JP3879828B2 - フォトマスクブランクスの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトグラフィーに用いるフォトマスクブランクス及びフォトマスクブランクスの製造方法に関し、更に詳述すると、LSI、VLSI等の高密度半導体回路、CCD(電荷結合素子)、LCD(液晶表示素子)用カラーフィルター、磁気ヘッド等の微細加工に好適に用いられるフォトマスクブランクスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
フォトマスクブランクスの製造において、成膜時に合成石英基板表面にパーティクル等の微小な異物が存在していると、この異物が、成膜された遮光膜又は位相シフト膜内に、あるいは基板と成膜された膜の間に取り込まれ、フォトマスクとしてパターンを形成したときに欠陥となることがある。また、清浄となった基板もその保管状態により表面に有機膜が形成され、成膜された遮光膜又は位相シフト膜と合成石英基板との付着力を低下させ、フォトマスクとしてパターンを形成した時に欠陥を生じさせることがある。このため、通常、成膜工程前に洗浄工程を入れて基板表面の異物を取り除いている。
【0003】
従来技術では熱濃硫酸による浸漬洗浄や、界面活性剤によるスクラブ洗浄による方法が用いられている。しかしながら熱濃硫酸では取り扱いが危険であること、廃棄等に問題があり、また、最近問題となっている微小な異物に対しては完全に除去できないので、洗浄時間を長くして対処している。
【0004】
物理的なスクラブ洗浄も比較的大きな異物には効果があるものの、微小な異物に関しては適当ではない。特に、研磨後の洗浄が不十分であった場合、研磨材が基板表面に固着しており、保管により更に除去が困難となる。このため、長期保管した基板の洗浄は困難であり、大変な労力を必要としていた。
【0005】
本発明は、この様な従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、合成石英基板表面に付着した異物等を容易に除去し、異物の極めて少ない高品質なフォトマスクブランクスを得ることができるフォトマスクブランクスの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、保管等により汚染された合成石英基板を、まず低濃度のフッ酸水溶液で洗浄し、更に低濃度アルカリ液でリンスすることにより、基板上の微粒子、シミ、汚れ、有機物等の異物を除去でき、高度に清浄化された合成石英基板を容易に得ることができ、その基板上に遮光膜又は位相シフト膜等を成膜すると異物の極めて少ないフォトマスクブランクスが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記のフォトマスクブランクスの製造方法を提供する。
請求項1:
有機物又は微小な異物により汚染された合成石英基板を0.005〜8重量%の低濃度フッ酸水溶液を用いて処理し、更にアルカリ液を用いて洗浄処理し、次いでこの洗浄して得られた合成石英基板上に遮光膜又は位相シフト膜を形成することを特徴とするフォトマスクブランクスの製造方法。
請求項2:
アルカリ液のpHが8.5〜11.5である請求項1記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
請求項3:
アルカリ液がアンモニア水と水素水との混合水溶液である請求項1又は2記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
請求項4:
アルカリ液が界面活性剤を含むものである請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
請求項5:
反応性スパッタリング法により遮光膜又は位相シフト膜を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【0008】
本発明によれば、フォトマスクブランクスの製造において、遮光膜又は位相シフト膜等を成膜する前の合成石英基板を、まず低濃度のフッ酸水溶液で処理し、更に低濃度のアルカリ液でリンスすることにより、基板上の微粒子、シミ、汚れ、有機物等の異物を効果的に除去でき、直径が0.1μm以上の異物の数が、200cm2あたり100個以下、特に80個以下の基板を得ることができる。この基板上に遮光膜又は位相シフト膜を成膜することにより異物の極めて少ないフォトマスクブランクスを得ることができる。
【0009】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のフォトマスクブランクスに用いられる合成石英基板は、低濃度のフッ酸水溶液を用いて洗浄処理後、更に低濃度のアルカリ液を用いてリンスすることにより表面に付着する異物を除去することで得ることができる。合成石英基板表面にまず低濃度のフッ酸水溶液を噴射して又は浸漬する等をして異物等を除去し、更に低濃度アルカリ液を噴射又は基板を浸漬する等のアルカリ液リンス処理を施し、超純水リンスし、乾燥を行う一連の工程によって得ることができる。途中に純水のリンスを行うこともでき、基板の汚染状態が酷い場合には、UV照射やスクラブ洗浄を適宜工程に含めることも可能である。また、乾燥ではスピン乾燥やIPA蒸気乾燥、マランゴニー等の一般的な乾燥方法を用いることができる。乾燥の状態が悪い場合には、温水で暖めた後スピン乾燥を行ったり、スピン乾燥時にIRランプ加熱を併用してもよく、あるいは乾燥後に別途加熱乾燥を施してもよい。
【0010】
このような処理方法によって得られた基板の欠陥数が0.1μm以上の大きさで200cm2あたり100個以下である基板上に遮光膜又は位相シフト膜を形成することにより、欠陥の極めて少ないフォトマスクブランクスを得ることができる。
【0011】
前記フッ酸処理に使用するフッ酸水溶液中のフッ酸の濃度は、好ましくは0.005重量%〜8重量%であり、より好ましくは0.2重量%〜3重量%である。フッ酸の濃度が0.005重量%未満では処理時間が長くなる恐れがあり、8重量%を超えると基板への腐食が起こる恐れがある。
【0012】
低濃度のフッ酸水溶液の基板表面への接触方法は、低濃度フッ酸水溶液が基板全面に効率よく接触できればよく、例えば低濃度フッ酸水溶液に基板を浸漬させることにより行うこともできるし、又はかけ流して行うこともできる。更に、フッ酸の濃度が低いことから、中和処理などの排水処理設備への設備コスト負担も低減できる。但し、一般的にフッ酸は腐食性が高く取り扱いには十分な注意が必要であり、好ましくは自動で液を調合、供給する方法をとることが望ましい。
【0013】
また、低濃度アルカリ液のpHは8.5〜11.5であり、より好ましくは9.0〜10.0である。pHが8.5未満では異物の再付着が起こり易くなる恐れがあり、pHが11.5を超えるとアルカリ液の残留が起こり易くなり、基板が腐食される恐れがある。
【0014】
低濃度アルカリ液の基板表面への接触方法は、低濃度アルカリ液が基板全面に効率よく接触できればよく、例えば低濃度アルカリ液に基板を浸漬させることにより行うこともできるし、又はかけ流して行うこともできる。低濃度アルカリ液による処理は、基板表面の異物の除去と異物の再付着を防ぐ効果も兼ねており、更に基板上に残留している低濃度フッ酸水溶液による基板の腐食を防ぐこともできる。また、低濃度フッ酸水溶液による処理工程と低濃度アルカリ液によるリンス工程の間に超純水によるリンスを入れてもよい。
【0015】
また、低濃度アルカリ液を調製するために用いるアルカリ性物質は無機物でも有機物でもよい。例えば、低濃度アルカリ液はアンモニア水と水素水を混合したアルカリ液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が使用されるが、特にアンモニア水と水素水を混合したアルカリ液を用いると高い洗浄効果が得られる。更に界面活性剤を添加するとより高い洗浄効果が得られる。
【0016】
界面活性剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩、アビエンチン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩等のカルボン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩等の燐酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のエーテル系、グリセリン脂肪酸部分エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル等のエステル系、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル等のエステルエーテル系等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0017】
これにより、特に径が0.2μm以上0.5μm以下の異物を基板上より効率よく除去できる。
【0018】
以上のように処理した基板上に遮光膜又は位相シフト膜を成膜することにより、異物のきわめて少ないフォトマスクブランクスが得られる。遮光膜又は位相シフト膜の成膜方法は特に限定されず、通常用いられる方法が適用できるが、特に反応性スパッタリングにより成膜することが好ましく、ターゲット、スパッタリングガス等の成膜条件は目的に応じて適宜選定することができる。
【0019】
本発明によれば、異物の極めて少ないフォトマスクブランクスを得ることができ、フォトマスク製造時の歩留まりの向上に寄与することが可能となる。
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0020】
[実施例1]
角形合成石英基板の洗浄は、表1に示す工程及び時間に従って実施し、フッ酸水溶液の濃度は0.5重量%、アルカリ液はpH11の水酸化カリウム水溶液を使用し、60℃の温水による基板加熱を行った後、スピン乾燥を1500rpmの回転数で行った。なお、使用した基板は6025サイズ(6インチ×6インチ×0.25インチ)の角形合成石英基板である。基板はクラス1000のクリーンルーム内で3ヶ月放置したものを用いた。洗浄後、欠陥検査装置(レーザーテック製 MAGICS M−1320)を用いて、基板表面の輝点(0.1μm以上の微粒子)の個数を数えた。洗浄した10枚の基板全てについて上記のように表面の輝点の数を測定し、その平均値を表1に示した。
なお、洗浄前の10枚の基板表面の輝点の平均値は10000個/面であった。
【0021】
次に、上記基板を用いて基板上にターゲットとしてクロムを用い、アルゴンガス雰囲気下、反応性スパッタリング法でクロム膜を成膜した。成膜後、上記欠陥検査装置を用いて、クロム膜表面の輝点(0.1μm以上の微粒子)の個数を測定した。成膜した10枚の基板全てについて上記のように表面の輝点の数を測定し、その平均値を表1に示した。
【0022】
[比較例1]
実施例1と同様の角形合成石英基板を用い、表1の工程3のアルカリシャワーを超純水シャワーに変えた以外は実施例1と同様に洗浄を行った。基板10枚を洗浄した後、実施例1と同様に各基板表面の輝点(0.1μm以上の微粒子)の個数を測定し、その平均値を表1に示した。更に、上記基板を用い、実施例1と同様の方法でクロム膜を成膜してフォトマスクブランクスを製造し、同様にクロム膜表面の輝点(0.1μm以上の微粒子)数を測定し、その平均値を表1に示した。
【0023】
【表1】
Figure 0003879828
【0024】
表1から明らかなように、洗浄後の基板表面の輝点個数は、実施例1では比較例1に比べ1/4以下であり、高い洗浄効果が得られた。
【0025】
[実施例2]
石英基板の洗浄は、表2の工程及び時間に従って実施し、フッ酸水溶液の濃度は0.3重量%を使用し、アルカリ液はアンモニア水を添加した水素水(pH10)を使用した。なお、洗浄に使用した基板は6025サイズ(6インチ×6インチ×0.25インチ)の合成石英基板であり、基板はクラス1000のクリーンルーム内で、1ヶ月放置したものを用いた。次に、表2の工程に従って洗浄された基板上にターゲットとしてクロムを用い、アルゴンガス雰囲気下、反応性スパッタリング法でクロム膜を成膜しフォトマスクブランクスを製造した。成膜後、欠陥検査装置(レーザーテック製 MAGICS M−1320)を用いて、クロム膜表面の輝点(0.1μm以上の微粒子)の個数を数えた。成膜した10枚の基板全てについて上記のように表面の輝点の数を測定し、その平均値を表2に示した。
なお、洗浄前の10枚の基板表面の輝点の平均値は10000個/面であった。
【0026】
[実施例3]
実施例2と同様の基板を用い、表2の工程3のアルカリ液は界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩0.06%)を添加したアンモニア水(pH10)を用いた以外は実施例2と同様にフォトマスクブランクスを製造し、同様にクロム膜表面の輝点(0.1μm以上の微粒子)の数を測定し、その平均値を表2に示した。
【0027】
[比較例2]
実施例2と同様の角形合成基板を用い、表2の工程1のフッ酸を熱濃硫酸(濃度98重量%、80℃)に変えた以外は実施例2と同様にフォトマスクブランクスを製造し、同様にクロム膜表面の輝点(0.1μm以上の微粒子)数を測定し、その平均値を表2に示した。
【0028】
【表2】
Figure 0003879828
【0029】
実施例2、3において、比較例2と同じ洗浄時間でよりよい洗浄結果を得た。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、合成石英基板を、まず低濃度フッ酸水溶液を使用することにより、基板表面の微小異物を効率よく除去することができ、更に低濃度のアルカリリンスを続けて行うために残留フッ酸による基板の腐食を防止できる。またアルカリ液の濃度は低濃度であるため、通常の水によるリンスで除去可能である。更に、アルカリ液による処理により基板表面への微小異物の再付着が抑制される。このようにして得られた基板を用いて遮光膜又は位相シフト膜を成膜することにより、異物の発生の極めて少ないフォトマスクブランクスを得ることが可能である。

Claims (5)

  1. 有機物又は微小な異物により汚染された合成石英基板を0.005〜8重量%の低濃度フッ酸水溶液を用いて処理し、更にアルカリ液を用いて洗浄処理し、次いでこの洗浄して得られた合成石英基板上に遮光膜又は位相シフト膜を形成することを特徴とするフォトマスクブランクスの製造方法。
  2. アルカリ液のpHが8.5〜11.5である請求項1記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
  3. アルカリ液がアンモニア水と水素水との混合水溶液である請求項1又は2記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
  4. アルカリ液が界面活性剤を含むものである請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
  5. 反応性スパッタリング法により遮光膜又は位相シフト膜を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
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