JP3879407B2 - 造水装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、海水から真水を得るための造水装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
海水から真水を得るための造水装置としては、海水を蒸留することによって真水を得る形式のものがある。この蒸留式の造水装置(以下、「蒸留式造水装置」と云う)は、海水の蒸発部と、蒸気の凝縮部とを備えており、前記蒸発部において海水を加熱することによって蒸発させ、その蒸気を前記凝縮部において冷却することによって凝縮させ、蒸留水,すなわち真水を得ている。ここで、前記蒸留式造水装置においては、前記蒸発部での蒸発を促進させ、熱効率を向上させるために、適宜な真空吸引手段を用いて、前記蒸発部内を減圧し、この減圧状態で海水を加熱するようにしている。また、前記蒸発部への海水の供給は、前記真空吸引手段によって前記蒸発部内を連続的に真空吸引することにより、前記蒸発部内へ海水を吸引することによって行っている。
【0003】
前記蒸留式造水装置においては、蒸気の発生によって海水が濃縮するため、海水中の不純物がスケールとなって前記蒸発部に付着し易い。前記蒸発部にスケールが付着すると、海水を加熱する際の熱効率が低下するほか、種々の問題を引き起こす。そこで、前記造水装置においては、前記真空吸引手段によって、前記蒸発部へ海水を吸引しながら、前記蒸発部で濃縮した海水(以下、「濃縮海水」と云う)を排出することによって、海水の濃縮を抑制し、スケールの付着を抑制している。
【0004】
ところで、前記蒸留式造水装置には、上下方向の多数の加熱管からなる蒸発部を備えたものがある。このような構成の蒸発部において、前記各加熱管のそれぞれの上端は、上部管寄せに接続されており、また前記各加熱管のそれぞれの下端は、下部管寄せに接続されている。そして、前記上部管寄せを介して前記各伝熱管内を吸引することにより、前記下部管寄せを介して前記各加熱管へ海水を供給している。ところが、このような構成の蒸発部においては、前記下部管寄せから前記各加熱管への海水の供給量を均一化することが難しい。そのため、前記下部管寄せから前記各加熱管への海水の供給量が不均一になり易く、このような供給量の不均一が生じると、前記各加熱管内における海水の流速も不均一になる。すると、前記各加熱管のうち、海水の流速が遅い加熱管においては、この加熱管内の海水が過度に濃縮し、スケールが付着する。そして、スケールの付着量が増加し、ついには加熱管が閉塞して蒸発量が低下し、その結果、得られる真水の量が減少する。
【0005】
前記のような前記各加熱管へのスケール付着を防止するためには、前記各伝熱管のそれぞれの内部における海水の流速を所定の流速以上とする必要がある。そこで、前記各加熱管内における海水の流速を全体的に高めるために、前記蒸発部への海水の供給量を増加させることが考えられる。しかし、前記蒸発部への海水の供給量を増加させるには、濃縮海水の排出量を増加させる必要があるため、前記真空吸引手段の容量を増加させる必要があり、前記造水装置が大型化すると云う問題がある。
【0006】
また、前記蒸発部から排出される濃縮海水は、前記蒸発部で加熱された海水であるので、このような濃縮海水の排出量を増加させると、前記蒸発部における熱効率を低下させてしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明が解決しようとする課題は、簡単な構成で、蒸発部へのスケール付着を防止するとともに、熱効率の低下を防止することができる造水装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、海水の蒸発部と蒸気の凝縮部とを備えた造水装置において、前記蒸発部が濃縮海水排出部として機能する上部管寄せおよび海水供給部として機能する下部管寄せ間に複数の加熱管を接続して構成され、前記上部管寄せ内を減圧する真空吸引手段と、前記上部管寄せと前記下部管寄せとを接続する循環ラインとを備え、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間の水頭圧差を利用した圧送手段により前記上部管寄せの濃縮海水を前記循環ラインを介して前記下部管寄せへ供給することを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、海水を蒸留することによって真水を得る造水装置,すなわち蒸留式の造水装置において実施することができる。
【0010】
まず、この発明に係る造水装置の基本的な構成について説明する。前記造水装置は、海水の蒸発部と蒸気の凝縮部とを備えている。前記蒸発部は、複数の加熱管を備えている。これらの加熱管の下端側には、海水供給部が設けられており、また上端側には、濃縮海水排出部が設けられている。前記海水供給部は、たとえば前記各加熱管のそれぞれの下端を接続した下部管寄せであり、また前記濃縮海水排出部は、たとえば前記各加熱管のそれぞれの上端を接続した上部管寄せである。
【0011】
そして、前記蒸発部は、前記海水供給部から前記各加熱管へ供給された海水を適宜な熱源で加熱することによって、蒸気を発生させる。また、前記蒸発部での蒸発によって濃縮した海水の一部は、前記濃縮海水排出部から排出される。一方、前記凝縮部は、適宜な冷却液の供給を受けて、前記蒸発部からの蒸気を凝縮させ、蒸留水としての真水を得る。
【0012】
さて、この発明に係る造水装置は、前記濃縮海水排出部と前記海水供給部とを循環ラインによって接続した構成である。この循環ラインは、前記濃縮海水排出部から前記海水供給部へ濃縮海水を供給する機能を備えている。したがって、前記循環ラインは、濃縮海水の圧送手段を備えている。この圧送手段としては、ポンプ手段を用いることができる。また、前記蒸発部において、前記濃縮海水排出部と前記海水供給部との間の高低差,すなわち水頭圧差を圧送手段として利用し、濃縮海水を前記海水供給部へ供給するように構成することもできる。
【0013】
前記造水装置において、前記海水供給部から前記各加熱管へ海水を供給し、この海水を加熱すると、発生した蒸気は、前記凝縮部へ流入する。一方、濃縮海水は、前記各加熱管から前記濃縮海水排出部へ流入する。そして、この濃縮海水は、前記循環ラインを介して前記濃縮海水排出部から前記海水供給部へ供給され、またその一部は前記造水装置外へ排出される。そのため、前記各加熱管への海水の供給量は、前記造水装置への実際の海水の供給量に比べて増加する。すると、前記各加熱管内における海水の流速が全体的に増加し、前記各加熱管内における海水の流速がすべて所定の流速以上となるため、前記各加熱管内における海水の濃縮を抑制することができ、したがって海水が過度に濃縮することによって生じるスケール付着を防止することができる。
【0014】
しかも、前記各加熱管内における海水の流速の増加は、前記循環ラインによって、濃縮海水を前記濃縮海水排出部から前記蒸発部へ供給することによって行われるため、濃縮海水の排出量を増加させる必要がなくなる。そのため、濃縮海水を排出するための手段の大容量化が不要であり、前記造水装置の大型化の問題も解消することができる。また、前記造水装置からの濃縮海水の排出量を増加させる必要がないので、熱効率の低下を防止することができる。
【0015】
以上のように、この発明に係る造水装置によれば、簡単な構成で、蒸発部へのスケール付着を防止することができるとともに、熱効率の低下を防止することができる。
【0016】
【実施例】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明に係る造水装置の一実施例を示す縦断側面説明図であり、また図2は、図1のII−II線に沿う断面説明図である。ここで、この実施例における造水装置は、舶用造水装置であって、海水を加熱するための熱源流体として、船舶のエンジンの冷却液,すなわち前記エンジンを冷却した後の冷却液を用いている。そのため、前記造水装置においては、減圧状態で海水を加熱することにより、蒸気を発生するように構成されている。また、前記造水装置は、蒸気を凝縮させるための冷却液としても、海水を用いている。
【0017】
図1および図2において、造水装置1は、海水の蒸発部2と蒸気の凝縮部3とを備えている。前記造水装置1において、前記凝縮部3は、前記蒸発部2に接続されたケーシング4を介して設けられており、このケーシング4の内部は、前記蒸発部2から前記凝縮部3へ蒸気を供給するための蒸気流路(符号省略)となっている。
【0018】
まず、前記蒸発部2について説明する。前記蒸発部2は、所定の距離をおいて上下に配置した上部管寄せ5および下部管寄せ6を備えている。前記上部管寄せ5の頂部には、前記ケーシング4が接続されている。前記両管寄せ5,6間には、この両者を連結するとともに、この両者間に熱源流体の導入空間7を画成するための第一胴部材8が設けられている。この第一胴部材8は、円筒形状を呈し、その内部,すなわち前記導入空間7内には、複数の加熱管9,9,…が配置されている。これらの各加熱管9のそれぞれの上端は、前記上部管寄せ5に接続されており、またそれぞれの下端は、前記下部管寄せ6に接続されている。
【0019】
前記上部管寄せ5の底部には、適宜な真空吸引手段(図示省略)を備えた排出ライン10が接続されており、したがって前記上部管寄せ5は、濃縮海水排出部として機能する。また、前記下部管寄せ6には、海水供給ライン11が接続されており、したがって前記下部管寄せ6は、海水供給部として機能する。さらに、前記第一胴部材8の周壁の下部(図1における左側下部)には、熱源流体導入ライン12が接続されており、また周壁の上部(図1における左側上部)には、熱源流体導出ライン13が接続されている。ここで、前記第一胴部材8の内側における上下方向のほぼ中央部の位置には、ほぼ水平に配置された仕切板14が設けられている。この仕切板14は、前記熱源流体導入ライン12と前記熱源流体導出ライン13との間で熱源流体がショートパスするのを防止し、熱源流体と前記各加熱管9とを確実に接触させ、前記各加熱管9への伝熱を促進する機能を果たしている。
【0020】
そして、前記上部管寄せ5と前記下部管寄せ6とは、濃縮海水の循環ライン15を介して接続されている。この循環ライン15には、前記上部管寄せ5から前記下部管寄せ6への濃縮海水の流量調整手段としてオリフィス16が設けられている。
【0021】
つぎに、前記凝縮部3について説明する。前記凝縮部3は、前記ケーシング4のほぼ中央部をほぼ水平に貫通させて設けられた第二胴部材17と、この第二胴部材17の両端部にそれぞれ設けられた左管寄せ18および右管寄せ19を備えている。前記第二胴部材17は、円筒形状を呈し、その内部には、複数の冷却管20,20,…が配置されている。これらの各冷却管20のそれぞれの一端は、前記左管寄せ18に接続されており、またそれぞれの他端は、前記右管寄せ19に接続されている。ここにおいて、前記ケーシング4内における前記第二胴部材17の中央部の上方には、前記蒸発部2からの蒸気を導入するための開口部21が形成されている。
【0022】
前記左管寄せ18には、冷却液導入ライン22が接続されており、また前記右管寄せ19には、冷却液導出ライン23が接続されている。さらに、前記第二胴部材17の右側底部には、蒸留水導出ライン24が接続されている。
【0023】
さらに、前記造水装置1において、前記上部管寄せ5の上部には、前記蒸発部2で発生させた蒸気中の液滴(海水)を捕捉するための一次気水分離手段25が設けられている。この一次気水分離手段25は、多数の線条部材を立体的な網目構造に形成した線条集合体が用いられている。また、前記ケーシング4内には、前記一次気水分離手段25を通過した蒸気中の液滴を捕捉するための二次気水分離手段26,26が設けられている。これらの二次気水分離手段26は、メッシュデミスタであって、この実施例においては、前記第二胴部材17の周壁と前記ケーシング4の正面(図2における左側)の側壁との間および前記第二胴部材17の周壁と前記ケーシング4の背面(図2における右側)の側壁との間のそれぞれに設けられている。すなわち、前記一次気水分離手段25および前記各二次気水分離手段26は、前記蒸発部2で発生させた蒸気から液滴を除去し、前記凝縮部3へ流入する蒸気の乾き度を高めることによって、蒸留水の純度を向上させる機能を果たしている。
【0024】
つぎに、前記造水装置1の運転について説明する。まず、前記造水装置1の運転を開始する際には、まず前記真空吸引手段(図示省略)を作動させることにより、あらかじめ前記排出ライン10から前記ケーシング4内および前記上部管寄せ5内の気体を排出して、前記上部管寄せ5内および前記ケーシング4内を減圧し、この減圧状態を維持する。
【0025】
つぎに、前記海水供給ライン11から前記下部管寄せ6への海水の供給を開始する。この海水は、前記ケーシング4内および前記上部管寄せ5内が減圧されているため、前記海水供給ライン11から前記下部管寄せ6を介して前記各加熱管9内へ吸引される。この海水の供給後、前記冷却液導入ライン22から前記左管寄せ18を介して前記各冷却管20内へ冷却液としての海水を供給するとともに、前記熱源流体導入ライン12から前記導入空間7内へ熱源流体を供給する。
【0026】
すると、前記各加熱管9内の海水は、前記導入空間7内の熱源流体によって加熱され、前記各加熱管9内を上昇しながら蒸発し、この蒸気は、前記上部管寄せ5内へ流入する。また、前記各加熱管9内の海水は、蒸発によって濃縮し、この濃縮した海水,すなわち濃縮海水も前記各加熱管9から前記上部管寄せ5内へ流入する。
【0027】
まず、前記上部管寄せ5内へ流入した蒸気は、さらに前記ケーシング4内へ流入し、前記ケーシング4内を前記第二胴部材17へ向けて流れる。この蒸気は、前記第二胴部材17へ向けて流れる間に、前記一次気水分離手段25および前記各二次気水分離手段26を順に通過することで、蒸気中の液滴が除去され、乾き度が向上する。そして、この乾き度が向上した蒸気は、前記開口部21から前記第二胴部材17内へ流入する。前記第二胴部材17内へ流入した蒸気は、前記各冷却管20によって冷却されることにより凝縮し、蒸留水となる。この蒸留水は、前記第二胴部材17内に溜まり、そして前記蒸留水導出ライン24から真水として取り出される。
【0028】
一方、前記上部管寄せ5内へ流入した濃縮海水は、前記循環ライン15を介して前記下部管寄せ6内へ供給され、再び前記各加熱管9内へ導入される。また、前記上部管寄せ5内の濃縮海水の一部は、前記排出ライン10から排出される。そのため、前記下部管寄せ6から前記各加熱管9への海水の供給量は、前記海水供給ライン11から前記下部管寄せ6への実際の海水の供給量に比べて増加することとなる。前記下部管寄せ6から前記各加熱管9への海水の供給量が増加すると、前記各加熱管9内における海水の流速が全体的に増加する。すると、前記各加熱管9内における海水の流速が全体的に増加し、前記各加熱管9内における海水の流速がすべて所定の流速以上となるため、前記各加熱管9内における海水の濃縮を抑制することができ、したがって海水が過度に濃縮することによって生じるスケール付着を防止することができる。
【0029】
ここにおいて、前記各加熱管9内における海水の流速の増加は、前記循環ライン15によって、前記上部管寄せ5内の濃縮海水を前記下部管寄せ6内へ供給することによって行われるため、前記排出ライン10からの濃縮海水の排出量を増加させる必要がなくなる。そのため、前記真空吸引手段の大容量化が不要であり、前記造水装置1の大型化の問題も解消することができる。
【0030】
また、前記のように、前記排出ライン10からの濃縮海水の排出量を増加させる必要がないので、濃縮海水とともに排出されていた熱量の損失を防止することができるため、前記造水装置1における熱効率の低下を防止することができる。
【0031】
【発明の効果】
この発明によれば、簡単な構成で、蒸発部へのスケール付着を防止することができるとともに、熱効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る造水装置の一実施例を示す縦断側面説明図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面説明図である。
【符号の説明】
1 造水装置
2 蒸発部
3 凝縮部
5 上部管寄せ(濃縮海水排出部)
6 下部管寄せ(海水供給部)

Claims (1)

  1. 海水の蒸発部と蒸気の凝縮部とを備えた造水装置において、前記蒸発部が濃縮海水排出部として機能する上部管寄せおよび海水供給部として機能する下部管寄せ間に複数の加熱管を接続して構成され、前記上部管寄せ内を減圧する真空吸引手段と、前記上部管寄せと前記下部管寄せとを接続する循環ラインとを備え、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間の水頭圧差を利用した圧送手段により前記上部管寄せの濃縮海水を前記循環ラインを介して前記下部管寄せへ供給することを特徴とする造水装置。
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