依存している。虚血が重度である場合には短時間の間に神経細胞のみならず虚血領域のすべての構成細胞が不可逆的傷害を被り、ネクローシスによる脳梗塞巣が形成される。しかし、重度の虚血ストレスでも持続時間が短い場合や持続時間が長くても虚血レベルが軽度の場合には、虚血領域細胞の虚血の程度による脆弱性が認められる。最も脆弱な細胞は神経細胞であり、ついでオリゴデンドロサイトが挙げられる。アストログリア、ミクログリア、血管内皮細胞は虚血ストレスに対してより抵抗性を示すことが知られている。広範脳虚血モデルを用いた検討から、虚血に対する神経細胞間にも差が認められることが判っており、遅発性神経細胞死が認められる海馬CA1の神経細胞や歯状回門部の神経細胞、後頭部の前庭神経核の神経細胞が最も脆弱な細胞として知られている。遅発性神経細胞死は、エネルギー不全によらない選択的神経細胞死の再現性良好なモデルとなり虚血性神経細胞死の分子機構の解明に大きく寄与している。これらのモデル系を用いた実験では、神経細胞がどのようなカスケードをたどって死ぬのか、そのカスケードをどこで断ち切れば細胞を保護することができるのか、遅発性神経細胞死は形式としてどこに位置づけられるのか、などの問題をめぐって多くの報告がなされてきた。
実験モデル動物としてはラット、スナネズミ、マウスが用いられることが多い。これら全脳虚血モデルに数分から数十分の一過性虚血を脳全体に加えることにより生じる、海馬、線条体など虚血に脆弱な部分の病態変化の研究や治療が行われている。ラットでは4血管閉塞モデル、低血圧下両側総頸動脈閉塞モデル、スナネズミの両側総頸動脈閉塞モデルなどがよく虚血モデルとして使用されている。本発明者らはスナネズミの両側総頸動脈閉塞モデルを用いて虚血実験を行った。スナネズミの短時間の虚血(5分間)では主として海馬CA1領域の大部分の錐体細胞死が起こることが知られている。そこで本発明者らは、虚血細胞死を防御可能性遺伝子のSeVへの導入し、それをスナネズミの海馬に投与し、虚血後の細胞脱落死を防御することを目的とした実験を行った。
<スナネズミでの虚血細胞死モデルの作製>
スナネズミ(gerbil種)の両側総頸動脈閉塞(5分間)モデルにより実験を行った。スナネズミの両側総頸動脈を閉塞(5分間)することにより、閉塞後3-5日後に海馬錐体細胞が選択的に脱落する。しかし、この現象はすべてのスナネズミに認められるものではく、販売会社よりスナネズミを購入し、その中からスクリーニングにより優秀なものを選抜する必要がある。このスクリーニングを行ったスナネズミ(大阪市大解剖学第一教室の前田講師から譲渡)を用いた。
ケタミン麻酔後、開胸し気管の左右にある頸動脈を探しだし、頸動脈に付着する脂肪を除去した。除去後頸動脈をクリップで5分間閉塞した。この際、脳温および体温が低いと神経細胞死率が有意に低下するので、肛門に温度計を入れ体温を37.5℃になるように保温した。5分後クリップを取り外し、再潅流した。5日後にスナネズミを屠殺し、開頭後脳を取り出し、パラフィン切片を作製した。トルイジン染色により神経細胞の様子を確認した。期待通りに海馬CA-1領域で錐体細胞脱落が認められた(図8)。これによりスナネズミでの虚血細胞死モデルを作製することができた。
<組換えSeV導入による神経細胞死防御実験>
上記で作製したSeVベクターを用いて神経細胞脱落防御に効果があるかどうかの検証を行う。すなわち、まず虚血前日に右脳にのみにウイルスを導入し、翌日虚血を行い5-6日後に屠殺し海馬錐体細胞の様子を観察する。
<海馬へのFGF-1-SeVの導入>
体重が60-80gになったスナネズミを選抜し本実験に供した。メンブタールにて麻酔後、脳定位装置に固定、脱髪し、脳正中に沿い開皮した。ブレグマより5mm、正中より右2mmの部位に歯科用ドリルを用いて、頭蓋骨を、頭蓋骨下の血管を切らないように開穴した。開穴後ピンセットで硬膜等を除去した。深さ1.4mmに位置に投与ガラス針を導入し、2分間放置し0.5-1.0μlのFGF-1センダイウイルス溶液(ウイルス数1.0×106pfu〜2.0×106pfu)を12分間かけて注入し、さらに10分間放置した。針を抜き、縫合を行った。この際ウイルス投与は右脳のみとし、虚血後の神経細胞脱落の判定を右、左脳を比較することにより行った。
<虚血操作>
ケタミン麻酔後、開胸し気管の左右にある頸動脈を探しだし、頸動脈に付着する脂肪を除去した。除去後頸動脈をクリップで5分間閉塞した。この際、脳温および体温が低いと神経細胞死率が有意に低下するので、肛門に温度計を入れ体温を37℃になるように保温した。5分後クリップを取り外し、再潅流した。5-6日後に屠殺した。
<パラフィン切片の作製>
屠殺後脳を正額断に厚さ300-500μmに切り、1晩4%パラフォルムアルデヒドに浸した。自動固定包埋装置にかけパラフィン包埋を行った。5μm厚の切片を作製し、脱パラフィン後、免疫組織染色および染色に供した。
<免疫組織染色>
FGF-1投与試料切片を作製し、ウイルス抗体、虚血操作効果の判定のために抗b-チューブリン抗体、アストロサイトの動きを調べるために抗GFAP抗体、apoptosisの有無をみるためにapoptag抗体に対する反応を調べた。somaの形状を調べるためにHE染色を行った。その結果を簡略まとめたものが以下のものである(表2)。
Figure 0003883213
海馬CA-1錐体細胞において、HE染色で観察すると虚血なしコントロール試料では神経細胞に変化は認められず、虚血、ウイルス非投与側では錐体細胞の核の凝縮とeosinophilic changeを示す細胞質を持った萎縮状神経細胞が多く、いわゆる虚血性変化を示していた。一方ウイルス投与、虚血側では、少数の変形神経細胞が散在性に認められたが、大半の神経細胞は形態が保持されていた。投与側にはウイルス抗体陽性領域が認められた。ウイルス非投与、虚血側の形態変化を呈する神経細胞の大半はapoptag染色陽性であるのに対して、ウイルス投与、虚血側では、HE染色でみられたごく少数の形態学的変化を示す細胞のみが陽性で、大半はアポトーシスが抑制されていると考えられた(図9)。
産業上の利用の可能性
本発明により、従来では困難だった中枢神経系組織を含む神経細胞に遺伝子を導入する方法が提供された。本発明の方法を利用することにより、遺伝子治療等を行う際に、効率的に遺伝子を導入することが可能となった。

Claims (15)

  1. パラミクソウイルス科ウイルスベクターまたは該ベクターを含む細胞を神経細胞へ接触させる工程を含む、神経細胞へ核酸を導入するための方法。
  2. 神経細胞が中枢神経系の細胞である、請求の範囲1に記載の方法。
  3. 中枢神経系の細胞が脳室上衣細胞である、請求の範囲2に記載の方法。
  4. 中枢神経系の細胞が海馬領域の細胞である、請求の範囲2に記載の方法。
  5. 該ベクターに含まれる核酸が外来遺伝子を含む、請求の範囲1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 外来遺伝子を一過的に発現させる、請求の範囲5に記載の方法。
  7. 外来遺伝子が分泌タンパク質をコードする、請求の範囲5に記載の方法。
  8. タンパク質が、視床下部神経核に作用するタンパク質である、請求の範囲7に記載の方法。
  9. タンパク質が、脳虚血保護作用を有するタンパク質である、請求の範囲7に記載の方法。
  10. 外来遺伝子が、FGF-1、FGF-5、NGF、CNTF、BDNF、GDNF、p35、CrmA、ILP、bcl-2、ORP 150からなる群より選択される遺伝子である、請求の範囲5に記載の方法。
  11. 該神経細胞が非ヒト動物神経細胞であり、該ベクターまたは該細胞をインビボで接触させる、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
  12. 該ベクターが分泌タンパク質をコードする外来遺伝子を有し、髄液を介して該分泌タンパク質を脳内に拡散させる工程を含む、請求項11に記載の方法。
  13. FGF-1またはFGF-5を外来遺伝子として含む、パラミクソウイルス科ウイルスベクターを神経細胞に接触させることにより、非ヒト動物の摂食行動を制御する方法。
  14. FGF-1またはFGF-5を外来遺伝子として含む、パラミクソウイルス科ウイルスベクターを神経細胞に接触させることにより、非ヒト動物の血糖値を制御する方法。
  15. パラミクソウイルス科ウイルスベクターがセンダイウイルスベクターである、請求の範囲1から14のいずれかに記載の方法。
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