JP3881903B2 - エアパレット搬送装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイヤフラムと床面との間に空気膜を形成させることにより摩擦係数を減少させ、それにより重量物を搬送するエアパレット搬送装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、エアパレットの下面に設けられたダイヤフラムと床面との間に圧縮空気を供給して浮力を発生させ、エアパレットの上に載せた重量物を搬送するエアパレット搬送装置が実用化されている。
以下、従来のエアパレット搬送装置について、その構成及び原理を図10に基づいて簡単に説明する。なお、図中の符号1はフレーム、2はダイヤフラム、3は搬送床面、4は空気膜、5はエアパレット搬送装置である。
【0003】
エアパレット搬送装置5は、フレーム1の下面に装着され、かつ空気吹出孔2aを有する略リング形状としたダイヤフラム2を備えている。このダイヤフラム2は、図示省略の圧縮機等より内部に加圧された空気の供給を受け、全周にわたって適当に配置された空気吹出孔2aから吹き出される加圧空気によって、ダイヤフラム2と搬送床面3との間に矢印で示す薄い(0.2〜0.3mm程度)空気膜4を形成させる。この結果、ダイヤフラム2の内側には大気圧より高圧となる圧力ゾーンPが形成されるので、この圧力ゾーンP内の受圧面積と圧力との積が浮力となってフレーム1に作用し、フレーム1上に載荷された重量物をフレーム1とともに浮上させて運搬することができる。
【0004】
また、ダイヤフラム2内に加圧空気を供給してエアパレット搬送装置5を浮上させると、空気膜4の形成によって搬送床面3との摩擦係数は約3/1000程度と小さくなる。このため、エアパレット搬送装置5は、非常に小さな力でも搬送床面3上を自由に移動させることができるようになる。
さらに、搬送床面3への直接接触が回避されて搬送床面3の損傷もなくなるために、エアパレット搬送装置5は、特に重量物の搬送などに数多く適用されている。
【0005】
上述したように、エアパレット搬送装置5は、ダイヤフラム2と床面3との間に薄い空気膜4を形成し、空気の潤滑効果で重量物をわずかな力で搬送するものであるから、常に加圧空気を供給して空気膜4を形成する必要がある。そして、搬送床面3に少々の波打ち、継ぎ目(段差)及び異物等が存在といった障害があっても、走行抵抗は増すものの搬送移動は可能である。
【0006】
また、このエアパレット搬送装置5は、浮上した状態の摩擦力が非常に小さいため、搬送床面3にわずかな傾斜や勾配があっても簡単に動いてしまう。このため、意図しない移動を防止して安全を確保するためには、圧縮空気の供給を瞬時に遮断すると共に、移動領域外への移動を阻止するためにストッパ6を設ける必要がある。
このストッパ6には、たとえば図11に示すように、所定の搬送路7についてその搬送床面3を一般の床面8よりも低く設定しておき、エアパレット搬送装置5が搬送路7から出ないように段差を設けたものがある。なお、図中に符号9で示した矢印は、エアパレット搬送装置5の搬送方向を示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のエアパレット搬送装置5は、搬送床面3の障害が大きくなると搬送移動が困難になる。上述した搬送床面3の障害のうち、床面の波打ちや継ぎ目については発生する頻度が低く、通常は定期的な点検補修により対応できる。これに対して、搬送床面3上の異物については、搬送路7を密封することは現実的でないなど、異物の侵入を予測したり防止したりすることは困難である。従って、エアパレット搬送装置5が通過する前を作業員が併走し、目視で発見した異物をほうき等の道具を使用して人手により搬送路7の外へ排除しているのが実状であり、自動化する上で障害となっている。
【0008】
また、エアパレット搬送装置は通常アキュムレータを備えているため、圧縮空気を遮断してもすぐには停止できないという事情がある。このため、逸走範囲を規制する目的でストッパ6を形成した搬送路7が必要になるので、保管倉庫内などの広い床面において自由自在に移動させることは困難であった。すなわち、特定の搬送路7を定めることなく使用するためにはストッパ6の設置が障害となっており、特に自動化する場合には、まんがいちの逸走が発生した場合の緊急停止が問題となる。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、搬送路上の異物を人手をかけずに除去することができ、また、まんがいちの逸走時には確実に停止させることができるようにして、エアパレット搬送装置の自動化を推進することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
エアパレット搬送装置の参考例は、フレームの下面に装着され、かつ空気吹出孔を有するダイヤフラム内に加圧された空気を供給して、前記空気吹出口から吹き出された空気により前記ダイヤフラムと床面との間に空気膜を形成させて、前記フレーム上に載荷された重量物をフレームとともに搬送するエアパレット搬送装置において、前記ダイヤフラムの周辺部に床面吸引型の清掃手段を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
このようなエアパレット搬送装置によれば、ダイヤフラムの周辺部に床面吸引型の清掃手段を設けたので、正常な空気膜の形成を妨げる異物を床面から吸引して除去することができる。
【0012】
請求項1に記載のエアパレット搬送装置は、フレームの下面に装着され、かつ空気吹出孔を有するダイヤフラム内に加圧された空気を供給して、前記空気吹出口から吹き出された空気により前記ダイヤフラムと床面との間に空気膜を形成させて、前記フレーム上に載荷された重量物をフレームとともに搬送するエアパレット搬送装置において、前記ダイヤフラムの周辺部に、ダイヤフラムと床面との間に挿入して前記ダイヤフラムで仕切られる内部の圧力ゾーンと大気圧の外部空間との間に空気流出流路を形成するシート材の供給手段を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
このようなエアパレット搬送装置によれば、ダイヤフラムの周辺部に、ダイヤフラムと床面との間に挿入してダイヤフラムで仕切られる内部の圧力ゾーンと大気圧の外部空間との間に空気流出流路を形成するシート材の供給手段を設けたので、まんがいちの場合にはシート材を供給して空気流出流路を形成し、圧力ゾーンから空気を流出させることができる。この結果、搬送中のエアパレット搬送装置は、浮上した状態から床面に接触し、摩擦力の急激な増加によって短時間で停止する。
【0014】
請求項2に記載のエアパレット搬送装置は、フレームの下面に装着され、かつ空気吹出孔を有するダイヤフラム内に加圧された空気を供給して、前記空気吹出口から吹き出された空気により前記ダイヤフラムと床面との間に空気膜を形成させて、前記フレーム上に載荷された重量物をフレームとともに搬送するエアパレット搬送装置において、前記ダイヤフラムの周辺部に設けられた床面吸引型の清掃手段と、前記ダイヤフラムの周辺部に設けられ、ダイヤフラムと床面との間に挿入して前記ダイヤフラムで仕切られる内部の圧力ゾーンと大気圧の外部空間との間に空気流出流路を形成するシート材の供給手段と、を具備して構成したことを特徴とするものである。
【0015】
このようなエアパレット搬送装置によれば、ダイヤフラムの周辺部に設けられた床面吸引型の清掃手段と、ダイヤフラムの周辺部に設けられ、ダイヤフラムと床面との間に挿入してダイヤフラムで仕切られる内部の圧力ゾーンと大気圧の外部空間との間に空気流出流路を形成するシート材の供給手段と、を具備しているので、清掃手段によって正常な空気膜の形成を妨げる異物を床面から吸引して除去し、まんがいちの場合にはシート材を供給して空気流出流路を形成し、圧力ゾーンから空気を流出させることができる。この結果、搬送中のエアパレット搬送装置は、床面上の異物によって搬送が妨げられるようなことはなく、また、非常時には、床面へ接触させることにより摩擦力が急激に増加するので、短時間で停止させることもできる。
【0016】
請求項3に記載のエアパレット搬送装置は、請求項2記載のエアパレット搬送装置において、前記清掃手段の吸引口及び吸引ダクトを、前記シート材の供給手段の外周部に一体化して設けたことを特徴とするものである。
【0017】
このようなエアパレット搬送装置によれば、清掃手段及びシート材の供給手段を一体化することによって、装置を小型化することができる。
【0018】
請求項4に記載のエアパレット搬送装置は、請求項2または3記載のエアパレット搬送装置において、前記清掃手段の吸引口周辺に床面に接する清掃ブラシを設けたことを特徴とするものである。
【0019】
このようなエアパレット搬送装置によれば、清掃手段の吸引口周辺に床面に接する清掃ブラシを設けたので、床面に付着している異物についても、ブラシで強制的に剥がしてから清掃手段によって吸引することができる。
【0020】
請求項5に記載のエアパレット搬送装置は、請求項2から4のいずれかに記載のエアパレット搬送装置において、前記清掃手段を進行方向前方に配置するのが好ましく、これにより、搬送の妨げとなる床面の異物を確実に除去することができる。
【0021】
請求項6に記載のエアパレット搬送装置は、請求項1から5のいずれかに記載のエアパレット搬送装置において、前記シート材の供給手段は、金属またはプラスチックよりなるシート材をドラムに巻き取った状態で保管し、必要時に前記シート材を巻き出すように構成したものが好ましく、これにより、通常は搬送の妨げとなることはない。
【0022】
請求項7に記載のエアパレット搬送装置は、請求項1から6のいずれかに記載のエアパレット搬送装置において、前記シート材の表面が波板形状もしくは凹凸形状に形成されているものが好ましく、これにより、床面とダイヤフラムとの間に挿入されたシート材の凹凸が空気流出流路を形成する。
【0023】
請求項8に記載のエアパレット搬送装置は、請求項1から7のいずれかに記載のエアパレット搬送装置において、前記シート材が、前記ダイヤフラムの接地面よりシート巻き出し方向に長い孔を備えているものが好ましく、これにより、ダイヤフラムの内外が孔によって連通されて空気流出流路が形成される。
【0024】
請求項9に記載のエアパレット搬送装置は、請求項1から7のいずれかに記載のエアパレット搬送装置において、前記シート材が、シート下面側にシート巻き出し方向へ形成した連通路と、シート上面側に開口して前記連通路に通じるよう複数配置した孔とを備えたものが好ましく、これにより、ダイヤフラムの内外に位置する孔と連通路とにより空気流出路が形成される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るエアパレット搬送装置の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1及び図2において、図中の符号10はエアパレット搬送装置、11はフレーム、12はダイヤフラム、13は搬送床面、14は空気膜、15は搬送移動方向を示す矢印、20は床面吸引型の清掃手段及びシート材の供給手段を一体化してなる異物吸引・搬送停止装置である。
【0026】
図示したエアパレット搬送装置10は、重量物を載荷するフレーム11の下面に4つのダイヤフラム12が設けられている。各ダイヤフラム12は、それぞれの内部に圧縮機等の空気供給源(図示省略)から加圧された空気の供給を受け、この加圧空気を図示省略の空気吹出孔から圧力ゾーンP内へ吹き出すようになっている。
なお、空気吹出孔は、ダイヤフラム12の全周にわたって適所に多数配置されており、フレーム11下面のダイヤフラム12と搬送床面13とに囲まれた空間領域が周囲の大気圧より高圧の圧力ゾーンPとなる。
【0027】
圧力ゾーンP内に吹き出した加圧空気は、ダイヤフラム11と搬送床面13との間に矢印で示す薄い空気膜14を形成して流出する。この結果、ダイヤフラム12と搬送床面13との間は、空気の潤滑効果によって摩擦係数が3/1000程度に低下する。
また、圧力ゾーンPの圧力と受圧面積との積が浮力となってフレーム11を搬送床面13から浮上させるように作用するので、フレーム11上に載荷された重量物を小さな力で搬送移動させることが可能になる。
なお、図示の例で4つのダイヤフラム12を使用したのは大きな浮力を得るためであり、ダイヤフラム12の数や大きさについては搬送する重量物に応じて適宜選択すればよい。
【0028】
エアパレット搬送装置10は、搬送移動方向(矢印15参照)の両端部に異物吸引・搬送停止装置20を備えている。この異物吸引・搬送停止装置20は、搬送床面13上にある異物を吸引して除去する床面吸引型の清掃手段と、空気流出流路を形成するシート材の供給手段とを一体化した装置である。
【0029】
さて、以下では上述した異物吸引・搬送停止装置20の構成について、図3を参照して詳細に説明する。
異物吸引・搬送停止装置20は、円筒形状としたケーシング21内の中央に回転可能に支持したドラム22を収納している。フレーム11に固定したケーシング21の下端面付近には、搬送床面13から異物を吸引するための吸引口23が開口する共に、搬送床面13に接地して付着した異物を強制的に剥がすことができるブラシ24を設けてある。
【0030】
吸引口23は、ケーシング21内の一端部側に略半周にわたって形成された吸引流路25を介し、図示省略の吸引ファン及びその駆動手段(エアモータや電動モータ等)を具備してなる吸引装置26と連通している。この吸引装置26は、いわゆる掃除機のようなものであり、吸引口23に負圧を形成し、矢印27で示す経路を通って搬送床面13から異物を吸い込むようになっている。すなわち、吸引装置26は、吸引口23及び吸引流路25と共に床面吸引型の清掃手段を構成している。
【0031】
このような床面吸引型の清掃手段を設けたことにより、エアパレット搬送装置10が搬送移動していく搬送床面13上に異物が存在すると、ダイヤフラム12が通過する前に吸引口23から確実に吸引除去することができる。このため、作業員を併走させなくてもダイヤフラム12と搬送床面13との間に異物が存在する状況を防止できるので、異物を挟み込むことによって正常な空気膜14の形成が妨げられるようなことはない。すなわち、異物の存在によってダイヤフラム12と搬送床面13との隙間が異常に大きくなり、この隙間から正常な空気膜14の形成時より大きな流量の空気漏れが発生することによって、スムーズな搬送移動や十分な浮力を得られなくなるようなことはない。
【0032】
また、吸引口23の周辺に設けたブラシ24の作用により、搬送床面13に付着した異物を強制的に剥がした後、上述した吸引装置26によって吸引口23から吸引除去することも可能になる。
なお、吸引装置26については、吸引した異物を確実に収納できるものが好ましい。
【0033】
次に、ダイヤフラム12と搬送床面13との間にシート材30を挿入し、意図的に空気流出流路を形成するシート材の供給手段について説明する。
この供給手段は、上述した異物吸引・搬送停止装置20内に一体的に組み込まれており、エアパレット搬送装置10が逸走した場合、圧力ゾーンPから加圧空気を流出させてすみやかに停止させるものである。
【0034】
シート材30は、たとえば図4(a)に示すように、金属やプラスチック等を薄い波板形状に成形したものが使用される。このシート材30は、通常の搬送移動時にはドラム22内に巻き取った状態(図3参照)で保管されており、一端はドラム22に固定され、他端はケーシング21に開口するシート材出口31からわずかに出た状態となっている。
ドラム22は回転自在であり、たとえば図示省略のバネによってシート材30を巻き出す方向(図3の場合は時計回り方向)へ付勢されている。このドラム22を、バネの付勢に抗してシート材30と共に図3の保管位置まで回転させ、適当なストッパ(図示省略)により保持しておく。
【0035】
エアパレット搬送装置10が異物吸引・搬送停止装置20のドラム22内にシート材33を巻き込んだ状態で浮上し、何らかの原因で制御不能な逸走を開始した場合、あるいは正常な搬送移動中に緊急停止させたい場合には、加圧空気の供給を停止すると共に、シート材30を巻き出してダイヤフラム12と搬送床面13との間に挿入する。
このようなシート材30の巻き出しは、上述したストッパを操作してドラム22が保管位置に保持された状態から解放し、バネの付勢によってドラム22を時計方向へ回転させることによって達成される。この結果、シート材30はシート材出口31から巻き出されて搬送床面13上に広がるので、搬送移動してきたダイヤフラム12がシート材30の上面を通過し、ダイヤフラム12と搬送床面13との間にシート材30を挟み込む。
【0036】
すると、シート材30を波板形状としているため、その凹凸が空気流出流路となって、圧力の高い圧力ゾーンP内から大気圧のダイヤフラム外部へ加圧空気が流出する。図4(a)に示すシート材30のように、一方の面だけを波形とした場合には、凹凸のある波形面が搬送床面13と接するように使用するのが好ましく、この結果、空気流路を効率よく形成することができ、しかもダイヤフラム12には平坦面が接するため破損させる心配もない。なお、図4(a)に示すシート材30の場合には、加圧空気が紙面の表裏方向へ流れることとなる。
【0037】
また、上述したシート材30の巻き出しについては、バネやストッパを用いたものとして説明したが、エアモータや電動モータ等のアクチュエータを使用した構成も可能である。
【0038】
ところで、シート材30については、図4(a)に示したものに限定されることはなく、種々の変形例が可能である。
図4(b)に示す第1変形例は、両面に凹凸を設けた波形形状のシート材30Aとしてある。このようにしても、上述したシート材30と同様の空気流出流路を形成することができる。
【0039】
図5(a)に示す第2変形例は、多数のパンチ穴30aが穿設されたシート材30Bである。この場合のパンチ穴30aは、ダイヤフラム12の接地面よりシート巻き出し方向に長い孔であり、この結果、パンチ穴30aを圧力ゾーンPと大気圧の外部とに分離するダイヤフラム12の下方を通り、矢印32のように加圧空気が流出する空気流出流路が形成される。
【0040】
図5(b)に示す第3変形例は、連通路30b及び孔30cを備えたシート材30Cである。連通路30bは、搬送床面13に接地するシート下面側に設けられており、たとえば孔30cを穿設した板材30dの下面にリブ30を設けた構成、あるいは、さらに搬送床面13に接地する板材(図示省略)を設けて板材間にリブを設けた構成などが可能である。また、孔30cについては、シート材30Cの上面側となる板材30dを貫通するように開口して連通路30bに通じるものであり、シート巻き出し方向及び幅方向に複数配置されている。
このようなシート材30Cとすれば、ダイヤフラム12より圧力ゾーンP側に位置している孔30cから連通路30bに流入した加圧空気が、連通路30bを通ってダイヤフラム12より外側に位置する孔30cから大気圧に流出する空気流出流路が形成される。
【0041】
上述したエアパレット搬送装置10は、たとえば自動搬送を実施する際に空気漏れ等ダイヤフラム12の状況を診断し、シート材30を使用した搬送移動の緊急停止を実施できるようにすることが望まれる。以下、このようなダイヤフラム12の状況診断例を、図6ないし図9に基づいて説明する。
図6及び図7において、ダイヤフラム12の周囲にはマイク#1〜8が等ピッチに配置されている。これらのマイク#1〜8は、それぞれがダイヤフラム12の周辺に発生する空気漏れの状況、すなわち空気漏れの音声を検出する手段として設けられたものである。
なお、マイク#1〜8の数については、図示した実施例に限定されるものではなく、#1〜nまで適宜変更可能である。
【0042】
また、図6における符号の35は異物、図7における符号の36は段差を示しており、このような異物35や段差(または継ぎ目)36等の障害がダイヤフラム12と搬送床面13との間に存在している場合や、ダイヤフラム12が破損して穴があいた場合には、「ピー」という音声が発生することが知られている。通常は作業員が併走しているので、この音声を聞いた時には適当な処置を施すことができる。
【0043】
上述したマイク#1〜8の検出値は、図8に示すように、制御部40に入力される。この制御部40は、ダイアフラム12へ供給される加圧空気供給量41のデータ信号の入力を受け、図9に示すフローチャートに従って診断結果42を出力する。
ステップ1(以下、「S1」と略す)でスタートすると、S2ではマイク#1〜#nにより検出した加圧空気の漏れ音を検出して制御部40に入力する。
【0044】
S3では、各マイク#1〜#nのうち、最も高い漏れ音を検出したマイク#iを判断する。
この結果を受け、S4では最も高い漏れ音を検出するマイクが時間と共に変化するか否かを判断する。すなわち、漏れ音を発生している位置がエアパレット搬送装置10の移動と共に変化しているか否かを判断する。
【0045】
S4の判断により、最も高い漏れ音を検出したマイクが時間と共に変化していれば、「YES」のS5に進んで床面側の異常と判断する。すなわち、搬送床面13上に異物35や段差36等が存在しており、搬送床面13側に異常があると判断される。
ここで、たとえば図6に示すように、点状の異物35が搬送路13上に固着された状態で存在している場合には、最も近いマイク#2が最も大きな漏れ音を検出し、エアパレット搬送装置10が移動するにつれて、マイク#3からマイク#4へ変化していく。しかし、たとえば図7に示すように、線状の段差36が搬送路13上に存在する場合には、最も近い位置にある2つのマイク#1,#2が最も大きな漏れ音を検出し、エアパレット搬送装置10が移動するにつれて、マイク#3やマイク#4へ変化していく。
【0046】
一方、S4の判断により、最も高い漏れ音を検出したマイクが時間と共に変化しなければ、「NO」のS6に進んでダイヤフラム12の破損と判断する。すなわち、ダイヤフラム12にあいた穴が原因となって加圧空気の漏れ音を発生しているのであれば、エアパレット搬送装置10がいくら移動してもダイヤフラム12の穴の位置とマイクとの位置関係は一定のため、換言すれば穴に最も近い位置にあるマイクは一定となるため、搬送床面13側の異常ではなく、ダイヤフラム12側の異常(破損)と判断される。
なお、異物35が搬送床面13に固着されていない場合には、エアパレット搬送装置10の移動と共に異物35が一体的に移動することも考えられるが、このような移動はそれほど長く続くことはないので、最も高い漏れ音を検出するマイクに変化が生じることとなり、ダイヤフラム12の破損と区別することが可能である。
【0047】
上述した漏れ音の検出により、搬送床面13側またはダイヤフラム12側の異常が検出されれば、たとえば自動搬送中において、必要に応じて加圧空気の供給を停止し、シート材30を巻き出して、エアパレット搬送装置10の搬送移動を停止させることが可能になる。
【0048】
上述した実施形態では、清掃手段及びシート材の供給手段を一体化した異物吸引・搬送停止装置20としたが、それぞれを独立した構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、空気漏れの音声を検出して空気漏れの状況を判断しているが、空気漏れの流れを検出して判断するなど、種々の変形例が可能である。
なお、本発明の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明のエアパレット搬送装置によれば、以下の効果を奏する。
参考例に記載のエアパレット搬送装置によれば、ダイヤフラムの周辺部に床面吸引型の清掃手段を設けたので、正常な空気膜の形成を妨げる異物を床面から吸引して確実に除去することができるようになる。このため、エアパレット搬送装置に作業員を併走させなくても異物の除去を自動的に実施でき、安定した搬送移動を可能にするといった顕著な効果を奏する。また、エアパレット搬送装置による搬送移動の自動化にも貢献することができる。
【0050】
請求項1に記載のエアパレット搬送装置によれば、ダイヤフラムの周辺部に、ダイヤフラムと床面との間に挿入してダイヤフラムで仕切られる内部の圧力ゾーンと大気圧の外部空間との間に空気流出流路を形成するシート材の供給手段を設けたので、まんがいちの場合にはシート材を供給して空気流出流路を形成し、圧力ゾーンから空気を流出させることができる。この結果、搬送中のエアパレット搬送装置は、浮上した状態から床面に接触し、摩擦力の急激な増加によって短時間で停止する。従って、逸走状態のエアパレット搬送装置を作業員の操作または自動検知により緊急停止させることができるので、ストッパのない広い搬送床面を自由に搬送移動させるたり、あるいは、自動搬送することも可能になる。
【0051】
請求項2に記載のエアパレット搬送装置によれば、ダイヤフラムの周辺部に設けられた床面吸引型の清掃手段と、ダイヤフラムの周辺部に設けられ、ダイヤフラムと床面との間に挿入してダイヤフラムで仕切られる内部の圧力ゾーンと大気圧の外部空間との間に空気流出流路を形成するシート材の供給手段と、を具備しているので、清掃手段によって正常な空気膜の形成を妨げる異物を床面から吸引して確実に除去し、逸走等まんがいちの場合にはシート材を供給して空気流出流路を形成し、圧力ゾーンから空気を流出させることができる。この結果、搬送中のエアパレット搬送装置は、床面上の異物によって搬送が妨げられるようなことはなく、また、非常時には、床面へ接触させることにより摩擦力が急激に増加するので、短時間で停止させることもできる。このため、エアパレット搬送装置に作業員を併走させなくても異物の除去を自動的に実施して安定した搬送移動が可能になり、また、逸走状態のエアパレット搬送装置を作業員の操作または自動検知により緊急停止させることができる。従って、ストッパのない広い搬送床面を自由に搬送移動させるたり、あるいは、搬送移動の自動化も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエアパレット搬送装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】 図1に示すエアパレット搬送装置を下面から見た図(底面図)である。
【図3】 図1のエアパレット搬送装置が備えている異物吸引・搬送停止装置の構成例を示す図である。
【図4】 (a)はシート材の実施例を示す図、(b)はシート材の第1変形例を示す図である。
【図5】 (a)はシート材の第2変形例を示す図、(b)はシート材の第3変形例を示す図である。
【図6】 搬送床面に存在する異物によって生じる空気漏れの状況を判断するための説明図である。
【図7】 搬送床面に存在する段差によって生じる空気漏れの状況を判断するための説明図である。
【図8】 空気漏れの状況を判断する異常診断の構成例を示すブロック図である。
【図9】 図8に示した制御部内のフローチャートである。
【図10】 エアパレット搬送装置の従来例を示す正面図である。
【図11】 エアパレット搬送装置用の搬送路として、段差を設けた従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 エアパレット搬送装置
11 フレーム
12 ダイヤフラム
13 搬送床面
14 空気膜
20 異物吸引・搬送停止装置
21 ケーシング
22 ドラム
23 吸引口
24 ブラシ
25 吸引流路
26 吸引装置
30,30A〜C シート材
31 シート材出口

Claims (9)

  1. フレームの下面に装着され、かつ空気吹出孔を有するダイヤフラム内に加圧された空気を供給して、前記空気吹出口から吹き出された空気により前記ダイヤフラムと床面との間に空気膜を形成させて、前記フレーム上に載荷された重量物をフレームとともに搬送するエアパレット搬送装置において、前記ダイヤフラムの周辺部に、ダイヤフラムと床面との間に挿入して前記ダイヤフラムで仕切られる内部の圧力ゾーンと大気圧の外部空間との間に空気流出流路を形成するシート材の供給手段を設けたことを特徴とするエアパレット搬送装置。
  2. フレームの下面に装着され、かつ空気吹出孔を有するダイヤフラム内に加圧された空気を供給して、前記空気吹出口から吹き出された空気により前記ダイヤフラムと床面との間に空気膜を形成させて、前記フレーム上に載荷された重量物をフレームとともに搬送するエアパレット搬送装置において、前記ダイヤフラムの周辺部に設けられた床面吸引型の清掃手段と、前記ダイヤフラムの周辺部に設けられ、ダイヤフラムと床面との間に挿入して前記ダイヤフラムで仕切られる内部の圧力ゾーンと大気圧の外部空間との間に空気流出流路を形成するシート材の供給手段と、を具備して構成したことを特徴とするエアパレット搬送装置。
  3. 前記清掃手段の吸引口及び吸引ダクトを、前記シート材の供給手段の外周部に一体化して設けたことを特徴とする請求項2記載のエアパレット搬送装置。
  4. 前記清掃手段の吸引口周辺に床面に接する清掃ブラシを設けたことを特徴とする請求項2または3記載のエアパレット搬送装置。
  5. 前記清掃手段を進行方向前方に配置したことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のエアパレット搬送装置。
  6. 前記シート材の供給手段は、金属またはプラスチックよりなるシート材をドラムに巻き取った状態で保管し、必要時に前記シート材を巻き出すように構成したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のエアパレット搬送装置。
  7. 前記シート材の表面が波板形状もしくは凹凸形状に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のエアパレット搬送装置。
  8. 前記シート材が、前記ダイヤフラムの接地面よりシート巻き出し方向に長い孔を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のエアパレット搬送装置。
  9. 前記シート材が、シート下面側にシート巻き出し方向へ形成した連通路と、シート上面側に開口して前記連通路に通じるよう複数配置した孔とを備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のエアパレット搬送装置。
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