JP3883026B2 - 窒化チタンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属チタン粉末、その圧粉体、またはスポンジチタン等の固相状態の金属チタンを出発物質として、マイクロ波照射下において固相−気相反応により窒化チタン粉末等やそれらの焼結体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化チタン(TiN)は、ダイヤモンドに近い硬度と優れた耐熱性を持ち、かつ化学的に安定な化合物であることから、超硬質の耐摩耗部品、切削工具部品、表面被覆材、研磨剤、焼結材料、ファインセラミックス材料等としての利用が大いに期待されている物質である。
【0003】
TiN粉末の製造方法としては、金属チタンをプラズマ、アーク等の熱により溶融または蒸発させて窒素ガスで窒化を行う方法(特開昭61−132505号公報、特許第2694659号公報)、四塩化チタン、酸化チタン、水酸化チタン等をアンモニアガスまたは窒素ガス雰囲気で高温で気相反応させて窒化する方法(特開平1−37408号公報、特許第2582281号公報、特開平5−170411号公報、特公平6−38912号公報、特表平8−504396号公報)等の発明が知られている。
【0004】
また、固体状のチタンを直接窒化する方法としては、液体アンモニア中に金属粉末またはペレットを分散し、この分散物に対して、電極から放電を行わせて金属とアンモニアを直接反応させてアルミニウム、チタン、ジルコニウム等の窒化物を製造する方法(特許第2571640号公報)、液体窒素中に金属チタン粉末圧粉体を配置し、圧粉体の下部端面に通電加熱して1700℃以上に加熱して圧粉体と窒素の燃焼反応を誘導し、圧粉体内部への窒素の拡散により窒化反応を促進させてTiNを合成する方法(特公平8−25729号公報)が公知である。
【0005】
また、チタン金属塊または粉末を窒素ガス雰囲気中で振動させることにより結晶粒径数10nm以下のナノクリスタル構造を有するTiNを製造する方法(特開平5−78107号公報)も公知である。
しかし、固相反応は、固相中の拡散速度が遅いため非常に長い反応時間がかかる。そのため、より早い反応速度とするため、固相前駆物質、分子前駆物質、フラックス等を用いる合成技術が探索されている。
【0006】
また、反応のための加熱技術をみれば、誘導加熱、アーク炉加熱、マイクロ波加熱等の加熱技術も関心が持たれている。種々の固体物質、例えば、黄銅鉱半導体、金属カルコゲナイド、酸化物超伝導体、金属ハロゲン化物等の合成やセラミックスの焼結の加熱源としてマイクロ波を使用することが報告されている。
マイクロ波加熱技術は、電界により誘導される電流により微細な金属粒子が急速に抵抗加熱される利点があり、種々の金属粉末を放電させることなく急速に加熱できる。
【0007】
例えば、( A.Gavin Whittakerら「Microwave-assisted Solid-State Reactions involving Metal Powders and Gases」,「J.Chem.Soc.Dalton Trans.」2541,1993 )には、2.45GHzのマイクロ波加熱装置を用いて1000℃以上に加熱し、金属粉末と気体とを固相反応させて金属塩化物、金属窒化物、金属臭化物を合成すること、例えば、チタン粉末をNH3 /N2 ガスと反応させてTiNを合成することが報告されている。
さらに、( J.D.Houmes ら「Microwave Synthesis of Ternary Nitride Materials」,「J.of Solid State Chemistry」130、266-271、1997)には、電子レンジのような2.45GHzのマイクロ波加熱装置に窒素ガスを流しながら加熱してLi3 FeN2 ,LiTiN3 ,またはLi3 AlN2 等の三元の窒化物を窒素プラズマにより合成する試みも報告されているが、この報告では、ある種の金属粉末は、家庭用電子レンジでうまく加熱できるものの、窒素と反応させても二元の窒化物は生成せず、例外的にチタン粉末は、窒素ガス雰囲気中で窒素プラズマが容易にスパークし、チタン粒子上にTiNの被膜が形成されると報告している。
【0008】
米国特許第5154779号明細書、米国特許第5294264号明細書には、金属またはメタロイドを1.6kw、2.45GHzのマイクロ波加熱炉に入れて窒素含有ガスを流し,数時間以上1000℃以上に加熱してSi3N4等の窒化物を形成する方法が記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
TiNは、原理的には、金属チタンを窒素気流下で800℃以上に加熱すると炎を上げて生成する。また、酸化チタンと炭素の混合物を窒素下で強熱しても得られる。
しかし、空気中(酸素存在下)では、800℃以上に加熱しても酸化チタンが生成するために、これまで、窒素雰囲気下での燃焼合成法や真空下での窒素プラズマ合成法等が採用されてきた。しかし、いずれの方法も反応装置の窒素ガス雰囲気調整が不可欠であり、窒素雰囲気を作るために加熱室を気密容器にしたり、真空排気手段、窒素ガス供給手段等が必要で、高価な装置となり、工程も多く、効率的であるとは言えなかった。
また、上記のJ.D.Houmesらの論文では、供給した窒素ガスとチタン金属粉末を2.45GHzのマイクロ波加熱装置により反応させても表面にTiNの被膜が形成されるだけで、内部には未反応のTiが残っていると報告されており、完全なTiN粉末や塊を得ることはできなかった。
その他の方法でも、生成するTiN粉末の凝結が生じて、微粉化が困難となり、焼結製品の原料等として有用なTiN微粉末が得られない等の欠点があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、金属粉末と気体との固−気反応現象について鋭意研究を進めている過程において、ジャイロトロンのように波長の短いマイクロ波発生装置により均一な電場を設けてチタン粉末にマイクロ波を照射した場合、反応のための加熱温度を上げないで、チタン金属粉末を空気中でその窒素成分と反応させて自己燃焼反応を抑制しつつ窒化できることを見出し、本発明に到達した。
そして、この方法によれば、出発物質として用いたチタン金属粉末の粒度と変わらない微粉末状の、凝結していないTiN粉末が得られるという有利な効果がもたらされることが分かった。また、この窒化反応は、粉末に限らず、反応表面積の大きいスポンジチタンや多孔質の圧粉体でも同様に生じることを確認した。
【0011】
すなわち、本発明は、空気中において、粒子径範囲が5〜74μmの金属チタン粉末、その圧粉体、またはスポンジチタンに周波数9GH以上、出力1kw以下のマイクロ波を照射して交番電界中に曝すことにより該金属チタン粉末、その圧粉体、またはスポンジチタンを固相の状態で空気中の窒素成分と反応させ、自己燃焼反応を抑制しつつ窒化させるTiNの製造方法を提供する。交番電界中に曝すために均一な電場を設けるようにするには、数十ミリ以下の波長の短いマイクロ波発生装置を用いることが望ましい。本発明の方法において、マイクロ波照射による窒化反応は、900度℃を超えない温度で起こる。窒素を富化した空気中でマイクロ波を照射することによっても本発明の目的は達成されるが、窒素分圧は自己燃焼反応を誘発しない範囲に調整する必要がある。従来のTiN粉末の製造方法には、窒素雰囲気におけるTiの自己燃焼反応により反応温度千数百度で反応させて固相の生成物を得る方法があるが、本件発明は自己燃焼反応を起こさないことを特徴とする。
【0012】
本発明の方法によれば、窒化がほぼ完了するまでのマイクロ波照射時間は10〜20分程度であり、従来の方法に比べて極めて短時間でのTiNの製造が可能であり、マイクロ波との相互作用によりチタンが直接加熱されることから加熱効率も非常に高い。また、マイクロ波の出力停止により、反応後の冷却速度も大とすることができる。窒化の際の発熱によるチタン粉末の溶融や粒子の粗大化も殆どなく、TiN微粉末の合成に極めて有用である。
さらに、本発明は、チタンの窒化と同時または、窒化後にTiNを焼結する方法も提供する。
【0013】
マイクロ波は、周波数1GHz〜3THz、波長0.1〜300mm位のUHF〜EHF帯の総称であるが、無機化合物の合成やセラミックスの焼結等に熱源としてマイクロ波加熱が利用されることもあり、これらの目的には、マイクロ波の周波数としては、数GHz〜数十GHzが用いられている。
例えば、特開平7−291736号公報には、ジャイロトンを用いてマイクロ波加熱によりSi3N4を焼結する方法が開示されており、このようなマイクロ波加熱装置や加熱手段は当業者に公知のものである。
しかし、電子レンジで用いられる通常2.45GHzで空気中においてチタン金属粉末等の金属粉末を照射すると、自己燃焼反応よりも激しい放電によりアークを発し、発熱溶融する。また、2.45GHzでは波長が長すぎて、試料をターンテーブルで高速回転させても均一な電場を得ることが極めて困難である。
【0014】
本発明方法では、マイクロ波照射において、均一な電場を得ることができるようにする必要があり、そのためには、マグネトロン式、ジャイロトロン(28GHz、10kw高周波高出力発振管)式等の9GHz程度以上、すなわち波長数十ミリ以下の領域の比較的波長の短いマイクロ波加熱装置を用いることが好ましい。
本発明者らは、このようなマイクロ波加熱装置を用いた場合は、照射されるTi粉末は、電子レンジによる加熱の場合とは異なり、自己燃焼反応を起こさせずに窒化反応を起こさせることができることを見出した。
【0015】
本発明者は、マイクロ波電場中で金属Feが酸化されにくいことを先に見出したが、酸化反応そのものが進行しにくいのか、あるいは生成する酸化物の特性(特に電気的特性)に依存して酸化反応が進行し難いのかは分からなかった。
そこで、金属チタンを対象に、マイクロ波加熱による酸化反応についての実験研究を重ねたところ、ジャイロトロン式のマイクロ波加熱装置により空気中でTi粉末にマイクロ波を照射して加熱することにより、従来の技術常識を覆して空気中でTiNの粉末を合成できた。
TiNには、反応の熱的効果でNが50mol%まで反応可能な食塩型TiNとαTiの格子空隙にNが20mol%まで侵入したTiNがあるが、本発明のマイクロ波照射で生成するTiNは、後者のタイプのα−TiNである。
【0016】
通常、金属を空気中で加熱すると酸化物が生成する。大気中の窒素分圧は、約0.8atm、酸素分圧は、約0.2atmであるが、酸化反応の自由エネルギー変化(−ΔG)は非常に大きく、室温でも金属表面は酸化被膜に覆われている。熱力学的な計算では、空気中で窒化が起こることは困難である。電気炉を用いた実験でも空気中でTiNが生成することはなく、生成速度の点でもTiNが優先的に生成する温度域はないと考えられる。空気中での窒化反応は、波長の短いマイクロ波加熱に特有の現象であると思われる。
【0017】
波長の短いマイクロ波加熱により酸化が進行せず、窒化が進行するメカニズムの詳細は解明できていないが、要因としては、マイクロ波電場中で進行し得る化学反応が、原反応系と生成系の電気的特性によって制限されるためであると考えられる。Ti粉末は通常表面が薄い酸化膜に覆われているが、このようなTi粉末に均一な電場においてマイクロ波を照射した場合、マイクロ波と相互作用するのは自由電子であるが、Tiの酸化物、例えばTiO2 は誘電体であり、主としてイオン種がマイクロ波と相互作用するものと考えられる。
このような、マイクロ波との相互作用の仕方が大きく変化するような化学変化はマイクロ波照射下では起こりにくいと考えられる。Tiの酸化物には、TiOのような導電性酸化物もあるが、本発明の方法によれば、侵入型窒化物が生成していることも併せて考えると、酸化物イオン(あるいは酸素原子)よりも小さい窒化物イオン(窒素原子)が表面の薄い酸化膜を通り抜けて優先的かつ選択的にTi粒子中に拡散したために新たな酸化物は生成せずに窒化が進行したものと考えられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
出発材料のTiは、金属チタン粉末、その圧粉体、またはスポンジTiを使用することができるが、微粉末の場合は、温度上昇が急で、窒化が急激に進行したり、スポンジチタンの場合は表面が溶融する可能性もあるので、試料の量やマイクロ波の出力を窒化反応が緩やかに進行するように調整する必要がある。
適切な粒度や多孔度のチタンの場合、本発明の方法の空気中でのマイクロ波照射では、非常に緩やかにチタンの窒化を進行させることができるので、粉末やスポンジの内部まで完全に窒化させることができる。
【0019】
出発物質のチタン粉末は、形態が微粉になるほど、またマイクロ波の出力が大きくなるほど温度上昇が急激に起こり、反応温度が900℃を超えると自己燃焼反応によるチタンの溶融が起こり窒化反応が停止するので、比較的粗粒で表面積の大きいものほど好ましい。粉末の粒度は、Nの侵入深さに影響するので、余り粒度が大きい場合は照射時間が長くかかり、好ましくない。粉末の粒度が大きい粗粉の場合は、マイクロ波の出力が余りに小さくては、窒化はほとんど進行しなくなる。
通常チタン粉末は、スポンジチタンを粉砕する際に発生する粉末や水素化脱水素法により粉末冶金用などには、粒子径範囲が5〜74μm、平均粒子径が20μm以下のようなものが用いられるが、このような粉末をはじめ、市販されている−325メッシュの粉末は、本発明の方法を適用する好適な出発原料となる。また、チタンの圧粉体やスポンジチタンも空隙を有し、表面積が大きいので粉末に比べて照射時間を長くする等の工夫は必要であるが、本発明の方法により、窒化することができる。
【0020】
チタンの窒化反応は、発熱反応であり、急激に窒化が進行すると試料が溶融してしまい、特に外部加熱の場合は窒素の供給が困難になるため、試料内部の窒化が進行しなくなる。このような場合、試料を一旦装置外に取り出し、微粉砕後再度マイクロ波照射処理してもよい。
また、マイクロ波照射停止後は、試料の温度は比較的速やかに低下する利点があるが、試料の残留温度が高いことにより試料の一部が酸化してしまうのを防ぐためには、反応終了後にArガスを加熱装置内に導入したり、マイクロ波の出力を断続的に低下させて試料温度が十分低くなってからマイクロ波の照射を停止する方法等が有効である。
【0021】
空気中ではなく、窒素雰囲気(1atm)中でマイクロ波を照射すると、700℃付近から急激な温度上昇が見られ、短時間で1400〜1500℃に上昇し窒化が急激に進行し、燃焼合成様の反応形態となり、試料中心部ではTiNの溶融が見られる。
しかしながら、空気の窒素分圧よりやや窒素分圧を高めた窒素富化雰囲気とした場合、窒素分圧、マイクロ波の出力、照射時間、粉末粒度等を適切に組み合わせて自己燃焼反応が生じないように制御することにより、TiNを合成することができる。
【0022】
マイクロ波照射のためには、公知の9.15GHz、または28GHzのマイクロ波を発生させマグネトロン式およびジャイラトロン式マイクロ波加熱装置を使用することができる。これらのマイクロ波加熱装置は、1kw以下の出力が望ましく、例えば500〜600wの出力において、均一な電場を得ることができる。この種の装置を用いれば短時間、例えば、5分以内でチタン粉末を窒化することができる。
【0023】
出発物質のチタン粉末を入れる容器は、石英管等マイクロ波加熱処理に用いられる試料ホルダ−を適宜使用できる。また、出発物質をコンベア上に乗せて搬送し、マイクロ波加熱炉内において加熱するようにしてもよい。また、チタン粉末を均一な電場に曝すために最も好ましい方法は、チタン粉末を流動させることであり、マイクロ波照射中のチタン粉末を流動化させるための噴流や振動手段等を適宜用いるのが望ましい。
さらに、セラミックスの酸素雰囲気中での熱処理等に使用される酸素ゲッターを併せて使用してもよい。
本発明では、マイクロ波加熱装置には、特別の気密装置や、真空排気装置、窒素ガス供給装置等を付帯させる必要がない。
【0024】
本発明の方法において、チタンの窒化と同時、または窒化後にTiNを焼結する場合は、上記のように窒素分圧、マイクロ波の出力、照射時間等を組み合わせて適切に制御してTiNの合成反応が生じるとともに、生じたTiN粉末の固相焼結、あるいは液相焼結が生じる条件を適宜選択実施する。この場合、通常の金属粉末、セラミックス粉末の焼結に際して用いられるようにバインダーとなる金属成分を出発物質に混合しても良い。また、生成したTiN粉末をTiNの合成反応が生じた後にプレス装置等で加圧焼結しても良い。
【0025】
【実施例】
実施例1
マイクロ波加熱装置としてジャイロトロン式28GHzマイクロ波加熱装置を用いた。この装置によれば、均一な電場を得ることができる。−325meshの出発物質として市販の金属チタン粉末粗粒(粒径44μm以下,レアメタリック社製)3.0gを石英製試料容器に入れ、マイクロ波加熱装置の加熱炉内に入れ炉の蓋を閉めた。炉内の圧力は1気圧である。マイクロ波の出力は、28GHzで、0.3kWとし、温度が一定となってから10分間照射を継続した。温度は、Ptシースを施したPt/Pt−10%Rh熱電対により測定した。
【0026】
試料は、照射前の黒色から照射後に黄褐色に変化した。照射中の試料は赤色に発光しており、温度プロファイルは、図1の0.3kwの時間・温度曲線に示すように、マイクロ波の出力とともに連続的に上昇し、出力を一定とした後、ほぼ一定になる。
粉末を約10分間照射した後には、生成物は金色になった。図2には、出発物質の金属チタン粉末の走査電子顕微鏡(SEM)写真、図3には、生成したTiN粉末のSEM写真を示す。SEMによる観察の結果では、未反応のTiがわずかに残存しているものの、出発物質の金属チタン粒子の粗大化は見られず、液相が存在していた様子もなかった。得られた試料のXRDパターンを図4に示す。生成物は、α−TiNで、α−Tiの空隙にNが侵入した構造を持っている。格子定数から概算した組成は、TiN0.25 であった。
【0027】
実施例2
マイクロ波の出力を0.9kWとした以外は実施例1と同様に実施した。温度プロファイルは、図1の0.9kwの時間・温度曲線に示すように、実施例1の場合より、温度は上昇するものの、時間・温度曲線のプロファイルには違いがない。格子定数から概算した組成は、実施例1と同じくTiN0.25 であった。
【0028】
実施例3
出発物質として市販の金属チタン微粉末(粒径20μm以下、平均粒径5μm,住友シチックス社製)を用い、マイクロ波の出力を0.15kWとした以外は実施例1と同様に実施した。温度プロファイルは、図5の微粉の時間・温度曲線に示すように、マイクロ波の出力とともに上昇するが、600℃を越えて急上昇したあと降下する不規則な曲線となった。図6には、出発物質の金属チタン粉末のSEM写真、図7には、生成したTiN粉末のSEM写真を示す。SEMによる観察の結果では、出発物質の金属チタン粒子の粗大化は見られなかった。
【0029】
実施例4
出発物質としてスポンジチタンを用いた以外は実施例1と同様に実施した。図8には、出発物質のスポンジチタンのSEM写真、図9には、生成したスポンジ状TiNのSEM写真を示す。生成物はα−TiNであった。
【0030】
比較例1
出発物質の金属チタン粉末として実施例1と同様の粗粉を用い、マイクロ波の出力を0.15kwとした以外は実施例1と同様に実施した。温度プロファイルは、図5の粗粒の時間・温度曲線に示すように、マイクロ波の出力とともに連続的に滑らかに上昇し、出力を一定とした後、ほぼ一定になる。しかし、粗粉に対して、出力が小さかったため、窒化はほとんど進んでいなかった。
【0031】
比較例2
マイクロ波加熱装置の加熱炉内の空気をN雰囲気に置換し、マイクロ波の出力を0.9kWとした以外は実施例1と同様に実施した。温度プロファイルは、図10の時間・温度曲線に示すように、ほぼ500℃まで緩やかに上昇を続けたあと、3分経過直後に1500℃まで急激に上昇した。これは、N2 過剰雰囲気のためにこの時点で、チタンの自己燃焼反応が生じたことを示している。TiN粉末は凝結し、出発物質の金属チタン粒子は粗大化した。
【0032】
比較例3
実施例3と同様に出発物質の金属チタン粉末として微粉を用いて実施し、急激な温度上昇が起こるまでマイクロ波の照射を継続した。図11には、生成したTiN粉末のSEM写真を示す。急激な温度上昇の後には粒子の粗大化・溶融が見られた。得られた生成物はα−TiNであったが、異物の存在が認められた。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、特別な窒素ガス供給装置を用いることなく、熱力学的には非常に困難とされている酸素共存下でのチタンの窒化反応を可能とし、また、短時間に高効率で高品質のTiNを合成でき、さらには、従来の高温加熱反応法による欠点であったTiNの溶融凝結を抑制できるTiNの新規な製造方法を提供するものであり、セラミックス分野や電磁波利用分野の発展に寄与することが大いに期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、2におけるマイクロ波照射時間とチタン粉末の温度上昇曲線を示すグラフ。
【図2】実施例1、2、比較例1、2で用いたチタン粉末の走査電子顕微鏡写真。
【図3】実施例1で得られた生成物の走査電子顕微鏡写真。
【図4】実施例1で得られた生成物のXRDパターン。
【図5】実施例3、比較例1におけるマイクロ波照射時間とチタン粉末の温度上昇曲線を示すグラフ。
【図6】実施例3、比較例3で用いたチタン粉末の走査電子顕微鏡写真。
【図7】実施例3で得られた生成物の走査電子顕微鏡写真。
【図8】実施例4で用いたスポンジチタンの走査電子顕微鏡写真。
【図9】実施例4で得られた生成物の走査電子顕微鏡写真。
【図10】比較例2におけるマイクロ波照射時間とチタン粉末の温度上昇曲線を示すグラフ。
【図11】比較例3で得られた生成物の走査電子顕微鏡写真。
Claims (4)
- 空気中において、粒子径範囲が5〜74μmの金属チタン粉末、その圧粉体、またはスポンジチタンに周波数9GH以上、出力1kw以下のマイクロ波を照射して交番電界中に曝すことにより該金属チタン粉末、その圧粉体、またはスポンジチタンを固相の状態で空気中の窒素成分と反応させ、自己燃焼反応を抑制しつつ窒化させることを特徴とする窒化チタンの製造方法。
- 900度℃を超えない加熱温度で窒化させることを特徴とする請求項1記載の窒化チタンの製造方法。
- 窒素を富化した空気中においてマイクロ波を照射することを特徴とする請求項1記載の窒化チタンの製造方法。
- チタンの窒化と同時、または窒化後に窒化チタンを焼結することを特徴とする請求項1乃至3記載の窒化チタンの製造方法。
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